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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1378426 |
審判番号 | 不服2021-5451 |
総通号数 | 263 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-27 |
確定日 | 2021-10-21 |
事件の表示 | 特願2017-221829「サセプタ、エピタキシャルウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 96639、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年11月17日の出願であって、令和2年12月10日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月23日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和3年3月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年3月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1、2、5、7、8に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものである。また、本願請求項3、4に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。また、請求項6に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。したがって、本願請求項1-8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2011-144091号公報 2.特表2002-502117号公報 3.特開平10-098048号公報 4.特開2007-251078号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって、請求項1に「前記外周支持部が、前記サセプタの周方向における全周に設けられており、」、「前記ザグリは、前記サセプタの上面と前記外周支持部の外周縁との間に前記上面に直角な段差を形成する側壁部と、前記外周支持部の内周縁と前記中央部の外周縁との間に、前記サセプタの上面に対して直角に設けられる段差部とを有し、」、「前記ウェーハの直径は300mmであり、」、「前記サセプタの中心を通り前記サセプタの上面に直角な平面で前記サセプタを切った断面で見て、前記外周支持部の水平方向における寸法が5mm以下であり、」、「前記中央部は水平面を形成するように設けられ、」、「前記サセプタの上面に対する前記中央部の深さは0.8mm?1.8mmである」という事項を追加する補正(以下、それぞれ順に「補正事項1」-「補正事項6」という。)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、当該補正事項1-補正事項6は新規事項を追加するものではないかについて検討する。 補正事項1は、補正前の請求項1の「外周支持部」が「前記サセプタの周方向における全周に設けられて」いることを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 補正事項2は、補正前の請求項1の「ザグリ」が、「前記サセプタの上面と前記外周支持部の外周縁との間に前記上面に直角な段差を形成する側壁部と、前記外周支持部の内周縁と前記中央部の外周縁との間に、前記サセプタの上面に対して直角に設けられる段差部とを有」することを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 補正事項3は、補正前の請求項1の「ウェーハ」の「直径は300mmであ」ることを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 補正事項4は、補正前の請求項1の「外周支持部」の「水平方向における寸法」が「前記サセプタの中心を通り前記サセプタの上面に直角な平面で前記サセプタを切った断面で見て、」「5mm以下であ」ることを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 補正事項5は、補正前の請求項1の「中央部」が「水平面を形成するように設けられ」ていることを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 補正事項6は、補正前の請求項1の「中央部」の「前記サセプタの上面に対する」「深さ」が「0.8mm?1.8mmである」ことを限定する補正であって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、補正事項1-6で追加した上記事項は、当初明細書の段落【0020】、【0022】-【0024】、【0026】に記載されているから、上記追加した事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1、2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和3年4月27日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 