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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1383886
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-25 
確定日 2022-04-21 
事件の表示 特願2018−200680号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月30日出願公開、特開2020−65766号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年10月25日の出願であって、令和2年9月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月13日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和3年3月23日付け(送達日:同年同月30日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年6月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和3年6月25日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年6月25日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:令和2年11月13日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技領域へ遊技媒体を発射し、識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能な遊技機であって、
前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段と、
前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段と、
遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段と、
第1遊技状態と、該第1遊技状態よりも前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、
前記第1遊技状態において、遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数に対して、付与された遊技媒体の数である第2数の割合を算出可能な算出手段と、
前記算出手段によって算出された割合に関する情報を表示する表示手段と、
を備え、
前記複数の進入手段は、第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段を少なくとも含み、
前記可変手段は、識別情報の可変表示を行った後に、前記有利状態とは異なる状態である所定状態へ制御されたときに、前記第1状態へ変化し、
前記算出手段は、前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であり、該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算せず、
前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として、前記情報を表示する、
ことを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:令和3年6月25日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技領域へ遊技媒体を発射し、識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能な遊技機であって、
前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段と、
前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段と、
遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段と、
第1遊技状態と、該第1遊技状態よりも前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、
前記第1遊技状態において、遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数に対して、付与された遊技媒体の数である第2数の割合を算出可能な算出手段と、
前記算出手段によって算出された割合に関する情報を表示する表示手段と、
を備え、
前記複数の進入手段は、第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段を少なくとも含み、
前記可変手段は、識別情報の可変表示を行った後に、前記有利状態とは異なる状態である所定状態へ制御されたときに、前記第1状態へ変化し、
前記算出手段は、前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であり、該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算せず、
前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない、
ことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は補正箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 本件補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1について、次の補正事項からなるものである。
「前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として、前記情報を表示する、」という記載を、「前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない、」とする補正。

(2)補正の目的要件違反について
上記補正事項は、「表示手段」について、補正前に「第1数が特定数に達したことを条件として、前記情報を表示する」としていたのを、補正後に「第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない」と限定することにより減縮する補正であり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)新規事項について
本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0314】、図8−27に記載された事項であり、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしOは、分説するため合議体が付し、便宜上、記号C、H、I、Kは用いていない。

「A 遊技領域へ遊技媒体を発射し、識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能な遊技機であって、
B 前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段と、
前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段と、
D 遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段と、
E 第1遊技状態と、該第1遊技状態よりも前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、
F 前記第1遊技状態において、遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数に対して、付与された遊技媒体の数である第2数の割合を算出可能な算出手段と、
G 前記算出手段によって算出された割合に関する情報を表示する表示手段と、
を備え、
J 前記複数の進入手段は、第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段を少なくとも含み、
L 前記可変手段は、識別情報の可変表示を行った後に、前記有利状態とは異なる状態である所定状態へ制御されたときに、前記第1状態へ変化し、
M 前記算出手段は、前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であり、該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算せず、
N 前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない、
O ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
ア 先願1
原査定の拒絶の理由に先願1として引用され、本願の出願日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2018−158732号(特開2020−31726号)(出願日:平成30年8月27日、出願公開日:令和2年3月5日、出願人:サミー株式会社、発明者:宮前晶、堀健太郎、白石竜也、渡會育也)(以下「先願1」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、「弾球遊技機」に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は合議体が付した。)。

(ア)「【0003】
近年、遊技性向上をさらに追求するために種別に縛られない機種開発の必要性が認識され、例えば同じ種別の遊技機を複数混在させたり、異なる種別の遊技機を混在させるようなぱちんこ遊技機の開発も進められている。また、小当りとなった場合に可変入球装置内の特定領域(Vゾーン)に遊技球を通過させることで「小当り」から「大当り」へと昇格させ、新たな特別遊技(以下、「小当り発展大当り」または「小当りV」ともいう)を発生させる遊技機も提案されている(例えば特許文献2参照)。」

