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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A46B |
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管理番号 | 1383135 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-05 |
確定日 | 2022-03-29 |
事件の表示 | 特願2017−105007「歯ブラシ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月20日出願公開、特開2018−198795、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年5月26日の出願であって、令和2年12月25日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年3月5日に手続補正がされ、令和3年3月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年3月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 理由1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1 ・引用文献等 1、5 ・請求項 2 ・引用文献等 1−2、5 ・請求項 3−7 ・引用文献等 1−3、5 ・請求項 8−10 ・引用文献等 1−5 引用文献等一覧 1.実願平04−030683号(実開平05−080323号)のCD−ROM 2.特開2013−118944号公報 3.特開昭56−136503号公報 4.特開2007−190439号公報 5.再公表特許第2008/153070号 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって、請求項1に「楕円形状の断面形状の」及び「中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有しており、且つ楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えており」という事項が追加されたが、願書に最初に添付した明細書の段落【0023】には(下線は、当審で付した。)、 「歯ブラシ本体15の把持部11は、歯ブラシ10の柄部13における植毛台14とは反対側の後端部分を形成するもので、本実施形態では、図5(a)に示すように、後述する二次樹脂20が埋め込まれた状態で、短軸が9〜15mm程度、長軸が10〜18mm程度の大きさの、楕円形状の断面形状を備えている。把持部11は、好ましくは、植毛台14側の端部である、断面積が50mm2となっている把持部先端部11aから、後方の当該把持部11の中央部分に向けて、滑らかに連続させて断面積を僅かに拡大させる共に、中央部分から後端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を僅かに縮小させた状態で設けられている。これによって把持部11は、把持部先端部11aの後方領域に、断面積が50mm2以上となっている部分を有している。把持部11の断面積が50mm2以上となっている部分は、断面積が50〜200mm2となっていることが好ましく、50〜150mm2となっていることがさらに好ましい。柄部13の後端部でもある把持部11の後端部は、角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えている。」 と記載されているから、前記補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。したがって、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 また、前記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「把持部」の構成を限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 さらに、発明の特別な技術的特徴を変更するものではないから、特許法第17条の2第4項の規定に適合する。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1−10に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。 第4 本願発明 本願請求項1−10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明10」という。)