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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23J
管理番号 1374967
異議申立番号 異議2021-700001  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-04 
確定日 2021-06-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6715865号発明「食用菌」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6715865号の請求項1ないし23に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6715865号の請求項1?23に係る特許についての出願は、2016年1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年1月27日 英国(GB))を国際出願日とする出願であって、令和2年6月11日にその特許権の設定登録がされ、同年7月1日にその特許公報が発行され、その後、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和3年1月4日に福井隆一(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?23に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、それらをまとめて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む、食用配合物であって、
前記食用配合物が、
動物由来成分を0重量%含み、
乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含み、
乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含み、
少なくとも50重量%の水を含み、且つ、
酢酸塩部分を含み、さらに、
前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む、
食用配合物。
【請求項2】
前記食用配合物が乾燥重量基準で、40重量%超の前記糸状菌を含む、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記食用配合物が、乾燥重量基準で、糸状菌1Kgあたり、少なくとも8,000mgのカルシウムイオンを含む、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
前記食用配合物が、乾燥重量基準で、糸状菌1Kgあたり、少なくとも8,000mgの細胞外カルシウムイオンを含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
前記食用配合物中の前記カルシウムイオンの合計量が、糸状菌1Kgあたり、少なくとも5,000mgである、請求項1?4のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
前記食用配合物が、乾燥重量基準で、少なくとも0.200重量%且つ0.8重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
前記食用配合物が、85重量%未満の水を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前記食用配合物が、多糖類を含む、請求項1?7のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記食用配合物がアルギン酸塩を含む、請求項1?8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
前記食用配合物がグルテンを含む、請求項1?9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
前記食用配合物が、前記食用菌粒子に加えて、タンパク質源(A)を含む、請求項1?10のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
前記タンパク質源(A)が、小麦ベースのタンパク質ではない植物性タンパク質源である、請求項11に記載の配合物。
【請求項13】
前記食用配合物が、乾燥重量基準で、少なくとも5重量%のタンパク質源(A)を含み;且つ、20重量%未満のタンパク質源(A)を含む、請求項11または12に記載の配合物。
【請求項14】
前記食用配合物中、乾燥重量基準での、糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、少なくとも0.005であり、且つ、0.04未満である、請求項1?13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
前記食用配合物が、乾燥重量基準で、少なくとも0.10重量%の酢酸イオンを含み、且つ、2.00重量%未満の酢酸イオンを含む、請求項1?14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
前記食用配合物が、
乾燥重量基準で糸状菌1Kgあたり5,000mgのカルシウムイオンと;
乾燥重量基準で糸状菌1Kgあたり25,000mg未満のカルシウムイオンと;
少なくとも50重量%の水と;
0重量%の卵アルブミンと;
を含む、請求項1?15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項17】
前記食用配合物中、乾燥重量基準での、糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、少なくとも0.005である、請求項1?16のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項18】
前記食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも0.10重量%の酢酸イオンを含み、且つ、1.5重量%未満の酢酸イオンを含む、請求項1?17のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
前記菌粒子が、乾燥重量基準で1.9重量%未満のRNA含有量を有する、請求項1?18のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項20】
前記食用配合物において、水の重量%で除した、(乾燥重量基準での)糸状菌の重量%の比が少なくとも0.05であり、且つ、前記比が0.5未満である、請求項1?19のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項21】
前記食用配合物がパッケージに入って提供される、請求項1?20のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項22】
前記パッケージが、少なくとも50gの前記食用配合物を含む、請求項21に記載の配合物。
【請求項23】
(i)糸状菌の食用菌粒子を含む配合物を選択することと;
(ii)前記配合物をカルシウムイオンと接触させることと、
を含む、請求項1?22のいずれか一項に記載された食用配合物の製造方法。」

第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

[理由ア]本件発明1?8、10?23は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?8、10?23に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由イ]本件発明1?8、10?23は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?8、10?23に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由ウ]本件発明1?3、5?8、16、21、22は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?3、5?8、16、21、22に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由エ]本件発明1?3、5?8、16、21、22は、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?3、5?8、16、21、22に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由オ]本件発明1、2、6?8、21、22は、甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1、2、6?8、21、22に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由カ]本件発明1?9、11?23は、甲第6号証に記載された発明及び甲第9?甲第13号証に記載された技術的事項に基いて、本件発明10は、甲第6号証に記載された発明及び甲第8?甲第13号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?23に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由キ]本件発明1?9、11?23は、甲第7号証に記載された発明及び甲第9?甲第13号証に記載された技術的事項に基いて、本件発明10は、甲第7号証に記載された発明及び甲第8?甲第13号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?23に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由ク]本件発明1?23は、甲第8号証に記載された発明及び甲第6、甲第9?甲第13号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?23に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである。
[理由ケ]?[理由サ]本件発明1?23について、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1?23に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
[理由シ]本件発明1?23について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しない。また、本件発明1?23について、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、本件発明1?23に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 当審の判断
1 甲各号証及びそれらの記載事項
甲各号証及びそれらの記載事項は以下のとおりである(なお、以下甲第1?甲第14号証を「甲1」などという)。

甲1:英国特許出願公開第2516491号明細書
甲2:英国特許出願公開第2518725号明細書
甲3:Ekoloji 20,(2011),80,pp.6-12
甲4:Food Chemistry,(2009),113,pp.1033-1036
甲5:Food Chemistry,(2003),82,pp.527-532
甲6:国際公開第02/090527号
甲7:国際公開第02/089604号
甲8:国際公開第2014/110539号
甲9:Food Hydrocolloids,(2003),17,pp.577-583
甲10:Food Research International,(2001),34,pp.879-886
甲11:Prepared Foods, May 2004,pp.61,62,64,66,67
甲12:米国特許第4880654号明細書
甲13:米国特許第4554166号明細書
甲14:特開平6-174627号公報

甲1(訳文で示す。):
1a)「

」(図5)

1b)「状況によっては、例えばコスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を減少させること、または排除さえすることが望ましい。同様に、使用される他の結合剤またはレオロジー改善剤の量を低減させることが望ましい場合がある。本発明の一つの目的は、この問題に取り組むことである。」(1頁15?20行)

1c)「本発明の第1の態様によれば、糸状菌の食用菌粒子および二価または三価のカチオンを含む食用配合物が提供される。
上記食用配合物は、好適には、乾燥重量基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2000mg、好ましくは少なくとも3000mg、より好ましくは少なくとも4000mg、特には少なくとも5000mgの、1つの二価または三価のカチオンを含む。上記食用配合物は、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満、より好ましくは15,000mg未満の上記1つの二価または三価のカチオンを含む。
上記食用配合物は、細胞内の二価または三価のカチオン、または細胞外の二価または三価のカチオンを含んでもよい。上記食用配合物は、好適には、以下の細胞外レベルの二価または三価のカチオン:乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2000mg、好ましくは少なくとも3000mg、より好ましくは少なくとも4000mg、特には少なくとも5000mg、を含む。1つの二価または三価のカチオンの最大細胞外レベルは、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満、より好ましくは15,000mg未満である。
上記食用配合物中の二価または三価のカチオン(すなわち、すべての異なるタイプの二価および三価の金属カチオンを含む)の合計量は、好適には、乾燥物基準の糸状菌1Kgあたり少なくとも11000mg、好ましくは少なくとも12500mg、より好ましくは少なくとも14000mg、特に少なくとも15500mgである。二価または三価のカチオンの合計量は、糸状菌1Kgあたり30,000mg未満、または25,000mg未満であってもよい。」(2頁1?26行)

1d)「前記二価または三価のカチオンは、好ましくは金属カチオンである。前記カチオンは、Ca^(2+)、Mg^(2+)及びFe^(3+)から選択してもよい。」(2頁34?35行)

1e)「上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除したカルシウムイオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.004、特に少なくとも0.005である。上記比は、0.025未満、または0.020未満であってもよい。
上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した細胞外カルシウムイオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.004、特に少なくとも0.005である。上記比は、0.025未満、または0.020未満であってもよい。
上記食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%、例えば少なくとも0.140重量%のカルシウムイオンを含んでもよい。それは、乾燥重量基準で、0.300重量%未満のカルシウムイオンを含んでもよい。
上記食用配合物は、少なくとも25重量%の水を含んでもよい。上記配合物は、75重量%以下の水を含んでもよい。
上記食用配合物は、乾燥重量基準で5重量%未満の可食性ハイドロコロイド(例えば、卵アルブミン)を含んでもよい。それは、前記可食性ハイドロコロイドを4重量%未満含んでもよい。いくつかの配合物は、2重量%未満、1重量%未満、または0重量%の可食性ハイドロコロイド(例えば、卵アルブミン)を含んでもよい。場合によっては、それは少なくとも0.5重量%の卵アルブミンを含んでもよい。」(3頁3?23行)

1f)「この場合、上記食用配合物の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%または少なくとも99重量%が糸状菌、水および前記二価または三価のカチオンから構成されていてもよい。」(4頁3?5行)

1g)「従って、上記食用配合物は、好ましくは、酢酸塩部分を含む(酢酸カルシウムとして上記配合物中に最初に取り込まれていてもよい)。
上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.01である。上記比は、例えば0.03未満など、0.02未満であってもよい。
上記酢酸イオンは、好適には細胞外イオンである。
上記食用配合物は、乾燥物基準で、少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.20重量%の酢酸イオンを含んでもよい。それは、乾燥物基準で、0.50重量%未満、例えば0.40重量%未満の酢酸イオンを含んでもよい。」(4頁11?23行)

1h)「上記菌粒子に対する好ましい菌(真菌)は、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、β1-3および1-6グルカンを含む細胞壁を有する。」(5頁22?24行)

1i)「好ましくは、上記菌粒子は当該菌粒子が含有するRNAのレベルを低下させるように処理されている。従って、使用される上記菌粒子中の上記RNAのレベルは、好ましくは、生存可能な状態にあるときの同一の菌におけるレベルよりも低い。」(6頁1?4行)

1j)「上記配合物中の菌粒子は、1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは500未満、特には250以下のアスペクト比(長さ/直径)を有する糸状体を含んでもよい。当該アスペクト比は、10超であってもよく、好ましくは40超であり、より好ましくは70超である。好ましくは、上記配合物中の上記菌粒子のアスペクト比の平均値(即ち、上記菌粒子の直径の平均で除した、上記粒子の長さの平均)もまた、上述の通りである。
本発明の第二の態様によれば、本発明の方法は、
(i) 糸状菌の食用菌粒子を含む水溶性配合物を選択することと;
(ii) 前記水溶性配合物を二価または三価のカチオンと接触させることと、
を含む、食用配合物の製造方法が提供される。」(6頁21?34行)

1k)「前記方法は、前記水溶性配合物を塩化カルシウムと接触させることを含んでよい。」(7頁5?6行)

1l)「マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(以前はフザリウム・グラミネアラム・シュワビとして分類されていた)(12301 Parklawn Drive, Rockville Md.20852にあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425;ATCC PTA-2684)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、熱処理によってそのRNA含有量が2重量%未満まで減少するように処理されている。当該材料についての更なる詳細は、WO96/21362およびWO95/23843で提供されている。上記材料は、イギリス、ストークスリーにあるMarlow Foods社から入手可能である。それは、約23-25重量%の固体を含む(残りは水である)。ここで、当該固体は、約400-750μmの長さ、3-5μmの直径、および菌糸長さあたり2-3の先端の分岐頻度を有する、生存不能で且つRNAが減少された菌糸(真菌の菌糸)でできている。」(9頁14?23行)

1m)「乾燥物基準での0.15重量部(pbw)の塩化カルシウムおよび乾燥物基準での0.40pbwの酢酸カルシウムを含む組合せは、許容される味を提供し、かつ記載されたレオロジー特性を提供する。このような組合せは、固体酢酸カルシウムと共に記載された36重量%塩化カルシウム溶液を使用することにより、マイコプロテインペースト中に導入することができる。」(13頁17?21行)

1n)「その後、製品は、-18℃の低温倉庫内で少なくとも7日間の最終的な組織化工程の前に、計量され、包装される。」(13頁32?34行)

1o)「塩化カルシウム/酢酸カルシウム混合物を使用して、マイコプロテイン含有配合物中で必要とされる卵アルブミン(またはタンパク質のような他の組織化生成物質)の量を減少させることができ、卵アルブミンまたは他の動物タンパク質を含まないビーガン製品を生成することができる。」(14頁1?4行)

1p)「表1において、実施例A及びBは、ミンチを製造するために使用される配合物の詳細を提供する。実施例C及びDは、バーガーを製造するために使用される配合物の詳細を提供し、実施例E及びFは、小片/ストリップを製造するために使用される配合物の詳細を提供する。

マイコプロテイン含有製品(ミンチ、バーガー、および小片/ストリップ)中の卵アルブミン量は、2-4重量%の範囲であった。塩化カルシウムと酢酸カルシウムのカルシウムブレンドを使用することにより、これを約25%減少させることができる。ソーセージのような製品中のマイコプロテインペースト量は、約30重量%であってもよく、それは、ミンチおよび小片の90重量%を超えてもよい。本発明の卵アルブミン低減効果は、より高いマイコプロテインペースト量を有する製品においてより良好であったことが判明した。選択された香料は、1.8-4重量%の量で製品に添加することができる。また、製品に応じて、ホエイタンパク質、油、オニオンダイス、組織化小麦タンパク質、油脂等の他の添加剤を種々の量で添加してもよい。
参照した製品において、減量された唯一の成分は卵アルブミンであり、酢酸カルシウムと塩化カルシウムの混合物を添加して、この減量の一部を補償した。水の量はそれに応じて調整された。」(14頁6行?16頁13行)

甲2(訳文で示す。):
2a)「状況によっては、例えばコスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を減少させること、または排除さえすることが望ましい。同様に、使用される他の結合剤またはレオロジー改善剤の量を低減させることが望ましい場合がある。本発明の一つの目的は、この問題に取り組むことである。」(1頁16?21行)

2b)「本発明の第1の態様によれば、糸状菌の食用菌粒子および二価または三価のカチオンを含む食用配合物が提供される。
上記食用配合物は、好適には、乾燥重量基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2000mg、好ましくは少なくとも3000mg、より好ましくは少なくとも4000mg、特には少なくとも5000mgの、1つの二価または三価のカチオンを含む。上記食用配合物は、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満、より好ましくは15,000mg未満の上記1つの二価または三価のカチオンを含む。
上記食用配合物は、細胞内の二価または三価のカチオン、または細胞外の二価または三価のカチオンを含んでもよい。上記食用配合物は、好適には、以下の細胞外レベルの二価または三価のカチオン:乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2000mg、好ましくは少なくとも3000mg、より好ましくは少なくとも4000mg、特には少なくとも5000mg、を含む。1つの二価または三価のカチオンの最大細胞外レベルは、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満、より好ましくは15,000mg未満である。
上記食用配合物中の二価または三価のカチオン(すなわち、すべての異なるタイプの二価および三価の金属カチオンを含む)の合計量は、好適には、乾燥物基準の糸状菌1Kgあたり少なくとも11000mg、好ましくは少なくとも12500mg、より好ましくは少なくとも14000mg、特に少なくとも15500mgである。二価または三価のカチオンの合計量は、糸状菌1Kgあたり30,000mg未満、または25,000mg未満であってもよい。」(2頁1?27行)

2c)「前記二価または三価のカチオンは、好ましくは金属カチオンである。前記カチオンは、Ca^(2+)、Mg^(2+)及びFe^(3+)から選択してもよい。」(2頁35?36行)

