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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1383150
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-19 
確定日 2022-03-25 
事件の表示 特願2017− 96653「非接触型データ受送信体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開,特開2018−194960,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年5月15日の出願であって,令和2年12月10日付けで拒絶理由通知がされ,令和3年1月26日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がされたが,令和3年4月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1−2に係る発明は,以下の引用文献1−2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2008−516336号公報
2.特開2017−069678号公報


第3 本願発明
本願請求項1及び2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は,令和3年7月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ICチップおよび該ICチップに接続された第1アンテナを有するインレットと、
前記第1アンテナと非接触で電磁結合するブースター用の第2アンテナを有するアンテナ部と、
前記インレットおよび前記アンテナ部を支持する高誘電材と、
前記高誘電材における前記インレットおよび前記アンテナ部を支持する側とは反対側に積層された金属材と、
前記インレットおよび前記アンテナ部と前記高誘電材の間に設けられ、前記高誘電材よりも比誘電率が低い絶縁材と、
前記インレット、前記アンテナ部、前記高誘電材、前記金属材および前記絶縁材からなる積層体の外周全体を被覆する樹脂からなる被覆材と、
を備え、
前記インレットの前記第1アンテナと、前記アンテナ部の前記第2アンテナとは、同一平面上に配置されており、
前記被覆材は、前記積層体の外形に沿う形状をなしている、
ことを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記絶縁材は、前記インレットを構成する基材よりも比誘電率が低いことを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。」


第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特表2008−516336号公報(以下,これを「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A 「【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、従来技術の上記欠点を克服する。詳細には、本発明は、基板、特に、金属基板、並びに液体を含むため用いられる基板と一緒に極超短波周波数RFIDタグを使用するためのシステム及び方法を提供する。簡潔には、複素磁気透磁率を有する材料から成り且つそれ自体で用いられるか又は誘電性アイソレータ材料と組合わさって用いられるRFIDアイソレータは、RFIDタグと基板との間に介挿される。代替として、少なくとも2つの異なる誘電定数を有する材料が、基板との境界面での誘電定数が高く且つRFIDタグとの境界面での誘電定数が低いようにRFIDタグと基板との間に介挿される。この材料は、誘電定数勾配を有する単一の材料であることができ、又は代替として、それぞれの層が均一であるが異なる誘電定数を有し且つ一緒にサンドイッチされている2又はそれより多くの別々の層であってもよい。この材料は、多くのタグが従来技術の誘電性アイソレータを用いては金属基板上で読み取ることができないことを克服する。他のケースでは、この材料は、従来技術の誘電性アイソレータの場合読み取り距離が制限されるタグの読み取り距離を改善する。」

B 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
受動型UHF RFIDタグ・アンテナは、自由空間、又は段ボール、パレット・ウッド(pallet wood)等のような低い誘電体材料上で使用するために最適化されている。UHFRFIDタグは、金属基板に近接すると、タグ・アンテナのインピーダンスが、変わる。RFIDリーダによりタグのIC回路へ送信された波の効率的な電力送信に関しては、アンテナは、自由空間からIC回路のインピーダンスへの滑らかなインピーダンス変換を与えなければならない。アンテナ設計は、通常、アンテナが近接している基板が1に等しい磁気透磁率を有することを仮定する。1に等しくない磁気透磁率を有する基板では、アイソレータ材料の寄生インダクタンスを用いて、金属基板の寄生キャパシタンスをオフセットさせることができることにより、タグ絶縁(isolation)を利する。代替として、少なくとも2つの異なる誘電定数の材料を用いて、タグを金属基板から一層良好に絶縁することができる。
【0016】
図6は、本発明の第1の実施形態を示す。RFIDタグ100は、特に設計され、又はIntermec Technologies Corporation、Symbol Technologies(前のMatrics Inc.)、Alien Technology、Philips Semiconductor及びTexas Istrumentsのような多数の会社のいずれかから購入することができる。好適な実施形態において、RFIDタグは、800MHzと1000MHzとの間の周波数範囲で動作し、最も好ましい中心周波数は、869MHz、915MHz及び953MHzである。このRFIDタグは、バッテリのような電源を含むことにより自己給電されることができる。代替として、それは、フィールド給電される(field−powered)ことができ、それによりそれは、基地局により送信された電磁波のエネルギを捕捉して、そのエネルギをDC電圧に変換することによりその内部電力を発生する。
【0017】
物品110は、タグを付される対象物である。前述したように、金属基板(金属基板)を備える物品、又は液体を含むよう構成された物品は、読み取り距離に関して問題となる。様々な試験で、タグは、金属基板に取り付けられたとき読み取ることができなかった。RFIDタグ100と金属基板との間に相互作用が存在することを知って、幾つかの設計は、空気の層を2つの構成要素間に導入するようスタンドオフ(離れた状態の形態)(standoffs)を組み込んできた。これは、RFIDタグの読み取り距離を改善するとはいえ、それは、RFIDタグが取り外され又は損傷を受けるという可能性のため商業的に実際的でない。空隙の効果をシミュレートするため、幾つかの製造業者が、高い誘電定数を有する材料120の薄い層を介挿した。不都合にも、タグを金属から絶縁するように高い誘電定数を有する材料を含めることは殆ど不首尾又は全くの不成功であった。
【0018】
物品110及びRFIDタグ100が誘電定数勾配を有する材料120により分離され、それにより材料と物品110との間の境界面での誘電定数が材料とRFIDタグ100との間の境界面での誘電定数より高い場合の本発明は、予期しない好都合な結果を達成した。しかしながら、この勾配は、高い誘電定数がRFIDタグ100に面しているとき効果的でなかった。材料120は、当該材料120をRFIDタグ100及び物品110に接着するのを容易にするため、3M社のシリコーン/アクリル両面塗布型フィルム・テープ9731のような接着剤と接触している1つの表面又は両方の表面を有する。

