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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61K
管理番号 1376106
審判番号 訂正2021-390025  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-01-29 
確定日 2021-05-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6691113号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6691113号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10?12、21、22〕について訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6691113号は、平成27年10月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年10月29日 米国、外1)を国際出願日として出願され、その請求項1?22に係る発明について令和2年4月13日に特許権の設定登録がされたものであり、その後、令和3年1月29日に本件訂正審判が請求されたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件審判の請求の趣旨は、特許第6691113号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10?12、21、22について訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その訂正の内容は、下記訂正事項1のとおりである。

[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項10に記載される「抗PD-1抗体」を「抗PD-L1抗体」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11、12、21及び22も同様に訂正する。)


第3 当審の判断

1.一群の請求項について
訂正前の請求項10?12、21及び22について、請求項11、12、21及び22は、それぞれ請求項10を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものであるから、当該請求項10?12、21及び22は特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。

2.訂正の目的について
(1) 訂正前の請求項10では、「抗CD40抗体」と組み合わせる「抗体」として「抗PD-1抗体」(下線は当審による。以下同様)が記載されている一方、当該請求項10を引用する請求項11においては、上記「抗体」に対応する物が「前記PD-L1抗体」とされている。
ここで、「抗PD-1抗体」と「抗PD-L1抗体」とは、各抗原であるPD-1とPD-L1とが互いに異なる分子であることから、両者はその性質上一致した(又は重複した)抗体ではなく、また、一方が他方の上位(又は下位)であるといった関係にあるのでもない、互いに相異なる「抗体」分子であることは明らかである。
そうすると、上記「抗CD40抗体」と組み合わせる「抗体」の記載は、請求項10-請求項11間で一致しておらず、この点において被引用請求項-引用請求項間で一貫して整合した記載がなされているとはいえない。

(2) 一方、(1)の「抗PD-1抗体」、「抗PD-L1抗体」に関し、特許明細書には次のような記載がある。
「 【0008】
さらなる態様では、本開示は、抗CD40抗体、および免疫チェックポイントを阻止する抗体の組合せを患者に投与することによってがんを処置する方法を提供する。免疫チェックポイントを阻止する抗体の一例は、抗細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)抗体である。抗CTLA4抗体の例としては、例えば、イピリムマブまたはトレメリムマブが挙げられる。免疫チェックポイントを阻止する抗体の別の例は、抗プログラム細胞死タンパク質1(PD1)抗体である。抗PD1抗体の例としては、例えば、ニボルマブ、ピジリズマブ、またはペンブロリズマブが挙げられる。免疫チェックポイントを阻止する抗体のさらなる例は、抗プログラム死リガンド(PD-L1)抗体である。抗PD-L1抗体の例としては、例えば、MEDI4736およびMPDL3280Aが挙げられる。 」
「 【発明を実施するための形態】
【0055】
(詳細な説明)
本開示は、非フコシル化抗CD40抗体、SEA-CD40の活性を記載するものである。SEA-CD40は、アゴニスト抗体であり、Fcγ受容体IIIへの増強された結合性を有し、驚くべきことに、CD40シグナル伝達経路の増強された活性化を呈する。 ・・・
【0090】
(SEA-CD40組合せ療法)
その免疫刺激機能のために、SEA-CD40は、免疫系を活性化する他の治療剤と組み合わせて使用することができる。免疫刺激機能を有する薬物としては、例えば、免疫チェックポイント阻害剤を含めたT細胞モジュレーター;免疫活性化因子;および免疫原性細胞死を誘導する化学療法剤が挙げられる。・・・SEA-CD40は、免疫チェックポイントタンパク質を標的とする抗体と組み合わせて使用することができる。
【0091】
(T細胞モジュレーター)
T細胞は、体からがんを認識および排除する免疫系の能力において役割を果たす。T細胞モジュレーターは、免疫チェックポイントの機能を阻止する抗体を含む。例えば、Pardoll、Nature Rev. Cancer、12巻:252?264頁(2012年)を参照。免疫チェックポイントを阻止する抗体としては、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、および抗CTLA4抗体が挙げられる。・・・
・・・
【0093】
抗PD1抗体は、タンパク質のプログラム死-1(PD-1)を認識する。・・・。PD-1抗体の例としては、MEDI0680、AMP-224、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびピジリズマブが挙げられる。・・・
【0094】
PD-L1は、PD-1タンパク質のリガンドである。PD-L1は、がん細胞上で発現し、PD-1とのその相互作用により、PD-L1発現がん細胞が免疫系を免れることが可能になる。抗PD-L1抗体は、がんを処置するのに生成および使用されている。PD-L1抗体の例としては、例えば、MEDI4736、BMS-936559/MDX-1105、MSB0010718C、およびMPDL3280Aが挙げられる。SEA-CD40は、がんを処置するのにMEDI4736、BMS-936559/MDX-1105、MSB0010718C、またはMPDL3280Aと組み合わせて投与することができる。 」

