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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1376215
審判番号 不服2019-6677  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-22 
確定日 2021-07-13 
事件の表示 特願2016-533191「1回限りの使用の生物医学およびバイオ処理システムにおける状態表示のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日国際公開、WO2015/076741、平成29年 2月 9日国内公表、特表2017-504864〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯

本願は,2014年11月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年11月21日(以下,「優先日」という。) アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成28年7月14日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成29年11月2日付けで審査請求がなされ,平成30年9月11日付けで審査官により拒絶理由通知がされ,これに対して同年12月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものの,平成31年1月18日付けで審査官により拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ(謄本送達;同年1月22日),これに対し,令和1年5月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年9月14日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年12月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明

令和2年12月1日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりである。

「使い捨てのバイオ処理コンポーネントであって、
識別子をもたらすように構成された第1の部分であって、前記バイオ処理コンポーネントに一体化された第1の部分と、
前記バイオ処理コンポーネントの状態に基づいて状態表示をもたらすように構成された第2の部分であって、前記バイオ処理コンポーネントに対して取り付け可能な第2の部分と
を備えるセンサを備えており、
前記識別子および状態表示は、バイオ処理プラットフォームのための制御システムによって使用されるべく送信され、
前記バイオ処理コンポーネントは、クランプ、弁、アクチュエータ、スイッチ、コネクタ、およびレバーのうちの少なくとも1つを備えており、
前記状態表示は、前記バイオ処理コンポーネントの第1または第2位置の表示、開/閉状態の表示、オン/オフ状態の表示、および接続/非接続状態の表示のうちの少なくとも1つを含み、
前記センサの前記第1の部分は、無線周波数識別(RFID)タグを備え、
前記センサの前記第2の部分は、無線センサノードを備え、
前記第2の部分は、前記バイオ処理コンポーネントに対して取り付けられることによって前記第2の部分が前記第1の部分に近接させられたときに、前記状態表示を送信するように前記第1の部分を活性化させる、コンポーネント。」

第3 拒絶の理由

当審拒絶理由通知(令和2年9月14日付け拒絶理由)の概要は,次のとおりである。

本願の請求項1?17に係る発明は,以下の引用文献1?5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[引用文献等一覧]
1.特表2011-509685号公報
2.特開2012-243087号公報
3.特開2011-150720号公報
4.特開2005-328230号公報
5.特開2012-130051号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

(1) 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特表2011-509685号公報(平成23年3月31日出願公表。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【0015】
例えば、ある特定の実施形態において、固有の識別子が使用され、製造システムで使用される一もしくはそれより多い構成要素または材質に関連する。「識別子」は以下で非常に細かく説明されるように、識別子を含む構成要素についての「エンコードされた」情報(すなわち、無線周波数識別(RFID)タグもしくはバーコードなどの輸送、保存、生成もしくは搬送装置の情報の使用などにより、情報を輸送もしくは収容する。)である、あるいは、構成要素についてのエンコードされないあらゆる情報である。むしろ、識別子は、例えば、コンピュータ上のデータベースあるいはコンピュータで読み取り可能な媒体上のデータベースに収容される情報にのみ関連付けられる。後半の例において、識別子などを検知することで、データベースから関連付けられた情報を検索及び使用する。構成要素についての情報を用いて「エンコードされた」識別子は必ずしも構成要素についての完全な一式の情報を用いてエンコードされる必要はない。例えば、ある特定の実施形態においては、構成要素に関連する追加の情報(例えば型、使用、所有権、場所、位置、接続性、内容物、等)が隔離して保存され、ただ識別子と関連付けられるのみである一方で、識別子はただ装置の固有識別を可能にするのみにすぎない情報(例えばシリアル番号、パート番号などに関連する)を用いてエンコードされる。ユニット操作部、モジュール、材質あるいは構成要素等に「ついての情報」とは、ユニット操作部、モジュール、材質、あるいは構成要素の同一性、位置付け、又は場所に関する、あるいは、モジュール、ユニット操作部、あるいは構成要素の内容物の同一性、位置付け、または場所に関する任意の情報であり、さらにユニット操作部、材質、構成要素あるいは内容物の性質、状態、あるいは構成に関する情報を含み得る。ユニット操作部、モジュール、または構成要素、あるいはその内容物「についての情報」はユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物を識別し、ユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物を他のものから区別する情報を含み得る。例えば、ユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物が何であるのか、どこにあるのか、どこにあるべきか、どのように置かれているか、位置付けられるべきであるか、ユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物の機能や目的、ユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物がいかに組み立てられるべきか、あるいはシステムの他の構成要素とどのように接続されるべきか、ユニット操作部、モジュール、または構成要素あるいはその内容物等のロット番号、起源、目的、あるいは所有権などを指す情報を表す。」