・・・中略・・・

【0020】
図7は、本発明の代替実施形態を示す。誘電定数勾配材料は、低い誘電定数の1つの層と高い誘電定数の1つの層である変わる厚さの2つの層をサンドイッチすることにより製作される。頂部層220及び底部層230は、互いに接触状態で配置され、そしてRFIDタグ100と物品110との間に介挿され、それにより頂部層220の頂部表面は、RFIDタグ100と接触しており、そして頂部層220の反対表面は、底部層230と接触している。同様に、底部層230の頂部表面は、頂部層220と接触しており、そして底部層230の反対表面は、物品110と接触している。頂部層220の誘電定数は、比較的低く、好ましくは4.0以下であるのに対し、底部層230の誘電定数は、比較的高く、好ましくは8から35の範囲にある。好適な実施形態において、材料の2つの層は、一緒に圧縮成形される。代替実施形態においては、3M社のシリコーン/アクリル両面塗布型フィルム・テープ9731のような接着剤を用いて、2つの層を一緒に接着する。本発明は、材料の2つの層のみの使用に限定されるものではない。3以上の層を用いて、以下の表17に示されるように要求された誘電定数勾配を生成し得る。このケースにおいては、勾配は、飛び飛びのステップ状である。」

C 「【0074】
図1aから図5aに示されるように、変化するアンテナ設計及びIC回路と共にRFIDタグの多様性が、現在商業的に提供されている。リーダからタグへの効率的エネルギ転送に対してインピーダンス整合要件を満足させるため、RFIDアイソレータ特性の多様性が、利用可能でなければならない。電磁アイソレータは、RFIDタグを金属基板上で最適に読み取ることを可能にするため要求されるアイソレータ・インピーダンス特性を達成するのに追加の許容範囲(latitude)を与える。以下の例は、電磁RFIDアイソレータ材料の利点を更に実証するための働きをする。」

D 「【図7】


E 図7(上記D)から,“物品110と接触している,RFIDタグ100と,頂部層220と,底部層230からなる装置”が看取でき,さらに,図7に関して上記Bの段落【0020】には,「頂部層220及び底部層230は、互いに接触状態で配置され、そしてRFIDタグ100と物品110との間に介挿され、それにより頂部層220の頂部表面は、RFIDタグ100と接触しており、そして頂部層220の反対表面は、底部層230と接触している。同様に、底部層230の頂部表面は、頂部層220と接触しており、そして底部層230の反対表面は、物品110と接触している。」と記載されている。また,上記A,及び上記Bの段落【0017】には,“物品110は,金属基板であ”ることが記載されている。
してみると,引用文献1には,“RFIDタグ100と,頂部層220と,底部層230からなり,頂部層220の頂部表面がRFIDタグ100と接触し,頂部層220のRFIDタグ100側と反対表面が底部層230と接触し,底部層230の頂部層220側と反対表面が金属基板である物品110に接触している,装置”が記載されているといえる。

F 上記Bの段落【0015】,上記Cによれば,“RFIDタグ100は,アンテナ及びアンテナに接続されるIC回路を備え”ることが記載されている。

G 上記Bの段落【0020】には,“頂部層220の誘電定数は,比較的低く,好ましくは4.0以下であり,底部層230の誘電定数は,比較的高く,好ましくは8から35の範囲にある”ことが記載されている。

