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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録(定型) G06Q
管理番号 1375425
審判番号 不服2020-14623  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-20 
確定日 2021-07-06 
事件の表示 特願2016- 63298「情報処理装置、制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-182120、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成28年3月28日の出願であって,令和元年12月19日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年2月19日に手続補正がされ,同年7月14日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年10月20日に拒絶査定不服審判の請求と共に手続補正(以下,「本件補正」という。)がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-211312号公報
2.特開2015-121997号公報
3.特開2012-168782号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について

1 本件補正の概要
本件補正により,
補正前請求項1の「クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得手段」を,「クレジットカードの第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間における当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得手段」(下線は,補正箇所。請求人が付与した。以下同じ。)とし(以下,「補正事項A-1」という。),
補正前請求項1の「前記クレジットカードについて,第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記単位利用期間について定められている前記クレジットカードの利用限度額の一部を,前記金銭消費パターンに基づいて各前記サブ期間に割り当てることで,前記サブ期間ごとに前記クレジットカードの使用可能金額を算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成手段」を,「前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成手段」とする(以下,「補正事項A-2」という。),
ものである。
請求項10は請求項1とカテゴリーが異なるのみで,請求項10についてする同様の補正をそれぞれ「補正事項B-1」,「補正事項B-2」という。
また,請求項1及び10に対応する発明の詳細な説明【0008】及び【0009】の補正を,それぞれ,「補正事項C-1」,「補正事項C-2」,「補正事項D-1」及び「補正事項D-2」という。

(2)補正事項の検討
ア 補正事項A-1及び補正事項A-2について
補正事項A-1は,補正前の,クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンについて,本件補正により,「クレジットカードの第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間」との期間を減縮するものである。補正事項A-2は,補正前の,サブ期間ごとのクレジットカードの使用可能金額の算出について,本件補正により,「前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて」との機能を減縮するものであり,さらに,補正事項A-1に合わせて,補正前の「前記クレジットカードについて,第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記単位利用期間について定められている前記クレジットカードの利用限度額の一部を,前記金銭消費パターンに基づいて各前記サブ期間に割り当てることで,前記サブ期間ごとに前記クレジットカードの使用可能金額」を,「前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額」と補正するものである。
そして,補正事項A-1及び補正事項A-2により,補正前後の請求項1の「産業上の利用分野」及び「解決しようとする課題」は同一であるから,補正事項A-1及び補正事項A-2は限定的減縮を目的とするものである。
また,補正事項A-1及び補正事項A-2は,新規事項を追加するものでもなく,発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもないことは明らかである。

イ 補正事項B-1,補正事項B-2,補正事項C-1,補正事項C-2,補正事項D-1及び補正事項D-2について
補正事項B-1,補正事項B-2は,補正事項A-1及びA-2と同様の補正であることから,上記アで検討したとおり,限定的減縮を目的とするものであり,新規事項を追加するものでもなく,発明の特別な技術的特徴を変更する補正でもないことは明らかである。
発明の詳細な説明の補正である補正事項C-1,補正事項C-2,補正事項D-1及び補正事項D-2は,新規事項の追加に該当しないことは明らかである。

ウ そして,「第4 本願発明」から「第6 当審の判断」までに示すように,補正後の請求項1?11に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
クレジットカードの第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間における当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得手段と,
前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成手段と,
を有する情報処理装置。」

なお,本願発明2?11の概要は,以下のとおりである。
本願発明2?9は,本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10は,本願発明1に対応する方法発明であり,本願発明1とカテゴリー表現が異なるだけの発明である。
本願発明11は,方法発明である本願発明10を引用するプログラムの発明である。
このため,事案にかんがみ,本願発明10について検討をする。
なお,本願発明10は,次のとおりの発明である。

「【請求項10】
コンピュータによって実行される制御方法であって,
クレジットカードの第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間における当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得ステップと,
前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割し,前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成ステップと,
を有する制御方法。」


第5 引用文献に記載されている事項

1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載されている事項
引用文献1には,次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上述した特許文献1に記載された従来の技術においては,自らが設定した利用限度額を上回って利用したい場合であっても,利用することができず,この場合,高額商品の購入時や急な支払いが生じる度にいちいち現金を用意しなくてはならず,カードを所有しているにもかかわらず,カード決済の利便性を十分に発揮させることができないという問題があった。」

