• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  E04H
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  E04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E04H
管理番号 1374910
異議申立番号 異議2017-700814  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-30 
確定日 2021-04-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6093811号「機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御方法、及び機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」に関する特許異議の申立てについてされた令和1年7月31日付け決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消しの判決(令和元年(行ケ)第10117号、令和2年12月3日判決言渡)があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第6093811号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-15〕、〔16-21〕について訂正することを認める。 特許第6093811号の請求項1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21に係る特許を維持する。 特許第6093811号の請求項4、12及び18に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6093811号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし21に係る特許についての出願は、平成25年8月30日に出願された特願2013-179294号の一部を、平成27年7月13日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成29年 8月30日:特許異議申立人藤本美都起(以下「申立人A」
という。)による請求項1?4、6、10?1
2、14、16?18、20に係る特許に対す
る特許異議申立書(以下「申立書A」という。
)の提出
平成29年 8月31日:特許異議申立人山本夏子(以下「申立人B」と
いう。)による請求項1?21に係る特許に対
する特許異議申立書(以下「申立書B」という
。)の提出
平成29年 9月 1日:特許異議申立人田代吾郎(以下「申立人C」と
いう。)による請求項1?21に係る特許に対
する特許異議申立書(以下「申立書C」という
。)の提出
平成29年10月27日:取消理由通知書(同年11月1日発送)
平成29年12月27日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年 2月27日:申立人Aによる意見書の提出
平成30年 3月 2日:申立人B及びCによる意見書の提出
平成30年 5月18日:取消理由通知書<決定の予告>
(同年5月23日発送)
平成30年 7月23日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年10月 4日:申立人Aによる意見書の提出
平成30年10月 5日:申立人Cによる意見書の提出
平成30年10月 9日:申立人Bによる意見書の提出
平成30年12月26日:取消理由通知書<決定の予告>
(平成31年1月8日発送)
平成31年 3月11日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 4月24日:訂正拒絶理由通知(令和元年5月8日発送) 令和 元年 6月10日:特許権者による意見書の提出
令和 元年 7月31日:異議の決定(以下「一次決定」という。)
令和 元年 9月 6日:一次決定に対する訴えの提起
(令和元年(行ケ)第10117号)
令和 2年12月 3日:決定取消の判決の言渡
(主文「1 特許庁が異議2017-7008
14号事件について令和元年7月31日にし
た決定を取り消す。2 訴訟費用は被告の負
担とする。」)
令和 3年 2月19日:申立人Cによる意見書の提出
令和 3年 2月20日:申立人Bによる意見書の提出
令和 3年 2月22日:申立人Aによる意見書の提出

なお、特許法第120条の5第7項の規定により、平成29年12月27日付け訂正請求(以下、「一次訂正請求」という。)は、平成30年7月23日付け訂正請求がなされたことにより取り下げられたとみなされ、平成30年7月23日付け訂正請求(以下、「二次訂正請求」という。)は、平成31年3月11日付け訂正請求がなされたことにより取り下げられたとみなされる。


第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
平成31年3月11日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし9、10ないし15、16ないし21について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
なお、以下では、訂正請求書において、請求項1ないし9に係る訂正、請求項10ないし15に係る訂正、請求項16ないし21に係る訂正について、各々最初の訂正事項を「訂正事項1」としているのを区別するために、それぞれ「訂正事項1-1」、「訂正事項2-1」、「訂正事項3-1」と記す。他の訂正事項についても同様。
(1)請求項1ないし9に係る訂正
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1を、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段と、
前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。」と訂正する。
請求項1を引用する請求項2から請求項9についても同様に訂正する。

イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項3を、
「前記入力手段は、前記操作盤または該操作盤の近傍に設けられている請求項1または請求項2記載の機械式駐車装置。」と訂正する。

ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

エ 訂正事項1-4
特許請求の範囲の請求項5を、
「前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項1から請求項3の何れか1項記載の機械式駐車装置。」と訂正する。

オ 訂正事項1-5
特許請求の範囲の請求項6を、
「前記制御手段は、前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5記載の機械式駐車装置。」と訂正する。

カ 訂正事項1-6
特許請求の範囲の請求項7を、
「載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段へ前記安全確認の終了が入力されてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了を解除する請求項1から請求項
3の何れか1項、請求項5、または請求項6記載の機械式駐車装置。」と訂正する。

キ 訂正事項1-7
特許請求の範囲の請求項8を、
「前記乗降室内を撮像する複数のカメラと、
前記入力手段の近辺に配置され、前記カメラで撮像された画像を表示するモニタと
を備える請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5から請求項7の何れか1項記載の機械式駐車装置。」と訂正する。

ク 訂正事項1-8
明細書の【0009】の記載を、
「本発明の第一態様に係る機械式駐車装置は、格納庫に搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段と、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段と、人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。」と訂正する。

ケ 訂正事項1-9
明細書の【0019】を削除する。

(2)請求項10ないし15に係る訂正
ア 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項10を、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置された複数の入力手段、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、
前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する第2工程と、
を含み、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置の制御方法。」と訂正する。

イ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項12を削除する。

ウ 訂正事項2-3
特許請求の範囲の請求項13を、
「前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項10または請求項11記載の機械式駐車装置の制御方法。」と訂正する。

エ 訂正事項2-4
特許請求の範囲の請求項14を、
「前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項10、請求項11、または請求項13記載の機械式駐車装置の制御方法。」と訂正する。

オ 訂正事項2-5
特許請求の範囲の請求項15を、
「載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項10、請求項11、請求項13または請求項14記載の機械式駐車装置の制御方法。」と訂正する。

カ 訂正事項2-6
明細書の【0031】における、
「本発明の第二態様に係る機械式駐車装置の制御方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記車両の搬送を実行する第2工程と、を含み、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。」との記載を、
「本発明の第二態様に係る機械式駐車装置の制御方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置された複数の入力手段、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する第2工程と、を含み、いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力主段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。」と訂正する。

(3)請求項16ないし21に係る訂正
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項16を、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行し、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。」と訂正する。

イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項18を削除する。

ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項19を、
「前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項16または請求項17記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。」と訂正する。

エ 訂正事項3-4
特許請求の範囲の請求項20を、
「前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項16、請求項17、または請求項19記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。」と訂正する。

オ 訂正事項3-5
特許請求の範囲の請求項21を、
「載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項16、請求項17、請求項19または請求項20記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。」と訂正する。

カ 訂正事項3-6
明細書の【0031】における、
「本発明の第三態様に係る機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記車両の搬送を実行し、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる。」との記載を、
「本発明の第三態様に係る機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行し、いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、一群の請求項、及び独立特許要件について
(1)請求項1ないし9に係る訂正について
ア 訂正事項1-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に係る発明について、入力手段の配置位置を限定するとともに、乗降室の外側に設けられた操作盤に配置される許可入力手段をさらに備え、車両の搬送を実行する条件、及び前記入力手段への安全確認の終了の入力を解除する条件をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1-1は、訂正前の請求項1に係る発明の構成について限定するものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の有無について
a 「入力手段」の限定について
訂正事項1-1のうち、「入力手段」を「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」された「複数の」ものとする点について、判断する。

(a)願書に添付された明細書の記載
願書に添付された明細書には、次の記載がある。
i 課題を解決するための手段
「【0009】
本発明の第一態様に係る機械式駐車装置は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、人による安全確認の終了が入力される入力手段と、人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。
【0010】
本構成に係る機械式駐車装置は、格納庫へ搬送される車両が載置され、車両の運転者が車両に乗降可能な乗降室が設けられる。
【0011】
例えば、乗降室の外側に設けられる操作盤又は該操作盤の近傍には、人による安全確認の終了が入力される入力手段が設けられる。入力手段は、例えば人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。安全確認は、人の有無やパレットの搬送の障害になる物の有無等の確認である。すなわち、車両から降りた運転者が、安全確認者として乗降室内の外側に設けられる操作盤又は該操作盤の近傍へ移動する。そして、安全確認者が、乗降室内の安全確認を実施した後に、入力手段への入力(例えば押ボタンの押圧)を行う。これにより、安全確認終了という安全確認の実施状態が入力手段に入力されることとなる。」

ii 第1実施形態
「【0042】
乗降室20内には、安全確認の実施位置の近辺に配置され、人による安全確認の実施状態が入力される入力手段である確認ボタン34A,34Bが備えられる。確認ボタン34A,34Bは、人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。
本第1実施形態では、確認ボタン34A,34Bは、パレット16(車両12)を挟んだ位置、図2の例では左右の壁面35に備えられる。より具体的には、図2の例では、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられる。
なお、以下の説明において、各確認ボタン34を区別する場合は、符号の末尾にA,Bの何れかを付し、各確認ボタン34を区別しない場合は、A,Bを省略する。
・・・(中略)・・・
【0055】
乗降室20内の安全確認は、運転者が乗降室20内に居るものの(時には同乗者が車両内に居残る場合がある)確実な検知方法がない。このため、乗降室20内の安全確認は、人による確認が最も効果的な方法であると考えられる。本第1実施形態によれば、確認ボタン34が安全確認の実施位置の近辺に配置されるため、安全確認者は確認ボタン34の配置位置へ移動しなければならない。安全確認者は、確認ボタン34までの移動を行う過程において必然的に周囲を目視するので、それにより安全確認が行われることとなる。なお、安全確認者は、車両12の運転者に限らず、機械式駐車装置10の管理者等でもよい。
・・・(中略)・・・
【0064】
上述したように確認ボタン34A,34Bは、パレット16を挟んで配置されている。従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、安全確認者である運転者が車両12の片側だけでなく、反対側の安全確認も行うこととなるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。」

iii 第3実施形態
「【0087】
本第3実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34の近辺に配置され、車両12に対して反対側の安全確認を可能とする安全確認手段として、モニタ80A,80B及びカメラ82A,82Bを備える。確認ボタン34Aの近辺に配置されたモニタ80Aは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Aで撮像された画像を表示する。一方、確認ボタン34Bの近辺に配置されたモニタ80Bは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Bで撮像された画像を表示する。
【0088】
従って、本第3実施形態に係る機械式駐車装置10によれば、安全確認者が車両12に対して反対側へ移動しなくても、反対側の安全確認が可能となる。
例えば、安全確認者である運転者が車いすで移動する場合のように、乗降室20内の移動に困難を伴う場合がある。このような場合には、安全確認者が、一方のモニタ80Aの画像を目視し、確認ボタン34に入力を行うだけで、乗降室20内の安全確認が簡易にかつより広い範囲で行われる。
【0089】
また、安全確認手段は、車両12に対して反対側を映すことが可能な鏡であってもよい。なお、本第3実施形態では、図7に示されるようにカメラ82A、82Bを車両12の両側に配置したが、カメラ82A、82Bは、安全確認者の目視できない部分を確認できる位置に設けることが好ましい。
【0090】
また、本第3実施形態では、確認ボタン34とモニタ80を乗降室20内に設けた場合を例示したが、確認ボタン34とモニタ80が操作盤22に組み入れられたり、操作盤22の近傍に設置されてもよいし、さらに確認ボタン34とモニタ80が乗降室20の内、外に複数設けられてもよい。」

(b)新規事項か否かの判断
上記(a)のii及びiiiに摘記した、段落【0064】及び【0087】の記載から、願書に添付した明細書においては、第1実施形態及び第3実施形態ともに、車両の反対側については、直接目視して安全確認を行うことが難しいことを前提としていると、理解することができる。そして、上記(a)のiiに摘記した段落【0055】及び【0064】の記載より、願書に添付した明細書には、車両の運転者が片側だけでなく車両の反対側についてもそれぞれ安全確認を実施することとし、各安全確認実施位置の近辺にそれぞれ入力手段である確認ボタン34を配置し、確認ボタン34を複数設けることが、記載されている。
したがって、訂正事項1-1のうち、「入力手段」を「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」された「複数の」ものとする点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(c)平成31年4月24日付け訂正拒絶理由通知に記載した訂正拒絶理由について
i 平成31年4月24日付け訂正拒絶理由の概要
平成31年4月24日付け訂正拒絶理由通知では、次の理由から、訂正事項1-1における「入力手段」の配置は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではないと指摘した。
(i)願書に添付した明細書において、安全確認者が直接目視により安全確認を行う実施形態では、第1実施形態を含め、確認ボタン34がいずれも乗降室内に設けられている。
(ii)願書に添付した明細書において、確認ボタン34を乗降室外に配置することが直接記載されているのは、カメラとモニタとを用いる第3実施形態のみである。
(iii)乗降室外から直接の目視により乗降室内の安全確認を行うことは、困難であることが技術常識であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面において、カメラとモニタとを用いることなく直接の目視により安全確認を行う場合において、確認ボタンを乗降室外に配置することが、記載あるいは示唆されていたということはできない。
(iv)訂正事項1-1における「入力手段」の配置に係る特定は、乗降室内であることを特定しておらず、カメラとモニタとを用いることなく直接の目視により安全確認を実施する場合に「入力手段」が乗降室外に配置される態様を含むから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えるものである。

ii 上記訂正拒絶理由についての判断
上記訂正拒絶理由と同旨の理由により、訂正事項1-1を新規事項の追加に当たると判断した一次決定は、前記判決において、上記理由には理由がないと判示されており、当審もこれに拘束される(行政事件訴訟法第33条第1項)。
そして、願書に添付した明細書においては、上記(a)のii及びiiiに摘記した段落【0064】及び【0087】の記載に示されるとおり、車両の反対側については直接目視して安全確認を行うことが難しいことを前提として、第1実施形態においては車両の両側に確認ボタンを配置し、第3実施形態においては車両の反対側の安全確認を補助するために、カメラとモニタとを採用しているのであり、安全確認をより確実に行うことが本発明が目的・意義としているところであると理解できる。その一方、願書に添付した明細書において、乗降室の外部からの安全確認が特段困難となることは記載されていないし、上記(a)のi及びiiiに摘記した段落【0011】及び【0090】には、入力手段である確認ボタンを乗降室外に設けることが示されているところ、その際に乗降室外からは直接の視認による安全確認が妨げられるような事情は、記載も示唆もされていない。そうすると、発明の目的・意義という観点からみて、安全確認実施位置や安全確認終了入力手段は、乗降室内の安全等を確認できる位置にあれば、安全確認をより確実に行うという発明の目的・意義は達成できるはずであり、その位置を乗降室の内又は外に限定すべき理由はないから、訂正事項1-1に直接の目視により安全確認を実施する場合に「入力手段」が乗降室外に配置される態様が含まれるからといって、新規事項の追加に当たるということはできない。

(d)「入力手段」の配置についての小括
したがって、訂正事項1-1における「入力手段」の配置の特定は、上記(b)に判断したとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

b 「許可入力手段」の追加、及び「車両の搬送を実行」する制御の限定について
訂正事項1-1のうち、下記(a)及び(b)の点について、判断する。
(a)「前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」を追加した点
(b)「制御手段」が「車両の搬送を実行」する制御について、「前記許可入力手段への操作が行われた後に」という特定を追加した点

上記(a)及び(b)で追加された構成は、「操作盤」が「乗降室の外側」に設けられることについては願書に添付された特許請求の範囲の請求項3に記載されており、その余の事項については願書に添付された特許請求の範囲の請求項4に記載されていたものである。
したがって、訂正事項1-1において、上記(a)及び(b)の構成を追加した点は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

c 「入力手段」への「安全確認の終了の入力」を「解除」する制御の特定について
訂正事項1-1のうち、「制御手段」が「前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」制御について、「いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」と特定した点について、判断する。
願書に添付した図面の【図4】には、「一つめの確認ボタンが押圧?」(S100)が「YES」となった後に、「入退室検知センサが入室を検知?」(S101、S103、S107)が「YES」となると「確認ボタンへの入力を解除」(S112、S114)する処理フローを複数備えたうえで、「最終確認ボタンが押圧?」(S108)が「YES」となると「動作開始」(S110)に至るフロー図が示されている。また、願書に添付した明細書の段落【0026】には、「安全確認者が許可入力手段への操作を行う前に他者が乗降室へ入室した場合、入力手段への入力が解除される」と記載されている。これらの記載から、訂正事項1-1において、「制御手段」が「前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」制御について、「いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」とする点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

d 申立人の意見書による主張について
申立人Aは、令和3年2月22日付け意見書において、訂正事項1-1における上記b(a)及び(b)の構成は、入退室検知手段によって乗降室からの人の退出を検知することを、車両の搬送を実行する条件として特定していないところ、当初明細書等には(当審注;「当初」は「願書に添付した」の誤記と認める)、入退室検知手段による退室の検知がされない限り車両の搬送が実行されない制御のみが記載されているから、訂正事項1-1は新規事項の追加である旨を主張している(同意見書第5頁下から4行-第10頁第9行)。
しかしながら、訂正事項1-1における上記b(a)及び(b)の構成は、上記bに指摘したとおり、願書に添付した特許請求の範囲の請求項3及び4に記載されていた構成であり、同請求項3及び4においても、「入退出検知手段」が退室を検知することは、車両の搬送を実行する条件とされていなかったのであり、当該b(a)及び(b)の構成を訂正前の請求項3及び4から訂正後の請求項1に移すことによって、訂正事項1-1における上記b(a)及び(b)の構成が、願書に添付された特許請求の範囲に記載されていた事項の範囲を超えることとなる事情はない。
したがって、上記申立人Aの主張について検討しても、訂正事項1-1が新規事項を追加するものであるか否かについて、上記aないしcの判断を変更すべき事情は見いだせない。

e 訂正事項1-1に関する新規事項の有無の判断の小括
以上のとおり、訂正事項1-1による請求項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

イ 訂正事項1-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1-2は、訂正前の請求項3に係る発明について、操作盤が乗降室の外側に設けられる構成が、訂正事項1-1により訂正後の請求項1において特定されたことから、当該構成について重複する記載を整理するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1-2は、訂正前の請求項3に係る発明について内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の有無について
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1-2は、訂正前の請求項3に係る発明について内容を変更するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。

ウ 訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項4を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

エ 訂正事項1-4ないし1-7について
訂正事項1-4ないし1-7は、訂正前の請求項5ないし8に係る発明について、引用する請求項の選択肢のうち、訂正事項1-3により削除された請求項4を引用する選択肢を減じるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-4ないし1-7は、訂正前の請求項5ないし8に係る発明から、引用する請求項の選択肢を減じるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

オ 訂正事項1-8について
訂正事項1-8は、明細書の段落【0009】の記載を、訂正事項1-1により訂正された請求項1の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1-8は、訂正事項1-1について上記ア(イ)及び(ウ)で指摘したと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

カ 訂正事項1-9について
訂正事項1-9は、明細書の段落【0019】を削除することで、訂正事項1-3により訂正前の請求項4が削除された特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1-9は、明細書の段落【0019】を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

(2)請求項10ないし15に係る訂正について
ア 訂正事項2-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2-1は、訂正前の請求項10に係る発明について、入力手段の配置位置を限定するとともに、乗降室の外側に設けられた操作盤に配置される許可入力手段をさらに備え、車両の搬送を実行する条件、及び前記入力手段への安全確認の終了の入力を解除する条件をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項2-1は、訂正前の請求項10に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の有無について
訂正事項2-1の訂正内容は、訂正事項1-1と実質的に同様であり、上記(1)ア(ウ)で訂正事項1-1について判断したと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

イ 訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、訂正前の請求項12を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前の請求項12を削除する訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

ウ 訂正事項2-3ないし2-5について
訂正事項2-3ないし2-5は、訂正前の請求項13ないし15に係る発明について、引用する請求項の選択肢のうち、訂正事項2-2により削除された請求項12を引用する選択肢を減じるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2-3ないし2-5は、訂正前の請求項13ないし15に係る発明から引用する請求項の選択肢を減じるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

エ 訂正事項2-6について
訂正事項2-6は、明細書の段落【0031】の記載のうち、「本発明の第二態様に係る機械式駐車装置の制御方法」に関する記載を、訂正事項2-1により訂正された請求項10の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2-6は、訂正事項2-1について上記ア(イ)及び(ウ)で指摘したと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3)請求項16ないし21に係る訂正について
ア 訂正事項3-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3-1は、訂正前の請求項16に係る発明について、入力手段の配置位置を限定するとともに、乗降室の外側に設けられた操作盤に配置される許可入力手段をさらに備え、車両の搬送を実行する条件、及び前記入力手段への安全確認の終了の入力を解除する条件をさらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項3-1は、訂正前の請求項16に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)新規事項の有無について
訂正事項3-1の訂正内容は、訂正前後の請求項16に係る発明が「機械式駐車装置の安全機能を設ける方法」の発明であることから、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である請求項1についての訂正事項1-1と、実質的に同じ内容である。
そして、訂正事項3-1は、上記(1)ア(ウ)で訂正事項1-1について判断したと同様に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

イ 訂正事項3-2について
訂正事項3-2は、訂正前の請求項18を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-2は、訂正前の請求項18を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

ウ 訂正事項3-3ないし3-5について
訂正事項3-3ないし3-5は、訂正前の請求項19ないし21に係る発明について、引用する請求項の選択肢のうち、訂正事項3-2により削除された請求項18を引用する選択肢を減じるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-3ないし3-5は、訂正前の請求項19ないし21に係る発明から引用する請求項の選択肢を減じるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが、明らかである。

エ 訂正事項3-6について
訂正事項3-6は、明細書の段落【0031】の記載のうち、「本発明の第三態様に係る機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」に関する記載を、訂正事項3-1により訂正された請求項16の記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項3-6は、訂正事項3-1について上記ア(イ)及び(ウ)で指摘したと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4)一群の請求項について
ア 訂正事項1-1に係る訂正前の請求項1ないし9について、請求項2ないし9はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、当該訂正事項1-1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9は、一群の請求項である。

イ 訂正事項2-1に係る訂正前の請求項10ないし15について、請求項11ないし15はそれぞれ請求項10を直接又は間接的に引用しているものであって、当該訂正事項2-1によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項10ないし15に対応する訂正後の請求項10ないし15は、一群の請求項である。

ウ 訂正事項3-1に係る訂正前の請求項16ないし21について、請求項17ないし21はそれぞれ請求項16を直接又は間接的に引用しているものであって、当該訂正事項3-1によって記載が訂正される請求項16に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項16ないし21に対応する訂正後の請求項16ないし21は、一群の請求項である。

(5)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし21について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-1、訂正事項1-3ないし1-7、訂正事項2-1ないし2-5、及び訂正事項3-1ないし3-5において、特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1ないし21に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1-1ないし3-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-15〕、〔16-21〕について、本件訂正を全て認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし21に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等といい、請求項1ないし21に係る発明をまとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段と、
前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。

【請求項2】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項1記載の機械式駐車装置。

【請求項3】
前記入力手段は、前記操作盤または該操作盤の近傍に設けられている請求項1または請求項2記載の機械式駐車装置。

【請求項4】
(削除)

【請求項5】
前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項1から請求項3の何れか1項記載の機械式駐車装置。

【請求項6】
前記制御手段は、前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5記載の機械式駐車装置。

【請求項7】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段へ前記安全確認の終了が入力されてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了を解除する請求項1から請求項3の何れか1項、請求項5、または請求項6記載の機械式駐車装置。

【請求項8】
前記乗降室内を撮像する複数のカメラと、
前記入力手段の近辺に配置され、前記カメラで撮像された画像を表示するモニタと
を備える請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5から請求項7の何れか1項記載の機械式駐車装置。

【請求項9】
前記カメラは、前記車両を挟んで複数配置される請求項8記載の機械式駐車装置。

【請求項10】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置された複数の入力手段、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、
前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する第2工程と、
を含み、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置の制御方法。

【請求項11】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項10記載の機械式駐車装置の制御方法。

【請求項12】
(削除)

【請求項13】
前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項10または請求項11記載の機械式駐車装置の制御方法。

【請求項14】
前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項10、請求項11、または請求項13記載の機械式駐車装置の制御方法。

【請求項15】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項10、請求項11、請求項13または請求項14記載の機械式駐車装置の制御方法。

【請求項16】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行し、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。

【請求項17】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項16記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。

【請求項18】
(削除)

【請求項19】
前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項16または請求項17記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。

【請求項20】
前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項16、請求項17、または請求項19記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。

【請求項21】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項16、請求項17、請求項19または請求項20記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。」


第4 証拠一覧、異議申立理由の概要、取消理由の概要、及び証拠の記載
1 証拠一覧
本件において、申立人が提出した証拠は、整理すると以下のとおりである。

(1)申立書A,申立書B、または申立書Cに添付されたもの
・刊行物1:
特開2002-174048号公報
(申立書Aの甲第1号証)
(※申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料8として添付されたもの)

・刊行物2:
特開2010-138542号公報
(申立書Aの甲第2号証)

・刊行物3:
実公昭49-3738号公報
(申立書Bの甲第1号証、申立書Cの甲第2号証)

・刊行物4:
特開昭53-45883号公報
(申立書Bの甲第2号証、申立書Cの甲第1号証)

・刊行物5:
特許第4750818号公報
(申立書Bの甲第3号証、申立書Cの甲第6号証)

・刊行物6:
特開2005-68640号公報
(申立書Bの甲第4号証、申立書Cの甲第4号証)

・刊行物7:
特公平3-44607号公報
(申立書Bの甲第5号証、申立書Cの甲第7号証)

・刊行物8:
実願昭62-1860号(実開昭63-111562号)のマイクロフィルム
(申立書Cの甲第3号証)

・刊行物9:
特開2006-307495号公報
(申立書Cの甲第5号証)

