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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B |
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管理番号 | 1383136 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-05 |
確定日 | 2022-03-15 |
事件の表示 | 特願2018−534037「電子式落下イベント通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日国際公開,WO2017/116501,平成31年 3月22日国内公表,特表2019−507919,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2016年7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年12月30日,米国)を国際出願日とする出願であって,令和元年7月10日に手続補正がなされ,令和2年8月20日付けで拒絶理由が通知され,令和2年11月24日付けで手続補正がなされ,令和3年2月22日付けで拒絶査定がされ,令和3年7月5日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年2月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1 ・引用文献等 1−3 ・請求項 2 ・引用文献等 1−3 ・請求項 3 ・引用文献等 1−3 ・請求項 4 ・引用文献等 1,または,1,3 ・請求項 5 ・引用文献等 1,または,1,3 ・請求項 6 ・引用文献等 1−3 <引用文献等一覧> 1.特開2011−104339号公報 2.特開2009−159239号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2001−262408号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 第3 本願発明 本願請求項1−4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明4」という。)は,令和3年7月5日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−4に記載された事項により特定される発明である。 「【請求項1】 落下イベント検知通信システムであって, 落下防止システムの一部として実現された少なくとも1つの落下検知ノードを含み, 前記少なくとも1つの落下検知ノードは, 落下イベントが生じたことを示す状態に基づいて,作動信号を生成する少なくとも1つの検知要素と, 前記少なくとも1つの検知要素から前記作動信号を受信すると,少なくとも1つの落下検知信号を送信するノード送信機と,を備え, 更に,高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに記憶されたパーソナル通信アプリケーションを含み, 前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードの前記ノード送信機からの前記落下検知信号について前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに監視させ, 更に,前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードから前記少なくとも1つの落下検知信号を受信することに少なくとも部分的に基づいて,落下イベントが生じたかどうかを前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに判断させ, 更にまた,前記パーソナル通信アプリケーションは,落下イベントが生じたと判断されると,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスにリモート通信デバイスへと落下警告メッセージを送信させるものであり, 前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスは携帯電話であって,前記パーソナル通信アプリケーションは,選択時間よりも長い間,前記落下検知信号を連続的に受信した後にのみ,前記携帯電話に前記落下警告メッセージを送信させる, 落下イベント検知通信システム。 【請求項2】 前記少なくとも1つの検知要素は,前記落下防止システムの少なくとも1つの構成要素が選択重量を超える荷重を受けると作動するスイッチである,請求項1に記載の落下イベント検知通信システム。 【請求項3】 少なくとも1つの落下検知ノードは,選択時間の間,前記少なくとも1つの検知要素から前記作動信号を受信したときにのみ,前記少なくとも1つの落下検知信号を送信する,請求項1に記載の落下イベント検知通信システム。 【請求項4】 請求項1に記載の落下イベント検知通信システムを用いて落下イベントをリモート通信デバイスに通信する方法であって, 落下防止システムに実現された少なくとも1つの落下検知ノードによって,落下イベントが検知されると,落下検知信号を生成することと, 高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスによって,前記落下検知信号について前記少なくとも1つの落下検知ノードを監視することと, 前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスによって,前記少なくとも1つの落下検知ノードからの落下検知信号の検知に少なくとも部分的に基づいて,落下警告メッセージを生成することと を含む方法。」 第4 引用文献,引用発明等 原査定の理由で用いられた特開2011−104339号公報(以下,「引用文献1」という。)