「【0069】
(サーバ110の機能的構成)
まず,カード決済システム100の機能的構成のうち,サーバ110の機能的構成について説明する。図4は,この発明にかかるカード決済システム100におけるサーバ110の機能的構成を示す説明図である。図4において,サーバ110は,報知方法情報入力部401と,記憶部402と,認証要求情報受信部403と,判断部404と,認証許可情報送信部405と,を備えている。報知方法情報入力部401,記憶部402,認証要求情報受信部403,判断部404および認証許可情報送信部405は,サーバ110を実現するコンピュータ装置200が備える各部201?208によって実現することができる。」

「【0085】
また,記憶部402は,報知方法情報入力部401によって入力された金額情報および報知方法情報を,カードによる利用履歴に関する利用履歴情報に対応させて記憶する利用状況管理データベース112を備えている。利用状況管理データベース112において,金額情報は,一つのカードに対して複数の所定の金額または所定の金額の範囲に関する情報からなっていてもよい。この場合,利用状況管理データベース112においては,一つのカードに対して,複数種類の金額情報を対応付けて記憶することができる。
【0086】(省略)
【0087】
利用履歴情報は,カードの所有者の識別情報と,当該識別情報によって特定されるカードの所有者が前回の締め日の翌日から次回の締め日までの間におこなったカード決済の累積の利用金額を特定可能な情報とすることができる。また,利用履歴情報は,累積の利用金額に加えてあるいは代えて,カードの所有者が前回の締め日の翌日から次回の締め日までの間におこなった個々のカード決済の内容を示す情報であってもよい。
【0088】
利用履歴情報は,カードの所有者がカードを利用するごとに店舗端末装置120から送信される。利用履歴情報は,カードによる利用履歴を特定可能な情報であって,たとえばカードの所有者の識別情報や,カードの利用日時,カード決済時の利用金額情報とすることができる。」

「【0097】
また,判断部404は,認証要求情報受信部403によって認証要求に関する情報を受信した場合に,記憶部402に記憶された利用履歴情報にかかる累積の利用金額と今回の利用金額との総和が,記憶部402に記憶された金額情報にかかる所定の金額に達しているか否かを判断する。判断部404は,所定の金額を特定する金額情報が記憶されている場合に,当該金額情報にかかる所定の金額に達しているかを判断する。
【0098】
あるいは,記憶部402において所定の金額の範囲を特定する金額情報が記憶されている場合には,判断部404は,認証要求情報受信部403によって認証要求に関する情報を受信した場合に,記憶部402に記憶された利用履歴情報にかかる累積の利用金額と今回の利用金額との総和が,所定の金額の範囲になっているか否かを判断する。」

「【0180】
上述した実施の形態においては,利用金額を累積する所定の期間を,たとえば1ヶ月などの単位で区切り,区切られた期間全体における累積の利用金額の所定の金額あるいは所定の金額の範囲に対する状況を判断するようにしたが,これに限るものではない。たとえば,所定の期間を分割し,分割した期間ごとに利用金額を累積し,累積の利用金額の所定の金額あるいは所定の金額の範囲に対する状況を判断するようにしてもよい。
【0181】
具体的には,たとえば毎月15日を締め日とし,当月16日?翌月15日を所定の期間として設定している場合,当月の16日?30日までは「0円?20000円」を所定の金額の範囲とし,翌月の1日?15日までは「0円?30000円」を所定の金額の範囲として設定してもよい。
【0182】
このような設定をおこなうことにより,所定の期間の長さおよび所定の金額の範囲を「1ヶ月で50000円」のように設定した場合よりも,カードの利用状況をより細やかに案内することができる。これによって,たとえば給与支払い日が毎月15日とされているカードの所有者によるカードの利用状況をより細やかに案内し,カードの使いすぎによって給与の支払日に引き落とすことができないという事態の発生を防止することができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

記憶部402と,認証要求情報受信部403と,判断部404と,認証許可情報送信部405と,を備えるサーバ110において(【0069】),
記憶部402は,金額情報および報知方法情報を,カードによる利用履歴に関する利用履歴情報に対応させて記憶し(【0085】),利用履歴情報は,カードの所有者が前回の締め日の翌日から次回の締め日までの間におこなったカード決済の累積の利用金額を特定可能な情報であり,さらに,カードによる利用履歴を特定可能な情報であって,カードの所有者の識別情報や,カードの利用日時,カード決済時の利用金額情報であり(【0087】【0088】),
判断部404は,記憶部402に記憶された利用履歴情報にかかる累積の利用金額と今回の利用金額との総和が,記憶部402に記憶された金額情報にかかる所定の金額に達しているか否かを判断する(【0097】【0098】),
方法。