(2)申立人による意見書に添付され、かつ、平成30年12月26日付け取消理由通知(決定の予告)で引用されたもの
・刊行物10:
特開2002-352015号公報
(申立人Aが提出した平成30年2月27日付け意見書に甲第3号証として添付され、申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第12号証として添付されたもの)

(3)上記(1)及び(2)の刊行物以外の刊行物であり、本件訂正に対する申立人による意見書に添付されたもの
・刊行物11:
特開2003-97076号公報
(申立人Aが提出した令和3年2月22日付け意見書に甲第5号証として添付され、申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料2として添付され、申立人Cが提出した令和3年2月19日付け意見書に甲第11号証として添付されたもの;申立人Bが提出した平成30年10月9日付け意見書にも、参考資料3として添付されていた)

・刊行物12:
「機械式立体駐車場の安全対策の強化について」 公益社団法人 立体駐車場工業会 平成24年8月23日発行
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料1として添付されたもの)

・刊行物13:
特開平8-93255号公報
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料3として添付されたもの)

・刊行物14:
特開平2006-77425号公報
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料4として添付されたもの)

・刊行物15:
特開平8-303042号公報
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料5として添付されたもの)

・刊行物16:
特開2009-91799号公報
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料6として添付され、申立人Cが提出した令和3年2月19日付け意見書に甲第9号証として添付されたもの)

・刊行物17:
特許第2792408号公報
(申立人Bが提出した令和3年2月20日付け意見書に参考資料7として添付されたもの)

・刊行物18:
特開2004-92347号公報
(申立人Cが提出した令和3年2月19日付け意見書に甲第10号証として添付されたもの;申立人Bが提出した平成30年10月9日付け意見書にも参考資料2として添付され、申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書にも甲第9号証として添付されていた)

・刊行物19:
JIS規格 JIS B 9705-1(2011-07-25 改正 発行) JISB9705-12011 機械類の安全性-制御システムの安全関連部-第1部:設計のための一般原則
(申立人Cが提出した令和3年2月19日付け意見書に甲第12号証として添付されたもの)

(4)上記(1)ないし(3)の刊行物以外の刊行物
・刊行物20:
機械式駐車場技術基準(総合編) 平成8年4月1日 社団法人 立体駐車場工業会 第11頁
(申立人Bが提出した平成30年3月2日付け意見書及び平成30年10月9日付け意見書に参考資料1として添付されたもの)

・刊行物21:
機械式駐車場技術基準(1992年版) 平成4年10月1日 社団法人 立体駐車場工業会 第40-41頁
(申立人Cが提出した平成30年3月2日付け意見書に参考資料1として添付され、申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第10号証として添付されたもの)

・刊行物22:
特開平7-62918号公報
(申立人Aが提出した平成30年10月4日付け意見書に甲第4号証として添付されたもの)(※刊行物17の公開公報)

・刊行物23:
機械式駐車場技術基準・同解説(2004年版) 平成16年3月31日 社団法人 立体駐車場工業会 第13-16頁
(申立人Bが提出した平成30年10月9日付け意見書に参考資料4として添付されたもの)

・刊行物24:
特開2004-157828号公報
(申立人Bが提出した平成30年10月9日付け意見書に参考資料5として添付され、申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第11号証として添付されたもの)

・刊行物25:
特開平7-249196号公報
(申立人Bが提出した平成30年10月9日付け意見書に参考資料6として添付されたもの)

・刊行物26:
実願平3-102332号(実開平5-42542号)のCD-ROM
(申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第13号証として添付されたもの)

・刊行物27:
「立体駐車場の事故防止 画像処理技術を応用 新明和工業新システムを開発」 日経産業新聞 昭和62年1月30日 第12面
(申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第14号証として添付されたもの)

・刊行物28:
「立体駐車場も無人化時代 新明和工業が安全システム」 日刊工業新聞 昭和62年1月30日 第9面
(申立人Cが提出した平成30年10月5日付け意見書に甲第15号証として添付されたもの)

2 異議申立理由の概要、及び取消理由の概要
(1)特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
ア 刊行物1を主たる引用例とした、新規性及び進歩性(申立書A)
本件特許発明1-4、6、10-12、14、16-18、20は、刊行物1に記載された発明であるか、または、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明1-4、6、10-12、14、16-18、20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 刊行物3又は4を主たる引用例とした、新規性及び進歩性(申立書B)
本件特許発明1ないし21は、刊行物3または刊行物4に記載された発明か、または、刊行物3ないし刊行物7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明1ないし21に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

ウ 刊行物3、4、6又は8を主たる引用例とした、新規性及び進歩性(申立書C)
本件特許発明1ないし21は、刊行物3、刊行物4、刊行物6または刊行物8に記載された発明であるか、または、刊行物3ないし刊行物9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許発明1ないし21に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

エ サポート要件(申立書C)
本件特許発明1、10、16は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない。
したがって、本件特許発明1、10及び16に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

明確性要件(申立書C)
本件特許発明10は、明確ではなく、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない。
したがって、本件特許発明10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)平成29年10月27日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成29年10月27日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は、上記(1)特許異議申立理由の概要と同様である。

(3)平成30年5月18日付け取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の概要
平成30年5月18日付け取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
・刊行物1、3、4、6または8を主たる引用例とした、新規性及び進歩性
一次訂正請求による訂正後の本件発明1ないし21は、刊行物1、刊行物3、刊行物4、刊行物6または刊行物8に記載された発明であるか、もしくは刊行物1ないし刊行物8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし21に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、一次訂正請求による訂正後の本件発明1ないし21に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の概要
平成30年12月26日受け取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由の概要は、次のとおりのものである。
ア 刊行物1、3、4、6または8を主たる引用例とした、進歩性
二次訂正請求による訂正後の本件発明8及び9に係る発明は、刊行物1、刊行物3、刊行物4、刊行物6または刊行物8に記載された発明及び、刊行物7及び刊行物10に記載された周知または公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明8及び9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、二次訂正請求による訂正後の本件発明8及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

明確性要件
二次訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項3ないし7の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、二次訂正請求による訂正後の本件発明3ないし7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠の記載
上記1の証拠のうち、特許異議申立の理由及び/又は平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>における証拠とされた刊行物1ないし10、並びに、本件訂正に対する意見書において申立人A、申立人Bまたは申立人Cが参照する刊行物11ないし19に記載される事項は、次のとおりである。

(1)刊行物1(特開2002-174048号公報)
刊行物1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同様。)

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械式駐車装置に係わり、更に詳しくは、機械式駐車装置を利用者が直接操作するための対話式操作方法と装置に関する。」

イ 「【0006】本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、大規模な機械式駐車装置であっても、利用者自身が忘れ物や同伴者のバースからの退出を確認して、車及び人の安全を確保し、安全かつ確実に駐車装置を自動運転することができ、これにより誘導や安全確保に必要なオペレータ数を削減もしくはゼロにすることができる機械式駐車装置の対話式操作方法と装置を提供することにある。」

ウ 「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付して使用し重複した説明を省略する。
【0013】図1は、本発明の方法を適用する平面往復方式駐車装置の部分構成図である。この平面往復方式駐車装置は、図に示すように、入庫バース2aに車1を乗り入れ、入庫リフト3aが下降して所定のフロアに停止し、平面往復台車4に車1を移載し、台車4が水平に走行して所定の格納棚5の前で停止し、格納棚に車1を移載して格納する方式の機械式駐車装置である。出庫の場合には、この逆に棚5から所定の車1を台車4上に移載し、水平に走行し、出庫リフト3bが上昇して出庫バース2bから車を出庫するようになっている。」

エ 「【0018】入庫バース16は、入庫リフト3aと入庫リフト扉15を介して連通しており、入庫リフト扉15が開いた状態で、入庫バース16の所定の定位置にある車両1を入庫リフト3a内に水平移動させ、車を図示しない駐車フロアに昇降させるようになっている。
【0019】対話式操作盤30が発券室20の内部に設置されている。発券室20は、駐車する車両1台の利用者(数人)とその荷物を収容できる広さに設定されている。また、発券室20の入口と出口にそれぞれ設けられた自動扉18,24が設けられている。すなわち、入庫バース16と発券室20との間は、入庫案内壁17で仕切られ、入庫バース自動扉18により人が行き来できるようになっている。また、発券室20と一般通路25との間に発券室自動扉24が設けられ、この扉から一般通路25へ出ることができるようになっている。
【0020】上記機械式駐車装置において、入庫バース16で降車した利用者(駐車場のユーザ)が、入庫バース自動扉18から発券室20に入り、対話式操作盤30から駐車券を取り出し、発券室自動扉24から一般通路25に出ることで駐車が完了する。その後、入庫バース16内では、駐車装置が自動運転され、所定の駐車棚に車両が駐車(格納)される。
【0021】本発明の対話式操作方法によれば、上記機械式駐車装置において、入口の自動扉18が解除されている間は、出口の自動扉24をロックし、対話式操作盤30の直接操作によりすべての利用者が発券室内にいることを確認した時に、入口の自動扉18をロックし同時に出口の自動扉24を解除する。
【0022】この方法により、発券室20が複数の利用者とその荷物を収容できる広さがあるので、対話式操作盤を直接操作する利用者は、他の利用者が荷物が発券室内にあるかどうかを一見して確認することができる。また、入口の自動扉18が解除されている間は、出口の自動扉24をロックしているので、対話式操作盤30による所定の操作なしに利用者の一部が発券室20を通過するのを防止できる。更に、対話式操作盤30の直接操作によりすべての利用者が発券室20内にいることを確認した時に、入口の自動扉18をロックするので、入庫バース16内に人が残っておらず、すべての利用者が発券室20内に移動した時に入口の自動扉18をロックし、入庫バース16に人が戻るのを防止し、安全に機械式駐車装置を作動させることができる。また、この入口のロックと同時に出口の自動扉24を解除するので、発券室20の密室化を防ぐことができる。」

オ 「【0024】図3は、本発明の対話式操作盤30の構成図である。図3(A)に示すように、対話式操作盤30には、利用者の近接を検出する対人センサー32と、音声案内をするスピーカ34と、駐車券を発行する駐車券発券器36と、タッチパネルを備えた対話式画面38とが取付けられている。対話式画面38は、図3(B)に示すように、画像と文字を表示する画面(CRT又は液晶画面)であり、タッチパネルを指で触れることにより、種々の選択(入力)が容易にできるようになっている。
【0025】この構成により、対人センサー32により利用者の接近を検出して音声案内と画面表示を開始し、対話式画面38のタッチパネルにより、利用者自身が安全を確認しながら機械式駐車装置を対話式に操作し、駐車券発券器36により駐車券を発行することができる。なお、本発明では、駐車券を発行するが、その代わりに指紋や声紋、クレジットカード、その他のものを用いてもよい。
【0026】図4は、本発明の機械式駐車装置の対話式操作方法のフロー図である。また、図5と図6は、本発明の対話式画面の具体例である。以下、図4?図6により、本発明の対話式操作方法を詳述する。
【0027】対人センサー32により利用者の近接を検出するとこの制御フローがスタートする。まず、ステップS1で操作案内を画面Aの表示及び音声案内(「いらっしゃいませ。画面の案内に従い、発券操作をして下さい。」)で行う。次いで、ステップS2でバース内の人の有無を自動検知し、人が居る場合には待機案内(ステップS3)を画面Bの表示及び音声案内(「しばらくお待ち下さい。」)で行う。自動検知により、バース内に人がいない状態になった後、ステップS4で忘れ物の有無を画像C1の表示及び音声案内(「車の中や車の周りに忘れ物はありませんか?」)で行い、「ありません」又は「あります」のタッチパネルでの選択を促す。
【0028】ステップS4で「あります」が選択されると、ステップ5で画面C2の表示及び音声案内(「忘れ物を取り出して下さい。」を行い、ステップS4に戻る。ステップS4で「ありません」が選択されると、ステップS6に移り、無人か否かを画面D1の表示及び音声案内(「車の中や車の周りに人がいませんか?」)を行い、「居ません」又は「居ます」のタッチパネルでの選択を促す。
【0029】ステップS6で「居ます」が選択されると、ステップ7で画面D2の表示及び音声案内(「退室を確認後、居ませんボタンを押して下さい。」)を行い、ステップS6に戻る。ステップS6で「居ません」が選択されると、S8に移り、待機案内を画面Bの表示及び音声案内(「しばらくお待ち下さい。」)で行い、入口の自動扉18をロックし同時に出口の自動扉24を解除する。従って、入口の自動扉18をロックする際には、利用者は、忘れ物とバース内の無人を確認していることになる。
【0030】次いで、ステップS9で発券案内を画面E1の表示及び音声案内(「駐車券発券ボタンを押して下さい。」)で行い、最後にステップ10で終了案内を画面Fの表示及び音声案内(「駐車券をお取り下さい。ロビーに退出して下さい。」)を行う。利用者が発券室20から退出し、出口の自動扉24が再ロックされて、一連の入庫操作が完了する。
【0031】更に、この対話式操作方法では、上記各ステップの操作中にもバース内の人の有無を自動検知し、人を検知した場合には、画面Gの表示と音声案内(「車の周りに人がいます。操作を最初からやり直して下さい。」)を行い、ステップS2に戻る。また、操作中に機械装置に異常が発生した場合には、画面E2の表示と音声案内(「係員が来ますので、そのままお待ち下さい。」)を行い、係員の処理を待つように促すようになっている。
【0032】なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0033】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、機械式駐車場の不特定利用者に対し、専任のオペレータなしに利用者自身に機械駐車の入庫スペース、周囲及び車の中の無人を確認させ、機械駐車を作動させ、駐車券を発行又は駐車場入口にて発券された駐車券に機械駐車格納番地を記録させる。従って、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)不特定利用者による機械駐車の操作が可能となる。
(2)時間貸し等不特定利用者を対象とした駐車場において、専任オペレータが削減できる。
【0034】すなわち、本発明の機械式駐車装置の対話式操作方法と装置は、大規模な機械式駐車装置であっても、利用者自身が忘れ物や同伴者のバースからの退出を確認して、車及び人の安全を確保し、安全かつ確実に駐車装置を自動運転することができ、これにより誘導や安全確保に必要なオペレータ数を削減もしくはゼロにすることができる、等の優れた効果を有する。」

カ 上記アないしオからみて、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認める。
「入庫バース16は、入庫リフト3aと入庫リフト扉15を介して連通しており、入庫リフト扉15が開いた状態で、入庫バース16の所定の定位置にある車両1を入庫リフト3a内に水平移動させ、車を駐車フロアに昇降させるようになっている、機械式駐車装置であって、
入庫バース16と、対話式操作盤30が内部に設置されている発券室20との間は、入庫案内壁17で仕切られ、入庫バース自動扉18により人が行き来できるようになっており、
発券室20は、駐車する車両1台の利用者(数人)とその荷物を収容できる広さに設定されており、対話式操作盤30を直接操作する利用者は、すべての利用者が発券室20内にいることを一見して確認することができ、
対話式操作盤30には、利用者の近接を検出する対人センサー32と、音声案内をするスピーカ34と、駐車券を発行する駐車券発券器36と、タッチパネルを備えた対話式画面38とが取付けられており、
対人センサー32により利用者の近接を検出すると、ステップS1で操作案内を画面Aの表示及び音声案内(「いらっしゃいませ。画面の案内に従い、発券操作をして下さい。」)で行い、
ステップS2でバース内の人の有無を自動検知し、人が居る場合には待機案内(ステップS3)を画面Bの表示及び音声案内(「しばらくお待ち下さい。」)で行い、自動検知により、バース内に人がいない状態になった後、ステップS4で忘れ物の有無を画像C1の表示及び音声案内(「車の中や車の周りに忘れ物はありませんか?」)で行い、「ありません」又は「あります」のタッチパネルでの選択を促し、
ステップS4で「あります」が選択されると、ステップ5で画面C2の表示及び音声案内(「忘れ物を取り出して下さい。」を行い、ステップS4に戻り、ステップS4で「ありません」が選択されると、ステップS6に移り、無人か否かを画面D1の表示及び音声案内(「車の中や車の周りに人がいませんか?」)を行い、「居ません」又は「居ます」のタッチパネルでの選択を促し、
ステップS6で「居ます」が選択されると、ステップ7で画面D2の表示及び音声案内(「退室を確認後、居ませんボタンを押して下さい。」)を行い、ステップS6に戻り、
ステップS6で「居ません」が選択されると、S8に移り、待機案内を画面Bの表示及び音声案内(「しばらくお待ち下さい。」)で行い、入口の自動扉18をロックし同時に出口の自動扉24を解除することにより、入口の自動扉18をロックする際には、利用者は、忘れ物とバース内の無人を確認していることになり、
次いで、ステップS9で発券案内を画面E1の表示及び音声案内(「駐車券発券ボタンを押して下さい。」)で行い、最後にステップ10で終了案内を画面Fの表示及び音声案内(「駐車券をお取り下さい。ロビーに退出して下さい。」)を行った後、利用者が発券室20から退出し、出口の自動扉24が再ロックされて、一連の入庫操作が完了するものであって、
更に、この対話式操作方法では、上記各ステップの操作中にもバース内の人の有無を自動検知し、人を検知した場合には、画面Gの表示と音声案内(「車の周りに人がいます。操作を最初からやり直して下さい。」)を行い、ステップS2に戻り、
その後、入庫バース16内では、駐車装置が自動運転され、所定の駐車棚に車両が駐車(格納)される、
機械式駐車装置。」

(2)刊行物2(特開2010-138542号公報)
刊行物2には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
入出庫口より乗入れ部へと進入した車両を搭載する搭載手段と、前記乗入れ部に進入した車両が所定範囲から車幅方向に食み出しているか否かを検知する検知手段とを備え、
前記検知手段は前記搭載手段の側方を通過する検査光を投光する光電センサと、前記光電センサより投光された光を受光又は反射する対向部材とを備え、
前記光電センサは前記乗入れ部の入出庫口側下部において幅方向の軸心周りに揺動可能に配置されて前記検査光を上下に走査可能としており、前記対向部材は前記乗入れ部の奥側上部において前記検査光の走査範囲に対応して配置されていることを特徴とする立体駐車場の監視システム。
【請求項2】
前記光電センサは投光素子及び受光素子を有し、前記対向部材は前記投光素子より投光された検査光を前記受光素子に反射する再帰反射面を有することを特徴とする請求項1に記載の立体駐車場の監視システム。
【請求項3】
前記乗入れ部のデッキには、前記搭載手段に対して入出庫口側に車輪を該搭載手段上に案内する入庫誘導ブロックが設けられており、
前記入庫誘導ブロックが中空に形成され、前記光電センサが該入庫誘導ブロックの内部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体駐車場の監視システム。
【請求項4】
前記入出庫口を開閉する扉を備え、前記扉が開いた状態において前記検知手段が作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の立体駐車場の監視システム。
【請求項5】
前記扉の動作を操作するための扉操作部と、前記乗入れ部への車両進入が終了した旨を入力操作するための入力操作部とを備え、
前記入力操作部が操作されると前記検知手段が作動し、前記入力操作部が操作されることなく前記入出庫口を閉鎖するよう前記扉操作部が操作されたときには前記扉の閉鎖動作が規制されることを特徴とする請求項4に記載の立体駐車場の監視システム。」

イ 「【0024】
本駐車装置1における入庫時の流れを要約すると、駐車のため入出庫口18の手前まで車両を運転した運転者が操作盤21で車両が高車高であるか低車高であるかを入力して扉20を開放する。このとき、空のパレット8を乗入れ部17で待機させるべく、昇降駆動部11により搬器9が車高に応じた駐車棚7の横まで上昇し、移載転換機構16により駐車棚8から空のパレット8が搬器9に移載され、昇降駆動部11により搬器9がピット22まで下降する。運転者は入出庫口18より乗入れ部17に前進進入してパレット8上で停車し、入出庫口18より乗入れ部17の外に出て操作盤21で停車を終了した旨を入力する。車両が適正範囲内に停車していれば扉20が閉鎖され得る。扉20の閉鎖後、移載転換機構16によりパレット8が車両と共に旋回し、昇降駆動部11により搬器9が上昇し、移載転換機構16によりパレット8が元の駐車棚8に戻される。これによりパレット8上に搭載された車両が車高に応じた駐車棚7に格納される。」

ウ 「【0053】
図8に戻り、第1乃至第4検知装置45?48のうち第3検知装置47のみが非受光状態となると、主制御装置81は入庫誘導案内盤44のスピーカ103を通じて、運転者に降車・退場のうえ操作盤21にて入庫が終了した旨を入力するよう促す放送を行い(ステップS9)、安全確認ボタンが操作されたか否かを判断する(ステップS10)。
【0054】
安全確認ボタン95が操作されると、主制御装置81はロータリーアクチュエータ65を駆動して第5及び第6検知装置49,50の各光電センサ59を揺動し(ステップS11)、第5及び第6検知装置49,50がそれぞれ物体を検知したか否かを判断し(ステップS12)、揺動が完了しているか否かを判断し(ステップS13)、完了していなければステップS11?S13の処理を繰り返す。この間において何れかの光電センサ59が非受光状態となって物体を検知したときには、主制御装置81はドアミラーが側方に食み出している旨を操作盤21の表示部96に表示したり、スピーカ97を通じて放送し(ステップS14)、運転者はパレット8上で車幅方向に関して適正範囲R1内に車両を停車するよう乗入れの修正を行う(ステップS15)。なお、何度乗入れの修正を行っても第5及び第6検知装置の両方が物体を検知する場合には、車両の車幅が予め定めた適正範囲R1を超えるものであることを意味するため、主制御装置81は車両が本駐車装置1に格納不可能であることを運転者に知らせるべく、乗入れ部17より退場を促す放送を操作盤21のスピーカ97を通じて行う。
【0055】
物体が検知されずに揺動が完了したときには、主制御装置81は運転者に扉を閉める操作を促す表示や放送を操作盤21の表示部96やスピーカ97を通じて行い(ステップS16)、扉閉鎖ボタン92が入力されたか否かを判断する(ステップS17)。扉閉鎖ボタンが入力されると主制御装置は扉20を閉鎖する動作を開始してそれが完了したか否かを判断し(ステップS18)、完了すると入庫処理を終了する。」

(3)刊行物3(実公昭49-3738号公報)
刊行物3には、以下の事項が記載されている。

ア 「考案の詳細な説明
本考案は駐車場の安全装置に関するもので、その目的とするところは庫内への人の閉じ込め、通りがかりの人によるいたずらを防止することにある。 駐車場の出入口部分に搬出入装置を設け、これに自動車を格納し、無人にて上部または下部の駐車室へ自動的に納められる方式の機械式駐車場では、人が庫内にいたまま搬出入装置を昇降させると非常に危険である。」(1欄15?24行)

イ 「本考案を一実施例図面によつて説明するに、第1図においてPH-1A,PH-1B,PH-2,PH-3,PH-4,PH-5は各々光電ビームを表わし、この光電ビームを各々遮断すると第2図におけるPH-1Ac,PH-1Bc,PH-2c,PH-3c,PH-4c,PH-5cの接点を開閉せしめる。
11は格納された自動車12を搬出入する装置13は出入口の扉、15は駐車装置を操作する運転盤で第2図における押ボタンスイツチ14を設置している。第2図の(+)、(-)は電源を示し、60はリレーであり、60a_(1),60a_(2)はそのメイク接点である。前記リレー60が励磁されると扉13を閉じる装置及び搬出入装置11を動作できないよう構成され、また扉13が閉じつつある時や閉じている時ならば直ちに開くようにも構成されている。60sはリレーであり、60sbはそのブレイク接点である。リレー60sは押ボタンスイツチ14を押すことにより励磁されリレー60の自己保持回路を開路してリレー60を消磁するものである。40Ja,40Jbは自動車12が搬入装置11の上に規定された位置に停止していると励磁されるリレー(図示せず)のメイク接点とブレイク接点である。これは第1図から明らかなように自動車12が搬入装置11の上にあると光電ビームPH-1B及びPH-2を遮断しているのでその接点PH-1Bc及PH-2cが働いているのを短絡及び開路して、リレー60が励磁しないようにしたものである。
Lは押ボタンスイツチ14の内部に内蔵されているランプでリレー60が励磁するとそのメイク接点60a_(2)により点灯するように構成されている。
さて扉13が開いている状態で自動車或いは人が庫内に入ると光電ビームPH-4を必ず遮断するので、第2図において(+)-PH-4c-60-(-)によりリレー60が励磁され、扉13を閉じる装置及び自動車搬出入装置11は動作しなくなるまたこのリレー60の接点60a_(1)が閉路することにより(+)-60sb-60a_(1)-60-(-)の回路によりリレー60は自己保持される。
この状態は自己保持が解かれるまで継続する。庫内より人が入るとその出た当人またはそれを確認した人が出入口脇にある押ボタンスイツチ14を押すと庫内のビームを一本も遮断していない時は(+)-PH-4c-PH-5c-PH-3c-PH-1Ac-PH-1Bc-PH-2c-14-60s-(-)により60sが励磁される。
また自動車を入庫してきた時は規定位置に止めたなら(+)-PH-4c-PH-5c-PH-3c-PH-1Ac-40Ja-14-60s-(-)によりやはり励磁される。
これが励磁されるとそのブレイク接点60sbが開路するので+-60sb-60a_(1)-60--の回路が開路してリレー60は消磁する。
従つて次に扉13を閉じることができる。このリレー60を消磁するには第2図の回路より明らかなように庫内のビームを1本も遮断していないか、または庫内に自動車が入つている時は正規の位置に停止していなければできない。
本考案によれば、扉を閉じる前に庫内の自動車が正規の位置に停止しているか、自動車がない場合は庫内の人が光電ビームを切るような位置にいるか自動的に検出できる。
また通りがかりの人がいたずらしてドア閉じのボタンを押してもリレーが働いているかぎりドアは閉じないので庫内への人閉じ込め、いたずらを防止できる。」(1欄末行?4欄10行)