は、令和3年7月5日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1−10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、把持部と、該把持部と前記植毛台とを連結するネック部とを含む、全長が150mm以上の長さの歯ブラシ本体を備える歯ブラシであって、 前記把持部は、断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を拡大させている部分を有していると共に、中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有しており、且つ楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えており、 前記ネック部は、全長に亘って断面積が50mm2に満たない部分となっており、 且つ前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの長さが、前記歯ブラシ本体の後端から前記植毛台の中心位置までの長さの、20%以上50%以下の長さとなっている歯ブラシ。 【請求項2】 前記ネック部は、前記把持部先端部から、前記植毛台との接続部分に向けて、断面積が連続して減少する形状を備えている請求項1記載の歯ブラシ。 【請求項3】 前記把持部における前記把持部先端部側の部分の表側表面に、親指の指腹部が押し当てられるように誘導する、指当てマーキング部が設けられている請求項1又は2記載の歯ブラシ。 【請求項4】 前記把持部における前記把持部先端部側の部分の裏側表面に、親指の指腹部が押し当てられるように誘導する、指当てマーキング部が設けられている請求項1〜3のいずれか1項記載の歯ブラシ。 【請求項5】 前記指当てマーキング部は、親指の指腹部に沿った表面形状となるように凹状に湾曲した形状の湾曲凹部となっている請求項3又は4記載の歯ブラシ。 【請求項6】 前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの把持部の長さが、80mm以下の長さとなっている請求項1〜5のいずれか1項記載の歯ブラシ。 【請求項7】 前記把持部先端部から前記植毛台の中心位置までの長さが、90mm以上の長さとなっている請求項1〜6のいずれか1項記載の歯ブラシ。 【請求項8】 前記把持部に、2次樹脂が埋め込まれており、該2次樹脂は、前記把持部の少なくとも表側表面に表出している請求項1〜7のいずれか1項記載の歯ブラシ。 【請求項9】 前記把持部に埋め込まれた2次樹脂は、透明又は半透明の樹脂である請求項8記載の歯ブラシ。 【請求項10】 前記把持部の少なくとも表側表面が、前記歯ブラシ本体とは異なる色に着色されている請求項1〜9のいずれか1項記載の歯ブラシ。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。 (1)「【図面の簡単な説明】 〔図1〕本考案の正面図である。 〔図2〕本考案の側面図である。 〔符号の説明〕 1 把柄部 2 頸部 3 刷毛部」 (2)「〔0003〕 〔課題を解決するための手段〕 本考案はその欠点を除くために、なされたものでそれを図面について説明する。 (イ)柄の把柄部(1)を手のひらの幅よりずっと短くする。 (ロ)柄の頸部(2)の長さを長くする。」 (3)「〔0004〕 〔使用法と効果〕 本考案はこのような構造であるから、図のように把柄部が短いことによって、パームグリップでは握りにくくペングリップで握りやすいようになっている。また頸部が長いことによって力点が刷毛部から遠くなることからさらに圧がかかりにくくなっている。以上のことにより、歯と歯ぐきをいためることなくかつ、より効率よくみがける方法を習慣化して身につけやすくなっている。」 (4)「【図1】 【図2】 」 (5)歯ブラシの刷毛部3側を前方とし、把持部1側を後方とすると、図1より、把柄部1は、把柄部1の前方端部の後方の領域に、把柄部1の前方端部から滑らかに連続させて幅を拡大させている部分を有していると共に、把柄部1の後方端部に向けて、滑らかに連続させて幅を縮小させた部分を有していることが看取される。また、図2より、把柄部1の厚みは、把柄部1の前方端部から後方端部に亘って一定であることが看取されるから、把柄部1の後方端部に向けて、滑らかに連続させて幅を拡大させている部分では、把柄部1の後方端部に向けて、滑らかに連続させて断面積が拡大しており、また、把柄部1の後方端部に向けて、滑らかに連続させて幅を縮小させた部分では、把柄部1の後方端部に向けて、滑らかに連続させて断面積が縮小しているといえる。 (6)図2より、把柄部1の後方端部は、把柄部1の厚み方向の両側で湾曲形状に面取りされた形状を備えていることが看取される。 (7)図1及び図2より、歯ブラシは、複数の毛束が設けられている刷毛部3と、把柄部1と、把柄部1と刷毛部3とに接続された頸部2とを含む、本体を備えること、前記本体の後方端部から把柄部1の前方端部までの長さが、本体の後方端部から刷毛部3の中心位置までの長さより相当短い長さとなっていることが看取される。 前記(1)−(7)の内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の毛束が設けられている刷毛部3と、把柄部1と、該把柄部1と前記刷毛部3とに接続された頸部2とを含む、本体を備える歯ブラシであって、 前記把柄部1は、把柄部1の前方端部の後方の領域に、前記把柄部1の前方端部から滑らかに連続させて断面積を拡大させている部分を有していると共に、後方端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を縮小させた部分を有しており、且つ前記後方端部が、前記把柄部1の厚み方向の両側で湾曲形状に面取りされた形状を備えており、 且つ前記本体の後方端部から前記把柄部1の前方端部までの長さが、前記本体の後方端部から前記刷毛部3の中心位置までの長さより相当短い長さとなっている歯ブラシ。」 