ウェーハの表面上にエピタキシャル膜を気相成長させてエピタキシャルウェーハを製造する際に前記ウェーハを載置させるサセプタであって、 前記サセプタの上面に前記ウェーハを載置するための凹形状のザグリが形成されており、 前記ザグリは、前記ウェーハの外周部が接触して支持される外周支持部と、前記外周支持部の内側に位置して前記ウェーハと接触しない中央部とを有しており、 前記外周支持部は、前記中央部に向けて水平方向に対して6°以上9°以下の角度で下がるように傾斜しており、 前記外周支持部が、前記サセプタの周方向における全周に設けられており、 前記ザグリは、 前記サセプタの上面と前記外周支持部の外周縁との間に前記上面に直角な段差を形成する側壁部と、 前記外周支持部の内周縁と前記中央部の外周縁との間に、前記サセプタの上面に対して直角に設けられる段差部とを有し、 前記ウェーハの直径は300mmであり、 前記サセプタの中心を通り前記サセプタの上面に直角な平面で前記サセプタを切った断面で見て、前記外周支持部の水平方向における寸法が5mm以下であり、 前記中央部は水平面を形成するように設けられ、 前記サセプタの上面に対する前記中央部の深さは0.8mm?1.8mmであることを特徴とするサセプタ。」 なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同じ。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体基板上に気相成長させる際に用いる気相成長装置において、半導体基板を支持する気相成長用サセプタ及び気相成長方法に関する。」 【背景技術】 【0002】 エピタキシャル成長技術は、バイポーラトランジスタやMOSLSI等の集積回路の製造に用いられる単結晶薄膜層を気相成長させる技術であり、清浄な半導体単結晶ウェーハ上に基板の結晶方位に合わせて均一な単結晶薄膜を成長させたり、ドーパント濃度差が大きい接合の急峻な不純物勾配を形成させたりできるので、極めて重要な技術である。 【0003】 このような気相成長を行うための装置としては、縦型(パンケーキ型)、バレル型(シリンダー型)、さらに横型の3種類が一般的である。これらの成長装置の基本的な原理は共通しており、半導体基板を載置するための気相成長用サセプタを内部に備えた反応炉や、反応炉の外部に設けられるハロゲンランプ等からなる加熱手段等を備えて構成され、縦型のうち1枚ずつ処理する装置を枚葉式気相成長装置と呼んでいる。 【0004】 枚葉式気相成長装置は、半導体基板を支持する略円盤状のサセプタを備えており、サセプタ上の半導体基板を両面側から加熱しつつ主表面上に反応ガスを供給することで単結晶薄膜を気相成長させる構成になっている。 【0005】 このような、気相成長装置に用いるサセプタの部分断面図を図5(a)に、平面概略図を図5(b)に示す。図5(b)に示すように、サセプタ100には主表面の中央部に、略円形のザグリ103を有しており、このザグリ103内に半導体基板Wを載置する。図5(a)、(b)に示すザグリ103は、凹形状であって最外周の垂直な側壁102と基板を支持する底面101とからなる。 このようなサセプタ100のザグリ103内に半導体基板Wを載置する際、半導体基板Wとザグリ103との間に介在する雰囲気ガスのために、半導体基板Wがザグリ103内で横滑りして、偏心した位置に載置されることがある。このようになると、半導体基板Wの外周縁と側壁102との距離にバラツキが生じ、半導体基板Wの外周縁付近のガスフローが不均一になって、半導体基板Wの外周領域に成長させる単結晶薄膜の膜厚分布が悪化することがある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 半導体基板として直径300mmのシリコンウェーハを多く使用するようになってから、デバイス製造プロセスでウェーハ割れが多く発生するようになった。これは、ハロゲンランプ等で急速な昇降温を行うRTA(Rapid Thermal Annealing)炉を用いた熱処理工程など、シリコンウェーハに強い応力を与えるデバイス製造工程が増えたためと考えられる。このようなウェーハ割れはシリコンウェーハの外周縁に発生したキズを起点として発生することがある。この割れの起点となるキズは、基板を上記のようなサセプタに載置した際に基板外周縁に生じやすいという問題がある。 【0009】 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、気相成長中の半導体基板の外周縁のキズを低減することで割れを防止し、さらには、半導体基板の偏心を抑制することで、成長させる単結晶薄膜の膜厚分布の悪化を防止できる気相成長用サセプタ及びそれを用いた気相成長方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 上記目的を達成するために、本発明は、気相成長装置において半導体基板を載置する凹形状のザグリを有する気相成長用サセプタであって、少なくとも、前記ザグリは底面と側壁とからなり、前記側壁は、周縁の一部に、前記ザグリ中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状又は曲線状の断面形状を含む傾斜側壁が形成され、前記側壁の残りの周縁には、前記傾斜側壁が形成されていないものであることを特徴とする気相成長用サセプタを提供する。 ・・・ 【0016】 このとき、前記底面の外周領域に、前記ザグリ中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面が形成され、前記底面の外周領域に囲まれた中央領域に、前記基板支持面よりも深さが深い凹状の中央面が形成されたものであることが好ましい。 このように、底面の外周領域に、ザグリ中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面が形成され、底面の外周領域に囲まれた中央領域に、基板支持面よりも深さが深い凹状の中央面が形成されたものであれば、気相成長中のスリップ転位や半導体基板の裏面のキズの発生も防止して、半導体基板の割れをより低減することができるサセプタとなる。」 「【0021】 本発明の気相成長用サセプタを用いることができる枚葉式気相成長装置を図3に示す。 図3に示す枚葉式気相成長装置12は、気相成長させるシリコン単結晶ウェーハなどの半導体基板Wが内部に配置される反応炉18を備えている。 この反応炉18は頂壁19、底壁20および側方壁21、21’を有する反応室を有する。頂壁19と底壁20は、例えば透光性の石英で形成される。側方壁21には、反応炉18内にエピタキシャル成長用の反応ガス25を供給するためのガス供給口23が、側方壁21’には、反応炉18から反応ガスを排出するためのガス排出口24が形成されている。ガス供給口23には、所定の組成及び流量で反応ガス25を供給するガス供給装置(図示せず)が接続されている。なお、反応ガス25としては、例えばシリコン単結晶ウェーハ上にシリコン単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際には、原料ガスであるトリクロロシランガスとキャリアガスである水素ガスとの混合ガスを用いることができる。」 「【0023】 本発明の気相成長用サセプタ10は、例えば図1、2に示すように、凹形状のザグリ11を有する気相成長用サセプタ10であって、ザグリ11は底面13と側壁14とからなり、側壁14は、周縁の一部に、ザグリ11中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状又は曲線状の断面形状(図2のA-A’断面、図1(a))を含む傾斜側壁15が形成され、側壁14の残りの周縁には、傾斜側壁15が形成されていない(図2のB-B’断面、図1(b))ものである。 【0024】 このように、ザグリ11の側壁14の一部に形成された傾斜側壁15により、半導体基板Wがザグリ内で偏心するのを抑制して、成長させる単結晶薄膜の膜厚分布の悪化を防止しながら、傾斜側壁15が形成されていない領域での半導体基板Wの外周縁へのキズの発生を低減できる。 このような本発明の気相成長用サセプタ10に半導体基板Wを載置する際に、機械的強度が弱い部分が傾斜側壁15に接触しないように載置することが好ましい。たとえば、結晶面(100)で切り出されたシリコン単結晶ウェーハの場合、結晶方位<110>に対応する外周縁付近の機械的強度が最も強い。このため、結晶面(100)で切り出されたシリコン単結晶ウェーハの場合、結晶方位<100>に対応する外周縁付近にキズが入るとウェーハ割れが発生しやすい傾向があるため、当該結晶方位<100>の外周縁部付近が傾斜側壁15が形成されていない領域に対応するようにウェーハを載置することで、ウェーハの機械的強度の弱い結晶方位の外周縁部キズを減らすことができる。これにより、デバイス製造工程でのウェーハの割れを効果的に防止することができる。」 「【0028】 図2に示す側壁14の周縁の傾斜側壁15が形成されていない領域のB-B’断面としては、特に限定されず、載置する半導体基板Wが偏心しても傾斜側壁15のみに接触するように形成されていればよく、例えば図1(b)に示すような垂直の断面とすることができる。」 「【0032】 また、図1、2、4、8に示すように、底面13の外周領域に、ザグリ11中心に向かって深さが増すようにゆるやかに傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面16が形成され、底面13の外周領域に囲まれた中央領域に、基板支持面16よりも深さが深い凹状の中央面17が形成されたものであることが好ましい。 これにより、気相成長中のスリップ転位や半導体基板Wの裏面のキズの発生も防止して、基板Wの割れをより低減することができるサセプタ10となる。 【0033】 このような基板支持面16の傾斜角としては、例えば10度以下にするのが好適である。載置する半導体基板Wは基板支持面16で支持されるため、上記のような傾斜角であれば、半導体基板Wと基板支持面16との接触面積が増大して、面積あたりの荷重が低減し、スリップ転位発生をより抑制することができる。また、基板支持面16の傾斜角が小さすぎると、半導体基板Wの中心側にサセプタ10との接触キズが発生する場合もあるため、0.3度以上は傾斜させることが好ましい。このような傾斜角度は、気相成長条件に合わせて最適な角度に調整することが好ましい。 また、図1(a)に示すように、中央面17は、縦断面視U字状に形成されることができ、気相成長の際に半導体基板Wの裏面と接触しない深さに窪んだものとすることができる。 【0034】 なお、本発明のサセプタは、半導体基板をザグリの底面の基板支持面により接触して支持するものである。また、本発明のサセプタのザグリの側壁は、搬送時等にザグリの外へ基板が出ないようにするためのものである。