ウ 第1図をみると、運転盤15が、出入口の扉13より外側に配置されていることが看取できる。

エ 上記アないしウからみて、刊行物3には次の発明(以下「刊行物3発明」という。)が記載されているものと認める。
「駐車場の出入口部分に搬出入装置を設け、これに自動車を格納し、無人にて上部または下部の駐車室へ自動的に収められる方式の機械式駐車場であって、
格納された自動車12を搬出入する装置11、出入口の扉13、出入口の扉13より外側に配置された、駐車装置を操作する運転盤15を備え、運転盤15には押ボタンスイツチ14が設置してあり、
光電ビームを遮断すると接点を開閉せしめ、
リレー60が励磁されると扉13を閉じる装置及び搬出入装置11を動作できないように構成され、また扉13が閉じつつある時や閉じている時ならば直ちに開くようにも構成され、
押ボタンスイツチ14を押すことにより、リレー60sは励磁されリレー60の自己保持回路を開路してリレー60を消磁するものであって、
扉13が開いている状態で自動車或いは人が庫内に入ると光電ビームPH-4を必ず遮断するので、リレー60が励磁され、扉13を閉じる装置及び自動車搬出入装置11は作動しなくなり、また、このリレー60は自己保持され、この状態はリレー60の自己保持が解かれるまで継続し、
庫内より人が入るとその出た当人またはそれを確認した人が出入口脇にある押ボタンスイツチ14を押すと庫内のビームを1本も遮断していない時は、リレー60sが励磁され、また、自動車を入庫してきた時は規定位置に止めたなら、やはり励磁され、
これが励磁されるとリレー60は消磁し、
従つて次に扉13を閉じることができる、
機械式駐車場。」

(4)刊行物4(特開昭53-45883号公報)
刊行物4には、以下の事項が記載されている。

ア 「発明の詳細な説明
本発明は機械式駐車設備の自動車搬出入口における安全装置に関するものである。
機械式駐車設備のうち、自動車の搬出入口で、運転者が自動車よりおりて搬出入口を無人としたのち、搬出入装置により所定の場所へ入庫させる方式の駐車設備においては、搬出入口内の無人を確認してからドア閉および搬出入装置の運転を行わなければ非常に危険である。このため例えば実公昭49-3738号公報『駐車場の安全装置』が知られているがこれは第1図および第2図の如く、搬出入口の搬出入装置11上に自動車12を乗せて所定の場所の位置へ入庫するよう構成され、搬出入口には自動車を所定の位置に停止させるための光電ビームPH-1A、PH-1B、PH-2、PH-3、PH-4及びPH-5を設けている。また、13は搬出入口のドアで、14は駐車設備を操作する運転盤15に内蔵されている安全確認の押ボタンである。また、60はリレーで、60a_(1)はそのメイク接点である。前記リレー60が励磁されるとドア13を閉じる装置及び搬出人装置11の動作を不可能とするよう構成されている。60Sはリレーで60S_(b)はそのブレイク接点である。40J_(a)、40J_(b)は自動車12が搬出入装置11の上の規定された位置(光電ビームPH-1B、及びPH-2を切り他のビームを切らない位置)に停止していると励磁されるリレー(図示せず)のメイク接点とブレイク接点である。PH-1Aと、PM-1BC、PH-2C、PH3C、PH-4CおよびPH-5とは夫々光電ビームPH-1A、PH-1B、PH-2、PH-3、PH-4及びPH-5の検出用リレーのトランスフアー接点でビームを遮断するとそのブレイク接点を開路しメイク接点を閉路するものである。この従来の装置の動作は搬出入口に自動車又は人が入ると必ず光電ビームを遮断するためリレー60は自己保持し、ドアは閉じることができなくなる。自動車が入庫したときは定位置に止めると、また人が入つたときは、光電ビームを遮断しなくなると安全確認の押ボタン14が有効になり、押すとリレー60Sが励磁し、リレー60が消磁してドアを閉じることができるようになる。」(1頁右下欄2行?2頁右上欄3行)

イ 「第3図において記号およびその機能は従来例の第1図および第2図とまつたく同一であるが、リレー60PBおよび60PH、ならびにベル60Bを追加している。」(2頁左下欄1?4行)

ウ 「次に本一実施例の動作を説明する。今自動車が搬出入口内に入り光電ビームPH-1A、PH-1B、PH-2のみ切つている状態ではリレー60が励磁されて、ドア閉および搬出入装置の動作ができなくなつているが、このとき搬出入口外にいる人が誤まつて安全確認押ボタン14を押してドアを閉じようとすると第3図において、(+)-14-60PB-(-)によりリレー60PBが励磁し、その接点60PB_(a1)、および60PB_(a2)が閉路するがリレー60Sは励磁されず、(+)-60PB_(a1)-60PH-(-)によりリレー60PHが励磁され、またベル60Bが鳴り出す。またリレー60PHの接点60PH_(a)により(+)-60PH_(a)-60_(a2)-PH-46-60PH-(-)によりリレー60PHは自己保持されるので、押ボタン14をはなしても60Bは鳴り続け搬出入口内にいる人に対してドアを閉じようとしたことを知らせる。このとき押ボタンを操作した人はベル60Bが鳴りやまないことよりまだ搬出入口内に人がいることを知り搬出入口内の確認のため搬出入口内に入り光電ビームPH-4を切るとその接点PH-4bは開路するためリレー60PHの自己保持回路が開路されベル60Bは鳴りやむ。すなわちベルが鳴り続けているときは必す光電ビームPH-4を切らなければならないので、搬出入口内を必ず確認することになる。
さらに自動車が進み光電ビームPH-1BおよびPH-2を切るのみになつたとき押ボタン14を押すと前述と同様にリレー60PBが励磁されベルPBは鳴り出す。しかし、リレー60Sは(+)-PH-4C-PH-5C-PH-3C-PH-1AC-40J_(a)-60PB_(a2)-60S-(-)により励磁されるのでリレー60の自己保持回路を接点60S_(b)で開路するため、その接点60_(a2)は開路し、リレー60PHの自己保持回路は構成されず、押ボタン14を押しているときのみベル60Bは鳴ることになる。このとき、まだ自動車内に運転者がいるならばこのベルの音によりドアを閉じようとしていることに気付き自動車のドアを開けると光電ビームPH-5を切るため再びリレー60が励磁しドアを閉じることができなくなる。
また人が入つたときは光電ビームを遮断しない位置では押ボタン14が有効となるので、ドアを閉じることができるが、このため押ボタンを押すと同様にベル60Bが鳴るため、内部に居る人はドアを閉じることがわかるので、出入口へ戻り始めると、光電ビームを遮断して、リレー60が励磁しドアを閉じることができなくなる。もちろん、光電ビームを切つているときに押ボタン14を押すとベル60Bは鳴り絖けたままとなる。
従つて、本発明はどのようなときでもドア閉じ装置等の動作を禁止する装置を解除する安全確認スイッチ(押ボタン)を押すと搬出入口内のベルが鳴るので、搬出入口内にいる人は誰かがドアを閉じようとしているということがわかり、直ちにドアを閉じられないように対策することができるので閉じ込めという状態を軽減することができる。また、完全にドアを閉じていけないときに安全確認の押ボタンを押すとベルが鳴り続け、一度搬出入口内に入らなければそのベルは鳴りやまないので、確実に搬出入口内の安全確認を義務ずけることかできる。
以上の一実施例では搬出入口内の警報装置としてベルを使用したが、その他の警報装置、例えばブザー、テープレコーダに録音した案内の声により行なう方法でも良い。また、安全確認の押ボタンとしたが、これをドア閉の押ボタンとして、リレー60が消磁し、リレー60PBが励磁しているとドアを閉じるようにしても同等の効果をあげることができる。」(2頁左下欄13行?3頁左下欄3行)

エ 第1図をみると、搬出入口のドア13の外側の隣りに、運転盤15が配置されていることが看取できる。

オ 上記アないしエからみて、刊行物4には次の発明(以下「刊行物4発明」という。)が記載されているものと認める。
「自動車の搬出入口で、運転者が自動車よりおりて搬出入口を無人としたのち、搬出入装置により所定の場所へ入庫させる方式の機械式駐車設備において、
搬出入口の搬出入装置11上に自動車12を乗せて所定の場所へ入庫するように構成され、搬出入口には自動車を所定の位置に停止させるための光電ビームを設け、搬出入口のドア13、駐車設備を操作する運転盤15に内蔵されている安全確認の押ボタン14、リレー60及びリレー60Sが設けられ、運転盤15は、搬出入口のドア13の外側の隣りに配置しており、
リレー60が励磁されるとドア13を閉じる装置及び搬出人装置11の動作を不可能とするよう構成されており、
搬出入口に自動車又は人が入ると必ず光電ビームを遮断するためリレー60は自己保持し、ドアは閉じることができなくなり、自動車が入庫したときは定位置に止めると、また人が入つたときは、光電ビームを遮断しなくなると安全確認の押ボタン14が有効になり、押すとリレー60Sが励磁し、リレー60が消磁してドアを閉じることができるようになる、
機械式駐車設備。」

(5)刊行物5(特許第4750818号公報)
刊行物5には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0024】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1は、駐車塔2と、この駐車塔2の内部に配設された車両昇降用のエレベータ3とを備えている。図示のごとく駐車塔2の内部には、エレベータ3の昇降路4の両側の駐車区画に、車両搭載用のパレット5を載置することができる上下複数段の駐車棚6が配設されている。エレベータ3がこのパレット5を駐車塔2の入出庫室7と任意に指定された駐車棚6との間を昇降させて車両Mを搬送する。エレベータ3はワイヤーロープ8によって吊り下げられており、このワイヤーロープ8の他端にはカウンターウエイト9が連結されている。また、駐車塔2の最上部の機械室10には、ワイヤーロープ8を巻き上げ繰り出してエレベータ3を昇降させる昇降駆動装置11が備えられている。エレベータ3の下面には、パレット5を持ち上げて旋回させる旋回機能と、このパレット5を前記駐車棚6との間で受け渡しする移載機能を併せ持った旋回移載機構20が設けられている。
【0025】
図2および図3も併せて参照すれば明らかなように、入出庫口12近傍の駐車塔2外面には、利用者や管理人が入出庫の各操作を行うための駐車装置の運転操作盤13が設置されている。すなわち、空のパレットや目的車両を搭載したパレット(実パレットと呼ぶ)を呼び出したり、入出庫完了後に入出庫口12の扉12aを閉操作等するための操作盤である。
【0026】
入出庫室7には入庫可能な車両の車高を制限するための車高制限板14が設置されている。この車高制限板14は、入出庫室7内の入出庫口12近傍の上部から揺動可能に垂下されたものである。そして、入庫しようとする車両の天井部が衝突したとき、奥側に揺動し、それによって制限車高以上の車両が入庫してきたことを検知するものである。
【0027】
入出庫室7には、出入りする人や車両を検知するための複数個の光電センサPH1?PH6が配設されている。センサから投射された検出光が人や車両に反射され、この反射光を同じセンサが受光することによって当該人や車両を検知する。入出庫口12を通過する車両や人を検知する第一センサPH1、パレット5上に乗り入れた車両の後部のはみ出しを検知する第二センサPH2、入庫車両がパレット上に乗り入れているか否かを検知する第三センサPH3、パレット5上に乗り入れた車両の前部のはみ出しを検知する第四センサPH4、並びに、パレット5上に乗り入れた車両の左右側部のはみ出しをそれぞれ検知する第五センサPH5および第六センサPH6が配設されている。
【0028】
入出庫口12内の奥部には、パレット5上に乗り入れる車両のドライバー自身が、乗り入れる様子およびパレット5上の車両の位置を確認するための鏡15が設置されている。また、同様に入出庫口12内の奥部に、入庫する車両および利用者に対して文字表示等によって誘導、案内、注意を行うための入庫案内灯16が設置されている。この入庫案内灯16は、たとえば、入庫してきた車両に対して、パレット5上の適正な停止位置に誘導するために前進、後退、停止等を点灯表示することによって指示するものである。さらに、入出庫室12内には駐車設備1の運転を制御するための制御装置18が設置されている。この制御装置18は、合成音声等によって種々の誘導、案内、注意を行うための放送装置17および前記入庫案内灯16の制御を司る。前記放送装置17には音声発信のためのスピーカ19が設置されている。
【0029】
図4には、前記運転操作盤13およびこれに接続された前記制御装置18が示されており、さらに、これら13、18による駐車設備1の運転および放送等の制御のブロック図が示されている。制御装置18としては音声放送の制御に関する部分(音声放送制御部)のみが図示されている。運転操作盤13には、空パレットの呼び出しボタン、安全確認ボタン、契約者の暗証番号入力ボタン、運転スタートボタン、運転終了および扉終日ボタン、操作取消ボタン等の各種操作ボタン21が設置されている。所定の釦には押圧状況を表示するためのランプ21aが併設されている。さらに、現在の空パレットの台数、実パレットの台数および待ち時間等を表示し、また、テンキー22の操作によって該当する入出庫部の番号および呼び出し番号等を表示する表示部23が設置されている。この表示部23には上記項目以外にも、必要に応じて種々のメッセージが表示される。安全確保のための非常停止ボタン24も設置されている。
【0030】
この運転操作盤13に接続された制御装置18は、運転操作盤13による指示操作に応じて、エレベータ3の昇降駆動、入出庫室7におけるパレット5の持ち上げやターンテーブルの旋回駆動、エレベータ3による駐車棚6との間のパレット5移載駆動、入出庫口12の扉の開閉駆動等を含む駆動部の制御を行う。さらに、前述したセンサPH1?PH6によるパレット乗り入れ部や入出庫口における車両および人の検知、エレベータ昇降路4における車両の検知(図示せず)、前述した車高制限板14による許容車高以上の車両の検知等を含む検知部の制御を行う。前述したように、運転操作盤13による操作、並びに、センサPH1?PH6および車高制限板14による検知結果に対応して、利用者等に対する誘導、案内、注意が放送および/または表示によってなされる。さらに、この制御装置18は、かかる誘導、案内、注意を行う前記入庫案内灯16および放送装置17を制御する。」

イ 「【0044】
図8を参照しながら、駐車設備1への入庫操作、および、それに対応した案内放送等を伴う駐車装置の動きを説明する。
【0045】
(1)まず、入庫しようとする利用者(ドライバー等)が入出庫口の手前で車両を停止する。(2)利用者は運転操作盤による操作の開始作業として暗証番号を入力する。(3)ついでスタート釦を押す。(4)この操作に伴い、図7に示す手順に沿って前述した案内放送の音量モードが通常モードか抑制モードかに設定される。一方、(5)駐車装置においては最適の空パレットが呼び出され、(6)当該空パレットが入出庫室に着床する。(7)その後、入出庫口の扉が開かれる。
【0046】
(8)利用者は車両を入出庫室内へ進入させ、着床している空パレットに乗り入れる。(9)この動作と並行するように、前記各センサPH1?PH6による検知結果に応じて入庫案内灯が「前進」、「停車」、「後退」等の表示をする。(10)放送装置からも、センサPH1?PH6による検知結果に応じて、図5に例示したような入庫時の注意案内メッセージや誘導案内メッセージが放送される。センサによって車両がパレット上の適正位置に至ったことが確認されると、(11)入庫案内灯が「停車」の表示を所定時間継続して表示し、(12)放送装置は図5に例示したような停車案内メッセージを放送する。(13)停車が完了すると車両搭乗者は降車して入出庫口から退室する。
【0047】
(14)センサが利用者の退室を検知すると、放送装置から図5に例示する操作案内メッセージ「・・・安全確認釦を押した後、扉閉釦を押してください。」が放送される。この放送は扉が開いている間は間欠的に反復放送される。(15)入出庫室から退場した利用者は、前記操作案内メッセージに応じて入出庫室内の安全を確認したうえで、(16)運転操作盤上の安全確認釦を押す。(17)そうすると安全確認釦のランプが消灯し、扉を終日が可能な状態となる。(18)利用者が終了扉閉釦を押すと、(19)入出庫口の扉が閉まり、(20)前記操作案内メッセージが終了する。(21)当該車両を搭載した入庫パレットは所定の駐車棚に搬送されて格納され、入庫動作が完了する。」

(6)刊行物6(特開2005-68640号公報)
刊行物6には、以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、駐車場の管理方法およびその装置に関し、機械式駐車場の車内の人や動物などの物体を検出し、これに基づき運転管理できるようにしたものである。
・・・・(中略)・・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・・(中略)・・・・
【0009】
このような人の目視による確認では、見落としや勘違いなどが生じる恐れがあり、完全に検知できない場合が生じる恐れがある。
【0010】
さらに、機械的に人などの動体を検知できる可能性のあるものとして、赤外線センサーや光センサー、超音波センサーなどを用いることが考えられるが、これらのセンサーでは、見えない埃や汚れの影響を受けやすく、シートの陰に隠れている人など遮蔽物に覆われた物の動きを検知することができないなど、誤検知が生じ易いという問題がある。
【0011】
この発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、車内に残された人や動物などの動体の存在を機械的に確実に検知することができ、確実かつ容易に駐車場を管理することができる駐車場の管理方法およびその装置を提供しようとするものである。」

イ 「【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の駐車場の管理方法およびその装置の一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1および図2はこの発明の駐車場の管理装置の一実施の形態にかかる概略構成図および電波センサーの信号処理部の概略構成図である。
【0026】
この発明の駐車場の管理装置10は、図1に示すように、駐車場として例えば機械式駐車場である立体駐車場の入庫位置11に対応して設置される。
【0027】
この立体駐車場の入庫位置11には、車が入出庫するためのパレット12が備えられ、図示しない昇降装置などで所定の駐車位置に昇降移動などができるようになっており、入庫位置11の出入口13には、扉14が設けてある。
【0028】
そして、パレット12上に入庫する車が適正な位置に収納されているか否かを検知するため、その1つとして、車体後部はみ出し検知用センサーP1が、例えば光電センサーで構成され、発光部と受光部とが車体後部に沿って対向して設置されて検知可能としてある。同様に、車体前部はみ出し検知用センサーP2、車体左部半ドア検知用センサーP3、車体右部半ドア検知用センサーP4が設けられ、例えば光電センサーで構成され、それぞれの発光部と受光部とが検知可能に対向して設置してある。
【0029】
また、入庫位置11のパレット12上に入庫した車があるか否かを検知するため、入庫車の在車検知用センサーP5が設けられ、例えば光電センサーで構成され、発光部と受光部とが車体を斜めに横切るように対向して設置されて検知可能としてある。
【0030】
さらに、出入口13には、庫内への人の侵入を検知するための侵入検知用センサーP6が設けられ、例えば光電センサーで構成され、発光部と受光部とが出入口13を横切るように対向して設置されて検知可能としてある。
【0031】
これらの各検知用センサーP1?P6の検知信号、例えば光電センサーのオン・オフ信号が立体駐車場の制御装置としての制御盤15の光電センサーなどの信号入力部16に入力されるようになっている。
【0032】
したがって、入庫位置11のパレット12上の適正な収納位置に入庫車が収納された状態では、在車検知用センサーP5だけからは、車体でさえぎられてオフの信号が出力され、他の車体検知用のセンサーP1、P2、P3、P4および庫内への侵入検知用センサーP6からは、オンの信号が出力される。
【0033】
さらに、この駐車場の管理装置10では、入庫位置11のパレット12の周囲に人や動物などがいないことを確認するため、庫内動体検知用センサーPA1、PA2がパレット12の両側の空間を検知範囲として設置され、ここでは、感熱式センサーPA1、PA2で構成してある。
【0034】
そして、庫内動体検知用センサーPA1、PA2の検出信号、例えば感熱式センサーPA1、PA2のオン・オフ信号が立体駐車場の制御装置としての制御盤15の光電センサーなどの信号入力部16に入力されるようになっている。
【0035】
また、この駐車場の管理装置10では、これまで検出が困難とされた入庫位置11のパレット12上に収納された車内に残された人や動物などの動体の有無を検知するため、入庫位置11の車の進入方向前方に電波センサーR1が設けられ、少なくとも車内を検知範囲として車内に向けて電波、すなわちマイクロ波を発信するとともに、反射波によるドップラー効果を反射波信号として検知し、出力できるようになっている。
【0036】
なお、電波センサーR1の検知範囲を車内だけでなく、庫内を検知範囲として庫内動体検知用センサーPA1、PA2に替えて検知するようにしても良く、この場合を含め、検知範囲に応じて電波センサーの設置個数を増大するようにしても良い。
【0037】
そして、この電波センサーR1からの反射波信号が立体駐車場の制御装置としての制御盤15の電波センサーの信号入力部17に入力されるようになっている。
【0038】
この電波センサーR1からは、例えば24.15GHzあるいは10.525GHzのマイクロ波が発信され、このマイクロ波が人や動物などの動体で反射されることによるトップラー効果によって変化する周波数を検出することで、動体の有無を検出するもので、動体がなければドップラー効果が生じることがなく、反射波の周波数の変化が起こらないことで動体の有無が検知できる。
【0039】
このような動体の有無を検知する電波センサーR1およびその信号処理部17は、図2に示すように、電波センサーR1が発信器R1a、アンテナR1bおよびダイオードミクサR1cを備えて構成されており、発信器R1aからマイクロ波がアンテナR1bを介して車内に向けて発信される一方、反射波がアンテナR1bで受信されてダイオードミクサR1cを介して信号処理部17に出力される。」

ウ 「【0052】
通常、入庫する状態では、庫内には、動体は存在しないので、いずれの検知信号も動体を検知しない信号が制御盤15に出力される。」

エ 「【0058】
次の庫内への人などの侵入の有無の判断((8)参照)は、光電センサーP6によって出入口13から庫内に侵入したとする検知信号が検知されたか否かで判断される。
【0059】
この光電センサーP6による庫内動体侵入検知の結果、侵入ありと判断されると、立体駐車場の一切の起動操作が無効とされ、運転できないロック状態とされる。
【0060】
一方、庫内への人などの侵入がないと判断されると、図5に示すように、立体駐車場の起動操作が有効となるところに進む((16)参照)。」

オ 「【0065】
こうしてパレット12上の適正位置に入庫車が収納されるとともに、庫内および車内に動体がないことが確認されると、図5に示すように、はじめて立体駐車場の起動操作が有効となる((16)参照)。
【0066】
そして、出入口13の扉14を閉じる操作が行われ((17)参照)、扉14が閉じられる((18)参照)。
【0067】
この後、再び、庫内および車内の動体の有無が、これまでと同様にして検知される((19)参照)。
【0068】
この出入口13の扉14を閉じた状態で、庫内および車内に動体が無いことを検知してはじめて立体駐車場の起動操作が有効となる((20)参照)。
【0069】
一方、電波センサーR1と感熱式センサーPA1、PA2のいずれかでも動体を検知すれば、既に説明したように、立体駐車場の一切の起動操作が無効とされ((21)参照)、運転できないロック状態とされ、再度、動体を庫内より退出させ((22)参照)、庫内および車内の動体の有無が、これまでと同様にして検知される((19)参照)。
【0070】
こうしてパレット12上の適正位置に入庫車が収納されるとともに、庫内および車内に動体がないことが確認され、さらに出入口13の扉14を閉じた後にも庫内および車内に動体がないことが確認されると、立体駐車場の運転が開始される((20)参照)。
【0071】
これ以降の駐車場の運転管理は、これまでと同様であるので、説明は省略する。」

カ 上記アないしオからみて、刊行物6には、次の発明(以下「刊行物6発明」という。)が記載されているものと認める。
「入庫位置11には、車が入出庫するためのパレット12が備えられ、昇降装置などで所定の駐車位置に昇降移動などができるようになっており、入庫位置11の出入口13には、扉14が設けてある、機械式立体駐車場であって、
パレット12上に入庫する車が適正な位置に収納されているか否かを検知するため、光電センサーで構成された車体左部半ドア検知用センサーP3、車体右部半ドア検知用センサーP4が設けられ、それぞれの発光部と受光部とが検知可能に対向して設置してあり、
出入口13には、庫内への人の侵入を検知するため、光電センサーで構成された侵入検知用センサーP6が設けられ、発光部と受光部とが出入口13を横切るように対向して設置されて検知可能としてあり、
パレット12の両側の空間を検知範囲として設置された庫内動体検知用センサーPA1、PA2、及び、パレット12上に収納された車内に残された人や動物などの動体の有無を検知する電波センサーR1が設けられ、
各検知用センサーP1?P6の検知信号、庫内動体検知用センサーPA1、PA2の検出信号、及び電波センサーR1からの反射信号が、立体駐車場の制御装置としての制御盤15に入力されるようになっており、
入庫位置11のパレット12上の適正な収納位置に入庫車が収納された状態では、庫内への侵入検知用センサーP6からは、オンの信号が出力され、
庫内への人などの侵入の有無の判断は、光電センサーP6によって出入口13から庫内に侵入したとする検知信号が検知されたか否かで判断され、
パレット12上の適正位置に入庫車が収納されるとともに、庫内および車内に動体がないことが確認されると、はじめて立体駐車場の起動操作が有効となり、
光電センサーP6による庫内動体侵入検知の結果、侵入ありと判断されると、立体駐車場の一切の起動操作が無効とされ、運転できないロック状態とされ、
そして、出入口13の扉14を閉じる操作が行われ、扉14が閉じられ、この出入口13の扉14を閉じた状態で、庫内および車内に動体が無いことを検知してはじめて立体駐車場の起動操作が有効となる、
機械式立体駐車場。」