2d)「上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除したカルシウムイオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.004、特に少なくとも0.005である。上記比は、0.025未満、または0.020未満であってもよい。
上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した細胞外カルシウムイオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.004、特に少なくとも0.005である。上記比は、0.025未満、または0.020未満であってもよい。
上記食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%、例えば少なくとも0.140重量%のカルシウムイオンを含んでもよい。それは、乾燥重量基準で、0.300重量%未満のカルシウムイオンを含んでもよい。
上記食用配合物は、少なくとも25重量%の水を含んでもよい。上記配合物は、75重量%以下の水を含んでもよい。
上記食用配合物は、乾燥重量基準で5重量%未満の可食性ハイドロコロイド(例えば、卵アルブミン)を含んでもよい。それは、前記可食性ハイドロコロイドを4重量%未満含んでもよい。いくつかの配合物は、2重量%未満、1重量%未満、または0重量%の可食性ハイドロコロイド(例えば、卵アルブミン)を含んでもよい。場合によっては、それは少なくとも0.5重量%の卵アルブミンを含んでもよい。」(3頁4?24行)

2e)「他の実施形態では、上記食用配合物は、食品を形成するための他の成分との組み込みのための成分として使用するための製品であってもよい。この場合、上記食用配合物の少なくとも90重量%、少なくとも95重量%または少なくとも99重量%が糸状菌、水および前記二価または三価のカチオンから構成されていてもよい。」(4頁2?6行)

2f)「従って、上記食用配合物は、好ましくは、酢酸塩部分を含む(酢酸カルシウムとして上記配合物中に最初に取り込まれていてもよい)。
上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.01である。上記比は、例えば0.03未満など、0.02未満であってもよい。
上記酢酸イオンは、好適には細胞外イオンである。
上記食用配合物は、乾燥物基準で、少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.20重量%の酢酸イオンを含んでもよい。それは、乾燥物基準で、0.50重量%未満、例えば0.40重量%未満の酢酸イオンを含んでもよい。」(4頁12?24行)

2g)「上記菌粒子に対する好ましい菌(真菌)は、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、β1-3および1-6グルカンを含む細胞壁を有する。」(5頁23?25行)

2h)「好ましくは、上記菌粒子は生存不能である。好ましくは、上記菌粒子は当該菌粒子が含有するRNAのレベルを低下させるように処理されている。従って、使用される上記菌粒子中の上記RNAのレベルは、好ましくは、生存可能な状態にあるときの同一の菌におけるレベルよりも低い。」(6頁2?5行)

2i)「上記菌粒子の乾燥物基準でのRNA量は、好ましくは4重量%未満、より好ましくは2重量%未満および、特に1重量%未満である。」(6頁11?12行)

2j)「上記配合物中の菌粒子は、1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは500未満、特には250以下のアスペクト比(長さ/直径)を有する糸状体を含んでもよい。当該アスペクト比は、10超であってもよく、好ましくは40超であり、より好ましくは70超である。好ましくは、上記配合物中の上記菌粒子のアスペクト比の平均値(即ち、上記菌粒子の直径の平均で除した、上記粒子の長さの平均)もまた、上述の通りである。」(6頁29?35行)

2k)「上記配合物は、好ましくは少なくとも10g、より好ましくは少なくとも500g、より好ましくは少なくとも1.5Kgの総重量を有する。
本発明の第二の態様によれば、本発明の方法は、
(i) 糸状菌の食用菌粒子を含む水溶性配合物を選択することと;
(ii) 前記水溶性配合物を二価または三価のカチオンと接触させることと、
を含む、食用配合物の製造方法が提供される。」(7頁4?13行)

2l)「マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(以前はフザリウム・グラミネアラム・シュワビとして分類されていた)(12301 Parklawn Drive, Rockville Md.20852にあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425;ATCC PTA-2684)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、熱処理によってそのRNA含有量が2重量%未満まで減少するように処理されている。当該材料についての更なる詳細は、WO96/21362およびWO95/23843で提供されている。上記材料は、イギリス、ストークスリーにあるMarlow Foods社から入手可能である。それは、約23-25重量%の固体を含む(残りは水である)。ここで、当該固体は、約400-750μmの長さ、3-5μmの直径、および菌糸長さあたり2-3の先端の分岐頻度を有する、生存不能で且つRNAが減少された菌糸(真菌の菌糸)でできている。」(9頁29行?10頁3行)

2m)「乾燥物基準での0.15重量部(pbw)の塩化カルシウムおよび乾燥物基準での0.40pbwの酢酸カルシウムを含む組合せは、許容される味を提供し、かつ記載されたレオロジー特性を提供する。このような組合せは、固体酢酸カルシウムと共に記載された36重量%塩化カルシウム溶液を使用することにより、マイコプロテインペースト中に導入することができる。」(13頁32?36行)

2n)「その後、製品は、-18℃の低温倉庫内で少なくとも7日間の最終的な組織化工程の前に、計量され、包装される。」(14頁10?12行)

2o)「塩化カルシウム/酢酸カルシウム混合物を使用して、マイコプロテイン含有配合物中で必要とされる卵アルブミン(またはタンパク質のような他の組織化生成物質)の量を減少させることができ、卵アルブミンまたは他の動物タンパク質を含まないビーガン製品を生成することができる。」(14頁15?18行)

2p)「表1において、実施例A及びBは、ミンチを製造するために使用される配合物の詳細を提供する。実施例C及びDは、バーガーを製造するために使用される配合物の詳細を提供し、実施例E及びFは、小片/ストリップを製造するために使用される配合物の詳細を提供する。

マイコプロテイン含有製品(ミンチ、バーガー、および小片/ストリップ)中の卵アルブミン量は、2-4重量%の範囲であった。塩化カルシウムと酢酸カルシウムのカルシウムブレンドを使用することにより、これを約25%減少させることができる。ソーセージのような製品中のマイコプロテインペースト量は、約30重量%であってもよく、それは、ミンチおよび小片の90重量%を超えてもよい。本発明の卵アルブミン低減効果は、より高いマイコプロテインペースト量を有する製品においてより良好であったことが判明した。選択された香料は、1.8-4重量%の量で製品に添加することができる。また、製品に応じて、ホエイタンパク質、油、オニオンダイス、組織化小麦タンパク質、油脂等の他の添加剤を種々の量で添加してもよい。
参照した製品において、減量された唯一の成分は卵アルブミンであり、酢酸カルシウムと塩化カルシウムの混合物を添加して、この減量の一部を補償した。水の量はそれに応じて調整された。」(14頁20行?16頁13行)

甲3(訳文で示す。):
3a)「本研究の目的は、トルコのビンギョルおよびセリム(カルス)地方で生育した野生の一般的な食用マッシュルーム中の主要な元素(Ca、Mg、K)および微量元素(Fe、Zn、Cu、Mn、Pb、NiおよびCd)の量を測定し評価することであった。」(6頁、要約1?3行)

3b)「マッシュルームの乾物含量は低く、通常60-140g/kgの範囲である。炭水化物と粗タンパク質が2つの主成分である。総脂質(粗脂肪)の含有量は、主に乾物の2-6%の範囲である。乾物と脂質の含有量が少ないと、マッシュルームのエネルギー値が低くなる。キチンおよび他の構成多糖類からなる不溶性繊維の比較的高い割合は、栄養的に有益であるように思われる。」(6頁左欄5?14行)

3c)「カルシウム濃度は、40(Pholiota aurivella)から85720(Laetiporus sulphureus)mg/kg乾量の範囲であった。我々の以前の研究では、Ca濃度レベルは、Morchella vulgarisで870mg/kg、Helvella lacunosaで470mg/kg、およびLepista Nudaで8800mg/kgであることが見出された(・・・)」(8頁右欄下から7?2行)

甲4(訳文による。):
4a)「この研究の目的は、野生の食用キノコのミネラル含有量を測定することであった。トルコのエルズルム地方で採取された30種の野生で生育した一般的な食用マッシュルームのリン(P)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、銅(Cu)、マンガン(Mn)の含有量を分析した。マッシュルームの最小および最大主要栄養素含有量は、Mg(0.90-4.54)、Ca(0.17-8.80)、K(12.6-29.1)、Na(0.03-4.85)、およびP(0.64-4.49)mg/g乾量として測定された。マッシュルームの最小および最大微量栄養素含有量は、Zn(26.7-185)、Fe(50.1-842)、Cu(9.23-107)、およびMn(5.54-135)mg/kg乾量として測定された。カリウム含有量は、すべてのマッシュルームで他のミネラルよりも高いことが見出された。K、P、およびCuの濃度は、Suillus granulatusで最も高いと測定された。」(1033頁、要約)

4b)「マッシュルームは、カロリーが低く、タンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富な、価値のある健康的な食品である」(1033頁左欄2?3行)

甲5(訳文による。):
5a)「タイ北部からの食用野生外生菌根菌の子実体の栄養(および市場)価値を決定した。タンパク質、脂肪、粗繊維および炭水化物の濃度は、それぞれ14.0-24.2、2.7-9.5、8.3-16.8、および41.6-65.1%(乾燥重量)であった。ミネラル含有量は、主要栄養素(mg/g乾燥重量)P 2.1-8.1、K 12.8-45.2、S 1.1-6.1、Ca 0.1-2.4、Mg 0.5-1.6:微量栄養素(mg/kg乾燥重量)Fe 162-3254、Zn 37.8-253、Mn 13.0-329、Cu 11.6-81.1、B 1.6-7.1、およびSe 0-12.6、であった。主な子実体の糖は、d-グルコース、d-フルクトース、トレハロース、d-マンノース、d-アラビノース、d-キシロース、d-フコース、l-ラムノース、およびd-ガラクトースであった。糖アルコール成分は、マンニトール、グリセロール、ミオイノシトール、メソエリスリトール、d-アラビトール、ダルシトール、キシリトール、およびd-ソルビトールであった。」(527頁、要約)

5b)「マッシュルームは、多くのアジア地域で食品および医薬として伝統的に使用されている。」(527頁左欄2?3行)

5c)「したがって、マッシュルームは、食事にほとんどカロリーを与えずに、食物繊維を提供する貴重な食物資源である。」(527頁左欄15?17行)

5d)「これは、タイ北部の原生林から採取された野生の食用キノコの栄養価に関する最初の研究である。」(527頁右欄下から4?1行)

甲6(訳文による。):
6a)「例えば、WO00/15045(DSM)、WO96/21362(Zeneca)及びWO95/23843(Zeneca)から、例えばバーガーやソーセージの調製において、肉の代用品として食用糸状菌を使用することが知られている。このような使用では、菌糸(真菌のフィラメント)が例えば卵アルブミンと共に結合して、製品が筋繊維と似ていることにより肉の様な外観および食感を有するような質感が加えられる。この説明された種類の肉の代用品は、商標QUORNの下で長年にわたって広く市販されてきた。」(1頁10?19行)

6b)「有効成分(例えば、ビタミン、ミネラル、医薬品など)を錠剤(または他の剤形)の形で送達することもよく知られている。有効成分は、合成的に調製され、次に単離され、錠剤化され得る。あるいは、有効成分は、それらを含む原材料から抽出され、次に錠剤化されてもよい。有効成分(ビタミンなど)で食品を強化することも知られている。」(1頁28行?2頁2行)

6c)「本発明の第1の態様によれば、食用菌の水性配合物を調製する方法が提供され、この方法は、200μm未満の第1の方向の寸法、ここで、前記第1の方向の前記寸法は、前記粒子の最大寸法である、を有する食用真菌粒子を含む水性配合物を製造するために、水性液体中に食用菌を含む混合物を提供し、混合物をサイズ縮小プロセスに供することを含む。
前記食用菌は、好ましくは糸状菌を含む。前記糸状菌は、好ましくは菌糸体を含み、適切には、この方法で使用される食用菌は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%の菌糸体を含む。」(2頁26行?3頁9行)

6d)「上記菌粒子に対する好ましい菌(真菌)は、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、β1-3/1-6グルカンを含む細胞壁を有する。」(3頁21?24行)

6e)「前記混合物で提供される食用菌は、好ましくは、それらが生育および/または収穫された後に菌に添加される結合剤によって一緒に結合されない。」(4頁7?9行)

6f)「前記食用菌が卵アルブミンによって一緒に結合されないことが特に好ましい。」(4頁15?17行)

6g)「前記サイズ縮小プロセスの前の前記混合物中の食用菌は、好ましくは、少なくとも400μmの、前記食用菌粒子の最大寸法である第1の方向の寸法を有する。」(4頁20?23行)

6h)「前記混合物は、乾燥物基準で、少なくとも2重量%、適切には少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも9重量%の前記食用菌を含む。前記混合物は、乾燥物基準で、20重量%未満、または15重量%未満の前記食用菌を含み得る。
前記混合物は、少なくとも50重量%、適切には少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の水(混合物の任意の成分に存在する水を含む)を含む。場合により、例えば、混合物中の主要なまたは唯一の固体材料が食用菌によって提供される場合、前記水分量は、少なくとも85重量%または少なくとも89重量%であり得る。」(5頁1?14行)

6i)「前記水性液体は、牛乳、例えば脱脂乳、のように、溶解および/または懸濁された固体を有する水を含み得る。または前記水性液体は、本質的に水からなり得る。いくつかの実施形態では、前記水性液体は、タンパク質、例えば、エンドウ豆タンパク質分離物などの植物性タンパク質を含み得る。いくつかの実施形態では、前記水性液体は、前記食用菌を組み込んだ最終製品の成分であり得る一連の成分(例えば、砂糖、油、増粘剤、安定剤)を含み得る。前記水性液体が(前記菌に加えて)溶解および/または懸濁固体を含む場合、前記混合物中のそのような固体の量は、10重量%未満、好ましくは7.5重量%未満であり得る。
前記混合物は、前記食用菌と前記水性液体とを接触させることによって調製することができる。」(5頁21行?6頁2行)

6j)「前記サイズ縮小前の前記混合物中の食用菌は、好ましくは、少なくとも100、より好ましくは少なくとも150、特に少なくとも200の平均アスペクト比を有する。平均アスペクト比は500未満、好ましくは300未満であり得る。
前記サイズ縮小プロセス後の粒子の平均アスペクト比は、適切には65未満、好ましくは60未満、より好ましくは50未満、特に40未満である。いくつかの実施形態では、平均は、30未満、20未満、15未満、10未満、または5未満でさえあり得る。」(9頁28行?10頁6行)

6k)「前記配合物は、任意に、乳固形分(例えば、脱脂乳によって提供される)を含む。配合物は、乾燥物基準で0-15重量%、適切には0-10重量%、特に0-0.75重量%の乳固形分を含み得る。」(11頁14?17行)

6l)「前記食品は、タンパク質源、特にエンドウ豆タンパク質などの植物由来のタンパク質源を含み得る。このようなタンパク質源は、牛乳または脱脂乳に追加することができるが、適切には牛乳または脱脂乳の代わりに使用される。」(15頁7?10行)

6m)「いくつかの実施形態では、前記食品は、牛乳(乳製品)または脱脂乳(乳製品)を含まなくてもよく、より好ましくは、牛乳に由来する成分を含まない。この場合、前記食品は、乳糖不耐症の問題に有利に対処し得る。」(15頁26?30行)

6n)「この方法で調製される食品は、乳飲料であり得る。一実施形態では、そのような飲料の調製は、好ましくは、牛乳(例えば、脱脂乳)ペーストまたは粉末と組み合わせた前記食用菌の使用を含む。例えば、組み合わせは、脱脂乳中の食用菌の分散液、または脱脂乳と菌を含む乾燥粒子の分散液を含み得る。組み合わせは、好ましくは、他の成分と接触させ、必要に応じて適切な混合で牛乳および/または水を加える。別の実施形態では、乳製品ベースではなく、したがって適切には乳製品を含まない乳飲料を調製することができる。この場合、前記食品は、食用菌、適切にはその乾燥粒子を油(例えば、植物油)および水と接触させることによって調製することができる。」(17頁14?28行)

