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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1375699
審判番号 不服2020-9980  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-16 
確定日 2021-07-20 
事件の表示 特願2018-31808号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月5日出願公開、特開2019-146666号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月26日の出願であって、令和1年11月26日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年1月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年4月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月11日付け(送達日:同年5月26日)で、令和2年4月7日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年7月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和3年2月9日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(新規事項)令和2年1月22日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.(同日出願)本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同一出願人が同日出願した下記の出願に係る発明と同一と認められるから、この通知書と同日に発送した特許庁長官名による指令書に記載した届出がないときは、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1(新規事項)について
・請求項 1
補正前の同一のタイミングでの表示を、共通のタイミングでの表示とすることは、一定間隔での表示といった内容や、同一でなくともタイミングがややずれていれば共通であるといった内容をも含む虞があるものであって、新規事項の追加に該当する。

<引用文献等一覧>
1.特願2018-31807号(特開2019-146665号)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-264303号公報
2.特開2017-51644号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2017-192813号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2018-27498号公報(周知技術を示す文献)

第4 本願発明
本願発明は、令和3年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「A 表示手段の所定領域において第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報との可変表示を実行可能であり、可変表示の結果として該第1識別情報と該第2識別情報と該第3識別情報とが特定の組み合わせで表示されたときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記表示手段の前記所定領域と異なる複数の特定領域のうち少なくとも何れか1つにおいて特別表示を表示することによって前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段を備え、
C 前記複数の特定領域は、特別領域を含み、
D 前記示唆演出において、前記複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において同一のタイミングで前記特別表示を表示可能であり、
E 前記示唆演出実行手段は、前記示唆演出として、前記特別領域に前記特別表示を表示する第1示唆演出と、前記特別領域に前記特別表示を表示しない第2示唆演出と、を実行可能であり、
F 前記第1示唆演出が実行される場合に、前記特別領域に前記特別表示が最後に表示される、
G ことを特徴とする遊技機。」(なお、記号A?Gは、分説するために当審判合議体が付した。)

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
ア 記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機(遊技機)1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤(ゲージ盤)2と、遊技盤2を支持固定する遊技機用枠(台枠)3とから構成されている。遊技盤2には、ガイドレールによって囲まれた、ほぼ円形状の遊技領域が形成されている。この遊技領域には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。
【0025】
遊技盤2の所定位置(図1に示す例では、遊技領域の右側方)には、第1特別図柄表示装置4Aと、第2特別図柄表示装置4Bとが設けられている。第1特別図柄表示装置4Aと第2特別図柄表示装置4Bはそれぞれ、例えば7セグメントやドットマトリクスのLED(発光ダイオード)等から構成され、可変表示ゲームの一例となる特図ゲームにおいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報(特別識別情報)である特別図柄(「特図」ともいう)を、変動可能に表示(可変表示)する。例えば、第1特別図柄表示装置4Aと第2特別図柄表示装置4Bはそれぞれ、「0」?「9」を示す数字や「-」を示す記号等から構成される複数種類の特別図柄を可変表示する。なお、第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bにて表示される特別図柄は、「0」?「9」を示す数字や「-」を示す記号等から構成されるものに限定されず、例えば7セグメントのLEDにおいて点灯させるものと消灯させるものとの組合せを異ならせた複数種類の点灯パターンが、複数種類の特別図柄として予め設定されていればよい。複数種類の特別図柄には、それぞれに対応した図柄番号が付されている。一例として、「0」?「9」を示す数字それぞれには、「0」?「9」の図柄番号が付され、「-」を示す記号には、「10」の図柄番号が付されていればよい。以下では、第1特別図柄表示装置4Aにより可変表示される特別図柄を「第1特図」ともいい、第2特別図柄表示装置4Bにより可変表示される特別図柄を「第2特図」ともいう。」