(7)刊行物7(特公平3-44607号公報)
刊行物7には、以下の事項が記載されている。

ア 「(産業上の利用分野)
この発明は立体駐車設備の車両乗入位置の安全を判定するための方法に関し、特に画像処理技術を利用したその様な方法に関する。」(1欄末行?2欄3行)

イ 「(従来の技術とその問題点)
従来から、多数の車両搭載用ケージを循環移動して車両の格納を行なうごとくした立体駐車設備が知られている。第6図は、そのような立体駐車設備の一例を示す構造説明図である。この立体駐車設備は、塔1内に垂直方向に環状配置された多数の車両搭載用ケージ2を具備して構成されている。各車両搭載用ケージ2は、アタツチメント3により前後1対の無端チエイン4にそれぞれ連結され、図示しない駆動装置により駆動されて、塔1内を循環移動する。
このような立体駐車設備において、入庫時には車両Wは、入出庫口5から車両乗入位置にあるケージ2′内へ乗り入れる。車両Wの乗員は入出庫口5を通つて塔1外へ退出し、続いて管理人またはドライバーは塔1の外壁に設けられた運転操作盤6を操作して、扉7を閉じる。そして、次のケージの呼操作によつて実庫ケージが上方へ循環移動されるとともに、次ケージが車両乗入位置に呼び出される。
車両乗入位置には、例えば複数組の光電管装置が配置され、人などの異物の存在を検知したときに警報を発生するなどして、塔内の安全管理を図つている。また、塔内にITVカメラを設置し、車両乗入位置のTV画像を塔外のモニタ8に映し出すことによつて運転操作盤6の操作者にこれを監視させ、塔内の安全を図ることも行なわれている。しかしながら、上記光電管装置によるチエツクでは、光電管の光軸範囲外では安全性が確保できず、またITVカメラによるチエツクにしても、操作者の不注意からの見落しの危険性が常に存在するので、塔内の安全管理の方策としては必ずしも万全のものではないという問題があつた。」(2欄4行?3欄11行)

ウ 「(実施例)
第1図は、この発明による安全判定方法を適用した立体駐車設備の車両乗入位置を示す平面説明図である。ケージ2′は、車両乗入位置の地上床9の中央に設けられたケージ着床ピツト10上に着床している。ケージ2′内には、入出庫口5を通つて車両Wが乗り入れている。塔1の内壁面には4つのITVカメラ11A?11Dが設置されて、ピツト10上に着床したケージ2′の周囲を撮像している。
第2図は、この発明による安全判定方法を適用した装置の一実施例を示すブロツク図である。この実施例では、4つのITVカメラ11A?11Dから取り込んだ画像信号を画像処理装置12において処理し、車両乗入位置の安全/不安全を判定するようにしている。画像処理装置12はカメラ切換ユニツト13を含み、各ITVカメラ11A?11Dからの画像信号は、カメラ切換ユニツト13により切換えられて選択的に取り込まれる。水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDは同期発生ユニツト14において発生され、カメラ切換ユニツトを介して各ITVカメラ11A?11Dに選択的に与えられる。
カメラ切換ユニツト13から選択的に取り込まれた画像信号は、A/Dコンバータ15において、例えば8ビツトの多階調デイジタルデータに変換され、メモリコントロール16による制御の下で画像メモリ17に順次書き込まれて、記憶される。また、このとき同時に、上記デイジタルデータをD/Aコンバータ18により再びアナログの画像信号に変換して、塔1の外壁に配設されたモニタ8(第6図参照)上に4分割の画像表示を行なわせる。」(3欄27行?4欄15行)

エ 第1図をみると、カメラ11Aとカメラ11Cとが車両を前後に挟み、カメラ11Bとカメラ11Dとが車両を左右に挟むことが看取できる。

(8)刊行物8(実願昭62-1860号(実開昭63-111562号)のマイクロフィルム)
刊行物8には、以下の事項が記載されている。

ア 「(産業上の利用分野)
本考案は立体駐車設備の安全装置の改良に関するものである。」(明細書1頁16?18行)

イ 「第1図・第2図において、11は立体駐車設備の乗入口で、12は乗入口11と立体駐車設備の間の車輌の運搬を行う車輌搬出入装置で、13は車輌搬出入装置12によって運搬される車輌である。乗入口にきた車輌搬出入装置の前端・後端となる位置の両側に光電スイッチPH-3,PH-1が設けてあり、中間位置には光電スイッチPH-2が設けてあり、車輌が光電スイッチPH-3,PH-1を遮光せず、光電スイッチPH-2を遮光する位置が正規の搭載位置となっている。
14は乗入口11の出入口であり、その両側に光電スイッチPH-4が設けてあり、該光電スイッチPH-4と前記光電スイッチPH-1との中間位置にPH-5が設けてある。これらの光電スイッチPH-4,PH-1,PH-5は第1検出器、第2検出器、第3検出器を構成している。
15は操作盤で、操作押ボタン16を内蔵している。」(明細書3頁17行?4頁15行)

ウ 「しかして、運転者が車輌を運転して出入口14から進入すると光電スイッチPH-4,PH-5,PH-1の光電ビームを順次遮光する。
車輌が光電スイッチPH-4のビームを遮光すると、ブレイク接点PH-4Bが開となり操作押ボタン16を押してもリレーR_(2)は励磁されず車輌搬出入装置12は作動しない。
車輌が奥へ進入して、車輌の後部が光電スイッチPH-4,PH-5のビームを通過して遮光が終わると、光電スイッチPH-1のビームは遮光されているから、ブレイク接点PH-4B,PH-5Bおよびトランスファー接点PH-5Cが復元して閉となるとともにトランスファー接点PH-1C,メイク接点PH-1Aがメイク接点を閉路としており(+)-PH-4B-PH-1C-R_(1)-(-)、(+)-PH-5B-PH-1A-R_(3)-(-)となってリレーR_(1),リレーR_(3)が励磁され、リレーR_(1)のブレイク接点R_(1)-B及びR_(3)のブレイク接点R_(3)-Bが開となり、この状態では操作押ボタン16を押してもリレーR_(2)は励磁されず車輌搬出入装置12は作動しない。リレーR_(1)の励磁によってメイク接点R_(1)-Aが閉またリレーR_(3)の励磁によってメイク接点R_(3)-Aが閉となってこの状態はいずれも自己保持され、車輌が更に奥へ入って光電スイッチPH-1のビームの遮光が終ってトランスファー接点PH-1Cが復元しても車輌搬出入装置12の作動は不能のままである。
車輌が正規の位置に止まると光電スイッチPH-1,PH-3のビームを遮光せず、光電スイッチPH-2のビームを遮光していることにより図示しない検出器により正規の位置に搭載されていることが確認される。
このとき、場外にいる者が誤って出入口14にある光電スイッチPH-4のビームを遮光して一歩踏込んだ場合でも、光電スイッチPH-4のビームの遮光によりブレイク接点PH-4Bが開となりこのためリレーR_(1)が消磁してリレーR_(1)のメイク接点R_(1)-Aが開となって保持回路が開となり、リレーR_(1)のブレイク接点R_(1)-Bは復元して閉となるが、リレーR_(3)のブレイク接点は開となっており、場外にいる者が誤って操作押ボタン16を押してもリレーR_(2)は通電しないから車輌搬出入装置13は作動しない。
車輌13の運転者が車輌から出て場外に出る際、光電スイッチPH-5のビームを遮光すると、ブレイク接点PH-5Bが開となってリレーR_(3)消磁し、リレーR_(3)のメイク接点R_(3)-Aが開となって保持回路が開となり、またブレイク接点R_(3)-Bが閉となるがリレーR_(1)は保持されている。
運転者が更に外方へ出て光電スイッチPH-4のビームを遮光するとブレイク接点PH-4Bが開となってリレーR_(1)が消磁し、そのメイク接点R_(1)-Aが開となって保持回路が開となり、また、ブレイク接点R_(1)-Bが閉となって操作押ボタン16を押すと(+)-PH-4B-PH-1C-PH-3C-PH-5C-R_(1)-B-R_(3)-16-R_(2)-(1)となって通電し、操作ボタン16を押すと車輌搬出入装置13は作動する。」(明細書5頁19行?8頁17行)

エ 第1図及び第3図をみると、出入口14の外側の隣りに操作盤15が配置されていることが看取できる。

オ 上記アないしエからみて、刊行物8には、次の発明(以下「刊行物8発明」という。)が記載されているものと認める。
「乗入口11と、乗入口11と立体駐車設備の間の車輌13の運搬を行う車輌搬出入装置12を設けた立体駐車設備において、
乗入口11にきた車輌搬入装置の前端・後端となる位置の両側に光電スイッチPH-3,PH-1が設けてあり、中間位置には光電スイッチPH-2が設けてあり、車輌13が光電スイッチPH-3,PH-1を遮光せず、光電スイッチPH-2を遮光する位置が正規の搭載位置となっており、
乗入口11の出入口14の両側に光電スイッチPH-4が設けてあり、該光電スイッチPH-4と光電スイッチPH-1との中間位置に光電スイッチPH-5が設けてあり、
出入口14の外側の隣りに、操作押ボタン16を内蔵した操作盤15が配置し、
運転者が車輌を運転して出入口14から進入すると光電スイッチPH-4,PH-5,PH-1の光電ビームを順次遮光し、車輌が光電スイッチPH-4のビームを遮光すると、操作押ボタン16を押しても車輌搬出入装置12は作動せず、
車輌が奥に進入して、車輌の後部が光電スイッチPH-4,PH-5のビームを通過して遮光が終わると、光電スイッチPH-1のビームは遮光されているから、この状態では操作押ボタン16を押しても車輌搬出入装置12は作動せず、
車輌が更に奥に入って光電スイッチPH-1のビームの遮光が終わっても車輌搬出入装置12の作動は不能のままであり、
車輌が正規の位置に止まると、光電スイッチPH-1,PH-3のビームを遮光せず、光電スイッチPH-2のビームを遮光していることにより正規の位置に搭載されていることが確認され、
このとき、場外にいる者が誤って出入口14にある光電スイッチPH-4のビームを遮光して一歩踏み込んだ場合でも、場外にいる者が誤って操作押ボタン16を押しても車輌搬出入装置12は作動せず、
車輌13の運転者が車輌から出て場外に出る際、光電スイッチPH-5のビームを遮光し、運転者が更に外方へ出て光電スイッチPH-4のビームを遮光すると、操作押ボタン16を押すと車輌搬出入装置12は作動する、
立体駐車設備の安全装置。」

(9)刊行物9(特開2006-307495号公報)
刊行物9には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の入出庫部において、入庫した車両が駐車に適した状態で停車したかを監視する機械式駐車装置の監視システムに関するものである。」

イ 「【0039】
即ち、ECU21は車両Wの駐車状態が適切であるか不適切であるかを監視する駐車状態監視機能を備えており、少なくとも車両Wにおける前後左右の各サイドドアWaのいずれかが半ロック状態である場合や、ハッチバック等のリヤドアWcが半ロック状態である場合や、車内に人やペット動物を検知した場合に、駐車不適切状態であると判断し、そのような駐車不適切状態を検出した場合に所定の報知電波を送信アンテナ25を通じて送信するように制御されている。」

ウ 「【0060】
その後、降車して入出庫口4から退場した利用者(もしくは管理人)は、入出庫部13における室内の無人確認を行った上で、操作盤27により入出庫口扉16の閉操作を行う(ステップS10)。そして、扉閉釦49から押動信号が有ったかどうかが判断され(ステップS11),押動信号が有れば、ステップS12に移行して、車両WのECU21側からの報知電波の受信の有無が判断される。この際、報知電波の受信有りが検出されれば、入出庫口扉16の閉駆動不許可指令および駐車装置1の駆動不許可指令となるインターロック作動指令がなされ(ステップS13)、格納駆動ができない状態にインターロックをかける。」

(10)刊行物10(特開2002-352015号公報)
刊行物10には、以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の入庫を禁止する入庫禁止機構及び車両の出庫を禁止する出庫禁止機構を有する駐車場での車両の入庫及び出庫を管理する駐車場管理システム、該駐車場管理システムに用いられる入庫管理装置、出庫管理装置、及び駐車場管理装置、並びにコンピュータを入庫管理装置、出庫管理装置、及び駐車場管理装置として機能させるためのコンピュータプログラムに関する。」

イ 「【0076】
【発明の実施の形態】以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る駐車場管理システムを適用する立体式の駐車場を示す外観図である。
【0077】図において11は立体式の駐車設備を示している。駐車設備11は、直方体形状をなす建造物であり、内部に複数のパレット(車庫)が設けられている(図示せず)。各パレットは縦方向に環状に連結されており、この環状の周方向に循環させることが可能とされている。
【0078】駐車設備11と道路12との間には、駐車待ちの車両を待機させるための待機エリア13が設けてあり、この待機エリア13には、車両を水平方向に回転するためのターンテーブル13aが設けられている。
【0079】また駐車設備11の正面、即ち道路12を臨む面の下部には、扉14が設けられており、この扉14の横には、駐車設備11を操作するための操作機(入庫管理装置、出庫管理装置)15が設けられている。
【0080】更に操作機15の上方には、CRT又はLCD等によって構成され、画像を表示するモニタ装置15aが設けてある。」

ウ 「【0120】次に、駐車場の利用者が操作機15の操作パネルを操作して、扉14の閉動作の開始指示を操作機15へ入力する(ステップ10)。扉14の閉動作の開始指示が入力された場合には、CPU151が、扉14を閉じるべく、入出力インタフェース15Aに駆動回路14aへ制御信号を出力させるとともに(ステップ11)、モニタ装置15aに駐車設備11の扉14の内側の状態を表示すべく、テレビカメラ11bにて撮影して得た画像データに基づく画像信号を、画像出力インタフェース155に出力させる(ステップ12)。これによって駆動回路14aに接続されたモータが駆動され、扉14が閉じる。
【0121】利用者は、このモニタ装置15aに表示されている駐車設備11の扉14の内側の状態を確認し、駐車設備11内に人が残っていないことを確認する。駐車設備11の内部に人が残っている場合には、前記利用者が操作機15の操作パネル157を操作して、扉14の閉動作の中止指示を入力する(ステップ13)。扉14の閉動作の中止指示が入力された場合には、CPU151が、扉14を開くべく、入出力インタフェース15Aに駆動回路14aへ制御信号を出力させ(ステップ14)、これによって駆動回路14aに接続されたモータが駆動され、扉14が開く。そして、ステップ10へ処理を戻す。」

(11)刊行物11(特開2003-97076号公報)
刊行物11には、以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 駐車場内において、車両を載置するための複数のパレットを循環移動させることにより、複数の車両の駐車を許容する駐車装置であって、
前記駐車場内の所定位置に設けられ、前記車両の入庫作業が完了した後、前記車両の運転者が、前記駐車場内から退出する前に押すための場内安全確認釦と、
前記運転者の前記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段と、
前記運転者の前記駐車場内からの退出後入庫作業が完了した後に、前記運転者が押すための終了扉閉釦と、を備え、
前記運転者が前記場内安全確認釦を押す前に第3者が前記終了扉閉釦を押した場合に、前記第3者に対して、前記終了扉閉釦を押した行為は無効であることを伝えるための警告手段を有する、駐車装置。」

イ 「【0010】
【課題を解決するための手段】この発明に基いた駐車装置においては、駐車場内において、車両を載置するための複数のパレットを循環移動させることにより、複数の車両の駐車を許容する駐車装置であって、上記駐車場内の所定位置に設けられ、上記車両の入庫作業が完了した後、上記車両の運転者が、上記駐車場内から退出する前に押すための場内安全確認釦と、上記運転者の上記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段と、上記運転者の上記駐車場内からの退出後入庫作業が完了した後に、上記運転者が押すための終了扉閉釦とを備え、上記運転者が上記場内安全確認釦を押す前に第3者が上記終了扉閉釦を押した場合に、上記第3者に対して、上記終了扉閉釦を押した行為は無効であることを伝えるための警告手段を有する。
【0011】これにより、運転者の入庫作業中に、第3者が駐車装置の操作盤において「終了扉閉」釦を操作して入庫作業を行なった場合でも、運転者が場内安全確認釦を押す前であるため、第3者は駐車装置の操作を行なうことができず、駐車場内での運転者および同乗者の閉じ込めを防止することが可能になる。その結果、駐車装置の安全性の向上を図ることが可能になる。」

ウ 「【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明に基いた、実施の形態における駐車装置の構造について、図1から図4を参照して説明する。なお、駐車装置の概略構成および安全機器についての基本的構造は、図5を用いて説明したものと同一であるため、同一部分については、同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。なお、図1は、本実施の形態における駐車装置の駐車場内の構造を示す平面図であり、図2は、退出案内表示盤200の正面図であり、図3は、車両の入庫時における入庫制御を示すフロー図であり、図4は、音声合成放送案内の内容を示す図である。
【0015】(構成)本実施の形態における、立体駐車装置100Aの特徴的構成としては、図1に示すように、駐車場内101の側壁部に退出案内表示盤200と、音声装置210とが設けられている点にある。その他のフォトセンサPH1?PH8については、従来と同様の機能を有している。
【0016】退出案内表示盤200は、図2に示すように、退出確認釦の銘盤202とともに、退出確認釦203が設けられている。また、退出案内表示盤200には、「最終退出者が人のいない事を確認して押してください」とのメッセージが標記され、赤色にて点滅表示可能な注意喚起表示204と、「ありがとうございました場内より退出してください」とのメッセージが標記され、緑色にて点滅表示可能な、確認表示205とが備えられている。なお、注意喚起表示204および確認表示205のメッセージ内容、表示色については、一例であり、同様の趣旨を示すものであればよい。
【0017】(入庫フロー)次に、図3および図4を参照して、車両の入庫フローについて説明する。まず、運転者は、運転操作盤110にて入庫呼び操作を行なう(S10)。次に、運転操作盤110付近に設置した音声装置にて音声案内(図4参照)を放送する(S20)。次に、呼びパレットが着床し、車両を入庫させる(S30)。次に、PH1およびPH3にて車両位置を確認した後、自動車位置案内灯「停止」を点灯させる(S40)。
【0018】次に、駐車場内101に設置した音声装置210にて音声案内(図4参照)を放送する(S50)。また、退出案内表示盤200において、「最終退出者が人のいない事を確認して押してください」の注意喚起表示204を点滅させる(S60)。
【0019】次に、運転者が退出確認釦203を押したことを確認した後(S70)、退出案内表示盤200において、「場内より退出してください」の確認表示205を点滅させる(S80)。その後、運転者は駐車場内101から退出し(S90)、運転操作盤110に設けられた「安全確認」釦を押す(S100)。その後、運転者は、運転操作盤110に設けられた「終了扉閉」釦を押す(S110)。その後、出入口扉が閉じられる(S120)。以上により運転者による入庫作業が完了する。」

(12)刊行物12(「機械式立体駐車場の安全対策の強化について」 公益社団法人 立体駐車場工業会 平成24年8月23日発行)
刊行物12には、以下の事項が記載されている。

ア 第3頁「【技術水準の見直しの内容】」の第1?2行
「エレベータ方式駐車場内に安全性向上のため、人感センサーの設置を必須とするように技術基準を改訂する。」

イ 第3頁「人感センサー設置(例)」と題された図
同図から、車両の両側にそれぞれ人感センサーを設置することが、看取される。

ウ 第3頁の最終2行
「前面ゲート、センサーは取扱者になり代わって安全(無人)確認をするものではありません。駐車装置を運転操作する場合は、取扱者が無人確認を行う必要があります。」

(13)刊行物13(特開平8-93255号公報)
刊行物13には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0029】
【実施例】以下、この発明に基づいた実施例について説明する。なお、この実施例における立体駐車装置の全体的な構造は、図11で説明した従来の構造と同一であるため、ここでの説明は省略し、車両入退室内の構造についてのみ説明する。
【0030】まず、図1を参照して、この実施例における車両入退室110の構造について説明する。この実施例における車両入退室110の内部には、入庫車の入出庫を確認するための車両入退室チェック光電管11が設けられている。また、パレット22上の所定の位置に入庫車が位置しているかどうかを確認するための後部車長制限光電管12、実車検知光電管13および前部車長制限光電管14がそれぞれ設けられている。なお、図中実線a?dは、各光電管の光軸を示している。
【0031】さらに、本実施例においては、車両入退室110内の人の存在を検知するための前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置左側人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が設けられている。」

イ 「【0036】まず、図2を参照して、前配置右側人検知センサ15と、前配置左側人検知センサ17との検知エリアについて説明する。この前配置右側人検知センサ15の検知エリア15Aは、図に示すように、パレット22の右側全体の領域である。また、前配置左側人検知センサ17の検知エリア17Aは、パレット22の右側全体の領域である。
【0037】次に、図3を参照して、後配置右側人検知センサ16と後配置左側人検知センサ18の検知エリアについて説明する。まず、後配置右側人検知センサ16の検知エリア16Aは、パレット22の右側全体の領域である。また、後配置左側人検知センサ18の検知エリア18Aは、パレット22の左側全体の領域である。
【0038】以上のように、前配置右側人検知センサ15と後配置右側人検知センサ16との検知エリアと、前配置左側人検知センサ17と後配置左側人検知センサ18との検知エリアとがそれぞれ重複するように設けられている。」

ウ 「【0046】次に、車両が右ハンドルの場合、運転者が前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16の検知エリアに車両から降りる。その後、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が運転者を検知して、プログラマブルコントローラ2に信号を伝え、立体駐車装置が起動しないように処理する。
【0047】次に、運転者が車両入退室より退室し、前配置右側人検知センサ15および後配置右側人検知センサ16が作動しなくなる。その後、運転者が車両入退室内の安全を確認した後、操作盤7で安全確認ボタンを押す。
【0048】そのとき、前配置右側人検知センサ15、後配置右側人検知センサ16、前配置全体人検知センサ17、後配置左側人検知センサ18、右配置全体人検知センサ19および左配置全体人検知センサ20が作動していなければ、立体駐車装置が起動できるようにプログラマブルコントローラ2で処理を行なう。
【0049】その後、運転者が操作盤7で車両入退室のドア閉ボタンを押し、ドアを閉める。これにより車両の立体駐車装置への入庫が完了する。」

(14)刊行物14(特開2006-77425号公報)
刊行物14には、以下の事項が記載されている。

ア 「【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図3は立体駐車場における機械式駐車装置の一例としてのエレベータ式駐車装置1を示しており、外壁パネルが装着された駐車塔2内部に、鉄骨トラス構造とされた鉄塔や該鉄塔に支持固定された複数の主棚柱・副棚柱等から構成された駐車構造物3を備えている。
【0023】
駐車構造物3内の中央部には、搬送路としての上下方向に延びる昇降路4が備えられると共に、この昇降路4に沿って昇降操作自在に車両搭載手段としての昇降台5が備えられている。そして、昇降路4に沿った左右両側のスペースには、車両6を収容して格納する複数段の車両格納用の駐車棚7がそれぞれ階層状に配置されている。
【0024】
これら各駐車棚7には、それぞれ車両搭載用のパレット8が載置されており、各駐車棚7と前記昇降台5との相互間で各パレット8は移載操作自在とされ、車両6はパレット8に載置されたまま駐車棚7に格納される構造とされている。」

イ 「【0029】
また、図2ないし図4に示される如く、駐車装置1の地上階には、車両6が出入する入出庫口16が備えられ、入出庫口16には入出庫口扉17が開閉操作自在に備えられている。さらに、入出庫口16を構成する枠組み構造体18の上部および入出庫口16に対向する駐車構造物3内の壁面側には、電光表示等による案内表示板19、20が備えられており、駐車装置1内の案内表示板20には音声案内等を行うためのスピーカが備えられている。また、その案内表示板20の下側には、運転者のための乗入位置確認用の鏡21が備えられている。
【0030】
地上階における昇降路4の両側には、パレット8の旋回に支障がない高さ位置に乗降デッキ22が備えられ、乗降床を構成している。」

ウ 「【0039】
さらに、地上階における駐車構造物3内には、左右の乗降デッキ22領域に立ち入っている人や動物を検知するためのパッシブ赤外線センサPS1、PS2がそれぞれ適宜高さ位置に配置されると共に、案内表示板20の上部位置には、パレット8上に入庫される車両6に向けてマイクロ波を送信し、車両6内の人や動物を検知するためのマイクロ波ドップラーセンサMSが配置されている。このマイクロ波ドップラーセンサMSの配置に際しては、風等による駐車塔2の壁の振動を考慮し、基礎コンクリート床等、揺れや振動の少ない箇所に取り付けることが好ましい。」

エ 「【0045】
先ず、入出庫の呼び操作があったかどうかが判断され(ステップS1)、呼び操作があれば、呼び操作が入庫かどうかが判断され(ステップS2)、入庫であれば入出庫階に空パレット8が呼び出される(ステップS3)。
【0046】
その後、入出庫階に空パレット8が到着したかどうかが判断され(ステップS4)、呼び出された空パレット8が入出庫階に到着すれば、入出庫口16における入出庫口扉17が開操作され(ステップS5)、運転者は、車両6を運転して昇降台5上に搭載されている空パレット8に乗込む(ステップS6)。
【0047】
その後、ステップS7に移行して、入出庫階に備えられた各光電センサPH1?PH7の検知状態により、車両6が正規位置に停車しているかどうかが判断され、正規位置に停車していない場合には、場内の正面に位置する案内表示板20による正規位置停車の誘導案内表示やそれに備えられたスピーカによる音声案内により、正規位置に停車するよう運転者に報知する(ステップS8)。
【0048】
そして、ステップS7において車両6が正規位置に停車していると判断されると、車両6からの降車および駐車装置1内からの退場の案内表示を案内表示板20等により行う(ステップS9)。
【0049】
降車・退場した運転者等の利用者は、その後、運転操作盤24により入出庫口扉17の閉操作を行う(ステップS10)。そして、入出庫口扉17の閉動作が完了したかどうかが判断され(ステップS11)、閉動作が完了すれば、タイマに予め設定された車両揺れ監視時間としての所定時間T(例えば、数秒)の計時が開始され(ステップS12)、マイクロ波ドップラーセンサMSによる車両6内の人や動物等の動体の検知処理が開始される。」

