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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01F
管理番号 1376136
審判番号 不服2020-15008  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-28 
確定日 2021-08-03 
事件の表示 特願2017-542983「物理量検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日国際公開、WO2017/056700、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)8月3日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 平成27年9月30日)、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月26日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月27日 :手続補正書、意見書の提出
令和 元年10月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 2月25日 :手続補正書、意見書の提出
令和 2年 8月28日付け:拒絶査定(令和2年9月1日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年10月28日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。

1.本願の請求項1、6に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1、3?5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2.本願の請求項2、3に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1、2、5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.本願の請求項4に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1、3、5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4.本願の請求項5に係る発明は、その優先日前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1、4、5に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-137456号公報
2.特開2014-225573号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2011-75357号公報
4.特開2002-318147号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2002-62306号公報


第3 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。)は、令和2年10月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
1つ以上の吸気温度検出素子を備え、電気信号を処理する電子回路基板を有す物理量検出装置において、
前記1つ以上の吸気温度量検出素子と最大発熱量を有す部品が同一の前記電子回路基板に実装される構成であって、
前記1つ以上の吸気温度検出素子が、前記電子回路基板の一方側の面に配置され、前記最大発熱量を有す部品が、前記電子回路基板の他方側の面に配置され、
前記1つ以上の吸気温度検出素子が前記最大発熱量を有す部品より空気流れ上流部に配置され、
前記電子回路基板の前記吸気温度検出素子が実装された前記一方側の面に、主通路を通過する被計測気体を取り入れる独立した副通路が形成されており、
前記電子回路基板の前記他方側の面で且つ前記電子回路基板を挟んで前記副通路と反対側の対向する位置に、前記最大発熱量を有す部品の全部分もしくは一部分が配置されることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量検出装置において、
前記電子回路基板に実装される部品のうち、発熱量の高い上位3部品が、空気流れ下流から発熱量の高い順に配置されることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の物理量検出装置において、
前記発熱量の高い上位3部品が発熱量の高い順に電源レギュレータ、LSI、マイコンであることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の物理量検出装置において、
前記1つ以上の吸気温度検出素子のうちの少なくとも一つは、湿度検出機能を有すことを特徴とする物理量検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の物理量検出装置において、
前記電子回路基板の基板本体は、ガラスエポキシ樹脂製の材料により構成されていることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の物理量検出装置において、
ハウジングを備えており、
前記電子回路基板は、前記ハウジングと一体成形されることを特徴とする物理量検出装置。」


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成24年7月19日に頒布された刊行物である特開2012-137456号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したもので、以下同様である。

「【請求項1】
吸気管に設けられた開口部に挿入することにより温度検出素子が吸気管内に配置される吸気温度センサにおいて、
前記温度検出素子は、吸気管を流れる吸気流に直接曝される放熱板に機械的に接合されており、前記温度検出素子から得られる出力に基づいて吸気温度を出力することを特徴とする吸気温度センサ。」

「【請求項4】
請求項1に記載の吸気温度センサにおいて、
前記温度検出素子に電気的に接続される電子回路と、
前記電子回路を実装する回路基板と、
前記電子回路を収納する筐体と、を有し、
前記放熱板と前記回路基板とを同一部材で構成したことを特徴とする吸気温度センサ。」

「【0014】
本発明による第1の実施例の吸気温度センサ9は図1に示すように吸気管3に設けられた開口部に挿入する形で実装され、吸気温度センサ9は取付け部2により吸気管3に固定される。また、吸気温度センサ9からの電気的接続はコネクタ部1を介して行われる。また、吸気温度センサ9には副通路8が設けられ、副通路8の内部には流量検出素子13が配置され、吸気管3を流れる流量を測定できるようにしている。また、放熱板4は吸気温度センサ9の筐体から外部に露出するように固定され、放熱板4が吸気管内の吸気流に直接曝されるように配置している。吸気温度検出素子6は、副通路8の外部かつ、回路基板11に対して吸気流れの上流側に配置されており、放熱板4に熱伝導性の高い接着剤などで機械的に固定され、放熱板4と熱的に結合する。また、吸気温度検出素子6はリード5,7を介して吸気温度センサ9の筐体22内部へ電気的に接続される。また、筐体22内部には回路基板11を配置し、回路基板11には吸気温度検出素子6および流量検出素子13の出力信号を処理するための集積回路10を配置した。なお、流量検出素子13は金線12により回路基板11に接続される。」