(イ)「【0011】
(前提技術)
図1は、ぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。ぱちんこ遊技機100は、主に遊技機枠と遊技盤で構成される。ぱちんこ遊技機100の遊技機枠は、外枠101、前枠102、透明板103、扉104、上球皿105、下球皿106、発射ハンドル107、スピーカー108、演出ボタン109、十字キー110、装飾ランプ111を含む。外枠101は、開口部分を有し、ぱちんこ遊技機100を設置すべき位置に固定するための枠体である。前枠102は、外枠101の開口部分に整合する枠体であり、図示しないヒンジ機構により外枠101へ開閉可能に取り付けられる。前枠102は、遊技球を発射する機構や、遊技盤を着脱可能に収容させるための機構、遊技球を誘導または回収するための機構等を含む。」

(ウ)「【0014】
第1始動口11は第1の遊技に対応する始動入賞口として設けられ、第2始動口12は第2の遊技に対応する始動入賞口として設けられる。第1始動口11と第2始動口12は、遊技者の意思にしたがった遊技球の発射強弱によって一方への入球を狙うことが可能となるように構成される。第1始動口11は、遊技領域81における略中央下部に設けられ、第2始動口12は、第1始動口11の直下に設けられる。左打ち、すなわちセンター飾り64の左側通路へ流れるように狙って相対的に弱めに打球した場合は第1始動口11および第2始動口12に入球可能ないし入球容易である一方、右打ち、すなわちセンター飾り64の右側通路へ流れるように狙って相対的に強めに打球した場合は第2始動口12には入球可能ないし入球容易であるが第1始動口11には入球不能ないし入球困難となるように遊技釘の配置による流路が形成される。ただし、通常時には第2始動口12の開口部上方が第1始動口11に覆われて遊技球の流入が妨げられることから、第2始動口12の拡開機構が開放されない限り第2始動口12には入球不能ないし入球困難である。当否抽選は、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技へ移行するか否かを判定する抽選であり、第1始動口11または第2始動口12へ入球があるたびに実行される。
【0015】
なお、第1始動口11および第2始動口12は、遊技球の発射強弱によっていずれかを目標にした打ち分けが可能な程度に互いに離れた位置に設けられてもよい。第1始動口11と第2始動口12は、それぞれ遊技領域81の左側と右側に離して設置され、一方を狙った遊技球が他方へ入球しがたい構成としてもよい。たとえば、第1始動口11は、左打ち、すなわちセンター飾り64の左側通路へ流れるように狙って比較的弱めに発射したときに入球可能ないし入球容易となるような位置に設けられる。第2始動口12は、右打ち、すなわちセンター飾り64の右側通路へ流れるように狙って比較的強めに発射したときに入球可能ないし入球容易となるような位置に設けられる。」

(エ)「【0021】
第1特別図柄51は、第1始動口11への遊技球の入球を契機とする第1当否抽選の判定結果に対応した図柄であり、所定の当り態様にて停止されたときに特別遊技としての大当りが発生する。第2特別図柄52は、第2始動口12への遊技球の入球を契機とする第2当否抽選の判定結果に対応した図柄であり、所定の当り態様にて停止されたときに特別遊技としての大当りが発生する。第1特別図柄表示部41および第2特別図柄表示部42は、例えば「8の字」を形成する7個のセグメントおよび「ドット」を表す1個のセグメントの8個のセグメントからなる8セグメントLEDの表示装置である。8セグメントLEDでは、8個のセグメントを組み合わせることにより8ビット分の数値を表現できる。セグメントの組合せで表される第1特別図柄51および第2特別図柄52は、必ずしも文字や数字の体をなしておらず、各セグメントの組合せで形成される一般に意味を持たない記号であってよい。これらの記号が高速で次々に入れ替わって第1特別図柄表示部41および第2特別図柄表示部42へ表示され、または、所定の表示(例えば「−」)と非表示(例えば全消灯)とが所定時間繰り返された後に判定結果に対応した図柄が表示されることにより、第1特別図柄51および第2特別図柄52の図柄変動表示が実現される。なお、第1特別図柄表示部41および第2特別図柄表示部42を8セグメントLEDではないLEDドットアレーを用いて、その点灯パターンや点灯色の組合せで複数種類の第1特別図柄51および第2特別図柄52を表現してもよい。」