オ 「【0056】
そして、ステップS22において、所定時間Tが経過していれば、光電センサPH3、PH4のみが遮光検知状態で、他の光電センサPH1、PH2、PH5?PH7が受光検知状態かどうかが判断され(ステップS23)、光電センサPH3、PH4以外にも他のいずれかの光電センサPH1、PH2、PH5?PH7が遮光検知状態であれば、人や動物が場内にいると判断され、ステップS24に移行して、「人・動物が場内に残っている可能性があります。確認して下さい。」の案内表示が案内表示板19等により行われると共に、警報器としてのスピーカ27からの音声や警報等により利用者に報知され、入出庫口扉17が開操作される(ステップS17)。そして、タイマによる計時がリセットされ(ステップS18)、ステップS9に戻る。
【0057】
また、ステップS23において、光電センサPH3、PH4のみが遮光検知状態で、他の光電センサPH1、PH2、PH5?PH7が受光検知状態であれば、次に、パッシブ赤外線センサPS1、PS2により人や動物が非検知であるかどうかが判断され、検知状態であれば、ステップS24に移行し、非検知状態であれば、場内に人等が残っていないと判断して、昇降駆動機構11等の昇降台昇降装置に駆動許可指令が出力され(ステップS26)、タイマによる計時がリセットされ(ステップS27)、車両6が搭載された昇降台5は上昇し、入庫状態のパレット8を元の駐車棚7に移載して格納し(ステップS28)、一連の作業が終了する。」

(15)刊行物15(特開平8-303042号公報)
刊行物15には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、駐車設備の安全装置に関し、より特定的には、車両ドア保護装置を適正に作動させるための駐車設備の安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、都市部における駐車場の不足を解消するための1つとして、立体駐車設備の開発が盛んに進められている。この立体駐車設備は、一般に図7を参照して、車両を載置し、立体駐車設備内を循環移動させるためのパレット12が備えられている。このパレット12には、車を載置して循環移動する際に、車両のドアの開放による事故を防止するために、車両ドア保護装置が設けられている。」

イ 「【0008】以上のようにして、車両ドア保護装置を作動させることにより、入庫車両からの退室および乗入時には、保護柵を倒し、入庫車両が立体駐車設備内において収容されているときは、保護柵を立てることにより、立体駐車設備内での入庫車両のドアの開放による事故を未然に防止することが可能となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の車両ドア保護装置によれば、たとえば、両側に保護柵が設けられた場合、右側ハンドル車、左側ハンドル車にかかわらず、両側の保護柵を動作させている。したがって、動作を必要としない側の保護柵も動作させている。そのため、近年盛んに言われている省エネルギー化に逆行するものとなり、また故障の発生する確率を高める要因ともなっている。
【0010】この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、右側ハンドル車、左側ハンドル車に対応して、必要となる側の保護柵のみを作動させることのできる駐車設備の安全装置を提供することを目的とする。」

ウ 「【0033】次に、図3を参照して、自己認識式の駐車設備の安全装置について説明する。この自己認識式の駐車設備の安全装置は、まず、運転盤に設けられた左ハンドル車用または右ハンドル車用のスイッチJ10を、運転者または駐車設備の管理者が押し、左または右ハンドル車識別用の制御装置J20に入力する。次に、右または左ハンドル車識別用の制御装置J20から、立体駐車場の制御装置J40に所定の信号が出力され、右ハンドル用または左ハンドル用のパレットを呼ぶための信号が出力される。」

(16)刊行物16(特開2009-91799号公報)
刊行物16には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0023】
図1に示すように、立体駐車設備1としては、建物2の所定位置に、地上床3に連なる入出庫口5が設けられており、この入出庫口5には上方向に開放する扉6が設けられている。入出庫口5の内部の入出庫部(駐車室)7内には、車両Mを検知する車両検知器PH(人検知器兼用)が設けられている。この車両検知器PHは、後述するように複数の検知器から構成されている。また、入出庫部7の右側部には管理ボックス8が設けられており、この管理ボックス8には管理者が入出庫部7内を覗く窓9が設けられている。この例では、管理ボックス8内に運転操作盤10が設けられている。
【0024】
上記入出庫部7内の乗入れ部13(矩形開口)には、地下に設けられたパレット搬出入用リフト12によってパレット11が配置(着床)される。このパレット搬出入用リフト12は、昇降路14に設けられたリフト昇降機構15によって昇降させられる。この昇降路14の横方向には地下駐車空間16が設けられ、この地下駐車空間16には機械式駐車装置たる円形循環式駐車装置17が設けられている。この円形循環式駐車装置17は、地下駐車空間16の横方向に設けられたパレット円形循環機構18によってパレット11を循環させるようになっている。
【0025】
そして、上記入出庫口5の外側上方部には外部リモコン受信機21が設置され、入出庫部7の内部には内部リモコン受信機26が配置されている。この実施の形態の外部リモコン受信機21は、呼番号表示部22とリモコン受信表示灯23と道路灯24とが設けられた外部リモコン受信機ボックス25に設けられている。また、内部リモコン受信機26は、リモコン受信表示灯27が設けられた内部リモコン受信機ボックス28に設けられている。外部リモコン受信機21がリモコン送信機31(図2)からの信号を受信すると入出庫口5の扉6を開放し、内部リモコン受信機26がリモコン送信機31からの信号を受信すると入出庫口5の扉6を閉鎖するように、制御装置29によって制御されている。
【0026】
このように、リモコン操作によって運転操作する立体駐車設備1において、入出庫口5の外部に扉6を開放する外部リモコン受信機21を設置し、入出庫部7内の入出庫口5から見渡せる位置に扉6を閉鎖するため専用の内部リモコン受信機26を設置することにより、利用者は、入出庫口5の外部付近から入出庫部7内に向けてリモコン操作をしなければ扉6の閉操作が行えないようになっている。
【0027】
図2に示すように、この実施の形態のリモコン送信機31は、前面(図の上側)に送信窓32が設けられ、上面には非常釦33と安全確認釦34とスタート釦35とドア閉釦36と3個の予備釦37とが設けられている。また、この上面には、送信時のみ点灯する送信表示ランプ38が設けられている。このリモコン送信機31によれば、上記各釦34?36を押すことにより、前面の送信窓32から信号Sが発信される。この例では、リモコン送信機31の上面下部に契約利用者ごとに付与された呼番号39が記入されている。この呼番号39としては、駐車契約したパレット番号でもよいが、任意の空パレットに入庫させるフリーロケーションの場合、契約番号としてもよい。この場合、入庫時に契約番号と入庫パレット番号とが対で記憶される。」

イ 「【0037】
管理ボックス8内には、駐車場管理人が駐在するようになっているが、原則的には利用者自身が入出庫の運転操作を行い、管理人は安全管理上駐在し、窓9から入出庫部7内の様子を窺い、トラブル発生時等に、例えば利用者に代わって運転操作盤10にて必要な操作を代行する支援作業を行うようになっている。」

ウ 「【0039】
図8に示すように、車両Mを入出庫部7のパレット11上に入庫させた利用者は、降車して乗降通路45から入出庫口5の外に出たところで入出庫部7内の無人を目視で確認した上で、リモコン送信機31を内部リモコン受信機26に向けて「安全確認」「ドア閉」釦を押して「扉閉」操作を行う。この時、パレット11には入庫した車両Mが載置されているので、入出庫口5の右隅(反乗降通路側)から内部リモコン受信機26にリモコン送信機31を斜めに向けて信号を送信しても車両Mによって遮られて受信されないので、利用者は必然的に乗降通路45を見通して送信操作を行うこととなり、自ずと入出庫部7内の目視による安全確認を励行することができる。
【0040】
また、この例では、内部リモコン受信機26の信号受信可能な範囲R2の距離Lが最も遠い範囲で入出庫口5の外部に制限されており、遠方からの送信は受け付けられないようになっている。しかも、入出庫口5の外部の外部リモコン受信機21と、入出庫部7内の後側(奥側)に配置された内部リモコン受信機26とは、配置上数メートルの距離差が設けられているため受信範囲にも差があり、入庫後のリモコン送信機31による「扉閉」操作は誤りなく行われる。
【0041】
さらに、この実施の形態では、入出庫口5の外部に運転操作盤10が配設されていないため、利用者はリモコン送信機31を使用することによってのみ入庫完了後の「扉閉」操作ができるので、リモコン送信機31を車内に置き忘れることはあり得ず、置き忘れたとしても「扉閉」操作ができないことに直ぐに気付いて車内に取りに行くので、車両M内にリモコン送信機31を置き忘れることがなくなる。」

エ 「【0056】
また、上記実施の形態では、1つの入出庫部7に1つの入出庫口5としたが、1つの入出庫部7に2つの入出庫口5を有する立体駐車設備でも適用できる。この場合、外部リモコン受信機21は個々の入出庫口5の外に設け、内部リモコン受信機26は入出庫部7内に1個設けるか、また個々の入出庫口5に対応して2個設けるか、何れでも適用可能である。」

(17)刊行物17(特許第2792408号公報)
刊行物17には、以下の事項が記載されている。

「【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る確認装置を備えた駐車装置の平面図、図3は図1における操作盤の正面図、図4は安全確認装置のブロック図であり、図中図2と同一符号のものは同一のものを示す。
【0011】10は安全確認を行う人の死角になりがちな塔内の奥に設けられた表示装置で、例えば各ケージ2が出入口1に到着停止する度に乱数を表示し乱数信号10aを出力する装置、20は出入口1の側方に設けられた操作盤で、入庫釦21と出庫釦22とテンキーボード23と2組みの数字をディジタル表示する表示器24などからなる。30は表示装置10の乱数信号10aと表示器24の出力信号24aを比較し一致すれば確認信号30aを出力して駐車装置の運転を可能にする比較装置である。
【0012】要するに、ケージ2内に自動車3が入庫されてケージ2を循環運転させるには、そのときに表示装置10により表示されている乱数と同じ数字をテンキーボード23を使って入力し表示器24に表示されない限り運転動作が不可能となるものである。
【0013】つまり、操作盤20を操作する管理人などは、駐車装置の運転に先だって必ず通常死角となる領域を自ら出入口1の反操作盤20から見渡すことにより人の有無をしっかり確認するとともに、その際表示装置10によって表示されている乱数を見て、それと同じ数字をテンキーボード23により入力して比較装置30から確認信号30aを出力させない限り駐車装置を運転させることはできない。」

(18)刊行物18(特開2004-92347号公報)
刊行物18には、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自走式の建設機械を発進させる際の安全性を確保する建設機械の安全装置に関し、特に、建設機械を発進させる際に安全確認を実践させることで事故の発生を防止する建設機械の安全装置に関する。」

イ 「【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による建設機械の安全装置の実施形態を示す説明図である。この建設機械の安全装置は、自走式の建設機械を発進させる際の安全性を確保するものであり、安全確認スイッチ1と、タイマ手段2と、エンジンスイッチ3と、エンジン始動装置4とを含んで構成される。
【0011】
この建設機械の安全装置の適用される建設機械、例えば図2に示すタイヤローラ10は、土木建築現場で使用される自走可能な大型車両であり、内部にパワーユニットを有する車体11と、タイヤ12と、運転席13と、各種の操作スイッチとを備えたものである。車体11の下部に設けられたタイヤ12は、タイヤローラ10を走行させる走行部となるもので、エンジン始動後、エンジンからの動力がタイヤ12に伝達されることによって駆動される。このタイヤローラ10の車体11のデッキ中央に設けられた運転席13にはオペレータが座り、各種の操作スイッチを介してタイヤローラ10を走行させるための各種の信号を入力する。
【0012】
上記タイヤローラ10の周囲の所定箇所には、安全確認スイッチ1a?1dが複数設けられている。この安全確認スイッチ1a?1dは、タイヤ12の近傍の障害物の有無を確認して操作される安全確認信号入力手段となるもので、オペレータが車体11の周りを一周して安全確認をすべき部位、すなわち、各安全確認スイッチ1a?1dにおいて入力操作を行う際にタイヤ12を目視することとなるような部位、例えば、車体11の前後及び左右の側面のタイヤ12近傍の位置に設けられている。この安全確認スイッチ1a?1dは、安全確認信号が入力される例えば押しボタンスイッチであり、すべての安全確認スイッチ1a?1dが操作されることによって、後述するタイマ手段2を介してエンジンスイッチ3に電気的に接続される。そして、後述するエンジンスイッチ3を操作することによってエンジン始動装置4を作動させる。
【0013】
上記安全確認スイッチ1a?1dには、タイマ手段2が電気的に接続されている。このタイマ手段2は、安全確認スイッチ1a?1dが操作されてから所定時間経過した場合、又はタイヤローラ10の走行が停止してから所定時間経過した場合に、入力された安全確認信号を解除する手段となるものであり、図3に示すように、タイマリレー2aと、電磁弁2bと、走行センサR2,R3とを含んで構成される。
【0014】
タイマリレー2aは、それぞれの安全確認スイッチ1a?1dに電気的に接続されており、すべての安全確認スイッチ1a?1dが操作されて安全確認信号が入力されることによって、タイマ(図示されず)を始動させる。そして、タイマ始動から所定の時間が経過することによって安全確認信号を解除する。この解除によって、電磁弁2bが開放されると共に、上記安全確認スイッチ1a?1dが初期位置に復帰される。この場合は、オペレータが運転席13で後述するエンジンスイッチ3を操作してもエンジンは始動せず、エンジンを始動させるためには、車体11の周囲に設けられた安全確認スイッチ1a?1dを再度操作する必要が生ずる。一方、所定時間が経過する前は、安全確認信号が解除されず、後述するエンジンスイッチ3の操作によりエンジンを始動させることができる。」

(19)刊行物19(JIS規格 JIS B 9705-1)
刊行物19には、第28頁?第29頁の「5.2.2 手動リセット機能」と題された箇所に、次の記載がある。

「停止命令が安全防護物によって始動した後、再起動のための安全条件が存在するまで、その停止条件を維持しなければならない。
安全防護物をリセットすることによって安全機能を再設定することは、停止命令を消去することである。
・・・・(中略)・・・・
リセットアクチュエータは、危険区域の外で、危険区域内の人の不在を目視によってチェックしやすいような安全な位置に配置しなければならない。
危険区域の視認性が完全でない場合、特別のリセット手順が要求される
注記 一つの解決策は、第2のリセットアクチュエータの使用である。リセット機能は、危険区域の外側(安全防護物の近くで)に配置した第2のリセットアクチュエータと組み合わせて、第1のアクチュエータによって危険区域内で始動する。このリセットの手順は、制御システムが別の起動命令を受け取る前の制限時間内で実現することが必要である。」


第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
以下、平成29年10月27日付け取消理由通知、平成30年5月18日付け取消理由通知<決定の予告>、及び平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>をまとめて、「取消理由通知」という。
取消理由通知に記載した取消理由は、新規性及び/又は進歩性について、刊行物1、刊行物3、刊行物4、刊行物6、若しくは刊行物8を主たる引用例としたものである(平成29年10月27日付け取消理由通知、平成30年5月18日付け取消理由通知<決定の予告>、及び平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>)。
また、取消理由通知に記載した取消理由は、記載不備について、登録査定時の本件特許発明1、10及び16についてのサポート要件、及び登録査定時の本件特許発明10についての明確性要件(平成29年10月27日付け取消理由通知)、並びに、二次訂正請求後の請求項3ないし7に係る発明についての明確性要件(平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>)に関するものである。
そして、上記第2に判断したとおり、上記いずれの取消理由通知よりも後になされた本件訂正は認められるべきものであるから、以下では、本件訂正発明について、取消理由通知に記載した取消理由により取り消されるべきものであるか否かを、判断する。
なお、本件特許の請求項4、12及び18に係る発明は、本件訂正により削除された。

(1)刊行物1を主たる引用例とした新規性進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)刊行物1発明との対比
本件訂正発明1と刊行物1発明を対比する。
刊行物1発明の「駐車フロア」、「入庫バース16」、「機械式駐車装置」は、それぞれ本件訂正発明1の「格納庫」、「乗降室」、「機械式駐車装置」に相当する。
刊行物1発明において、「駐車バース16と」「発券室20との間は、入庫案内壁17で仕切られ、入庫バース自動扉18により人が行き来できるようになって」いるから、刊行物1発明の「入庫バース16」は、本件訂正発明1の「乗降室」と同様に、「前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な」ものである。よって、刊行物1発明の「入庫バース16の所定の定位置にある車両1を入庫リフト3a内に水平移動させ、車を駐車フロアに昇降させるようになっている、機械式駐車装置」は、本件訂正発明1の「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置」に相当する。
刊行物1発明において、「発券室20」の「内部に設置」されている「対話式操作盤30」は、「発券室20」が「入庫バース16」と「仕切られ」ていることをふまえると「入庫バース16」の外に設けられているということができるから、本件訂正発明1における「前記乗降室の外側に設けられた操作盤」に相当する。
刊行物1発明において、「対話式操作盤30」の「対話式画面38」の操作として、「ステップS6で「居ません」が選択されると、S8に移り、」「入口の自動扉18をロックし同時に出口の自動扉24を解除することにより、入口の自動扉18をロックする際には、利用者は、忘れ物とバース内の無人を確認していることにな」ることは、本件訂正発明1の「人による安全の確認が終了」することといえるから、刊行物1発明における「ステップS6で「居ません」が選択される」ことである「タッチパネルでの選択」と、本件訂正発明1における「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」とは、「人による安全確認の終了が入力される入力手段」という点で共通する。
刊行物1発明の「ステップS2でバース内の人の有無を自動検知」する手段は、本件訂正発明1の「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」に相当する。
刊行物1発明において、「ステップS6で「居ます」が選択され」たうえで、「その後、入庫バース16内では、駐車装置が自動運転され、所定の駐車棚に車両が駐車(格納)される」処理フローを実行する手段と、本件訂正発明1において、「前記入力手段に前記安全の確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段」とは、「前記入力手段に前記安全の確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段」という点で共通する。
刊行物1発明において、「更に、この対話式操作方法では、上記各ステップの操作中にもバース内の人の有無を自動検知し、人を検知した場合には、」「ステップS2に戻」ることは、ステップS6よりも前に戻ることであるから、本件訂正発明1における「前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」構成とは、「前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」という点で共通する。

よって、本件訂正発明1と刊行物1発明とは、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
人による安全確認の終了が入力される入力手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記前記乗降室の外側に設けられた操作盤と、
入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。」
で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・相違点1A
「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」に関し、
本件訂正発明1においては、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」され、かつ「複数の」ものであることが特定されているのに対し、
刊行物1発明においては、「すべての利用者が発券室20内にいることを一見して確認することができ」る「発券室20」に設置された「対話式操作盤30」の「対話式画面38」における「居ません」の選択であり、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」された「複数の」ものではない点。

・相違点2A
本件訂正発明1においては、「操作盤」に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されており、車両の搬送の実行が「前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われることが特定されているのに対し、
刊行物1発明においては、「対話式操作盤30」に「許可入力手段」が配置されることは特定されていない点。

・相違点3A
「前記入力手段」への「前記安全確認の終了の入力」の「解除」に関し、
本件訂正発明1では、「いずれかの前記入力手段に前記案園確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」として、入力手段の「いずれか」への入力がされた後からであること、及び「許可入力手段への操作」との関係が特定されているのに対し、
刊行物1発明においては、当該特定がない点。

(イ)相違点についての判断
上記相違点1Aについて判断する。

a 刊行物1発明は、「発券室20の内部」に設置された「対話式操作盤30」の「対話式画面38」において、「ステップS6」の「車の中や車の周りに人がいませんか?」に対する「居ません」又は「居ます」の選択を行わせるほか、「ステップS4」で「車の中や車の周りに忘れ物はありませんか?」に対する「ありません」又は「あります」の選択を行わせること、及び、「ステップS9」で「駐車券発券ボタン」を押させる構成を有している。
しかしながら、これらの操作はいずれも「発券室20の内部」に設置された「対話式操作盤30」の「対話式画面38」において行われるものであり、また車両の運転席側の領域を人が確認すること、及び運転席側に対して車両の反対側の領域の安全を人が確認することについて、終了を入力する入力手段をそれぞれ設けたものではない。
そして、上記第4の3(1)に摘記した、刊行物1のその他の記載を考慮しても、車両の運転席側の領域を人が確認すること、及び運転席側に対して車両の反対側の領域の安全を人が確認することについて、終了を入力する入力手段をそれぞれ設けることが、記載又は示唆されているということはできない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、実質的な相違点であり、また刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

b 刊行物2ないし10には、上記第4の3(2)ないし(10)に摘記した事項が記載されているが、機械式駐車装置の安全確認において、車両の運転席側の領域を人が確認すること、及び運転席側に対して車両の反対側の領域の安全を人が確認することについて、それぞれ確認終了の入力を行わせる入力手段を設けることが、記載又は示唆されているものではない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物2ないし10に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

c 刊行物11には、上記第4の3(11)に摘記したとおり、運転者が「駐車場内101」の「退出案内表示盤200」に設けられた「退出確認釦203」を押した後、「駐車場内101」から退出した運転者が「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」を押し、その後に運転者が、「運転操作盤110」に設けられた「「終了扉閉」釦」を押す、という事項が記載されている。
しかしながら、刊行物11において、「駐車場内101」の「退出案内表示盤200」と駐車場の外の「「運転操作盤110」とを、車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び運転席側に対して車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺に振り分けて配置することは、記載されていない。また、上記第4の3(11)アに摘記した【請求項1】における「前記運転者の前記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載、及び、同イに摘記した段落【0010】における「上記運転者の上記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載から、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」は、運転者自身が駐車場内から退出したことを確認するためのものであると解されることをふまえると、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」と「駐車場内101」の「退出確認釦203」とを、車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了入力と、運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了入力とを行う、それぞれの入力手段とすることが、刊行物11に記載あるいは示唆されていたということはできない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物11に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

d 刊行物12ないし14には、上記第4の3(12)ないし(14)に摘記した事項が記載されているが、いずれも機械式駐車装置において、車両の両側を検知領域とするよう、それぞれセンサを設けるものであり、人が安全を確認する安全確認について、車両の運転席側の領域の終了入力及び運転席側に対して前記車両の反対側の領域の終了入力に対応して、入力手段をそれぞれ配置することを記載あるいは示唆するものではない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物12ないし14に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

e 刊行物15には、上記第4の3(15)に摘記した事項が記載されているが、駐車装置における保護柵の付いたパレットについて、右側ハンドル車又は左側ハンドル車に対応して必要となる側の保護策のみを作動させるために、若しくは、右ハンドル用または左ハンドル用のパレットを呼ぶために、駐車装置の運転盤に右ハンドル車用または左ハンドル車用のスイッチJ10を設ける、というものであり、駐車装置において人が安全を確認する安全確認について、車両の運転席側の領域の終了入力及び運転席側に対して前記車両の反対側の領域の終了入力に対応して、入力手段をそれぞれ配置することを記載あるいは示唆するものではない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物15に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

f 刊行物16には、上記第4の3(16)ア及びエに摘記したとおり、立体駐車設備1において、入出庫部7の右側部の管理ボックス8内に運転操作盤10を設け、入出庫部7の内部に内部リモコン受信機26を、入出庫部7の入出庫口5の外側上方部に外部リモコン受信機21を設置すること、及び、入出庫部7に2つの入出庫口5を有する立体駐車設備では、外部リモコン受信機21及び内部リモコン受信機26を個々の入出庫口5に対応して2個設けてもよいことが、記載されている。
また、刊行物16には、同ウに摘記したとおり、利用者は降車して入出庫口5の外に出たところで入出庫部7内の無人を目視で確認した上で、リモコン送信機31を内部リモコン受信機26に向けて「安全確認」「ドア閉」釦を押して「扉閉」操作を行うこと、及び、この時入出庫口5の反乗降通路側からリモコン送信機31の信号を送信しても車両Mに遮られて受信されないので、利用者は必然的に乗降通路45を見通して送信操作を行うこととなることが、記載されている。
しかしながら、刊行物16においては、同ア及びイの摘記に示されるとおり、外部リモコン受信機21は、入出庫口5の扉を開放するためのものであり、また運転操作盤10は、トラブル発生時等に利用者に代わって必要な操作を代行するためのものであるから、刊行物16において内部リモコン受信機26に加えて外部リモコン受信機21及び運転操作盤10が設けられていることが、「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」を、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」するという、上記相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。
また、刊行物16において、同エに摘記した、内部リモコン受信機26を個々の入出庫口5に対応して2個設ける記載についても、同ウに摘記した事項をふまえると、利用者は利用する1の入出庫口5の外に出たところで乗降通路側の安全確認を行い、当該1の入出庫口5に対応する1の内部リモコン受信機26に向けてリモコン送信機31の「安全確認」釦を押すと解される一方、利用者が利用しない入出庫口5に対応する他方の内部リモコン受信機26を、反乗降通路側について利用者が安全確認を行ったことの終了の入力に利用することは記載も示唆もされていないから、上記相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物16に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

g 刊行物17ないし19には、上記第4の3(17)ないし(19)に摘記した事項が記載されている。
しかしながら、刊行物17の記載は、駐車装置の塔内の奥に設けられた表示装置の表示内容を、操作盤に入力させるというものであり、刊行物18の記載は、自走式の建設機械のエンジン始動装置4を作動させる前に、建設機械に設けられた安全確認スイッチ1a?1dを押させるというものであり、刊行物19の記載は、停止命令が始動した後の安全防護物をリセットすることに関する一般的な事項であるから、何れも機械式駐車装置において、「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」を、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」するという、上記相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成を示すものではない。
したがって、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成は、刊行物17ないし19に記載された事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