(イ)「【0027】
一例として、画像表示装置5の表示領域には、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rが配置されている。そして、特図ゲームにおいて第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の変動と第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の変動のいずれかが開始されることに対応して、「左」、「中」、「右」の各飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄の変動(例えば上下方向のスクロール表示)が開始される。その後、特図ゲームにおける可変表示結果として確定特別図柄が停止表示されるときに、画像表示装置5における「左」、「中」、「右」の各飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて、飾り図柄の可変表示結果となる確定飾り図柄(最終停止図柄)が停止表示される。なお、「左」、「中」、「右」の各飾り図柄表示部は、画像表示装置5の表示領域内で移動可能とされ、飾り図柄を縮小あるいは拡大して表示することができるようにしてもよい。」

(ウ)「【0030】
また、画像表示装置5の表示領域には、「左」及び「右」の色図柄表示部5A、5Bが配置されている。そして、特図ゲームとして第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の変動が開始されるときには、「左」の色図柄表示部5Aにて色図柄の変動(例えば表示色の更新)が開始される。他方、特図ゲームとして第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の変動が開始されるときには、「右」の色図柄表示部5Bにて色図柄の変動が開始される。その後、特図ゲームにおける可変表示結果として確定特別図柄が停止表示されるときに、色図柄の変動が終了して、色図柄の可変表示結果となる確定色図柄が停止表示される。
【0031】
「左」及び「右」の色図柄表示部5A、5Bにて可変表示される色図柄には、例えば4種類の図柄(具体的な一例として、「黄色」、「緑色」、「赤色」、「青色」など)が含まれていればよい。色図柄のそれぞれには、対応する図柄番号が付されている。例えば、「黄色」、「緑色」、「赤色」、「青色」の色図柄それぞれに対して、「1」?「4」の図柄番号が付されている。」

(エ)「【0043】
第1特別図柄表示装置4Aや第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームでは、特別図柄の可変表示を開始させた後、所定時間が経過すると、特別図柄の可変表示結果となる確定特別図柄を停止表示(導出表示)する。このとき、確定特別図柄として特定の特別図柄(大当り図柄)が停止表示されれば、特定表示結果としての「大当り」となり、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示されれば、所定表示結果としての「小当り」となり、大当り図柄や小当り図柄以外の特別図柄が停止表示されれば「ハズレ」となる。特図ゲームでの可変表示結果が「大当り」になった後には、特定遊技状態としての大当り遊技状態に制御される。また、特図ゲームでの可変表示結果が「小当り」になった後には、大当り遊技状態とは異なる小当り遊技状態に制御される。この実施の形態におけるパチンコ遊技機1では、一例として、「1」、「3」、「7」を示す数字を大当り図柄とし、「5」を示す数字を小当り図柄とし、「-」を示す記号をハズレ図柄としている。なお、第1特別図柄表示装置4Aによる特図ゲームにおける大当り図柄や小当り図柄、ハズレ図柄といった各図柄は、第2特別図柄表示装置4Bによる特図ゲームにおける各図柄とは異なる特別図柄となるようにしてもよいし、双方の特図ゲームにおいて共通の特別図柄が大当り図柄や小当り図柄、ハズレ図柄となるようにしてもよい。」