には, 「【0023】 [第1の実施形態] <1−1.ハーネス型安全帯の構成> 図1は,本実施の形態にかかるハーネス型安全帯1を展開した図である。ハーネス型安全帯1は,左右の肩ベルト11,11,左右の腿ベルト12,12,胴ベルト13などのベルト群から構成される。」 「【0028】 左右の肩ベルト11,11は背部の交差部において,それぞれ連結部材18に挿入されている。連結部材18にはリングが取り付けられ,リングを介して連結ベルト14が取り付けられている。連結ベルト14の他端にもリングが取り付けられており,このリングに連結ロープ(ランヤード)が装着可能となっている。作業員は,連結ロープの先に取り付けられたフックを,確実に固定された柱,ポールなどの部材に引っ掛けることで高所作業を行うことができる。 【0029】 このような構成のハーネス型安全帯1を,作業員は高所作業を行うときに装着する。腿ベルト12,12を股部に装着し,肩ベルト11,11を肩に掛けた状態で,第1バックル31と第1差し込みプレート32とを連結し,第2バックル41と第2差し込みプレート42とを連結する。また,第3バックル51と第3差し込みプレート52とを胴部の前面で連結する。なお,本実施の形態においては,第1,第2,第3バックル31,41,51としてワンタッチ式のものを利用しているが,そのほかにもスライド式のものを利用することもできる。 【0030】 左右の肩ベルト11,11は背部の交差部において,それぞれ連結部材18に挿入されている。連結部材18にはリング19が取り付けられている。リング19には,連結ベルト14が取り付けられている。連結ベルト14の他端にもリング16が取り付けられており,このリング16に1本の連結体(ランヤード)が装着可能となっている。リング19には,もう1本の連結体(ランヤード)が,もう1本の連結ベルト14を介して(あるいは連結ベルト14を介さずに直接に)取り付けられる。なお,連結ベルト14を用いずに,リング19に直接に2本の連結体(ランヤード)を取り付ける構造としても良い。 【0031】 作業員は,連結体の一端に設けられたフックを,被掛止物である親綱やタラップや柱等に引っ掛けることで,安全に高所作業を行うことができる。連結体やフックについては,後で詳しく説明する。また,本実施形態のハーネス型安全帯1は,上述のとおり2本の連結体で作業員の安全を確保する。本実施形態において安全帯1で用いる2本の連結体は,全く同じ仕様のものであっても良いし,例えば,1本の連結体が主連結体として機能し,もう1本の連結体が,主連結体の補助として機能する補助連結体であるものとしても良い。より具体的には,例えば,補助連結体を,主連結体よりも短いものとしても良い。 【0032】 また,左右の肩ベルト11,11を胸付近で連結するための連結ベルト15が設けられている。連結ベルト15は,図1および図2に示すようなコントロールボックス21(制御装置)と連結部22とで連結され,コントロールボックス21と連結部22とは着脱可能になっている。コントロールボックス21のケースの前面には,ランプ窓214と,スイッチ215と,スピーカカバー216とが設けられている。ランプ窓214の内部にはLED等の光源が設けられている。スピーカカバー216の内部には,ブザー音等の警告音や合成音声による警告メッセージ等を出力するためのスピーカが内蔵されている。光源およびスピーカについては後で説明する。」 【図1】 「【0041】 <1ー3.安全帯使用状況確認システムの構成および動作> 次に,上記のハーネス型安全帯1および連結体7が正しく使用されていることを確認するためのシステムの構成について説明する。図8は,確認システムのシステム構成図である。この確認システムは,ハーネス型安全帯1と,2本の連結体7と,センター装置としてのパーソナルコンピュータ(以下,PCとする。)6などから構成される。なお,ここでは,2本の連結体7のうち,主連結体として用いられる方を連結体7aと表記し,補助連結体として用いられる方を連結体7bと表記する。また,連結体7a,7bの構成要素についても,それぞれにa,bの参照符号を付記する。例えば,連結体7aのフックには参照符号72aを付記し,連結体7bのフックには参照符号72bを付記する。 【0042】 PC6は,たとえば,管理室などに設置されている。たとえば建設現場であれば,建設現場内に設けられた現場監督室などにPC6が設置されている。PC6には,安全帯の状態確認用のアプリケーションプログラムがインストールされている。PC6は,安全帯の状態確認用アプリケーションプログラムと無線LANなどのドライバプログラムを利用し,安全帯の状態確認用アプリケーションを実行可能としている。このように,本実施の形態においては,一般的なPCとプログラムを用いて確認装置を構成している。 【0043】 図8に示すように,本実施形態にかかる確認システムにおいて,連結体7aのフック72aには,前述のとおり,圧力センサ720aおよび開閉センサ729aと,回路基板728aとが設けられている。回路基板728aには,圧力センサ720aおよび開閉センサ729aからそれぞれの出力信号を受け取って無線送信する送信ユニット7281aが設けられている。なお,連結体7bのフック72bの構成も基本的にはこれと同様であるため,重複した説明は省略する。 【0044】 そして,ハーネス安全帯1のコントロールボックス21には,制御部210と,送受信ユニット211と,3色のLED光源212と,スピーカ213とが設けられている。送受信ユニット211は,フック72aの送信ユニット7281aおよびフック72bの送信ユニット7281bからセンサ等の出力信号を受信し,制御部210へ渡す。また,送受信ユニット211は,フックハンガー25,25にそれぞれ設けられたスイッチセンサ253(ここでは253a,253bと表記する)からの出力信号を受信し,制御部210へ渡す。 【0045】 制御部210は,CPU,RAMなどを備え,コントロールボックス21の全体制御を行う。また,制御部210は,センサからの出力信号を処理し,その処理結果をセンター装置としてのPC6へ送信すると共に,必要に応じて,LED光源212やスピーカ213を用いて作業員へ警告を行う。