以上のとおり、本件訂正発明1は、上記相違点1Aの点で刊行物1発明と同一ではない。また、本件訂正発明1は、上記相違点1Aに係る構成について、刊行物1発明を引用発明として、刊行物2ないし19に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、上記相違点2A及び上記相違点3Aについて検討するまでもなく、刊行物1発明と同一ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2A及び上記相違点3Aについて検討するまでもなく、刊行物1発明を主引用発明として、刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし3、5ないし9について
本件訂正発明2ないし3、5ないし9は、本件訂正発明1の構成を全て含み、さらに限定を追加したものであるところ、上記アに示したとおり、本件訂正発明1は刊行物1発明と同一ではなく、また刊行物1発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明2ないし3、5ないし9も、刊行物1発明と同一ではなく、また刊行物1発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明10、16について
本件訂正発明10は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の制御方法」の発明として特定したものであるから、上記アと同様の理由により、刊行物1に記載された発明と同一ではなく、また刊行物1に記載された発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件訂正発明16は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」の発明として特定したものであり、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である本件訂正発明1と実質的に同じ内容であるから、上記アと同様の理由により、刊行物1に記載された発明ではなく、また刊行物1に記載された発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21について
本件訂正発明11、13ないし15は、本件訂正発明10の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであり、本件訂正発明17、19ないし21は、本件訂正発明16の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記ウに示したとおり、本件訂正発明10及び16は刊行物1に記載された発明ではなく、また刊行物1に記載された発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21も、刊行物1に記載された発明ではなく、また刊行物1に記載された発明及び刊行物2ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)刊行物3を主たる引用例とした新規性進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)刊行物3発明との対比
本件訂正発明1と刊行物3発明とを対比する。
刊行物3発明の「上部または下部の駐車室」、「機械式駐車場」は、それぞれ本件訂正発明1の「格納庫」、「機械式駐車装置」に相当する。
刊行物3発明において、「自動車或いは人が庫内に入る」から、該「庫」は、本件訂正発明1の「乗降室」に相当する。
刊行物3発明は、「駐車場の出入口部分に、搬出入装置を設け、これに自動車を格納し、無人にて上部または下部の駐車室へ自動的に収」めるものであるから、該出入口部分も、本件訂正発明1の「乗降室」に相当する。
よって、刊行物3発明の「駐車場の出入口部分に搬出入装置を設け、これに自動車を格納し、無人にて上部または下部の駐車室へ自動的に収められる方式の機械式駐車場」は、本件訂正発明1の「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置」に相当する。
刊行物3発明において、「運転盤15」が「出入口の扉13より外側に配置」されていることは、本件訂正発明1において、「乗降室の外側」に「操作盤」が「設け」られていることに相当する。
刊行物3発明における、「庫内より人が入るとその出た本人またはそれを確認した人が」「押す」「出入口脇にある押ボタンスイッチ14」と、本件訂正発明1における、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」とは、「人による安全確認の終了が入力される入力手段」という点で共通する。
刊行物3発明において、「人が庫内に入ると光電ビームPH-4を必ず遮断するので、リレー60が励磁され、扉13を閉じる装置及び自動車搬出入装置11は作動しなくな」ることから、刊行物3発明の「光電ビームPH-4」及び「リレー60」を含む装置は、本件訂正発明1の「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」に相当する。
刊行物3発明において、「押ボタンスイッチ14を押すと庫内のビームを1本も遮断していない時は、リレー60Sが励磁され、」「これが励磁されるとリレー60は消磁し、従つて次に扉13を閉じることができる」ことと、本件訂正発明1における、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段」とは、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段」という点で共通する。
刊行物3発明において、「光電ビームを遮断すると接点が開閉せしめ、リレー60が励磁されると扉13を閉じる装置及び搬出入装置11を動作できないように構成され、また扉13が閉じつつある時や閉じている時ならば直ちに開くようにも構成され」ていることと、本件訂正発明1において、「前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」こととは、「前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」点で共通する。

よって、本件訂正発明1と刊行物3発明とは
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
人による安全確認の終了が入力される入力手段と、
前記乗降室の外側に設けられた操作盤と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。」
で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・相違点1B
「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」に関し、
本件訂正発明1においては、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」され、かつ「複数の」ものであることが特定されているのに対し、
刊行物3発明においては、「押ボタンスイツチ14」は、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」されておらず、また「複数の」ものでない点。

・相違点2B
本件訂正発明1においては、「操作盤」に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されており、車両の搬送の実行が「前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われることが特定されているのに対し、
刊行物3発明においては、「運転盤15」に「許可入力手段」が配置されることは特定されていない点。

・相違点3B
「前記入力手段」への「前記安全確認の終了の入力」の「解除」に関し、
本件訂正発明1では、「いずれかの前記入力手段に前記案園確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」として、入力手段の「いずれか」への入力がされた後からであること、及び「許可入力手段への操作」との関係が特定されているのに対し、
刊行物3発明においては、当該特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1Bに係る本件訂正発明1の構成は、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成と同様であり、上記ア(イ)aないしgで示したとおり、刊行物1ないし19のいずれにも記載若しくは示唆されたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、上記相違点1Bの点で刊行物3発明と同一ではない。また、本件訂正発明1は、上記相違点1Bに係る構成について、刊行物3発明を引用発明として、刊行物1ないし2及び3ないし19に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件訂正発明1は、上記相違点2B及び上記相違点3Bについて検討するまでもなく、刊行物3発明と同一ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2B及び上記相違点3Bについて検討するまでもなく、刊行物3発明を主引用発明として、刊行物1ないし2及び3ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし3、5ないし9について
本件訂正発明2ないし3、5ないし9は、本件訂正発明1の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記アに示したとおり、本件訂正発明1は刊行物3発明と同一ではなく、また刊行物3発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明2ないし3、5ないし9も、刊行物3発明と同一ではなく、また刊行物3発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明10、16について
本件訂正発明10は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の制御方法」の発明として特定したものであるから、上記アと同様の理由により、刊行物3に記載された発明と同一ではなく、また刊行物3に記載された発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件訂正発明16は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」の発明として特定したものであり、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である本件訂正発明1と実質的に同じ内容であるから、上記アと同様の理由により、刊行物3に記載された発明ではなく、また刊行物3に記載された発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21について
本件訂正発明11、13ないし15は、本件訂正発明10の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであり、本件訂正発明17、19ないし21は、本件訂正発明16の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記ウに示したとおり、本件訂正発明10及び16は刊行物3に記載された発明ではなく、また刊行物3に記載された発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21も、刊行物3に記載された発明ではなく、また刊行物3に記載された発明及び刊行物1ないし2及び4ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)刊行物4を主たる引用例とした新規性進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)刊行物4発明との対比
本件訂正発明1と刊行物4発明とを対比する。
刊行物4発明の「自動車」を「搬出入装置により」「入庫させる」「所定の場所」、「搬出入口」、「機械式駐車設備」は、それぞれ、本件訂正発明1の「格納庫」、「乗降室」、「機械式駐車装置」に相当する。
刊行物4発明の「自動車の搬出入口で、運転者が自動車よりおりて搬出入口を無人としたのち、搬出入装置により所定の場所へ入庫させる方式の機械式駐車設備」は、本件訂正発明1の「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置」に相当する。
刊行物4発明において、「運転盤15」が「搬出入口のドア13の外側の隣り」に配置」されていることは、本件訂正発明1において、「乗降室の外側」に「操作盤」が「設け」られていることに相当する。
刊行物4発明における、「駐車設備を操作する運転盤15に内蔵されている安全確認の押ボタン14」と、本件訂正発明1における、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」とは、「人による安全確認の終了が入力される入力手段」という点で共通する。
刊行物4発明において、「搬出入口に自動車又は人が入ると必ず光電ビームを遮断するためリレー60は自己保持し、ドアは閉じることができなくな」るから、刊行物4発明の「光電ビーム」及び「リレー60」を含む装置は、本件訂正発明1の「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」に相当する。
刊行物4発明において、「光電ビームを遮断しなくなると安全確認の押ボタン14が有効になり、押すとリレー60Sが励磁し、リレー60が消磁してドアを閉じることができるようになる」ことと、本件訂正発明1における、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段」とは、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段」という点で共通する。
刊行物4発明において、「人が入ると必ず光電ビームを遮断するためリレー60は自己保持し」、「リレー60が励磁されるとドア13を閉じる装置及び搬出入装置11の動作を不可能とするよう構成されて」いることと 本件訂正発明1において、「前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」こととは、「前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」点で共通する。

よって、本件訂正発明1と刊行物4発明とは、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
人による安全確認の終了が入力される入力手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。」
で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・相違点1C
「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」に関し、
本件訂正発明1においては、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」され、かつ「複数の」ものであることが特定されているのに対し、
刊行物4発明においては、「安全確認の押ボタン14」は、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」されておらず、また「複数の」ものでない点。

・相違点2C
本件訂正発明1においては、「操作盤」に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されており、車両の搬送の実行が「前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われることが特定されているのに対し、
刊行物4発明においては、「運転盤15」に「許可入力手段」が配置されることは特定されていない点。

・相違点3C
「前記入力手段」への「前記安全確認の終了の入力」の「解除」に関し、
本件訂正発明1では、「いずれかの前記入力手段に前記案園確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」として、入力手段の「いずれか」への入力がされた後からであること、及び「許可入力手段への操作」との関係が特定されているのに対し、
刊行物4発明においては、当該特定がない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1Cに係る本件訂正発明1の構成は、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成と同様であり、上記ア(イ)aないしgで示したとおり、刊行物1ないし19のいずれにも記載若しくは示唆されたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、上記相違点1Cの点で刊行物4発明と同一ではない。また、本件訂正発明1は、上記相違点1Cに係る構成について、刊行物4発明を引用発明として、刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件訂正発明1は、上記相違点2C及び上記相違点3Cについて検討するまでもなく、刊行物4発明と同一ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2C及び上記相違点3Cについて検討するまでもなく、刊行物4発明を主引用発明として、刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし3、5ないし9について
本件訂正発明2ないし3、5ないし9は、本件訂正発明1の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記アに示したとおり、本件訂正発明1は刊行物4発明と同一ではなく、また刊行物4発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明2ないし3、5ないし9も、刊行物4発明と同一ではなく、また刊行物4発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明10、16について
本件訂正発明10は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の制御方法」の発明として特定したものであるから、上記アと同様の理由により、刊行物4に記載された発明と同一ではなく、また刊行物4に記載された発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件訂正発明16は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」の発明として特定したものであり、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である本件訂正発明1と実質的に同じ内容であるから、上記アと同様の理由により、刊行物4に記載された発明ではなく、また刊行物4に記載された発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21について
本件訂正発明11、13ないし15は、本件訂正発明10の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであり、本件訂正発明17、19ないし21は、本件訂正発明16の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記ウに示したとおり、本件訂正発明10及び16は刊行物4に記載された発明ではなく、また刊行物4に記載された発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21も、刊行物4に記載された発明ではなく、また刊行物4に記載された発明及び刊行物1ないし3及び5ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)刊行物6を主たる引用例とした新規性進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)刊行物6発明との対比
本件訂正発明1と刊行物6発明とを対比する。
刊行物6発明の「機械式立体駐車場」の「所定の駐車位置」、「機械式立体駐車場」の「入庫位置11」、「機械式立体駐車場」は、それぞれ、本件訂正発明1の「格納庫」、「乗降室」、「機械式駐車装置」に相当する。
刊行物6発明の「車が入出庫するためのパレット12が備えられ」た「入庫位置11」は、人が出入りすることは自明であるから、刊行物6発明の「車が入出庫するためのパレット12が備えられ、昇降装置などで所定の駐車位置に昇降移動などができるようになって」いる「機械式立体駐車場」は、本件訂正発明1の「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置」に相当する。
刊行物6発明における、「パレット12の両側の空間を検知範囲として設置された庫内動体検知用センサーPA1、PA2」と、本件訂正発明1における、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」とは、「前記車両の運転席側の領域の安全を確認する手段、及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を確認する手段」という点で共通する。
刊行物6発明において、「出入口13の扉14を閉じた状態で、庫内および車内に動体が無いことを検知してはじめて立体駐車場の起動操作が有効となる」ことをふまえると、「立体駐車場の起動操作」を行う手段が「庫内」ではない外側に配置されていることが明らかであり、当該「庫内」でない外側に配置されている「立体駐車場の起動操作」を行う手段は、本件訂正発明1における「乗降室の外側に設けられた操作盤」に相当する。
刊行物6発明の「庫内への人の侵入を検知するため、光電センサーで構成された侵入検知用センサーP6」は、本件訂正発明1の「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」に相当する。
刊行物6発明において、「パレット12上の適正位置に入庫車が収納されるとともに、庫内および車内に動体がないことが確認されると、はじめて立体駐車場の起動操作が有効となり、光電センサーP6による庫内動体侵入検知の結果、侵入ありと判断されると、立体駐車場の一切の起動操作が無効とされ、運転できないロック状態とされ、そして、出入口13の扉14を閉じる操作が行われ、扉14が閉じられ、この出入口13の扉14を閉じた状態で、庫内および車内に動体が無いことを検知してはじめて立体駐車場の起動操作が有効となる」ことと、本件訂正発明1において、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」構成とは、「前記安全を確認する手段で安全確認がされている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、車両の搬送を実行しない」という点で共通する。

よって、本件訂正発明1と刊行物6発明とは、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
人前記車両の運転席側の領域の安全を確認する手段、及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を確認する手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記安全を確認する手段で安全確認がされている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、車両の搬送を実行しない、
機械式駐車装置。」
で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・相違点1D
「入力手段」に関し、
本件訂正発明1では、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」を有するのに対し、
刊行物6発明では、「パレット12の両側の空間を検知範囲として設置された庫内動体検知用センサーPA1、PA2」である点。

・相違点2D
本件訂正発明1においては、「操作盤」に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されており、車両の搬送の実行が、「人による安全確認の終了が入力される」入力手段である「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われることが特定されているのに対し、
刊行物6発明においては、「起動操作」を行う手段に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されることは特定されておらず、車両の搬送の実行についても、「「人による安全確認の終了が入力される」「入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われるとは、特定されていない点。

・相違点3D
「入室」に対する安全を確保するために、
本件訂正発明1では、「いずれかの前記入力手段に前記案園確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」のに対し、
刊行物6発明においては、「光電センサーP6による庫内動体侵入検知の結果、侵入ありと判断されると、立体駐車場の一切の起動操作が無効とされ」るものの、「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」への「安全確認の終了の入力を解除する」ものではない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1Dに係る本件訂正発明1の構成は、「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」を、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」し、かつ「複数」のものとするところ、当該構成は、上記ア(イ)aないしgで示したとおり、刊行物1ないし19のいずれにも記載若しくは示唆されたものではない。
また、刊行物6発明において、「パレット12の両側の空間を検知範囲として設置された庫内動体検知用センサーPA1、PA2」を、それぞれ個別に「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」に置き換え、あるいは「庫内動体検知用センサーPA1、PA2」の各々について、「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」を追加する動機があるということもできない。
したがって、上記相違点1Dは実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は、刊行物6発明と同一ではない。また、本件訂正発明1は、上記相違点1Dに係る構成について、刊行物6発明を主引用発明として、刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件訂正発明1は、上記相違点2D及び上記相違点3Dについて検討するまでもなく、刊行物6発明と同一ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2D及び上記相違点3Dについて検討するまでもなく、刊行物6発明を主引用発明として、刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし3、5ないし9について
本件訂正発明2ないし3、5ないし9は、本件訂正発明1の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記アに示したとおり、本件訂正発明1は刊行物6発明と同一ではなく、また刊行物6発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明2ないし3、5ないし9も、刊行物6発明と同一ではなく、また刊行物6発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明10、16について
本件訂正発明10は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の制御方法」の発明として特定したものであるから、上記アと同様の理由により、刊行物6に記載された発明と同一ではなく、また刊行物6に記載された発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件訂正発明16は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」の発明として特定したものであり、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である本件訂正発明1と実質的に同じ内容であるから、上記アと同様の理由により、刊行物6に記載された発明ではなく、また刊行物6に記載された発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21について
本件訂正発明11、13ないし15は、本件訂正発明10の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであり、本件訂正発明17、19ないし21は、本件訂正発明16の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記ウに示したとおり、本件訂正発明10及び16は刊行物6に記載された発明ではなく、また刊行物6に記載された発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21も、刊行物6に記載された発明ではなく、また刊行物6に記載された発明及び刊行物1ないし5及び7ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)刊行物8を主たる引用例とした新規性進歩性
ア 本件訂正発明1について
(ア)刊行物8発明との対比
本件訂正発明1と刊行物8発明とを対比する。
刊行物8発明の「乗入口11」は、本件訂正発明1の「乗降室」に相当し、刊行物8発明の「立体駐車設備」は、本件訂正発明1の「格納庫」及び「機械式駐車装置」に相当する。
刊行物8発明の「乗入口11と、乗入口11と立体駐車設備の間の車輌13の運搬を行う車輌搬出入装置12を設けた立体駐車設備」は、本件訂正発明1の「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置」に相当する。
刊行物8発明において、「操作盤15」が「出入口14の外側の隣り」に「配置」されていることは、本件訂正発明1において、「乗降室の外側」に「操作盤」が「設け」られていることに相当する。
刊行物8発明において、「操作押ボタン16を押すと車輌搬出入装置12は作動する」構成は、該作動させるには、当然安全を人が確認した後に行われることは自明であるからことをふまえると、本件訂正発明1における「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」とは、「人による安全確認の終了が入力される入力手段」という点で共通する。
刊行物8発明において、「場外にいる者が誤って出入口14にある光電スイッチPH-4のビームを遮光して一歩踏み込んだ場合」「車輌搬出入装置12は作動」しないことから、刊行物8発明の「光電スイッチPH-4」を含む手段は、本件訂正発明1の「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」に相当する。
刊行物8発明において、「操作ボタン16を押すと車輌搬出入装置12は作動する」構成と、本件訂正発明1において、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段」とは、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段」という点で共通する。
刊行物8発明において、「場外にいる者が誤って出入口14にある光電スイッチPH-4のビームを遮光して一歩踏み込んだ場合」に「場外にいる者が誤って操作押ボタン16を押しても車輌搬出入装置12は作動」しない構成と、本件訂正発明1において、「前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」構成とは、「前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、車両の搬送を実行しない」という点で共通する。

よって、本件訂正発明1と刊行物8発明とは、
「格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
人による安全確認の終了が入力される入力手段と、
前記乗降室の外側に設けられた操作盤と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、車両の搬送を実行しない、機械式駐車装置。」
で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・相違点1E
「人による安全確認の終了が入力」される「入力手段」に関し、
本件訂正発明1においては、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」され、かつ「複数の」ものであることが特定されているのに対し、
刊行物8発明においては、「操作押ボタン16」は、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置」されておらず、また「複数の」ものでない点。

・相違点2E
本件訂正発明1においては、「操作盤」に「車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」が配置されており、車両の搬送の実行が「前記許可入力手段への操作が行われた後に」行われることが特定されているのに対し、
刊行物8発明においては、「操作盤15」に「許可入力手段」が配置されることは特定されていない点。

・相違点3E
「入室」に対する安全を確保するために、
本件訂正発明1では、「いずれかの前記入力手段に前記案園確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」のに対し、
刊行物8発明においては、「場外にいる者が誤って出入口14にある光電スイッチPH-4のビームを遮光して一歩踏み込んだ場合でも、場外にいる者が誤って操作押ボタン16を押しても車輌搬出入装置12は作動」しない点。

(イ)相違点についての判断
相違点1Eに係る本件訂正発明1の構成は、相違点1Aに係る本件訂正発明1の構成と同様であり、上記ア(イ)aないしgで示したとおり、刊行物1ないし19のいずれにも記載若しくは示唆されたものではない。
したがって、本件訂正発明1は、上記相違点1Eの点で刊行物8発明と同一ではない。また、本件訂正発明1は、上記相違点1Eに係る構成について、刊行物8発明を引用発明として、刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件訂正発明1は、上記相違点2E及び上記相違点3Eについて検討するまでもなく、刊行物8発明と同一ではない。
また、本件訂正発明1は、上記相違点2E及び上記相違点3Eについて検討するまでもなく、刊行物8発明を主引用発明として、刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし3、5ないし9について
本件訂正発明2ないし3、5ないし9は、本件訂正発明1の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記アに示したとおり、本件訂正発明1は刊行物8発明と同一ではなく、また刊行物8発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明2ないし3、5ないし9も、刊行物8発明と同一ではなく、また刊行物8発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明10、16について
本件訂正発明10は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の制御方法」の発明として特定したものであるから、上記アと同様の理由により、刊行物8に記載された発明と同一ではなく、また刊行物8に記載された発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件訂正発明16は、「機械式駐車装置」の発明である本件訂正発明1を、「機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法」の発明として特定したものであり、「安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、・・・入力手段を配置し、」というそれぞれの入力手段の配置工程について、「複数の」という記載を省略しているものの、「機械式駐車場」の発明である本件訂正発明1と実質的に同じ内容であるから、上記アと同様の理由により、刊行物8に記載された発明ではなく、また刊行物8に記載された発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21について
本件訂正発明11、13ないし15は、本件訂正発明10の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであり、本件訂正発明17、19ないし21は、本件訂正発明16の構成を全て含み、さらに構成を限定したものであるところ、上記ウに示したとおり、本件訂正発明10及び16は刊行物8に記載された発明ではなく、また刊行物8に記載された発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
そのため、本件訂正発明11、13ないし15、17、19ないし21も、刊行物8に記載された発明ではなく、また刊行物8に記載された発明及び刊行物1ないし7及び9ないし19に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>において通知した記載不備
平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>において通知した、記載不備の取消理由は、二次訂正請求後の特許請求の範囲の請求項1において、「入力手段」の配置位置は乗降室内であると解されるところ、請求項1を引用する請求項3においては、「入力手段は、前記乗降室の外側に設けられる操作盤または該操作盤の近傍に設けられている」と記載されていることから、「入力手段」の配置に関する特定が整合せず、二次訂正請求後の請求項3、及び請求項3を引用する請求項4ないし7の記載は明確でない、というものである。
そこで、本件訂正発明において、「入力手段」の配置位置が「乗降室内」であるか「乗降室外」であるかという点につき、発明が不明確であるか否かを判断する。
本件訂正発明1においては、「入力手段」の配置については、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれ」と特定されており、「乗降室内」であるか「乗降室外」であるかは特定されていない。また、訂正明細書及び図面を参照しても、第一実施形態において入力手段である「確認ボタン34」を乗降室内に配置する例が示されるとともに、段落【0011】及び【0090】には、入力手段である確認ボタンを乗降室外に設けることが示されているし、確認ボタンに求められる機能からみて、乗降室の内外いずれに配置されていてもその機能を発揮し得るから、本件訂正発明1においては、「入力手段」の配置位置について、乗降室内及び乗降室外のいずれも含むことを、当業者は理解することができる。
そして、本件訂正発明1において、「操作盤」の配置が「乗降室の外側」と特定されたうえで、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明3において、「入力手段」について「前記操作盤または該操作盤の近傍に設けられている」と付加的に特定されていても、上述したとおり、本件訂正発明1における「入力手段」の配置位置は乗降室内及び乗降室外のいずれも含むから、本件訂正発明3において、「入力手段」の配置に関する特定に不整合が生じるものではなく、発明が不明確となるものではない。
本件訂正発明2、5ないし11、13ないし17、19ないし21についても、同様に、「入力手段」の配置位置が「乗降室」の外であるか内であるかという点で、発明が不明確となるものではない。
したがって、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21は、平成30年12月26日付け取消理由通知<決定の予告>において通知した記載不備の取消理由によって取り消されるべきものではない。

(7)平成29年10月27日付け取消理由通知において通知した記載不備
ア サポート要件
平成29年10月27日付け取消理由通知において通知した、サポート要件に関する記載不備の取消理由は、登録査定時の特許請求の範囲の請求項1、10及び16について、
(ア)登録査定時の請求項1、10、及び13の記載では、「人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段」として、1のセンサで構成され、乗降室への入室または退室のいずれかを検知すれば足りるものを含むところ、明細書の実施例では2つのセンサを用いて入室と退室とを区別する構成が記載されているのみであり、「入退室検知手段」を1つのセンサとすることは記載も示唆もされていない。
(イ)登録査定時の請求項1,10及び13の記載では、「入退室検知手段」が入室と退室とを区別できず、乗降室内において人の存在(入室)を検知すれば、「前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」という技術事項を含むが、明細書には、乗降室内における人の存在を検知することについては記載も示唆もされていない。
というものである。

