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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1378789
異議申立番号 異議2021-700637  
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-06 
確定日 2021-10-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6807194号発明「液処理プラントおよび液処理プラントの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6807194号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6807194号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年9月14日の出願であり、令和2年12月9日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月6日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年7月6日に特許異議申立人柴田隆史(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明

請求項1?6に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応して「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
被処理液を含む1種以上の液体を貯留するRC製の貯槽と、
前記貯槽の上面から鉛直方向に延びる柱部材と、水平方向に延びる梁部材と、で構成され、前記貯槽の上面を1階とする2階層以上の架台と、
前記架台の各階層に配置され、前記被処理液を処理するための、複数の処理設備と、
を備え、
前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間には、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間が存在する、
ことを特徴とする液処理プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の液処理プラントであって、
前記処理設備の少なくとも一部は、前記メンテナンス空間に設けられ、前記貯槽からの排気を外部に放出する排気ダクトおよび排気ブロアを含む、ことを特徴とする液処理プラント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液処理プラントであって、
前記架台の最上階は、屋根がない部分を有する、ことを特徴とする液処理プラント。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液処理プラントであって、
前記架台のうち、二階以上の階層に配される処理設備は、前記梁部材、または、前記梁部材に連結された板材に配置される、ことを特徴とする液処理プラント。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液処理プラントであって、
前記架台は、前記梁部材の上に設置される網材を備える、ことを特徴とする液処理プラント。
【請求項6】
被処理液を含む1種以上の液体を貯留するとともにRC製の貯槽の上面から鉛直方向に延びる柱部材と、水平方向に延びる梁部材と、で構成され、前記貯槽の上面を1階とする2階層以上の架台を、1階から順に建設するステップと、
前記架台の各階層に前記被処理液を処理するための複数の処理設備を1階から順に据え付けるステップと、
を備え、
前記架台の一つの階層を建設した後、当該一つの階層よりも上層の階層を建設する前に、前記一つの階層に対応する処理設備を据え付け、
前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間には、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間を設ける、
ことを特徴とする液処理プラントの製造方法。」

第3 特許異議の申立理由

1 特許法第29条第2号所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由1」という。)
本件発明1?6は、下記甲第1号証に記載された発明及び下記甲第2号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開平7-139152号公報
甲第2号証:饗庭秀俊 他3名「II.2-1 最近の排水処理技術」、火力原子力発電1997.10 No.493.Vol.48、68?83頁
甲第3号証:実公昭58-45275号公報
甲第4号証:特開2001-227009号公報
甲第5号証:特開平6-142700号公報
甲第6号証:実願平4-74742号(実開平6-40193号)のCD-ROM
(以下、甲各号証を単に「甲1」などという。)

2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「申立理由2」という。)
本件発明1には、「前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間には、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間が存在する」との規定がある。
ここで、甲3(当審注:異議申立書9頁の甲4に関する記載との対応から、甲3は、甲4の誤記であると考えられる。)の図1からコンクリート水槽の平坦な天井10の上側には空間が存在することは一般的である。また、「メンテナンス空間」という技術用語は存在しない。そこで、「メンテナンス空間」について解釈するために本件明細書の【発明の詳細な説明】の欄を参照すると、以下のように記載されている。
「また、既述した通り、梁部材42で構成される設置ステージ46(架台14の2階)は、貯槽12の天井壁24(架台14の1階)から離れた高さ位置に設けられる。この設置ステージ46と、天井壁24との距離は、作業者が立って移動できる程度の大きさ、例えば、3メートル以上である。このように、設置ステージ46を、天井壁24から十分に離して設置することで、天井壁24の上側には、作業者が歩行できるメンテナンス空間50が形成できる。そして、このメンテナンス空間50を設けることで、貯槽12の上側に処理設備16を設けつつも、当該貯槽12のメンテナンスを容易に行うことができる。」(【0020】)
すなわち、メンテナンス空間とは「作業者が歩行できる空間」と解することができるが、そうであるとしても、「作業者が歩行できる空間」は腰を屈めて歩行可能な状態も天井を気にせずに歩行可能な状態も含みうるものであり、どのような空間が「作業者が歩行できる空間」であるのか具体的に記載されていない。また、貯槽の上部の空間が「メンテナンス空間」である場合と、メンテナンス空間でない場合(通常の空間の場合)とは何が異なるのか、何ら記載されていない。
したがって、メンテナンス空間が具体的に特定されておらず、発明の詳細な説明を斟酌してもこれを明確に解釈すべき記載が認められない以上、本件発明において「メンテナンス空間」とだけ明記されていても、それがどのような「空間」を指すかは不明確であるといわざるを得ない。仮に必然的に存在する物理的「空間」の修飾語として、動作の目的を付加しただけで発明特定事項として許容されるとすれば、貯槽の上部に空間を存在させることができなくなり、不条理である。
以上から、本件発明は、明確であるとはいえず、特許請求の範囲の記載は、明確性要件に違反する。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 当審の判断