2 引用文献2について
引用文献2には,次の事項が記載されている。

「【0065】
一体型カードをクレジットカードとして支払う場合,又は提携銀行カードが有ってもクレジットカードで支払う場合は,ステップS38に移り,クレジットカードでの支払いであることを決定し,ステップS39において,銀行口座の情報を取得するかをさらにチェックする。銀行口座の情報を取得する場合は,ステップS35に移るが,そうでない場合は,ステップS36に移る。この場合は,銀行口座の情報を取得していないので,クレジットカードとしての利用状況を確認するのみとなる。
【0066】
一体型カードをデビットカードとして支払う場合は,又は提携銀行カードをデビットカードとして支払う場合は,ステップS35に移り,提携銀行の口座,すなわち,引落先の銀行口座の最新の予想残高,利用傾向を含んだ取引明細データを取得する。そして,ステップS36において,クレジットカードの利用明細データを取得する。さらにステップS37において,クレジットカードの利用傾向(利用パターン)を取得する。
【0067】
そして,ステップS40において,上記で取得した各種データに基づいて,銀行口座の予想残高に反映されていないクレジットカードの引落があれば,クレジットカードの最新利用明細を参照し,銀行口座の所定期間の予想残高を補正する。もちろん,今回の支払がクレジットカードの場合は,その支払金額を銀行口座の引落日における予想残高に反映する。今回の支払がデビットカードの場合は,銀行口座の本日の予想残高をそのまま更新する。」

3 引用文献3について
引用文献3には,次の事項が記載されている。

「【0051】
また,カード使用料金共通管理装置3100は,利用者によるカード決済の金額が所定の金額を超えたか否かを判断する利用停止可否判断部3101と,利用停止可否判断部3101が利用者によるカード決済の金額が所定の金額を超えたと判断した場合にカード会社管理端末3200に対して当該カードの利用停止処理を依頼するカード利用停止依頼部3103とを備える。
【0052】
利用停止可否判断部3101は,利用者の一回のカード決済金額が所定額を超えた場合に利用停止すると判断してもよく,利用者の所定月の請求予定金額が所定額を超えた場合に利用停止すると判断してもよい。また,この場合の所定額とは,利用者が当初に設定した合計予算金額としてもよく,各カードに配分された利用可能金額としてもよく,その後の使用状況に応じて随時更新される合計利用可能金額としてもよく,合計利用可能金額が配分率に基づいて各カードに配分された利用可能金額としてもよい。
【0053】
利用者は,自らの支払い能力を自己判断し,一回に請求される請求金額(例えば,一月分の請求)の上限となる金額を,合計予算金額として設定できる。この設定により,複数のカードを保持する場合でも,複数のクレジットカードの合計利用金額が合計予算金額を超えてしまうような予期せぬ使い過ぎを回避し,低減するように自己管理することが可能となる。」


第6 当審の判断

1 本願発明10について
(1)対比
ア 引用発明の「サーバ110」は,後述する相違点は別にして,本願発明10の「コンピュータ」に相当する。

イ 引用発明の「カード」は,本願発明10の「クレジットカード」に相当する。

ウ 引用発明の「前回の締め日の翌日から次回の締め日までの間」は,本願発明10の「第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間」に相当する。

エ 引用発明の,「カードの利用日時,カード決済時の利用金額情報」である「利用履歴情報」は,カードの利用日時及びカード決済時の利用金額情報に基づき,利用者のカードの利用傾向を把握できることは明らかであるから,本願発明10の「当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターン」に相当する。そして,引用発明の,サーバ110は,このような利用履歴情報を記憶部402に記憶するために,決済のたびに「カードの利用日時,カード決済時の利用金額情報」を取得することは明らかである点で,引用発明における,利用履歴情報を取得することは,本件発明10の「当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得ステップ」に相当する。

オ 引用発明のサーバ110は,上記エの利用履歴情報を取得する処理を実行することから,この処理を実行することは,後述する相違点は別にして,本件発明10の「コンピュータによって実行される制御方法」に相当する。

