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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1381461
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-15 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2016−109699号「表示装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月7日出願公開、特開2017−215499号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月1日の特許出願であって、令和2年5月27日付け拒絶理由通知に対し、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同月15日)、これに対して、令和3年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲についての補正がされたものである。
なお、同年6月30日に上申書が提出されている。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年1月15日付けでされた補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年1月15日付けでされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「【請求項1】
画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線と、
第2基板に設けられ、前記駆動回路に電気的に接続される第2配線と、を有する表示装置の製造方法であって、
前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように接触させるステップと、
前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合するステップと、
を有し、
前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする表示装置の製造方法。」

(2)本件補正後
「【請求項1】
画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線と、
第2基板に設けられ、前記駆動回路に電気的に接続される第2配線と、を有する表示装置の製造方法であって、
前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させるステップと、
前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合するステップと、
を有し、
前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有し、
前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なり、
前記第2配線は長方形の断面形状を有し、前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し、前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触することを特徴とする表示装置の製造方法。」

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、請求項1において、「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なり、前記第2配線は長方形の断面形状を有し、前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し、前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触すること」という事項を追加する補正を含むものであり、本件補正前の「第1配線」及び「第2配線」に係る事項を限定したものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、について検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次に特定されるとおりのものである。
「画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線と、
第2基板に設けられ、前記駆動回路に電気的に接続される第2配線と、を有する表示装置の製造方法であって、
前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させるステップと、
前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合するステップと、
を有し、
前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有し、
前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なり、
前記第2配線は長方形の断面形状を有し、前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し、前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触することを特徴とする表示装置の製造方法。」

(2)引用文献等
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された特開昭63−221381号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
(ア)1頁左下欄下から2行〜同頁右下欄上から4行
「[産業上の利用分野]
この発明は、例えば、液晶表示素子とフレキシブルケーブルとを接続する端子部の接続構造に関し、特に、素子などの集積度が高く、端子の形成密度が高い場合に好適な端子部の接続構造に関する。」
(イ)2頁左下欄下から4行〜3頁左上欄上から7行
「[実施例]
以下、この発明の端子部の接続構造の実施例を第1図ないし第3図を参照して説明する。なお、液晶表示素子及びフレキシブルケーブルの端子の平面的構造は、第4図及び第5図に示すものと同一であるので、符号を同じ(して説明を省く。
液晶表示素子1の素子基板3の上面には、インジウム・スズ酸化物からなる導電性の被膜が、帯状に複数列平行に形成されて端子4・・・を構成しており、この端子4の面上にはさらにアルミニウムの被膜11が付着形成されて層構造をなしている。
このアルミニウムの被膜11の形成方法は適宜に選択されるが、鍍金、蒸着あるいは圧接などの方法が用いられる。また形成厚さは適宜設定されるが、0.3〜0.8μmぐらいであればよい。一方、フレキシブルケーブル2の面上には、銅箔からなる被膜が素子基板3と同様に帯状に複数列平行に形成されて端子5・・・が構成され、この端子5の面上には、金の被膜12が付着形成されている。この金の被膜12の形成方法や厚さも適宜選択されあるいは設定される。このように金属被膜11,12が形成された端子4,5どうしを密着させ、窒素ガス雰囲気の加熱炉(図示路)のなかで加熱しつつ圧接し、さらに金属被膜11,12の面間に超音波振動を与えることにより、金属被膜11,12の表面層を互いに融着させるいわゆる超音波溶接を行う。このようにして複数列形成された端子4,5の金属被膜11,12が同時に面溶接され、端子4,5が接続される。しかもこの接続は、強固なものであり、通常の環境のもとでは経時変化を起こさない信頼性の高いものである。」
(ウ)3頁左上欄8〜17行
「なお、上記の例は、金属被膜として、素子基板3側にアルミニウムを、フレキシブルケーブル2側に金を採用したが、この逆としてもよい。また、このアルミニウムと金の組み合わせは、コスト的にアルミニウムが有利であり、アルミニウムと金とが融着しやすいために採用されているが、被膜の形成及び面溶接が可能であれば適宜の金属素材の組み合わせとしてよい。また、面、溶接の方法としても上記以外の方法が採用されてよいことは言うまでもない。」
(エ)第1図〜第5図