H 上記Aには,“金属基板にRFIDタグ100を使用する際に,2つの異なる誘電定数を有する材料が,金属基板との境界面での誘電定数が高く且つRFIDタグ100との境界面での誘電定数が低いようにRFIDタグ100と金属基板との間に介挿されることで,RFIDタグ100の読み取り距離を改善される”ことが記載されている。

(2)上記AないしHの記載内容(特に,下線部を参照)からすると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「RFIDタグ100と,頂部層220と,底部層230からなり,頂部層220の頂部表面がRFIDタグ100と接触し,頂部層220のRFIDタグ100側と反対表面が底部層230と接触し,底部層230の頂部層220側と反対表面が金属基板である物品110に接触している,装置において,
RFIDタグ100は,アンテナ及びアンテナに接続されるIC回路を備え,
頂部層220の誘電定数は,比較的低く,好ましくは4.0以下であり,
底部層230の誘電定数は,比較的高く,好ましくは8から35の範囲にあるものであって,
金属基板にRFIDタグ100を使用する際に,2つの異なる誘電定数を有する材料が,金属基板との境界面での誘電定数が高く且つRFIDタグ100との境界面での誘電定数が低いようにRFIDタグ100と金属基板との間に介挿されることで,RFIDタグ100の読み取り距離を改善される,
装置。」

2 引用文献2について
本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開2017−069678号公報(以下,これを「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

A 「【0013】
〔第1実施形態〕
〈電子機器〉
図1は、本発明の第1実施形態による電子機器の要部構成を示す図であって、(a)はは平面透視図であり、(b)は(a)中のA−A線に沿う断面矢視図であり、(c)は(a)中のB−B線に沿う断面矢視図である。図1に示す通り、本実施形態の電子機器1は、回路基板10、下部筐体20、及び上部筐体30を備えており、外部(例えば、不図示の情報読出/書込装置)との間で電波を用いた近距離の無線通信を行うことで、データの書き込み或いは読み出しを非接触で行う。また、本実施形態の電子機器1は、金属体に近接した状態で使用可能なものである。
【0014】
尚、以下では、理解を容易にするために、図1(a)中に設定したXY直交座標を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明する。図1(a)中に設定したXY直交座標のX軸(X方向)は、電子機器1の平面視での長手方向(回路基板10の長手方向)に沿うように設定されており、Y軸(Y方向)は、電子機器1の平面視での短手方向(回路基板10の短手方向)に沿うように設定されている。
【0015】
回路基板10は、インレット11、副アンテナ12(第2アンテナ)、及び基材13(第2誘電材)を備えており、上述した近距離の無線通信を行って、データの書き込み或いは読み出しを非接触で行う。この回路基板10は、下部筐体20及び上部筐体30によって形成される内部空間SPに、基材13が下部筐体20に重ね合わされた状態(積層された状態)で配置される。

・・・中略・・・

【0019】
副アンテナ12は、主アンテナ11bと非接触で電磁結合するブースター用のアンテナであり、主アンテナ11bのみによって無線通信を行う場合よりも、通信距離を長くする(長距離通信を可能にする)ために設けられる。この副アンテナ12は、例えばアルミニウムによって形成され、外形が板状又は帯状をなす部材であり、インレット11に設けられた主アンテナ11bの近傍に配置され、主アンテナ11bの外縁の少なくとも一部に沿うように設けられる。」

B 「【図1】




第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「アンテナ」は,本願発明1の「第1アンテナ」に相当する。
また,通常,IC回路はICチップ等で構成されることから,引用発明の「IC回路」は,本願発明1の「ICチップ」に相当する。
さらに,RFIDタグにおいては,通常,「アンテナ及びアンテナに接続されるIC回路」は,いわゆるインレットとして構成されるものである。
してみると,引用発明の「RFIDタグ」の「アンテナ及びアンテナに接続されるIC回路」は,本願発明1の「ICチップおよび該ICチップに接続された第1アンテナを有するインレット」に相当する。

イ 引用発明の「底部層230」は,「誘電定数」が「比較的高く,好ましくは8から35の範囲にある」ものであり,高誘電材と認められ,また,引用発明では「底部層230」は,「頂部層220」を介して「RFIDタグ100」を支持しているといえるから,引用発明の「底部層230」と,本願発明1の「前記インレットおよび前記アンテナ部を支持する高誘電材」は,後記の点で相違するものの,“前記インレットを支持する高誘電材”の点では共通する。