カ 以上より,本願発明10と引用発明とは,次の点で,一致及び相違する。

<一致点>
コンピュータによって実行される制御方法であって,
クレジットカードの第1の支払日とその次の第2の支払日までの期間である単位利用期間における当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンを取得する消費パターン取得ステップ,
を有する制御方法。

<相違点>
(相違点1)
本願発明10は,「前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割」するのに対し,引用発明は,「前記単位利用期間を複数のサブ期間に分割」しない点。

(相違点2)
本願発明10は,「前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成ステップ」を有するのに対し,引用発明は,利用履歴情報を,「記憶部402に記憶された利用履歴情報にかかる累積の利用金額と今回の利用金額との総和が,記憶部402に記憶された金額情報にかかる所定の金額に達しているか否かを判断する」として,所定の金額に達しているか否かの判断に用いるものの,利用履歴情報を,「前記クレジットカードの使用可能金額」を算出することに用いていなく,かつ,「クレジットカードの使用可能金額」が「サブ期間ごと」に算出したものでもない点。

(2)相違点の判断
ア 相違点1について
引用文献1【0180】には,「所定の期間を分割し,分割した期間ごとに利用金額を累積し,累積の利用金額の所定の金額あるいは所定の金額の範囲に対する状況を判断するようにしてもよい。」として,所定の期間を分割することに関する変形例が記載されていることから,引用発明において,「カードの所有者が前回の締め日の翌日から次回の締め日までの間」を分割することで,相違点1の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項である。

イ 相違点2について
引用文献1【0180】には,「所定の期間を分割し,分割した期間ごとに利用金額を累積し,累積の利用金額の所定の金額あるいは所定の金額の範囲に対する状況を判断するようにしてもよい。」として,所定の期間を分割して,分割した期間ごとに利用金額を累積することに関する変形例が記載されているものの,利用履歴情報に基づき,分割した期間ごとのクレジットカードの使用可能金額を算出することを説明するものではない。
また,引用文献2には,クレジットカードの利用傾向(利用パターン)を取得し,銀行口座の所定期間の予想残高を補正することは記載されているものの,クレジットカードの利用傾向(利用パターン)に基づき,クレジットカードの使用可能金額を算出することは記載されていない。
さらに,引用文献3には,自らの支払い能力を自己判断し,一回に請求される請求金額(例えば,一月分の請求)の上限となる金額を,合計予算金額として設定することができるとして,カードの利用者自身が,一回に請求される請求金額(例えば,一月分の請求)の上限となる金額を,合計予算金額として設定することは記載されているものの,当該クレジットカードのユーザの金銭消費に関する傾向を表す金銭消費パターンに基づき,クレジットカードの使用可能金額を算出するものではない。
このように,引用文献1?3には,いずれも,「前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成するサブ期間情報生成ステップ」は,記載も示唆もされていない。
よって,引用発明及び引用文献1?3に記載された事項に基づき,上記相違点2の構成とすることは,当業者であっても容易になし得たとはいえない。

ウ 効果について
本願発明10は,上記相違点の構成を採用することで,「計画的にクレジットカードを使用できないユーザは,最初の内にクレジットカードを使いすぎてしまい,支払日前にクレジットカードを使用できなくなってしまうことがある。」との課題を解決し,「クレジットカードの計画的な利用を容易にする技術が提供される。」との効果を奏するものである。

(3)小括
したがって,本願発明10は,当業者であっても,引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明1について
本願発明1は,本願発明10に対応する情報処理装置の発明であり,本願発明10の「前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成する」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明10と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2?9について
本願発明1を引用する本願発明2?9も,本願発明1の「前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成する」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明11について
本願発明11は,制御方法の発明である本願発明10を引用した「プログラム」の発明であり,本願発明10の「前記サブ期間ごとの前記クレジットカードの使用可能金額を,前記クレジットカードに関して設定された前記単位利用期間での分配可能額と,前記取得した金銭消費パターンによって示される前記単位利用期間における金銭消費に関する傾向とに基づいて算出し,前記サブ期間ごとに前記算出した使用可能金額を示すサブ期間情報を生成する」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明10と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 むすび

以上のとおり,本願発明1?11は,引用発明及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-17 
出願番号 特願2016-63298(P2016-63298)
審決分類 P 1 8・ 121- WYF (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 上田 智志
松田 直也
発明の名称 情報処理装置、制御方法、及びプログラム  
代理人 速水 進治  

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