引用発明の認定
上記アの記載内容を総合すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「液晶表示素子1の素子基板3の上面には、インジウム・スズ酸化物からなる導電性の被膜が帯状に複数列平行に形成されて端子4を構成しており、この端子4の面上にはさらにアルミニウムの被膜11が付着形成されて層構造をなしており、
フレキシブルケーブル2の面上には、銅箔からなる被膜が素子基板3と同様に帯状に複数列平行に形成されて端子5が構成され、この端子5の面上には金の被膜12が付着形成されており、
金属被膜11,12が形成された端子4,5どうしを密着させ、窒素ガス雰囲気の加熱炉のなかで加熱しつつ圧接し、さらに金属被膜11,12の面間に超音波振動を与えることにより、金属被膜11,12の表面層を互いに融着させるいわゆる超音波溶接を行い、複数列形成された端子4,5の金属被膜11,12が同時に面溶接され、端子4,5が接続される、
液晶表示素子1とフレキシブルケーブル2とを接続する端子部の接続構造の形成方法。」

ウ 引用文献5
原査定の拒絶の理由において引用された国際公開第2012/124539号(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「[0041](4)配線基板へのフリップチップ型実装部品の実装
配線基板1に、フリップチップ型実装部品4を実装して、フリップチップ型実装部品4が、導電性接続部5を介して、配線基板1と電気的に接続された構造体を形成する(図4参照)。
配線基板1にフリップチップ型実装部品4を実装するにあたっては、例えば、図3に示すように、フリップチップ型実装部品4の機能面3に、直方体状の導電性接続部5を複数個、フリップチップ型実装部品4の機能面3の周縁部に、互いに隣り合う導電性接続部5どうしを結ぶ線に沿う方向(フリップチップ型実装部品4の機能面3の周縁部に沿う方向)の寸法Lよりも小さい間隔Gをおいて配置し、導電性接続部5により、配線基板1の電極とフリップチップ型実装部品4の電極とを電気的に接続する。
[0042] なお、例えば、超音波接合による方法で、導電性接続部5を介して、フリップチップ型実装部品4を配線基板1に実装する場合には、導電性接続部5(を構成する材料)として、Auなどの公知の材料を用いることが可能である。
[0043] また、リフロー加熱などの方法で実装する場合には、導電性接続部5(を構成する材料)として、SnAgCuなどの合金組成のものを使用することが可能である。
[0044] ただし、220℃以下で溶融する合金組成の場合、後述する封止樹脂の種類によっては、合金(導電性接続部)の溶融の影響により、封止樹脂が破断したり、溶融した合金成分が周囲にまで広がり、不具合を生じる場合がある。特に封止樹脂の厚みが薄い場合に破断が生じやすいため、SnCu、AuSn、BiAg、SnSb、PbSn、SnAgなどの溶融後に高融点化する組成の合金を使うことが望ましい。
[0045] また、上述の合金では、拡散速度の問題から十分に高融点化しない、高融点化に要する時間が長くなり過ぎるなどの問題がある場合には、SnCuNi、SnCuMn、SnCuAl、SnCuCr、SnCuGeのいずれかを含む合金層を用いることができる。その場合、上記問題を解消することができる。
[0046] さらには、例えばSnCuNi合金を主成分とする導電性接続部5を形成するにあたっては、予め、めっきなどによりCuNi合金を、導電性接続部5が接続される電極である、配線基板1に配設された実装用の電極およびフリップチップ型実装部品に配設された実装用の電極の、少なくとも一方に設けておき、このCuNi合金と接するように、SnAgCuやSnBiなどの低温溶融合金からなる導電性材料が配置された状態となるように、フリップチップ型実装部品4を配線基板1上に載置してリフロー加熱することにより、高融点のSnCuNi合金を生じさせて導電性接続部5を高融点化することも可能である。
[0047] また、配線基板1側の電極とフリップチップ型実装部品4側の電極との間に、CuNi合金柱をSnAgCuやSnBiなどの低温溶融合金を介して配置し、配線基板1側の電極からフリップチップ型実装部品4側の電極に向かって、配線基板側電極−前記低温溶融合金−前記CuNi合金柱−前記低温溶融合金−フリップチップ型実装部品側電極の順となるようにセットした後、リフロー加熱することにより、配線基板側電極とフリップチップ型実装部品側電極とが、高融点の導電性接続部により接続された構成とすることも可能である。」

