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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1376163
審判番号 不服2020-9731  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-10 
確定日 2021-07-14 
事件の表示 特願2016-556314「グラフェン系熱管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月17日国際公開、WO2015/138110、平成29年 6月22日国内公表、特表2017-517137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年2月23日(パリ条約による優先権主張 2014年3月10日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月15日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月20日 :意見書、誤訳訂正書の提出
令和 1年 7月19日付け:拒絶理由通知
令和 1年10月23日 :意見書の提出
令和 2年 2月28日付け:拒絶査定
令和 2年 7月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年12月17日 :上申書の提出

第2 令和2年7月10日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年7月10日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、本件補正前における特許請求の範囲について、
「【請求項1】
熱管理された電子部品(100)であって、
前記電子部品(110)の表面に配置された熱管理コーティング(120)であって、
第一の表面及び第二の表面を有するグラフェンコーティング層(130)であって、前記第一の表面が前記電子部品の表面に配置されている、グラフェンコーティング層(130)と、
前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長した、整列されたカーボンナノ粒子の層(132)とを含む、熱管理コーティング(120)
を含む電子部品。
【請求項2】
前記電子部品の前記表面と前記熱管理コーティングとの間に配置された電気絶縁材料層を更に含む、請求項1に記載の熱管理された電子部品。
【請求項3】
前記グラフェンコーティング層が、1から30の間の原子層を含む、請求項1又は2に記載の熱管理された電子部品。
【請求項4】
前記グラフェンコーティング層が、約500nm以下の厚さを有している、請求項1から3の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項5】
前記カーボンナノ粒子が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、ヘテロフラーレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項6】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層が、対称構造または非対称構造を有している、請求項1から5の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項7】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層が、右側構造又は左側構造を有している、請求項1から6の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項8】
前記熱管理コーティングが、前記熱管理された電子部品の総重量に対し、前記熱管理された電子部品の約0.2重量パーセント以下を含んでいる、請求項1から7の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項9】
前記熱管理コーティングが、約25MW/m2Kを上回る熱コンダクタンスを示す、請求項1から8の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項10】
熱管理コーティングを電子部品に適用する方法であって、
グラフェンコーティング層の第一の表面を前記電子部品の表面に配置することと、
整列されたカーボンナノ粒子の層を前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長させることと
を含む方法。
【請求項11】
前記グラフェンコーティング層の第一の表面を前記電子部品の前記表面に配置する前に、電気絶縁材料層を前記電子部品の前記表面に配置することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カーボンナノ粒子が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、ヘテロフラーレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を成長させることが、化学気相蒸着を用いて実行
される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長させる前に、触媒膜が前記グラフェンコーティング層に堆積される、請求項10から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒膜が、ニッケル、コバルト、鉄、又はそれらの組み合わせの粒子を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を成長させることが、前記触媒膜から前記カーボンナノ粒子を成長させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
DCまたはAC電場が、前記カーボンナノ粒子の成長中に前記電子部品に印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
磁場が、前記カーボンナノ粒子の前記成長中に前記電子部品に印加される、請求項17に記載の方法。」
とあったところを、

「【請求項1】
熱管理された電子部品(100)であって、
前記電子部品(110)の表面に配置された熱管理コーティング(120)であって、
第一の表面及び第二の表面を有するグラフェンコーティング層(130)であって、前記第一の表面が前記電子部品の表面に直接配置されている、グラフェンコーティング層(130)と、
前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長した、整列されたカーボンナノ粒子の層(132)とを含む、熱管理コーティング(120)を含む電子部品。
【請求項2】
前記グラフェンコーティング層が、1から30の間の原子層を含む、請求項1に記載の熱管理された電子部品。
【請求項3】
前記グラフェンコーティング層が、500nm以下の厚さを有している、請求項1又は2に記載の熱管理された電子部品。
【請求項4】
前記カーボンナノ粒子が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、ヘテロフラーレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1から3の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項5】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層が、対称構造または非対称構造を有している、請求項1から4の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項6】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層が、右側構造又は左側構造を有している、請求項1から5の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項7】
前記熱管理コーティングが、前記熱管理された電子部品の総重量に対し、前記熱管理された電子部品の0.2重量パーセント以下を含んでいる、請求項1から6の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項8】
前記熱管理コーティングが、25MW/m2Kを上回る熱コンダクタンスを示す、請求項1から7の何れか一項に記載の熱管理された電子部品。
【請求項9】
熱管理コーティングを電子部品に適用する方法であって、
グラフェンコーティング層の第一の表面を前記電子部品の表面に直接配置することと、
整列されたカーボンナノ粒子の層を前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長させることと
を含む方法。
【請求項10】
前記カーボンナノ粒子が、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、ヘテロフラーレン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を成長させることが、化学気相蒸着を用いて実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長させる前に、触媒膜が前記グラフェンコーティング層に堆積される、請求項9から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒膜が、ニッケル、コバルト、鉄、又はそれらの組み合わせの粒子を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記整列されたカーボンナノ粒子の層を成長させることが、前記触媒膜から前記カーボンナノ粒子を成長させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
DCまたはAC電場が、前記カーボンナノ粒子の成長中に前記電子部品に印加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
磁場が、前記カーボンナノ粒子の前記成長中に前記電子部品に印加される、請求項15に記載の方法。」
とするものである(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正における請求項1、9に係る発明について検討する。
請求項1について本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記第一の表面が前記電子部品の表面に配置されている、グラフェンコーティング層(130)」について、「前記第一の表面が前記電子部品の表面に直接配置されている、グラフェンコーティング層(130)」と限定をするものである。
請求項9について本件補正は、本件補正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「グラフェンコーティング層の第一の表面を前記電子部品の表面に配置すること」について、「グラフェンコーティング層の第一の表面を前記電子部品の表面に直接配置すること」と限定をするものである。