B「【0018】
一つの態様において、発明は生物薬剤学的製造システムのようなカスタマイズ可能なシステムを構成することに関連する。図1に示された実施形態に見られるように、代表的なカスタマイズ可能な生物薬剤学的製造システム(10)は第1モジュール(20)を備える。このモジュールは生物学的、化学的、あるいは薬学的製造工程を、あるいはこのような工程の作業を実行するように構成されている。第1モジュール(20)は第1ユニット操作部(21)を備え、それは容器であるか、あるいは他の処理装置、またはその構成要素である。任意に、ユニット操作部(21)は収容装置(24)であるユニット操作部に囲まれる。
【0019】
第1ユニット操作部(21)は第1構成要素についての情報にエンコードあるいは関連付けされ得る識別子(22)を含む。一般に、本明細書中に用いられるように、用語「識別子」は、識別子が関連付けられ、あるいは取り付けられるユニット操作部についての情報(例えばユニット操作部またはその構成要素の一もしくはそれより多い同一性、場所、あるいは位置/位置付けを含む情報)を提供することができる任意の項目を指し、あるいは、識別され、検知されることができる任意の項目を指し、そして識別子が関連付けられるユニット操作部についての情報に関連付けられる識別及び検知事象を指す。発明の文脈で用いられる識別子の制約のない例にはとりわけ無線周波数識別(RFID)タグ、バーコード、シリアルナンバー、色つきタグ、蛍光灯、視覚タグ(例えば量子ドットの使用)、化学的化合物、無線タグ、磁性タグを含む。識別子を備え得る生物薬学的製造システムのユニット操作部の制約のない例には、可撓性を有するコンテナ(例えば使い捨て可能な袋体あるいはバイオリアクタのライナー、または混合容器)、再利用可能な支持構造体(例えば使い捨て可能な袋体あるいはバイオリアクタのライナー、または混合容器を収納し、支持するため)、センサ、チューブ、バルブ、試薬コンテナ、撹拌システム(例えば羽根車)、ポート、また柱部、遠心分離機、制御システム構成要素、コンピュータ・ハードウェアまたはソフトウェア構成要素、スパージャ、付属品といった分離装置、あるいはその他製造システムの機能的構成要素を含む。」

C「【0021】
第1モジュール(20)はいくつかの場合において、一識別子を備えるただ一つのユニット操作部(21)を備える。代替的に、ある特定の実施形態においては、第1モジュール(20)は、相互接続されているか、そうでなければ動作可能に互いに関連付けられている識別子を備える複数のユニット操作部を備える。ある特定の実施形態では、ユニット操作部(21)は収容装置(24)に動作可能に関連して位置付けられ得る。本明細書中に用いられるように、一般に、一もしくはそれより多い他のユニット操作部と「動作可能に関連付けられる」以下のことを示す。すなわち、このようなユニット操作部は、直接物理的に接触した状態で互いに直接接続される。このユニット操作部は互いに接続又は取り付けられておらず、あるいは互いに直接的に接続されていない又は互いに接触していない。あるいは、ユニット操作部は機械的、磁気的、電気的(空間を通して伝達された電磁信号を介することを含む)、又は流体的に相互接続あるいは関連付けられることにより、ユニット操作部に十分関連付けられることを可能にし、これにより所望の機能を発揮することができる。いくつかの実施形態では、収容装置(24)は識別子(26)も含む。後述の通り、識別子(22)および(26)の上にエンコードされたあるいは識別子(22)および(26)に関連付けされた情報は、ユニット操作部(21)と収容装置(24)の間の関連の適合性を確認するために使用される。」

D「【0027】
発明のいくつかの実施形態は制御システム(50)の使用を含む。制御システムは、以下に記されたもののうちの特に組立を指示すること、電子収集、そしてデータの記憶、プロセス制御、診断法を含む様々な機能を遂行できるよう構成またはプログラムされ得る。制御システムは随意に他の構成要素と同様に、制御ソフトウェア、1つ以上の警報を任意に実行する1以上のコンピュータを備える。
【0028】
いくつかの実施形態において制御システムは、システム内の識別子を対処あるいは検知するよう構成され、また識別子から識別子に関連付けられたユニット操作部についての情報を獲得するよう構成される、あるいは識別子を検知あるいは感知し次第、識別子(例えば制御システムのコンピュータあるいは別の場所に保存されているデータベースの中にある)の外面に収容された、識別子に関連付けられたユニット操作部についての情報を関連付けるよう、構成される。識別子は活性化され、対処され、そして情報は探知機、あるいは読取機(54)を使用することにより、通信経路(図1において識別子から出る点線によって示されている)を介して識別子から得られる。識別子の活性化、読取、検知などは、採用された特定の識別子の性質に応じて、当業者に知られている様々な方法によって完成されることができる。検出器の制約のない例には特に、RFID読取機、バーコードスキャナー、化学物質検出知器、カメラ、放射線検知器、磁場または電場検知器、マイクを含む。検知の方法及び検知器の適切な型は、利用される特定の識別子により、例えば光学的画像、蛍光励起や検知、質量分析、核磁気共鳴、優先順位付け、交配、電気泳動、分光法、顕微鏡検査等を含むことができる。いくつかの実施形態では、検知器は特定の場所に取り付けられ、あるいは事前に組み込まれるが、他の実施形態では検知器は携帯可能である。いくつかの場合では、検知器は通信経路(図1に一点鎖線によって図示される)を介して制御システム(50)と一体化される。検知器と制御システムの間の通信は、ハードウェアに組み込まれたネットワークに沿って起こる、あるいは、無線で送信される。
【0029】
制御システム(50)によって実行される機能は、少なくとも一部はシステム構成要素の一もしくはそれより多い識別子にエンコードあるいは関連付けされる情報によって決定される。このような情報と関連付けられる、または情報を使用する制御システム機能の制約のない例には特に、構成要素の分離若しくは付随を指揮すること、構成要素の移動を指揮すること、開始、中断、継続、あるいは特定の工程の選択、環境パラメータ(例えば温度、気圧)の調節、化学物質レベルの調節、一あるいはそれより多いアラームを作動させること、データベースまたは自動化されたレポートにデータを追加するまたはデータベースまたは自動レポートからデータを抽出すること、同一性、所有権あるいは、構成要素または物質の信頼性を検証することを含む。」