1 申立理由1(特許法第29条第2項(進歩性欠如))について
(1)甲1?甲6に記載の事項
ア 甲1(特開平7-139152号公報)
(ア)「【請求項1】 複数のユニットを順次組み付けることによって構築される設備本体と、この設備本体の周囲に配設される歩廊とを備えたプラントにおいて、前記歩廊の構成要素が予め前記ユニットに組み込まれていることを特徴とするプラント。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焼却設備、水処理設備および溶融設備等のプラントに関するもので、詳しくは、設備本体の周囲に歩廊が配設されるプラントの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する廃棄物焼却設備には、焼却炉、ガス冷却室および空気予熱器等の設備本体にそれぞれ保守点検作業のための歩廊が配設されている。歩廊は、上記設備本体の外側面から水平方向に突設された廊板と、該廊板の端縁部から上方に向けて立設された手摺りとを備えており、該設備本体の周囲を囲繞する態様で構成されている。
【0003】一般に、この種のプラントでは、構築現場の周囲に作業用の足場を組み上げた後、まずその内部に上述した焼却炉、ガス冷却室および空気予熱器等の設備本体を構築し、さらにその後、該設備本体の外側面に上記廊板および上記手摺りを順次組み付けることによって所要の部位に歩廊を構成するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、通常のプラントおいては、上述した歩廊が階層状に構成されている場合が多く、その敷設面積が数十?数百平方メートルもの広範囲に及ぶため、敷設作業に多大な時間を要し、プラント全体を構築するための現場工期を長大化させる要因となっている。
【0005】しかも、歩廊の敷設作業は、高所において設備本体の外側面に順次組み付けていくものであるため、その作業性が著しく劣るばかりか、設備本体との位置合わせおよび歩廊相互の位置合わせを行うことも困難である。
【0006】本発明の目的は、上記実情に鑑みて、歩廊の敷設作業を容易に、かつ精度よく行い、現場工期の短縮化を図ることのできるプラントを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るプラントでは、複数のユニットを順次組み付けることによって構築される設備本体と、この設備本体の周囲に配設される歩廊とを備えたプラントにおいて、前記歩廊の構成要素が予め前記ユニットに組み込まれている。
【0008】
【作用】上記構成によれば、工場等の設備の整った環境下において歩廊をユニットに組み付けることができ、かつ実際の構築現場においてはユニットの組付作業と同時に設備本体の周囲に歩廊が構成される。」