(オ)「【0031】
以上のような構成の遊技機においてなされる遊技の方法および制御の流れを概説する。遊技者が発射ハンドル107を手で回動させると、その回動角度に応じた強度で上球皿105に貯留された遊技球が1球ずつレール82に案内されて遊技領域81へ発射される。遊技者が発射ハンドル107の回動位置を手で固定させると一定の時間間隔で遊技球の発射が繰り返される。遊技領域81の上部へ発射された遊技球は、複数の遊技釘や風車、センター飾り64等に当たりながらその当たり方に応じた方向へ落下する。遊技球が一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が上球皿105または下球皿106に払い出される。一般入賞口33等の各入賞口に落入した遊技球はセーフ球として処理され、アウト口34に落入した遊技球はアウト球として処理される。セーフ球の排出はアウト検出装置39による検出の対象外とする仕様としてもよいし、セーフ球もアウト検出装置39が設けられた領域に誘導してその排出をすべてアウト検出装置39により検出する仕様としてもよい。あるいは、セーフ球の誘導およびアウト検出装置39によるセーフ球の検出はせず、セーフ球の検出球数をアウト球の検出球数に加算した合計を排出球数とする仕様としてもよい。」

(カ)「【0038】
なお、当否抽選の保留数が所定数(例えば3個)になると、遊技効率を高めるために外れの場合の図柄変動時間が通常より短縮される(以下、「短縮変動」ともいう)。同様に、当否抽選の保留数が4個になると、さらに遊技効率を高めるために外れの場合の図柄変動時間が上記3個の場合よりもさらに短縮される(以下、「超短縮変動」ともいう)。上述の図柄変動を経て、停止時の第1特別図柄51、第2特別図柄52、および装飾図柄61が大当りを示す停止態様となった場合、通常遊技よりも遊技者に有利な遊技状態である特別遊技に移行し、大入賞口20の開閉動作が開始される。大当りを示す装飾図柄61の停止態様は、例えば3つの図柄の種類が一致する組合せの態様である。
【0039】
特別遊技には通常特別遊技と短縮特別遊技の2種類があり、それぞれ獲得賞球による利益に大きな差が生じる。通常特別遊技は、開始デモ時間と呼ばれる演出画面の表示によって開始される。開始デモ時間の画面表示後に大入賞口20が開放され、その開放が約30秒間続いた後、または9球以上の遊技球が落入した後で一旦閉鎖される。このような大入賞口20の開放から閉鎖までが、基本的には単位遊技と呼ばれるが、1回の単位遊技の間に複数回の短時間の開放を繰り返す場合があってもよい。大入賞口20の開閉ないし単位遊技が所定回数、例えば4回または16回繰り返された後、終了デモ時間と呼ばれる演出画面の表示によって通常特別遊技が終了される。通常特別遊技においては、1回の単位遊技あたり9球以上の入球が十分に期待でき、16回分の単位遊技によって十分な賞球(これを「出玉」ともいう)を獲得でき、大きな利益が得られる。16回の単位遊技が繰り返される特別遊技を適宜「16R大当り」とも称し、4回の単位遊技が繰り返される特別遊技を適宜「4R大当り」とも称する。なお、単位遊技は16回繰り返されるものの、一部の単位遊技で大入賞口20を通常よりも短い時間(例えば1.6秒)開放させることで実質的に少数回の単位遊技が繰り返されたものと同様の通常特別遊技(「実質nR大当り」と称する場合もある)を実現することもできる。」

(キ)「【0043】
特別遊技が終了した後の通常遊技において特定遊技状態の一つである入球容易状態が開始される。入球容易状態では、開放抽選の当り確率を通常より高めるとともに、普通電動役物90の拡開時間を長開放とする開放延長を実行する。一定時間あたりの普通図柄の当り回数が増加し得る上、第2始動口12への入球容易性も増すため、第2始動口12への入球数が増加する可能性も高い。したがって、第2始動口12への入球による賞球を得られる機会が増加する結果、持ち玉をほとんど減らさないか、あるいは少しずつ持ち玉を増やしながら遊技し続けることが可能となる。
【0044】
入球容易状態においては、特定遊技状態の一つとして、第1特別図柄51、第2特別図柄52、装飾図柄61の変動時間が通常状態よりも短縮される、いわゆる時短がさらに実行される。第1特別図柄51、第2特別図柄52、装飾図柄61の変動時間は、所定の変動回数、例えば100回の変動表示がなされた後で元の変動時間に戻されるが、その変動回数に達する前に大当りが発生すれば時短もいったん終了する。時短において第1特別図柄51、第2特別図柄52、装飾図柄61の変動時間が短縮されるため、通常の変動時間のまま図柄変動がなされる通常状態の場合と比べて、大当りが発生するまでの時間を短縮することができ、大当りの獲得容易性を相対的に高めることができる。変形例では、入球容易状態において特別図柄の時短を実施しない仕様としてもよい。」