(オ)「【0052】
また、飾り図柄の可変表示中には、リーチ演出とは異なり、飾り図柄の可変表示状態がリーチ状態となる可能性があることや、可変表示結果が「大当り」となる可能性があることを、飾り図柄の可変表示態様などにより遊技者に報知するための特定演出が実行されることがある。この実施の形態では、「滑り」、「擬似連」、「メイン予告」、「発展チャンス目」、「発展チャンス目終了」といった特定演出が実行可能に設定されている。なお、この実施の形態における特定演出は、対応する演出動作が実行されるか否か応じて特図変動時間が変化するものであればよい。例えば、ある特定演出が実行される場合には、その特定演出が実行されない場合に比べて、特図変動時間が長くなるものであればよい。
【0053】
「滑り」の特定演出では、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにおける全部にて飾り図柄を変動させてから、2つ以上の飾り図柄表示部(例えば「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rなど)にて飾り図柄を仮停止表示させた後、その仮停止表示した飾り図柄表示部のうち所定数(例えば「1」または「2」)の飾り図柄表示部(例えば「左」の飾り図柄表示部5Lと「右」の飾り図柄表示部5Rのいずれか一方または双方)にて飾り図柄を再び変動させた後に停止表示させることで、停止表示する飾り図柄を変更させる演出表示が行われる。なお、仮停止表示では、飾り図柄が停留して表示される一方で、例えば揺れ変動表示を行うことや短時間の停留だけで直ちに飾り図柄を再変動させることなどによって、遊技者に停止表示された飾り図柄が確定しない旨を報知すればよい。あるいは、仮停止表示でも、停止表示された飾り図柄が確定したと遊技者が認識する程度に飾り図柄を停留させてから、飾り図柄を再変動させるようにしてもよい。
【0054】
「擬似連」の特定演出では、特図ゲームの第1開始条件と第2開始条件のいずれか一方が1回成立したことに基づき、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにおける全部にて飾り図柄を変動させてから、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動(擬似連変動)させる演出表示を、所定回(例えば最大4回まで)行うことができる。一例として、「擬似連」の特定演出では、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて、図3(A)に示す擬似連チャンス目GC1?GC8のいずれかを構成する飾り図柄が仮停止表示される。ここで、「左図柄」は「左」の飾り図柄表示部5Lに表示(停止表示または仮停止表示)される飾り図柄であり、「中図柄」は「中」の飾り図柄表示部5Cに表示される飾り図柄であり、「右図柄」は「右」の飾り図柄表示部5Rに表示される飾り図柄である。なお、擬似連チャンス目GC1?GC8は、特殊組合せに含まれる飾り図柄の組合せとして、予め定められていればよい。」

(カ)「【0074】
画像表示装置5の表示領域では、第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた特図ゲームにおける特別図柄の可変表示に対応して「左」の色図柄表示部5Aにおける色図柄の可変表示が行われ、第2特別図柄表示装置4Bによる第1特図を用いた特図ゲームにおける特別図柄の可変表示に対応して「右」の色図柄表示部5Bにおける図柄の可変表示が行われる。そして、第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた特図ゲームにて確定特別図柄が停止表示されるときには、「左」の色図柄表示部5Aにて確定色図柄が停止表示される。一例として、第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として2ラウンド大当り図柄となる「1」の数字を示す特別図柄が停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「黄色」を示す色図柄が停止表示される。また、第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として15ラウンド大当り図柄となる「3」、「7」の数字を示す特別図柄のいずれかが停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「赤色」を示す色図柄が停止表示される。さらに、第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄としてハズレ図柄となる「-」の記号を示す特別図柄が停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「青色」を示す色図柄が停止表示される。その一方で、第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として小当り図柄となる「5」の数字を示す特別図柄が停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「緑色」を示す色図柄が停止表示される。第2特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として15ラウンド大当り図柄となる「3」、「7」の数字を示す特別図柄のいずれかが停止表示される場合には、「右」の色図柄表示部5Bでは確定色図柄として「赤色」を示す色図柄が停止表示される。第2特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄としてハズレ図柄となる「-」の記号を示す特別図柄が停止表示される場合には、「右」の色図柄表示部5Bでは確定色図柄として「青色」を示す色図柄が停止表示される。」

(キ)「【0078】
演出制御基板12は、主基板11とは独立したサブ側の制御基板であり、中継基板15を介して主基板11から伝送された制御信号を受信して、画像表示装置5、スピーカ8L、8R及び遊技効果ランプ9といった演出用の電気部品による演出動作を制御するための各種回路が搭載されている。すなわち、演出制御基板12は、画像表示装置5における表示動作や、スピーカ8L、8Rからの音声出力動作の全部または一部、遊技効果ランプ9などにおける点灯/消灯動作の全部または一部といった、演出用の電気部品に所定の演出動作を実行させるための制御内容を決定する機能を備えている。」