2.引用文献5について 原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0021】 以下、本発明を適用した歯ブラシについて、図面を参照して詳細に説明する。 本発明を適用した歯ブラシ1は、図1〜図5に示すように、全体が長尺状を為すブラシ本体1Aを備え、このブラシ本体1Aは、長尺状のハンドル部2と、このハンドル部2の先端側に設けられたヘッド部3と、ハンドル部2とヘッド部3との間に設けられたネック部4とを有して構成されている。」 (2)「【0031】 具体的に、ハンドル部2は、図1及び図3に示すように、そのほぼ中央に位置する幅広部2aから、その長手方向の両側に位置する幅狭部2b,2cに向かって、漸次幅が狭くなる形状を有している。すなわち、幅広部2aは、その幅が相対的に広くなる部分であり、幅狭部2b,2cは、その幅が相対的に狭くなる部分であり、ハンドル部2は、これら幅広部2aと幅狭部2b,2cとの間で、その幅が連続的に変化した形状を有している。また、ハンドル部2の幅は、9〜17mmの範囲で変化していることが好ましく、この範囲であれば、握り易さや操作性、部材の強度などを充分に確保することができる。 【0032】 また、ハンドル部2は、図4及び図5に示すように、幅広部2aから幅狭部2b,2cに向かって、その厚みが漸次薄くなる形状を有している。すなわち、このハンドル部2は、ほぼ中央部において、その厚みが相対的に厚くなる肉厚部2dと、長手方向の両側において、その厚みが相対的に薄くなる肉薄部2e,2fとを有し、且つ、肉厚部2dから肉薄部2e,2fに向かって、その厚みが漸次薄くなる形状を有している。また、ハンドル部2の厚みは、6〜15mmの範囲で変化していることが好ましく、この範囲であれば、握り易さや操作性、部材の強度などを充分に確保することができる。 【0033】 また、ハンドル部2の後端部は丸みを帯びている。さらに、ハンドル部2の先端部には、ストッパー部6が設けられている。このストッパー部6は、使用者がハンドル部2を把持した際の指係りを良くするための部分であり、ハンドル部2の両面において肉薄部2eよりも厚みが厚くなっている。」 (3)「【0036】 芯部1Bは、被覆材9が被覆される部分として、ハンドル部2の後端部からストッパー部6までの間に亘って設けられている。そして、被覆材9は、この芯部1Bの全周面を覆うことによって、ブラシ本体1Aの露出した面と連続した面を形成しており、この被覆材9を含むハンドル部2の断面形状は、図2に示すように楕円となっている。」 (4)「【0045】 さらに、凹条部7及び凸条部8は、ハンドル部2の被覆材9で被覆された芯部1Bのうち、少なくとも70%以上の領域に亘って設けられていることが好ましく、さらに、芯部1Bの全長に亘って設けた場合には、例えばパームグリップやペングリップといった握り方をした場合でも、凸条部8が形成された部分を確実に把持することができる。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 歯ブラシにおいて、複数の毛束が植毛台に形成された複数の植毛孔に植設されることは、本願出願時の技術常識であるから(例えば、引用文献2の【0015】、引用文献4の【0011】、引用文献5の【0025】−【0026】の記載を参照)、引用発明における「複数の毛束が設けられている刷毛部3」は、本願発明1における「毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台」に相当する。 引用発明における「把柄部1」、「該把柄部1と前記刷毛部3とに接続された頸部2」及び「本体」は、それぞれ、本願発明1における「把持部」、「該把持部と前記植毛台とを連結するネック部」及び「歯ブラシ本体」に相当する。 引用発明における「前記把柄部1は、把柄部1の前方端部の後方の領域に、前記把柄部1の前方端部から滑らかに連続させて断面積を拡大させている部分を有している」との事項と、本願発明1における「前記把持部は、断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を拡大させている部分を有している」との事項とは、「前記把持部は、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から、滑らかに連続させて断面積を拡大させている部分を有している」との点で共通する。 引用発明における「後方端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を縮小させた部分を有して」いるとの事項と、本願発明1における「中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有して」いるとの事項とは、「後端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を縮小させた部分を有して」いるとの点で共通する。 引用発明における「前記後方端部が、前記把柄部1の厚み方向の両側で湾曲形状に面取りされた形状を備えて」いるとの事項と、本願発明1における「楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えて」いるとの事項とは、「後端部が、湾曲形状に面取りされた形状を備えて」いるとの点で共通する。 