(ク)「【0045】
図2は、ぱちんこ遊技機の背面側における基本的な構造を示す。電源スイッチ150は、ぱちんこ遊技機100の電源をオンオフするスイッチである。メイン基板200は、ぱちんこ遊技機100の全体動作を制御し、とくに第1始動口11、第2始動口12へ入賞したときの抽選等、遊技動作全般を処理する。サブ基板300は、液晶ユニット151を備え、演出表示装置60における表示内容を制御し、特にメイン基板200による判定結果に応じて演出的な表示内容を変動させる。裏セット機構152は、賞球タンク153や賞球の流路、賞球を払い出す払出装置154等を含む。払出装置154は、各入賞口への入賞に応じて賞球タンク153から供給される遊技球を上球皿105へ払い出す。払出制御基板155は、払出装置154による払出動作を制御する。発射装置156は、上球皿105の貯留球を遊技領域81へ1球ずつ発射する。発射制御基板157は、発射装置156の発射動作を制御する。電源基板158は、ぱちんこ遊技機100の各部へ電力を供給する。メイン基板200の基板上には、性能表示部159が設けられる。性能表示部159は、セーフ球とアウト球の合計である発射球総数に対する総賞球数の比率を、例えば4桁の数字を表示する4つの7セグメントLEDで構成される。」

(ケ)「【0055】
<メイン基板200>
図4は、メイン基板200の機能構成を示すブロック図である。メイン基板200は、入球判定手段201、性能表示部159、乱数生成手段202、第1抽選手段211、第2抽選手段212、事前判定手段235、普図抽選手段213、保留制御手段240、メイン表示制御手段250、特別遊技制御手段260、小当り遊技制御手段265、特定遊技制御手段270、開閉制御手段275、特図調整手段276、メイン初期処理実行手段280、メイン電断処理実行手段282、メインエラー検出手段284、設定変更手段286、設定確認手段287、コマンド通信手段205を備える。」

(コ)「【0059】
<第1抽選手段211および第2抽選手段212>
第1抽選手段211は、第1の遊技に係る第1の抽選を実行する機能として、第1抽選値取得手段216、第1当否判定手段221、第1図柄決定手段226、第1変動パターン決定手段231を含み、第1始動口11への入球に対応する当否抽選として第1当否抽選を実行する。第1抽選手段211による各種の抽選結果に基づき、メイン表示制御手段250により第1特別図柄表示部41において第1特別図柄51の変動表示がなされる。また、コマンド通信手段205から送信される情報に基づき、演出表示装置60の表示領域において装飾図柄61の変動表示がなされる。第2抽選手段212は、第2抽選値取得手段217、第2当否判定手段222、第2図柄決定手段227、第2変動パターン決定手段232を含み、第2始動口12への入球に対応する当否抽選として第2当否抽選を実行する。第2抽選手段212による各種の抽選結果に基づき、メイン表示制御手段250により第2特別図柄表示部42において第2特別図柄52の変動表示がなされる。また、コマンド通信手段205から送信される情報に基づき、演出表示装置60の表示領域において装飾図柄61の変動表示がなされる。
【0060】
<第1抽選値取得手段216および第2抽選値取得手段217>
第1抽選値取得手段216は、第1始動口11への入球を契機に、第1抽選手段211による各種の抽選や決定のための乱数を乱数生成手段202から取得する。具体的には、第1当否判定手段221による当否判定用の第1当否抽選値、第1図柄決定手段226による第1特別図柄51の停止態様決定用の第1図柄抽選値、第1変動パターン決定手段231による第1特別図柄51の変動パターン(変動時間)決定用の第1パターン抽選値をそれぞれ対応する乱数生成手段から取得する。第2抽選値取得手段217は、第2始動口12への入球を契機に、第2抽選手段212による各種の抽選や決定のための乱数を乱数生成手段202から取得する。具体的には、第2当否判定手段222による当否判定用の第2当否抽選値、第2図柄決定手段227による第2特別図柄52の停止態様決定用の第2図柄抽選値、第2変動パターン決定手段232による第2特別図柄52の変動パターン(変動時間)決定用の第2パターン抽選値をそれぞれ対応する乱数生成手段から取得する。
【0061】
第1当否判定手段221は、第1当否抽選値に基づき、特別遊技へ移行するか否かを判定する当否判定を実行する。第2当否判定手段222は、第2当否抽選値に基づき、特別遊技へ移行するか否かを判定する当否判定を実行する。当否判定では、より具体的には、特別遊技へ移行することを示す「大当り」、小当り遊技へ移行することを示す「小当り」、特別遊技および小当り遊技には移行しないことを示す「外れ」、のいずれに該当するかが判定される。第1当否判定手段221および第2当否判定手段222は、当否判定で参照する当否判定テーブルを保持する。なお、図柄変動を開始するにあたって実行する当否判定を、後述する事前当否判定と区別するために、適宜「本判定としての当否判定」とも呼ぶ。なお、本明細書において「テーブル」や「選択基準」というときは、厳密に抽選値などの第1のパラメータと、選択肢を示す値などの第2のパラメータとの対応関係をテーブル構造で定めたデータを指すだけでなく、そのような対応関係として1または複数の第1のパラメータから第2のパラメータを導出するプログラム構造で実現する場合も広く含むものとする。それらを含めて実質的に「テーブル」と同義の概念として適宜「選択基準」と称する。また、テーブル構造を用いる場合、実質的に1種類となる選択基準を構造的に細分化された複数のテーブルの組合せで構成してもよいが、「複数種の選択基準」というときはその細分化されたテーブルの数ではなくテーブルの実質的な種類の数を示す。」