「【0022】
第2の実施例の吸気温度センサは第1の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。なお、先に説明した実施例と構造を同じくする部分は符号を同じとし、その説明を省略する。
【0023】
本実施例では、放熱板4にセラミック基板を用い、スリット14,17を設け、チップ型の吸気温度検出素子6を用い、半田パッド15,16を用いて吸気温度検出素子6を半田で固定した。スリット14は吸気温度検出素子6に対して取付け部2側に設けられており、放熱板4の吸気流れの垂直方向の辺に沿ってスリット14が開口されている。一方、スリット17は吸気温度検出素子6に対して副通路8側に設けられており、放熱板4の吸気流れの垂直方向の辺に沿ってスリット17が開口されている。また、スリット14,17は吸気流れに沿うように複数本のスリットが並列に配置されている。半田パッド15は図7に示す様に内層配線パターン23を介して、吸気温度センサ9の筐体22の内部の半田パッド18まで接続され、金線19を介して回路基板11へ電気的に接続される。同様に半田パッド16も内層配線パターンを介して、筐体22の内部の半田パッド21まで接続され、金線20を介して回路基板11へ電気的に接続される。」

「【0031】
次に、本発明の第4の実施例である吸気温度センサを図11により説明する。なお、図11は第4の実施例の吸気温度センサの図1におけるA-A′の断面である。
【0032】
第4の実施例の吸気温度センサは第2の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。なお、先に説明した実施例と構造を同じくする部分は符号を同じとし、その説明を省略する。
【0033】
本実施例では、放熱板4と回路基板11とを同一部材で構成した基板30を配置した。放熱板4には高い熱伝導率、回路基板11には配線パターンが必要であるが、これを実現する部材としてセラミック基板,メタルベース基板などを採用した。こうすることで吸気温度検出素子6から集積回路10への配線を金線を使用せずに基板30の配線パターンのみで接続可能となり、結線の信頼性向上と工数の低減による低コスト化を達成できる。また、集積回路10の自己発熱が吸気温度検出素子6へ影響しないようにスリット29を設け、集積回路10からの発熱が吸気温度検出素子6へ伝わることを防いだ。なお、本実施例の様に放熱板4と回路基板11とを同一部材で構成する場合、基板30は長方形の方が望ましい。このことから筐体22に凹部を設け、ここに放熱板4を設ける構成は以下の利点がある。第1は基板30を長方形にできる。第2は凹形状になることで吸気の導入排出がスムーズに流れる。
【0034】
次に、本発明の第5の実施例である吸気温度センサを図12により説明する。なお、図12は第5の実施例の吸気温度センサの図1におけるA-A′の断面である。
【0035】
第5の実施例の吸気温度センサは第4の実施例の吸気温度センサと基本的に同じ構造であるが、以下の改良を加えた。なお、先に説明した実施例と構造を同じくする部分は符号を同じとし、その説明を省略する。
【0036】
本実施例では吸気温度検出素子38を筐体22の内部へ配置することで第2の実施例と同様の効果を得ることができる。また、集積回路10の自己発熱が吸気温度検出素子38へ影響しないようにスリット35,36,40を設け、集積回路10からの発熱が吸気温度検出素子38へ伝わることを防いだ。特にスリット36は吸気温度検出素子38の周囲を囲むように設けている。また、スリット35,36,40の間に隙間を作ることで配線パターンが通る領域を確保した。また、スリット31をスリット32よりも取付け部2側に吸気流れに沿って開口させ、スリット34をスリット33よりも副通路8側に吸気流れに沿って開口させることで、配置して筐体22との固定部からの熱の流入を防いだ。なお、スリット32,33により吸気流への放熱抵抗の低減を図っている。吸気温度検出素子38は半田パッド37,39より半田により固定した。」

「【図1】



「【図2】



「【図11】



「【図12】



【請求項1】には、放熱板に温度検出素子が機械的に接合されていることが記載されており、【請求項4】には、吸気温度センサは、前記放熱板と同一部材で構成した電子回路を実装する回路基板を有していることが記載されているから、これらの記載から、吸気温度センサは、温度検出素子及び電子回路を実装する回路基板を有していることが読み取れる。

【図11】、【図12】及びこれらの図面に対応する明細書の記載から、吸気温度検出素子6及び集積回路10は、いずれも放熱板4と回路基板11とを同一部材で構成した基板30の一方の面に配置されていることが読み取れる。