そこで、本件訂正発明において、上記の点で発明が明細書に記載したものであるか否かを判断する。
本件訂正後の請求項1,10及び16には、「人の前記乗降室への入退室を検知する入退出検知手段」と記載されるとともに、「前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」とも記載されている。
当該請求項の記載から、本件訂正発明1、10及び16における「入退室検知手段」は、「人の前記乗降室への入退室を検知」するとともに、「前記乗降室への人の入室」も「検知」できるものであり、入室または退室は検知できるが入室を検知できない、という手段は含まれないと理解できる。
そして、明細書に実施例として、入出庫口に2つのセンサ36A及びセンサ36Bを設け、該2つのセンサの検知順から人の入室と退室とを区別し、人の入退室及び入室を検知可能な入退室検知センサ36とする例が記載されているが、あくまで実施例であって、入退室及び入室を検知可能な手段を、実施例のとおり検知の順番で入室と退室とを区別する2つのセンサで構成しなければならないものではなく、入退室及び入室を検知できればよいから、本件訂正後の請求項1,10及び16の記載は、上記(ア)の点で、明細書に記載された範囲を超えて拡張されているものではない。
また、上述のとおり、本件訂正発明1,10及び16における「入退室検知手段」は、「人の前記乗降室への入退室を検知」するとともに、「前記乗降室への人の入室」も「検知」できるものであるところ、「入退室」の「検知」と「入室」の「検知」とが可能な手段であれば、「入退室検知手段」を用いた処理に支障はないことが明らかであるから、本件訂正後の請求項1,10及び16の記載は、上記(イ)の点で、明細書に記載された範囲を超えているものではない。
本件訂正後の請求項2ないし3、5ないし9、11、13ないし15、17、19ないし21についても、同様である。
したがって、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21は、上記サポート要件についての記載不備の取消理由によって取り消されるべきものではない。

明確性要件
平成29年10月27日付け取消理由通知において通知した、明確性要件に関する記載不備の取消理由は、登録査定時の特許請求の範囲の請求項10において、「前記入力手段が」という記載に先立って「入力手段」の記載がなく、請求項10の記載は明確でない、というものであるが、本件訂正後の請求項10において、「前記入力手段」の記載に先立つ「入力手段」の記載漏れはない。
本件訂正後の請求項1ないし3、5ないし9、11、13ないし17、19ないし21についても、同様である。
したがって、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21は、上記明確性要件についての記載不備の取消理由によって取り消されるべきものではない。

(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21に係る特許は、取消理由通知において通知したいずれの取消理由によっても、取り消されるべきものではない。

2 特許異議申立理由について
特許異議申立理由は、平成29年10月27日付け取消理由通知において通知した取消理由と同様である。
したがって、上記1で判断したとおり、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21に係る特許は、特許異議申立の理由により、取り消されるべきものではない。

3 申立人による意見書における主張について
(1)進歩性について
ア 申立人Aの主張について
申立人Aは、令和3年2月22日付け意見書において、本件訂正発明1と刊行物1発明との相違点1Aについて、刊行物11(同意見書中における甲第5号証)に記載される「退出確認釦」及び「安全確認釦」は、いずれも本件訂正発明1における「入力手段」に相当し、刊行物1発明に刊行物11に記載される「退出確認釦」及び「安全確認釦」を適用することは容易であるとともに、安全性を高めることを考慮して、「退出確認釦」及び「安全確認釦」の一方を運転席側の領域に、他方を運転席側と反対側の領域に設けることは設計事項程度であるから、相違点1Aは刊行物11の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得る旨を主張している(同意見書第20頁第10行-第26頁第3行)。
しかしながら、刊行物11において、上記第4の3(11)アに摘記した【請求項1】における「前記運転者の前記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載、及び、同イに摘記した段落【0010】における「上記運転者の上記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載から、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」は、運転者自身が駐車場内から退出したことを確認するためのものであると解されることをふまえると、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」と「駐車場内101」の「退出確認釦203」とについて、いずれか一方を車両の運転席側に設けて車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了を入力するものとし、他方を運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了を入力するものとすることは、安全性を高めるという技術常識を考慮しても、単なる設計事項ということはできない。
したがって、申立人Aの上記主張を考慮しても、本件訂正発明1と刊行物1発明との相違点1Aについて、上記1(1)ア(イ)の判断を変更すべき事情は見いだせない。
なお、申立人Aは、本件訂正発明10及び16についても、同様の主張を行っているが(同意見書第35頁第7行-第11行)、当該主張について考慮しても、上記1(1)ウの判断を変更すべき事情は見いだせない。

イ 申立人Bの主張について
申立人Bは、令和3年2月20日付け意見書において、本件訂正発明1と刊行物3発明との相違点1Bについて、刊行物11(同意見書中における参考資料2)に開示された技術と刊行物12(同参考資料1)、又は刊行物15(同参考資料5)、若しくは刊行物1(同参考資料8)に開示された技術との組み合わせにより得られる構成であるか、刊行物16(同参考資料6)に開示された技術と刊行物15に開示された技術との組み合わせにより得られる構成であるか、刊行物17(同参考資料7)に開示された技術と刊行物1に開示された技術との組み合わせにより得られる構成であるから、相違点1Bに係る構成に至ることは当業者にとって容易に想到できる旨を主張している。
しかしながら、刊行物11に記載される「駐車場内101」の「退出確認釦203」と「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」とについて、刊行物12に示される「人感センサー」、刊行物15に記載される「右ハンドル用または左ハンドル用パレットを呼ぶためのスイッチ」、あるいは刊行物1に記載される「対話式操作盤30」を組み合わせる動機付けはなく、たとえ組み合わせたとしても相違点1Bに係る本件訂正発明1の構成となるものではない。また、刊行物16に記載される「内部リモコン受信機26」と、刊行物15に記載される「右ハンドル用または左ハンドル用パレットを呼ぶためのスイッチ」を組み合わせる動機付けもなく、たとえ組み合わせたとしても相違点1Bに係る本件訂正発明1の構成となるものではない。さらに、刊行物17に記載される「塔内の奥に設けられた表示装置」と、刊行物1に記載される「対話式操作盤30」を組み合わせる動機付けはなく、たとえ組み合わせたとしても相違点1Bに係る本件訂正発明1の構成となるものではない。
そして、刊行物3発明において、申立人Bが言及する上記複数の技術を組み合わせたうえで、刊行物3発明に適用することが示唆されていたということもできない。
したがって、申立人Bの上記主張を考慮しても、本件訂正発明1と刊行物3発明との相違点1Bについて、上記1(2)ア(イ)の判断を変更すべき事情は見いだせない。
なお、申立人Bは、本件訂正発明10及び16についても、同様の主張を行っているが(同意見書中、本件訂正発明10については、本件訂正発明1についてと同じ箇所、本件訂正発明16については、同意見書第20頁第1行-第25頁第14行)、当該主張について考慮しても、上記1(2)ウの判断を変更すべき事情は見いだせない。

ウ 申立人Cの主張について
申立人Cは、令和3年2月19日付け意見書において、本件訂正発明1、10及び16における「入力手段」の配置について、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」と「運転席側に対して車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」との位置関係は特定されていないから、本件訂正発明1、10及び16と刊行物1発明、刊行物3発明、刊行物4発明、刊行物6発明との間の相違点は、「入力手段」に関しては入力手段が「複数」設けられている点のみとなる旨を主張している。そして、入力手段を複数設けることは単なる設計事項であり、また刊行物16(同意見書中における甲第9号証)、刊行物18(同甲第10号証)、刊行物11(同甲第11号証)、及び刊行物19(同甲第12号証)に記載されているから、本件訂正発明1,10及び16における「入力手段」の構成は、単なる設計事項であるか、刊行物16、18、11又は19の記載に基づいて容易に想到し得た旨を主張している(同意見書第2頁第1行-第9頁下から6行)。
しかしながら、刊行物11に記載される「駐車場内101」の「退出確認釦203」と「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」とは、何らかの入力手段が複数あるという点では本件訂正発明1における「複数の入力手段」と共通するものの、上記第4の3(11)アに摘記した【請求項1】における「前記運転者の前記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載、及び、同イに摘記した段落【0010】における「上記運転者の上記駐車場内からの退出を確認するための退出確認手段」という記載から、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」は、運転者自身が駐車場内から退出したことを確認するためのものであると解されることをふまえると、「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」と「駐車場内101」の「退出確認釦203」とについて、いずれか一方を車両の運転席側に設けて車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了を入力するものとし、他方を運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認の終了を入力することを、開示あるいは示唆するものではない。そのため、刊行物11に記載される「駐車場内101」の「退出確認釦203」と「運転操作盤110」に設けられた「「安全確認」釦」とが、本件訂正発明1,10及び16が有する、「人による安全確認の終了」が「入力」される「入力手段」を、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」の「それぞれ」に「配置」するという構成を、開示あるいは示唆するものということはできない。
刊行物16に記載される「内部リモコン受信機26」と「外部リモコン受信機21」は、何らかの入力手段が複数あるという点では本件訂正発明1における「複数の入力手段」と共通するものの、上記1(1)ア(イ)fで指摘したとおり、「外部リモコン受信機21」は入出庫口5の扉を開放するためのものであるから、本件訂正発明1、10及び16における「人による安全確認の終了が入力される入力手段」の配置あるいは数について示唆するものではない。また、同刊行物16に記載される、「個々の入出庫口5に対応」して設けた「2個」の「内部リモコン受信機26」についても、上記1(1)ア(イ)fで指摘したとおり、利用者が利用しない入出庫口5に対応する他方の内部リモコン受信機26を、反乗降通路側について利用者が安全確認を行ったことの終了入力に対応づけることは記載も示唆もされていないから、本件訂正発明1,10及び16が有する、「人による安全確認の終了」が「入力」される「入力手段」を、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」の「それぞれ」に「配置」するという構成を、開示あるいは示唆するものではない。
刊行物18の記載は、自走式の建設機械のエンジン始動装置4を作動させる前に、建設機械に設けられた安全確認スイッチ1a?1dを押させるというものであり、刊行物19の記載は、停止命令が始動した後の安全防護物をリセットすることに関する一般的な事項であるから、何れも本件訂正発明1,10及び16が有する、「人による安全確認の終了」が「入力」される「入力手段」を、「車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺」の「それぞれ」に「配置」するという構成を、開示あるいは示唆するものではない。
したがって、申立人Cの上記主張を考慮しても、本件訂正発明1、10及び16の進歩性について、上記1(1)ないし(5)の判断を変更すべき事情は見いだせない。本件訂正発明1、10又は16の構成を全て有する、本件訂正発明2ないし3、5ないし9、11、13ないし15、17、19ないし21についても、同様である。

(2)記載不備について
ア 申立人Aの主張について
(ア)サポート要件について
申立人Aは、令和3年2月22日付け意見書において、明細書によれば、より確実に乗降室から人が退出した後にパレットの搬送動作を行わせることが本願の目的であると解されるところ、本件訂正発明1、10及び16は、「入退室検知手段」によって人の退出を検知することを搬送の実行の条件として特定しておらず、乗降室から人が退出した後に搬送を実行するという課題を解決できると認識することができる範囲を超えているから、サポート要件を充足しない旨を主張している(同意見書第11頁第3行-第14頁第5行)。
上記申立人Aの主張について検討する。
訂正明細書の段落【0007】には、「本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性が確保される、機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法を提供することを目的とする。」と記載されており、訂正明細書において解決しようとする課題は、機械式駐車装置において、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、もって乗降室内の安全性を確保することと認められる。
そして、本件訂正発明1の構成によれば、「前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段」を有したうえで、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態」で、「前記車両の搬送を実行する」から、車両の搬送が実行される前に、「車両の運転席側の領域」及び「車両の反対側の領域」については、「人による安全確認の終了が入力」されていることとなる。また、本件訂正発明1の構成によれば、「前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段」を有したうえで、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する」から、「安全確認実施位置」及び「入力手段」が乗降室内及び乗降室外のいずれにある場合であっても、安全確認を実施したうえで「許可入力手段」を操作する者が、乗降室外に出た後に、「車両の搬送を実行」することとなる。さらに、本件訂正発明1の構成によれば、「いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する」から、安全確認を実施する者がいずれかの「安全確認実施位置」について「安全確認の終了」を入力してから、乗降室外の「許可入力手段」を操作するまでの間に、別の者が乗降室内に入室した場合には、「車両の搬送の実行」は行われないこととなる。
また、本件訂正発明1において、「安全確認実施位置」及び「入力手段」の位置は乗降室の外である場合を含むから、「入力手段」への入力より前に安全確認の実施者が乗降室から退室していることもあり得るとともに、訂正明細書の段落【0020】-【0022】には、以下のように記載されている。
「【0020】
本構成によれば、車両の搬送の許可が入力される許可入力手段が、乗降室外に配置される。許可入力手段は、例えば人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。そして、許可入力手段への操作が行われた後に、車両の搬送が実行される。すなわち、安全確認の実施状態を入力手段に入力した安全確認者が、許可入力手段への操作を行った後に、車両の搬送が実行される。
従って、本構成は、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0021】
上記第一態様では、前記制御手段が、前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とすることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、例えば乗降室の入退口に備えられた入退室検知手段によって乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、許可入力手段への操作が有効とされる。これにより、例えば安全確認者が乗降室から出る前に、他者によって許可入力手段への操作が行われても、車両の搬送が実行されることは無い。
従って、本構成は、より確実に乗降室内の安全性が確保される。」
上記段落【0020】-【0022】の記載からも、訂正明細書において、「入退室検知手段」による人の退出の検知は、好ましい条件の例示という位置づけであると理解することができる。
以上のとおり、本件訂正発明1は、車両の運転席側及び反対側の安全確認が終了し、安全確認の実施者が乗降室外の許可入力手段を操作する位置におり、かつ、途中で別の者の入室がないことを、車両の搬送を実行する条件としており、機械式駐車装置において、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、もって乗降室内の安全性を確保するという課題を、合理的に解決するものと理解できる。
したがって、申立人Aの上記主張について検討しても、本件訂正発明1は、サポート要件違反の新たな取消理由を有するものではない。本件訂正発明2ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21についても、同様である。

(イ)明確性要件について
申立人Aは、令和3年2月22日付け意見書において、本件訂正発明1、6、10、14、16及び20は、以下の点で不明確であるから、明確性要件を充足しない旨を主張している(同意見書第14頁第6行-第20頁第9行)。
a 本件訂正発明1において、「前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態」について、「複数」の「入力手段」の全部への入力がされていることをさすのか、一部への入力がされていることをさすのか不明であるから、発明が明確でない。
b 本件訂正発明1において、「入力手段」が「乗降室の内側」に配置され、「入退室検知手段」が「入室と退室を区別しない」構成を含むところ、入室か退室かを区別しない「入退室検知手段」を用いた場合、乗降室内の入力手段に入力をした者が退出した際にも「入室」として入力が解除され、入庫制御が完了しないこととなるため、「入力手段」と「入退室検知手段」との関係が不明であり、発明が明確でない。
c 本件訂正発明1において、「安全確認実施位置の近辺」という「入力手段」の配置の特定では、安全確認実施位置を乗降室外、入力手段を乗降室内とする構成も含むところ、その場合には乗降室外の安全確認実施位置で安全を確認した後に、乗降室内の入力手段に入力するため入室した際に入力がリセットされ、車両の搬送を行うことができなくなる矛盾を生じるから、発明が明確でない。
d 本件訂正発明1において、「安全確認実施位置の近辺」がどの程度離れた位置まで含むのか、不明確であるから、発明が明確でない。
e 本件訂正発明1において、「入力手段」への入力と「許可入力手段への操作が行われた」ことの両方が車両の搬送を実行する条件であるのに、「許可入力手段」は「車両の搬送の許可が入力される」と特定され、「入力手段」は「人による安全確認の終了が入力される」と特定されているのは、「入力手段」と「許可入力手段」との関係が整合せず、発明が不明確である。
f 本件訂正発明10及び16において、本件訂正発明1における上記aないしeと同様の点で、発明が明確でない。
g 本件訂正発明6、14、及び20において、「許可入力手段への操作が有効とされ」「許可入力手段への操作を無効とする」と特定されているが、許可入力手段が有効とされたり無効とされたりする構成について何ら特定されていないから、発明が不明確である。

上記申立人Aの主張について検討する。
上記aの点については、本件訂正後の請求項1において、「入力手段」の「全て」に「安全確認の終了が入力されている状態」とは記載されていないこと、及び、訂正明細書の段落【0076】-【0084】に記載される第2実施形態において、確認ボタン34A及び34Bを設けたうえで、条件判断により全ての確認ボタンへの入力を必要としない例が示されていることから、「複数の入力手段」を設けたうえで、状況に応じて入力を求めるべき入力手段については、「確認の終了が入力されている状態」であると、当業者は理解することができ、発明が不明確なものではない。
上記bの点について、本件訂正発明1においては「前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合」と特定されており、そもそも入退室を区別せず退室についても入室と混同する手段を用いることや、入退室のいずれが検知されても同じ処理を行うことが特定されているものではないから、発明が不明確なものではない。
上記cの点について、「入力手段」の一部が乗降室内にあっても、乗降室内にある「入力手段」に入力を終えてから安全確認者が乗降室から退出すればよく、「いずれかの入力手段」に入力を終えた後に必ず安全確認者が再び入室することが必要となるものではないから、本件訂正発明1の発明特定事項に矛盾はなく、発明が不明確なものではない。
上記d及びeの点については、いずれも本件訂正発明1の理解に特段の支障となる事項ではなく、第三者に不測の不利益を生じさせる程に発明が不明確となるものではない。
上記fの点については、上記aないしeと同様である。
上記gの点については、機能の面から発明を特定しているものであり、この点について、第三者に不測の不利益を生じさせる程に、発明が不明確なものではない。
したがって、申立人Aの上記主張について検討しても、本件訂正発明1、6、10、14、16及び20は、明確性要件違反の新たな取消理由を有するものではない。本件訂正発明2ないし3、5、7ないし9、11、13、15ないし17、19及び21についても、同様である。

イ 申立人Bの主張について
申立人Bは、令和3年2月20日付け意見書において、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、次の点で、実施可能要件を充足しない旨を主張している(同意見書第5頁第1行-第6頁最終行)。
a 本件訂正発明1及び10では、「複数の入力手段」を設けたものの「1つの入力手段」に「入力」がされた状態で「許可入力手段への操作」が行われると「車両の搬送を実行」する態様を含み、残る入力手段に対応する領域の人の存在を見逃して車両の搬送を実行する事態が生じる可能性があるところ、人による確認により乗降室内の安全を確保するという効果をどのように奏するのか、明細書の記載において不明である。
b 本件訂正発明1において、安全確認を行う「車両の反対側の領域」は「車両内部」を含むと考えられるが、車両内でしゃがんでいたり横になっている者は見逃す可能性があるところ、「同乗者が車両内に居残る場合等を見逃さず、人による確認により乗降室内の安全確認をする」という効果をどのように奏するのか、明細書の記載において不明である。
c 本件訂正発明1及び10を引用する請求項に係る発明についても、同様である。

上記申立人Bの主張について検討する。
上記aの点について、訂正明細書の段落【0076】-【0084】に記載される第2実施形態において、確認ボタン34A及び34Bを設けたうえで、条件判断により全ての確認ボタンへの入力を必要としない例が示されているように、「複数の入力手段」を設けたうえで、設けた複数の入力手段の「全て」に入力することが特定されていなければ、発明を実施することができないというものではないから、発明の詳細な説明において、本件訂正発明1及び10を実施することができない不備があるものではない。
上記bの点について、安全確認実施位置から確認を行っても、なお車両内でしゃがんでいたり横になっている者を見逃す場合が有り得るからといって、本件訂正発明1を実施することができないものではないから、発明の詳細な説明において、本件訂正発明1を実施することができない不備があるものではない。
本件訂正発明2ないし3、5ないし9、11、13ないし15についても、同様である。
したがって、申立人Bの上記主張について検討しても、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし15について、実施可能要件違反の新たな取消理由を有するものではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、申立人による意見書における主張を検討しても、上記1及び2における判断を変更すべき事情は見いだせず、また、他に本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、19ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見することはできない。