(ウ)「【0009】
【実施例】以下、一実施例を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図5および図6は、本発明に係るプラントを概念的に示したもので、都市ごみ、各種工場廃棄物、下水汚泥脱水ケーキ、し尿汚泥脱水ケーキ、その他有機性汚泥脱水ケーキ等の廃棄物を焼却処理するための比較的小型、具体的には500kg/h程度の焼却量を有する廃棄物焼却設備を示している。
【0010】ここで例示する廃棄物焼却設備は、左右に一対の焼却炉10,10を備えるタイプのもので、給じんコンベア20,20によって投入ホッパ30,30から各焼却炉10,10の内部に投入された廃棄物をそれぞれストーカ(図1中に示す)11,11上において順次図5中の右方へ搬送しながらバーナ12,12で焼却処理するようにしたものである。この廃棄物焼却設備では、焼却の結果生成される灰を、それぞれ焼却炉10,10の下部に付設された灰排出通路13,13および灰シュート14,14を介して図示していない灰ピットに集積し、一方、焼却の際に発生する排ガスを、各焼却炉10,10の上部に連設されたガス冷却室40,40で冷却した後、バグフィルタ50および煙突60を介してその大部分を外部へ放出するとともに、その一部分を空気予熱器70,70によって加熱し、燃焼用空気として再利用するべく各焼却炉10,10に返却するようにしている。なお、上記廃棄物焼却設備では、上述した一対の焼却炉10,10およびこれら焼却炉10,10に連設される投入ホッパ30,30、ガス冷却室40,40および空気予熱器70,70が、つまり左右一対の設備本体がほぼ対称に構成配置されているため、以下の説明においては一方側の設備本体について詳述し、他方側の詳細を省略している。
【0011】図1からも明らかなように、この廃棄物焼却設備では、設備本体を構成する部分、つまり上述した投入ホッパ30、焼却炉10、ガス冷却室40および空気予熱器70の各パーツが、それぞれ水平方向に沿った接合面を有する複数の構成要素から構成されている。具体的には、投入ホッパ30が下部ホッパ構成要素30a、中間部ホッパ構成要素30b、上部ホッパ構成要素30cおよびホッパカバー30dの4構成要素を有し、焼却炉10が下部炉体構成要素10a、中間部炉体構成要素10bおよび上部炉体構成要素10cの3構成要素を有し、ガス冷却室40が下部冷却室構成要素40a、中下部冷却室構成要素40b、中上部冷却室構成要素40c、上部冷却室構成要素40dおよび冷却室フード40eの5構成要素を有し、空気予熱器70が下部予熱器構成要素70a、中下部予熱器構成要素70b、中上部予熱器構成要素70c、上部予熱器構成要素70dおよび予熱器フード70eの5構成要素を有している。
【0012】これら各構成要素は、工場において予め別個に製造されるもので、構築現場での作業を可及的に低減するため、それぞれが以下に記すような状態にユニット化されている。
・・・
【0014】上記焼却炉10の各構成要素10a,10b,10cは、複数の棒状鋼材、たとえば「I形鋼」や「みぞ型鋼」等を互いに溶着することによって直方枠状に構成された支持枠構成要素80a,80b,80cの内部にそれぞれが予め一体状に組み込まれており、これら各支持枠構成要素80a,80b,80cと共にそれぞれ下部ユニット90a、中間部ユニット90bおよび上部ユニット90cを構成している。図からも明らかなように、これら支持枠構成要素80a,80b,80cは、それぞれ鉛直方向に沿って延在する鉛直鋼材のそれぞれが互いに対応する部位に配置され、また互いにほぼ同一の大きさ、具体的には一般のトレーラで搬出することのできる大きさ(本実施例においては、幅×長さ×高さ=2,900mm×9,300mm×2,800mm)に形成されている。・・・
【0015】また、上記のようにユニット化されたもののうち、その所要部位に対応するユニット、具体的には、上部ユニット90c、中間部ユニット90b、下部ユニット90a、中下部冷却室構成要素40b、中上部冷却室構成要素40c、中下部予熱器構成要素70bおよび中上部予熱器構成要素70cの各上端外側部にそれぞれ歩廊100の構成要素である廊板の主部(以下の説明においては、単に主廊板101と称する)が予め一体状に組み込まれている。」

(エ)「【0023】以下、上記のようにユニット化された各構成要素および各種補助部品を用いて実際に廃棄物焼却設備を構築する方法を説明していく。
・・・
【0026】各構成要素毎に歩廊100が構成されると、まず適宜クレーン車等を適用することにより、各鉛直鋼材の下面を介して下部ユニット90aをマウンド201上に固定設置するとともに、この下部ユニット90aの歩廊100と上記ベース200との間に階段122を架設設置する。なお、本実施例においては、ボルト締めおよび溶接を併用することによって下部ユニット90aをマウンド201へ強固に固定するようにしている。
【0027】次いで、上記下部ユニット90aの上部に中間部ユニット90bを積層設置した後、それぞれの耐火物の間にシール材を介在させた状態で下部炉体構成要素10aおよび中間部炉体構成要素10bの間を溶着接合するとともに、支持枠構成要素80a,80b相互間を溶着接合し、さらに各ユニット90a,90b相互間の歩廊100に階段122を架設設置する。
【0028】この状態から、下部ホッパ構成要素30aを上記中間部ユニット90bの中間部支持枠構成要素80bの内部に設置した後、それぞれの耐火物の間にシール部材を介在させた状態で当該下部ホッパ構成要素30aを中間部炉体構成要素10bに溶着接合する。
【0029】しかる後、上部ユニット90cを上記中間部ユニット90bの上方域に積層設置し、それぞれの耐火物の間にシール材を介在させた状態で中間部炉体構成要素10bと上部炉体構成要素10cとの間および中間部炉体構成要素10bと下部予熱器構成要素70aとの間をそれぞれ溶着接合するとともに、支持枠構成要素80b,80c相互間を溶着接合し、さらに各ユニット90b,90cの歩廊100相互間に階段122を架設設置すれば、上記各ユニット90a,90b,90cの炉体構成要素10a,10b,10cによって焼却炉10が構築され、かつ各ユニット90a,90b,90cの支持枠構成要素80a,80b,80cによって該焼却炉10を支持するための支持枠体が構築されることになる。
【0030】さらにこの状態から、上記焼却炉10の上部、下部予熱器構成要素70aの上部および下部ホッパ構成要素30aの上部にそれぞれ対応する残りの各構成要素を順次下方から積層設置し互いに溶着接合し、さらに各歩廊100相互間に階段122を架設設置することにより、廃棄物焼却設備の構築が終了する。」