(2) 引用発明の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「温度検出素子及び電子回路を実装する回路基板を有する吸気温度センサにおいて(【請求項1】、【請求項4】)、
吸気温度検出素子6は、回路基板11に対して吸気流れの上流側に配置されており、放熱板4に熱伝導性の高い接着剤などで機械的に固定され、前記回路基板11には前記吸気温度検出素子6の出力信号を処理するための集積回路10を配置し(【0014】)、
前記放熱板4と前記回路基板11は同一部材である基板30で構成され(【0033】)、前記吸気温度検出素子6及び前記集積回路10は、いずれも前記基板30の一方の面に配置されている(【図11】、【図12】)、
吸気温度センサ9。」

2 引用文献2に記載された事項の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成26年12月4日に頒布された刊行物である特開2014-225573号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0047】
また、図10に示されるように、上段の通風路76では、高発熱部品94が低発熱部品96よりも上流側に配置されている。従って、低発熱部品96よりも先に高発熱部品94に冷却風W1を供給することができるので、高発熱部品94を効率良く冷却することができる。また、高発熱部品94を流れることで温度が高くなった冷却風W1は、高発熱部品94よりも冷却を必要としない低発熱部品96に供給される。これにより、上流側の高発熱部品94と下流側の低発熱部品96に発熱状況に応じた温度の冷却風をそれぞれ提供することができ、その結果、高発熱部品94及び低発熱部品96の両方を冷却することができる。
【0048】
また、下段の通風路78では、低発熱部品98が高発熱部品100よりも上流側に配置されている。従って、低発熱部品98を流れることで温度が低いままの冷却風W2を高発熱部品100に供給することができる。これにより、低発熱部品98及び高発熱部品100の両方を冷却することができる。」

「【図10】



(2) 周知技術の認定
引用文献2の上記(1)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は、周知技術であると認める。

<周知技術A>
「低発熱部品98を高発熱部品100より上流側に配置して、低発熱部品98を流れることで温度が低いままの冷却風W2を高発熱部品100に供給することにより、低発熱部品98及び高発熱部品100の両方を冷却すること(【0048】)。」

3 引用文献3に記載された事項の認定
(1) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成23年4月14日に頒布された刊行物である特開2011-75357号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0026】
この発熱抵抗体式空気流量測定装置200を駆動する電子回路基板203上に湿度検知部500が設置され、湿度検知部500が吸入空気に直接触れるように、ハウジング構成部材201には吸気導入孔210が設けられている。ここで検知した湿度信号はコネクタ端子209を用いて外部に送られる。
【0027】
この構成で発熱抵抗体式空気流量測定装置200の起動を行うと、時間に遅れなく電子回路基板203の発熱が始まり、その熱影響が湿度検知部500まで及ぶ。この結果、起動時に湿度検知部500が結露の影響を受けていても短時間で正常状態に復帰が可能となる。
【0028】
また、例えばこの湿度検知部500に相対湿度と温度を検出する機能があればこの湿度信号を絶対湿度として処理、利用することによって電子回路基板203からの受熱は計測結果に何の支障も来さずに目的を達成することができる。
【0029】
図3は湿度検知部500を第二副空気通路211の内部に実装した例である。
【0030】
発熱抵抗体式空気流量測定装置200に使用する副空気通路205とは別に、第二副空気通路211を設置し、主空気通路100を流れる空気の一部を取り込む構成としている。
【0031】
この構成で発熱抵抗体式空気流量測定装置200の起動を行うと、時間に遅れなく電子回路基板203の発熱が始まり、その熱影響が湿度検知部500まで及ぶ。この結果、起動時に湿度検知部500が結露の影響を受けていても短時間で正常状態に復帰が可能となる。これは結露が起きやすいエンジンのコールドスタート時、特にアイドリング時の吸入空気流量がごく少量の環境下における結露の除去に効果的である。
【0032】
逆に結露が問題になり難い環境においては電子回路基板203の放熱効率をより高める方が良く、電子回路基板203が最も発熱する高流量域では第二副空気通路にも十分な空気の流れが発生する構成とした。これにより第二副空気通路211から電子回路基板203の放熱が可能となり、ベース部材202からの放熱と併せてより放熱の効果が高まる。以上の構成により、加熱と放熱の相反する機能を同設することができる。」