送受信ユニット211は,制御部210が検知したフックの状態等の情報を,PC6に無線により送信する。」 「【0048】 PC6は,制御部61と,送受信ユニット62と,モニタ63と,マイク64と,スピーカ65とを備えている。送受信ユニット62は,ハーネス安全帯1のコントロールボックス21の送受信ユニット211から送られた信号を制御部61へ渡す。制御部61は,この信号を処理し,その処理結果をモニタ63へ表示すると共に,必要に応じて,マイク64およびスピーカ65を介して作業員へ指示を出す。なお,マイク64およびスピーカ65の代わりに,携帯電話やトランシーバを利用して,作業員へ指示を出すようにしても良い。」 【図8】 「【0050】 以下,上記の構成にかかる確認システムの動作について説明する。 【0051】 作業員は,作業にとりかかる前に,ハーネス型安全帯1を身体に装着し,次に,ハーネス型安全帯1に2本の連結体7a,7bを結合する。このとき,連結体7a,7bのフック72a,72bは,ハーネス型安全帯1のフックハンガー25,25にそれぞれ掛けられている。ここで,作業員は,フック72a,72bの電源スイッチをオンにすることにより,開閉センサ729a,729b,圧力センサ720a,720b,および回路基板728a,728bへの電源供給が開始される。なお,フックハンガー25のスイッチセンサ253a,253bへの電源供給は,この電源スイッチのオンに連動して開始するようにしても良いし,別個のスイッチを設けて制御しても良い。上記の各センサは,電源供給が開始されると,所定のタイミングで周期的に,センサ出力信号を送信ユニット7281a,7281bへ送り出す。送信ユニット7281a,7281bは,上記センサ出力信号を所定のタイミングで制御部211へ送り出す。」 「【0054】 また,圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)が所定時間(例えば3秒)を超えて加わったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が足場等の高所から落下したものと判定する。また,圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)がかかったが,所定時間(例えば3秒)以内に所定値以下に戻ったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が転倒したが落下はしていないものと判定する。」 「【0060】 以上のとおり、本実施形態の確認システムによれば、フックのセンサからの出力信号に基づいて、落下事故の発生の可能性を検知してすみやかに警告することができ、万が一の事故発生の際にも、監督者や周囲の作業員が迅速な措置をとることが可能となる。」 の記載があるから, 「ハーネス型安全帯1は,左右の肩ベルト11,11,左右の腿ベルト12,12,胴ベルト13などのベルト群から構成され, 左右の肩ベルト11,11は背部の交差部において,それぞれ連結部材18に挿入され,連結部材18にはリングが取り付けられ,リングを介して連結ベルト14が取り付けられ, このような構成のハーネス型安全帯1を,作業員は高所作業を行うときに装着し, 連結部材18にはリング19が取り付けられ,リング19には,連結ベルト14が取り付けられ,連結ベルト14の他端にもリング16が取り付けられており,このリング16に1本の連結体(ランヤード)が装着可能となっており,作業員は,連結体の一端に設けられたフックを,被掛止物である親綱やタラップや柱等に引っ掛けることで,安全に高所作業を行うことができ, 左右の肩ベルト11,11を胸付近で連結するための連結ベルト15が設けられ,連結ベルト15は,コントロールボックス21(制御装置)と連結部22とで連結され,コントロールボックス21と連結部22とは着脱可能になっており, 確認システムは,ハーネス型安全帯1と,2本の連結体7と,センター装置としてのPC6などから構成され,2本の連結体7のうち,主連結体として用いられる方を連結体7aと表記し,補助連結体として用いられる方を連結体7bと表記し,連結体7aのフックには参照符号72aを付記し,連結体7bのフックには参照符号72bを付記し, PC6は,建設現場内に設けられた現場監督室にPC6が設置され,PC6には,安全帯の状態確認用のアプリケーションプログラムがインストールされており, 連結体7aのフック72aには,圧力センサ720aおよび開閉センサ729aと,回路基板728aとが設けられ,回路基板728aには,圧力センサ720aおよび開閉センサ729aからそれぞれの出力信号を受け取って無線送信する送信ユニット7281aが設けられ, 連結体7bのフック72bの構成もフック72aと同様であり、 ハーネス安全帯1のコントロールボックス21には,制御部210と,送受信ユニット211と,3色のLED光源212と,スピーカ213とが設けられ,送受信ユニット211は,フック72aの送信ユニット7281aおよびフック72bの送信ユニット7281bからセンサ等の出力信号を受信し,制御部210へ渡し,また,フックハンガー25,25にそれぞれ設けられたスイッチセンサ253(253a,253b)からの出力信号を受信し,制御部210へ渡し, 制御部210は,CPU,RAMなどを備え,コントロールボックス21の全体制御を行い,センサからの出力信号を処理し,その処理結果をセンター装置としてのPC6へ送信すると共に,必要に応じて,LED光源212やスピーカ213を用いて作業員へ警告を行い,送受信ユニット211は,制御部210が検知したフックの状態等の情報を,PC6に無線により送信するものであって, 