6o)「前記食品中の卵アルブミン粉末の重量%と食用菌の重量%との比は、適切には0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満である。好ましくは、食品は、実質的にアルブミン粉末を含まない、および/または卵アルブミンを全く含まない。」(19頁1?6行)

6p)「マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(以前はフザリウム・グラミネアラム・シュワビとして分類されていた)(10801 University Boulevard Manassas,VA,USにあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425;ATCC PTA-2684)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、熱処理によってそのRNA含有量が2重量%未満まで減少するように処理されている。」(22頁7?14行)

6q)「別の実験では、20重量%のマイコプロテインペースト量が最終製品に存在するようにヨーグルトのバッチを調製した。ただし、脱脂乳タンパク質の代わりに、乳製品以外のタンパク質が使用された。これは分離エンドウタンパク質であった(それ自体が約85%のタンパク質を含む)。」(33頁13?17行)

6r)「APV Lab 2000で750barで均質化した、3重量%エンドウタンパク質溶液中20重量%マイコプロテイン添加使用配合物。」(34頁、表4、Example No.4hの説明の欄)

6s)「エンドウタンパク質から作られたヨーグルトは、本処理で許容できる製品がもたらされることが見出された。エンドウタンパク質は、このタイプの製品の特徴である、それに関連する重大な望ましくないフレーバーを持たない非乳製品タンパク質源として選択された。得られた生成物は、表7aに記載されているように、良好な風味を有することが見出された。」(37頁19行?38頁5行)

6t)「上記のように、製品中のマイコプロテインペースト含有量は20重量%であり、および/または製品は約5重量%のペースト固形分を含んでいた。この量は、十分なグルコサミン、キチン、およびβ-グルカンを送達して、健康に良い効果をもたらすことができると考えられる。例えば、1.5g/日のグルコサミン、3-10mg/日のβ-グルカン、1g/日のキチン、および4.1-10.1の範囲のリノール酸とリノレン酸の比率が望ましい場合がある。」(38頁16?24行)

甲7(訳文で示す。):
7a)「本発明は、食用菌に関し、固体の第一食品原料、その使用、食品の製造方法および食品自身、特に押出食品、を提供する。本発明はまた、健康増進のための食用菌の使用および方法を提供する。」(1頁3?8行)

7b)「例えば、WO00/15045(DSM)、WO96/21362(Zeneca)及びWO95/23843(Zeneca)から、例えばバーガーやソーセージの調製において、肉の代用品として食用糸状菌を使用することが知られている。このような使用では、菌糸(真菌のフィラメント)が例えば卵アルブミンと共に結合して、製品が筋繊維と似ていることにより肉の様な外観および食感を有するような質感が加えられる。この説明された種類の肉の代用品は、商標QUORNの下で長年にわたって広く市販されてきた。」(1頁10?19行)

7c)「有効成分(例えば、ビタミン、ミネラル、医薬品など)を錠剤(または他の剤形)の形で送達することもよく知られている。有効成分は、合成的に調製され、次に単離され、錠剤化され得る。あるいは、有効成分は、それらを含む原材料から抽出され、次に錠剤化されてもよい。有効成分(ビタミンなど)で食品を強化することも知られている。」(1頁28行?2頁2行)

7d)「本発明は、別の態様では、有効成分を特定の食品に、それらが健康上の有益な利益を提供し、および/または健康を促進することができるレベルで送達する手段の発見に基づいている。さらに、同時に、有効成分を送達する手段は、健康に有害である可能性があり、食品の機能性および/またはレオロジーに積極的に寄与する可能性がある食品中の成分(例えば、脂肪)を置き換えることができる。」(2頁12?20行)

7e)「前記食用菌は、好ましくは糸状菌を含む。前記糸状菌は、好ましくは菌糸体を含み、適切には、この方法で使用される食用菌は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%の菌糸体を含む。」(3頁4?9行)

7f)「上記菌粒子に対する好ましい菌(真菌)は、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、β1-3/1-6グルカンを含む細胞壁を有する。」(3頁22?25行)

7g)「したがって、前記食用菌は、親水コロイド(例えば、デンプン、ペクチン、カラギーナンまたはアルギン酸塩)および/またはタンパク質(例えば、カゼインなどの乳タンパク質、卵アルブミンまたは卵自体などの卵タンパク質;大豆などの植物タンパク質;グルテンなどの穀物タンパク質、またはプロテアーゼやホスホジアステラーゼなどの酵素)で処理する必要はない(したがって、それらに関連しない)。前記食用菌が卵アルブミンによって一緒に結合されないことが特に好ましい。」(4頁12?20行)

7h)「前記混合物は、乾燥物基準で、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも50重量%の前記食用菌を含む。」(4頁22?24行)

7i)「第1の態様の食品原料は、食用菌を含む水性配合物をサイズ縮小プロセスに供し、続いてサイズ縮小水性配合物から水を除去して固体生成物を生成することによって調製することができる。」(6頁27?31行)

7j)「本発明の第2の態様によれば、平均アスペクト比が70未満の食用菌粒子を含む固体の第1の食品原料が提供される。」(8頁4?7行)

7k)「消費のための食品において、前記第1の原料の量は、乾燥物基準で少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4.5重量%の食用菌糸(特に菌糸体または菌糸)であるように選択され得る。」(9頁17?21行)

7l)「実施形態の食品中の前記他の原料およびその量は、一般に、調製される食品の性質に依存するであろう。しかしながら、多くの食品に共通の原料は、適切には、牛乳(例えば、脱脂乳)および/または牛乳粉末(例えば、脱脂粉乳)である。したがって、この方法は、第1の食品原料を乳または粉乳と接触させることを含み得、粉乳の量は、食品において少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%であり得る。それは、好ましくは20重量%未満、より好ましくは15重量%未満である。牛乳の量は、80重量%未満、好ましくは75重量%未満であり得る。」(9頁28行?10頁5行)

7m)「前記食品または第二の食品原料中の卵アルブミン粉末の重量%と食用菌の重量%との比は、適切には0.1未満、好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満である。好ましくは、食品は、実質的にアルブミン粉末を含まない、および/または卵アルブミンを全く含まない。」(14頁27?32行)

7n)「マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(以前はフザリウム・グラミネアラム・シュワビとして分類されていた)(12301 Parklawn Drive, Rockville Md.20852にあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425;ATCC PTA-2684)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、熱処理によってそのRNA含有量が2重量%未満まで減少するように処理されている。」(16頁18?25行)

7o)「実施例6?風味付けした乳製飲料の調製及び評価。
風味付けされた乳飲料のバッチを、マイコプロテインペーストが最終生成物中に18.75重量%存在するように調製した。この濃度は、約4.70重量%のペーストの固体を供給する。・・・
乳飲料中の成分の概要を表13に提供する。
表13

」(36頁23行?38頁)

7p)「実施例10-常温環境で安定な再構成可能なスープの調製
実施例6dの噴霧乾燥されたマイコプロテインおよび脱脂粉乳は、常温環境で安定な再構成可能なスープを生成するために、脱水された成分と混合された。すべての粉末は、消費者が開いて脱脂乳または水で再構成し、250mlのフレーバースープを得られるようにホイルで密封された袋に包装された。製造可能な配合物の種類の例の要約を表18に示す。

各サービング(1袋あたり約40g)には、主要なビタミンとミネラルの推奨1日量(RDA)の3分の1が含まれ、高繊維、高タンパク質、低脂肪で、10gのマイコプロテイン固形物が含まれる。」(54頁9行?55頁4行)

甲8(訳文で示す。):
8a)「本発明は、消費物品、より具体的には、動物ベースの食品の非動物ベースのレプリカに関するものであり、いくつかの実施形態では、非動物原料をそれらの構成部分に分解し、それらの部分を消費物品に再組み立てすることによって製造できる。」(1頁12?15行)

8b)「本明細書では、消費物品およびそれを製造する方法が提供される。消費物品は、例えば、主に植物、または完全に植物ベースのタンパク質および/または脂肪を含む非動物ベースの消費物品であり得、飲料(例えば、クリームリカーなどのアルコール飲料、またはタンパク質飲料)、タンパク質サプリメント、焼成食品(例えば、パンやクッキー)、調味料(例えば、マヨネーズ、マスタード)、肉製品、または肉代替製品(例えば、牛挽肉製品)の形態であり得る。例えば、タンパク質飲料は、食事代替飲料、タンパク質が補充されたビール、またはタンパク質が補充された蒸留アルコール飲料(例えば、ウォッカまたはラム酒)であり得る。調味料はマヨネーズであり得る。肉製品は、筋肉のレプリカ、植物ベースの脂肪、および/または結合組織を含むことができるパテ、ソーセージ、または肉代用品であり得る。1つまたは複数のタンパク質を含むコアセルベートを、消費物品(例えば、牛挽肉製品)の成分を互いに結合するのを助けるために使用できる。」(3頁23行?4頁6行)

8c)「また、ヘム含有タンパク質および(i)一酸化炭素および/または(ii)亜硝酸塩を含み、肉を含まない消費物品が提供される。いくつかの実施形態において、ヘム含有タンパク質は、組成物の少なくとも0.01%を占める。いくつかの実施形態では、消費物品は、1つまたは複数のアンモニウム、ナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、単離および精製されたタンパク質は架橋されている。」(6頁24?29行)

8d)「いくつかの実施形態において、ゲル化は、5から100mMの塩化ナトリウムまたは塩化カルシウムを使用して誘導される。いくつかの実施形態では、熱に不安定な成分は、タンパク質または脂質、あるいはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、タンパク質はヘム含有タンパク質である。いくつかの実施形態では、コールドセットゲルは、凍結整列した植物タンパク質を含むマトリックス中に形成される。」(8頁17?21行)

8e)「本発明の消費物品は、従来の食品(以下、「食品」と呼ぶ)を複製、競合、補足、または置き換えることができる。食品は、現在存在するあらゆる食品であり得る。本発明の消費物品は、食品、例えば、同等の肉製品を複製するように作製できる。同等の肉製品は、白身の肉または黒身の肉であり得る。」(13頁22?25行)

8f)「いくつかの実施形態において、これらの組成物は、主にまたは完全に非動物源に由来する成分から構成される(例えば、成分の10%以下が動物源に由来する)。」(14頁20?22行)

8g)「本明細書に記載の消費物品は、実質的または完全に、動物以外の供給源、例えば、植物、真菌、または微生物ベースの供給源に由来する成分から構成され得る。植物源は、有機的に成長した源であり得る。タンパク質は、原料(例えば、動物組織、植物、真菌、藻類、細菌のバイオマスから抽出するか、分泌タンパク質の培養上清から抽出する)、または原料の組み合わせ(例えば、複数の植物種)から抽出できる。」(27頁7?12行)

8h)「上記のように、単離および精製されたタンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来し得る。」(27頁18?20行)

8i)「したがって、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の単離および精製されたタンパク質は、植物中に高レベルで見出され、大量に単離および精製することができる豊富なタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、豊富なタンパク質は、由来植物材料の約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、または70%の総タンパク質含有量を含む。」(29頁4?9行)

8j)「タンパク質を分離することで、不要な物質を排除できる。いくつかの実施形態において、単離および精製されたタンパク質は、植物の種子、葉、茎、または他の部分の望ましくない物質(例えば、RNAおよびDNAなどの核酸、脂質膜、リン脂質、脂肪、油、デンプン、セルロース、およびグルカンなどの炭水化物、フェノール化合物、ポリフェノール化合物、芳香族化合物、または色素)から実質的に分離されたタンパク質である。」(31頁26行?32頁2行)

8k)「いくつかの実施形態において、単離および精製されたタンパク質の1つ以上は、ヘム含有タンパク質などの鉄運搬タンパク質であり得る。」(33頁14?15行)

8l)「ヘム含有ポリペプチドの非限定的な例には、アンドログロビン、サイトグロビン、グロビンE、グロビンX、グロビンY、ヘモグロビン、レグヘモグロビン、フラボヘモグロビン、ヘルズゲートグロビンI、ミオグロビン、エリスロクルオリン、ベータヘモグロビン、アルファヘモグロビン、プロトグロビン、シアノグロビン、サイトグロビン、ヒストグロビン、ニューログロビン、クロロクルオリン、短縮ヘモグロビン(例、HbNまたはHbO)、切断された2/2グロビン、ヘモグロビン3(Glb3など)、チトクローム、またはペルオキシダーゼが含まれる。
本明細書に記載の消費物品に使用できるヘム含有タンパク質は、哺乳動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、オックス、またはウサギなどの家畜)、鳥、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、繊毛虫、または細菌に由来し得る。」(34頁3?11行)

8m)「ヘム含有タンパク質は、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Magnaporthe oryzae、Fusarium graminearum、またはFusarium oxysporumなどの真菌から単離され得る。」(34頁24?26行)

8n)「例えば、タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得る。」(38頁15?17行)

8o)「塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導でき、溶液を室温以下でインキュベートしてゲル形成を可能にできる(通常は数分から数時間)。」(45頁2?4行)

8p)「動物の筋肉組織の追加成分には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびその他の金属イオン、乳酸およびその他の有機酸、遊離アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、および硫黄化合物が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、筋肉レプリカは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および鉄、亜鉛、銅、ニッケル、リチウム、またはセレンなどの他の金属イオン、乳酸、および脂肪酸などの他の有機酸、遊離アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチドおよび硫黄化合物グルタチオン、ベータメルカプトエタノール、またはジチオスレイトールを含み得る。いくつかの実施形態では、筋肉レプリカまたは消費物品中のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、他の金属イオン、乳酸、他の有機酸、遊離アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチドおよび/または硫黄化合物の濃度は、複製されている筋肉または肉に見られる濃度の10%以内である。」(47頁22行?48頁2行)

8q)「いくつかの実施形態では、結合組織レプリカは、総重量で約50%のタンパク質(液体重量で約50%)を含み、低脂肪および多糖成分を有する。」(64頁25?27行)

8r)「いくつかの実施形態において、タンパク質成分は、非動物源(例えば、植物源、藻類、細菌、または真菌、例えば、セクションIIIAおよびBを参照のこと)に由来する。いくつかの実施形態において、単離されたタンパク質は、重量でタンパク質含有量の50%、60%、70%、80%、または90%以上を占める。」(65頁4?7行)

8s)「例えば、水分含有量を約50%に調整して、硬い結合組織のレプリカを作成できる。」(65頁29?30行)

8t)「軟骨タイプの組織は肉眼的に均質で、圧縮に耐性があり、水分含有量が高く(最大80%)、タンパク質(コラーゲン)含有量が低く、多糖類(プロテオグリカン)含有量が高くなっている(それぞれ約10%)。組成的には、軟骨タイプの結合組織のレプリカは筋膜タイプの組織のレプリカに似ており、それぞれの相対的な比率が「肉」の結合組織をより厳密に模倣するように調整されている。押出中に、水分含有量を約60%に調整して、柔らかい結合組織のレプリカを作成できる。」(67頁1?7行)

8u)「いくつかの実施形態では、消費物品は動物製品を含まない。」(68頁22?23行)

8v)「いくつかの実施形態では、肉代替組成物は、10-30%のタンパク質、5-80%の水、および5-70%の脂肪を含み、組成物は、1つ以上の分離および精製タンパク質を含む。そのような肉代替品は動物性タンパク質を含まないことができる。」(70頁23?26行)

8w)「いくつかの実施形態では、肉のレプリカは、0.01重量%から5重量%のヘム含有タンパク質を含む。」(71頁24?25行)

8x)「一部の肉には、一部の肉の赤色と鉄分のほとんどを占めるヘム含有タンパク質であるミオグロビンも含まれる。」(71頁26?28行)

8y)「非動物の供給源は、消費物品に含まれるタンパク質の一部またはすべてを提供できる。非動物の供給源には、野菜、ニンジンの地上部やススキなどの非食用バイオマス、海藻、果物、ナッツ、穀物、藻類、細菌、または真菌が含まれる。」(73頁7?9行)