(オ)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプラントの一実施例を概念的に示したもので、廃棄物焼却設備をユニット単位で分解した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した廃棄物焼却設備の1ユニットを概念的に示した斜視図である。
【図3】図1に示した廃棄物焼却設備の1ユニットを概念的に示した斜視図である。
【図4】図1に示した廃棄物焼却設備の1ユニットを概念的に示した斜視図である。
【図5】図1に示した廃棄物焼却設備の構築状態を概念的に示した側面図である。
【図6】図5におけるA-A線断面図である。」

(カ)「【図1】


【図2】


【図5】


【図6】



イ 甲2(饗庭秀俊 他3名「II.2-1 最近の排水処理技術」)
(ア)「1. 富栄養化防止のための脱窒処理技術
・・・
火力発電所においても脱窒装置の設備が検討され,一部の発電所では既に実施されている。
ここでは,実用化段階の脱窒技術として下記の3件を紹介する。
(1)浮遊式生物脱窒
(2)浮上ろ材生物脱窒
(3)触媒脱窒
1.1 浮遊式生物脱窒
・・・
1.1.2 装置の構成^((2))
装置は,硝化槽,脱窒槽,再曝気槽,沈殿槽などからなり,その構成を図2に示す。
通常,角型コンクリート水槽を仕切って設置されるが,沈殿槽は汚泥かき寄せ機の構造上,円型水槽となる。」(68頁右欄3行?69頁右欄22行)

(イ)「

」(69頁)

ウ 甲3(実公昭58-45275号公報)
(ア)「第1図は板状の複合部材1Aを示し、両外面に配置された鋼板2と、直交する二方向の適当距離位置でこれら鋼板2間に介装された隔板3と、前記両鋼板2の内面に固定されたずれ止め部材4と、前記両鋼板2で囲まれた空間内に打設されて前記ずれ止め部材4により前記両鋼板2と一体化されたコンクリート5とよりなる。第2図は柱状の複合部材1Bを示し、この場合に四側外面に鋼板2か゛配置される。なお第1図、第2図において切欠部の中は、構造を明確化するために空間としているが、実際にはコンクリート5が充てんされている。このような複合部材1A、1Bにおいて、鋼板2は、種々の荷重によって生じる曲げモーメントなどの応力に対して、圧縮力および引張力を分担している。そして隔板3は、前記鋼板2間に生じる引張力を分担するが、コンクリート打設時のコンクリート5のまわり(充てん性)を考慮して、その機能を阻害しない範囲でできる限り大きな開口部6を設けている。またコンクリート5は圧縮力およびせん断力を分担し、ずれ止め部材4によって前記鋼板2と緊結されている。このずれ止め部材4は、前記鋼板2のうち圧縮側の鋼板2の座屈補剛材としての役目も負っている。またずれ止め部材4は、コンクリート5のまわりを考慮するとできるかぎり単純な形状がよく、実施例では平鋼を採用している。
第3図、第4図は上述したような複合部材1A、1Bを組合わせて構成した、たとえばフラットスラブ構造の浄水池を示す。浄水池は、基礎地業、換気室や点検室などの上屋7、流出管8、排泥管9、流入管10、越流管11を除いて、すべて鋼板2やコンクリート5などからなる複合部材1A、1Bによって構成されている。すなわち側壁12や床版13は板状複合部材1Aから構成され、また柱14は柱状複合部材1Bから構成されている。その際に側壁12や床版13を構成するための板状複合部材1Aの組合わせは、複数枚の板状複合部材1Aの鋼板2,2間を溶接結合することにより行なわれる。また柱状複合部材1Bの組合わせは、その鋼板2を板状複合部材1Aの鋼板2に溶接結合することにより行なわれる。なお液体貯槽の規模などによって柱状複合部材1Bは省略することができる。」(2欄26行?3欄末行)