「【図3】



(2) 引用文献3に記載された事項の認定
上記(1)を総合すると、引用文献3には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献3記載事項>
「電子回路基板203上に設置され、相対湿度と温度を検出する機能を有する湿度検知部500を、主空気通路100を流れる空気の一部を取り込む構成である第二副空気通路211の内部に実装して(【0026】、【0028】?【0030】)、
前記電子回路基板203が最も発熱する高流量域では第二副空気通路にも十分な空気の流れが発生する構成とすることにより、第二副空気通路211から、前記湿度検知部500に熱影響を及ばせる電子回路基板203の放熱を可能とすること(【0027】、【0032】)。」

4 引用文献4に記載された事項の認定
(1) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成14年10月31日に頒布された刊行物である特開2002-318147号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0017】
流量検出信号を出力する制御回路を形成する回路基板3は、例えばガラスエポキシ樹脂製の基板上に、IC等の電子部品4が実装されて制御回路が形成され、発熱素子6への供給電流を制御すると共にこの電流値を電圧値に変換後、空気流量検出信号として外部へ出力している。回路基板3は、ハウジング9の収納部9aに接着固定されている。」

「【図1】



(2) 周知技術の認定
引用文献4の上記(1)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は、周知技術であると認める。

<周知技術B>
「流量検出信号を出力する制御回路を形成する回路基板3が、ガラスエポキシ樹脂製の基板上にIC等の電子部品4が実装されて形成されること(【0017】)。」

5 引用文献5に記載された事項の認定
(1) 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成14年2月28日に頒布された刊行物である特開2002-62306号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0024】プリント基板16の第1の面の中央部には,風速センサ11が実装されている。これにより,プリント基板16が天井壁10dに取り付けられたときに,風速センサ11は,開口部10c内に配置され,外気に接触するようになっている。また,第1の面の裏面である第2の面には,センサ制御部12と入出力回路13とメモリ14と電源回路15とが実装されている。そして,このプリント基板16の第1の面および第2の面には,後述する図3に示す信号線および電源線がパターンとして形成されている。このように,1つのプリント基板16の表裏に風速検出装置1を構成する各回路を一体化して実装し,配線することにより,風速検出装置1の構成を単純にすることができるとともに,全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0025】なお,プリント基板16の第1の面のうち,開口部10cを介して外気に接触する部分,および,センサ11のうち,風速を検出する検出部(後述するセンサ抵抗器110および111)以外の部分は,汚れや外気の湿気による錆等の腐食から保護されるように,保護膜によりコーティングされていることが好ましい。また,プリント基板16の第2の面および第2の面に実装されたセンサ制御回路12等についても,同様にコーティングされていることが好ましい。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



(2) 引用文献5に記載された事項の認定
上記(1)を総合すると、引用文献5には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献5記載事項>
「プリント基板16の第1の面の中央部に、風速センサ11を実装し、前記第1の面の裏面である第2の面に、センサ制御部12と入出力回路13とメモリ14と電源回路15を実装し、このように1つのプリント基板16の表裏に風速検出装置1を構成する各回路を一体化して実装し配線することにより、構成を単純にするとともに、全体の大きさをコンパクトにすること(【0024】)。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「吸気温度検出素子6」は、本願発明1の「1つ以上の吸気温度検出素子」に相当する。
引用発明の「吸気温度検出素子6」が固定される「放熱板4」と、「吸気温度検出素子6の出力信号を処理するための集積回路10」が配置される「回路基板11」は、同一部材である「基板30」を構成しているから、引用発明1の「基板30」には、「吸気温度検出素子6の出力信号を処理するための集積回路10」が配置されている。
よって、引用発明の「基板30」は、本願発明1の「電気信号を処理する電子回路基板」に相当する。そして、引用発明の「吸気温度検出素子6」及び「基板30」を備える「吸気温度センサ9」は、本願発明1の「1つ以上の吸気温度検出素子を備え、電気信号を処理する電子回路基板を有す物理量検出装置」に相当する。