「[図4]



エ 引用文献8
当審が新たに引用する国際公開第02/29770号(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
4頁11行〜5頁12行
「発明を実施するための最良の形態
図1は、本発明の実施の形態におけるカラーの表示モジュールの概略を示す分解斜視図である。この表示モジュールは、表示パネル1と、1枚のフレキシブル基板2とを主要な部材として構成されている。
表示パネル1は、ガラスまたは樹脂製のプレート1a,1bを積層し、これらのプレート1a,1bの間に表示層の一例である液晶(図示せず)を封入したものである。上側に配置されたプレート1aの下面にはITO等を用いた透明の端子パターン1cが形成されている。
フレキシブル基板2は、合成樹脂を用いたフィルム状のものであり、本体部2aとコネクタ部2bとを含む。本体部2aの平面形状は、表示パネル1とほぼ同じである。コネクタ部2bは、本体部2aの幅員方向の中央から突出して設けられている。
本体部2aの、コネクタ部2bが配置された端部以外の三方の端部の上面には、表示パネル1の端子パターン1cと整合する電極端子2cが設けられている。コネクタ部2bの先端には、コネクタ端子2dが設けられている。コネクタ端子2dは、外部回路基板、例えば携帯電話機等の本体に備えた回路基板に導通接続させるために用いられる。コネクタ端子2dと電極端子2cの間は、配線パターン(図示省略)によって接続されている。この配線パターンには、抵抗及びコンデンサ3a、および液晶を駆動するためのドライバIC3bも接続されている。
表示パネル1とフレキシブル基板2は、表示パネル1の三方の端部に形成された端子パターン1cと、フレキシブル基板2の電極端子2cの位置を合わせ、導電性接着テープ4によりこれらの端子パターン1cと電極端子2cを導通させて一体化されている。一体化された状態の平面形状を図2に示す。図3はその底面図である。このようにして、コネクタ端子2dと、表示パネル1に組み込まれたコモン及びセグメントの配線パターンとが導通し、信号の入力によって表示パネル1に液晶による図柄や文字を表示させることが可能となる。」







オ 引用文献9
当審が新たに引用する特開2005−183450号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0024】
「第1の実施形態」
図1は本発明の第1の実施形態の配線基板の接合構造を示す斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のB−B線に沿う断面図、図4は図1のC−C線に沿う断面図であり、図において、符号1、2はフレキシブルプリント配線基板(可撓性を有する配線基板)(以下、FPCと称する)である。
【0025】
FPC1は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる可撓性を有する絶縁性の樹脂基板11の表面に銅(Cu)箔をエッチングして所定の回路配線とした配線部12が形成され、この配線部12の一端部が該配線部12を内側にして折り曲げられ、この折り曲げられた先端部がFPC2と電気的に接続するための接続端子(端子部)13とされている。 この接続端子13の表面には、この接続端子13と同種の金属膜である銅(Cu)メッキ膜14が形成されている。また、この接続端子13を除く配線部12の表面は、ポリイミド等からなるフィルム状の絶縁材15、あるいはエポキシ系樹脂等からなる液状の絶縁材(図示略)により被覆されている。
【0026】
FPC2も、FPC1と全く同様に、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる可撓性を有する絶縁性の樹脂基板21の表面に銅(Cu)箔をエッチングして所定の回路配線とした配線部22が形成され、この配線部22の一端部が該配線部22を内側にして折り曲げられ、この折り曲げられた先端部がFPC1と電気的に接続するための接続端子(端子部)23とされている。
この接続端子23の表面には、この接続端子23と同種の金属膜である銅(Cu)メッキ膜24が形成されている。また、この接続端子13を除く配線部12の表面は、ポリイミド等からなるフィルム状の絶縁材25、あるいはエポキシ系樹脂等からなる液状の絶縁材(図示略)により被覆されている。
【0027】
ここでは、接続端子13の表面に、この接続端子13と同種の金属膜であるCuメッキ膜14を、接続端子23の表面に、この接続端子23と同種の金属膜であるCuメッキ膜24を、それぞれ形成しているが、例えば、接続端子13、23が金(Au)箔の場合、接続端子13、23それぞれの表面に、これらの接続端子13、23と同種の金属膜であるAuメッキ膜を形成したものとすればよい。
【0028】
上記の接続端子13と接続端子23とは、それぞれの表面に形成されたCuメッキ膜14、24のそれぞれの主面が互いに対向するように配置され、かつ、これら接続端子13、23同士は超音波接合法により接合されている。
接続端子13、23の接合界面、すなわちCuメッキ膜14、24の接合界面には、図5に示すように、面積が0.3μm2程度で深さが0.5μm程度の空隙31が複数個点在している。この空隙31は、超音波接合法により両者を接合した場合に生じる。」
「【0035】
次いで、FPC1とRPC2を超音波接合法により接合する。
図6に示すように、FPC1の接続端子13のCuメッキ膜14とRPC2の接続端子23のCuメッキ膜24とを重ね合わせ、次いで、この重ね合わせた部分に超音波接合機のホーン41を載置し、このホーン31に所定の加圧力を加えつつ、このホーン31から発生する超音波振動を上記の重ね合わせた部分に印加することで行われる。」