8z)「グルテン含有配合物では、フードグラインダーの追加機能は、グルテンを処理し、整列したグルテン分子のグルテンネットワークを発現させることである。グルテン含有配合物の場合、脂肪とグルテンネットワークとの相互作用を最小限に抑えることが重要である。」(75頁17?20行)

8aa)「最後に、グルテン含有配合物の場合、そのパテは、調理する前に、室温で30分間、または4℃で一晩静置することができる。」(75頁24?25行)

8ab)「場合により、鉄運搬タンパク質の供給源は、動物供給源、または植物、真菌などの非動物供給源、または植物、藻類、細菌、または真菌などの遺伝子組み換え生物である。場合により、鉄運搬タンパク質はミオグロビンである。」(82頁9?11行)

8ac)「培地のゲル化は、20mMの塩化カルシウムの添加により誘導された。」(126頁16?17行)

8ad)「ゲル形成は、20mMの塩化カルシウムを添加することにより誘導された。50gのビーフパティレプリカは、5gのコールドゲルを10gの脂肪組織レプリカ、10gの結合組織レプリカ、および25gの筋肉組織レプリカと組み合わせることによって形成された。」(126頁27?29行)

甲9(訳文で示す。):
9a)「希薄ジェラン分散液の臨界オーバーラップ濃度(C^(*))は、定常せん断レオメトリーを使用して、カルシウムイオン濃度(0.25および0.5mM Ca^(2+))および温度(5-25℃)の影響に関して研究された。C^(*)は、ゲル化閾値に近いジェラン濃度でのプレゲル構造の形成に関連していると想定された。温度が下がるか、Ca^(2+)濃度が上がると、C^(*)は下がった。添加されたCa^(2+)の存在下および非存在下でのC^(*)の温度依存性は、架橋形成の熱がCa^(2+)のレベルの増加とともにほぼ直線的に減少するEldridge-Ferryモデルによって説明できる。これは、水素結合が支配的なシステムからイオン相互作用が媒介するシステムヘの移行の結果として解釈された。Tang、Tung、およびZeng(1997a)によって開発された、イオン媒介ポリマーゲル化メカニズムの代替モデルでは、C^(*)での架橋エネルギーは、自立型ジェランゲルで報告されているものよりわずかに少ないと決定された。このモデルはまた、2つの隣接する二重らせんジェランストランドの架橋に関与するCa^(2+)イオンの数が3であることを示し、接合ゾーンの最小サイズがらせんの単一ピッチに等しいことを示唆した。
さらに、0.1および0.2%(w/w)の水性ジェラン分散液の見かけの粘度を、Ca^(2+)濃度およびせん断速度の範囲で調べた。結果は、Ca^(2+)イオンとジェランカルボキシル基の比率が0.5:1に相当すると、見かけの粘度が最大に増加することを示した。さらにCa^(2+)を添加すると、プレゲル構造の弱体化または破壊を示す、見かけの粘度の低下がみられた。」(577頁、要約)

甲10(訳文で示す。):
10a)「ジェラン/ゼラチン混合溶液のゲル化特性は、ゼラチン(0-1.4%w/v)に対するジェラン(1.6-0.2%w/v)の8つの異なる比率、および7つの異なるカルシウムレベル(0-30mM)で動的粘弾性試験を使用して研究された。混合ゲルのゲル化温度およびゲル化速度は、ゼラチンに対するジェランの比率、ならびにカルシウムの濃度によって著しく影響を受けた。低レベルのカルシウムの添加は、カルシウムが添加されていないゲルと比較して、ゲル化温度およびゲル化速度の増加をもたらした。カルシウムがさらに増加すると、ゲル化温度は上昇したが、混合ゲルのゲル化速度が低下した。さらに、ゼラチンの存在は、一般に、特に高い比率、および溶液が高いゲル化温度を有する場合、おそらくジェラン架橋の成長および発達を物理的に妨げることにより、ゲル化速度に悪影響を及ぼした。カルシウムの存在下で、ジェランは連続ゲルマトリックスを形成し、ゼラチンは不連続相として存在するように見えた。ジェラン/ゼラチン混合物は、2つのポリマーの比率とカルシウム濃度を変えることにより、広い温度範囲でゲルを形成できる。」(879頁、要約)

10b)「本研究の目的は、動的レオロジー測定を使用して、ジェラン/ゼラチン混合ゲルのゲル化挙動に対するジェランとゼラチンの幅広い比率とカルシウム濃度の影響を評価することであった。」(880頁左欄32?36行)

10c)「ポリマー溶液のゲル化温度は、ジェランとカルシウム濃度の影響を大きく受けた(P<0.05)。混合物中のジェランの割合が増加するにつれてゲル化温度が上昇し、ジェランとゼラチンの各組み合わせで、カルシウムイオン濃度の増加とともにゲル化温度が上昇した(図2)。」(881頁右欄9?15行)

10d)「

図2.ジェランとゼラチンの比率および異なるカルシウムイオンレベルの関数としてのジェラン/ゼラチンゲルのゲル化温度。総ポリマー溶液の1.6%には、ジェラン(1.6-0.2%w/v)およびゼラチン(0.0-1.4%w/v)が含まれていた。」(882頁、図2)

甲11(訳文で示す。):
11a)「カルシウム塩の機能には、栄養強化の他に、緩衝剤、生地調整剤、硬化剤、さらには防腐剤としての作用が含まれる。処方者がカルシウムを追加した後は、最初にそれを何に使用したいかは関係なく、カルシウムは依然として総量に寄与していると、乳酸塩とグルコン酸塩のサプライヤーの市場開発スペシャリストであるエリス・ホゲトゥーンは述べる。もちろん、そのような二重の目的は必ずしも理想的ではない。例えば、抗菌性のプロピオン酸カルシウムは製品にカルシウムを添加するが、高濃度で添加すると風味に影響を与える。」(61頁右欄9?28行)

甲12(訳文で示す。):
12a)「裂いた肉フレークに似た繊維状粒子は、可溶性アルギン酸塩およびタンパク質および/またはデンプンの水溶液を多価カチオンゲル化剤水溶液と混合し、練り、そして叩くことによって調製される。繊維状粒子は、通常、肉ペーストと混合され、次に成形および調理されて、所定の形状を有する肉類似製品を製造する。」(要約)

12b)「本発明の目的は、可溶性アルギン酸塩プラスタンパク質および/またはデンプンの水溶液を、魚、エビ、ロブスター、カニ、鶏肉、牛など、さまざまな動物の天然肉に近いテクスチャー、ジューシーさ、および噛み応えのある特徴を有する肉類似製品の繊維状の裂かれたフレークに容易に変えることができる、肉類似製品およびそれを調製するプロセスを提供することである。本発明のこれらおよび他の目的は、可溶性アルギン酸塩とタンパク質および/またはデンプンの両方の水溶液を、多価カチオンゲル化剤の水溶液と一緒に混合、混練、および叩くことによって達成される。」(1欄47?59行)

12c)「本発明の水性出発原料は、以下の成分からなる:

」(2欄8?19行)

12d)「これらの組成物で使用可能なタンパク質は、大豆タンパク質単離物などの植物性タンパク質、および/または大豆タンパク質濃縮物および/または卵白アルブミンなどの動物性タンパク質を含む熱凝固性タンパク質である。タンパク質は、ゲル化溶液で使用される多価カチオンが高すぎる濃度、すなわち、可溶性アルギン酸塩の調製または取り扱い中にアルギン酸塩のゲル化を引き起こす濃度であってはならない。そのような陽イオンを含むカルシウムカゼイネートは使用に適していない。」(2欄20?32行)

12e)「水性ゲル化溶液に使用されるゲル化剤には、可溶性アルギン酸塩のゲル化を引き起こす多価カチオンを有する無機および有機塩が含まれる。そのようなゲル化剤(例えば、カチオンCa^(++)およびAl^(+++)を有する)は、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、ならびにアンモニウムミョウバンおよびカリウムミョウバンなどの塩を含む。」(2欄47?53行)

12f)「いくらかの澱粉の添加は、繊維状粒子のジューシーさを向上するが、総質量の10重量パーセントを超えるなど、比較的大量の澱粉を加えると、製品がべたつくため、製品の噛み応えが低下する。いくらかのタンパク質の添加は、繊維状粒子に柔らかくジューシーなテクスチャーを与えるが、総質量の10重量パーセントを超えるなど、比較的大量のタンパク質を添加すると、製品のテクスチャー強度が低下する。優れたテクスチャーの繊維状粒子を良好な収率で生成するには、適切な量の可溶性デンプンと可溶性タンパク質の両方が好ましい。この点に関して、最良の結果を得るために望ましい重量パーセントは、3-15重量パーセントのデンプンおよび/またはタンパク質である。
ゲル化剤の濃度は、繊維状粒子の水分含有量、およびそれらのテクスチャーの硬さとジューシーさも決定する。他の条件を変えずにゲル化溶液中の多価カチオンを増加させると、繊維状粒子の含水量が減少し、硬くて乾燥したテクスチャーの生成物が得られ、また収率が低くなる。比較的高濃度のゲル化剤の存在は、製品に苦味を与える。ゲル化剤の濃度を下げると逆の効果があり、低レベルのゲル化剤を使用すると、非常に柔らかい生成物が形成され、非常に高い圧縮を加えても、反応溶液からの生成物の分離は非常に困難である。最良の結果を得るための、総質量のパーセントとしてのゲル化剤の重量パーセントは、0.5-2.0%である。」(3欄51行?4欄12行)

12g)「実施例2.
2重量パーセントのアルギン酸カリウム、5重量パーセントのコーンスターチ、および1重量パーセントの塩化カルシウム(バランス水)の水溶液を使用したことを除いて、実施例1で使用したものと同じプロセスを使用した。分離した繊維状粒子を脱水した後、それらの固形分は13%であり、水分含有量は77%であった。」(5欄9?16行)

12h)「1.以下を含む、裂いた肉のフレークを模倣する食用繊維粒子を調製するための方法:
(a)可溶性アルギン酸塩と、タンパク質およびデンプン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される物質との水溶液を調製すること、ここで、前記水溶液は、0.5-5重量パーセントの可溶性アルギン酸塩、および1-20重量パーセントの少なくとも1つのデンプンおよびタンパク質を含み、前記可溶性アルギン酸塩アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムおよびアルギン酸アンモニウムからなる群から選択される、
(b)前記水溶液を、続いて添加されるゲル化水溶液と一緒に、室温で混合し、混練し、叩いて繊維状粒子を形成し、次に、前記粒子をさらに混合すること、
(c)得られた溶液から繊維状粒子を分離し、圧縮によってそこから過剰な水を除去すること、および
(d)繊維状粒子を70-100℃で20-60分間、ヒートセットするよう加熱すること、
(e)前記粒子は、それぞれが長さ10-50mmおよび直径1-5mmの間である裂かれた糸の絡み合った塊の形状を有する、
(f)可溶性アルギン酸塩および少なくとも1つのタンパク質およびデンプンの前記水溶液、および前記ゲル化水溶液は、互いに約1:05から1:2の体積比で使用される。
・・・
4.前記水性ゲル化溶液が、カチオン含有量に基づいて、Ca^(++)およびAl^(+++)の少なくとも1つの化合物を約0.1から1重量パーセント含む、請求項3に記載の方法。
5.前記化合物が、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、アルミニウムアルミニウムおよびカリウムミョウバンからなる群から選訳される、請求項4に記載の方法。」(請求項1、4、5)

甲13(訳文で示す。):
13a)「エビまたはカニ肉の類似製品の形成に有用な繊維状タンパク質性材料は、タンパク質とアルギン酸塩の両方を含む水溶液を一連の2つのゲル化浴に押し出すこと、最初のゲル化浴では、押出物上に安定な表面膜を容易に形成するように適合された高いゲル化剤カチオン濃度が維持され、第2のゲル化浴では、第1のゲル化浴で使用される濃度よりも低いゲル化剤カチオン濃度であり、押出物全体にゲル化剤カチオンの拡散を可能にするのに十分な時間使用される、および押出物の回収、凍結および解凍によって調製される。」(要約)

13b)「本発明のこれらおよび他の目的は、タンパク質およびアルギン酸塩の水溶液を多価カチオンゲル化浴に押し出すことによって達成され、ここで、押出物は、一連の2つの非沸騰ゲル化浴に供され、その最初の、高ゲル化押出物上に安定な表面膜を容易に形成するように適合された薬剤カチオン濃度が維持され、そのようなゲル化浴の第2では、第1のゲル化浴で使用されるよりも低いゲル化剤カチオン濃度が使用され、押出物全体にゲル化剤カチオンを拡散させ、続いて押出物を凍結および解凍する。次に、繊維状押出物は、繊維からの多価カチオン拡散によって硬化されるアルギン酸塩溶液によって結合される。」(1欄39?53行)

13c)「押出可能な本発明の溶液組成物は、以下の成分を含む:

」(1欄56?65行)

13d)「本発明の方法で使用されるゲル化浴で使用されるゲル化剤は、可溶性アルギン酸塩のゲル化を引き起こす多価カチオンの無機および有機塩を含むであろう。これらのゲル化剤には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄などのCa^(++)、Al^(+++)、Fe^(+++)の塩が含まれる。」(2欄42?49行)

13e)「成形された類似製品を調製するために、繊維は、約1-5、好ましくは約2-3重量%のアルギン酸塩を含む結合剤溶液と混合され、型に入れられる。繊維は、約5-0.5:1、好ましくは約2±0.5:1の湿った繊維(約70から75重量%の水分を含む)と液体結合剤溶液との重量比で結合剤溶液に添加される。」(4欄15?22行)

13f)「この目的のために、繊維中の残留カルシウムイオン濃度は約0.1-0.4重量%のはずである。」(4欄29?31行)

甲14:
14a)「【0003】このような光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いる方法の欠点を避けるために、水面粒子膜法(「材料」第27巻、第298号、昭和53年7月、頁94?98に記載の方法など)により、厚みの測定が行われているが、時間がかかり、極めて煩わしいという問題がある以外に、小さな薄片状マイカなどの粉体の場合には粉体同志が重なり合って単粒子層になっていない場合があり、特に粉砕した粉体などの場合は正確なアスペクト比を求めることができなかった。従って、最近は画像処理装置を用いて粒径を測定し、データ処理をして、平均粒径を求めることが可能になっているにもかかわらず、厚みの測定が困難であるため、容易に精度の高いアスペクト比を求めることができなかった。一方、粉体の平均粒径としては、○1(決定注:○の中に1。以下同様。)最も長い径の平均値、○2フレークの面積相当円直径平均値、○3レーザーを利用した方法で求める平均粒径、○4コールター原理と呼ばれる電気抵抗法による平均粒径などが現在使われているが、それぞれ測定法が違うので平均粒径の値が異なってくる上、平均値の計算の仕方も、個数平均、重量平均、メジアン(中央値)などがあり、どの平均粒径の値を用いるかによってアスペクト比の値が違ってくるという問題がある。
・・・
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題に鑑み鋭意研究した結果、粉体の平均粒径(R)、比表面積(A)など容易に実測可能な測定値を用いて、予め作成した(R)と(A)を変数とする簡単な計算式により算出することにより容易に精度の高いアスペクト比を求めることができることを見いだして、本発明を成すに到った。」