(イ)「



エ 甲4(特開2001-227009号公報)
(ア)「【請求項1】 コンクリート製貯水槽の内表面に粗面加工を施した後に、その凹部に珪藻土を主成分とする目地埋め材を充填し、ついで、前記コンクリート製貯水槽の内面に、珪藻土を主成分とする下地材を塗布することにより、前記コンクリート製貯水槽の内面を平滑化し、ついで、前記下地材の表面に、珪藻土を主成分とする仕上げ材を少なくとも一層以上積層することを特徴とするコンクリート製貯水槽における内面処理方法。」

(イ)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図4に基づき説明する。本実施形態に係るコンクリート製貯水槽における内面処理方法は、図1に示すように、コンクリート製貯水槽の内表面(天井10、側壁11、床12、および、本実施形態においては隔壁13を含む)に粗面加工を施した後に、この粗面加工によって形成された凹部14に、珪藻土を主成分とする目地埋め材15を充填し、ついで、前記コンクリート製貯水槽の内面に、図3に示すように、珪藻土を主成分とする下地材16を塗布することにより、前記コンクリート製貯水槽の内面を平滑化し、ついで、前記下地材16の表面に、図4に示すように、珪藻土を主成分とする仕上げ材17を塗布するものである。そして、本実施形態においては、前記天井10、側壁11、床12、および、隔壁13によって貯水室18が形成されている。」

(ウ)「【0015】一方、本実施形態においては、図1に示すように、前記貯水室18が、前記隔壁13を挟んで複数設けられており、前記隔壁13の上部に埋設された通気管19と、下部に埋設された連通管20とによって相互に連通させられ、また、一つの貯水室18の天井10には、蓋体21によって閉塞されたマンホール22が形成されている。」

(エ)「【図1】



オ 甲5(特開平6-142700号公報)
(ア)「【請求項1】 機枠に直立筒形貯槽が設けられ、該貯槽の内部に複数段にテーブルが設けられ、これらのテーブルには中央落下開口部と外周落下開口部とが上下段交互に形成され、かつテーブルの上面には中寄せ回転羽根と外送り回転羽根とが上下段交互に設けられ、各テーブルの下面側にエアレーションノズルを配設し、上記貯槽の下部に排出口が設けられてなる多段式貯槽。」

(イ)「【0011】
【実施例】床面13に設立した機枠1に直立円筒形の貯槽2を支持し、下端に排出装置14を介して排出口9、9が設けられる。上端には材料供給口12が設けられ、該貯槽2の内部には複数段(5段)に脱水汚泥材料11を堆積支持するテーブル3、3’を支持腕15(図2(イ)(ロ)図)によって水平に支持し、最上段の第1のテーブル3’は図2(イ)図に示すように外周に落下開口部5が形成され、第2のテーブル3には図2(ロ)図に示すように中央部に落下開口部4が形成される。又第3のテーブル3’は外周、第4のテーブル3は中央部及び第5のテーブル3’は外周に上記落下開口部4、5が交互に形成され、第1から第5テーブルに行くに従ってテーブル3、3’の間隔が大となりテーブル間容積が順次大となっているため材料11は下から順次充満する。
【0012】上記貯槽2の中心線に沿って矢印a方向(図2)に回転する直立回転軸16が設けられ、該回転軸16にボス17を介して回転羽根6、7が各テーブル3、3’の上面に接して設けられる。第1、第3及び第5のテーブル3’の回転羽根7は図2(イ)図及び図3に示すように矢印a方向に回転し材料11を外周(外側)に送り、かつ斜面7’によってテーブル3’上の材料11を上下に撹拌することができ、第2、第4のテーブル3の回転羽根6は図2(ロ)図に示すように矢印a方向に回転することによってテーブル3上の材料11を中央部に中寄せすることができる。
【0013】上記各テーブル3、3’の下面側に材料11の安息角θによって形成される空間s、s’にはエアレーションノズル8を開口し、該ノズル8から外気(暖気又は冷気)を送風し、テーブル上の堆積材料11又は落下材料11を発酵及び乾燥させることができる。
【0014】上記貯槽2の最上部はカバー18で被覆され、該カバー18に蒸発水分除去用及び脱臭用ダクト10を接続し、該ダクト10にはブロワーなどによる吸引装置(図示していない)が設けられている。尚図中19で示すものは貯槽2の上端板に設けた直立回転軸16の減速駆動モータ、20は材料搬入コンベヤ、21は排出装置14に向うエアレーションノズル、22は透明覗き窓である。」