(ク)「【0455】
次に、画像表示装置5の表示領域にて飾り図柄の可変表示が実行される際における演出動作の具体例について説明する。演出制御基板12では、主基板11から伝送された第1変動開始コマンドや第2変動開始コマンドを受信したことに対応して、変動パターン指定コマンドにて指定された変動パターンなどに基づき、例えば演出制御用CPU120が図73に示すステップS519にて所定の表示制御指令を表示制御部123に供給することなどにより、画像表示装置5の表示領域に設けられた「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて、飾り図柄の変動を開始させる。
【0456】
以下ではまず、可変表示結果が「ハズレ」となる場合のうち、飾り図柄の可変表示態様が「非リーチ」である場合における具体例について説明する。図86は、飾り図柄の可変表示態様が「非リーチ」である場合のうち、特定演出が実行されない場合や、「擬似連」の特定演出が実行される場合、「滑り」の特定演出が実行される場合、「発展チャンス目終了」の特定演出が実行される場合の表示動作例を示している。例えば、変動パターン指定コマンドにより非リーチPA1-1の変動パターンが指定されたときには、図86(C1)及び(C2)に示すような特定演出が実行されない場合となり、非リーチPA1-4の変動パターンが指定されたときには図86(E1)?(E4)に示すような「滑り」の特定演出が実行される場合となり、非リーチPA1-5の変動パターンが指定されたときには図86(D1)?(D6)に示すような「擬似連」の特定演出が実行される場合となり、非リーチPA1-7の変動パターンが指定されたときには図86(F1)?(F6)に示すような「発展チャンス目終了」の特定演出が実行される場合となる。図86(A)では、例えば特図ゲームにおける特別図柄の変動開始などに対応して、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rの全部にて飾り図柄の変動が開始される。その後、例えば図86(B)に示すように、「左」の飾り図柄表示部5Lにて「6」の数字を示す飾り図柄が停止表示(仮停止表示)される。

イ 認定事項
(ア)
【図1】この実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図である。


上記【図1】には、「色図柄表示部5A、5Bが、画像表示装置5の表示領域の右下に配置され、「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rが、画像表示装置5の表示領域の中央に配置されたこと。」が図示されているものと認められる。

(イ)
【図86】飾り図柄の可変表示中における表示動作例を示す図


【図86】の(A)→(B)→(D1)→(D2)→(D3)には、「全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動させる」ことが図示され、(A)→(B)→(E1)→(E2)→(E3)には、「「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させた後、その仮停止表示した飾り図柄表示部のうち5Rにて飾り図柄を再び変動させた後に停止表示させることで、停止表示する飾り図柄を変更させる」ことが図示されている。
したがって、【図86】には、
「全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動させ、また、「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させた後、その仮停止表示した飾り図柄表示部のうち5Rにて飾り図柄を再び変動させた後に停止表示させることで、停止表示する飾り図柄を変更させること。」が図示されているものと認められる。