即ち、これらの特許明細書の記載から、「抗CD40抗体」と組み合わせ得る「抗体」としては、「抗PD-1抗体」、「抗PD-L1抗体」のいずれもこれに該当するものと把握することができる。

(3) これら(1)及び(2)の点を併せ踏まえると、請求項10の「抗PD-1抗体」及び請求項11の「抗PD-L1抗体」については、被引用請求項-引用請求項間で記載が整合していないものの、両者のいずれも「抗CD40抗体」と組み合わせ得る「抗体」分子として把握できることから、請求項10-請求項11間で「抗CD40抗体」と組み合わされる「抗体」は「抗PD-1抗体」、「抗PD-L1抗体」のどちらにも解釈され得、この点において、請求項10-請求項11間での「抗CD40抗体」と組み合わされる「抗体」の記載は多義的で曖昧なものとなっていた。

(4) 本件訂正事項1の訂正は、かかる訂正前の請求項10の「抗PD-1抗体」を「抗PD-L1抗体」とすることで、請求項10-請求項11間で規定される「抗CD40抗体」と組み合わされる「抗体」を請求項11の「(前記)抗PD-L1抗体」に整合化し、曖昧さを解消するものであるから、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定される明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

3.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
請求項10-請求項11間の「抗CD40抗体」と組み合わされ得る「抗体」として「抗PD-L1抗体」が挙げられることは、2.で引用した特許明細書中の【0008】や【0094】に記載されているとおりである。
よって、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされるものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。
( なお、請求項11の「MEDI4736」及び「MPDL3280A」がいずれも「抗PD-L1抗体」であることは、特許明細書中の【0008】や【0094】に記載されているとおりである他、例えば本件特許出願前に頒布された次の刊行物A:
A.CANCER CONTROL, (2014 JAN.) 21(1) P.80-89
の84頁右欄?85頁左欄や86頁表2の「MEDI4736」又は「MPDL3280A」についての記載からも把握できるとおり、本件特許出願当時当業者にとり技術常識として知られた事項であったとも認められる。)

