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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する G01N
管理番号 1374117
審判番号 訂正2021-390022  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-01-22 
確定日 2021-03-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6294233号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6294233号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6294233号(以下「本件特許」という。)は、2012年(平成24年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年12月7日、2012年9月30日、米国)を国際出願日とする特願2014-546045号の請求項1ないし11に係る発明について、平成30年2月23日に特許権の設定登録がなされたものであり、その後、令和3年1月22日に訂正審判(以下「本件訂正審判」という。)の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6294233号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量を測定するステップと、」と記載されているのを、「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップと、」に訂正する。
(なお、訂正事項として記載されていないが、訂正事項1で訂正される請求項1の記載を引用する請求項についても同様に訂正されることは明らかである。)

第4 当審の判断
1 訂正の目的について
本件訂正前の請求項1の記載は、
「被検体の全身骨格筋量の定量方法であって、
(a)D_(3)-クレアチンが被検体に経口投与され、D_(3)-クレアチンが全身骨格筋クレアチンプールに希釈され、全身骨格筋クレアチンプールの同位体が定常状態となった被検体から取得された、クレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを含有する生体試料である尿試料中のクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを、HPLC/MS、HPLC/MS/MS、LCMS、LC/MS/MS、および同位体比質量分析(IRMS)からなる群から選択される方法によって検出するステップと、
(b)時間tにおけるクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを測定することによって上記生体試料中のD_(3)-クレアチニンの濃縮率を測定するステップと、
(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量を測定するステップと、
(d)上記被検体の全身クレアチン貯蔵量を、下記の式(1)を用いて決定するステップと、
式(1):
全身クレアチン貯蔵量
=[D_(3)-クレアチン投与量(g)-尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)]/上記(b)で求めた濃縮率(t)
(e)下記の式(2)に基づいて、上記被検体の全身骨格筋量を定量するステップ、
式(2):
全身骨格筋量=(全身クレアチン貯蔵量)/(骨格筋のクレアチン濃度)
とを含む方法。」(下線は当審が付与した。)であり、
上記ステップ(d)の式(1)の[D_(3)-クレアチン投与量(g)-尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)]における「尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)」は、既知の値ではないから、測定により求める必要がある。
しかしながら、請求項1には「尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)」を測定するステップに係る記載はない。
測定に関するステップとして、請求項1には、「(a)・・・尿試料中のクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを・・・検出するステップ」、「(b)時間tにおけるクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを測定することによって上記生体試料中のD_(3)-クレアチニンの濃縮率を測定するステップ」及び「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量を測定するステップ」がある。
これらのうち、(a)ステップで検出した尿試料中のクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンは(b)ステップで用いられ、(b)ステップで測定した生体試料中のD_(3)-クレアチニンの濃縮率は(d)ステップで用いられるが、(c)ステップで測定するD_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量は、他のステップで用いられることはなく、単独で被検体の全身骨格筋量を表すものでもない。
すると、ステップ(d)の式(1)の「D_(3)-クレアチン投与量(g)-尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)」は、上記(c)の「D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量を測定するステップ」によって求まるものであるべきであるから、上記(c)のステップは「D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップ」でなければ、技術的に整合せず、ステップ(c)において「D_(3)-クレアチニン」と記載されているのは、「D_(3)-クレアチン」と記載すべきところを誤って記載したものといえる。
してみれば、訂正事項1の「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチニンの総量を測定するステップと、」と記載されているのを、「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップと、」に訂正することは、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。

2 新規事項の有無について
特許法第126条第5項中の「外国語書面」を、特許法第184条の19によって読み替える特許法第184条の4第1項の「国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」の翻訳文(以下「願書に最初に添付した明細書等」という。)には、
「【0036】
D3-クレアチントレーサー希釈法を用いたヒト被検者における全身骨格筋量の定量
ヒト被検者に、30、60または100mgのD3-クレアチン一水和物を単回経口投与する。その後、D3クレアチン一水和物の投与から1、2、3、4、5または6日後に尿試料を採取する。
【0037】
各採取間隔で行われる尿の薬物動態分析には、IRMSによるMPE率の定量、LCMSによる総クレアチンおよび総クレアチニンに対する重水素標識クレアチンおよび重水素標識クレアチニンの比率、総クレアチニン、クレアチン貯蔵量、および尿中に排出された重水素標識クレアチン量(%)を含んでもよい。
【0038】
定常状態の濃縮度(MPE)は、視覚的に、および濃縮度(MPE)の線形回帰対時間(各尿採取間隔の中間)の傾きの推定値から算定可能である。混合効果ANOVAモデルを、固定効果として時間(連続変数)に当てはめ、ランダム効果として被検者に当てはめることができる。時間効果の傾きの係数を用いて定常状態を求めることができる。傾きに対する90%信頼区間を求めることができる。
【0039】
クレアチン貯蔵量は、定常状態の間の各採取間隔において、定常状態の濃縮度に達した時に、下記の式に従って概算することができる。
【0040】
[D3Crの投与量(g)-尿中D3Cr(0-t)の総量(g)]/濃縮率(t)
式中、tは、定常状態の間の尿の採取間隔である。
【0041】
筋肉量は、クレアチン濃度が全筋湿重量(WWM)あたり4.3g/kgであると想定してクレアチン貯蔵量から概算可能である(Kreisberg(1970)J Appl Physiol 28:264-7)。
【0042】
筋肉量=クレアチン貯蔵量/筋肉中のCr濃度 クレアチン貯蔵量は、総尿クレアチニン(モル/日)をK(1/日)で割ることによって概算することもできる。
【0043】
排出速度定数(K)は、各採取間隔の経過時間(採尿間隔の中間)に対する採尿間隔中のD3-クレアチン量の対数における下降線の傾きを概算する排出率法を用いて求めることが可能である。24時間の尿中クレアチン排出量からクレアチン貯蔵量を算出する上で、代謝回転の概算の文献値を用いるよりも、このKの概算の方が有用である。
【0044】
臨床被検体の尿試料中のD3-クレアチンおよびD3-クレアチニンの定量分析方法 D3-クレアチン一水和物およびD3クレアチニンの参照標準物質をC/D/N Isotopes, Montreal Canadaから購入した。」(下線は当審において付与した。)
と記載されており、これらの記載から、D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量が測定できることが当業者において理解できる。
してみれば、「(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップ」に訂正することは、願書に最初に添付した明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件に適合するものである。