ウ 引用発明の「頂部層220」は,「RFIDタグ100」と「底部層230」に間に設けられているといえ,また,「頂部層220の誘電定数は,比較的低く,好ましくは4.0以下であ」り,これは,「底部層230」の「誘電定数」より低いものであり,「底部層230」よりも比誘電率が低いといえ,さらに,「頂部層220」は,誘電体で構成される絶縁体といえるから,引用発明の「頂部層220」と,本願発明1の「前記インレットおよび前記アンテナ部と前記高誘電材の間に設けられ、前記高誘電材よりも比誘電率が低い絶縁材」とは,後記の点で相違するものの,“前記インレットと前記高誘電材の間に設けられ,前記高誘電材よりも比誘電率が低い絶縁材”の点では共通する。

エ 引用発明の「装置」は,「RFIDタグ」と「底部層230」と「頂部層220」とを備えているから,引用発明の「装置」と,本願発明1の「インレット」と「アンテナ部」と「高誘電材」と「金属材」と「絶縁材」と「被覆材」とを備えた「非接触型データ受送信体」とは,後記の点で相違するものの,“ インレットと高誘電材と絶縁材とを備えた非接触型データ受送信体” の点では共通する。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「ICチップおよび該ICチップに接続された第1アンテナを有するインレットと,
前記インレットを支持する高誘電材と,
前記インレットと前記高誘電材の間に設けられ,前記高誘電材よりも比誘電率が低い絶縁材と,
を備えている,
非接触型データ受送信体。」

〈相違点1〉
「非接触型データ受送信体」が,本願発明1では,「前記第1アンテナと非接触で電磁結合するブースター用の第2アンテナを有するアンテナ部」を備え,「前記インレットの前記第1アンテナと、前記アンテナ部の前記第2アンテナとは、同一平面上に配置されて」いるのに対して,引用発明では,そのようなアンテナ部を備えていない点。

〈相違点2〉
「高誘電材」が,本願発明1では,「前記インレットおよび前記アンテナ部を支持する」のに対して,引用発明では,「RFIDタグ100」のみを支持するものである点。

〈相違点3〉
「非接触型データ受送信体」が,本願発明1では,「前記高誘電材における前記インレットおよび前記アンテナ部を支持する側とは反対側に積層された金属材」を備えているのに対して,引用発明では,金属基板に対して使用されるものであるが,「装置」自体にはそのような金属材を備えていない点。

〈相違点4〉
「絶縁材」が,本願発明1では,「前記インレットおよび前記アンテナ部と前記高誘電材の間に設けられ」るのに対して,引用発明では,「RFIDタグ100」のみと「底部層230」の間に設けられる点。

〈相違点5〉
「非接触型データ受送信体」が,本願発明1では,「前記インレット、前記アンテナ部、前記高誘電材、前記金属材および前記絶縁材からなる積層体の外周全体を被覆する樹脂からなる被覆材」を備え,「前記被覆材は、前記積層体の外形に沿う形状をなしている」のに対して,引用発明では,そのような被覆材を備えていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,上記相違点3及び5について先に検討する。

引用発明は,「金属基板」に装着される「装置」であって,
引用発明は,「金属基板にRFIDタグ110を使用する際に,2つの異なる誘電定数を有する材料が,基板との境界面での誘電定数が高く且つRFIDタグとの境界面での誘電定数が低いようにRFIDタグと基板との間に介挿されることで,RFIDタグ100の読み取り距離を改善される」ものであるから,引用発明において,さらに,「金属材」や「被覆材」を備えるようにする理由が存在しない。
また,引用文献2には,インレットのアンテナとは別のブースター用のアンテナを,インレットのアンテナと同一平面に設けることは記載されているが,上記相違点3及び5に係る構成に関しては記載されていない。
さらに,上記相違点3及び5に係る構成が,本願の出願日前において周知であったともいえない。
したがって,上記相違点3及び5に係る構成が,引用発明及び引用文献2に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。

以上のとおりであるから,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1が引用発明及び引用文献2に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1を更に限定したものであるので,同様に,当業者であっても引用発明及び引用文献2に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 原査定について
<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により,本願発明1及び2は上記第3に示したとおりのものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用発明(上記第4の引用文献1に記載された発明)及び引用文献2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-09 
出願番号 P2017-096653
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
須田 勝巳
発明の名称 非接触型データ受送信体  
代理人 萩原 綾夏  
代理人 大浪 一徳  
代理人 及川 周  

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