イ 引用発明の「回路基板11」に、「吸気温度検出素子6の出力信号を処理するための集積回路10」以外の電源回路や集積回路も配置されていることは明らかであり、これらの回路は全て「回路基板11」に配置されているから、これらの回路の中で発熱量が最大となる回路も「回路基板11」に配置されていることになる。
また、上記アで示したとおり、引用発明の「吸気温度検出素子6」が固定される「放熱板4」と「回路基板11」は、同一部材である「基板30」を構成しているから、引用発明の「吸気温度検出素子6」と、前記発熱量が最大となる回路は、「基板30」に配置されていることになる。
さらに、引用発明1の「吸気温度検出素子6」は、回路基板11に対して吸気流れの上流側に配置されているから、回路基板11に配置されている発熱量が最大となる回路に対しても吸気流れの上流側に配置されていることは明らかである。
よって、引用発明の「吸気温度検出素子6は、回路基板11に対して吸気流れの上流側に配置されており、放熱板4に熱伝導性の高い接着剤などで機械的に固定され、前記回路基板11には前記吸気温度検出素子6の出力信号を処理するための集積回路10を配置し、前記放熱板4と前記回路基板11は同一部材である基板30で構成され」ることは、本願発明1の「1つ以上の吸気温度量検出素子と最大発熱量を有す部品が同一の前記電子回路基板に実装される構成であって、」「前記1つ以上の吸気温度検出素子が前記最大発熱量を有す部品より空気流れ上流部に配置され」ることに相当する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願発明1と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
1つ以上の吸気温度検出素子を備え、電気信号を処理する電子回路基板を有す物理量検出装置において、
前記1つ以上の吸気温度量検出素子と最大発熱量を有す部品が同一の前記電子回路基板に実装される構成であって、
前記1つ以上の吸気温度検出素子が前記最大発熱量を有す部品より空気流れ上流部に配置される、
物理量検出装置、である点。

<相違点>
「1つ以上の吸気温度量検出素子と最大発熱量を有す部品が同一の前記電子回路基板に実装される構成」が、本願発明1では「1つ以上の吸気温度検出素子が、前記電子回路基板の一方側の面に配置され、前記最大発熱量を有す部品が、前記電子回路基板の他方側の面に配置され」、「前記電子回路基板の前記吸気温度検出素子が実装された前記一方側の面に、主通路を通過する被計測気体を取り入れる独立した副通路が形成されており、前記電子回路基板の前記他方側の面で且つ前記電子回路基板を挟んで前記副通路と反対側の対向する位置に、前記最大発熱量を有す部品の全部分もしくは一部分が配置され」ているのに対して、引用発明では「吸気温度検出素子6及び前記集積回路10は、いずれも前記基板30の一方の面に配置されている」点。

(3) 相違点についての当審の判断
上記相違点について検討する。
引用文献3には、前記第4の3の(2)に示したとおり、「相対湿度と温度を検出する機能を有する湿度検知部500を、主空気通路100を流れる空気の一部を取り込む構成である第二副空気通路211の内部に実装」することが記載されており、引用文献5には、前記第4の5の(2)に示したとおり、「1つのプリント基板16の表裏に風速検出装置1を構成する各回路を一体化して実装し配線すること」が記載されている。そして、前記第4の4の(2)に示したとおり、「流量検出信号を出力する制御回路を形成する回路基板3が、ガラスエポキシ樹脂製の基板上にIC等の電子部品4が実装されて形成されること」は、本願優先日前の周知技術Bである。
しかしながら、引用発明に、これらの記載事項及び周知技術Bを適用して、「吸気温度検出素子6」を、主空気通路を流れる空気の一部を取り込む副空気通路に実装するとともに、「基板30」の表裏に「吸気温度検出素子6」と発熱量が最大となる回路を配置し、さらに「基板30」をガラスエポキシ樹脂製のものにしたとしても、上記相違点に係る構成である「電子回路基板を挟んで」「主通路を通過する被計測気体を取り入れる独立した副通路」「と反対側の対向する位置に、前記最大発熱量を有す部品の全部分もしくは一部分が配置され」たものとはならない。また、前記第4の2の(2)に示した周知技術Aについても、上記相違点に係る構成について開示も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、当該構成により、本願明細書の【0105】に記載の「電源レギュレータ416で発生した熱を基板本体401の裏面に伝達し、第2副通路306を通過する被計測気体30によって放熱する効果を高めている」ものであるから、当該構成が、当業者が適宜なし得る設計事項程度のものであるとも認められない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献3、5に記載された技術的事項、及び周知技術A及びBに基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6も、上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献3、5に記載された技術的事項、及び周知技術A及びBに基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、当業者が引用発明、引用文献3、5に記載された技術的事項及び周知技術A及びBに基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。




 
審決日 2021-07-15 
出願番号 特願2017-542983(P2017-542983)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山下 雅人  
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 清水 靖記
濱本 禎広
発明の名称 物理量検出装置  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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