(サ)「【0082】
<保留制御手段240>
図4に戻り、保留制御手段240は、特図保留手段241、普図保留手段242を含む。特図保留手段241は、新たに第1当否抽選値または第2当否抽選値が取得されるときに、それ以前に取得されていた第1当否抽選値または第2当否抽選値に対応する図柄変動が表示されている場合、新たに取得された第1当否抽選値または第2当否抽選値に対応する図柄変動の開始を保留し、その当否抽選値を対応する図柄の変動表示開始まで記憶する。ここで、第1特別図柄について、それぞれ4個を上限に、第1当否抽選値、第1図柄抽選値、第1パターン抽選値を記憶し、第2特別図柄について、それぞれ4個を上限に、第2当否抽選値、第2図柄抽選値、第2パターン抽選値を記憶する。普図保留手段242は、普図抽選手段213により取得された普図抽選値を保留球として記憶する。これらの保留数がそれぞれ第1特図保留表示部71、第2特図保留表示部72、普図保留表示部75の点灯数または点滅数により表される。特図保留手段241による保留の数は演出表示装置60にも表示される。
・・・
【0084】
<メイン表示制御手段250>
メイン表示制御手段250は、第1特図制御手段251、第2特図制御手段252、普図制御手段254を含む。第1特図制御手段251は、第1抽選手段211による第1当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第1特別図柄51の変動を第1特別図柄表示部41に表示させる。第1特図制御手段251は、それ以前になされた第1当否抽選または第2当否抽選に対応する図柄の変動表示が終了していることを新たな図柄変動の開始条件とする。第2特図制御手段252は、第2抽選手段212による第2当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第2特別図柄52の変動を第2特別図柄表示部42に表示させる。第2特図制御手段252もまた、それ以前になされた第1当否抽選または第2当否抽選に対応する図柄の変動表示が終了していることを新たな図柄変動の開始条件とする。」