E「【0034】
識別子の上にエンコードされる、あるいは識別子に関連付けられる情報はまた、例えば、識別子に関連付けられる構成要素が本物か偽造品かを決定するためにも使用される。本発明のいくつかの実施形態では、偽造品の構成要素の存在の決定は、システムのロックアウトを起こす。一つの例においては、識別子は特有の同一性コードを含む。この例においては、工程制御ソフトウェアまたはモジュールは、異質なあるいは不適合の同一性コード(あるいは非同一性コード)が検知された時、システムの再始動を許可しようとしなかった(例えばシステムが機能しなくなる)。識別子がRFIDタグであるならば、例えば(ただしこれらに限られない)、無線周波数識別(RFID)、あるいは、例えばモジュールの上あるいはモジュール内に近い場所、容器の壁部といったシステム内の特定の場所に位置付けられる、他の近接読取機を介して検証が行われ得る。ある特定の実施形態においては、構成要素に接続されたRFID識別子は適切な近接読取機を始動させ、適切なユニット、組立品、材質等が適切な位置にあると示す。同様に、ライナーに組み込まれたRFID識別子は、外部の撹拌機駆動モータ(下の図2の議論を参照)の作動より前に、ライナーが支持容器内に適切に位置していると示すために、支持容器内で読取機と相互作用し得る。製造システムが制御システム(50)を用いて操作される場合においては、システムロックアウトは自動化される。」

F「【0052】
モジュールあるいはモジュールのユニット操作部を備えるバイオリアクタシステムの制約のない例は、図2に図示される。モジュール(100)は例えば可撓性を有するコンテナであり得るコンテナ(118)を含む。コンテナ(118)は識別子(119)を含む。識別子(119)は、例えば、コンテナの壁部に組み込まれる、そうでなければ取り付けられる、コンテナの壁に表示される(例えばバーコードとして)、コンテナに収容される液体中に懸濁される、など様々な方法で、容器(118)に関連付けられる。モジュール(100)はさらに、コンテナ(118)を取り囲み、支持し、また収容する再利用可能な支持構造体(114)(例えばステンレス鋼タンク)を備える。いくつかの場合において、支持構造体(114)は識別子(115)を含む。いくつかの実施形態において、コンテナは折り畳み可能な袋体(例えばポリマ袋体)として構成される。他の実施形態においては、コンテナは剛性のプラスチック製のカーボイ(carboy)といった剛性のコンテナであり得る。加えて、又は代替的に、折り畳み可能な袋体、又は他のコンテナの全て又は一部が、剛性ポリマ、金属、又はガラスなどのほぼ剛性の材料を備えることもある。これらの実施形態のいくつかにおいては、コンテナ(118)は、可撓性を有する壁部分及び基部を備える剛性の部分を持つ折り畳み可能な袋体を備える。いくつかの実施形態において、基部を備える折り畳み可能な袋体の剛性部分は可撓性を有する壁部分に密封される。いくつかの場合において、基部を備える剛性の部分は、シャフトや、あるいは撹拌のための手段(例えば羽根車)を支持するために構成された他のレシーバを含む。コンテナは使い捨て可能で、支持構造体から容易に取り外しできるように構成されている。いくつかの場合では、コンテナは支持構造体と不完全に接続される。
【0053】
折り畳み可能な袋体を用いる際、折り畳み可能な袋体は液体(122)を収容するために構築されるとともに配置され、該折り畳み可能な袋体は化学的、生化学的又は生物学的な反応等の所望の工程を実行するための反応物、培地、有機体又は他の構成要素を収容する。さらに、使用中に液体(122)が折り畳み可能な袋体とのみほぼ接触し、支持構造体(114)とは接触しないように折り畳み可能な袋体が構成されることもある。このような実施例において、袋体は使い捨て可能で、一度の反応又は単一の一連の反応に用いられ、反応後に処分される。折り畳み可能な袋体の液体が支持構造体と接触しないため、支持構造体は洗浄することなく再利用可能である。すなわち、コンテナ(118)で反応が起きた後に、コンテナは支持構造体から切り離され、第2(例えば、使い捨て可能な)コンテナと交換可能である。第1コンテナ又は再利用可能な支持構造体のいずれかを洗浄する必要なく、第2反応は第2コンテナ内で実行可能である。識別子は、操作の取り囲み前及び開始前にモジュールに全ての適切な試薬、構成要素等がそろっていることを検証するためモジュール内外の在庫通路を追跡するために用いられることが可能である。在庫データは在庫を追跡するため、及びバッチの動作におけるそれぞれの構成要素の使用を検証するために用いられることができる。識別子はまた、ユニット操作部あるいは構成要素からの漏れの状況を示す漏れ検知センサと共同するよう、あるいは漏れ検知センサとして働くよう構成され及び採用され得る。例えば、漏れ検知との関連での識別子の使用は特に以下の識別子にとって好都合である。すなわち該識別子とは、本発明システムの折り畳み可能な袋体コンテナに組み込まれるあるいは関連する識別子、あるいは、本発明システムの折り畳み可能な袋体コンテナを収容するあるいは支持する再利用可能な支持構造体に組み込まれるあるいは関連する識別子である。」