作業員は,フック72a,72bの電源スイッチをオンにすることにより,開閉センサ729a,729b,圧力センサ720a,720b,および回路基板728a,728bへの電源供給が開始され,上記の各センサは,電源供給が開始されると,所定のタイミングで周期的に,センサ出力信号を送信ユニット7281a,7281bへ送り出し,送信ユニット7281a,7281bは,上記センサ出力信号を所定のタイミングで制御部211へ送り出し, 圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)が所定時間(例えば3秒)を超えて加わったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が足場等の高所から落下したものと判定し,また,圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)がかかったが,所定時間(例えば3秒)以内に所定値以下に戻ったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が転倒したが落下はしていないものと判定し, フックのセンサからの出力信号に基づいて、落下事故の発生の可能性を検知してすみやかに警告することができ、万が一の事故発生の際にも、監督者や周囲の作業員が迅速な措置をとることが可能となる 確認システム。」 の発明が記載されている。(以下,「引用発明」という。) 原査定の理由に用いられた特開2009−159239号公報(以下,「引用文献2」という。)には, 「【0019】 前記端末機1は,携帯電話1aと工場等の敷地内に通信回線を持つPersonal Handy phone System(以下,PHSと略す)1bからなるものであり,また,前記携帯電話1aには携帯電話1aに加えられた外力により端末機1に発生する加速度を検知する加速度センサー3と,この加速度センサー3の情報と前記端末機1内に記憶された閾値との比較から異常発生を検知する異常検知手段(図示せず)と異常発生信号の発信手段(図示せず)が内蔵されている。更に,RFID(Radio Frequency Identification)等の接触/非接触型で読み書き可能なICタグ手段(図示せず)を備えている。なお,実施形態では端末機1として,携帯電話1aとPHS1bとから構成されている例を示すが,例えば,携帯電話1aとPHS1bの両方の機能を備えた1つの端末機で構成した機器を用いてもよい。一方,制御装置2には携帯電話1aの位置情報とPHS1bの位置情報とで補完しあって異常発生位置を特定する位置特定手段(図示せず)を設けたものとなっている。 即ち,加速度センサー付きの携帯電話1aから,加速度センサー3で検知した加速度情報(以下,「揺れ情報」とも記載する)から,後述するような作業者の動作に関する異常状態を検知し,この異常情報を制御装置2に向けて常に自動的に発信するようにしたので,現場での作業,特に一人作業時に何らかの非常事態が発生し,かつ作業者が積極的に連絡できない等の状況下にあったとしても,制御装置側においては,その異常発生の事態を自動的かつ即座に検知することができることとなるのである。 なお,実施形態では加速度センサー3が携帯電話1aに備えられている例を示すが,携帯電話1aに限らず,PHS1bに備わっていてもよい。また,上述の通り加速度センサー3は,端末機1に加えられた外力により端末機1に発生する加速度を検知する機能であるが,引力も検知できるものが好ましい。 【0020】 加速度センサー3が所定の閾値以上で一定のリズムの加速度を検出している場合には,異常検出手段は作業者が普通に動いていると認識し正常状態と判断するのを原則としている。 そして,(a)一定時間閾値以下になった場合は,作業者が意識不明になったと判断し,(b)加速度センサーが落下を検知した場合は,作業者が落下したと判断し,(c)加速度センサーの傾き情報(引力を検知している方向)が閾値以上の時間継続した場合は,作業者が転倒したと判断して,前記(a)〜(c)のいずれかに該当する時は,作業者の意思とは無関係に,異常発生として検知することとなる。この(a)〜(c)は単なる例示であって,その他の状況を異常発生として設定してもよいことは勿論である。 これにより,従来検知が困難であった作業者の気絶,落下,転倒等の事故の検出を,正確に行うことが可能となる。 【0021】 図2に,端末機1での加速度センサーの情報による動作の概略フロー図の一例を示し,また,図3にこの場合の装置の概略ブロック図を示す。なお,図中の丸付き数字は,フローのステップ番号を示すものである。 ステップ1で稼動制御信号を入力すると,ステップ2でこの制御信号の有無を判別する。信号が無ければステップ3で異常検出手段であるアプリケーションを非有効とし,図2に示されるように,ステップ1で稼動制御信号が入力されるとステップ4でアプリケーションを有効とする。具体的には,敷地内の特に危険な現場等の出入り口にICタグ読み取り装置を設置しておき,作業員が危険現場に出入りする際に端末機1をICタグ読み取り装置にかざしたり,あるいは端末機1へのボタン操作したりする等により,端末機1に対して稼動制御信号が入力される。なお,ここでいうアプリケーションとは,端末機1に格納されたアプリケーションであり,端末機1の各種機能を実行させるものである。作業者が危険現場に入る際にはアプリケーションが有効になり,危険現場から出る際にはアプリケーションは非有効となる。 【0022】 アプリケーションを有効にした後は,加速度センサーの揺れ情報を基に,ステップ5〜ステップ9のいずれかに該当するか否かを判別する。 ステップ5においては,一定のリズムを検知するか否かを判別する。所定の方向に閾値 以上で一定のリズムを検知した場合は,作業者が意図的に正常状態であることを発信したいと判断し,次いで,ステップ16において携帯電話1aがGPS衛星より位置情報を取得後,制御装置2へ正常信号を発信する。一方,一定のリズムを検知できない場合は,再度測定モードに戻る。 また,ステップ6においては,一方向に激しい往復運動を検知するか否かを判別し,検知した場合は作業者が意図的に異常状態であることを発信したいと判断し,検知しない場合は再度測定モードに戻る。 ステップ7においては,一時的に無重力状態となったか否かを判別し,検知した場合は作業者が落下したと判断し,検知しない場合は再度測定モードに戻る。 ステップ8においては,加速度の向きが変わったか否かを判別し,検知した場合は作業者が転倒したと判断し,検知しない場合は再度測定モードに戻る。 