ウ 引用発明
上記「ア 記載事項」、及び、上記「イ 認定事項」によると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a
遊技盤2の所定位置に、第1特別図柄表示装置4Aと、第2特別図柄表示装置4Bとを設け(【0025】)、
特図ゲームにおいて、第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の変動と第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の変動を実行可能であり(【0027】)、
画像表示装置5の表示領域の右下には、第1特図を用いた特図ゲームにおける特別図柄の可変表示に対応して色図柄の可変表示が行われる「左」の色図柄表示部5A、及び、第2特図を用いた特図ゲームにおける特別図柄の可変表示に対応して色図柄の可変表示が行われる「右」の色図柄表示部5Bが配置され、
色図柄表示部5A、5Bにて色図柄の可変表示を開始し、色図柄の可変表示結果となる確定色図柄を停止表示可能であり(【0030】、【0031】、【0074】、認定事項(ア))、
第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として15ラウンド大当り図柄が停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「赤色」を示す色図柄が停止表示され、第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄としてハズレ図柄が停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「青色」を示す色図柄が停止表示され(【0074】)、
特図ゲームでの可変表示結果が大当りになった後には、大当り遊技状態に制御されるパチンコ遊技機(【0024】、【0043】)であって、
b、c
特図ゲームにおいて第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の変動と第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の変動のいずれかが開始されることに対応して、画像表示装置5の表示領域の中央に配置された「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄の上下方向の可変表示を開始し、飾り図柄の可変表示中に「擬似連」、「滑り」といった飾り図柄の可変表示態様によって、可変表示結果が「大当り」となる可能性があることを遊技者に報知する特定演出を実行する(【0027】、【0052】、認定事項(ア))演出制御基板12(【0078】)を備え、
d、e、f
演出制御基板12は、「擬似連」の特定演出、「滑り」の特定演出を、変動パターン指定コマンドにより指定された変動パターンに基づいて実行し、
「擬似連」の特定演出では、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動(擬似連変動)させる演出表示を、所定回(例えば最大4回まで)行い、
「滑り」の特定演出では、「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させた後、その仮停止表示した飾り図柄表示部のうち5Rにて飾り図柄を再び変動させた後に停止表示させることで、停止表示する飾り図柄を変更させる演出表示を行う((【0053】?【0054】、【0455】?【0456】、認定事項(イ))、
g
パチンコ遊技機(【0024】)。」(なお、記号a?gは、本願発明のA?Gに対応させて当審判合議体が付した。)

第6 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)
引用発明の「画像表示装置5の表示領域の右下に」「配置され」た「「左」の色図柄表示部5A」、及び、「「右」の「色図柄表示部5B」」は、本願発明の「表示手段の所定領域」に相当する。
そして、引用発明の「色図柄の可変表示」と、本願発明の「第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報との可変表示」とは、「識別情報の可変表示」である点で共通する。
また、引用発明の「第1特図を用いた特図ゲームにおける確定特別図柄として15ラウンド大当り図柄となる「3」、「7」の数字を示す特別図柄のいずれかが停止表示される場合には、「左」の色図柄表示部5Aでは確定色図柄として「赤色」を示す色図柄が停止表示され」ることと、本願発明の「可変表示の結果として該第1識別情報と該第2識別情報と該第3識別情報とが特定の組み合わせで表示され」ることとは、「可変表示の結果として特定の識別情報が表示され」ることで共通する。
さらに、引用発明の「大当り遊技状態に制御される」ことは、本願発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」なことに相当する。
したがって、引用発明の構成aと、本願発明の構成Aとは、「表示手段の所定領域において識別情報の可変表示を実行可能であり、可変表示の結果として特定の識別情報が表示されたときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」である点で共通する。

(b)
引用発明の「画像表示装置5の「左」、「中」、「右」の各飾り図柄表示部5L、5C、5R」は、本願発明の「表示手段の所定領域と異なる複数の特定領域」に相当する。
そして、引用発明の「特定演出」は、構成d、e、fによると、「擬似連」の「特定演出」においては、「全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示」させ、「滑り」の「特定演出」においては、「「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させる」ものである。
そうすると、引用発明における「擬似連」若しくは「滑り」の「特定演出」において、「飾り図柄表示部5L、5C、5R」の何れかにおいて、「飾り図柄」を「仮停止表示させる」ことは、本願発明の「複数の特定領域のうち少なくとも何れか1つにおいて特別表示を表示すること」に相当する。
したがって、引用発明の「飾り図柄の可変表示中に「滑り」、「擬似連」といった飾り図柄の可変表示態様によって、可変表示結果が「大当り」となる可能性があることを遊技者に報知する特定演出」は、本願発明の「特別表示を表示することによって有利状態に制御されることを示唆する示唆演出」に相当するから、引用発明の「特定演出を実行するサブ制御基板12」は、本願発明の「示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段」に相当する。
よって、引用発明の構成b、cは、本願発明の構成Bを備える。