(シ)「【0098】
<特別遊技制御手段260>
特別遊技制御手段260は、第1抽選手段211による第1当否抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第1特別図柄51が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口20を開放させることにより特別遊技を実行する。同様に、特別遊技制御手段260は、第2抽選手段212による第2当否抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第2特別図柄52が所定の大当り態様で停止されたときに特別遊技作動条件が成立したと判定し、大入賞口20を開放させることにより特別遊技を実行する。
【0099】
特別遊技は、大入賞口20の開閉動作を複数回数連続して継続する遊技であり、複数回の単位遊技で構成される。特別遊技には、単位遊技を16回繰り返す16R大当りと、単位遊技を4回繰り返す4R大当りと、16R大当りおよび4R大当りより開放時間が短い単位遊技を2回だけ繰り返す2R大当りがある。16R大当りは第2当否抽選での大当りであり、4R大当りは第1当否抽選での大当りである。16R大当りおよび4R大当りにおいては、1回の単位遊技において大入賞口20を原則として約30秒間開放させる。2R大当りにおいては、1回の単位遊技において大入賞口20を約1.6秒間だけ開放させる。特別遊技制御手段260は、単位遊技の設定ラウンド数を消化したときに特別遊技を終了させる。なお、2R大当りとなった場合においても、所定の条件を満たした場合には、16R大当りおよび4R大当りと同様の開放態様で大入賞口20を開放させてもよい。」

(ス)「【0100】
<小当り遊技制御手段265>
小当り遊技制御手段265は、第1抽選手段211による第1の抽選が小当りを示す結果となった場合、第1特別図柄51が所定の小当り態様で停止されたときに小当り遊技作動条件が成立したと判定し、開閉制御手段275に大入賞口20を開放させることにより小当り遊技を実行する。同様に、小当り遊技制御手段265は、第2抽選手段212による第2の抽選が小当りを示す結果となった場合、第2特別図柄52が所定の小当り態様で停止されたときに小当り遊技作動条件が成立したと判定し、開閉制御手段275に大入賞口20を開放させることにより小当り遊技を実行する。」

(セ)「【0102】
<特定遊技制御手段270>
特定遊技制御手段270は、確変状態、時短状態、および入球容易状態における通常遊技を制御する。特定遊技制御手段270は、特別図柄が確変への移行を伴う特定大当りの図柄であった場合に、特別遊技の終了後に遊技状態を確変状態、時短状態および入球容易状態へ移行させる。確変状態、時短状態および入球容易状態は、次の大当りが発生するまで継続される。時短状態においては、第1特別図柄51および第2特別図柄52の変動表示時間が概ね短くなるよう、第1変動パターン決定手段231および第2変動パターン決定手段232が変動時間の短い変動パターンを選択する。ただし、通常状態においては、保留制御手段240による当否抽選値の保留数に応じた変動パターンテーブルを参照し、保留制御手段240による保留数が少なくなるほど変動時間の長い変動パターンが出現しやすくなる。入球容易状態においては、普通図柄の確変および第2始動口12の開放延長の双方、または第2始動口12の開放延長のみが実施される。すなわち、特定遊技制御手段270は、特定大当りとなった場合に第2始動口12を開放延長状態にさせるとともに、その当否抽選が第2当否抽選であった場合に限りさらに開放抽選の当り確率を通常確率状態より高い確変状態へ移行させる。確変状態の間は第1当否判定手段221および第2当否判定手段222による当否判定結果が大当りとなる確率が高い値のまま維持される。」

(ソ)「【0270】
特別遊技が終了すると、所定の確率(第1実施例では100%)で変動時間短縮遊技(以下「時短」と呼ぶ。)と呼ばれる特定遊技に移行する。時短は、特別遊技の終了後、新たな大当りが発生するか、または、特別図柄の変動回数が所定回数に達するまで継続される。第1実施例の時短は、第2始動入賞口への入球容易性を通常状態より高めた状態であり、前提技術における入球容易状態に対応するものであり、電チューサポートとも呼ばれる。時短は、(1)特別図柄の変動時間短縮、(2)普通図柄の確変、(3)普通図柄の変動時間短縮、(4)普通電動役物90の開放時間延長を含む。普通電動役物90は、第2始動口12への遊技球の入球が相対的に困難な状態から相対的に容易な状態に変化するよう開放可能な入球変動機構である。
【0271】
また後述するように、第2始動口12への入球を契機とする当否抽選では小当りに判定される確率が高く設定される。したがって、第2始動口12への入球容易性が高まる時短中には小当りが発生しやすく、小当りVの発生可能性も高まる。なお、小当りVと対比される大当りであり、図柄変動が大当りを示す態様で停止表示されたことを契機に特別遊技が開始される大当りを以下「図柄大当り」とも呼ぶ。通常状態(非時短状態)の通常遊技では第2始動口12への入球が後述するチャンス演出(普通図柄の第1当り)の状況を除き困難であるため、まずは第1始動口11に入球させて、特図1の図柄大当りを獲得して時短に移行させる。そして、時短において第2始動口12に入球させて小当りVまたは図柄大当りを獲得し、その特別遊技終了後にも時短が継続することで小当りVおよび図柄大当りの連続を狙っていく遊技性となる。本第1実施例のように、小当りVを採用するぱちんこ遊技機においては、設定機能を搭載する場合に設定値に影響を受けない小当りから発展する大当りを特定遊技における主の遊技目的とすることから、前提技術のような特別図柄の当否抽選に係る確変機能を備える機種における特定遊技(確変状態)と比較して、特定遊技中の遊技性の設定差を抑えることが可能となる。具体的には、100回継続するの特定遊技を行う場合に、小当りV(小当り確率1/100)を採用する機種の場合、特定遊技中に小当りから大当りを獲得できる可能性は約63%であるが、前提技術のような確変機(確変中確率:設定1=1/100、設定6=1/80)の場合、確変中に大当りとなる確率は63%(設定1)〜71%(設定6)と大きく変化する。」