上記補正は、いずれも、本件補正前の請求項1、10に記載された発明を特定するために必要な事項に限定を付加するものであり、本件補正前の請求項1及び請求項10に記載された発明と本件補正の請求項1及び請求項9に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

そこで、本件補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

2 引用文献及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-232683号公報(平成25年11月14日公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様)。
「【0070】
次に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を用いた電子機器の製造方法について、図11及び図12を用いて説明する。
【0071】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、例えば図11に示すように、発熱体30と放熱体32との間に設けられ、発熱体30により発せられた熱を放熱体32に伝達するための放熱シート(TIM)として用いることができる。発熱体30としては、例えば、半導体チップ等が挙げられる。放熱体32としては、例えば、ヒートスプレッダ等が挙げられる。
【0072】
まず、放熱体30(当審注:発熱体30の誤記)上に、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10を載置する。」

「【0089】
[第2実施形態]
第2実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法について図13乃至図を用いて説明する。図1乃至図12に示す第1実施形態によるカーボンナノチューブシート及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。」

「【0092】
本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、図13に示すように、間隔を開けて配置された複数のカーボンナノチューブ16を有している。カーボンナノチューブ16の間隙には充填層20が形成されており、充填層20によってカーボンナノチューブ16が支持されている。本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、シート状の構造体を形成しており、複数のカーボンナノチューブ16は、シートの膜厚方向、すなわちシートの面と交差する方向に配向している。
【0093】
カーボンナノチューブ16の一方の端部(図面において下側)には、グラファイト層26が形成されている。」

「【0095】
このように、本実施形態によるカーボンナノチューブシート10は、カーボンナノチューブ16の一方の端部に、グラファイト層26を有している。カーボンナノチューブ16の一端部にグラファイト層26を設けることにより、被着体との間は面接触となり、被着体に対する接触抵抗を低減することができる。」

「【0108】
次いで、グラファイト層26上に、例えばホットフィラメントCVD法により、触媒金属膜14を触媒として、カーボンナノチューブを成長する。」

「【0114】
次いで、第1実施形態の場合と同様にして、カーボンナノチューブ16及び充填層20を基板12から剥離し、本実施形態によるカーボンナノチューブシートを完成する(図17(b))。」

(2)上記記載及び図面から、引用文献1には次の技術的事項が記載されている。
・引用文献1に記載された技術は「カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器」に関するものである(【0070】)。
また、第2実施形態のカーボンナノチューブシート10は第1実施形態のカーボンナノチューブ10と、同一符号が付された同様の構成要素であるから(【0089】、【0092】)、上記「カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器」において、第2実施形態のカーボンナノチューブシート10を用いたものが開示されている。
・図11(c)及び【0072】の記載より電子機器は、発熱体30の表面にカーボンナノチューブシート10を載置したものであることが見て取れる。
・発熱体30は、半導体チップである(【0071】)。
・カーボンナノチューブシート10は、発熱体30により発せられた熱を伝達するための放熱シートである(【0071】)。
・カーボンナノチューブシート10は、複数のカーボンナノチューブ16を有しているシート状の構造体であり、複数のカーボンナノチューブ16は、シートの膜厚方向に配向している(【0092】)。
・カーボンナノチューブシート10は、カーボンナノチューブ16の一方の端部に、グラファイト層26を有している(【0095】)。
・カーボンナノチューブ16はグラファイト層26上に成長したものである(【0108】)。
・カーボンナノチューブ16の一端部のグラファイト層26は、被着体と面接触している(【0095】)。ここで、被着体は発熱体30であるから、半導体チップのことである(【0071】、【0072】及び【0095】)。

(3)引用発明
第2実施形態のカーボンナノチューブシート10を、図11(c)記載の発熱体30に搭載した技術に着目すると、上記記載より引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器であって、
半導体チップの表面にカーボンナノチューブシート10を載置したものであり、
カーボンナノチューブシート10は、半導体チップにより発せられた熱を伝達するための放熱シートであって、複数のカーボンナノチューブ16の一方の端部に、グラファイト層26を有しているシート状の構造体であり、
複数のカーボンナノチューブ16はグラファイト層26上に成長して、シートの膜厚方向に配向したものであり、
グラファイト層26が半導体チップに面接触している、
カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「カーボンナノチューブシート10」は、「半導体チップにより発せられた熱を伝達するための放熱シート」であるから、引用発明の「カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器」は、本願補正発明の「熱管理された電子部品(100)」に相当する。
また、引用発明の「半導体チップの表面に」「載置した」「カーボンナノチューブシート10」は、本願補正発明の「前記電子部品(110)の表面に配置された熱管理コーティング(120)」に相当する。