2 引用発明

上記A?Fの(特に下線部の)記載から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「生物薬剤学的製造システムであって,用語「識別子」は,識別子が関連付けられ,あるいは取り付けられるユニット操作部の同一性,場所,あるいは位置/位置付けを含む情報を提供することができる任意の項目を指し,識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ,バーコード,を含み,識別子を備え得る生物薬学的製造システムのユニット操作部の例には,可撓性を有するコンテナ(例えば使い捨て可能な袋体,または混合容器),再利用可能な支持構造体,バルブ,を含むものであり,モジュールはいくつかの場合において,一識別子を備えるただ一つのユニット操作部を備え,
「識別子」は識別子を含む構成要素についての「エンコードされた」情報であり,ある特定の実施形態においては,識別子はただ装置の固有識別を可能にするのみにすぎない情報(例えばシリアル番号,パート番号などに関連する)を用いてエンコードされ,ユニット操作部「についての情報」はユニット操作部を識別し,ユニット操作部を他のものから区別する情報を含み得るものであり,例えば,ユニット操作部が何であるのか,どこにあるのか,などを指す情報を表し,
実施形態は制御システムの使用を含み,制御システムは,1以上のコンピュータを備え,制御システムは,システム内の識別子を検知するよう構成され,また識別子から識別子に関連付けられたユニット操作部についての情報を獲得するよう構成されるものであって,情報は探知機,あるいは読取機を使用することにより,通信経路を介して識別子から得られ,検出器の例には,RFID読取機,バーコードスキャナー,を含み,検知器は特定の場所に取り付けられ,検知器と制御システムの間の通信は,無線で送信されるものであって,制御システムによって実行される機能は,少なくとも一部はシステム構成要素の識別子にエンコードあるいは関連付けされる情報によって決定され,このような情報と関連付けられる,または情報を使用する制御システム機能の例には,一あるいはそれより多いアラームを作動させること,を含み,
識別子がRFIDタグであるならば,例えばモジュールの上あるいはモジュール内に近い場所,容器の壁部といったシステム内の特定の場所に位置付けられる,他の近接読取機を介して検証が行われ得て,ある特定の実施形態においては,構成要素に接続されたRFID識別子は適切な近接読取機を始動させ,適切なユニット,組立品,材質等が適切な位置にあると示し,
可撓性を有するコンテナであり得るコンテナは識別子を含み,識別子は,例えば,コンテナの壁部に組み込まれる,コンテナの壁に表示される(例えばバーコードとして),など様々な方法で,容器に関連付けられ,
使用中に液体が折り畳み可能な袋体とのみほぼ接触し,支持構造体とは接触しないように折り畳み可能な袋体が構成されることもあり,このような実施例において,袋体は使い捨て可能で,反応後に処分され,折り畳み可能な袋体の液体が支持構造体と接触しないため,支持構造体は洗浄することなく再利用可能である,生物薬剤学的製造システム。」


3 引用文献2の記載

(1) 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2012-243087号公報(平成24年12月10日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G「【0043】
センサシステム100は、RFIDリーダ9とセンサタグ10とを備える。このセンサシステム100は、温度管理を必要とする物品(例えば医薬品や生鮮食料品)の流通過程で、その物品が許容できない所定温度(この実施形態では0℃)以上に上昇したかどうかを検知する。流通業者等は、その物品に付されたセンサタグ10にRFIDリーダ9をかざすことにより、その物品が廃棄しなければならない状態になったかどうかを判断できる。
【0044】
RFIDリーダ9は、UHF帯パッシブRFID規格の既存のものとする。RFIDリーダ9は、図2(A)(B)に示すように、特定の周波数でRF信号を送信し、センサタグ10の応答からID情報を検波する。
【0045】
センサタグ10は、樹脂製でカード状のケーシング13と、ダイポール型のアンテナ15と、アンテナ15と接続するsensIC16と、ダイポール型のアンテナ17と、アンテナ17と接続するsensIC18と、を備える。センサタグ10は、詳細を後述するが、温度を検知するタグである。ここで、アンテナ15とsensIC16とでRFIDタグ11を構成し、アンテナ17とsensIC18とでRFIDタグ12を構成する。RFIDタグ11、12は、RFIDリーダ9の無線通信エリア内に位置したときに、RFIDリーダ9から送出されている電力搬送波から動作電源を取得し、動作する。
【0046】
アンテナ15、17は、RFIDリーダ9が送信するRF信号に結合する。sensIC16は、UHF帯パッシブRFID規格の汎用ICであり、アンテナ15で受信したRF信号を復調する。そして、sensIC16は、予め記憶しているID情報でRF信号を変調(例えばASK変調)し、アンテナ15を介してRFIDリーダ9へ送信(応答)する。同様に、sensIC18も、UHF帯パッシブRFID規格の汎用ICであり、アンテナ17で受信したRF信号を復調する。そして、sensIC18も、予め記憶しているID情報でRF信号を変調(例えばASK変調)し、アンテナ17を介してRFIDリーダ9へ送信(応答)する。なお、sensIC16とsensIC18とは、異なるID情報を予め記憶している。」