(c)
引用発明の「画像表示装置5の「左」、「中」、「右」の各飾り図柄表示部5L、5C、5R」のうちの「図柄表示部5C」は、本願発明の「特定領域」に含まれる「特別領域」に相当する。
したがって、引用発明の構成b、cは、本願発明の構成Cを備える。

(d)
上記(b)より、引用発明における「擬似連」の「特定演出」、および、「滑り」の「特定演出」において、「飾り図柄」の「仮停止表示」は、本願発明の「示唆演出」における「特別表示」に相当する。
そして、引用発明の「「擬似連」の特定演出」についての「全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させ」ること、および、「「滑り」の特定演出」についての「「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させ」ることは、いずれも、5L、5C、5Rの複数の表示領域に、所定の順番で1つずつ「飾り図柄」を「仮停止表示」させることであるから、本願発明における構成Dの「示唆演出において、複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において同一のタイミングで特別表示を表示可能であ」ることとは、「示唆演出において、複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において、それぞれ所定のタイミングで特別表示を表示可能であ」ることで共通する。

(e)
引用発明において、「「擬似連」の特定演出」は、「飾り図柄表示部」「5C」に「飾り図柄を」「仮停止表示させ」るものであり、「「滑り」の特定演出」は、「飾り図柄表示部」「5C」に「飾り図柄を」「仮停止表示させ」ないものである。
そして、上記(c)より、引用発明の「図柄表示部5C」は、本願発明の「特別領域」に相当する。
そうすると、引用発明の「全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させた後、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を再び変動(擬似連変動)させる演出表示を、所定回(例えば最大4回まで)行う」「「擬似連」の特定演出」は、本願発明の「特別領域に特別表示を表示する第1示唆演出」に相当し、引用発明の「「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させた後、その仮停止表示した飾り図柄表示部のうち5Rにて飾り図柄を再び変動させた後に停止表示させることで、停止表示する飾り図柄を変更させる演出表示を行う」「「滑り」の特定演出」は、5Cに飾り図柄を仮停止表示させないことから、本願発明の「特別領域に特別表示を表示しない第2示唆演出」に相当する。
したがって、引用発明の構成d、e、fは、本願発明の構成Eを備える。

(f)
引用発明の「「擬似連」の特定演出では、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させ」ることは、「飾り図柄」「5C」が、最後に「仮停止表示さ」れることであり、一方、本願発明の「示唆演出」も、構成Bより、「示唆演出実行手段」により「実行可能」な演出であって、必ず実行される演出でないこと、および、上記(d)、(e)より、本願発明の「第1示唆演出が実行される場合は、特別領域に特別表示が最後に表示される」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成d、e、fは、本願発明の構成Fを備える。

(一致点)
「A′ 表示手段の所定領域において図柄の可変表示を実行可能であり、可変表示の結果として特定の図柄が表示されたときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記表示手段の前記所定領域と異なる複数の第1領域のうち少なくとも何れか1つにおいて特別表示を表示することによって前記有利状態に制御されることを示唆する示唆演出を実行可能な示唆演出実行手段を備え、
C 前記複数の第1領域は、第2領域を含み、
D′ 前記示唆演出において、前記複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において所定のタイミングで前記特別表示を表示可能であり、
E 前記示唆演出実行手段は、前記示唆演出として、前記第2領域に前記特別表示を表示する第1示唆演出と、前記第2領域に前記特別表示を表示しない第2示唆演出と、を実行可能であり、
F 前記第1示唆演出が実行される場合は、前記第2領域に前記特別表示が最後に表示される、
G 遊技機。」

(相違点1)(構成A)
所定領域において実行可能な可変表示に関して、
本願発明は、識別情報として第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報を用い、可変表示の結果を第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報との組み合わせで表示するのに対して、
引用発明は、識別図柄として色図柄を用い、可変表示の結果を色図柄の色で表示する点。

(相違点2)(構成D)
示唆演出において、複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において特別表示を表示するタイミングに関して、本願発明は、同一のタイミングであるのに対して、引用発明は、「擬似連」の特定演出では、全部の飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて飾り図柄を5L→5R→5Cの順に仮停止表示させ、また、「滑り」の特定演出では、「左」及び「右」の飾り図柄表示部5L、5Rにて飾り図柄を5L→5Rの順に仮停止表示させる点。。