ステップ9においては,全方向の加速度が微弱なことを検知するか否かを判別し,検知した場合は作業者が意識を失ったと判断し,検知しない場合は再度測定モードに戻る。 【0023】 前記ステップ6〜ステップ9において,何らかの異常事態が発生したと判断した場合は,端末機1は画面表示,音,バイブレーション等により,ステップ6〜ステップ9の何れかと判断されたことを作業者に伝える。そして,次のステップ15において,作業者からのキャンセル動作の信号有無を判別する。これは,誤動作や誤発信等による異常発生信号であるか否かを確認するためであり,キャンセル信号があった場合は先の異常発生信号は誤信号であったと判断して,再びステップ4へ戻る。一方,キャンセル信号がない場合は,ステップ17において携帯電話1aがGPS衛星より位置情報を取得した後,制御装置2へ異常事態発生の警報信号を発信する。次いで,ステップ18により,制御装置2のディスプレーに異常事態発生の表示を行なう。これにより管理者が異常事態発生を認識できるようになる。また,制御装置2のディスプレーに表示するだけでなく,予め定められた管理者等に異常事態発生の情報を送信してもよい。」 【図1】 【図2】 の記載があるから, 「携帯電話1aに加えられた外力により端末機1に発生する加速度を検知する加速度センサー3と,この加速度センサー3の情報と前記端末機1内に記憶された閾値との比較から異常発生を検知する異常検知手段と異常発生信号の発信手段が内蔵されている携帯電話1aにおいて, 稼動制御信号が入力されるとアプリケーションを有効とし,加速度センサーの揺れ情報を基に, 一時的に無重力状態となったか否かを判別し,検知した場合は作業者が落下したと判断することを含む判別を行い, 判断されたことを作業者に伝え,誤動作や誤発信等による異常発生信号であるか否かを確認するため作業者からのキャンセル動作の信号有無を判別し, キャンセル信号がない場合は,携帯電話1aがGPS衛星より位置情報を取得した後,制御装置2へ異常事態発生の警報信号を発信し,制御装置2のディスプレーに異常事態発生の表示を行なって管理者が異常事態発生を認識できるようになり,予め定められた管理者等に異常事態発生の情報を送信してもよい, 携帯電話1a。」(以下,「引用文献2記載技術」という。) が記載されている。 原査定の理由に用いられた特開2001−262408号公報(以下,「引用文献3」という。)には, 「【0025】 【発明の実施の形態】<実施の形態1>図1は本実施の形態1のマルチバンド送受信機能(ウェアラブル・マルチバンド送受信装置ともいう)付きジャケットの概略構成図である。図2はウェアラブル・マルチバンド送受信装置をジャケット12に設けた場合のそれぞれの各機器の取り付け位置を示す外観図である。 【0026】このウェアラブル・マルチバンド送受信装置は,TV・ラジオ(AM/FM)用アンテナ2,携帯電話用アンテナ3,トランシーバ用アンテナ4及びGPS用アンテナ5からなるアンテナ部1と,ユニバーサル・チューナ7及び制御手段8を有するマルチバンド送受信部6と,近距離無線機及び有線コネクタからなるI/O部9と,ヒューマン・インタフェース部10と,センサ部11とで構成され,後述するジャケット12にそれぞれ取り付けられている。 【0027】前述のアンテナ部1は図2に示すようにジャケット12の上部に取り付けられるのが好ましい。また,GPS用アンテナ5はジャケット12の肩部に内蔵されるのが好ましい。 【0028】ヒューマン・インタフェース部10は,例えば,スピーカ10aと,マイク10bと,片手操作が可能なコントローラ10c(キーボタン付き)と,液晶ディスプレイ10dとからなり,コントローラ10cと液晶ディスプレイ10dについてはワイヤレス構造となっている。センサ部11は,例えば,体温検知センサ11aと,電極を有する心拍検知センサ11bと,高所等から落下したときの振動を検知する振動検知センサ11cと,海や川等に落ちたときに水を検知する水検知センサ11dとからなっている。 【0029】マルチバンド送受信部6のユニバーサル・チューナ7は,各アンテナのチューニング機能,変復調機能及びフロントエンド機能を有し,アンテナ部1を介して情報が受信されたときはその情報をチューニングして復調し,それをスピーカ10a又は液晶ディスプレイ10dにI/O部9を介して出力する。また,マイク10bやコントローラ10cからの情報,制御手段8からの情報を変調し,その情報をフロントエンドによって該当するアンテナから送信(収集年月,時刻を含む)する。 【0030】すなわち,ユニバーサルチューナ7は,TVラジオ用アンテナ2,携帯電話チューニング,フローエンド用アンテナ3(PHSでもよい),トランシーバ用アンテナ4を用いての信号のチューニング,フローエンド,変調,復調等を超小型軽量の1個のIC又は複数個の超小型軽量のICで実現している。本実施の形態では1個として説明する。 【0031】前記コントローラ10cは,電話番号を入力するとき,TVやラジオのチャンネルを設定するとき,また,トランシーバと連絡を取るとき,GPSで位置情報を入手するときに操作するためのものである。 【0032】マルチバンド送受信部6の制御手段8は,例えばマイクロコンピュータからなり,本発明の体温監視部8aと,心拍監視部8bと,位置情報取得部8cと,第1事故判定部8dと,第2事故判定部8eとを有し,例えば,体温検知センサ11aによって入力される体温とメモリ(図示せず)に予め格納されたジャケット着用者の正常時の体温とを比較し,異常に高いときはその体温を情報としてユニバーサル・チューナ7を介して携帯電話用アンテナ3から監視センター,家庭のいずれかに送信する。 【0033】この送信においては,コントローラ10cを用いて送信相手の電話番号を予め設定しておくのが好ましい。 【0034】また,心拍検知センサ11bにより検知される心拍数と前記メモリに格納された正常時の心拍数とを比較し,心拍数が異常のときは前記と同様にその異常時の心拍数を情報として送信する。この時,スピーカ10aを介して呼びかけを行い,コントローラ10cを通じて応答がないときは非常事態(例えば心臓発作等)と判断してその旨も情報として携帯電話用アンテナ3から送信する。例えば,心拍数が非常に高いことを音声でスピーカに流す。