そして、側壁の一部を成す傾斜側壁は、基板支持面に載置された半導体基板が偏心した場合には接触して所定位置に戻して、基板の偏心を抑制する。このような基板の偏心抑制や飛び出し防止の目的から、傾斜側壁は基板支持面よりも大きい傾斜角を有する。」 「【0039】 これらのサセプタ10の傾斜側壁を、図2に示すように、ザグリ中心となす中心角αが30度の範囲の周縁領域に、回転対称に4か所形成した。 そして、これらのサセプタ10に結晶面(100)で、結晶方位<110>にノッチを形成した直径300mmのシリコン単結晶ウェーハを載置した。載置する際には、ウェーハのノッチ位置を0度としたとき、ウェーハの外周の15?75、105?165、195?255、285?345度の領域が、側壁14の傾斜側壁15が形成されていない周縁領域(中心角βが60度で、合計が240度)に対応するように載置した。」 また、図1、2は、それぞれ「本発明の気相成長用サセプタの実施態様の一例を示す部分断面図」、「本発明の気相成長用サセプタの実施態様の一例を示す平面図」(段落【0019】)であり、以下のとおりのものである。 図1(a)、(b)より、ザグリ11が、サセプタ10の上面に形成されていること、サセプタ10は、半導体基板Wの外周部を、ザグリ11の底面の基板支持面16により接触して支持すること、中央面17は、基板支持面16の内側に位置していること、側壁14は、サセプタ10の上面と基板支持面16の外周縁との間に段差を形成していることが見てとれる。 また、図1(a)、(b)、2より基板支持面16が、サセプタ10の周方向における全周に設けられていることが見てとれる。 (2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 気相成長用サセプタ10は、シリコン単結晶ウェーハなどの半導体基板W上にシリコン単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際に用いる(【0021】)。 b 側壁14は、サセプタ10の上面と基板支持面16の外周縁との間に段差を形成しており、側壁14の傾斜側壁15が形成されていない領域は、垂直な断面とする(【0028】及び図1(b))。 c 中央面17は、基板支持面16の内側に位置し、気相成長の際に半導体基板Wと接触しない深さに窪んだものである(【0033】及び図1(a))。 (3)上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「気相成長装置において半導体基板Wを載置する凹形状のザグリ11を、上面に有する気相成長用サセプタ10であって、少なくとも、 ザグリ11は底面13と側壁14とからなり、側壁14は、周縁の一部に、ザグリ11中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状又は曲線状の断面形状を含む傾斜側壁15が形成され、側壁14の残りの周縁には、傾斜側壁15が形成されていないもので、 底面13の外周領域に、ザグリ11中心に向かって深さが増すようにゆるやかに傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面16が形成され、底面13の外周領域に囲まれた中央領域に、基板支持面16よりも深さが深い凹状の中央面17が形成されたものであり、 シリコン単結晶ウェーハなどの半導体基板W上にシリコン単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際に用いるものであり、 側壁14は、サセプタ10の上面と基板支持面16の外周縁との間に段差を形成しており、側壁14の傾斜側壁15が形成されていない領域は、垂直な断面とされ、 基板支持面16は、サセプタ10の周方向における全周に設けられており、 基板支持面16の傾斜角は、0.3度以上10度以下であり、 中央面17は、基板支持面16の内側に位置し、気相成長の際に半導体基板Wと接触しない深さに窪んだものであり、 半導体基板Wの外周部を、ザグリ11の底面の基板支持面16により接触して支持するものであり、 半導体基板Wの直径は300mmである、気相成長用サセプタ10。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 (技術分野) 本発明は、一般的には半導体加工の分野に関し、より具体的には基板の背面との接触を最小限にする半導体基板処理のためのウェーハキャリヤ及び半導体装置に関する。」 「【0009】 より具体的には、基板との表面接触をできるだけなくしそれによって基板の背面への金属汚染と表面の損傷をできるだけなくすウェーハキャリヤを提供することが本発明の目的である。」 「【0017】 ウェーハキャリヤは、図2及び図3に関してより詳細に示される。ウェーハキャリヤ40は、プレート42の周辺部に延びる平坦端部分領域44と円形の窪んだ中央部領域45を有する円形のプレート42から構成される。窪んだ中央部領域45は、窪んだ底面46及び窪んだ底面46の周辺部の周りの上方に傾斜した面48から構成される。窪んだ中央部45の縁端領域49は、窪んだ底面46の平面に垂直である。不可欠ではないが、少なくとも1つの開口50が円形の窪んだ領域45の底面46に配設されるのが望ましい。その開口は、ウェーハをウェーハキャリヤから受け取ったり取り外したりするためにウェーハに係合するピン(示ぜず)を受け入れる。 