(2) 以上の記載より,引用文献2には,次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえ,当該技術は本願の優先日前周知の構成であったといえる。

「予め記憶しているID情報でRFIDリーダへ応答するタグと,ID情報を検波するRFIDリーダとを備えるセンサシステム」

4 引用文献3の記載

(1) 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2011-150720号公報(平成23年8月4日出願公開。以下,「引用文献3」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

H「【0009】
(発明の要旨)
本発明の実施形態は、(例えば)生物薬剤を製造するための、フレキシブルでかつ効率的な製造システム/プラットフォームに関する。本発明は、例えば、従来のスケールの製造施設(manufacturing suite)(例えば、現在は、薬物もしくは生物学的な製造プロセスの1つ以上の工程のための制御された環境モジュールで置き換えられ得る、別個の環境制御されたクリーンルームを有する施設)において使用される、固定された発酵および処理のための設備に利用可能である。モジュールの動作は、プロセスの汚染の代表的な出所(例えば、人員、多目的の設備、および外気)からの隔離を可能にする。いくつかの実施形態において、環境制御は、空気流、熱、冷気、湿度および圧力のうちの1つ以上を制御するように規定され得る。」

J「【0012】
さらに、本発明のいくつかの実施形態における使い捨て構成要素の使用は、定置洗浄(CIP)および定置滅菌(SIP)の作業に対する必要性を排除することにより、より実用的かつより安価なプラットフォームシステムを可能にし、それによって、流体移動ライン(例えば、蒸気)および対応する必要な操作を最小にする。これらの必要な用役の排除は、重要である。すなわち、モジュールは、製造作業を支援するために、電力および/またはデータの接続、そして、いくつかの場合においては、気体のみを必要とする。」

(2) 以上の記載より,引用文献3には,次の事項(以下,「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえ,当該技術は本願の優先日前周知の構成であったといえる。

「生物薬剤を製造するためのシステムとして,使い捨ての構成要素を使用したプラットフォームシステム」

5 引用文献4の記載

(1) 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2005-328230号公報(平成17年11月24日出願公開。以下,「引用文献4」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K「【0033】
無線センサノード100の自己位置特定手段110は、無線センサノード100のGPSアンテナ181を介して各GPS衛星から搬送波を受信する(S101)。」

L「【0185】
自己位置特定手段110は、無線センサノード100自身の位置を特定する情報を入力する入力手段112を備える。
【0186】
入力手段112は、無線センサノード100の位置を特定する情報を入力するための情報入力装置116を備える。」

M「【0188】
情報入力装置116は、監視対象にある情報を読み取るリーダを備える。
監視対象の持つ情報を読み取るリーダには、非接触型の無線IC(Integrated Circuit)チップと無線通信で情報の送受信を行うRFID(Radio Frequency Identification)リーダ118やバーコードから情報を読み取るバーコードリーダ119などがある。」

(2) 以上の記載より,引用文献4には,次の事項(以下,「引用文献4記載事項」という。)が記載されているといえ,当該技術は本願の優先日前周知の構成であったといえる。

「RFIDリーダを備える無線センサノード」

6 引用文献5の記載

(1) 当審拒絶理由通知に引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2012-130051号公報(平成24年7月5日出願公開。以下,「引用文献5」という。)には,関連する図面とともに,次の記載がある。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

N「【0006】
例えばRFID技術のような現在のRFタグ技術は,電磁波スペクトラムの無線周波(RF)部分における誘導結合又は容量結合を利用している。RFIDリーダは,少なくともアンテナと,受信器と,送信器とを含み,RFIDリーダがRF信号を送受信することができる。RFIDリーダが接触するか,タグの所定の局所範囲内に入ったとき,RF信号がトランスポンダ,すなわち「タグ」を活性化する。タグが活性化されると,情報をRFIDリーダに返送する。より特定すれば,受動型タグの場合(すなわち内部電源を持たない場合),タグはRFIDリーダが発生する時間で変動する電磁RF波によってエネルギーを与えられる。RF場がタグのアンテナコイルを通過すると,コイルに電圧が発生する。この電圧が結局タグに電力を与えるために用いられ,タグがリーダに情報を返送できるようにする。これはときどき,「結合」と呼ばれる。」

(2) 以上の記載より,引用文献5には,次の事項(以下,「引用文献5記載事項」という。)が記載されているといえ,当該技術は本願の優先日前周知の構成であったといえる。