引用発明における「前記本体の後方端部から前記把柄部1の前方端部までの長さが、前記本体の後方端部から前記刷毛部3の中心位置までの長さより相当短い長さとなっている」との事項と、本願発明1における「前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの長さが、前記歯ブラシ本体の後端から前記植毛台の中心位置までの長さの、20%以上50%以下の長さとなっている」との事項とは、「前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの長さが、前記歯ブラシ本体の後端から前記植毛台の中心位置までの長さより相当短い長さとなっている」との点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「毛束が植設される複数の植毛孔が形成されている植毛台と、把持部と、該把持部と前記植毛台とを連結するネック部とを含む、歯ブラシ本体を備える歯ブラシであって、 前記把持部は、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から、滑らかに連続させて断面積を拡大させている部分を有していると共に、後端部に向けて、滑らかに連続させて断面積を縮小させた部分を有しており、且つ後端部が、湾曲形状に面取りされた形状を備えており、 且つ前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの長さが、前記歯ブラシ本体の後端から前記植毛台の中心位置までの長さより相当短い長さとなっている歯ブラシ。」 <相違点1> 本願発明1は、「全長が150mm以上の長さの」歯ブラシ本体を備えるのに対し、引用発明は、本体の長さが明らかではない点。 <相違点2> 本願発明1は、前記把持部は、「断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として」、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から「中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で」、滑らかに連続させて「楕円形状の断面形状の」断面積を拡大させている部分を有していると共に、「中央部分から」後端部に向けて、「後端部の断面積が50mm2以上となるように」、滑らかに連続させて「楕円形状の断面形状の」断面積を縮小させた部分を有しており、且つ「楕円形状の断面形状を有する」後端部が、「全周の角部が」湾曲形状に面取りされた形状を備えているのに対し、引用発明は、把柄部1の断面形状や断面積が明らかではない点。 <相違点3> 本願発明1は、「前記ネック部は、全長に亘って断面積が50mm2に満たない部分となって」いるのに対し、引用発明は、頸部2の断面積が明らかではない点。 <相違点4> 本願発明1は、前記歯ブラシ本体の後端から前記把持部先端部までの長さが、前記歯ブラシ本体の後端から前記植毛台の中心位置までの長さ「の、20%以上50%以下の」長さとなっているのに対し、引用発明は、前記本体の後端から前記把柄部1の先端部までの長さが、前記本体の後端から前記刷毛部3の中心位置までの長さ「より相当短い」長さとなっているが、その比率が明らかではない点。 (2)相違点についての判断 ア 事案に鑑み、前記相違点2について先に検討する。 (ア) 前記第5 2.(2)の通り、引用文献5には、ハンドル部2の中央部に幅広部2a及び肉厚部2dを設け、前記中央部の長手方向の両側に幅狭部2b,2c及び肉薄部2e,2fを有しており、ハンドル部2の幅狭部2b及び肉薄部2eを設けた位置から幅広部2a及び肉厚部2dを設けた中央部に向けて、滑らかに連続させて断面積を拡大させているといえるが、ハンドル部2の先端部には、肉薄部2eよりも厚みが厚くなっているストッパー部6を設けているから、ハンドル部2のストッパー部6を設けた先端部から幅広部2a及び肉厚部2dを設けた中央部に向けて、滑らかに連続させて断面積を拡大させているとはいえず、引用文献5を根拠として、「該把持部先端部から中央部分に向けて」、「滑らかに連続させて断面積を拡大させている」形状の把持部が周知技術であるということはできない。また、当該事項が周知技術であるといい得る証拠もほかに見あたらない。よって、当業者であっても、引用発明において、「該把持部先端部から中央部分に向けて」、「滑らかに連続させて断面積を拡大させている」という発明特定事項を得ることが、容易にできたとはいえない。 (イ) 仮に「該把持部先端部から中央部分に向けて」、「滑らかに連続させて断面積を拡大させている」形状の把持部が周知技術であったとしても、依然として、本願発明1の「断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部」とする点、「断面積が50〜200mm2の範囲内で」、滑らかに連続させて「楕円形状の断面形状の」断面積を拡大させる点、「中央部分から」後端部に向けて、「後端部の断面積が50mm2以上となるように」、滑らかに連続させて「楕円形状の断面形状の」断面積を縮小させる点、及び、「楕円形状の断面形状を有する」後端部が、「全周の角部が」湾曲形状に面取りされた形状を備えている点は、相違点として残る。 (ウ) そして、相違点2に係る本願発明1の把持部の断面積に関するこれらの数値限定の技術的意義についてみると、本願発明1は、「パームグリップにより歯ブラシ10の柄部13を把持して、図7に示すように、力点となる柄部13の中間部分を親指と人差し指との間に挟み込んだ際に、挟み込んだ部分の柄部13の断面形状が、φ8mm以上の円形となっていると、安定した状態でしっかりと挟み込めるようになることを見出し、φ8mmの円形の断面積に相当する、断面積が50mm2の部分を基準として、柄部13において把持し易い部分となる把持部11と、柄部13において把持部11と植毛台14とを連結する部分となるネック部12とが、後述する所定の形状となるように形成されるようになっている」(【0015】参照)とともに、「把持部11の断面積が50mm2以上となっている部分は、断面積が50〜200mm2となっていることが好まし」い(【0023】参照)ものであるから、前記第5 1.(3)の通り、パームグリップでは握りにくくペングリップで握りやすいようにしている引用発明において、パームグリップで安定した状態でしっかりと挟み込むための構成である、「前記把持部は、断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を拡大させている部分を有していると共に、中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有しており、且つ楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備え」ているという発明特定事項を得ることが、当業者にとって適宜なし得た設計的事項であるとはいえない。 (エ) また、引用文献2−4にも、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。 (オ) したがって、前記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易にできたとはいえない。 イ 次に、前記相違点3について検討する。 (ア) 前記ア(ウ)と同様に、パームグリップでは握りにくくペングリップで握りやすいようにしている引用発明において、パームグリップで安定した状態でしっかりと挟み込めるか否かの境界である50mm2という断面積を基準とした「前記ネック部は、全長に亘って断面積が50mm2に満たない部分となって」いるという発明特定事項を得ることが、当業者にとって適宜なし得た設計的事項であるとはいえない。 (イ) また、引用文献2−4にも、前記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。 (ウ) したがって、前記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは、当業者であっても容易にできたとはいえない。 ウ したがって、前記相違点1、4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献2−5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2−10について 本願発明2−10は、本願発明1の「前記把持部は、断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を拡大させている部分を有していると共に、中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有しており、且つ楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えており、前記ネック部は、全長に亘って断面積が50mm2に満たない部分となっており」という事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2−5に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1−10は、「前記把持部は、断面積が50mm2となっている位置を把持部先端部として、該把持部先端部の後方領域に、該把持部先端部から中央部分に向けて、断面積が50〜200mm2の範囲内で、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を拡大させている部分を有していると共に、中央部分から後端部に向けて、後端部の断面積が50mm2以上となるように、滑らかに連続させて楕円形状の断面形状の断面積を縮小させた部分を有しており、且つ楕円形状の断面形状を有する後端部が、全周の角部が湾曲形状に面取りされた形状を備えており、前記ネック部は、全長に亘って断面積が50mm2に満たない部分となっており」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1−5に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由1(特許法第29条第2項)を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-14 |
出願番号 | P2017-105007 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A46B)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小川 恭司 |
特許庁審判官 |
熊谷 健治 長馬 望 |
発明の名称 | 歯ブラシ |
代理人 | 特許業務法人翔和国際特許事務所 |