2 理由ア、イについて
(1)特許異議申立理由の前提
特許異議申立人は、理由ア、イについて、概要、以下の優先権主張に関する主張をしている(特許異議申立書118?124頁)。
本件発明に係る特許についての出願は、2015年1月27日に出願された英国特許出願第1501320.4号(以下「基礎出願」という。)を基礎出願としてパリ条約による優先権の主張をしているところ、本件特許の出願人は、2013年7月24日に英国特許出願第1313234.5号(以下「先願1」という。)及び2014年7月23日に英国特許出願第1413074.4号(以下「先願2」という。)を出願し、それらはいずれも本件発明に係る特許と同一の対象を開示し、基礎出願の出願前に取り下げ、放棄等されておらず、それぞれ、英国特許出願公開第2516491号明細書(甲1)及び英国特許出願公開第2518725号明細書(甲2)として公開されている。
また、先願1は、英国特許第2516491号として許可され、英国特許出願第1413074.4号(先願2)、第1413076.9号、及び第1413072.8号の優先権主張の基礎とされ、それぞれ、英国特許出願公開第2518725号明細書(甲2)、第2518726号明細書、第2518724号明細書として公開され、特許が許可されている。
パリ条約第4条Cによれば、優先権は「最初の出願の日」から12か月の間に得られるところ、第4条C(4)は、さらに、同一の対象に関して同一の同盟国においてされた後の出願は、「先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、及びその先の出願がまだ優先権の主張の基礎とされていないことを条件として」、最初の出願とみなされることを規定している。
先願1の公開公報である甲1は、本件発明1に係る基礎出願と同じ課題、解決手段を開示し、その全ての発明特定事項についても開示している。
したがって、先願1は、基礎出願と同一の対象についての先の出願であって、基礎出願の日までに取り下げ、放棄等されておらず、基礎出願の日以後に公開され、英国特許第2516491号として特許を受けているから、基礎出願は本件発明1について最初の出願とみなされず、優先期間の初日とみなされない。本件発明1は、先願1を優先権主張の基礎としなければならないところ、本件特許出願は、先願1の出願日から12ヶ月を過ぎており、先願1からの優先権主張の利益を享受することもできない。
したがって、本件発明1は、基礎出願を基にした優先権主張の利益を享受することができず、その新規性進歩性の判断基準となる日は、実際の出願日である平成28年1月22日である。

(2)優先権主張について
ア 基礎出願の記載
本願の基礎出願には、以下の記載がある(訳文で示す。)。
基1)「1.糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む食用配合物。
2.前記食用配合物が、動物由来の成分を0重量%含む、請求項1の配合物。
3.前記食用配合物が、乾物基準で少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも20重量%の前記糸状菌を含む、請求項1または請求項2の配合物。
・・・
7.前記食用配合物が、乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%および1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含む、先行するいずれかの請求項の配合物。
8.前記食用配合物が少なくとも50重量%の水を含む、先行するいずれかの請求項の配合物。
・・・
15.前記食用配合物が酢酸塩部分を含む、先行するいずれかの請求項の配合物。」(特許請求の範囲)

基2)「上記配合物中の菌粒子は、1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは500未満、特には250以下のアスペクト比(長さ/直径)を有する糸状体を含んでもよい。当該アスペクト比は、10超であってもよく、好ましくは40超であり、より好ましくは70超である。」(6頁10?13行)

イ 優先権主張の効果について
(ア)基礎出願について
上記アの基礎出願の記載からみて、本件発明1である
「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む、食用配合物であって、
前記食用配合物が、
動物由来成分を0重量%含み、
乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含み、
乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含み、
少なくとも50重量%の水を含み、且つ、
酢酸塩部分を含み、さらに、
前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む、
食用配合物。」(以下「基礎出願配合物」という。)は、基礎出願に記載されているといえる。

(イ)先願1、2について
一方、上記摘示1a?1pからみて、先願1の明細書(甲1)には、糸状菌の食用菌粒子および二価または三価のカチオンを含む食用配合物であること(2頁1?3行)、カチオンにはカルシウムイオンが含まれること(2頁34?35行)、菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を減少させること、または排除さえすることが望ましい場合があり、本発明の目的の1つは、この問題に取り組むことであること(1頁15?20行)、塩化カルシウム/酢酸カルシウム混合物を使用して、マイコプロテイン含有配合物中で必要とされる卵アルブミン(またはタンパク質のような他の組織化生成物質)の量を減少させることができ、卵アルブミンまたは他の動物タンパク質を含まないビーガン製品を生成することができること(14頁1?4行)、食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%、例えば少なくとも0.140重量%のカルシウムイオンを含んでもよく、それは、乾燥重量基準で、0.300重量%未満のカルシウムイオンを含んでもよいこと(3頁13?14行)が記載されている(下線は当審が付与。以下同様。)。
また、先願1の明細書には、配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除したカルシウムイオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.004、特に少なくとも0.005であること、上記比は、0.025未満、または0.020未満であってもよいこと(3頁3?6行)が記載されているところ、カルウシウムイオンの重量%を少なくとも0.100重量%とし、カルシウムイオンの重量%を糸状菌の重量%で除した比率を、その特に好ましい値である少なくとも0.005とすると、これは、少なくとも20重量%(0.100/0.005)の糸状菌を含むこととなる。
さらに、先願1の明細書には、少なくとも25重量%であり、75重量%以下の水を含んでもよいこと(3頁16?17行)、食用配合物が酢酸塩部分を含むこと(4頁11?13行)、食用配合物中の食用菌粒子は、アスペクト比が40超である糸状体を含むこと(6頁21?27行)が記載されている。
以上の先願1の明細書の記載からみて、先願1の明細書には、
「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む、食用配合物であって、
前記食用配合物が、
動物由来成分を0重量%含み、
乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含み、
乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ0.300重量%未満のカルシウムイオンを含み、
少なくとも25重量%であり、75重量%以下の水を含み、且つ、
酢酸塩部分を含み、さらに、
前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む、
食用配合物。」(以下「先願1配合物」という。)が記載されているといえる。

同様に、上記摘示2a?2pからみて、先願2の明細書(甲2)には、
「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む、食用配合物であって、
前記食用配合物が、
動物由来成分を0重量%含み、
乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含み、
乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ0.300重量%未満のカルシウムイオンを含み、
少なくとも25重量%であり、75重量%以下の水を含み、且つ、
酢酸塩部分を含み、さらに、
前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む、
食用配合物。」(以下「先願2配合物」という。)が記載されているといえる。

(ウ)優先権主張の効果について
そこで、基礎出願配合物が先願1配合物と同一の対象であるといえるかについて検討するに、少なくとも両者は、基礎出願配合物が「少なくとも50重量%の水を含」むのに対し、先願1配合物は「少なくとも25重量%であり、75重量%以下の水を含」むものであり、含まれる水の重量%が上限下限の数値によって定められた技術思想として異なる。
特許異議申立人は、上記先願1配合物の水の重量%から、先願1の明細書は「少なくとも50重量%の水を含」むことを開示していることを主張しているが、上述のとおり基礎出願配合物と先願1配合物とで含まれる水の重量%が技術思想として異なり、「少なくとも50」という下限の数値自体記載されていないのであるから、基礎出願配合物が先願1配合物と同一の対象であるとの検討において、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
特許異議申立人は、先願1の明細書の表1の記載と(摘示1p)、マイコプロテインペーストが固形分23-25重量%(残りは水である)であるとの記載(摘示1l)に基づいて、マイコプロテインペースト90%(固形分25%含有)と水を5%添加したミンチ製品の場合、食用配合物中の糸状菌の乾燥重量基準での重量%は81.8%となり、本件発明1の「少なくとも20%」の規定を満たし、食用配合物中の水の重量%は72.5%となり、本件発明1の「少なくとも50%」の規定を満たすことになること等も主張する。
しかし、表1の記載はミンチ、標準バーガー、小片/ストリップを製造するために使用される配合物の詳細を示すものであって、配合される各成分の重量%が特定されているものであるところ、いずれの配合物についても遊離範囲卵アルブミンが配合されており、当該成分は動物由来成分に相当するから、「動物由来成分を0重量%含む」上記先願1配合物とは異なるものである。
先願1配合物として記載したとおり、先願1の明細書には、卵アルブミンまたは他の動物タンパク質を含まないビーガン製品を生成することができることも記載されているが(摘示1o)、表1の配合物について、卵アルブミンまたは他の動物タンパク質を含まないビーガン製品とすること、その場合に、他の成分の配合をどのようにするかについては記載されていないから、先願1の明細書の表1の記載と(摘示1p)、マイコプロテインペーストが固形分23-25重量%(残りは水である)であるとの記載(摘示1l)に基づいて、「少なくとも50重量%の水を含」むことを含む、基礎出願配合物が記載されているとはいえない。

先願2配合物は先願1配合物と同じであり、先願2の明細書の記載は先願1の明細書の記載と同様であるから、先願2配合物ついても同様である。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、先願1及び2は、基礎出願と同一の対象についての先の出願であるとはいえない。そして、基礎出願には本件発明1が記載されているから、本件発明1に係る出願はパリ条約による優先権主張の効果が認められる。
したがって、本件発明1は、基礎出願を基礎とした優先権主張の効果が認められるから、その新規性進歩性の判断基準となる日は、基礎出願の出願日である2015年1月27日である。
本件発明2?23についても同様である。

(3)理由ア、イについての判断
上記(2)で述べたとおり、本件発明1?23について、新規性進歩性の判断基準となる日は基礎出願の出願日である2015年1月27日であるところ、甲1及び甲2の発行日はそれぞれ、2015年1月28日及び2015年4月1日であり、いずれも上記判断基準日より後であるから、甲1及び甲2を根拠として、本件発明1?8、10?23が特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとすることはできない。

3 理由ウについて
(1)甲3に記載された発明
甲3には、食用マッシュルーム中の元素の測定及び評価についての記載がある。
甲3には、マッシュルームの乾物含量が通常60-140g/kgの範囲であること、カルシウム濃度は、40(Pholiota aurivella)から85720(Laetiporus sulphureus)mg/kg乾量の範囲であること、以前の研究では、Ca濃度レベルは、Morchella vulgarisで870mg/kg、Helvella lacunosaで470mg/kg、およびLepista Nudaで8800mg/kgであることが見出されたことが記載されている(摘示3a?3c)
したがって、甲3には、
「カルシウム濃度が0.004?8.572重量%であり、乾物含量が60-140g/kgの範囲である食用マッシュルーム」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「食用マッシュルーム」は本件発明1の「食用配合物」に相当する。
甲3発明は本件発明1とカルシウムを何らかの形態で含む点で共通する。
食用マッシュルームに糸状菌の食用菌が含まれること、動物由来成分を含まないことは技術常識であるから、甲3発明の食用マッシュルームは、「糸状菌の食用菌」を含み、「動物由来成分を0重量%含」むといえる。
食用マッシュルームは糸状菌からなるから、甲3発明は「乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の糸状菌を含」むといえる。
マッシュルームに含まれる乾物以外の成分は水であると認められるから、「乾物含量が60-140g/kgの範囲である」甲3発明から計算される水分含量は、86?94重量%であり、本件発明1の「少なくとも50重量%の水を含」むことに相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「糸状菌の食用菌とカルシウムとを含む、食用配合物であって、前記食用配合物が、動物由来成分を0重量%含み、乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含み、少なくとも50重量%の水を含む、食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点13-1>
食用菌について、本件発明1は「粒子」であるのに対し、甲3発明はそのように特定していない点。

<相違点13-2>
カルシウムについて、本件発明1は「カルシウムイオン」であり、その量について「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲3発明は「カルシウム」とされ、その濃度について「カルシウム濃度が0.004?8.572重量%であ」るとしている点

<相違点13-3>
本件発明1は「酢酸塩部分を含み」としているのに対し、甲3発明ではそのような特定がされていない点

<相違点13-4>
本件発明1は「食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」としているのに対し、甲3発明ではそのような特定がされていない点

事案に鑑み、上記相違点13-3について検討するに、甲3発明のマッシュルームが酢酸塩部分を含むことは甲3には何ら記載がなく、当該マッシュルームが酢酸塩部分を含むことは本件優先日における技術常識でもない。したがって、相違点13-3は実質的な相違点である。
特許異議申立人は、糸状菌を含めた生物一般において、TCAサイクルによりアセチルCoA等の酢酸塩が生成されることは技術常識である旨主張するが(特許異議申立書82頁)、アセチルCoAは酢酸塩ではないし、TCAサイクルにより酢酸塩が生成されることについて証拠は何ら示されておらず、TCAサイクルにより酢酸塩が生成されることは技術常識ということはできず、かかる主張を採用することはできない。
したがって、相違点13-1、2及び4を検討するまでもなく、本件発明1は甲3に記載された発明であるとはいえない。

本件発明2、3、5?8、16、21、22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲3に記載された発明であるとはいえない。

4 理由エについて
(1)甲4に記載された発明
甲4には、食用キノコのミネラル含有量の測定についての記載がある。
甲4には、トルコのエルズルム地方で採取された30種の野生で生育した一般的な食用マッシュルームの最小および最大主要栄養素であるCaの含有量が0.17-8.80mg/g乾量であることが記載されている(摘示4a?4b)。
したがって、甲4には、
「Caの含有量が0.17-8.80mg/g乾量である食用マッシュルーム」の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「食用マッシュルーム」は本件発明1の「食用配合物」に相当する。
甲4発明は本件発明1とカルシウムを何らかの形態で含む点で共通する。
食用マッシュルームに糸状菌の食用菌が含まれること、動物由来成分を含まないことは技術常識であるから、甲4発明の食用マッシュルームは、「糸状菌の食用菌」を含み、「動物由来成分を0重量%含」むといえる。
食用マッシュルームは糸状菌からなるから、甲4発明は「乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の糸状菌を含」むといえる。
したがって、本件発明1と甲4発明とは、
「糸状菌の食用菌とカルシウムとを含む、食用配合物であって、前記食用配合物が、動物由来成分を0重量%含み、乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含む、食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点14-1>
食用菌について、本件発明1は「粒子」であるのに対し、甲4発明はそのように特定していない点。

<相違点14-2>
カルシウムについて、本件発明1は「カルシウムイオン」であり、その量について「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲4発明は「Ca」であり、「含有量が0.17-8.80mg/gである」としている点

<相違点14-3>
本件発明1は「少なくとも50重量%の水を含」むとしているのに対し、甲4発明はそのような特定をしていない点

<相違点14-4>
本件発明1は「酢酸塩部分を含み」としているのに対し、甲4発明はそのような特定をしていない点

<相違点14-5>
本件発明1は「食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」としているのに対し、甲4発明はそのような特定をしていない点

事案に鑑み、上記相違点14-4について検討するに、甲4発明のマッシュルームが酢酸塩部分を含むことは甲4には何ら記載がなく、当該マッシュルームが酢酸塩部分を含むことは本件優先日における技術常識でもない。したがって、相違点14-4は実質的な相違点である。また、この点についての特許異議申立人の主張については、上記3(2)で述べたのと同様である。
したがって、相違点14-1?3及び5を検討するまでもなく、本件発明1は甲4に記載された発明であるとはいえない。

本件発明2、3、5?8、16、21、22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲4に記載された発明であるとはいえない。

5 理由オについて
(1)甲5に記載された発明
甲5には、食用野生外生菌根菌の子実体の栄養(および市場)価値についての記載がある。
甲5には、タイ北部からの食用野生外生菌根菌の子実体の主要栄養素であるCa含有量が0.1-2.4mg/g乾燥重量であることが記載されている(摘示5a?5d)。
したがって、甲5には、
「Ca含有量が0.1-2.4mg/g乾燥重量である食用野生外生菌根菌の子実体」の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比・判断
本件発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「食用野生外生菌根菌の子実体」は本件発明1の「食用配合物」に相当する。
甲5発明は本件発明1とカルシウムを何らかの形態で含む点で共通する。
食用野生外生菌根菌の子実体に糸状菌の食用菌が含まれること、動物由来成分を含まないことは技術常識であるから、甲5発明の食用野生外生菌根菌の子実体は、「糸状菌の食用菌」を含み、「動物由来成分を0重量%含」むといえる。
食用野生外生菌根菌の子実体は糸状菌からなるから、甲5発明は「乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の糸状菌を含」むといえる。
したがって、本件発明1と甲5発明とは、
「糸状菌の食用菌とカルシウムとを含む、食用配合物であって、前記食用配合物が、動物由来成分を0重量%含み、乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含む、食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点15-1>
食用菌について、本件発明1は「粒子」であるのに対し、甲5発明はそのように特定していない点。