(ウ)「【図1】



カ 甲6(実願平4-74742号(実開平6-40193号)のCD-ROM)
(ア)「【請求項1】 開口部が配列して設けられている平板状の歩行板部と、この歩行板部上に突出し前記歩行板部の長さ方向に沿う直線上に設けられて前記開口部により分断された突起リブと、前記歩行板部の幅方向の両側に前記長さ方向に延出して配設された枠体と、前記歩行板部の下側に前記枠体に平行に配設された中骨とを有し、前記歩行板部、前記突起リブ、前記枠体及び前記中骨はアルミニウムにより一体的に形成されていることを特徴とする透光性足場板。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、建築、土木、造船及びプラント等の分野において構築物の組み立て及び解体作業を行なう際に現場作業者の歩行路及び作業床として使用される透光性足場板に関し、特に歩行面に開口部が設けられており閉空間内で人工照明等を用いて作業を行なう場合の足場板として好適の透光性足場板に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来の透光性足場板を示す斜視図、図7は同じくその角部を示す拡大図である。
【0003】
この足場板は、中空の部材により枠状に組み立てられた四方枠22と、この四方枠22を補強する中桟26と、四方枠22の枠内側に設けられている溝部25の面上に配設されたエキスパンドメタル23とにより構成されている。」

(ウ)「【図6】



(2)甲1に記載された発明
甲1は、上記(1)ア(イ)の【0001】の記載によれば、「焼却設備、水処理設備および溶融設備等のプラントに関するもので、詳しくは、設備本体の周囲に歩廊が配設されるプラントの改良に関する」ものであるが、甲1には、その具体的な実施例として、上記同(ウ)の【0009】によれば、上記同(カ)の【図5】及び【図6】に概念図として示され、上記同(オ)の【図面の簡単な説明】によれば、【図1】でユニット単位に分解された状態が斜視図として、また【図2】に概念的に1ユニットの斜視図として示され、さらに、それらの図面に関連する上記同(ウ)及び(エ)等に説明がなされる、「廃棄物焼却装置」の発明(以下、「甲1発明」という。)及びその製造方法に関する発明(以下、「甲1’発明」という。)が記載されているといえる。

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)甲1の記載事項を摘示した(1)ア(ウ)の【0014】の記載によれば、甲1発明の「廃棄物焼却装置」を構成する焼却炉10の各構成要素10a,10b,10cは、複数の棒状鋼材を互いに溶着することによって直方枠状に構成された支持枠構成要素80a,80b,80cの内部にそれぞれが予め一体状に組み込まれており、これら各支持枠構成要素80a,80b,80cと共にそれぞれ下部ユニット90a、中間部ユニット90bおよび上部ユニット90cを構成している。ここで、支持枠構成要素80a,80b,80cにおいて、鉛直方向に沿って延在する鉛直鋼材のそれぞれが、支持枠構成要素で互いに対応する部位に配置されている。そして、上記同(エ)の【0026】?【0030】の記載によれば、各鉛直鋼材の下面を介して下部ユニット90aを、ボルト締めおよび溶接を併用することによってマウンド201へ強固に固定設置し、上記下部ユニット90aの上部に中間部ユニット90bを積層設置した後、下部炉体構成要素10aおよび中間部炉体構成要素10bの間を溶着接合するとともに、支持枠構成要素80a、80b相互間を溶着接合し、下部ホッパ構成要素30aを上記中間部ユニット90bの中間部支持枠構成要素80bの内部に設置した後、当該下部ホッパ構成要素30aを中間部炉体構成要素10bに溶着接合し、上部ユニット90cを上記中間部ユニット90bの上方域に積層設置し、中間部炉体構成要素10bと上部炉体構成要素10cとの間および中間部炉体構成要素10bと下部予熱器構成要素70aとの間をそれぞれ溶着接合するとともに、支持枠構成要素80b,80c相互間を溶着接合し、上記各ユニット90a,90b,90cの炉体構成要素10a,10b,10cによって焼却炉10が構築され、かつ各ユニット90a,90b,90cの支持枠構成要素80a,80b,80cによって該焼却炉10を支持するための支持枠体が構築され、さらに、上記焼却炉10の上部、下部予熱器構成要素70aの上部および下部ホッパ構成要素30aの上部にそれぞれ対応する残りの各構成要素を順次下方から積層設置し互いに溶着接合して廃棄物焼却設備が製造されている。この様に製造される廃棄物焼却設備を考慮すると、支持枠構成要素80a、80b及び80c相互間を溶着接合して形成される焼却炉10を支持するための支持枠体において、支持枠構成要素80a,80b及び80c間で鉛直鋼材が上下に接続したものは、本件発明1の「鉛直方向に伸びる柱部材」に相当するものと理解することができ、上記同(カ)の【図2】等によれば、支持枠構成要素80b等の鉛直鋼材同士を連結する、本件発明1の「水平方向に延びる梁部材」に相当する構成を、甲1発明が有していることを理解できる。また、支持枠体は、支持枠構成要素80a,80b及び80cの積層体から形成されるものであるから、階層を構成しているものと理解することができ、この各階層を形成する支持枠構成要素内に炉体構成要素を固定しているのであるから、甲1発明の支持枠体は、本件発明1の「架台」に相当するものであることが理解できる。