【0018】 基板又はウェーハを支持するために、図4に示されるように、基板が窪んだ中央部領域45に置かれる。とりわけ長所となるのは、本発明のウェーハキャリヤは、ウェーハをその周縁エッジのみで支持するようになっていることである。特に、基板は中央部領域に置かれて上方に傾斜した面48の部分によりその周縁部で支持される。ウェーハとウェーハキャリヤの間の唯一の接触は傾斜した面上で起こり、そこでウェーハのエッジの曲面がキャリヤの上に載る。ウェーハの背面の残り(つまりウェーハの周縁エッジを除いた残り)は底面46から間隔を置いて配置されるのでウェーハキャリヤとは接触しない。他の実施形態では、傾斜面は、ウェーハがキャリヤの底に上下方向の間隔を保って確実に接触するのに十分な半径方向の距離で、延びるようにすることができる。」 「【0020】 図4に示されるように、とりわけ有利なのは、ウェーハが窪んだ中央部45の傾斜面48により支持されるウェーハエッジ50の周縁部に沿ってのみウェーハキャリアと接触することである。点接触または線接触が、従来のキャリヤにおける平面接触とは異なって、ウェーハとの接触を最小限にする。面接触を最小限にすることによって、本発明は、表面損傷及び金属汚染の可能性を実質的に減少させる。・・・ 【0021】 ウェーハキャリヤには様々な大きさの基板を収納できる。ウェーハキャリヤは、200mm又は300mmのウェーハを収納するためにそれぞれ約200mm又は300mmの直径を備える円形の中央部領域45を有することが望ましいと考えられる。しかしながら、中央の窪んだ部分の直径はどのような大きさであってもよい。窪んだ中央部45の縁端領域49は支持されるべきウェーハの厚さと一致することが望ましいと考えられる。例えば、縁端領域49は、300mmウェーハに対しては約0.75mmから0.80mmの深さを有することになるはずである。 【0022】 ウェーハを支持するためには、上方に傾斜した面48は、ウェーハの背面との接触が最小限になるよう選定される角度で傾斜されることが望ましい。ウェーハの裏側の縁端面50は大体半円形の断面を備えて曲成される。本発明では、曲がったウェーハエッジ50上でのみウェーハと接触し、その周縁でウェーハと線接触をする傾斜した接触面を備える。上方に傾斜した面48は窪んだ底面46の平面に対して約5度から45度の範囲の角度で傾斜しているのが望ましいが、約10度の角度が最も望ましい。」 「【0025】 ウェーハの背面と窪んだ底面46との間に間隔をとることは、様々な理由で大切であるということを発明者達は発見した。第一に、熱伝達に対する間隔をとることの効果が考慮されなければならない。第二に、重量や,温度勾配や取り扱いによるウェーハの撓みが評価されなければならない。これらの条件は、約0.15mmから0.5mmまでの範囲で、300mmのウェーハに対して最も望ましい0.25mmの間隔で、ウェーハの背面と窪んだ底面46との間の間隔を付与することにより、本発明に合致する。」 図4は、以下のとおりのものである。 3.引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、半導体ウエハーに各種熱処理、蒸着処理を施すときに用いられるウエハー熱処理装置に関する。」 「【0006】この発明は上記問題に鑑み、ウエハーの外周端部を支持体の傾斜面により水平に支持して熱処理するので、結晶転移の生じる部分が少なくなり、ウエハー全体を均一に熱処理することができるウエハー熱処理装置の提供を目的とする。」 「【0023】前述した支持体8は、図2、図3に示すように、熱伝導性が良く、耐熱性の高い炭化ケイ素(SiC)により形成され、或いは、その表面をコーティング処理(SiC-CVDコート)して構成されると共に、所定サイズにカットされたウエハーAの外周端部Aaと対向するリング形状であって、その外周端部Aaが水平に支持される大きさ及び形状に部材本体8aを形成している。部材本体8aの内周部は、ウエハーAの外周端部Aaよりも若干小径に形成され、その外周部は、ウエハーAの外周端部Aaよりも若干大径に形成されている。 【0024】且つ、部材本体8aの上面側内周部には、ウエハーAの外周端部Aaを支持する傾斜面8bを円周方向に連続して形成すると共に、その傾斜面8bを、外周側から内周側に向けて低くなる角度(例えば、約10度?約30度)に斜設している。部材本体8aの下面側外周部には、後述する昇降台9の各支持軸9b…と対向して各孔部8c…を形成している。」 「【0031】さらに、支持体8の傾斜面8bを、例えば、約10度?約30度となる角度に斜設することで、ウエハーAの載置位置及び載置姿勢が安定すると共に、傾斜面8bと線接触するウエハーAの外周端部Aaに対して、支持体8自体に伝導された熱が効率よく熱伝導されるため、ウエハーAの外周端部Aaを均一に熱処理することができる。また、支持体8又は傾斜面8bを炭化ケイ素により構成した場合、炭化ケイ素は熱伝導性が良いため、熱処理時に於いて、支持体8自体の熱がウエハーAに直接伝導され、熱損失が少なく、ウエハーAの熱処理が効率よく行える。」 4.引用文献4について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、気相成長方法に係り、例えば、エピタキシャル成長方法における成長条件を規定した方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、上述したシリコンウェハ200の直径より若干大きめの径のザグリ穴が形成されているホルダ210にシリコンウェハ200を載置して回転させると、その遠心力からシリコンウェハ200は、シリコンウェハ面と平行な方向に移動し、ザグリ穴の側面の一部分に寄ってしまう。