<相違点15-2>
カルシウムについて、本件発明1は「カルシウムイオン」であり、その量について「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲5発明は「Ca」であり、「含有量が0.1-2.4mg/g乾燥重量である」としている点

<相違点15-3>
本件発明1は「少なくとも50重量%の水を含」むとしているのに対し、甲5発明はそのような特定をしていない点

<相違点15-4>
本件発明1は「酢酸塩部分を含み」としているのに対し、甲5発明はそのような特定をしていない点

<相違点15-5>
本件発明1は「食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」としているのに対し、甲5発明はそのような特定をしていない点

事案に鑑み、上記相違点15-4について検討するに、甲5発明の食用野生外生菌根菌の子実体が酢酸塩部分を含むことは甲5には何ら記載がなく、当該子実体が酢酸塩部分を含むことは本件優先日における技術常識でもない。したがって、相違点15-4は実質的な相違点である。また、この点についての特許異議申立人の主張については、上記3(2)で述べたのと同様である。
したがって、相違点15-1?3及び5を検討するまでもなく、本件発明1は甲5に記載された発明であるとはいえない。

本件発明2、6?8、21、22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲5に記載された発明であるとはいえない。

6 理由カについて
(1)甲6に記載された発明
甲6には、食用菌の水性配合物を調製する方法についての記載がある(摘示6a?6t)。
甲6には、食用真菌粒子を含む水性配合物を製造するために、水性液体中に食用菌を含む混合物を提供し、混合物をサイズ縮小プロセスに供すること(摘示6c)、食用菌は、好ましくは糸状菌を含むこと(摘示6c)、食用菌が卵アルブミンによって一緒に結合されないことが特に好ましいこと(摘示6f)、食品は、牛乳(乳製品)または脱脂乳(乳製品)を含まなくてもよいこと(摘示6m)、好ましくは、食品は、実質的にアルブミン粉末を含まない、および/または卵アルブミンを全く含まないこと(摘示6o)、混合物は、乾燥物基準で、少なくとも2重量%の食用菌を含み、また、混合物は、少なくとも50重量%の水を含むこと(摘示6h)、サイズ縮小プロセスの前の混合物中の食用菌は、好ましくは、少なくとも400μmの、食用菌粒子の最大寸法である第1の方向の寸法を有すること(摘示6g)、サイズ縮小前の混合物中の食用菌は、好ましくは、少なくとも100の平均アスペクト比を有すること(摘示6j)、混合物は、食用菌と水性液体とを接触させることによって調製することができること(摘記6i)、具体例として、APV Lab 2000で750barで均質化した、3重量%エンドウタンパク質溶液中20重量%マイコプロテイン添加使用配合物(摘示6r)が記載されている。
したがって、サイズ縮小前の混合物として、甲6には、
「水性液体中に糸状菌を含む食用菌粒子を含む混合物であって、
アルブミン粉末、卵アルブミンを含まず、牛乳(乳製品)、脱脂乳(乳製品)を含まず、
乾燥物基準で、少なくとも2重量%の食用菌を含み、
少なくとも50重量%の水を含み、
食用菌粒子は、少なくとも100の平均アスペクト比を有する、
混合物」の発明(以下「甲6発明1」という。)及び
「食用菌粒子と水性液体とを接触させることによる、水性液体中に糸状菌を含む食用菌粒子を含む混合物の調製方法であって、該混合物が
アルブミン粉末、卵アルブミンを含まず、牛乳(乳製品)、脱脂乳(乳製品)を含まず、
乾燥物基準で、少なくとも2重量%の食用菌を含み、
少なくとも50重量%の水を含み、
食用菌粒子は、少なくとも100の平均アスペクト比を有する、
混合物である、調製方法」の発明(以下「甲6発明2」という。)が記載されていると認める。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲6発明1とを対比する。
甲6発明1の「水性液体中に糸状菌を含む食用菌粒子の混合物」は、本件発明1の「糸状菌の食用菌粒子」、「を含む、食用配合物」に相当する。
甲6発明1の「少なくとも50重量%の水を含」むことは、本件発明1の「少なくとも50重量%の水を含」ことに相当する。
甲6発明1の食用菌粒子は糸状菌を含むから、甲6発明1の「食用菌粒子は、少なくとも100の平均アスペクト比を有する」ことは、本件発明1の「前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲6発明1とは、
「糸状菌の食用菌粒子を含む、食用配合物であって、前記食用配合物が、少なくとも50重量%の水を含み、前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む、食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点16-1>
食用配合物について、本件発明1が「カルシウムイオン」を含み、「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲6発明1はそのような特定を指定ない点

<相違点16-2>
食用配合物について、本件発明1が「動物由来成分を0重量%含み、乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含」むとしているのに対し、甲6発明1は「アルブミン粉末、卵アルブミンを含まず、牛乳(乳製品)、脱脂乳(乳製品)を含まず、乾燥物基準で、少なくとも2重量%の食用菌を含」むとしている点

<相違点16-3>
食用配合物について、本件発明1が「酢酸塩部分を含」むとしているのに対し、甲6発明1はそのような特定をしていない点

事案に鑑み、上記<相違点16-1>及び<相違点16-3>について検討する。
<相違点16-1>について
甲6には、混合物がカルシウムイオンを特定量含むことについての記載・示唆はない。
甲9には、希薄ジェラン分散液の臨界オーバーラップ濃度(C^(*))は、定常せん断レオメトリーを使用して、カルシウムイオン濃度(0.25および0.5mM Ca^(2+))および温度(5-25℃)の影響に関して研究されたことが(摘示9a)、
甲10には、ジェラン/ゼラチン混合溶液のゲル化特性は、ゼラチン(0-1.4%w/v)に対するジェラン(1.6-0.2%w/v)の8つの異なる比率、および7つの異なるカルシウムレベル(0-30mM)で動的粘弾性試験を使用して研究されたことが(摘示10a?d)、
甲11には、カルシウム塩の機能には、栄養強化の他に、緩衝剤、生地調整剤、硬化剤、さらには防腐剤としての作用が含まれることが(摘示11a)、
甲12には、裂いた肉のフレークを模倣する食用繊維粒子を調製するための方法において、可溶性アルギン酸塩と、タンパク質およびデンプン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される物質との水溶液を調製すること、ここで、前記水溶液は、0.5-5重量パーセントの可溶性アルギン酸塩、および1-20重量パーセントの少なくとも1つのデンプンおよびタンパク質を含むこと、前記水溶液を、続いて添加されるゲル化水溶液と一緒にすること、水性ゲル化溶液に使用されるゲル化剤には、可溶性アルギン酸塩のゲル化を引き起こす多価カチオンを有する無機および有機塩が含まれ、そのようなゲル化剤(例えば、カチオンCa^(++)およびAl^(+++)を有する)は、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、ならびにアンモニウムミョウバンおよびカリウムミョウバンなどの塩を含むこと、前記水性ゲル化溶液が、カチオン含有量に基づいて、Ca^(++)およびAl^(+++)の少なくとも1つの化合物を約0.1から1重量パーセント含むことが(摘示12a?12h、特に12h)、
甲13には、エビまたはカニ肉の類似製品の形成に有用な繊維状タンパク質性材料をタンパク質とアルギン酸塩の両方を含む水溶液を一連の2つのゲル化浴に押し出すこと等により調製することについての記載があり、ゲル化浴で使用されるゲル化剤には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄などのCa^(++)、Al^(+++)、Fe^(+++)の塩が含まれること、湿った繊維が約70から75重量%の水分を含むこと、繊維中の残留カルシウムイオン濃度は約0.1-0.4重量%であること、溶液組成物のタンパク質含量が2?20重量%であることが(摘示13a?13f)、
それぞれ記載されているところ、甲6発明1が、糸状菌である食用菌粒子の水性混合に関するものであるに対し、甲9及び甲10の記載は希薄ジェラン分散液又はジェラン/ゼラチン混合溶液に関するものであり、甲11の記載はカルシウム塩の機能として硬化剤としての作用が一般的に示されているに過ぎず、甲12の記載は可溶性アルギン酸塩およびタンパク質および/またはデンプンの水溶液を多価カチオンゲル化剤水溶液と混合し、練り、そして叩くことによって調製される裂いた肉フレークに似た繊維状粒子に関するものであり、甲13の記載はタンパク質とアルギン酸塩の両方を含む水溶液を一連の2つのゲル化浴に押し出すことにより調製されるエビまたはカニ肉の類似製品の形成に有用な繊維状タンパク質性材料に関するものであるから、甲6発明1と、甲9?13とは、適用しようとする技術の対象やカルシウムイオンの着目点が異なっており、甲6発明1に、甲9?13に記載された技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、甲6発明1において相違点16-1に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

<相違点16-3>について
甲6には、混合物が酢酸塩部分を含むことについての記載・示唆はない。甲9?13の記載をみても甲6発明1において酢酸塩部分を含むように変更することは動機付けられず、当業者が容易になし得た事項であるとする理由はない。
特許異議申立人は、甲6について、マイコプロテインを含むことから酢酸塩部分を含む旨主張するが、この点については上記3(2)で述べたとおりである。
したがって、甲6発明1において相違点16-3に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件発明1は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである(本件明細書【0004】、【0020】)。

したがって、相違点16-2について検討するまでもなく、本件発明1は甲6に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2?9、11?22について
本件発明2?9、11?22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるところ、上記アで述べたとおり、本件発明1は甲6に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明2?9、11?22も甲6に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明10について
本件発明10は本件発明1又は本件発明1を直接的・間接的に引用する本件発明2?9について、さらに「前記食用配合物がグルテンを含む」ことを特定するものである。
甲8には、消費物品、より具体的には、動物ベースの食品の非動物ベースのレプリカに関する記載があり(摘示8a?8ad)、グルテン含有配合物では、フードグラインダーの追加機能は、グルテンを処理し、整列したグルテン分子のグルテンネットワークを発現させることであることが記載されているところ(摘示8z)、かかる記載により、上記<相違点16-1>及び<相違点16-3>に係る本件発明10(本件発明1)の技術的事項を甲6発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
また、甲8には、塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導できること(摘示8o)、タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来するものであること(摘示8h)、タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得ること(摘示8n)が記載されているところ、タンパク質としては、糸状菌以外に、植物、藻類、真菌(糸状菌以外)、細菌、または古細菌などの非動物源という極めて多様な物質が挙げられており、タンパク質を修飾する物質についても酢酸塩以外に、リン酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基という極めて多様な物質が挙げられているのであるから、それら多くのタンパク質とその修飾物質の両選択肢の中から、糸状菌を含む混合物に、酢酸塩及びカルシウムイオンを組み合わせて配合することに着目することが甲8に記載・示唆されているということはできないから、上記<相違点16-1>及び<相違点16-3>に係る本件発明10(本件発明1)の技術的事項を甲6発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明10は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明10は甲6に記載された発明及び甲8?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明23について
本件発明23は、直接的・間接的に本件発明1を引用する食用配合物の製造方法の発明である一方、甲6発明2は甲6発明1の混合物の調製方法であるから、本件発明23と甲6発明2を対比すると、少なくとも、上記アで述べた<相違点16-1>及び<相違点16-3>と同様の相違点を有するといえ、それら相違点に係る本件発明23(本件発明1)の技術的事項を甲6発明2において採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえないことは上記アで述べたのと同様である。
そして、本件発明23は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、本件発明23は甲6に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

7 理由キについて
(1)甲7に記載された発明
甲7には、食用菌及び食品に関する記載がある(摘示7a?7p)。
甲7には、食用菌は、好ましくは糸状菌を含むこと、糸状菌は、好ましくは菌糸体を含むこと(摘示7e)、食用菌は、親水コロイド及び/又はタンパク質で処理する必要はないこと(摘示7g)、混合物は、乾燥物基準で、少なくとも30重量%の食用菌を含むこと(摘示7h)、平均アスペクト比が70未満の食用菌粒子を含む固体の第1の食品原料が提供されること(摘示7j)、具体例として、バッチNo.6.4、使用マイコプロテイン/プロテインが6dであって、ペースト/噴霧乾燥粉末9.04重量%、脱脂乳0重量%、脱脂粉乳ペースト0重量%、脱脂粉乳粉末2.41重量%、砂糖6重量%、安定剤0.03重量%、香料及び色素0.24重量%、水82.28重量%である乳飲料(摘示7o)、6dの噴霧乾燥されたマイコプロテインおよび脱脂粉乳を、常温環境で安定な再構成可能なスープを生成するために、脱水された成分と混合され、すべての粉末は、消費者が開いて脱脂乳または水で再構成し、250mlのフレーバースープを得られるようにホイルで密封された袋に包装された、製造可能な配合物(摘示7p)が記載されている。
したがって、甲7には、
「糸状菌を含む食用菌粒子を含む食品原料であって、
食用菌は親水コロイド、タンパク質で処理されておらず、
乾燥物基準で、少なくとも30重量%の食用菌を含み、
食用菌粒子は、平均アスペクト比が70未満である、
固体の食品原料」の発明(以下「甲7発明1」という。)及び
「糸状菌を含む食用菌粒子を含む食品原料の調製方法であって、該原料が
食用菌は親水コロイド、タンパク質で処理されておらず、
乾燥物基準で、少なくとも30重量%の食用菌を含み、
食用菌粒子は、平均アスペクト比が70未満である、
固体の食品原料である、調製方法」の発明(以下「甲7発明2」という。)が記載されていると認める。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲7発明1とを対比する。
甲7発明1の「糸状菌を含む食用菌粒子を含む食品原料」は、本件発明1の「糸状菌の食用菌粒子」、「を含む、食用配合物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲7発明1とは、
「糸状菌の食用菌粒子を含む、食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点17-1>
食用配合物について、本件発明1が「カルシウムイオン」を含み、「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲7発明1はそのような特定を指定ない点

<相違点17-2>
食用配合物について、本件発明1が「動物由来成分を0重量%含み、乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含」むとしているのに対し、甲7発明1は「食用菌は親水コロイド、タンパク質で処理されておらず、乾燥物基準で、少なくとも30重量%の食用菌を含」むとしている点

<相違点17-3>
食用配合物について、本件発明1が「少なくとも50重量%の水を含」むとしているのに対し、甲7発明1はそのような特定をしていない点

<相違点17-4>
食用配合物について、本件発明1が「酢酸塩部分を含」むとしているのに対し、甲7発明1はそのような特定をしていない点

<相違点17-5>
本件発明1が「食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」としているのに対し、甲7発明1は「食用菌粒子は、平均アスペクト比が70未満である」としている点

事案に鑑み、上記<相違点17-1>及び<相違点17-4>について検討する。
<相違点17-1>について
甲7には、食品原料がカルシウムイオンを特定量含むことについての記載・示唆はない。
甲9?13には、上記6(2)アで示した事項が記載されているところ、甲7発明1が、糸状菌を含む食用菌粒子を含む食品原料に関するものであるに対し、甲9及び甲10の記載は希薄ジェラン分散液又はジェラン/ゼラチン混合溶液に関するものであり、甲11の記載はカルシウム塩の機能として硬化剤としての作用が一般的に示されているに過ぎず、甲12の記載は可溶性アルギン酸塩およびタンパク質および/またはデンプンの水溶液を多価カチオンゲル化剤水溶液と混合し、練り、そして叩くことによって調製される裂いた肉フレークに似た繊維状粒子に関するものであり、甲13の記載はタンパク質とアルギン酸塩の両方を含む水溶液を一連の2つのゲル化浴に押し出すことにより調製されるエビまたはカニ肉の類似製品の形成に有用な繊維状タンパク質性材料に関するものであるから、甲7発明1に、甲9?13に記載された技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、甲7発明1において相違点17-1に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

