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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F |
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管理番号 | 1383158 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-07-27 |
確定日 | 2022-04-13 |
事件の表示 | 特願2018− 97715号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月28日出願公開、特開2019−201776号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年5月22日の出願であって、令和2年3月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月24日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年4月21日付け(送達日:同年同月27日)で、令和2年11月26日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和3年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1 ・引用文献等 1−3 <引用文献等一覧> 1.特開2017−029194号公報 2.特開2016−026757号公報 3.特開2016−131625号公報 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年4月24日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(A〜Kは、本願発明を分説するために当審で付した。)。 「【請求項1】 A 遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かを判定し、識別可能な識別情報を変動表示してから前記判定の結果を導出表示する遊技機であって、 B 演出を制御する演出制御手段を備え、 C 前記演出制御手段は、 前記識別情報の変動表示に伴って、当該変動表示に対応する対応表示を変動表示し、 前記判定の結果の導出表示に伴って、前記対応表示を停止表示し、 前記識別情報の変動表示が開始されてから停止表示されるまでに、前記対応表示を用いた再変動演出を所定回数実行することが可能であり、 複数のタイミングのうちの何れかのタイミングで、前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出を実行することが可能であり、 D 前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出には、 前記対応表示が通常態様であるときに実行される第1演出と、 前記対応表示が特別態様であるときに実行される第2演出と、があり、 E 前記再変動演出の回数が少ないときに、前記第1演出と前記第2演出とを実行可能であり、 F 前記再変動演出の回数が多いときに、前記第2演出を実行可能であり、 G 前記対応表示を前記通常態様で表示可能な第1共通演出と、前記第1共通演出とは異なる態様の演出であって、前記対応表示を前記特別態様で表示可能な第2共通演出とを実行することが可能であり、 H 前記第1共通演出において、前記第1演出を実行可能であり、 I 前記第2共通演出において、前記第2演出を実行可能であり、 J 前記第1共通演出が実行された場合と、前記第2共通演出が実行された場合とで、前記特別遊技が実行されることを期待させる同一の特別演出を実行可能である、 K 遊技機。」 第4 引用文献等に記載されている事項 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (1)記載事項 ア 「【0011】 (遊技機の構成) まず、図1を用いて、遊技機Yの構成について説明する。図1は本実施の形態における遊技機Yの正面図の一例である。 ・・・ 【0043】 第1特別図柄表示器20は、第1始動口13に遊技球が入賞(入球)することを条件に行われる第1特別図柄の大当たり抽選の結果を表示(報知)するための可変表示器であり、第2特別図柄表示器21は、第2始動口14に遊技球が入賞(入球)することを条件に行われる第2特別図柄の大当たり抽選の結果を表示(報知)するための可変表示器であり、普通図柄表示器22は、普図ゲート11に遊技球が入賞(入球)することを条件に行われる普通図柄の当たり抽選の結果を表示(報知)するための可変表示器である。 【0044】 第1特別図柄の大当たり抽選(大当たり判定)とは、第1始動口13に遊技球が入賞(入球)したときに大当たり図柄判定用乱数値を取得し、取得した大当たり図柄判定用乱数値と大当たり判定値とを比較して「大当たり」であるか否かを判定することである。なお、第1特別図柄の大当たり抽選が行われると、第1特別図柄表示器20で第1特別図柄の変動表示が行われ、所定時間経過後に抽選結果を示す第1特別図柄の停止表示が行われる。すなわち、第1特別図柄の停止表示は、当該抽選結果の報知となる。 