3 特許請求の範囲の実質拡張又は変更について
上記1で述べたとおり、ステップ(d)の式(1)である
「全身クレアチン貯蔵量
=[D_(3)-クレアチン投与量(g)-尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)]/上記(b)で求めた濃縮率(t)」を用いて被検体の全身クレアチン貯蔵量を決定するためには、(c)ステップとして、「D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップ」が技術的に整合するものとして把握され、そして、本件特許明細書(上記2で摘記した願書に最初に添付した明細書等と記載は同じである。)の記載からも「[D3Crの投与量(g)-尿中D3Cr(0-t)の総量(g)]/濃縮率(t)」(ステップ(d)の式(1)と同じである。)を計算するためには「D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップ」が必要であることが理解される。
してみれば、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、「D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップ」である正しい記載が自明な事項として定まるといえるから、この誤りを正しい記載にする訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえず、特許法第126条第6項に規定する要件に適合するものである。

4 独立特許要件について
上記訂正事項1は、上記1で述べたとおり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明、すなわち訂正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないところ、誤記が訂正された請求項1に係る発明について、特許査定に至るまでに請求項1について通知された拒絶理由が該当することもなく、そして、誤記が訂正された請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとする他の理由も発見しない。
したがって、上記訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の全身骨格筋量の定量方法であって、
(a)D_(3)-クレアチンが被検体に経口投与され、D_(3)-クレアチンが全身骨格筋クレアチンプールに希釈され、全身骨格筋クレアチンプールの同位体が定常状態となった被検体から取得された、クレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを含有する生体試料である尿試料中のクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを、HPLC/MS、HPLC/MS/MS、LCMS、LC/MS/MS、および同位体比質量分析(IRMS)からなる群から選択される方法によって検出するステップと、
(b)時間tにおけるクレアチニンおよびD_(3)-クレアチニンを測定することによって上記生体試料中のD_(3)-クレアチニンの濃縮率を測定するステップと、
(c)D_(3)-クレアチンの投与から時間tまでの尿中D_(3)-クレアチンの総量を測定するステップと、
(d)上記被検体の全身クレアチン貯蔵量を、下記の式(1)を用いて決定するステップと、
式(1):
全身クレアチン貯蔵量
=[D_(3)-クレアチン投与量(g)-尿中D_(3)-クレアチン総量(0-t)(g)]/上記(b)で求めた濃縮率(t)
(e)下記の式(2)に基づいて、上記被検体の全身骨格筋量を定量するステップ、
式(2):
全身骨格筋量=(全身クレアチン貯蔵量)/(骨格筋のクレアチン濃度)
とを含む方法。
【請求項2】
上記被検体に投与されたD_(3)-クレアチンが、5?250mgのD_(3)-クレアチン、その塩、またはこれらの水和物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記被検体に投与されたD_(3)-クレアチンが、D_(3)-クレアチン水和物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記被検体に投与されたD_(3)-クレアチンが、D_(3)-クレアチン一水和物であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記D_(3)-クレアチンの投与から少なくとも24時間経過後に取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記D_(3)-クレアチンの投与から少なくとも36時間経過後に取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記D_(3)-クレアチンの投与から少なくとも48時間経過後に取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記D_(3)-クレアチンの投与から少なくとも60時間経過後に取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記D_(3)-クレアチンの投与から少なくとも72時間経過後に取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
尿中への流出が最小限にとどまるように被検体にD_(3)-クレアチンが投与され、投与されたD_(3)-クレアチンの99%以上が、全身骨格筋クレアチンプールに希釈され、全身骨格筋クレアチンプールの同位体が定常状態となった被検体から取得された生体試料を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
骨格筋中のクレアチン濃度を、4.3g/kgとすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-03-03 
結審通知日 2021-03-05 
審決日 2021-03-17 
出願番号 特願2014-546045(P2014-546045)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 裕美  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 渡戸 正義
三崎 仁
登録日 2018-02-23 
登録番号 特許第6294233号(P6294233)
発明の名称 全身骨格筋量の定量方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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