ここで、IGBT等のパワー半導体の製造に必要な数10μm以上、例えば、50μm以上の膜厚のシリコンエピタキシャル膜を形成する場合、上述したホルダ210では、シリコンウェハ200の側面部分に成長したシリコンエピタキシャル膜とホルダ210のザグリ穴の側面に堆積した膜とが接触し、くっ付いて(接着して)しまい、シリコンウェハ200を搬送する際にシリコンウェハ200がホルダ210に貼り付いてしまうといった現象が発生する問題があった。」 「【0039】 図4は、ホルダにシリコンウェハが支持された状態の一例を示す上面図である。 図5は、図4に示すホルダにシリコンウェハが支持された状態の断面を示す断面図である。 ホルダ110には、2段ザグリ穴が形成される。すなわち、シリコンウェハ101の径よりも大きい径でシリコンウェハ101の厚さの半分強の深さまで掘り込んだ第1のザグリ穴114が形成され、第1のザグリ穴114の底面から、シリコンウェハ101の径よりも若干大きい径で、かつ第1のザグリ穴114の径より小さい径でシリコンウェハ101の厚さの半分より小さい値の深さまで掘り込んだ第2のザグリ穴116が形成されている。 そして、第2のザグリ穴116の底面でシリコンウェハ101が支持されている。ホルダ110が回転し、その遠心力からシリコンウェハ101がシリコンウェハ面と平行な方向に移動した場合、第2のザグリ穴116の側面の上端部が、シリコンウェハ101外周部のベベル部下部の面に当接することで、シリコンウェハ101が、外れることを抑制することができる。万が一、シリコンウェハ101が、第2のザグリ穴116の側面の上端部を乗り越えて移動した場合には、第1のザグリ穴114の側面がシリコンウェハ101の側面に当接することで、シリコンウェハ101が、外れることを抑制することもできる。」 「【0041】 図6は、シリコンウェハ外周部と第1と第2のザグリ穴とを示す断面図である。 図6に示すように、第1のザグリ穴114の底面の高さが、シリコンウェハ101のベベル部下面側に位置するように第2のザグリ穴116を掘り込む深さλ1を設定することが望ましい。例えば、図6における寸法λ1は、シリコンウェハ101の厚さの20?40%が望ましい。 【0042】 具体的には、例えば、直径200mmのシリコンウェハの場合、厚さtが0.725mmなので、λ1=0.2±0.05mmが望ましい。また、第1のザグリ穴114を掘り込む深さλ2は、シリコンウェハ101の厚さの50?65%が望ましい。また、例えば、直径200mmのシリコンウェハの場合、厚さtが0.725mmなので、λ2=0.4±0.05mmが望ましい。また、λ1:λ2≒1:2が望ましい。そして、シリコンウェハ101の裏面に接触して保持する第2のザグリ穴116の底面の半径方向長さL2は、従来より若干長くして1?4mmが望ましい。 【0043】 また、第2のザグリ穴116の底面の半径方向長さL1は、原料ガスによりシリコンウェハ101表面に成膜されるシリコンエピタキシャル膜の膜厚の2倍以上の寸法に形成されることが望ましい。例えば、120μm成膜する場合には、240μm、すなわち、0.24mm以上とすることが良い。シリコンウェハ101表面に成膜されるシリコンエピタキシャル膜の膜厚の2倍以上の寸法に形成することにより、シリコンウェハ101の側面から成長してきた膜と第1のザグリ穴114の側面からシリコンウェハ101側に成長してくる膜との接触を回避することができる。例えば、L1は、1mmとする。」 図5、6は、以下のとおりのものである。 5.その他の文献について また、国際公開第2009/084154号(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、単結晶基板上にエピタキシャル層を積層するエピタキシャル成長装置において、エピタキシャル成長時に単結晶基板を支持するためのエピタキシャル成長用サセプタ(以下では、単にサセプタと言うことがある)に関する。」 「[0009] 本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、単結晶基板の裏面の外周側において、局所的に著しいデポが発生するのを防止することができるエピタキシャル成長用サセプタを提供することを目的とする。」 「[0021] 以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 図1に、本発明のエピタキシャル成長用サセプタの一例の概略を示す。図1(A)が平面図であり、図1(B)はサセプタの一部の範囲における断面図である。また、図1(C)は他のサセプタの一部の範囲における断面図である。 図1に示すように、まず、本発明のサセプタ6には、内部に単結晶基板2を収容し、水平に支持するためのザグリ10が形成されている。そして、このザグリ10は、外周領域11と、該外周領域11に囲まれた中央領域12を有している。 外周領域11はテーパ形状であり、この外周領域上に、エピタキシャル成長が施される単結晶基板2が当接して水平に支持されるようになっている。一方、中央領域12は、単結晶基板2が接触しないように、外周領域11よりも深い位置に形成されている。」 「[0024] また、中央領域12の形状(面形状)であるが、これは、外周領域11に当接して支持される単結晶基板2と接触していなければ良く、特に限定されない。