【0045】 第2特別図柄の大当たり抽選(大当たり判定)とは、第2始動口14に遊技球が入賞(入球)したときに大当たり図柄判定用乱数値を取得し、取得した大当たり図柄判定用乱数値と大当たり判定値とを比較して「大当たり」であるか否かを判定することに該当する。なお、第2特別図柄の大当たり抽選が行われると、第2特別図柄表示器21で第2特別図柄の変動表示が行われ、所定時間経過後に抽選結果を示す第2特別図柄の停止表示が行われる。すなわち、第2特別図柄の停止表示は、当該抽選結果の報知となる。」 イ 「【0067】 なお、演出図柄TZ1〜TZ3は、例えば、「1」から「8」までの数字を示す図柄により構成され、第1特別図柄表示器20、第2特別図柄表示器21で実行される特別図柄の変動表示に対応して演出図柄TZ1〜TZ3の変動表示が行われる。すなわち、特別図柄の変動表示の開始に対応して演出図柄TZ1〜TZ3の変動表示を開始し、特別図柄の変動表示の停止に対応して演出図柄TZ1〜TZ3の変動表示を停止するようになっている。なお、演出図柄TZ1〜TZ3として、数字を示す図柄の他に「A」から「F」といったアルファベットを示す図柄を設けてもよい。 【0068】 具体的には、主制御基板110から送信される特図変動パターン指定コマンド(又は始動口入賞指定コマンド)を演出制御基板120が受信し、特図変動パターン指定コマンド(又は始動口入賞指定コマンド)に基づいて変動演出パターンが決定され、画像制御部160が決定された変動演出パターンに応じた演出画像(演出図柄TZ1〜TZ3を含む画像)を画像表示装置30に出力させることで、表示部300において演出図柄TZ1〜TZ3の変動表示が行われる。 なお、この演出制御基板120が本発明の演出実行手段に相当する。 ・・・ 【0070】 具体的には、特別図柄の変動表示が開始されてから予め定められた変動時間(特図変動パターンに応じた時間)が経過すると、演出図柄TZ1〜TZ3が当該大当たり抽選の結果を示す所定の態様で所定時間停止表示が行われる。 ・・・ 【0090】 遊技盤取付枠2A及び遊技盤3の裏側には、遊技の進行を統括的に制御する主制御基板110を内蔵した主制御装置110A(図示なし)と、主制御基板110からのコマンドに応じて遊技球払出装置60の制御を行う払出制御基板130を内蔵した払出制御装置130A(図示なし)と、主制御基板110からのコマンドに応じて演出の制御を行う演出制御基板120を内蔵した演出制御装置120A(図示なし)と、各種制御装置に対して電源電圧の供給を行う電源基板180を内蔵した電源装置180A(図示なし)、遊技機の外部に遊技情報(遊技信号)を出力するための遊技情報出力端子板100(図2参照)が設けられている。」 ウ 「【0343】 図示はしていないが、演出制御基板120は、主制御基板110から特図変動パターン指定コマンドを受信すると、受信した特図変動パターン指定コマンドに基づいて、爆弾予告を実行するか否かを決定している。そして、演出制御基板120によって爆弾予告を実行すると決定されると、当該爆弾予告処理を実行する。 なお、この爆弾予告が本発明の特定演出に相当する。 ・・・ 【0351】 図14(a)に示すように、本実施の形態では、爆弾の色彩としては、「黒色」、「赤色」、「金色」が設定されており、鼓動スピードとしては、「高速」、「中速」、「低速」が設定されている。爆弾予告は、これら爆弾の色彩と鼓動スピードの組合せによって大当たり当選期待度を示唆するとともに、爆発時の出現文字によって、直後に行われる対応演出の種類を報知する。 ・・・ 【0354】 擬似連予告演出とは、1回の始動口13、14への入賞(入球)に基づく大当たり判定に対して、あたかも複数回の演出図柄の変動表示が実行されたかのように見せるために、1回の始動口13,14への入賞(入球)に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行する特殊な態様の演出図柄の変動表示のことである。 なお、この擬似連予告演出(擬似2、擬似3)が本発明の第1演出に相当する。」 エ 「【0469】 まず、図15(a)、図40〜図41(a)(b)を用いて、ノーマルリーチ演出中に爆弾B(黒色)が爆発し、SPリーチ演出に発展する爆弾予告演出を説明する。 図15(a)に示すタイミングT0からタイミングT2までの期間において「通常変動」が実行され、タイミングT2からタイミングT4までの期間において「ノーマルリーチ演出」が実行され、タイミングT4からタイミングT5までの期間において「SPリーチ演出」が実行され、その後、T5からT6の期間において「図柄停止」が実行される。 ・・・ 【0474】 タイミングT2からタイミングT4における「ノーマルリーチ演出」では、演出図柄の2つの図柄(左図柄と右図柄)を同一の数値(ここでは、6) で停止表示するリーチ状態を発生させる図40の(e)のリーチ演出が行われる。 ・・・ 【0476】 その後、タイミングT4からタイミングT5における「SPリーチ演出」では、「SPリーチ演出」が実行されることを報知する文字画像G30を表示させた後、キャラクタC8が登場するSPリーチ演出が行われる(図40(g)、図41(a)参照)。 なお、「SPリーチ演出」では、演出図柄TZ1〜TZ3は縮小表示態様となり、保留アイコンは非表示状態になる。 ・・・ 【0478】 次に、図15(b)、図40〜図41(a)(c)(d)(e)を用いて、ノーマルリーチ演出中に爆弾B(黒色)が爆発し、SPリーチ演出に発展後、さらに、SPSPリーチ演出に発展する爆弾予告演出を説明する。 