「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図5】


「【図6】



カ 引用文献10
当審が新たに引用する特開2016−54180号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。
「【0064】
図7の各図は、基板2がリードフィンガーを有する場合を説明するための図である。
図7(a)は、回路基板20を上側から見た図である。
基板2の上には、基板2の端部に至る配線3が形成されており、リード端子10は、基板2の端部にて配線3の上に配置されて超音波接合される。配線3の幅は、リード端子10の幅よりも広く設定されている。
配線3のうちリード端子10が設置された領域が電極5で所謂リードフィンガーを構成している。
【0065】
図7(b)は、配線3の中心線における回路基板20の断面図(A−A)である。
基板2の端部には、空間部分40が形成されている。空間部分40は、電極5の直下において、リード端子10とほぼ同じ幅で配線3の方向を長手方向とする切り込みとして形成されている。
空間部分40の幅は、配線3の幅よりも狭いため、配線3の幅と空間部分40の幅の差分の部分が配線3の貼り付けしろとなっている。
【0066】
図7(c)は、回路基板20にアンビル30と超音波接合ヘッド1をセットしたところを示している。
アンビル30の先端部分31は、上端部が長方形状の平坦面となっており、空間部分40に挿入されて電極5の下面に当接する。
アンビル30の側面には、基板2の下側の面に当接して先端部分31の挿入量を規制する段差部32が設けられており、これによって先端部分31の挿入量が適当な量に調節される。
【0067】
超音波ホーン15は、先端部分31の上端面と同様の長方形状の平坦面に形成された、より大きな先端面を有している。
超音波ホーン15は、リード端子10と電極5を下方(電極5の下面が当接するアンビル方向)に加圧し、この状態で超音波接合ヘッド1を駆動すると、リード端子10と電極5が超音波接合する。
本変形例では、大面積の電極5を短時間で超音波接合でき、かつ、接合強度も大きい。
リードフィンガーは、半導体素子でよく使用されるため、本変形例は半導体素子のワイヤボンディングに使用することができる。」





キ 周知技術の認定
(ア)周知技術1
引用文献8の記載事項から、次の技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術1」という)。
[周知技術1]
「液晶表示装置が、画素を有する基板(表示パネル基板)の他に、画素を駆動する駆動回路及び駆動回路に電気的に接続される配線を有するフレキシブル基板を備えていること。」

(イ)周知技術2
引用文献5及び9の記載事項から、次の技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術2」という)。
[周知技術2]
「2つの接続配線を接合する際、それぞれの接続配線の表面にCuメッキ膜を形成して、超音波接合法により接合すること。」

(ウ)周知技術3
引用文献9の【図3】、【図6】から明らかなように、次の技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術3」という)。
[周知技術3]
「2つの接続配線を超音波接合法により接合する際、2つの接続配線の線幅は異なり、各接続配線は長方形の断面形状を有し、2つの接続配線が接合する部分において、線幅が小さい方の接続配線の連続する表面の全体は、線幅が大きい方の接続配線に直接接触すること。」