体温検知センサ11aからの体温をスピーカから流す(非常事態と判断したときに体温を知らせるのが好ましい)。 【0035】これによって,近くにいる人がこのジャケット12を着ている人が倒れた場合等は,どのような状況かをある程度瞬時に判断できるので,適切な処理を敏速にできる。 【0036】前述の温度,心拍数等のサンプリング時間は,コントローラ10cの操作で任意に設定可能である。 【0037】さらに,体温検知センサ11aからの体温の情報や心拍検知センサ11bからの心拍数の情報を一定時間毎に(例えば10分)入力したときメモリに格納し,前述した非常事態にその情報も送信するようになっている。これは,ジャケット着用者の治療データとして病院側に提供するためである。 【0038】振動検知センサ11cが作動したときはジャケット着用者が落下又は交通事故等にあったと判断してその旨の情報を送信し,水検知センサ11dが作動したときは海や川等に落ちたと判断してその旨の情報を送信する。振動検知センサ11c又は水検知センサ11dの何れか一方が作動したときは,GPS用アンテナ5を通じて位置情報を入手し,これを携帯電話用アンテナ3から他の情報と組み合わせて送信してもよい。 【0039】また,位置情報に関しては例えば10分毎に送信するようになっており,この時の地理情報を心臓発作で倒れたときや遭難の際の捜索情報として役立てるためである。 【0040】なお,各センサの検知に応じて異常情報を送信する際,例えば病院に設置された監視システム並びに消防署及び自宅の携帯電話を無線網を介して呼び出すようになっている。 【0041】前述したウェアラブル・マルチバンド送受信機の各機器は図2に示すようにジャケットに取り付けられている。このジャケット12は,水検知センサ11dが配置されている部分を除いて防水加工が施されている。TV・ラジオ用アンテナ2はジャケット12の襟元にそれぞれ縫い込まれ,携帯電話用アンテナ3は一方の襟に,トランシーバ用アンテナ4はもう一方の襟にそれぞれ縫い込まれており,また,GPS用アンテナ5はジャケット12の一方の肩部分に縫い込まれている。マルチバンド送受信部6は一方の襟に縫い込まれ,I/O部9はジャケット12の胸元に縫い込まれている。 【0042】スピーカ10aは耳近傍の襟にそれぞれ縫い込まれ,マイク10bは襟を止めるボタンと併用され,コントローラ10cと液晶ディスプレイ10dはジャケット12に設けられた一対のポケットに収納されている。体温検知センサ11aは身体の脇に当接するようにジャケット12の袖に縫い込まれ,心拍検知センサ11bは携帯電話用アンテナ3が装着された襟に縫い込まれ,振動検知センサ11cと水検知センサ11dはI/O部9の下方に縫い込まれている。また,ポケット型バッテリ13がジャケット12の右胸のポケットに収納されている。 【0043】従って,小型軽量(厚み1cm,重さ30g程度)のユニバーサルチューナ7で各種アンテナからの通信を制御し,かつこのユニバーサルチューナ7に各種センサ,コントローラ等を接続して各機器をジャケットの最適な個所に取り付けているので,携帯に邪魔にならず,また携帯していることを感じることなく各種の通信サービスを利用できる。 【0044】また,体温検知センサを通して衣服着用者の健康状態がよくないと判断したとき,また,心拍検知センサを介して衣服着用者の様態が悪く,コントローラを通して応答がなかったときは,入手した情報と位置情報を所定の病院,消防署,自宅等のいずれかに送信可能であるので,ジャケット着用者の治療や捜索を速やかに行える。 【0045】また,振動検知センサ又は水検知センサを通して異常を検知したとき,その旨の情報及び位置情報を所定の病院,消防署,自宅に送信するようにしたので,ジャケット着用者の捜索や治療を速やかに行える。 【0046】また,コントローラの操作により位置情報の入力指示を受けたときアンテナ部から地理情報を取り込んで,ディスプレイに表示するようにしたので,ジャケット着用者にとっては,例え迷っても自分の現在位置を知ることができる。」 【図2】 の記載があるから, 「TV・ラジオ(AM/FM)用アンテナ2,携帯電話用アンテナ3,トランシーバ用アンテナ4及びGPS用アンテナ5からなるアンテナ部1と,ユニバーサル・チューナ7及び制御手段8を有するマルチバンド送受信部6と,近距離無線機及び有線コネクタからなるI/O部9と,ヒューマン・インタフェース部10と,センサ部11とで構成され,ジャケット12にそれぞれ取り付けられている,ウェアラブル・マルチバンド送受信装置」(以下,「引用文献3記載技術」という。) が記載されている。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア.「落下イベント検知通信システム」について 引用発明の「確認システム」は,「センサからの出力信号を処理し,その処理結果をセンター装置としてのPC6へ送信する」通信システムであって,「作業員が足場等の高所から落下した」かどうかを判定することが可能であるから,「落下イベント検知通信システム」であるといえる。 イ.「落下防止システムの一部として実現された少なくとも1つの落下検知ノードを含み,前記少なくとも1つの落下検知ノードは,落下イベントが生じたことを示す状態に基づいて,作動信号を生成する少なくとも1つの検知要素と,前記少なくとも1つの検知要素から前記作動信号を受信すると,少なくとも1つの落下検知信号を送信するノード送信機と,を備え」について 引用発明の「フック72a」は,「確認システム」の一部であり,本願発明の「落下検知ノード」と引用発明の「フック72a」は「ノード」である点で一致している。 引用発明の「フック72a」には,「圧力センサ720a」と「回路基板728a」が設けられており,「圧力センサ720a」は検知要素であるといえ,「回路基板728a」には「圧力センサ720a」からの出力信号を無線送信する「送信ユニット7281a」が設けられているから,「フック72a」は「出力信号を送信するノード送信機」を備えているといえる。 つまり,本願発明1と引用発明は「落下防止システムの一部として実現された少なくとも1つのノードを含み,前記少なくとも1つのノードは,検知要素と出力信号を送信するノード送信機,を備え」ている点で共通している。 