例えば平坦な形状とすることが可能である。図2(A)に中央領域12が平坦な場合の一例を示す。」 「[0026] 次に外周領域11について述べる。外周領域11は、図1(B)に示すように、傾斜角θが0°より大きく1°未満で傾斜したテーパ形状となっており、中央領域12に向かって深さが増すように形成されている。単結晶基板2を支持する場合、単結晶基板2の裏面の外周部と当接する。」 「[0031] また、外周領域11と中央領域12の境界について述べると、図1(B)に示すように、外周領域の内縁15と前記中央領域の外縁16の深さが一致しているか、あるいは、図1(C)に示すように外周領域の内縁15から前記中央領域の外縁16に向かって深さが増すように0.05mm未満の高さの段差13が形成されているものが好ましい。すなわち、外周領域11から中央領域12にかけての深さ方向の変化が0.05mm未満に抑えられているものが良い。 [0032] 本発明のように外周領域11の傾斜角が1°未満の場合、上記外周領域11から中央領域12にかけての深さ方向の変化を0.05mm未満に抑えたものとすることで、エピタキシャル成長時に、単結晶基板2の裏面の、ザグリ10の外周領域11と中央領域12の境界に相当する部分に変位が生じてナノトポロジーの悪化が生じるのを効果的に防ぐことができる。 なお、図1(C)のように、外周領域の内縁15から前記中央領域の外縁16に向かって深さが増すように0.05mm未満の高さの段差13が形成されているものであれば、単結晶基板2の裏面から、中央領域12の貫通孔14を比較的距離をおくことができ、単結晶基板2の裏面に、貫通孔14に対応した転写が形成されることを効果的に防ぐことが可能である。」 図1は、以下のとおりのものである。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「シリコン単結晶ウェーハなどの半導体基板W」、「ザグリ11」、「気相成長用サセプタ10」、「側壁14」、「基板支持面16」、「中央面17」は、それぞれ本願発明1における「ウェーハ」、「ザグリ」、「サセプタ」、「側壁部」、「外周支持部」、「中央部」に相当ないし対応する。 イ また、引用発明は、「気相成長装置において半導体基板Wを載置する凹形状のザグリ11を、上面に有する気相成長用サセプタ10」であって、「シリコン単結晶ウェーハなどの半導体基板W上にシリコン単結晶薄膜をエピタキシャル成長させる際に用いるもの」であるから、本願発明1と引用発明とは、「ウェーハの表面上にエピタキシャル膜を気相成長させてエピタキシャルウェーハを製造する際に前記ウェーハを載置させるサセプタ」であって、「前記サセプタの上面に前記ウェーハを載置するための凹形状のザグリが形成されて」いる点で一致する。 ウ また、引用発明において、「ザグリ11は底面13と側壁14とからなり」、「底面13の外周領域に、ザグリ11中心に向かって深さが増すように傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面16が形成され、底面13の外周領域に囲まれた中央領域に、基板支持面16よりも深さが深い凹状の中央面17が形成されたものであり」、「中央面17は、基板支持面16の内側に位置し、気相成長の際に半導体基板Wと接触しない深さに窪んだものであり、半導体基板Wの外周部を、ザグリ11の底面の基板支持面16により接触して支持するもの」であるところ、ザグリ11は、半導体基板Wの外周部が接触して支持される基板支持面16と、基板支持面16の内側に位置して半導体基板Wと接触しない中央面17とを有しているといえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記ザグリは、前記ウェーハの外周部が接触して支持される外周支持部と、前記外周支持部の内側に位置して前記ウェーハと接触しない中央部とを有して」いる点で一致する。 エ 更に、引用発明において、「底面13の外周領域に、ザグリ11中心に向かって深さが増すようにゆるやかに傾斜したテーパ状の断面形状を含む基板支持面16が形成され、底面13の外周領域に囲まれた中央領域に、基板支持面16よりも深さが深い凹状の中央面17が形成されたもの」であるところ、基板支持面16は、中央面17に向けて水平方向に対して下がるように傾斜しているといえる。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記外周支持部は、前記中央部に向けて水平方向に対して」「下がるように傾斜している点で共通するといえる。 オ 更に、引用発明において、「基板支持面16は、サセプタ10の周方向における全周に設けられて」いるから、本願発明1と引用発明とは、「前記外周支持部が、前記サセプタの周方向における全周に設けられて」いる点で一致する。 カ 更に、引用発明において、「側壁14は、サセプタ10の上面と基板支持面16の外周縁との間に段差を形成しており、側壁14の傾斜側壁15が形成されていない領域は、垂直な断面とされ」るから、本願発明1と引用発明とは、「前記ザグリ」は、「前記サセプタの上面と前記外周支持部の外周縁との間に前記上面に直角な段差を形成する側壁部」を有する点で一致する。 