図15(b)に示すタイミングT10からタイミングT12までの期間において「図柄変動」が実行され、タイミングT12からタイミングT14までの期間において「ノーマルリーチ演出」が実行され、タイミングT14からタイミングT15までの期間において「SPリーチ演出」が実行され、タイミングT15からタイミングT16までの期間において「SPSPリーチ演出」が実行され、その後、T16からT17の期間において「図柄停止」が実行される。 ・・・ 【0488】 次に、図15(c)、図42〜図43を用いて、SPリーチ演出中に爆弾B(赤色)が爆発し、SPSPリーチ演出に発展する爆弾予告演出を説明する。 図15(c)に示すタイミングT20からタイミングT22までの期間において「図柄変動」が実行され、タイミングT22からタイミングT23までの期間において「ノーマルリーチ演出」が実行され、タイミングT23からタイミングT25までの期間において「SPリーチ演出」が実行され、タイミングT25からタイミングT26までの期間において「SPSPリーチ演出」が実行され、その後、T26からT27の期間において「図柄停止」が実行される。 ・・・ 【0493】 その後、タイミングT23からタイミングT25における「SPリーチ演出」では、「SPリーチ演出」が実行されることを報知する文字画像G30を表示させた後、キャラクタC8が登場するSPリーチ演出が行われる(図42(e)(f)、図43(a)参照)。 なお、「SPリーチ演出」では、演出図柄は縮小表示態様となり、保留アイコンは非表示状態になる。 ・・・ 【0502】 また、本実施の形態では、1回の爆弾予告で1つの爆弾を出現させていたが、1回の爆弾予告で複数の爆弾を出現させても良い。」 オ 「【図40】 【図41】 」 (2)認定事項 【図40】及び【図41】の(a)〜(c)より、【図40】(g)を経て【図41】の(a)から(b)に移行する場合と、【図40】(g)を経て【図41】の(a)から(c)に移行する場合があると認められる。 そして、【0478】の記載を踏まえると、引用文献1には、「ノーマルリーチ演出からSPリーチ演出に発展後、さらに、SPSPリーチ演出に発展する場合がある」ことが示されていると認定できる(認定事項ア)。 (3)引用発明 上記認定事項アを含め、引用文献1に記載された事項を総合すると、引用文献1には、下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている(a〜kは、本願発明の分説に概ね対応させて当審で付し、引用箇所等の段落等を併記した。)。 「a 第1始動口13あるいは第2始動口14に遊技球が入賞することを条件に大当たり判定を行い、第1特別図柄表示器20で第1特別図柄の変動表示あるいは第2特別図柄表示器21で第2特別図柄の変動表示を行い、所定時間経過後に抽選結果を示す第1特別図柄の停止表示あるいは第2特別図柄の停止表示を行う遊技機Yであって(【0011】、【0043】−【0045】)、 b 演出の制御を行う演出制御基板120を設け(【0090】)、 c 演出制御基板120は、表示部300において、特別図柄の変動表示に対応して、数字を示す図柄により構成される演出図柄TZ1〜TZ3の変動表示を行い(【0067】、【0068】)、特別図柄の変動表示が開始されてから予め定められた変動時間が経過すると、演出図柄TZ1〜TZ3が当該大当たり抽選の結果を示す所定の態様で所定時間停止表示が行われ(【0070】)、擬似連予告演出として、1回の始動口13、14への入賞に基づく大当たり判定に対して、あたかも複数回の演出図柄の変動表示が実行されたかのように見せるために、1回の始動口13,14への入賞に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行し(【0354】)、爆弾の色彩と鼓動スピードの組合せによって大当たり当選期待度を示唆する爆弾予告演出を実行するものであり(【0343】、【0351】)、 d、g、h、i 爆弾予告演出として、 演出図柄TZ1〜TZ3の2つの図柄を同一の数値で停止表示するリーチ状態を発生させるノーマルリーチ演出中に爆弾B(黒色)が爆発し、SPリーチ演出に発展する爆弾予告演出と(【0067】、【0469】、【0474】)、 演出図柄TZ1〜TZ3が縮小表示態様となるSPリーチ演出中に爆弾B(赤色)が爆発し、SPSPリーチ演出に発展する爆弾予告演出があり(【0476】、【0488】、【0493】)、 j ノーマルリーチ演出からSPリーチ演出に発展後、さらに、SPSPリーチ演出に発展する場合がある(認定事項ア)、 k 遊技機Y(【0011】)。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由で周知技術として引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0187】 図23(A)に示すように、通常モード中は、装飾図柄51と、保留画像52と、背景画像60とが液晶表示器5の画面に表示される。・・・ 【0188】 一方、特定モード中は、図23(B)に示すような画像が液晶表示器5の画面に表示される。具体的には、液晶表示器5には、保留画像52と、特定モード表示画像55と、小図柄56と、背景画像61とが表示され、表示領域54が設けられる。表示領域54には、通常モードにおける画像と同様の画像であって、通常モードよりも縮小された画像が表示される。