(イ)甲1発明の「廃棄物焼却装置」は、本件発明1の「液処理プラント」と、「プラント」である点で共通している。

(ウ)一方で、本件発明1は、RC製の貯槽を有する液処理プラントであり、架台は貯槽の上面に形成されるものであり、貯槽上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間に、メンテナンス空間が存在するものである。

(エ)そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、以下の相違点で相違しているといえる。

<一致点>
鉛直方向に延びる柱部材と、水平方向に延びる梁部材と、で構成され、2階層以上の架台を備えるプラント。

<相違点1>
プラントが、本件発明1では、被処理液を含む1種以上の液体を貯留するRC製の貯槽と、前記貯槽の上面に設けられ、前記貯槽の上面を1階とする2階層以上の架台と、前記架台の各階層に配置され、前記被処理液を処理するための、複数の処理設備と、を備え、前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間には、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間が存在する液処理プラントであるのに対し、甲1発明は、廃棄物焼却装置であり、架台についても本件発明1の様な構造を有していない点。

イ 相違点に対する判断
上記相違点について、検討する。
甲1発明は、上記(1)ア(イ)の【0004】?【0008】の記載によれば、通常のプラントでは、歩廊が階層状に構成されている場合が多く、敷設作業に多大な時間を要し、プラント全体を構築するための現場工期を長大化させる要因となっており、しかも、歩廊の敷設作業は、高所において設備本体の外側面に順次組み付けていくものであるため、その作業性が著しく劣るばかりか、設備本体との位置合わせおよび歩廊相互の位置合わせを行うことも困難であるとの実情に鑑みて、歩廊の敷設作業を容易に、かつ精度よく行い、現場工期の短縮化を図ることのできるプラントを提供することを発明の課題としている。
そして、この課題を解決するための手段として、複数のユニットを順次組み付けることによって構築される設備本体と、この設備本体の周囲に配設される歩廊とを備えたプラントにおいて、前記歩廊の構成要素が予め前記ユニットに組み込まれている構成とすることにより、甲1発明は、工場等の設備の整った環境下において歩廊をユニットに組み付けることができ、かつ実際の構築現場においてはユニットの組付作業と同時に設備本体の周囲に歩廊が構成されるという作用効果を有するものである。
また、甲1には、上記同(イ)の【0001】に、「【産業上の利用分野】本発明は、焼却設備、水処理設備および溶融設備等のプラントに関するもので、詳しくは、設備本体の周囲に歩廊が配設されるプラントの改良に関する。」とあるように、「水処理設備」に関する記載も認められ、上述の甲1発明における技術的特徴である、歩廊の構成要素を予めユニットに組み込む装置(設備)としては、廃棄物焼却装置だけでなく、水処理設備も想定されていると理解できるものの、甲1発明の、支持枠構成要素80a、80b及び80c相互間を溶着接合して形成される焼却炉10を支持するための支持枠体の構造を、水処理設備に適用することができるとはいえない。すなわち、甲1発明の廃棄物焼却装置において、支持枠構成要素80a、80b及び80c相互間を溶着接合して形成される支持枠体はそのままとして、それ以外の廃棄物焼却装置を、水処理装置に置換する動機付けは甲1発明に存在しない。ましてや、支持枠体(架台)との構造との関係で、架台が水処理装置の貯槽の上面に設けられ、前記貯槽の上面を1階とする2階層以上のものとし、前記架台の各階層に、被処理液を処理するための複数の処理設備を配置すること、さらには、前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間に、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間を設けることについての動機付けは、甲1発明には存在しない。
さらに、上記甲2の記載事項を摘示した上記(1)のイ(ア)及び(イ)、甲3の記載事項を摘示した同ウ(ア)及び(イ)、甲4の記載事項を摘示した同エ(ア)?(エ)、甲5の記載事項を摘示した同オ(ア)?(ウ)及び甲6の記載事項を摘示した同カ(ア)?(ウ)等を見ても、甲2?甲6に上記の相違点に関する記載はないため、もとより甲1発明に、甲2?甲6に記載の事項を適用する動機付けはないが、仮に甲1発明に、甲2?甲6に記載の事項を適用したとしても、上記相違点に係る本件発明1の構成には至らない。
そして、本件発明1は、同構成を具備することにより、本件明細書の【0012】に記載される、「貯槽の上側に配された架台に処理設備が設置され、貯槽の上面(架台の1階)と架台の2階との間にメンテナンス空間が存在するため、貯槽のメンテナンス性を確保しつつ、土地面積を低減できる。」等の効果を奏するものであるが、甲1発明及び甲1?甲6に記載の事項からは、そもそも架台を有する液処理プラントの構造を導き出すことができないのであるから、上記の効果を予測することはできない。
よって、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本件発明1の事項は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1発明、及び甲1?甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?5は、甲1発明及び甲1?甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明6について
本件発明6は、「液処理プラントの製造方法」に係る発明であるところ、これは、本件発明1の「液処理プラント」の製造方法にあたる発明であって、当該「液処理プラント」の主たる構成を有するものである。
そのため、本件発明1が、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえなければ、本件発明1の製造方法である本件発明6も同様に、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないが、上記(3)で述べたように、本件発明1は、甲1発明、及び甲1?甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明6も、本件発明1と同様に、甲1’発明及び甲1?甲6に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)申立理由1に関するまとめ
以上のとおり、申立理由1には理由がない。