「RFIDリーダが送信するRF信号が,RFIDリーダがタグの所定の局所範囲内に入ったときに情報をRFIDリーダに返送するようにタグを活性化させる」こと

第5 対比

1 本願発明と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

(1) 引用発明は,「生物薬学的製造システムのユニット操作部の例には」「バルブ,を含むもの」であり,また,ユニット操作部は,生物薬学的製造システムのコンポーネントであることは明らかであるから,引用発明のユニット操作部の例である「バルブ」は,生物薬学的製造システムのコンポーネントであるといえる。そして,当該技術分野において「生物薬学的製造システム」の処理の一部として「バイオ処理」が含まれることは,周知である。
してみると,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,“バイオ処理コンポーネント”である点で共通する。

(2) 引用発明は,「識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ」「を含」むものであり,また,RFIDタグの典型的な用途は,RFIDタグに記録された識別子を提供することであることが技術常識であるところ,引用発明における「識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ」が「含」まれることは,上記典型的な用途について述べているものと解されるから,引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」は,“識別子をもたらすように構成された”ものであるといえる。
よって,本願発明の「第1の部分」と引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」とは,“識別子をもたらすように構成された第1の部分”である点において一致する。
さらに,引用発明の「生物薬学的製造システムのユニット操作部」は,「識別子を備え得る」ものであるところ,「識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ」が「含」まれるのであるから,引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」は,ユニット操作部が備えるように構成されたものといえる。
してみると,本願発明の「バイオ処理コンポーネント」と引用発明の「バルブ」とは,後記する点で相違するものの,“識別子をもたらすように構成された第1の部分を備え”ている点で共通する。

(3) 引用発明の「制御システムは」,「識別子に関連付けられたユニット操作部についての情報を獲得するよう構成され」,「情報は」「読取機を使用することにより」「得られ」るものであるから,引用発明の「読取機」は,「ユニット操作部についての情報」をもたらすものであるといえる。
また,引用発明は,「ユニット操作部「についての情報」はユニット操作部を識別し,ユニット操作部を他のものから区別する情報を含み得るものであり,例えば,ユニット操作部が」「どこにあるのか,などを指す情報を表」すものであるところ,引用発明の「ユニット操作部「についての情報」」は,「ユニット操作部がどこにあるのかを指す情報」であるといえ,また,当該「ユニット操作部がどこにあるのかを指す情報」は,ユニット操作部がどこにあるのかというユニット操作部の状態に基づいて,ユニット操作部がどこにあるのかについての状態を表し示す情報であるといえるから,結局,引用発明の「ユニット操作部「についての情報」」は,ユニット操作部がどこにあるのかというユニット操作部の状態に基づいて,ユニット操作部がどこにあるのかについての状態を表し示す情報であるといえる。
よって,引用発明の「読取機」は,ユニット操作部の情報,すなわち,ユニット操作部がどこにあるのかというユニット操作部の状態に基づいて,ユニット操作部がどこにあるのかについての状態を表し示す情報をもたらすように構成されたものであるといえるから,本願発明の「第2の部分」と引用発明の「読取機」とは,“バイオ処理コンポーネントの状態に基づいて状態表示をもたらすように構成された第2の部分”である点において一致する。
さらに,引用発明では,「読取機」は,「モジュールの上あるいはモジュール内に近い場所」に「位置付けられ」,「モジュールはいくつかの場合において、一識別子を備えるただ一つのユニット操作部を備え」るものであるから,引用発明の「読取機」は,ただ一つのユニット操作部を備えるモジュールとともに設けられるものであるといえる。
してみると,本願発明の「バイオ処理コンポーネント」と引用発明の「バルブ」とは,後記する点で相違するものの,“バイオ処理コンポーネントの状態に基づいて状態表示をもたらすように構成された第2の部分がともに設けられて”いる点で共通する。

(4) 引用発明では,「制御システムは」,「システム内の識別子を検知するよう構成され」,「ユニット操作部についての情報を獲得するよう構成され」,「情報は」「通信経路を介して得られ」るものであるところ,引用発明の「識別子」及び「ユニット操作部についての情報」は,制御システムによって使用されることが当然に想定されていると認められ,また,これらの情報を通信経路を介して得る際には,当然に通信経路を介して情報が送信されるものと認められるから,制御システムによって使用されるべく送信されるものであるといえる。
してみると,上記(2)及び(3)の検討も踏まえると,本願発明の「バイオ処理コンポーネント」と引用発明の「バルブ」とは,“識別子および状態表示は,制御システムによって使用されるべく送信され”る点で共通する。

(5) 引用発明は,「生物薬学的製造システムのユニット操作部の例には」「バルブ,を含」むものであるところ,バルブが一般に弁を意味するものであることは明らかである。
してみると,上記(1)の検討も踏まえると,本願発明の「バイオ処理コンポーネント」と引用発明の「バルブ」とは,“バイオ処理コンポーネントは,クランプ,弁,アクチュエータ,スイッチ,コネクタ,およびレバーのうちの少なくとも1つを備えて”いる点で共通する。