具体的には、表示領域54には、通常モードと同様に装飾図柄51と背景画像60とが表示され、図示はされていないが上記予告画像も表示されることがある。」 (2)「【図23】 」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由で周知技術として引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0075】 ここで、拡大演出及びキャラクター演出について、図14及び図15をもとに説明する。 拡大演出は、装飾図柄66、66・・の変動表示中に、第1表示位置P1〜第4表示位置P4に表示されている保留表示体及び消化位置Rに表示されている保留表示体を拡大表示する(たとえば通常の140%程度まで拡大する)一方、装飾図柄66、66・・の変動表示領域67、67・・を縮小表示した(たとえば通常の60%程度まで縮小する)後、所定の特別時間(たとえば2秒間)の経過をもって保留表示体及び変動表示領域67、67・・を通常時の大きさに復帰させ、さらにこのような拡大/縮小に伴い、保留表示体の種類を変化させるといった演出となっている。・・・」 (2)「【図14】 」 第5 対比・判断 1 本願発明について (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の構成aの「大当たり」、「大当たり判定を行」うこと、「遊技機Y」は、それぞれ本願発明の構成Aの「遊技者に有利な特別遊技」、「遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かを判定」すること、「遊技機」に相当する。 また、引用発明の構成aの「第1特別図柄」あるいは「第2特別図柄」は、本願発明の構成Aの「識別可能な識別情報」に相当する。 さらに、引用発明の構成aの「抽選結果を示す第1特別図柄の停止表示あるいは第2特別図柄の停止表示を行う」ことは、本願発明の構成Aの「前記判定の結果を導出表示する」ことに相当する。 よって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する構成を備える。 イ 引用発明の構成bの「演出の制御を行う演出制御基板120」は、本願発明の構成Bの「演出を制御する演出制御手段」に相当する。 よって、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する構成を備える。 ウ 引用発明の構成cの「特別図柄の変動表示に対応」する「数字を示す図柄により構成される演出図柄TZ1〜TZ3」は、本願発明の構成Cの「前記識別情報の変動表示に伴」う「当該変動表示に対応する対応表示」に相当する。 また、引用発明の構成cの「演出図柄TZ1〜TZ3が当該大当たり抽選の結果を示す所定の態様で所定時間停止表示が行われ」ることは、本願発明の構成Cの「前記判定の結果の導出表示に伴って、前記対応表示を停止表示」することに相当する。 さらに、引用発明の構成cの「擬似連予告演出として、」「1回の始動口13,14への入賞に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行」することは、本願発明の構成Cの「前記識別情報の変動表示が開始されてから停止表示されるまでに、前記対応表示を用いた再変動演出を所定回数実行することが可能であ」ることに相当する。 また、引用発明の構成cの「爆弾の色彩と鼓動スピードの組合せによって大当たり当選期待度を示唆する爆弾予告演出」は、本願発明の構成Cの「前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出」に相当する。 そして、引用発明の構成d、g、h、iにおいて、「爆弾予告演出として、」「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」と、「ノーマルリーチ演出から」「発展」する「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出があ」ることが特定されていることから、引用発明の構成cの「爆弾予告演出」が、変動表示中における複数のタイミングの何れかのタイミングで行われることは明らかである。 そうすると、引用発明の構成cの「爆弾の色彩と鼓動スピードの組合せによって大当たり当選期待度を示唆する爆弾予告演出を実行」することは、本願発明の構成Cの「複数のタイミングのうちの何れかのタイミングで、前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出を実行すること」に相当する。 よって、引用発明の構成cは、本願発明の構成Cに相当する構成を備える。 エ 引用発明の構成d、g、h、iの「ノーマルリーチ演出中」の「演出図柄TZ1〜TZ3」の態様、「SPリーチ演出中」の「演出図柄TZ1〜TZ3」の「縮小表示態様」は、それぞれ本願発明の構成Dの「通常態様」、「特別態様」に相当する。 さらに、引用発明の構成d、g、h、iの「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」、「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」は、それぞれ本願発明の構成Dの「前記対応表示が通常態様であるときに実行される第1演出」、「前記対応表示が特別態様であるときに実行される第2演出」に相当する。 