2 申立理由2(特許法第36条第6項2号(明確性要件違反))について
(1)請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要であり、この観点に照らして、発明が明確か否かを検討してみる。

(2)本件発明1のメンテナンス空間は、請求項1に「前記貯槽の上面と、前記架台の2階を構成する梁部材の下面との間には、作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするためのメンテナンス空間が存在する」と記載されているように、「作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするため」の空間として定義されたものである。
そして、「作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするため」との記載に特段不明確なところはなく、この記載により、メンテナンス空間とは、作業者が進入可能であるとともに貯槽をメンテナンスすることができる空間であることが明確に理解できるので、貯槽上に存在する単なる空間とは、明確に峻別することができる。さらに、「作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするため」という記載の内容を、具体的に検討してみても、貯槽の上面にメンテナンスすることが必要な箇所があるか否か、貯槽の上面が作業者が進入可能な構造となっているか否か、また、貯槽の上面にメンテナンスすることが必要な箇所がある場合に、そのメンテナンスを行うのにどの程度の空間が必要であるかといった点は当業者の技術常識を踏まえて理解できる内容であり、実際、その理解が可能であれば、貯槽上に存在する単なる空間とは、明確に峻別できるものである。
そうすると、本件発明1の「メンテナンス空間」は、貯槽上に存在する単なる空間とは、明確に峻別できるものであるから、上記(1)の観点に照らすと、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているものといえ、明確である。
また、本件発明1と同様の記載のある本件発明6についても、「メンテナンス空間」の内容は、明確である。

(3)異議申立人の主張は、メンテナンス空間を単に「作業者が歩行できる空間」と解することを前提としているが、上記(2)で述べたように、メンテナンス空間とは、「作業者が進入可能であるとともに前記貯槽をメンテナンスするため」のものであるから、採用できない。また、「仮に必然的に存在する物理的『空間』の修飾語として、動作の目的を付加しただけで発明特定事項として許容されるとすれば、貯槽の上部に空間を存在させることができなくなり、不条理である。」と主張しているが、上記(2)で述べたように、本件発明の「メンテナンス空間」は、貯槽の上部に存在する単なる空間とは、明確に峻別できるものである。
そうすると、申立理由2に関する異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。

(4)以上のとおり、本件発明1?6は、明確であるということができるから、申立理由2には理由がない。

第5 むすび

上記第4で検討したとおり、本件特許1?6は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいうことはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記申立理由1及び2では、本件特許1?6を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1?6を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-10-12 
出願番号 特願2016-179364(P2016-179364)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
P 1 651・ 537- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 片山 真紀  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 金 公彦
原 賢一
登録日 2020-12-09 
登録番号 特許第6807194号(P6807194)
権利者 オルガノ株式会社
発明の名称 液処理プラントおよび液処理プラントの製造方法  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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