第6 むすび
以上のとおり、本件訂正は全て認められるとともに、本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、及び19ないし21に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件訂正発明1ないし3、5ないし11、13ないし17、及び19ないし21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項4、12及び18に係る発明は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち、請求項4、12及び18に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御方法、及び機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置として、格納庫へ搬送されるパレットに車両が載置され、車両の運転者が車両に乗降可能な乗降室を備えるものが普及している。
【0003】
このような機械式駐車装置では、乗降室の外で同乗者や荷物を車外に降ろした後に、車両の運転者のみが車両と共に乗降室に進入し、パレットに車両を載置する。
しかし、乗降室の外にいた人が乗降室に入ってきてしまう場合や、運転者以外の人が機械式駐車装置の動作指令を出すといった、意図しない状況が生じる場合があった。
【0004】
このため、特許文献1には、乗降室に車両の進行方向から映すカメラを備え、カメラの映像に人を発見したとき操作盤の操作を停止する立体駐車装置が開示されている。
また、特許文献2には、入庫された車両内の人及び動物を直接検知すると共に車両の一部または車体の揺れを検知するマイクロ波ドップラーセンサからの入力信号に基づいて、人又は動物等の動体の存在を判断する立体駐車場が開示されている。
また、特許文献3には、入庫時の車両重量と昇降台上へ搭載後の車両重量との重量差を求めて、その重量差が人の重量分に相当する範囲内になければ、入出庫口扉を開制御する立体駐車場が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2012-158968号公報
【特許文献2】 特許第4557646号公報
【特許文献3】 特許第4391247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から特許文献3に記載の技術では、カメラ、ドップラーセンサ、車両の重量検出手段等を備える必要があり、これらの装置の導入によるコスト増が生じる。また、上記技術では、カメラの死角、外乱によるドップラーセンサや重量検出手段の誤検出等、人等の検出精度の低下が問題となる。その結果、乗降室から人が退出していないにもかかわらず、機械式駐車装置が動作する可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性が確保される、機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法は以下の手段を採用する。
【0009】
本発明の第一態様に係る機械式駐車装置は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段と、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段と、人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、を備え、前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。
【0010】
本構成に係る機械式駐車装置は、格納庫へ搬送される車両が載置され、車両の運転者が車両に乗降可能な乗降室が設けられる。
【0011】
例えば、乗降室の外側に設けられる操作盤又は該操作盤の近傍には、人による安全確認の終了が入力される入力手段が設けられる。入力手段は、例えば人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。安全確認は、人の有無やパレットの搬送の障害になる物の有無等の確認である。すなわち、車両から降りた運転者が、安全確認者として乗降室内の外側に設けられる操作盤又は該操作盤の近傍へ移動する。そして、安全確認者が、乗降室内の安全確認を実施した後に、入力手段への入力(例えば押ボタンの押圧)を行う。これにより、安全確認終了という安全確認の実施状態が入力手段に入力されることとなる。
【0012】
乗降室内の安全確認は、運転者が乗降室内に居るものの(時には同乗者が車両内に居残る場合がある)確実な検知方法がない。このため、乗降室内の安全確認は、人による確認が最も効果的な方法であると考えられる。なお、安全確認者は、車両の運転者に限らず、機械式駐車装置の管理者等でもよい。
【0013】
そして、入力手段への入力が行われ、かつ乗降室から人が退室した後に、制御手段によって、パレットの搬送が実行される。このため、入力手段への入力が行われ、乗降室から人が退室することで安全が確保されない限り、パレットの搬送は行われず、車両も格納庫へ搬送されることは無い。
更に、本構成によれば、入力手段に安全確認の終了が入力された後に、入退室検知手段によって乗降室への人の入室が検知された場合、制御手段によって入力手段への安全確認の終了の入力が解除される。このように、入力手段に安全確認の終了が入力された後に、新たに人が乗降室内へ入室した場合には、再び乗降室内の安全確認を必要とするため、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0014】
従って、本構成は、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性を確保できる。
【0015】
上記第一態様では、前記入力手段が、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有することが好ましい。
【0016】
本構成に係る入力を促す機能は、例えば入力手段が明滅する機能である。具体的には、入力が行われていない入力手段は明滅し、入力が行われた入力手段は消灯する。これにより、本構成は、入力手段への入力忘れや入力ミスが防止できる。
【0019】(削除)
【0020】
本構成によれば、車両の搬送の許可が入力される許可入力手段が、乗降室外に配置される。許可入力手段は、例えば人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。そして、許可入力手段への操作が行われた後に、車両の搬送が実行される。すなわち、安全確認の実施状態を入力手段に入力した安全確認者が、許可入力手段への操作を行った後に、車両の搬送が実行される。
従って、本構成は、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0021】
上記第一態様では、前記制御手段が、前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とすることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、例えば乗降室の入退口に備えられた入退室検知手段によって乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、許可入力手段への操作が有効とされる。これにより、例えば安全確認者が乗降室から出る前に、他者によって許可入力手段への操作が行われても、車両の搬送が実行されることは無い。
従って、本構成は、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0025】
上記第一態様では、前記制御手段が、前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とすることが好ましい。
【0026】
本構成によれば、安全確認者が許可入力手段への操作を行う前に他者が乗降室へ入室した場合、入力手段への入力が解除されるとともに、有効となった許可入力手段への操作が無効とされる。そして、再び安全確認が行われて入力手段への入力がされ、入退室検知手段により退出が検知された後に許可入力手段への操作が再び有効となる。
本構成によれば、新たに人が乗降室内へ入室した場合に、再び乗降室内の安全確認を必要とするため、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0027】
上記第一態様では、載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、前記制御手段が、前記入力手段へ前記安全確認の終了が入力されてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了を解除することが好ましい。
【0028】
入力手段への入力後に車幅検知手段が検知信号を出力する場合とは、車両に居残っていた同乗者が車両から降りた場合である。この場合、乗降室には、運転者以外に同乗者が居ることとなる。そこで、本構成は、入力手段への安全確認の終了の入力後から許可入力手段への操作の間に車幅検知手段から検知信号が出力された場合、入力手段への安全確認の終了の入力を解除する。これにより、同乗者の乗降室からの退室確認を含む乗降室内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室内の安全性が確保される。
【0029】
上記第一態様では、前記乗降室内を撮像する複数のカメラと、前記入力手段の近辺に配置され、前記カメラで撮像された画像を表示するモニタとを備えていてもよい。前記カメラは、例えば、前記車両を挟んで複数配置されていてもよい。
上記第一態様では、前記入力手段の近辺に配置され、前記車両に対して反対側の安全確認を可能とする反対側安全確認手段を備えることが好ましい。反対側安全確認手段を備えることにより、安全確認者が車両に対して反対側へ移動しなくても、反対側の安全確認ができる。
【0031】
本発明の第二態様に係る機械式駐車装置の制御方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置された複数の入力手段、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する第2工程と、を含み、いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する。
本発明の第三態様に係る機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法は、格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行し、いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、より確実に乗降室から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性が確保される、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の外観図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係る安全確認処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】 本発明の第2実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【図6】 本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】 本発明の第3実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【図8】 本発明の他の実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【図9】 本発明の他の実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【図10】 本発明の他の実施形態に係る乗降室の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係る機械式駐車装置及び機械式駐車装置の制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0036】
図1は、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10(立体駐車場)の外観図である。
【0037】
機械式駐車装置10は、車両12を乗入階14から入出庫させる。そして、機械式駐車装置10は、車両12を載置したパレット16を乗入階14と車両12を格納する格納庫18との間で昇降させる。なお、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫18よりも上層とする等、他の構成であってもよい。
【0038】
乗入階14には、格納庫18へ搬送されるパレット16に車両12が載置され、車両12の運転者が車両12に乗降可能な乗降室20が設けられている。
【0039】
また、乗降室20(乗入階14)の外側には、機械式駐車装置10の操作盤22が設けられる。
操作盤22は、機械式駐車装置10の利用者が操作可能なように、例えば、スイッチ、タッチパネル、ICカード、リモコン装置等を介して各種操作(入庫又は出庫の指示等)の入力を受け付ける。また、操作盤22は、文字や画像等を表示する液晶ディスプレイ装置、表示ランプ等の表示装置、音声合成装置による音声、警報音を出すスピーカーによって、種々の情報を利用者のために提供する。
【0040】
図2は、乗降室20の構成を示した上面図である。
【0041】
車両12及び運転者等は、入出庫口30から乗降室20へ出入りする。入出庫口30には、入出庫扉32が設けられ、乗降室20の略中央には、車両12が載置されるパレット16が配置される。
【0042】
乗降室20内には、安全確認の実施位置の近辺に配置され、人による安全確認の実施状態が入力される入力手段である確認ボタン34A,34Bが備えられる。確認ボタン34A,34Bは、人によって押圧されるボタン(押ボタン)である。
本第1実施形態では、確認ボタン34A,34Bは、パレット16(車両12)を挟んだ位置、図2の例では左右の壁面35に備えられる。より具体的には、図2の例では、右奥(車両12右側前方)の壁面35に確認ボタン34Aが備えられ、左手前(車両12左側後方)の壁面35に確認ボタン34Bが備えられる。
なお、以下の説明において、各確認ボタン34を区別する場合は、符号の末尾にA,Bの何れかを付し、各確認ボタン34を区別しない場合は、A,Bを省略する。
【0043】
確認ボタン34は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する。例えば、確認ボタン34は、入力が行われていない状態、すなわち押圧されていない状態で明滅する。具体的には、確認ボタン34の内部にLED(Light Emitting Diode)又は電球等の照明装置が設けられ、この照明装置が明滅する。なお、入力を促す機能は、明滅の他に、単に点灯するだけでもよい。
そして、確認ボタン34は、押圧されると消灯する。これにより、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34への押圧(入力)忘れや押圧(入力)ミスを防止できる。
【0044】
入出庫口30には、人の乗降室20への入退室を検知する入退室検知センサ36が設けられる。入退室検知センサ36は、一例として、センサ36Aが入出庫口30の内側に設けられ、センサ36Bが入出庫口30の外側に設けられる。
入退室検知センサ36は、センサ36Bからセンサ36Aの順で人を検知した場合、乗降室20へ人が入室したと検知し、センサ36Aからセンサ36Bの順で人を検知した場合、乗降室20から人が退室したと検知する。
【0045】
また、乗降室20は、人に音声で情報を報知するためのスピーカー38を備える。
【0046】
乗降室20外の操作盤22には、人に操作されることでパレット16の搬送の許可が入力される最終確認ボタン40が備えられている。
【0047】
図3は、機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0048】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)52、各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)54、CPU52による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)56、各種プログラム及び各種情報を記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)58を備えている。
【0049】
なお、HDD58の代わりに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、バッテリバックアップ付きのSRAM(Static Random Access Memory)等の記憶素子を用いてもよく、プログラム、利用者情報、及び設定値等のデータの種類に応じて記憶素子を使い分けて記憶させてもよい。
【0050】
制御装置50は、パレット16等を駆動させるための各種モータ(不図示)を制御するモータ制御部60、入退室検知センサ36からの信号を受信するセンサ信号受信部62を備える。また、制御装置50は、確認ボタン34,40の押圧状態を判定し、確認ボタン34,40の明滅を制御するボタン制御部64を備えている。
【0051】
これらCPU52、ROM54、RAM56、HDD58、モータ制御部60、センサ信号受信部62、ボタン制御部64、及び操作盤22は、システムバス66を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU52は、ROM54、RAM56、及びHDD58へのアクセス、モータ制御部60を介したモータの駆動、センサ信号受信部62を介した乗降室20内への人の入退室状態の把握、ボタン制御部64を介した安全確認状態の把握、並びに操作盤22に対する操作状態の把握及び画像の表示等、を行える。
【0052】
次に、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10の作用について説明する。
【0053】
機械式駐車装置10へ車両12を入庫させる場合、運転者以外の同乗者及び荷物等は、乗降室20へ車両12を進入させる前に車両12から降ろされる。そして、車両12を乗降室20へ進入させてパレット16に載置した後、運転者は、パレット16を動作させる前に乗降室20内の安全確認を必要とする。
【0054】
乗降室20内の安全確認は、人の有無やパレット16の搬送の障害になる物の有無等の確認である。すなわち、車両12から降りた運転者が安全確認者として、乗降室20内における安全確認の実施位置へ移動する。そして、安全確認者が安全確認を実施した後に、確認ボタン34を押圧する。これにより、安全確認終了という安全確認の実施状態が確認ボタン34に入力されることとなる。
【0055】
乗降室20内の安全確認は、運転者が乗降室20内に居るものの(時には同乗者が車両内に居残る場合がある)確実な検知方法がない。このため、乗降室20内の安全確認は、人による確認が最も効果的な方法であると考えられる。本第1実施形態によれば、確認ボタン34が安全確認の実施位置の近辺に配置されるため、安全確認者は確認ボタン34の配置位置へ移動しなければならない。安全確認者は、確認ボタン34までの移動を行う過程において必然的に周囲を目視するので、それにより安全確認が行われることとなる。なお、安全確認者は、車両12の運転者に限らず、機械式駐車装置10の管理者等でもよい。
【0056】
そして、確認ボタン34への入力が行われ、かつ乗降室20から人が退室した後に、制御装置50によって、パレット16の搬送が実行される。このため、確認ボタン34への入力が行われ、乗降室20から人が退室することで安全が確保されない限り、パレット16の搬送は行われず、車両12も格納庫18へ搬送されることは無い。
【0057】
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20から人が退出した後に動作を行い、乗降室20内の安全性を確保できる。
【0058】
また、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、乗降室20から人が退室し、最終確認ボタン40への押圧(操作)が行われた後に、制御装置50によってパレット16の搬送が実行される。すなわち、安全確認の実施状態を確認ボタン34に入力した安全確認者が、乗降室20外の操作盤22に備えられる最終確認ボタン40を操作した後に、パレット16の搬送が実行されるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0059】
なお、上記説明した本第1実施形態に係る確認ボタン34,40を用いた安全確認を安全確認処理という。
【0060】
図4は、安全確認処理を行う場合に、制御装置50によって実行される安全確認プログラムの流れを示すフローチャートである。安全確認プログラムは、HDD58の所定領域に予め記憶されている。
なお、安全確認プログラムは、車両12がパレット16に載置された後に、開始される。また、安全確認プログラムの開始と共に、確認ボタン34の明滅が開始される。また、最終確認ボタン40に対する操作は、安全確認プログラムの開始時には無効とされている。
【0061】
まず、ステップ100では、一つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Aが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Aへの押圧は、確認ボタン34A近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Aが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ101へ移行する。
確認ボタン34Aは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0062】
ステップ101では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ102へ移行する。
【0063】
ステップ102では、二つめの確認ボタン34、例えば確認ボタン34Bが押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定する。確認ボタン34Bへの押圧は、確認ボタン34B近辺での安全確認の実施終了の入力を確認ボタン34Bが受け付けたこととなる。肯定判定の場合はステップ103へ移行する。
確認ボタン34Bは、押圧されるまでは明滅しているが、押圧された後、消灯する。
【0064】
上述したように確認ボタン34A,34Bは、パレット16を挟んで配置されている。従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、安全確認者である運転者が車両12の片側だけでなく、反対側の安全確認も行うこととなるので、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0065】
ステップ103では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ112へ移行し、否定判定の場合はステップ104へ移行する。
【0066】
ステップ104では、入退室検知センサ36の検知結果に基づいて、乗降室20から運転者が退室したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ106へ移行する。
【0067】
ステップ106では、操作盤22に備えられる最終確認ボタン40への操作を有効とする。
乗降室20へ入室した人の退室が検知された後に、最終確認ボタン40への操作が有効とされることで、例えば安全確認者が乗降室20から出る前に他者によって最終確認ボタン40が操作されても、パレット16の搬送が実行されることは無い。
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20内の安全性が確保できる。
【0068】
次のステップ107では、入退室検知センサ36が乗降室20内への人の入室を検知したか否かを判定し、肯定判定の場合はステップ114へ移行し、否定判定の場合はステップ108へ移行する。
【0069】
ステップ108では、最終確認ボタン40が押圧されたか否かをボタン制御部64によって判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する。
【0070】
ステップ110では、機械式駐車装置10の動作が開始され、本安全確認処理が終了する。具体的には、入出庫扉32が閉じられ、車両12が載置されたパレット16が格納庫18へ搬送される。
【0071】
なお、ステップ101及びステップ103で肯定判定となり、ステップ112へ移行すると、ステップ112において、確認ボタン34への入力が全て解除され、ステップ100へ戻る。確認ボタン34への入力の解除とは、それまでに行われた確認ボタン34への入力が取り消されることである。
【0072】
また、ステップ107で肯定判定となり、ステップ114へ移行すると、ステップ114において、確認ボタン34への入力が全て解除され、最終確認ボタン40への操作を無効とし、ステップ100へ戻る。
【0073】
ステップ112,114へ移行した場合、安全確認者は、再び確認ボタン34を押圧し、入退室検知センサ36によって退室を検知させ、最終確認ボタン40への操作を有効にしなければならない。このように、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、新たに人が乗降室20内へ入室した場合に、再び乗降室20内の安全確認が必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0074】
また、乗降室20内における人の移動順序が報知手段によって報知されてもよい。
例えば報知手段は、スピーカー38であり、確認ボタン34A、確認ボタン34Bの順に押圧した後、退室して最終確認ボタン40を押圧するように、音声で報知する。また、報知手段は、乗降室20内や操作盤22に設けられた表示装置であり、確認ボタン34A、確認ボタン34Bの順に押圧した後、退室して最終確認ボタン40を押圧するように、表示することで報知する。
これにより、安全確認者の移動が円滑となる。
【0075】
以上説明したように、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、格納庫18へ搬送されるパレット16に車両12が載置され、車両12の運転者が車両12に乗降可能な乗降室20が設けられる。そして、機械式駐車装置10は、乗降室20内における安全確認の実施位置の近辺に配置された確認ボタン34への押圧が行われ、かつ乗降室20から人が退室した後に、パレット16の搬送を実行する。
従って、本第1実施形態に係る機械式駐車装置10は、より確実に乗降室20から人が退出した後に動作を行い、乗降室内の安全性を確保できる。
【0076】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0077】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された入力手段である確認ボタン34への入力を促す機能を備える。
【0078】
図5は、本第2実施形態に係る乗降室20の上面図である。なお、図5における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
本第2実施形態に係る機械式駐車装置10は、パレット16に対して車幅が広すぎる車両12のパレット16への載置を規制するために、車両12の車幅を検知する車幅規制センサ70を備える。
車幅規制センサ70は、一例として、車両12の両側に、光線を照射する照射部70A及び光線を受光する受光部70Bとを一対備えている。照射部70Aは、例えばパレット16に載置される車両12の前方に配置され、受光部70Bは照射部70Aに対向するように車両12の後方に配置される。そして、一対の照射部70A及び受光部70Bは、パレット16に載置可能な車両12の最大車幅に相当する間隔で配置される。
すなわち、照射部70Aから照射された光線が受光部70Bで受光されない場合は、パレット16に載置しようとする車両12の車幅が、最大車幅を超えている場合である。このような車両12をパレット16に載置しても、パレット16は搬送されない。
【0080】
図6は、本第2実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0081】
車幅規制センサ70の受光部70Bによる光線の受光状態を示すセンサ信号が、センサ信号受信部62を介してCPU52へ入力される。
【0082】
本第2実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置された後に、受光部70Bによる光線の受光状態に基づいて、車両12の運転席側を判定する。
具体的には、パレット16に載置された車両12から運転者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する運転者によって照射部70Aからの光線が遮られる。従って、運転席は、光線を受光しなくなった受光部70Bが配置されている側であると判定される。
【0083】
そして、CPU52は、車両12の運転席側に対して反対側に配置された確認ボタン34を明滅させることによって、その確認ボタン34への入力を運転者へ促す。すなわち、運転席が車両12の右側であると判定された場合は、確認ボタン34Bが明滅し、運転席が車両12の左側であると判定された場合は、確認ボタン34Aが明滅する。
これにより、車両12の運転者が運転席側から車両12の反対側まで移動することとなり、乗降室20内の安全確認がより広い範囲で行われる。
【0084】
なお、車両12の両側の光線が遮られたと判定された場合は、運転席側を判定できないため、確認ボタン34A,34B共に明滅する。
【0085】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0086】
図7は、本第3実施形態に係る乗降室20の上面図である。なお、図7における図2と同一の構成部分については図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0087】
本第3実施形態に係る機械式駐車装置10は、確認ボタン34の近辺に配置され、車両12に対して反対側の安全確認を可能とする安全確認手段として、モニタ80A,80B及びカメラ82A,82Bを備える。確認ボタン34Aの近辺に配置されたモニタ80Aは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Aで撮像された画像を表示する。一方、確認ボタン34Bの近辺に配置されたモニタ80Bは、車両12に対して反対側に配置されたカメラ82Bで撮像された画像を表示する。
【0088】
従って、本第3実施形態に係る機械式駐車装置10によれば、安全確認者が車両12に対して反対側へ移動しなくても、反対側の安全確認が可能となる。
例えば、安全確認者である運転者が車いすで移動する場合のように、乗降室20内の移動に困難を伴う場合がある。このような場合には、安全確認者が、一方のモニタ80Aの画像を目視し、確認ボタン34に入力を行うだけで、乗降室20内の安全確認が簡易にかつより広い範囲で行われる。
【0089】
また、安全確認手段は、車両12に対して反対側を映すことが可能な鏡であってもよい。なお、本第3実施形態では、図7に示されるようにカメラ82A、82Bを車両12の両側に配置したが、カメラ82A、82Bは、安全確認者の目視できない部分を確認できる位置に設けることが好ましい。
【0090】
また、本第3実施形態では、確認ボタン34とモニタ80を乗降室20内に設けた場合を例示したが、確認ボタン34とモニタ80が操作盤22に組み入れられたり、操作盤22の近傍に設置されてもよいし、さらに確認ボタン34とモニタ80が乗降室20の内、外に複数設けられてもよい。
【0091】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
【0092】
本第4実施形態に係る機械式駐車装置10は、車両12内に居残りした人が最終確認ボタン40への操作の前に車両12外に出た場合に、確認ボタン34への入力を解除する機能を備える。
【0093】
なお、本第2実施形態に係る乗降室20及び制御装置50の構成は、上述した第2実施形態に係る図5及び図6と同様である。
【0094】
本第4実施形態に係るCPU52は、最大車幅内の車幅の車両12がパレット16に載置され、確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に車幅規制センサ70がセンサ信号を出力したか否かを判定する。
【0095】
車幅規制センサ70がセンサ信号を出力する場合とは、車両12に居残っていた同乗者が車両12から降りた場合である。この場合、乗降室20には、運転者以外に同乗者が居ることとなる。
具体的には、パレット16に載置された車両12から同乗者が降りる場合、開かれるドア、又は降車する同乗者によって照射部70Aからの光線が一旦遮られる。その後、車両12のドアが閉められ、同乗者が車両12から離れると、車幅規制センサ70は受光状態に戻る。
【0096】
本第4実施形態に係るCPU25は、図4のステップ100からステップ108の間、すなわち確認ボタン34への入力後から最終確認ボタン40への操作の間に、車幅規制センサ70の光線が遮られ、車幅規制センサ70がセンサ信号を出力した場合、運転者以外の人が乗降室20内に居残っていると判定する。そして、CPU25は、確認ボタン34への入力を全て解除する。
【0097】
機械式駐車装置10は、その後再び運転者により確認ボタン34への入力が行われ、入退室検知センサ36の検知結果が運転者の退室を検知し、さらに最終確認ボタン40への入力が行われた後に動作する。
このように、本実施形態に係る機械式駐車装置10は、同乗者が車両12に居残っていた場合、同乗者の乗降室20からの退室確認を含む乗降室20内の安全確認が再び必要とされるため、より確実に乗降室20内の安全性が確保される。
【0098】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0099】
例えば、上記各実施形態では、確認ボタン34が左右の壁面35に計2つ備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34が1つ又は3つ以上備えられる形態としてもよい。
【0100】
確認ボタン34が一つの場合、例えば、確認ボタン34は図8に示されるように、車両12の左側となる壁面35の車両12前方側に配置される。この理由は、右側に運転席が配置される車両12が日本国内では多く、安全確認者である運転者は、確認ボタン34の配置位置へ移動する過程において、必然的に車両12の右側及び左側を目視して、さらに車両12の前方についても安全確認を行うこととなるためである。
【0101】
また、図9は、確認ボタン34が4つの場合の例を示す。
図9の例では、車両12の前方左右及び後方左右となる壁面35に確認ボタン34が配置される。これにより、安全確認者は、より広い範囲を目視して安全確認を行うこととなる。
【0102】
また、上記各実施形態では、確認ボタン34が壁面35に備えられる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34は乗降室20内における安全確認の実施位置の近辺に配置されるのであれば、壁面35以外に配置されてよい。
【0103】
図10は、確認ボタン34が安全確認の実施位置の近辺における床面90に配置される例を示している。図10の例では、安全確認者は安全確認の実施位置を目視した後に、確認ボタン34を踏むことで押圧する。
【0104】
また、上記各実施形態では、確認ボタン34に対する一回の押圧によって安全確認の実施状態が入力される形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、確認ボタン34が複数回押圧されることで、安全確認の実施状態が入力される形態としてもよい。
例えば、確認ボタン34を2回押圧することで、安全確認の実施状態が入力される場合は、1回目の押圧で安全確認の実施開始が入力され、2回目の押圧で安全確認の実施終了が入力されることとなる。確認ボタン34は、2回の押圧が終了するまで明滅を続けるが、例えば1回目の押圧の後では、明滅の間隔をより早くしてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、安全確認の実施状態が入力される入力手段を押ボタンとする形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、入力手段は押ボタンでなくてもよい。
例えば、入力手段を、機械式駐車装置10の契約者だけが使用し携帯が可能な、認証カード、認証タグ、リモコンといった専用の携帯認証媒体に記録されている認証情報を読み取る読取手段としてもよい。
【0106】
入力手段を携帯認証媒体とした場合、安全確認者が携帯認証媒体を読取手段にかざすことによって、読取手段が携帯認証媒体に記録されている認証情報を読み取る。この読み取りによって、安全確認の実施状態が入力されることとなる。なお、携帯認証媒体が、例えば、認証情報を電波として発信する場合は、安全確認者が携帯認証媒体を読取手段にかざすことなく、読取手段が上記電波を受信することによって、安全確認の実施状態が入力されてもよい。
このように、読取手段を入力手段とすることによって、携帯認証媒体を携帯している安全確認者以外は、安全確認の実施状態を入力できない。すなわち、不特定の人が入力手段を操作できないこととなり、乗降室20内の安全性がより確実に確保される。
【0107】
また、乗降室20内の安全確認として、車両12に残っている人の有無の確認の実施状態が入力される入力手段(押ボタン)が、乗降室20内に配置されてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態で説明した安全確認処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10 機械式駐車装置
12 車両
16 パレット
18 格納庫
20 乗降室
34 確認ボタン
36 入退室検知センサ
38 スピーカー
40 最終確認ボタン
50 制御装置
70 車幅規制センサ
80A,80B モニタ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室が設けられる機械式駐車装置であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置され、人による安全確認の終了が入力される複数の入力手段と、
前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段と、
人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段と、
前記入力手段に前記安全確認の終了が入力されている状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、いずれかの前記入力手段に前記安全確認の終了が入力された後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置。
【請求項2】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項1記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記入力手段は、前記操作盤または該操作盤の近傍に設けられている請求項1または請求項2記載の機械式駐車装置。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記制御手段は、前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項1から請求項3の何れか1項記載の機械式駐車装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5記載の機械式駐車装置。
【請求項7】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記制御手段は、前記入力手段へ前記安全確認の終了が入力されてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了を解除する請求項1から請求項3の何れか1項、請求項5、または請求項6記載の機械式駐車装置。
【請求項8】
前記乗降室内を撮像する複数のカメラと、
前記入力手段の近辺に配置され、前記カメラで撮像された画像を表示するモニタと
を備える請求項1から請求項3の何れか1項または請求項5から請求項7の何れか1項記載の機械式駐車装置。
【請求項9】
前記カメラは、前記車両を挟んで複数配置される請求項8記載の機械式駐車装置。
【請求項10】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに配置された複数の入力手段、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段を備える機械式駐車装置の制御方法であって、
前記入力手段が、人による安全確認の終了の入力を受け付ける第1工程と、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行する第2工程と、
を含み、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する機械式駐車装置の制御方法。
【請求項11】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項10記載の機械式駐車装置の制御方法。
【請求項12】(削除)
【請求項13】
前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項10または請求項11記載の機械式駐車装置の制御方法。
【請求項14】
前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項10、請求項11、または請求項13記載の機械式駐車装置の制御方法。
【請求項15】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項10、請求項11、請求項13、または請求項14記載の機械式駐車装置の制御方法。
【請求項16】
格納庫へ搬送される車両が載置され、前記車両の運転者が前記車両に乗降可能な乗降室、前記乗降室の外側に設けられた操作盤に配置され、前記車両の搬送の許可が入力される許可入力手段、及び人の前記乗降室への入退室を検知する入退室検知手段が設けられる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法であって、
前記車両の運転席側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺及び前記運転席側に対して前記車両の反対側の領域の安全を人が確認する安全確認実施位置の近辺のそれぞれに、人による安全確認の終了の入力を受け付ける入力手段を配置し、
前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた状態で、前記許可入力手段への操作が行われた後に、前記車両の搬送を実行し、
いずれかの前記入力手段へ前記安全確認の終了の入力が行われた後から、前記許可入力手段への操作が行われるまでの間に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除するプログラムを、記憶手段に記憶させる機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。
【請求項17】
前記入力手段は、入力が行われていない場合に入力を促す機能を有する請求項16記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。
【請求項18】(削除)
【請求項19】
前記入退室検知手段によって前記乗降室へ入室した人の退室が検知された後に、前記許可入力手段への操作を有効とする請求項16または請求項17記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。
【請求項20】
前記許可入力手段への操作が有効とされた後に、前記入退室検知手段によって前記乗降室への人の入室が検知された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除すると共に、前記許可入力手段への操作を無効とする請求項16、請求項17、または請求項19記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。
【請求項21】
載置された前記車両の両側に配置され、前記車両の車幅を検知する車幅検知手段を備え、
前記入力手段によって前記安全確認の終了の入力が受け付けられてから前記許可入力手段への操作の間に前記車幅検知手段から検知信号が出力された場合、前記入力手段への前記安全確認の終了の入力を解除する請求項16、請求項17、請求項19、または請求項20記載の機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-25 
出願番号 特願2015-139765(P2015-139765)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (E04H)
P 1 651・ 851- YAA (E04H)
P 1 651・ 121- YAA (E04H)
P 1 651・ 113- YAA (E04H)
P 1 651・ 537- YAA (E04H)
P 1 651・ 841- YAA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 有家 秀郎
袴田 知弘
登録日 2017-02-17 
登録番号 特許第6093811号(P6093811)
権利者 三菱重工機械システム株式会社
発明の名称 機械式駐車装置、機械式駐車装置の制御方法、及び機械式駐車装置の安全確認機能を設ける方法  
代理人 藤田 考晴  
代理人 川上 美紀  
代理人 長田 大輔  
代理人 三苫 貴織  
代理人 川上 美紀  
代理人 三苫 貴織  
代理人 藤田 考晴  
代理人 長田 大輔  
代理人 岡田 希子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