4.実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上の2.のとおり、本件訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件訂正の前後において特許請求の範囲に実質上拡張又は変更はないことから、本件訂正は特許法第126条第6項の規定に適合する。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件審判請求における請求項10?12、21、22に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗CD40抗体を含み、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含み、
前記抗CD40抗体は、0.1?2000μg/kg(患者の体重1kgあたりのμg)の間の用量レベルで患者に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記用量レベルが、10?1000μg/kgの間、50?800μg/kgの間、75?600μg/kgの間または100?500μg/kgの間である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記用量レベルが、100?300μg/kg、300?500μg/kg、500?700μg/kg、700?900μg/kg、および900?1100μg/kgからなる群から選択される範囲内である;
前記用量レベルが、100?150μg/kg、150?200μg/kg、200?250μg/kg、250?300μg/kg、300?350μg/kg、350?400μg/kg、400?450μg/kg、450?500μg/kg、500?550μg/kg、550?600μg/kg、600?650μg/kg、650?700μg/kg、700?750μg/kg、750?800μg/kg、800?850μg/kg、850?900μg/kg、900?950μg/kg、950?1000μg/kg、1000?1050μg/kg、および1050?1100μg/kgからなる群から選択される範囲内である;または
前記用量レベルが、約60μg/kg、約100μg/kg、約150μg/kg、約200μg/kg、約250μg/kg、約300μg/kg、約350μg/kg、約400μg/kg、約450μg/kg、約500μg/kg、約550μg/kg、約600μg/kg、約650μg/kg、約700μg/kg、約750μg/kg、約800μg/kg、約850μg/kg、約900μg/kg、約950μg/kg、約1000?1050μg/kg、約1050μg/kg、および1110μg/kgからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、3週間毎または6週間毎に一回に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記患者が、CD40陽性がんまたはCD40陰性がんを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
がんを処置するための組合せ物であって、前記組合せ物は、抗CTLA4抗体、および、抗CD40抗体を含む組成物を含み、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組合せ物。
【請求項7】
前記抗CTLA4抗体が、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される、請求項6に記載の組合せ物。
【請求項8】
がんを処置するための組合せ物であって、前記組合せ物は、抗PD-1抗体、および、抗CD40抗体を含む組成物を含み、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組合せ物。
【請求項9】
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブ、ピジリズマブ、およびペンブロリズマブからなる群から選択される、請求項8に記載の組合せ物。
【請求項10】
がんを処置するための組合せ物であって、前記組合せ物は、抗PD-L1抗体、および、抗CD40抗体を含む組成物を含み、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組合せ物。
【請求項11】
前記抗PD-L1抗体が、MEDI4736およびMPDL3280Aからなる群から選択される、請求項10に記載の組合せ物。
【請求項12】
前記がんが、血液学的がんであるか、または前記がんが、固形腫瘍である、請求項1に記載の組成物または請求項6、8および10のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項13】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗CD40抗体を含み、前記組成物は、抗CTLA4抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組成物。
【請求項14】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗CTLA4抗体を含み、前記組成物は、抗CD40抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、ここで、前記抗CD40抗体は非フコシル化抗体である、組成物。
【請求項15】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗CD40抗体を含み、前記組成物は、抗PD-1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組成物。
【請求項16】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗PD-1抗体を含み、前記組成物は、抗CD40抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、ここで、前記抗CD40抗体は非フコシル化抗体である、組成物。
【請求項17】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗CD40抗体を含み、前記組成物は、抗PD-L1抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、前記定常領域は、EUインデックスに従った残基N297においてN-グリコシド結合型糖鎖を有し、ここで、前記組成物中のN-グリコシド結合型糖鎖の5%未満が、フコース残基を含む、組成物。
【請求項18】
がんを処置するための組成物であって、前記組成物は、抗PD-L1抗体を含み、前記組成物は、抗CD40抗体と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記抗CD40抗体は、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号2の軽鎖可変領域、ならびにヒト定常領域を含み、ここで、前記抗CD40抗体は非フコシル化抗体である、組成物。
【請求項19】
前記抗CD40抗体は、30μg/kg(患者の体重1kgあたりのμg)の用量レベルで患者に投与されることを特徴とする、請求項1?5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗CD40抗体は、少なくとも3週間に一回投与されることを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記がんが、CD40陰性がんである、請求項1?5および13?18のいずれか一項に記載の組成物、あるいは、請求項6?12のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項22】
前記がんが、固形腫瘍である、請求項1?5および13?18のいずれか一項に記載の組成物、あるいは、請求項6?12のいずれか一項に記載の組合せ物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-04-09 
結審通知日 2021-04-14 
審決日 2021-05-14 
出願番号 特願2017-522840(P2017-522840)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谷合 正光  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 大久保 元浩
齋藤 恵
登録日 2020-04-13 
登録番号 特許第6691113号(P6691113)
発明の名称 非フコシル化抗CD40抗体の投与量および投与  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  

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