(エ)周知技術4
引用文献10の【図7】から明らかなように、次の技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下「周知技術4」という)。
[周知技術4]
「2つの接続配線を超音波接合法により接合する際、超音波ホーンがある側の接続配線の線幅の方が、他の接続配線の線幅よりも小さいこと。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「液晶表示素子1」が表示画素を備えていることは自明であり、この表示画素は、本件補正発明の「画素」に相当する。
また、引用発明の「液晶表示素子1の素子基板3」は、本件補正発明の「第1基板」に相当し、引用発明の「液晶表示素子1の素子基板3の上面」に「インジウム・スズ酸化物からなる導電性の被膜が帯状に複数列平行に形成」された「端子4」は、上記表示画素に電気的に接続されることは自明であるから、本件補正発明の「第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線」に相当する。

イ 引用発明の「フレキシブルケーブル2の面上」に「銅箔からなる被膜」が「帯状に複数列平行に形成」された「端子5」は、本件補正発明の「第2配線」に相当する。

ウ 引用発明の「液晶表示素子1の素子基板3」は、液晶表示装置の構成要素であることは自明であり、このような液晶表示装置は、本件補正発明の「表示装置」に相当する。
また、液晶表示装置においては表示画素を駆動するための駆動回路が存在することも自明であるから、引用発明は、本件補正発明の「前記画素を駆動する駆動回路」に相当する構成を備えている。

エ 引用発明の「金属被膜11,12が形成された端子4,5どうしを密着させ」ることは、本件補正発明の「前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させる」ことに相当する。

オ 引用発明の「窒素ガス雰囲気の加熱炉のなかで加熱しつつ圧接し、さらに金属被膜11,12の面間に超音波振動を与えることにより、金属被膜11,12の表面層を互いに融着させるいわゆる超音波溶接を行い、複数列形成された端子4,5の金属被膜11,12が同時に面溶接され」ることは、本件補正発明の「前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合する」ことに相当する。

カ 引用発明の「液晶表示素子1とフレキシブルケーブル2とを接続する端子部の接続構造の形成方法」は、本件補正発明の「表示装置の製造方法」に相当する。

上記ア〜カの検討内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1〜3で相違する。

[一致点]
「画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線と、
第2配線と、を有する表示装置の製造方法であって、
前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させるステップと、
前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合するステップと、
を有する、
表示装置の製造方法。」

[相違点1]
「第2配線」が、本件補正発明では、「第2基板に設けられ、前記駆動回路に電気的に接続される」ものであるのに対して、引用発明では、「フレキシブルケーブル2」の面上に形成されているものの基板に設けられているとはいえず、駆動回路に電気的に接続されているかについては不明である点。

[相違点2]
本件補正発明では、「前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有」するのに対して、引用発明では、「端子4の面上にはさらにアルミニウムの被膜11が付着形成されて層構造をなして」いる点。

[相違点3]
本件補正発明では、「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なり、前記第2配線は長方形の断面形状を有し、前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し、前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触」しているのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
液晶表示装置が、画素を有する基板(表示パネル基板)の他に、画素を駆動する駆動回路及び駆動回路に電気的に接続される配線を有するフレキシブル基板を備えていることは、周知の技術であり(周知技術1を参照。)、引用発明に上記周知技術1を適用して、画素を駆動する駆動回路及び駆動回路に電気的に接続される配線を有するフレキシブル基板を備えるようにすることにより、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
2つの接続配線を接合する際、それぞれの接続配線の表面にCuメッキ膜を形成して、超音波接合法により接合することは、周知の技術であるところ(周知技術2を参照。)、引用文献1には、「被膜の形成及び面溶接が可能であれば適宜の金属素材の組み合わせとしてよい。」と記載されているから(摘記事項(ウ)を参照。)、引用発明に上記周知技術2を適用して、「金属被膜11,12」をCuメッキ膜として構成することにより、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について、
2つの接続配線を超音波接合法により接合する際、2つの接続配線の線幅は異なり、各接続配線は長方形の断面形状を有し、2つの接続配線が接合する部分において、線幅が小さい方の接続配線の連続する表面の全体は、線幅が大きい方の接続配線に直接接触することは、周知の技術であり(周知技術3を参照。)、また、超音波ホーンがある側の接続配線の線幅の方が、他の接続配線の線幅よりも小さいことも、周知の技術であるから(周知技術4を参照。)、これら周知の技術を引用発明の「端子4,5」に適用することにより、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術1〜4の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1〜4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において次の主張をしている。
「補正後の請求項1に係る発明は、「前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し」という構成と、「前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触する」という構成とを有します。
本願明細書の段落[0016]によれば、第1配線線幅を第2配線の線幅と異なるように構成した場合、接合時のアライメントずれによる接合面積のばらつきが生じにくくなるので、導通抵抗のばらつきを低減することができます。
一方、引用文献1、3、5は、「前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し」という構成を開示および示唆していません。」