ウ.「更に,高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに記憶されたパーソナル通信アプリケーションを含み,」について 引用発明の「コントロールボックス21」は,ハーネス型安全帯1の左右の肩ベルトを胸付近で連結するための連結ベルト15と連結部22とで連結されているから,ハーネス型安全帯1に連結されている。 コントロールボックス21が連結されているハーネス型安全帯1は,作業員が高所作業を行うときに装着するから,「コントロールボックス21」も高所作業を行う作業員が装着するもの,すなわち高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるものであるといえる。 したがって,引用発明の「コントロールボックス21」と本願発明1の「高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイス」は,「高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置」である点で一致する。 そして,引用発明の「制御部210」は,「CPU,RAMなどを備え」ていて,「コントロールボックス21」に含まれているから,引用発明の「制御部210」と本願発明1の「パーソナル通信デバイスに記憶されているパーソナル通信アプリケーション」は,「高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置における手段」である点で一致する。 エ.「前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードの前記ノード送信機からの前記落下検知信号について前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに監視させ,更に,前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードから前記少なくとも1つの落下検知信号を受信することに少なくとも部分的に基づいて,落下イベントが生じたかどうかを前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに判断させ,更にまた,前記パーソナル通信アプリケーションは,落下イベントが生じたと判断されると,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスにリモート通信デバイスへと落下警告メッセージを送信させるものであり,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスは携帯電話であって,前記パーソナル通信アプリケーションは,選択時間よりも長い間,前記落下検知信号を連続的に受信した後にのみ,前記携帯電話に前記落下警告メッセージを送信させる」について, 引用発明の「制御部210」は,「圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)が所定時間(例えば3秒)を超えて加わったことが検出された場合」に「作業員が足場等の高所から落下したものと判定」するから,「制御部210」がセンサの出力信号を監視している。 ここで,「送信ユニット7281a」がセンサからの出力信号を無線送信するから,センサの出力信号は「送信ユニット7281a」からの信号である。 つまり「制御部210」は,「ノードの送信ユニット7281a」からの出力信号について,「コントロールボックス21」に監視させているといえる。 さらに,引用発明は,所定値を超える加重が所定時間を超えて加わったこと」を検出しているから,「圧力センサの加重」と「所定値の加重」を比較していること,「圧力センサの加重」が「圧力センサ720a」からの出力信号であること,はいずれも明らかである。 引用発明は,「制御部210」が「センサからの出力信号を処理し,その処理結果をセンター装置としてのPC6へ送信する」ものであって,「フック72」から出力信号を受信することに基づいて,落下したかどうかを判定し,「落下事故の発生の可能性を検知してすみやかに警告することができ」るから,落下したかどうかを判定,すなわち落下事故の発生の可能性を検知して,PC6へと警告を送信するものであるといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは, 「落下イベント検知通信システムであって, 落下防止システムの一部として実現された少なくとも1つのノードを含み, 前記少なくとも1つのノードは, 検知要素と, 出力信号を送信するノード送信機,を備え, 更に,高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置における手段を含み, 前記手段は,前記少なくとも1つのノードの前記ノード送信機からの前記出力信号について前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置に監視させ, 更に,前記手段は,前記少なくとも1つのノードから前記少なくとも1つの出力信号を受信することに少なくとも部分的に基づいて,落下イベントが生じたかどうかを前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに判断させ, 更にまた,前記手段は,落下イベントが生じたと判断されると,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置にリモート通信デバイスへと落下警告メッセージを送信させるものである, 落下イベント検知通信システム。」 で一致し,下記の点で相違する。 (相違点1) ノードが,本願発明1は「落下検知ノード」であるのに対し,引用発明は「フック72a」である点。 (相違点2) 落下検知ノードが,本願発明1は「落下イベントが生じたことを示す状態に基づいて,作動信号を生成する少なくとも1つの検知要素と,前記少なくとも1つの検知要素から前記作動信号を受信すると,少なくとも1つの落下検知信号を送信するノード送信機と,を備え」ているのに対し,引用発明は,送信ユニット7281aが圧力センサ720aの加重を出力する点。 (相違点3) 「高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置」が,本願発明1は「パーソナル通信デバイス」であって「携帯電話」であるのに対し,引用発明は「コントロールボックス21」であり,「高所作業を行う予定のユーザに取り付けられる装置における手段」が,本願発明1は「パーソナル通信デイバスに記憶されたパーソナル通信アプリケーション」であるのに対し,引用発明は「コントロールボックス21の制御部210」である点。 (相違点4) 本願発明1は「前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードの前記ノード送信機からの前記落下検知信号について前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに監視させ,更に,前記パーソナル通信アプリケーションは,前記少なくとも1つの落下検知ノードから前記少なくとも1つの落下検知信号を受信することに少なくとも部分的に基づいて,落下イベントが生じたかどうかを前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスに判断させ,更にまた,前記パーソナル通信アプリケーションは,落下イベントが生じたと判断されると,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスにリモート通信デバイスへと落下警告メッセージを送信させるものであり,前記高所作業を行う予定のユーザに取り付けられるパーソナル通信デバイスは携帯電話であって,前記パーソナル通信アプリケーションは,選択時間よりも長い間,前記落下検知信号を連続的に受信した後にのみ,前記携帯電話に前記落下警告メッセージを送信させる」のに対し,引用発明は「制御部210」が「圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)が所定時間(例えば3秒)を超えて加わったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が足場等の高所から落下したものと判定」することで,「落下事故の発生の可能性を検知してすみやかに警告することができ、万が一の事故発生の際にも、監督者や周囲の作業員が迅速な措置をとることが可能となる」点。 (2)検討 事案に鑑み,まず相違点2,4について検討する。 本願発明1は,【0014】に「検知要素230a,230b及び230cの例としては,非限定的に,落下イベントが生じたことを示す状態を検知するスイッチ又はセンサが挙げられる。例えば,一実施形態では,検知要素230a,230b又は230cの1つは,選択重量が印加されると作動する,ばね仕掛けのスイッチなどの圧力スイッチである。」と記載されるように,「落下イベント」の例は「選択重量が印加され」たことを示すイベントである。 一方,引用発明は「送受信ユニット211は,フック72aの送信ユニット7281aおよびフック72bの送信ユニット7281bからセンサ等の出力信号を受信し,制御部210へ渡し」ているから,引用発明の「フック72a」は,「センサ等の出力信号」を送信している。 ここで,引用発明は,「圧力センサ720aに所定値を超える荷重(例えば300N)が所定時間(例えば3秒)を超えて加わったことが検出された場合は,制御部210は,作業員が足場等の高所から落下したものと判定」するから,制御部210が,センサに所定値を超える過重が加わったかどうかを判断している。 すなわち,引用発明においては,フック72aはセンサの値をそのまま出力しているのであって,「落下イベントが生じたことを示す状態」に基づく「作動信号」を生成していない。 そして,「落下事故の発生の可能性」すなわち,「落下イベントが生じた」ことの判断を,引用発明では「制御部210」が所定値を超える過重と所定時間の両方の検知を行っている一方,本願発明1においては,所定値を超える過重がかかったことは「落下検知ノード」で検知し,選択時間よりも長い間かどうかは「パーソナル通信デバイス」で検知しているから,重さの検知と時間の検知を別の装置で行っている。 そして,引用発明において「制御部210」が行っている検知のうち過重,すなわち「落下イベントが生じたこと」だけを,落下検知ノードで行うようにすることは,引用例2,3に記載されておらず,周知でもない。 したがって,相違点2,4は容易に想到することができた,とはいえない。 したがって,他の相違点を検討するまでもなく,本願発明1は引用発明から容易に発明をすることができた,とはいえない。 2.本願発明2−4について 本願発明2−4は,本願発明1の構成を有するから,本願発明1と同じ相違点が存在する。 引用文献2,3記載事項にも相違点2,4は記載されていないから,本願発明1と同じ理由により,引用発明1,引用文献2−3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.まとめ したがって,原査定を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明1−4は当業者が引用発明1,引用文献2−3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-24 |
出願番号 | P2018-534037 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G08B)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
伊藤 隆夫 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 丸山 高政 |
発明の名称 | 電子式落下イベント通信システム |
代理人 | 野村 和歌子 |
代理人 | 赤澤 太朗 |
代理人 | 浅村 敬一 |
代理人 | 佃 誠玄 |