キ 更に、引用発明において、「半導体基板Wの直径は300mmである」から、本願発明1と引用発明とは、「前記ウェーハの直径は300mmである」点で一致する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「ウェーハの表面上にエピタキシャル膜を気相成長させてエピタキシャルウェーハを製造する際に前記ウェーハを載置させるサセプタであって、 前記サセプタの上面に前記ウェーハを載置するための凹形状のザグリが形成されており、 前記ザグリは、前記ウェーハの外周部が接触して支持される外周支持部と、前記外周支持部の内側に位置して前記ウェーハと接触しない中央部とを有しており、 前記外周支持部は、前記中央部に向けて水平方向に対して下がるように傾斜しており、 前記外周支持部が、前記サセプタの周方向における全周に設けられており、 前記ザグリは、 前記サセプタの上面と前記外周支持部の外周縁との間に前記上面に直角な段差を形成する側壁部を有し、 前記ウェーハの直径は300mmである、サセプタ。」 <相違点> <相違点1> 「外周支持部」の傾斜について、本願発明1は、「前記外周支持部」は、「6°以上9°以下の角度」で傾斜しているのに対して、引用発明は、「基板支持面16の傾斜角は、0.3度以上10度以下」である点。 <相違点2> 本願発明1は、「前記外周支持部の内周縁と前記中央部の外周縁との間に、前記サセプタの上面に対して直角に設けられる段差部」を有するのに対し、引用発明は、基板支持面16と中央面17との間に、係る構成を有していない点。 <相違点3> 「外周支持部」の水平方向の寸法について、本願発明1は、「前記サセプタの中心を通り前記サセプタの上面に直角な平面で前記サセプタを切った断面で見て、前記外周支持部の水平方向における寸法が5mm以下である」のに対して、引用発明は、基板支持面16の水平方向の寸法について特定がない点。 <相違点4> ザグリが有する「中央部」について、本願発明1は、「前記中央部は水平面を形成するように設けられ、前記サセプタの上面に対する前記中央部の深さは0.8mm?1.8mmである」のに対して、引用発明において、中央面17は、「基板支持面16よりも深さが深い凹状の中央面17」であり、また、中央面17の深さの特定がない点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1について まず相違点1について検討する。 第5の2.で摘記した引用文献2の段落【0020】、【0022】に記載のように、引用文献2では、ウェーハを支持する上方に傾斜した面48は、ウェーハとの背面との接触が最小限になるように選定される角度で傾斜され、その傾斜角の範囲として5°?45°としている。 また、引用文献3、4及び周知例1では、ウェーハを支持する面の傾斜角として、それぞれ約10°から約30°、0°(水平)、0°より大きく1°未満となっており、いずれも本願発明1において、外周支持部が傾斜する「角度」の「6°以上9°以下」の範囲外となっている。 そうすると、相違点1に係る本願発明1の「前記外周支持部」は、「6°以上9°以下の角度」で傾斜しているという構成は、引用文献2?4及び周知例1には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。 加えて、引用発明は、第5の1.で摘記した引用文献1の段落【0033】に記載のように、基板支持面16の傾斜角を10°以下とすることにより、半導体基板Wと基板支持面16との接触面積が増大して、面積あたりの荷重が低減し、スリップ転位発生をより抑制するものであるから、半導体基板Wとの接触面積を増大することを目的とする引用発明において、「0.3度以上10度以下」である「基板支持面16の傾斜角」として、ウェーハの背面との接触面積を最小化することを目的とする引用文献2における傾斜角の範囲を採用することには動機付けはなく、むしろ、阻害要因がある。 したがって、当業者といえども、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項及び周知例1に基づいて、相違点1に係る本願発明1の「前記外周支持部」は、「6°以上9°以下の角度」で傾斜しているという構成を容易に想到することはできない。 イ したがって、上記相違点2?4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項及び周知例1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の「前記外周支持部は、前記中央部に向けて水平方向に対して6°以上9°以下の角度で下がるように傾斜している」と同一の構成を備えているものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-4に記載された技術的事項、及び周知例1に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 1.理由1(特許法第29条第2項)について 本願発明1、2は、「前記外周支持部」は、「6°以上9°以下の角度」で傾斜しているという構成を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-10-06 |
出願番号 | 特願2017-221829(P2017-221829) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宇多川 勉 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 恩田 春香 |
発明の名称 | サセプタ、エピタキシャルウェーハの製造方法 |
代理人 | 張川 隆司 |