2 相違点についての判断
上記相違点について相違点2から検討する。
(1)相違点2について
遊技機の技術分野において、複数の飾り図柄を同時に仮停止表示させることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、引用文献2の【0124】、【図20】、引用文献3の【0632】、【図80(B)】、引用文献4の【1095】を参照。以下「周知の技術事項」という。)。
そして、引用発明と上記周知の技術事項とは、変動表示中に飾り図柄を仮停止表示する演出を行う点で共通する。
したがって、引用発明に上記周知の技術事項を適用して、複数の飾り図柄を仮停止表示させる場合、複数の飾り図柄を同一のタイミングで仮停止表示させることは、当業者が適宜なし得たものである。

(2)相違点1について
引用発明は、「飾り図柄の変動」を行う「画像表示装置5の表示領域の中央に配置された「左」、「中」、「右」の飾り図柄表示部5L、5C、5R」と同じ表示領域を用いて、「飾り図柄の可変表示中に「擬似連」、「滑り」といった飾り図柄の可変表示態様によって」「特定演出を実行する」ものである。
そうすると、引用発明は、「飾り図柄の可変表示中に「擬似連」、「滑り」といった飾り図柄の可変表示態様によって」実行される「特定演出」を、3つの「飾り図柄表示部5L、5C、5R」に加えてさらに、当該「画像表示装置5の表示領域の中央に配置された」3つの「飾り図柄表示部5L、5C、5R」とは別の右下の表示領域の色図柄表示部5A、5B(表示手段の所定領域)において、左中右の飾り図柄表示(第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報との可変表示)を行う事情はないというべきである。
また、引用発明において、「3つの飾り図柄表示部5L、5C、5Rにて」「開始される」、飾り図柄の可変表示とは別に「色図柄表示部5A、5B」にて2つの色図柄を用いて可変表示結果を示唆することが、演出のポイントであって、それを他のものに置き換えたら演出のポイントがなくなってしまうため、置換することはできない。
そして、本願発明は、相違点1に係る構成を備えることにより、令和3年4月9日に提出の意見書において主張する「遊技者に、第1識別情報と第2識別情報と第3識別情報との可変表示が実行される表示手段の所定領域とは異なる表示手段の複数の特定領域において実行される演出に注目させ、遊技興趣を向上させることができる」(3.(1)(1-2)を参照。)という効果を奏するものである。

(3)小括
上記(1)、(2)より、本願発明は、引用発明と同一ではなく、また、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年7月16日付けで提出された手続補正書により、請求項1に「前記示唆演出において、前記複数の特定領域のうち少なくとも2つ以上の特定領域において同一のタイミングで前記特別表示を表示可能であり」という技術的事項を付加する補正がなされた。
この補正は、本願明細書の段落【0307】における「なお、カード演出の各段階の演出において、複数枚のカード画像が溜まる場合がある。すなわち、カード演出において、同一のタイミングで複数枚のカード画像が溜まる場合がある。」という記載等を根拠とするものであるから、新規事項を追加するものではない。
また、同一出願人が同日出願した特願2018-31807号(特開2019-146665号)は、同じく、令和2年7月16日付けで提出された手続補正書により、請求項1に「前記示唆演出における前記特別表示は、複数種類の演出パターンのうち何れかに従って順番に1つずつ前記複数の特定領域に表示され」という技術的事項を付加する補正がなされた。
この補正により、「特別表示」が「複数の特定領域に」「表示」されるタイミングに関し、本願発明と同日発明とで異なる構成を有するものとなった。
したがって、本願発明は、同日発明と同一ではない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-29 
出願番号 特願2018-31808(P2018-31808)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 4- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 知柴田 和雄  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 蔵野 いづみ
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  
代理人 桜田 圭  
代理人 鈴木 洋雅  

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