<相違点17-4>について
甲7には、混合物が酢酸塩部分を含むことについての記載・示唆はない。甲9?13の記載をみても甲7発明1において酢酸塩部分を含むとすることが当業者が容易になし得た事項であるとする理由はない。
特許異議申立人は、甲7について、マイコプロテインを含むことから酢酸塩部分を含む旨主張するが、この点については上記3(2)で述べたとおりである。
したがって、甲7発明1において相違点17-4に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明1は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、相違点17-2、3及び5について検討するまでもなく、本件発明1は甲7に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2?9、11?22について
本件発明2?9、11?22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるところ、上記アで述べたとおり、本件発明1は甲7に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明2?9、11?22も甲7に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明10について
本件発明10は本件発明1又は本件発明1を直接的・間接的に引用する本件発明2?9について、さらに「前記食用配合物がグルテンを含む」ことを特定するものである。
甲8には、消費物品、より具体的には、動物ベースの食品の非動物ベースのレプリカに関する記載があり(摘示8a?8ad)、グルテン含有配合物では、フードグラインダーの追加機能は、グルテンを処理し、整列したグルテン分子のグルテンネットワークを発現させることであることが記載されているところ(摘示8z)、かかる記載により、上記<相違点17-1>及び<相違点17-4>に係る本件発明10(本件発明1)の技術的事項を甲7発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
また、甲8には、塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導できること(摘示8o)、タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来するものであること(摘示8h)、タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得ること(摘示8n)が記載されているところ、タンパク質としては、糸状菌以外に、植物、藻類、真菌(糸状菌以外)、細菌、または古細菌などの非動物源という極めて多様な物質が挙げられており、タンパク質を修飾する物質についても酢酸塩以外に、リン酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基という極めて多様な物質が挙げられているのであるから、それら多くのタンパク質とその修飾物質の両選択肢の中から、糸状菌を含む混合物に、酢酸塩及びカルシウムイオンを組み合わせて配合することに着目することが甲8に記載・示唆されているということはできないから、上記<相違点17-1>及び<相違点17-4>に係る本件発明10(本件発明1)の技術的事項を甲7発明1に適用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件発明10は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、本件発明1と同様に、本件発明10は甲7に記載された発明及び甲8?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明23について
本件発明23は、直接的・間接的に本件発明1を引用する食用配合物の製造方法の発明である一方、甲7発明2は甲7発明1の食品原料の調製方法であるから、本件発明23と甲7発明2を対比すると、少なくとも、上記アで述べた<相違点17-1>及び<相違点17-4>と同様の相違点を有するといえ、それら相違点に係る本件発明23(本件発明1)の技術的事項を甲7発明2において採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえないことは上記アで述べたのと同様である。
そして、本件発明23は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、本件発明23は甲7に記載された発明及び甲9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

8 理由クについて
(1)甲8に記載された発明
甲8には、動物ベースの食品の非動物ベースのレプリカに関する記載がある(摘示8a?8ad)。
甲8には、消費物品は、例えば、主に植物、または完全に植物ベースのタンパク質および/または脂肪を含む非動物ベースの消費物品であり得ること(摘示8b)、単離および精製されたタンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来し得ること(摘示8h)、消費物品に使用できるヘム含有タンパク質は、哺乳動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、オックス、またはウサギなどの家畜)、鳥、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、繊毛虫、または細菌に由来し得ること(摘示8l)、単離されたタンパク質は、重量でタンパク質含有量の50%、60%、70%、80%、または90%以上を占めること(摘示8r)、肉代替組成物は、10-30%のタンパク質、5-80%の水、および5-70%の脂肪を含み、組成物は、1つ以上の分離および精製タンパク質を含み、そのような肉代替品は動物性タンパク質を含まないことができること(摘示8v)、塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導できること(摘示8o)、例えば、水分含有量を約50%に調整して、硬い結合組織のレプリカを作成できること(摘示8s)、タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得ること(摘示8n)が記載されている。
したがって、甲8には、
「10-30%のタンパク質、5-80%の水、および5-70%の脂肪を含む肉代替組成物であって、
タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来し、動物性タンパク質を含まず、
塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導でき、
タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得る、
組成物」の発明(以下「甲8発明1」という。)及び
「10-30%のタンパク質、5-80%の水、および5-70%の脂肪を含む肉代替組成物の調製方法であって、該組成物が、
タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来し、動物性タンパク質を含まず、
塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導でき、
タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得る、
組成物である、調製方法」の発明(以下「甲8発明2」という。)が記載されていると認める。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲8発明1とを対比する。
甲8発明1の「肉代替組成物」は、本件発明1の「食用配合物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲8発明1とは、
「食用配合物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点18-1>
食用配合物について、本件発明1が「糸状菌の食用菌粒子」を含むとし、「乾燥重量基準で、少なくとも20重量%の前記糸状菌を含」むとしているのに対し、甲8発明1は「10-30%のタンパク質」を含み、「タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来し」としている点

<相違点18-2>
食用配合物について、本件発明1が「カルシウムイオン」を含むとし、「乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%且つ1重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含」むとしているのに対し、甲8発明1は「塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム(例えば、5-100mM)を添加することによりゲル化を誘導でき」るとしている点

<相違点18-3>
食用配合物について、本件発明1が「動物由来成分を0重量%含」むとしているのに対し、甲8発明1は「動物性タンパク質を含ま」ないとしている点

<相違点18-4>
食用配合物について、本件発明1が「少なくとも50重量%の水を含」むとしているのに対し、甲8発明1は「5-80%の水」を含むとしている点

<相違点18-5>
食用配合物について、本件発明1が「酢酸塩部分を含」むとしているのに対し、甲8発明1は「タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得る」としている点

<相違点18-6>
食用配合物について、本件発明1が「前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」としているのに対し、甲8発明1はそのような特定がされていない点

事案に鑑み、上記<相違点18-1>及び<相違点18-5>についてあわせて検討する。
<相違点18-1>と<相違点18-5>について
甲8発明1は、タンパク質は、植物、藻類、真菌(例えば、酵母または糸状菌)、細菌、または古細菌などの非動物源に由来するものであること、タンパク質は、糖、脂質、補因子、ペプチド、またはリン酸塩、酢酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基を共有結合することによって修飾され得るものであるから、タンパク質として糸状菌を用い、タンパク質に酢酸塩を共有結合することによって修飾され得るものであるところ、タンパク質としては、糸状菌以外に、植物、藻類、真菌(糸状菌以外)、細菌、または古細菌などの非動物源という極めて多様な物質が挙げられており、タンパク質を修飾する物質についても酢酸塩以外に、リン酸塩、メチル、および他の天然または非天然分子を含む他の化学基という極めて多様な物質が挙げられている。このように、極めて多様な物質の複数の選択肢からそれぞれ選択される特定の2つに着目して組み合わせて食用配合物の含有成分とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
そして、甲6、甲8?13のいずれにも、わざわざ糸状菌と酢酸塩とを組み合わせて食用配合物の含有成分とすることについては記載も示唆もされていない。
したがって、甲8発明1において、相違点18-1及び18-5に係る本件発明1の技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件発明1は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、相違点18-2?4、18-6について検討するまでもなく、本件発明1は甲8に記載された発明及び甲6、9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2?22について
本件発明2?22はいずれも直接的・間接的に本件発明1を引用するものであるところ、上記アで述べたとおり、本件発明1は甲8に記載された発明及び甲6、9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明2?22も甲8に記載された発明及び甲6、9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明23について
本件発明23は、直接的・間接的に本件発明1を引用する食用配合物の製造方法の発明である一方、甲8発明2は甲8発明1の肉代替組成物の調製方法であるから、本件発明23と甲8発明2を対比すると、少なくとも、上記アで述べた<相違点18-1>及び<相違点18-5>と同様の相違点を有するといえ、それら相違点に係る本件発明23(本件発明1)の技術的事項を甲8発明2において採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえないことは上記アで述べたのと同様である。
そして、本件発明23は、コスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除し、不快な味に対抗するという効果を奏するものである。
したがって、本件発明23は甲8に記載された発明及び甲6、9?13に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

9 理由ケ?サについて
(1)特許異議申立理由
理由ケ?サについての特許異議申立人が申し立てた具体的な理由の概要は次のとおりである。
理由ケ:本件発明において糸状菌の種類は特定されていないが、本件明細書に記載の実施例において実際に効果を確認したものは、本件明細書【0049】に記載の、ATCC PTA-2684として寄託されているフザリウム・ベネタナムA3/5を熱処理した特定のマイコプロテインペーストを使用したもののみであり、全ての糸状菌について効果が確認されたとは認められず、本件発明は、課題を解決できない範囲を含むことは明らかであり、明細書に記載された発明ではない。
理由コ:本件発明の課題は、糸状菌を含む肉代替物から、卵アルブミンを減量する、あるいは排除することであり、糸状菌と卵アルブミンを含む肉代替物は、両者の結合により製品が筋繊維と似た構造となって肉のような質感がもたらされることが本件明細書【0022】に記載されている、すなわち、糸状菌の構造を筋繊維と似た構造に維持する、または肉に近い食感をもたらす代替の解決手段が必要であるところ、本件明細書に記載の実施例では、全てにおいてカルシウムイオンに加えて構造タンパク質である小麦グルテン、およびゲル化剤であるアルギン酸ナトリウム、カラギーナンをそれぞれ特定量添加しており、これらの原料を特定量添加することが必須であることが理解されるが、本件発明のいずれも、これらの原料を必須成分として含むことを特定していないから、本件発明は、課題を解決できない範囲を含むことは明らかであり、明細書に記載された発明ではない。
理由サ:本件明細書【0020】には、本件発明の課題の解決に際して、塩化カルシウムのみでは不快な味を生じ得ることが記載され、酢酸カルシウムの併用が課題解決に必須であることが記載されており、【0020】の記載、および本件明細書に記載の実施例で実際に効果を確認した態様は塩化カルシウムおよび酢酸カルシウムの併用であり、酢酸カルシウムを特定範囲で含むもののみであるところ、本件発明のいずれも、カルシウムイオンを含むことは規定されているが、その種類は特定されておらず、さらに、「酢酸塩部分」との規定は、酢酸カルシウムであることを特定しておらず、その最低限の添加量も規定していないから、本件発明は、課題を解決できない範囲を含むことは明らかであり、明細書に記載された発明ではない。

(2)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。
a)「【0001】
本発明は、食用菌(食用真菌)に関し、そして特には、排他的ではないものの、肉の代用品としての使用のための食用菌粒子(食用真菌粒子)を含む食用配合物(edible formulation)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、WO 00/15045(DSM)、WO96/21362(Zeneca)及びWO95/23843(Zeneca)から、例えばバーガーやソーセージの調製において、肉の代用品として食用糸状菌を使用することが知られている。このような使用では、菌糸(真菌のフィラメント)が例えば卵アルブミンと共に結合して、製品が筋繊維と似ていることにより肉の様な外観および食感を有するような質感が加えられる。・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
状況によっては、例えばコスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を減少させること、または排除さえすることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題に取り組むことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の目的の観点によれば、糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む食用配合物が提供される。」

b)「【0011】
上記食用配合物は、好適には、乾燥物状態での糸状菌1Kgあたり、少なくとも2,000mg、好ましくは少なくとも4,000mg、より好ましくは少なくとも6,000mg、特には少なくとも8,000mgのカルシウムイオンを含む。上記食用配合物は、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満の上記カルシウムイオンを含む。
【0012】
上記食用配合物は、細胞内カルシウムイオン(例えば、上記食用菌粒子内)および細胞外カルシウムイオンを含んでもよい。上記食用配合物は、好適には、以下の細胞外レベルのカルシウムイオン:乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2,000mg、好ましくは少なくとも4,000mg、より好ましくは少なくとも6,000mg、特には少なくとも8,000mg、を含む。カルシウムイオンの最大細胞外レベルは、好適には、乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、25,000mg未満、好ましくは20,000mg未満である。
【0013】
上記食用配合物中のカルシウムイオンの合計量は、好適には、乾燥物基準の糸状菌1Kgあたり少なくとも5,000mg、好ましくは1Kgあたり少なくとも10,000mgである。カルシウムイオンの合計量は、糸状菌1Kgあたり40,000mg未満、または20,000mg未満であってもよい。
【0014】
上記食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも0.100重量%、好ましくは少なくとも0.200重量%、より好ましくは少なくとも0.300重量%のカルシウムイオンの合計量を含んでもよい。それは、乾燥重量基準で、1重量%未満または0.8重量%未満のカルシウムイオンの合計量を含んでもよい。
【0015】
上記食用配合物は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の水を含んでもよい。上記配合物は、85重量%未満または80重量%未満の水を含んでもよい。上記食用配合物は、上記食用配合物の前駆体が処理されて(例えば、蒸すこと、冷やすこと、および/または冷凍することなどにより調理されて)質感を発生させた後に、上述したレベルの水を含んでもよい。」

c)「【0016】
上記食用配合物は、例えばカラギーナンといった、例えばスルホン化多糖類などの多糖類を含んでもよい。上記食用配合物は、乾燥重量基準で、好適には、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも0.9重量%の上記多糖類、例えばカラギーナンを含む。それは、2重量%未満の上記多糖類を含んでもよい。
【0017】
上記食用配合物は、アルギン酸ナトリウムといった、例えばアルギン酸の塩などのアルギネート(アルギン酸塩)を含んでもよい。上記食用配合物は、乾燥重量基準で、好適には、0.01重量%、好ましくは少なくとも0.05重量%、より好ましくは少なくとも0.12重量%のアルギン酸塩を含む。それは、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満のアルギン酸塩を含んでもよい。
【0018】
上記食用配合物は、例えば小麦グルテンいったグルテンを含んでもよい。上記食用配合物は、乾燥重量基準で、好適には、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%の上記グルテンを含む。それは、5重量%未満の上記グルテンを含んでもよい。
【0019】
上記食用配合物は、上記食用菌粒子に加えて、小麦ベースのタンパク質ではないタンパク質源を含んでもよい。上記タンパク質源(A)は、植物性タンパク質源であってもよい。上記タンパク質源(A)は、イモ(ジャガイモ)タンパク質源であってもよい。上記食用配合物は、乾燥重量基準で、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%のタンパク質源(A)を含んでもよい。それは、20重量%未満のタンパク質源(A)を含んでもよい。
【0020】
上記配合物中で塩化カルシウムのみが使用されるならば、本明細書に記載の効果を達成するための最小限のレベルにおいてでさえ、不快な味が生じ得ることが見出されている。それに応じて、上記不快な味に対抗するための工程を設けてもよい。酢酸カルシウムの使用がこれを行うことができると見出されている。従って、上記食用配合物は、好ましくは、酢酸塩部分を含む(酢酸カルシウムとして上記配合物中に最初に取り込まれていてもよい)。
【0021】
上記配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、好適には、少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.01である。上記比は、例えば0.03未満など、0.04未満であってもよい。
【0022】
上記酢酸イオンは、好適には細胞外イオンである。
【0023】
上記食用配合物は、乾燥物基準で、少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.40重量%の酢酸イオンを含んでもよい。それは、乾燥物基準で、2.00重量%未満、例えば1.00重量%未満の酢酸イオンを含んでもよい。
【0024】
第一の好適な実施形態では、上記食用配合物は、以下を含んでもよい:
- 乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり、少なくとも2,000mg、例えば少なくとも5,000mgのカルシウムイオン;
- 少なくとも50重量%の水。
【0025】
第二の好適な実施形態では、上記食用配合物は、以下を含んでもよい:
- 乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり5,000mgのカルシウムイオン;
- 乾燥物基準で糸状菌1Kgあたり25,000mg未満のカルシウムイオン;
- 少なくとも50重量%の水;
- 0重量%の卵アルブミン。
【0026】
上記第一および第二の好適な実施形態では、好ましくは、上記食用配合物中、乾燥物基準での糸状菌の重量%で除した酢酸イオンの重量%の比が、少なくとも0.005であり、0.03未満である。
【0027】
上記食用配合物は、乾燥物基準で、少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.50重量%の酢酸イオンを好適に含み;また、1.5重量%未満、または1.1重量%未満の酢酸イオンを好適に含む。」