(6) 引用発明は,「ユニット操作部「についての情報」はユニット操作部を識別し,ユニット操作部を他のものから区別する情報を含み得るものであり,例えば,ユニット操作部が」「どこにあるのか,などを指す情報を表」すものであるところ,ユニット操作部がどこにあるのかを指す情報は,ユニット操作部が何らかの位置にあることを表し示す情報であるといえることから,ユニット操作部の第1または第2位置の表示を含むものであるといえる。
してみると,上記(1)及び(3)の検討も踏まえると,本願発明の「状態表示」と引用発明の「ユニット操作部「についての情報」」とは,“状態表示は,前記バイオ処理コンポーネントの第1または第2位置の表示,開/閉状態の表示,オン/オフ状態の表示,および接続/非接続状態の表示のうちの少なくとも1つを含む”ものである点で共通する。

(7) 引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」は,「無線周波数識別(RFID)タグ」としての機能を有する何らかの手段を当然に備えているものと認められる。
してみると,上記(2)の検討も踏まえると,本願発明の「第1の部分」と引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」とは,“第1の部分は、無線周波数識別(RFID)タグを備え”るものである点で共通する。

2 上記(1)?(7)の検討から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

バイオ処理コンポーネントであって,
識別子をもたらすように構成された第1の部分を備えており,
前記バイオ処理コンポーネントの状態に基づいて状態表示をもたらすように構成された第2の部分がともに設けられており,
前記識別子および状態表示は,制御システムによって使用されるべく送信され,
前記バイオ処理コンポーネントは,クランプ,弁,アクチュエータ,スイッチ,コネクタ,およびレバーのうちの少なくとも1つを備えており,
前記状態表示は,前記バイオ処理コンポーネントの第1または第2位置の表示,開/閉状態の表示,オン/オフ状態の表示,および接続/非接続状態の表示のうちの少なくとも1つを含み,
前記第1の部分は、無線周波数識別(RFID)タグを備える,
コンポーネント。

(相違点1)

本願発明における「バイオ処理コンポーネント」が,「使い捨て」のものであるのに対し,引用発明のユニット操作部の例である「バルブ」は,そのようなものであることについては特定されていない点。

(相違点2)

本願発明における「第1の部分」が,「バイオ処理コンポーネントに一体化された」ものであるのに対し,引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」は,そのようなものであることについては特定されていない点。

(相違点3)

本願発明における「第2の部分」が,「バイオ処理コンポーネントに対して取り付け可能な」ものであるのに対し,引用発明の「読取機」は,そのようなものであることについては特定されていない点。

(相違点4)

本願発明における「バイオ処理コンポーネント」が,「第1の部分と」「第2の部分」「とを備えるセンサを備えて」いるものであるのに対し,引用発明のユニット操作部の例である「バルブ」は,そのようなものを備えていることについては特定されていない点。

(相違点5)

本願発明における「制御システム」が,「バイオ処理プラットフォームのための」ものであるのに対し,引用発明の「制御システム」は,バイオ処理「プラットフォームのための」ものであることについては特定されていない点。

(相違点6)

本願発明における「第1の部分」及び「第2の部分」が,「センサ」が備えるものであるのに対し,引用発明の「無線周波数識別(RFID)タグ」及び「読取機」は,そのようなものであることについては特定されていない点。

(相違点7)

本願発明における「第2の部分」が,「無線センサノードを備え」るものであるのに対し,引用発明の「読取機」は,そのようなものを備えるものであることについては特定されていない点。

(相違点8)

本願発明における「第2の部分」が,「バイオ処理コンポーネントに対して取り付けられることによって前記第2の部分が前記第1の部分に近接させられたときに、前記状態表示を送信するように前記第1の部分を活性化させる」ものであるのに対し,引用発明の「読取機」は,この点について特定されていない点。

第6 判断

1 相違点1について

引用発明において,「袋体」はユニット操作部の一つの例である。
また,引用発明は,「使用中に液体が」「袋体とのみほぼ接触し,支持構造体とは接触しないように」「袋体が構成されることもあり,このような実施例において,袋体は使い捨て可能で」あるものであるところ,上記「袋体」が使い捨て可能に構成されているのは,使用中に液体が接触するものであるためであると認められる。
引用発明の,ユニット操作部の一つの例である「バルブ」は,上記袋体と同様に,当該バルブを備える生物薬学的製造システムの使用中に液体が接触するものであることが,技術常識から明らかであるところ,当該「バルブ」を,上記袋体と同様に,使い捨てのものとして構成すること,すなわち上記相違点1に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。

よって,相違点1は格別なものではない。

2 相違点2について

引用発明は,「ユニット操作部の例には,可撓性を有するコンテナ」「を含」み,「可撓性を有するコンテナであり得るコンテナは識別子を含み,識別子は,例えば,コンテナの壁部に組み込まれ」,「識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ」「を含」むものであるから,引用発明は,識別子の例である無線周波数識別(RFID)タグが,ユニット操作部の例である可撓性を有するコンテナの壁部に組み込まれて一体化される構成を含むものであるといえる。
引用発明において,「バルブ」及び「可撓性を有するコンテナ」は,いずれもユニット操作部の例である点で,技術的に共通しているから,ユニット操作部の例であるバルブが備える無線周波数識別(RFID)タグについて,技術的に共通する可撓性を有するコンテナにおける無線周波数識別(RFID)タグの上記構成を適用して,バルブに組み込まれて一体化されるように構成すること,すなわち上記相違点2に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。