イ また、請求人は、令和3年6月30日に提出した上申書において次の主張をしている。
「一方、引用文献1−5は「前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させる」および「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なる」という構成を開示および示唆していません。」

ウ 上記主張ア及びイについて検討する。
(ア)まず、「前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し」という構成、及び、「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なる」という構成については、上記(4)ウにおいて検討したとおり、これらの構成はいずれも周知な構成であって格別のものではない(周知技術3、4を参照)。
(イ)次に、「前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触する」という構成、及び、「前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させる」という構成について、引用発明では、「端子4の面上にはさらにアルミニウムの被膜11が付着形成されて層構造をなしており」、「端子5の面上には金の被膜12が付着形成されており」、「金属被膜11,12が形成された端子4,5どうしを密着させ」ているところ、このような金属被膜11、12が導電性を有することは明らかであるから、金属被膜自体も配線の一部(配線の最上層)として機能しているといえる。
したがって、引用発明において、「金属被膜11,12が形成された端子4,5どうしを密着させ」ることは、配線の一部である金属被膜11と12が直接接触することを意味するから、このことは、「前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触する」という構成、及び、「前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように直接接触させる」という構成に相当する。
よって、請求人の上記主張ア及びイを採用することはできない。

(6)小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜20に係る発明は、令和2年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次に特定されるとおりである。
「画素と、
前記画素を駆動する駆動回路と、
第1基板に設けられ、前記画素に電気的に接続される第1配線と、
第2基板に設けられ、前記駆動回路に電気的に接続される第2配線と、を有する表示装置の製造方法であって、
前記第1配線と前記第2配線とを互いに向かい合うように接触させるステップと、
前記第1配線と前記第2配線との接触部に荷重を加え、かつ振動を印加することにより前記第1配線と前記第2配線とを接合するステップと、
を有し、
前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする表示装置の製造方法。」

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献1及び5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開昭63−221381号公報(再掲)
引用文献5:国際公開第2012/124539号(再掲)

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。
上記引用文献8から、[周知技術1]において認定したとおりの周知技術が認められる(第2の2(2)キ(ア)を参照。)。
上記引用文献5、9から、[周知技術2]において認定したとおりの周知技術が認められる(第2の2(2)キ(イ)を参照。)。
上記引用文献9から、[周知技術3]において認定したとおりの周知技術が認められる(第2の2(2)キ(ウ)を参照。)。
上記引用文献10から、[周知技術4]において認定したとおりの周知技術が認められる(第2の2(2)キ(エ)を参照。)。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なり、前記第2配線は長方形の断面形状を有し、前記第2配線は前記第1配線の前記線幅よりも小さい線幅を有し、前記第1配線と前記第2配線とを接合する部分における前記第2配線の連続する表面の全体は、前記第1配線に直接接触すること」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、前記相違点1及び相違点2において相違しその余の点で一致するところ、上記第2の2において説示した理由と同様の理由により、本願発明も引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

5 上申書の補正案について
請求人は、令和3年6月30日に提出した上申書において、請求項1の「前記第2配線は長方形の断面形状を有し、・・・前記第1配線に直接接触すること」を削除した補正案を提示している。
しかしながら、上記第2の2(4)において説示したとおり、「前記第1配線の最上層の材料は、Ag、Mo、Moを含む合金、Cu、Cuを含む合金からなる群から選択される少なくとも1つを含有」することは、周知の技術であり(周知技術2を参照。)、「前記第1配線の線幅は前記第2配線の線幅と異なること」も、周知の技術であるから(周知技術3を参照。)、上記補正案で提示された請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術1〜3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、上記補正案について検討してみても、本願は拒絶すべきものであるという結論が変わることはない。

第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 居島 一仁
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-07-26 
結審通知日 2021-07-27 
審決日 2021-08-19 
出願番号 P2016-109699
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 岸 智史
濱野 隆
発明の名称 表示装置の製造方法  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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