d)「【0028】
説明されたように、菌粒子は、好適には糸状菌を含む。上記糸状菌は、好ましくは菌糸体(真菌の菌糸体)を含み、好適には、上記配合物中の上記菌粒子のうち少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、そして、特には少なくとも99重量%が菌糸体を含む。いくつかの糸状菌は、菌糸体および子実体の両方を含むことがある。上記菌粒子は、好ましくは、子実体を生成しない種類の糸状菌を含む。しかしながら、子実体を生成する種類の糸状菌が使用される場合は、上記配合(composition)中の上記菌粒子は、好適には、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の菌糸体を含む。好ましくは、上記菌粒子は、実質的に菌糸体のみを含む-即ち、上記配合(composition)中の上記菌粒子は、好ましくはいかなる子実体も含まない。
【0029】
上記菌粒子に対する好ましい菌(真菌)は、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有する。好ましい菌は、β1-3および1-6グルカンを含む細胞壁を有する。
【0030】
上記菌粒子は、WO 00/15045(DSM)に記載されているように、ケカビ目オーダー(order Mucorales)の菌細胞(真菌細胞)を含んでもよい。
【0031】
上記菌粒子は、好ましくは、不完全菌類から選択される菌を含む。
【0032】
好ましくは、上記菌粒子は、例えばWO96/21361(Zeneca)およびWO95/23843(Zeneca)で説明されているように、フザリウム種の細胞、特にフザリウム・ベネナタムA3/5の細胞(以前はフザリウム・グラミネアラムとして分類されていた)(10801 University Boulevard, Manassas, VA.にあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425; ATCC PTA-2684)を含み、そして好ましくは、本質的に上記フザリウム種の細胞、特に上記フザリウム・ベネナタムA3/5の細胞からなる。
【0033】
好ましくは、上記菌粒子は生存不能である。好ましくは、上記菌粒子は当該菌粒子が含有するRNAのレベルを低下させるように処理されている。従って、使用される上記菌粒子中の上記RNAのレベルは、好ましくは、生存可能な状態にあるときの同一の菌におけるレベルよりも低い。上記RNAのレベルは、WO95/23843で説明されているとおりに減少させ得る。上記菌粒子は、好適には、乾燥重量基準で1.9重量%未満、例えば1.7重量%以下のRNA含有量を有する。」

e)「【0036】
上記配合物中の菌粒子は、1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは500未満、特には250以下のアスペクト比(長さ/直径)を有する糸状体を含んでもよい。当該アスペクト比は、10超であってもよく、好ましくは40超であり、より好ましくは70超である。好ましくは、上記配合物中の上記菌粒子のアスペクト比の平均値(即ち、上記菌粒子の直径の平均で除した、上記粒子の長さの平均)もまた、上述の通りである。」

f)「【0048】
これより、以下の材料は、以下の通りを指す:
【0049】
マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(以前はフザリウム・グラミネアラム・シュワビとして分類されていた)(12301 Parklawn Drive, Rockville Md. 20852にあるアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関に預けられているIMI 145425; ATCC PTA-2684)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、熱処理によってそのRNA含有量が2重量%未満まで減少するように処理されている。当該材料についての更なる詳細は、WO96/21362およびWO95/23843で提供されている。上記材料は、イギリス、ストークスリーにあるMarlow Foods社から入手可能である。それは、約23重量%?25重量%の固体を含む(残りは水である)。ここで、当該固体は、約400μm?750μmの長さ、3μm?5μmの直径、および菌糸長さあたり2?3の先端の分岐頻度を有する、生存不能で且つRNAが減少された菌糸(真菌の菌糸)でできている。
【0050】
塩化カルシウム溶液-36重量%の塩化カルシウム水溶液を意味する。
【0051】
酢酸カルシウム-固体状の酢酸カルシウムを意味する。
【0052】
アルギン酸ナトリウムは、固体状のアルギン酸ナトリウムを意味する。
【実施例】
【0053】
以下に続く実施例では、実施例1は、マイコプロテイン含有製品の一般的な製造方法を提供する。実施例2?5は、菜食主義者による消費に適した特定製品の詳細を提供する。当該実施例に記載された原料に(塩化カルシウムおよび酢酸カルシウムによって)カルシウムカチオンを添加することにより、製造される製品の硬さを高め、許容可能な品質を生じることが見出される。上記カルシウムカチオンは、上記マイコプロテインペーストと相互作用して、その硬さおよび強さを高めると考えられる。
【0054】
(実施例1)
製品の調製のための一般的なプロセス
これは図1に要約されている。マイコプロテインペーストが他の原料と混合される。ここで、マイコプロテイン含有食品の実質的に均一な塊(例えば、肉の様な小片、ミンチ、ソーセージおよびロースト肉)を生成するように組み込まれることが望ましい。当該均一な塊は、成形器、そして続いて蒸し器(例えば、95℃超で35分?45分間)に通される。蒸された製品は、続いて冷却(例えば、-5℃?-10℃で約20分間)され、わずかに硬さを増すことにより当該製品の質感を向上させる。次に、任意でサイズ縮小プロセスが続き、冷凍することを含む第二の質感加工(texturization)工程が続く。その後、製品は、-18℃の低温倉庫内で少なくとも7日間の最終的な質感加工工程の前に、計量され、パッケージ化される。その後、製品は、顧客への販売のために小売店に配送されることができる。
【0055】
(実施例2)
マイコプロテイン含有小片の調製
実施例1で記載された一般的な手順に続いて、表1で参照される原料が配合され、最終製品が製造された。
【0056】
【表1】


【0057】
蒸し/冷却プロセスは、一般に合計70重量%?77重量%の範囲にある、最終製品中の水のレベルに影響を与えるということを理解されたい。
【0058】
(実施例3)
マイコプロテイン含有ミンチの調製
実施例1で記載された一般的な手順に続いて、表2で参照される原料が配合され、最終製品が製造された。
【0059】
【表2】


【0060】
(実施例4)
マイコプロテイン含有バーガーの調製
実施例1で記載された一般的な手順に続いて、表3で参照される原料が配合され、最終製品が製造された。
【0061】
【表3】


【0062】
(実施例5)
マイコプロテイン含有ソーセージの調製
実施例1で記載された一般的な手順に続いて、表4で参照される原料が配合され、最終製品が製造された。
【0063】
【表4】


【0064】
本発明は、前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(添付のいかなる請求項、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせ、或いは、そのように開示された任意の方法またはプロセスにおける工程の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。」

(3)判断
ア 課題
本件特許請求の範囲、明細書及び図面全体の記載事項からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「例えばコスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除すること」であると認める。

イ 理由ケについての判断
本件明細書には、「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む食用配合物が提供される。」(【0006】)、「菌粒子は、好適には糸状菌を含む。」(【0028】)と記載され、さらに、【0029】?【0033】に好ましい菌についての記載がある。そして、実施例には好ましい菌粒子として【0032】にも記載されているフザリウム・ベネナタムA3/5を用いた具体例が記載されている。
かかる本件明細書の記載から、好ましい菌粒子が【0029】?【0033】に記載される、キチンおよび/またはキトサンを含む細胞壁を有するもの、重合体のグルコサミンを含む細胞壁を有するもの、不完全菌類から選択されるもの、フザリウム種の細胞(特にフザリウム・ベネナタムA3/5の細胞)等であることが理解できるのであるから、用いることができる菌粒子が実施例に記載された特定の菌粒子に限られ、特定の菌粒子を用いないと上記課題を解決できないと当業者が理解するとはいえず、上記課題を解決できないという本件出願時の技術常識もない。
そして、上記した本件明細書の記載からみて、糸状菌の食用菌粒子を用いる本件発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

ウ 理由コについての判断
本件明細書には、「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む食用配合物が提供される。」(【0006】)と記載され、糸状菌、カルシウムイオン及び水を特定量含む好適な2つの実施形態が記載されている(【0024】、【0025】)。
グルテンについては「上記食用配合物は、例えば小麦グルテンいったグルテンを含んでもよい。」(【0018】)と、アルギン酸ナトリウムについては「上記食用配合物は、アルギン酸ナトリウムといった、例えばアルギン酸の塩などのアルギネート(アルギン酸塩)を含んでもよい。」(【0017】)と、カラギーナンについては「上記食用配合物は、例えばカラギーナンといった、例えばスルホン化多糖類などの多糖類を含んでもよい。」(【0016】)と、それぞれ記載されている。
実施例には、マイコプロテインペースト、酢酸カルシウム、塩化カルシウム溶液、水の他、バイタル小麦グルテン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等を含有する製品が記載されている(【0054】?【0063】)。
かかる本件明細書の記載からは、食用配合物がグルテン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンを含んでもよいことが理解できるものの、【0006】、【0024】、【0025】の記載からみて、それらの成分が食用配合物に必須の成分であり、食用配合物がそれらの成分を含まないと上記課題を解決できないと当業者が理解するとはいえず、上記課題を解決できないという本件出願時の技術常識もない。
したがって、上記した本件明細書の記載からみて、本件発明は、グルテン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンを含まなくても、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。
以上のとおり本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

エ 理由サについての判断
本件明細書には、「上記配合物中で塩化カルシウムのみが使用されるならば、本明細書に記載の効果を達成するための最小限のレベルにおいてでさえ、不快な味が生じ得ることが見出されている。それに応じて、上記不快な味に対抗するための工程を設けてもよい。酢酸カルシウムの使用がこれを行うことができると見出されている。従って、上記食用配合物は、好ましくは、酢酸塩部分を含む(酢酸カルシウムとして上記配合物中に最初に取り込まれていてもよい)。」(【0020】)と記載され、【0021】?【0023】、【0026】、【0027】には酢酸イオンの量等についての記載がある。
また、本件明細書には、「糸状菌の食用菌粒子とカルシウムイオンとを含む食用配合物が提供される」(【0006】)との記載があり、【0011】?【0014】にはカルシウムイオンの量についての記載がある。
実施例には、塩化カルシウム溶液、酢酸カルシウムを含む製品についての記載がある。
かかる本件明細書の記載からは、食用配合物が、好ましくは酢酸塩部分を含み、その一例として、酢酸カルシウムとして配合物中に最初に取り込まれていてもよいこと、酢酸カルシウムの使用は、塩化カルシウムのみを使用した場合の不快な味に対抗する手段であることが理解できる。しかし、本件発明の課題は、「例えばコスト面から、または菜食主義者向けに適した製品を生産するために、肉の代用品の製造において食用菌と共に使用される卵アルブミンの量を排除すること」であって、必ずしも味に関する事項を課題とするものとはえいないから、【0020】の記載をみても、酢酸カルシウムが課題解決のために必須の成分であるとはいえない。
また、特許異議申立人の主張する「カルシウムイオンの種類」とは、「カルシウム塩の種類」であると解されるが、本件明細書の記載をみても、カルシウム塩が特定の物でないと課題が解決できないと当業者が理解するとはいえず、そのような本件出願時の技術常識もない。
そして、上記した本件明細書の記載からみて、本件発明は、酢酸カルシウムを含まなくても、また、カルシウム塩の種類が特定の物でなくても、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえる。
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

10 理由シについて
(1)特許異議申立理由
理由シについての特許異議申立人が申し立てた具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件発明1において、前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含むことが規定されているところ、本件明細書【0036】には、菌粒子のアスペクト比が「長さ/直径」であることが記載されているが、その長さや直径をどのように測定するかが本件明細書に記載されていない。当技術分野で知られているように、100μmオーダーの小粒子の長さの測定は、使用される技術に基づいて異なり(例えば、甲14、【0003】参照)、さらに、本件明細書【0036】には、配合物中の上記菌粒子のアスペクト比の平均値でもよい旨の記載があり、これは、平均値でなくてもよいことを示すものである。しかしながら、このような規定では、菌粒子のどの程度が規定のアスペクト比を満たしていればよいのか理解できず、発明の外延が把握できない。したがって、本件発明は明確でないし、本件明細書は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

(2)本件明細書の記載
本件明細書の記載は、上記9(2)に示したとおりである。

(3)判断
アスペクト比について、本件発明1では、「前記食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」と特定されているのであるから、「アスペクト比が40超である糸状体」が含有されていればよいと理解でき、本件明細書の「上記配合物中の菌粒子は、1000未満、好ましくは750未満、より好ましくは500未満、特には250以下のアスペクト比(長さ/直径)を有する糸状体を含んでもよい。当該アスペクト比は、10超であってもよく、好ましくは40超であり、より好ましくは70超である。好ましくは、上記配合物中の上記菌粒子のアスペクト比の平均値(即ち、上記菌粒子の直径の平均で除した、上記粒子の長さの平均)もまた、上述の通りである。」(【0036】)との記載からは、特定の糸状体が含有されているだけでなく、平均値としても条件を満たすことがより好ましいことがさらに記載されているだけで、発明特定事項自体の記載は明確に理解できるといえる。
さらに、実施例で用いられた菌糸について「マイコプロテインペースト-マイコプロテインペーストは、フザリウム・ベネナタムA3/5(・・・)由来の食用糸状菌の集まりを含む粘弾性材料を意味し、・・・固体を含む(・・・)。ここで、当該固体は、約400μm?750μmの長さ、3μm?5μmの直径・・・を有する、生存不能で且つRNAが減少された菌糸(真菌の菌糸)でできている。」(【0049】)との記載があり、上記実施例で用いられた菌糸のアスペクト比は、【0036】の記載に基づけば、80?250と計算できる。
したがって、上記本件明細書の記載及び出願時の技術常識によれば、本件発明の「アスペクト比」は糸状体の長さ/直径で求められる値であることは明らかである。また、糸状体のアスペクト比が40超のものが用いられることは【0036】に記載されており、実施例で用いられた菌糸のアスペクト比は80?250であり、40超の範囲内であるから、本件明細書には、アスペクト比が40超である糸状体の本件発明の好ましい具体例が記載されているといえる。

特許異議申立人が提示した甲14(摘示14a)には、平均粒径及び平均粒径から求めるアスペクト比は、測定方法、平均値の計算の仕方によって影響を受けることがある旨記載されているが、甲6(摘示6j)及び甲7(摘示7j)には、食用菌のアスペクト比についての記載があり、食用菌の特性としてアスペクト比を用いることは本件出願日前に公知である上、上述のとおり、本件発明は、「食用菌粒子が、アスペクト比が40超である糸状体を含む」と特定されているのであるから、本件発明が平均粒径に基づくアスペクト比であること等を前提とした上記特許異議申立人の主張には、理由がない。

以上のとおりであるから、本件発明のアスペクト比が第三者に不足の不利益を与えるほどに不明確なものとはいえず、本件発明は明確であり、また、発明の詳細な説明の記載は、本件発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立て理由及び証拠によっては、本件発明1?23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-05-31 
出願番号 特願2017-557499(P2017-557499)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23J)
P 1 651・ 113- Y (A23J)
P 1 651・ 121- Y (A23J)
P 1 651・ 537- Y (A23J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 薫  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 関 美祝
冨永 保
登録日 2020-06-11 
登録番号 特許第6715865号(P6715865)
権利者 マーロウ フーズ リミテッド
発明の名称 食用菌  
代理人 結城 仁美  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 塚中 哲雄  

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