よって,相違点2は格別なものではない。

3 相違点3について

引用発明は,「ユニット操作部の例には,可撓性を有するコンテナ(例えば使い捨て可能な袋体,または混合容器)」「を含」むものであり,また,引用発明の「読取機」は,「容器の壁部といったシステム内の特定の場所に位置付けられる」ものであるから,引用発明は,ユニット操作部の例である容器の壁部に「読取機」を取り付ける構成を含むものであるといえる。
引用発明において,「バルブ」及び「容器」は,いずれもユニット操作部の例である点で,技術的に共通しているから,ユニット操作部の例であるバルブとともに設けられる読取機について,技術的に共通する容器における読取機の構成を適用して,バルブに取り付け可能な読取機とするとともに,これをバルブに取り付けてバルブが備える読取機となるよう構成すること,すなわち上記相違点3に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。

よって,相違点3は格別なものではない。

4 相違点4及び相違点6について

上記引用文献2記載事項に示したように,予め記憶しているID情報でRFIDリーダへ応答するタグと,ID情報を検波するRFIDリーダとを備えるセンサシステムは,本願の優先日前において,当業者には周知の構成であったことが認められる。
してみると,引用発明においても,「2 相違点2について」及び「3 相違点3について」において検討したように,「無線周波数識別(RFID)タグ」及び「読取機」をバルブが備えるものとして構成するとともに,上記周知の構成を参考とし,これらの「無線周波数識別(RFID)タグ」及び「読取機」について,「無線周波数識別(RFID)タグ」及び「読取機」を備えるセンサとして構成することで,「無線周波数識別(RFID)タグ」及び「読取機」をセンサのものとすること,すなわち上記相違点4及び相違点6に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。

よって,相違点4及び相違点6は格別なものではない。

5 相違点5について

引用発明の「制御システム」は,「生物薬学的製造システム」のための制御システムであるといえる。また,上記引用文献3記載事項に示したように,生物薬剤を製造するためのシステムとして,使い捨ての構成要素を使用したプラットフォームシステムは,本願の優先日前において,当業者には周知の構成であったことが認められる。
引用発明の「製造システム」及び引用文献3に記載された「プラットフォームシステム」は,いずれも使い捨ての構成要素を使用した生物薬学的な製造システムである点で,技術的に共通しているから,引用発明においても,上記周知の構成を参考とし,「製造システム」をプラットフォームとして構成することで,「制御システム」をバイオ処理プラットフォームのためのものとすること,すなわち上記相違点5に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。

よって,相違点5は格別なものではない。

6 相違点7について

上記引用文献4記載事項に示したように,RFIDリーダを備える無線センサノードは,本願の優先日前において,当業者には周知の構成であったことが認められる。
してみると,引用発明においても,上記周知の構成を参考とし,「読取機」を,RFIDリーダを備える無線センサノードとしての構成を備えたものとすること,すなわち上記相違点7に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

7 相違点8について

引用発明は,「制御システムは」「識別子から識別子に関連付けられたユニット操作部についての情報を獲得する」ものであり,「情報は」「読取機を使用することにより」「識別子から得られ」るものであるから,引用発明の「ユニット操作部についての情報」は,読取機を使用することにより,識別子から得ることができるものであるといえる。また,引用発明は,「識別子の例には無線周波数識別(RFID)タグ」「を含」むのであるから,引用発明の「ユニット操作部についての情報」は,読取機を使用することにより,無線周波数識別(RFID)タグから得ることができるものであるといえる。
さらに,上記引用文献5記載事項に示したように,RFIDリーダが送信するRF信号が,RFIDリーダがタグの所定の局所範囲内に入ったときに情報をRFIDリーダに返送するようにタグを活性化させることは,本願の優先日前において,当業者には周知の構成であったことが認められる。
そして,引用発明の「読取機」を,「3 相違点3について」において検討したような,バルブに取り付け可能な読取機として構成する際には,当然に,バルブに対して取り付けられることによって無線周波数識別(RFID)タグからユニット操作部についての情報を得ることが可能な態様とするべきであるといえるから,上記周知の構成を参考とし,読取機が,バルブに対して取り付けられることによって読取機が無線周波数識別(RFID)タグの局所範囲内に入ったときに,ユニット操作部についての情報を読取機に返送するように無線周波数識別(RFID)タグを活性化させるよう構成すること,すなわち上記相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

8 そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明,及び引用文献2?5に記載されたような周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

9 したがって,本願発明は,引用発明,及び引用文献2?5に記載されたような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

第7 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-12 
結審通知日 2021-02-15 
審決日 2021-02-26 
出願番号 特願2016-533191(P2016-533191)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
小林 秀和
発明の名称 1回限りの使用の生物医学およびバイオ処理システムにおける状態表示のためのシステムおよび方法  
代理人 崔 允辰  
代理人 田中 研二  
代理人 飯田 雅人  

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