(タ)「【0274】
時短9回が付与される大当りの場合、特別遊技終了後に時短状態の通常遊技へ移行され、特図2の変動が9回実行される間と、その終了時に残存する保留4個分の図柄変動(典型的には特図2の4回の変動)が実行される間、ラッシュ演出が表示される。また、時短1回が付与される大当りの場合、特別遊技終了後に時短状態の通常遊技へ移行され、特図2の変動が1回実行される間と、その終了時に存在する保留4個分の図柄変動(典型的には特図2の4回の変動)が実行される間、チャンス演出が表示される。時短中の図柄変動および保留4個分の図柄変動で大当りが発生しなければ、通常時に戻る。
【0275】
時短中の図柄変動、または、時短終了後の4回の図柄変動では、特図2の変動結果が小当りとなったことを契機とする小当りV(特図2小当りV)、特図2柄大当り、または特図1柄大当りが発生しうる。特図2小当りVは、時短9回が付与される15R大当り、時短9回が付与される10R大当り、時短9回が付与される5R大当りのいずれかに振り分けられる。特図2柄大当りは、時短9回が付与される5R大当りである。特図1柄大当りは、時短9回が付与される15R大当り、時短9回が付与される4R大当りのいずれかに振り分けられる。これらの大当りが終了すると、時短状態の通常遊技(ラッシュ演出)へ戻り、時短中の図柄変動、または、時短終了後の4回の図柄変動にて再度の大当りの獲得を狙うことになる。」

(チ)「【0277】
図41は、第1実施例のぱちんこ遊技機の前面側における基本的な構造を示す。第1始動口11は、遊技領域81の中央下部であり、センター飾り64の下位置に設けられる。第1作動口31は、第1始動口11の上位置に設けられる。第1始動口11と第1作動口31は、第1の強度(第1実施例では相対的に弱い強度、言い換えれば左打ち)で発射された遊技球が入球可能または入球容易となる位置に設けられる。一方、第2始動口12、大入賞口20、第2作動口32は、第1の強度とは異なる強度(第1実施例では相対的に強い強度、言い換えれば右打ち)で発射された遊技球が入球可能または入球容易となる位置に設けられる。第1実施例では、左打ちされた遊技球は第2始動口12、大入賞口20、第2作動口32へ入球しないよう、かつ、右打ちされた遊技球は第1始動口11と第1作動口31へ入球しないよう、遊技領域81に遊技釘や風車が配置され、また遊技球の流路が設定される。
【0278】
大入賞口20の内部には、遊技球が通過することにより小当り発展大当りが発生する特定領域が設けられており、特定領域通過検出装置504は、特定領域を遊技球が通過した場合にそのことを検出する。特定領域開閉ソレノイド506は、特定領域の状態を、遊技球が通過不可能な閉鎖状態と、遊技球が通過可能な開放状態との間で切り替える切替部材を制御する。特定領域開閉ソレノイド506は、開閉制御手段275の制御に応じて、当否抽選の結果(当否判定の結果とも言える)が小当りの場合、特定領域を開放状態とするよう切替部材を制御する。特定領域への入球を検出すると、特別遊技へ移行する旨の決定がなされる。特定領域への入球が未検出の場合、小当り遊技の終了後に通常遊技に戻る。
【0279】
第1実施例に係る特別遊技には、停止時の図柄が大当りとなることを契機に実行される第1特別遊技(図柄大当り)と、停止時の図柄が小当りとなった後に小当りが大当りに発展することを契機として実行される第2特別遊技(小当りV)とがある。第1特別遊技は、前提技術に示した特別遊技と同様であり、すなわち図柄大当りを契機とする。第2特別遊技は、小当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したこと(「V入賞」とも呼ぶ。)を契機とした、条件装置の作動と役物連続作動装置の作動に伴う特別遊技である。
【0280】
遊技領域81の外側右下位置には、遊技機500の遊技状態を示すための状態表示ランプ502が設けられる。状態表示ランプ502は、例えば、二つのランプによって構成され、第1のランプは時短状態(本実施例では普通電動役物の入球容易状態を伴う)であるか否かを示し、第2のランプは右打ちをすべき遊技状態(普通電動役物の入球容易状態や、特別電動役物の作動状態)であるか否かを示す。第1のランプは、時短状態の通常遊技である場合に点灯し、通常状態の通常遊技である場合に消灯する。第2のランプは、右打ちをすべき遊技状態である場合、つまり、時短状態、小当り遊技状態または特別遊技状態にある場合に点灯し、通常状態である場合に消灯する。したがって、状態表示ランプ502の第2のランプは、いわゆる右打ち表示灯として機能し、一定の表示態様にて右打ちをすべき遊技状態であるか否かを表示する。」