よって、引用発明の構成d、g、h、iは、本願発明の構成Dに相当する構成を備える。 オ 上記エの説示を踏まえると、引用発明の構成d、g、h、iの「演出図柄TZ1〜TZ3の2つの図柄を同一の数値で停止表示する」「ノーマルリーチ演出」は、本願発明の構成Gの「前記対応表示を前記通常態様で表示可能な第1共通演出」に相当する。 さらに、引用発明の構成d、g、h、iにおいて、「ノーマルリーチ演出」と「SPリーチ演出」とは異なる態様の演出であることは明らかであるから、引用発明の構成d、g、h、iの「演出図柄TZ1〜TZ3が縮小表示態様となるSPリーチ演出」は、本願発明の構成Gの「前記第1共通演出とは異なる態様の演出であって、前記対応表示を前記特別態様で表示可能な第2共通演出」に相当する。 よって、引用発明の構成d、g、h、iは、本願発明の構成Gに相当する構成を備える。 カ 引用発明の構成d、g、h、iの「ノーマルリーチ演出中に爆弾B(黒色)が爆発」「する爆弾予告演出」を行うことは、本願発明の構成Hの「前記第1共通演出において、前記第1演出を実行可能であ」ることに相当する。 よって、引用発明の構成d、g、h、iは、本願発明の構成Hに相当する構成を備える。 キ 引用発明の構成d、g、h、iの「SPリーチ演出中に爆弾B(赤色)が爆発」「する爆弾予告演出」を行うことは、本願発明の構成Iの「前記第2共通演出において、前記第2演出を実行可能であ」ることに相当する。 よって、引用発明の構成d、g、h、iは、本願発明の構成Iに相当する構成を備える。 ク 引用発明の構成jは、「ノーマルリーチ演出からSPリーチ演出に発展後、さらに、SPSPリーチ演出に発展する場合があ」ることを特定している。そして、「ノーマルリーチ演出からSPリーチ演出に発展後、さらに、SPSPリーチ演出に発展する」ことには、「ノーマルリーチ演出」(第1共通演出)が行われた場合と、「SPリーチ演出」(第2共通演出)とが行われた場合が含まれ、いずれも同一の演出である「SPSPリーチ演出」を実行可能であるといえる。 そうすると、引用発明の構成jの「SPSPリーチ演出」は、本願発明の構成Jの「前記特別遊技が実行されることを期待させる同一の特別演出」に相当する。 よって、引用発明の構成jは、本願発明の構成Jに相当する構成を備える。 ケ 引用発明の構成kの「遊技機Y」は、本願発明の構成Kの「遊技機」に相当するから、引用発明の構成kは、本願発明の構成Kに相当する構成を備える。 コ 上記ア〜ケより、本願発明と引用発明とは、 「A 遊技者に有利な特別遊技を実行するか否かを判定し、識別可能な識別情報を変動表示してから前記判定の結果を導出表示する遊技機であって、 B 演出を制御する演出制御手段を備え、 C 前記演出制御手段は、 前記識別情報の変動表示に伴って、当該変動表示に対応する対応表示を変動表示し、 前記判定の結果の導出表示に伴って、前記対応表示を停止表示し、 前記識別情報の変動表示が開始されてから停止表示されるまでに、前記対応表示を用いた再変動演出を所定回数実行することが可能であり、 複数のタイミングのうちの何れかのタイミングで、前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出を実行することが可能であり、 D 前記特別遊技が実行される可能性を示唆する演出には、 前記対応表示が通常態様であるときに実行される第1演出と、 前記対応表示が特別態様であるときに実行される第2演出と、があり、 G 前記対応表示を前記通常態様で表示可能な第1共通演出と、前記第1共通演出とは異なる態様の演出であって、前記対応表示を前記特別態様で表示可能な第2共通演出とを実行することが可能であり、 H 前記第1共通演出において、前記第1演出を実行可能であり、 I 前記第2共通演出において、前記第2演出を実行可能であり、 J 前記第1共通演出が実行された場合と、前記第2共通演出が実行された場合とで、前記特別遊技が実行されることを期待させる同一の特別演出を実行可能である、 K 遊技機。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 ・相違点1(構成E) 本願発明は、「前記再変動演出の回数が少ないときに、前記第1演出と前記第2演出とを実行可能であ」るのに対し、引用発明は、「擬似連予告演出として、」「1回の始動口13,14への入賞に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行」するものであるものの、「再変動表示」の回数と、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第1演出)及び「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第2演出)の実行有無との関係が明らかでなく、「再変動表示」の回数が少ないときに、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第1演出)と「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第2演出)とを実行可能であるか明らかでない点。 ・相違点2(構成F) 本願発明は、「前記再変動演出の回数が多いときに、前記第2演出を実行可能であ」るのに対し、引用発明は、「擬似連予告演出として、」「1回の始動口13,14への入賞に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行」するものであるものの、「再変動表示」の回数と、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第1演出)及び「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第2演出)の実行有無との関係が明らかでなく、「再変動表示」の回数が多いときに、「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第2演出)を実行可能であるか明らかでない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 上記相違点1の「前記再変動演出の回数が少ないときに、前記第1演出と前記第2演出とを実行可能であ」るとの構成は、「前記再変動演出の回数が少ないときに」との条件において、「前記第1演出と前記第2演出とを実行可能であ」ることを特定している。 そこで、最初に後者の「前記第1演出と前記第2演出とを実行可能であ」るとの構成について検討すると、上記(1)エ、カ及びキで説示したとおり、引用発明は、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」を行う場合と、「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」を行う場合があると認められるものの、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」及び「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」を行う(本願発明の「前記第1演出と前記第2演出とを実行可能」に相当)場合があるか明らかでない。 これに対し、引用文献1には、「爆弾予告演出」の実行に関して、【0502】に「1回の爆弾予告で1つの爆弾を出現させていたが、1回の爆弾予告で複数の爆弾を出現させても良い。」との記載があり、「1回」の爆弾予告演出で複数の爆弾を出現させることが記載されている。当該記載を踏まえれば、引用文献1には、例えば、「1回」の爆弾予告演出である「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」において、複数の爆弾を出現させることや、「1回」の爆弾予告演出である「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」において、複数の爆弾を出現させることが記載されていると認められる。 しかしながら、1回の変動中に複数の爆弾予告演出を実行すること(例えば、1回の変動中に「1回」の爆弾予告演出である「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」と「1回」の爆弾予告演出である「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」とを行うこと)については、記載されているとはいえない。 また、1回の変動中に複数の爆弾予告演出を行うことに想到することが、当業者であっても引用発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。 次に、前者の「前記再変動演出の回数が少ないときに」との条件についても補足的に検討すると、引用発明は、「擬似連予告演出として、」「1回の始動口13,14への入賞に対して決定された特図変動時間内にて、全部の演出図柄TZ1〜TZ3が仮停止した後に再度変動を開始する再変動表示を1回又は複数回実行」するものであるものの、引用文献1には、「再変動表示」の回数が少ないときに、との条件自体が記載されていない。 そして、「ノーマルリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第1演出)や「SPリーチ演出中」の「爆弾予告演出」(第2演出)の実行にあたり、その実行の条件として、「再変動表示」の回数が少ないときに、との条件を設けることは、当業者であっても引用発明に基づいて容易になし得たものとはいえない。 さらに、原査定の拒絶の理由に周知技術として引用された上記引用文献2(特開2016−026757号公報)及び引用文献3(特開2016−131625号公報)にも、上記相違点1に係る本願発明の構成は記載されていない。 よって、上記相違点2(構成F)について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1及び周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-03-29 |
出願番号 | P2018-097715 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63F)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
古屋野 浩志 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ ▲高▼木 尚哉 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 寺本 亮 |
代理人 | 小沢 昌弘 |