(2)本願明細書の段落【0034】に「グラフェンコーティング層は、一又は複数のグラフェンシートを含み」と記載されていることから、本願補正発明の「グラフェンコーティング層(130)」は、複数のグラフェンシートからなるもの、すなわちグラファイトからなるものを含んでいる。
そうすると、引用発明の「グラファイト層26」は、最上層と最下層に表面を有していることが明らかであるから、本願補正発明の「第一の表面及び第二の表面を有するグラフェンコーティング層(130)」に相当する。
そして、引用発明は「半導体チップの表面にカーボンナノチューブシート10を載置したものであり」、「カーボンナノチューブシート10」の「グラファイト層26が半導体チップに面接触している」のであるから、「半導体チップの表面」と「グラファイト層26」が直接「接触」しているといえる。
そうすると、引用発明の「グラファイト層26」は、本願補正発明の「前記第一の表面が前記電子部品の表面に直接配置されている、グラフェンコーティング層(130)」に相当する。

(3)本願明細書の段落【0018】に「カーボンナノ粒子は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、フラーレン、ヘテロフラーレン、又はそれらの組み合わせを含む」と記載されていることから、本願補正発明の「カーボンナノ粒子の層(132)」は、カーボンナノチューブを含んだ層である。
そうすると、引用発明の「グラファイト層26上に成長し」た「シートの膜厚方向に配向」している「複数のカーボンナノチューブ16」は、本願補正発明の「前記グラフェンコーティング層の第二の表面で成長した、整列されたカーボンナノ粒子の層(132)」の相当する。

(4)引用発明の「グラファイト層26」と「複数のカーボンナノチューブ16」とを含む「カーボンナノチューブシート10」は、本願補正発明の「グラフェンコーティング層(130)と、」「カーボンナノ粒子の層(132)とを含む、熱管理コーティング(120)」に相当する。

(5)引用発明の「カーボンナノチューブシート10を用いた電子機器」は、本願補正発明の「熱管理コーティング(120)を含む電子部品」に相当する。

4 判断
上記「3 (1)」ないし「3 (6)」から両者に相違点はなく、本願補正発明は引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「(ii)本願発明と引用文献2に記載の発明との対比」において、「補正後の本願発明と、引用文献2(当審注:本審決における「引用文献1」)に記載された発明とを対比すると、引用文献2は、『電子部品に直接配置されたグラフェンコーティング層』について、示唆も記載もしていません。むしろ、引用文献2は、触媒金属膜14がカーボンナノチューブ16と基板12との間に配置されることを記載しています。」と主張する。
しかしながら、引用文献1には「次いで、第1実施形態の場合と同様にして、カーボンナノチューブ16及び充填層20を基板12から剥離し、本実施形態によるカーボンナノチューブシートを完成する(図17(b))。」(【0114】)と記載されており、図17(b)からは、基板12と触媒金属膜24をグラファイト層26から剥離し、グラファイト層26が露出しているカーボンナノチューブシート10が見て取れる。そして、「カーボンナノチューブ16の一端部にグラファイト層26を設けることにより、被着体との間は面接触となり、被着体に対する接触抵抗を低減することができる。」(【0095】)の記載からは、カーボンナノチューブシート10のグラファイト層26を被着体と接触させることが読み取れる。
そうすると、引用発明の「グラファイト層26」は、上記「3 (2)」に示したように、半導体チップの表面と直接接触していることに相違はなく、上記主張を採用することができない。

6 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年2月20日付けの誤訳訂正書により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由] 1 本件補正」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由] 2 引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比、判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2[理由] 1 本件補正」で検討した「前記第一の表面が前記電子部品の表面に直接配置されている、グラフェンコーティング層(130)」について、「直接」とする限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2[理由] 4 判断」に示したとおり、引用文献1に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明である。

第4 上申書における主張について
審判請求人は、令和2年12月17日提出の上申書において、補正案を提示するとともに、以下のとおり「この補正によって挿入される『グラフェンコーティング層がマイクロワイヤによって結合された複数のグラフェンプレートレットから形成される』という特徴は、引用文献2(当審注:本審決における「引用文献1」)に記載も示唆もされていませんから、この補正によって、補正後の本願請求項1?8に係る発明は引用文献2に対して新規性進歩性も有することになるものと思料致します。」と述べ、補正案により、引用文献1に記載された発明に対して新規性及び進歩性が生じ、前置審査における拒絶理由は解消する旨の主張をしている。

しかしながら、上記「第2」で説示したとおり、本願補正発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明であるから、本件補正は却下すべきものであり、かつ、本願発明は、上記「第3 2」及び「第3 3」で説示したとおり、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された発明であるから、補正の機会を再度与える合理的な理由を見出すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-03 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-02-24 
出願番号 特願2016-556314(P2016-556314)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木下 直哉平林 雅行  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 永井 啓司
須原 宏光
発明の名称 グラフェン系熱管理システム  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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