(ツ)「【0290】
時短の終了条件は、(1)大当りまたは小当りが発生したこと、(2)特図2の変動回数が9回(時短9回付与の場合)または1回(時短1回付与の場合)に達したこと、(3)特図1の変動回数が7回に達したこと、(4)特図1と特図2の変動回数の合計が15回(時短9回付与の場合)または7回(時短1回付与の場合)に達したことのいずれかが成立した場合に満たされる。特定遊技制御手段270は、特別遊技終了後の通常遊技の遊技状態を時短に移行させ、時短中の特図1の変動回数と特図2の変動回数をそれぞれ個別に計数する。特定遊技制御手段270は、上記の終了条件が満たされた場合、時短を終了させる。上記(2)(3)(4)のいずれかが成立した場合、特定遊技制御手段270は、通常遊技の遊技状態を通常状態に戻す。
・・・
【0293】
特定遊技制御手段270は、特図1または特図2の変動により時短の終了条件が満たされた場合、当該変動における特図1または特図2の停止表示時(言い換えれば変動時間終了時)に時短を終了させ、遊技状態を通常状態に戻す。」

(テ)「【0473】
第5変形例を説明する。第5変形例では、性能表示部159に関する変形例を説明する。性能表示部159は前提技術に記載したように「セーフ球とアウト球の合計である発射球総数に対する総賞球数の比率(ベース値と称する)を算出して表示するもの」であるが、本変形例においては、特に通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)におけるベース値を表示するものとし、時短遊技中の通常遊技時、役物連続作動装置の作動時における特別遊技中は、性能表示部の表示のための計数データとして扱わないものである。
【0474】
第1実施例および第2実施例に記載する遊技機では、小当り発展大当りの実質的な1ラウンド目に該当する小当り遊技が開始する際に時短遊技を終了させ、小当り遊技の終了に伴って役物連続作動装置を作動させるように構成されている。そのため、小当り遊技中は、通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)と同じ状態であることを意味し、小当り発展大当りにおける実質的な1ラウンド目に該当する状態であるにも拘わらず、獲得した遊技球が通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされてしまうことになる。このような状況下で、第5変形例のベース値の算出を行うと、小当りVとなる小当り発展大当りの発生の度に大当り1R分の出玉と同等のセーフ球(第2実施例では120球)がベース値に加算されるため、遊技的に特別遊技中として扱われるべき小当り遊技において、本来計数の対象とすべきでない値まで性能表示部159の計数データに含まれてしまうことになる恐れが生じる。
・・・
【0476】
第5変形例の性能表示部159に表示するデータについて、メインCPU290は、小当り発展大当りとなる小当り遊技の実行中において、V入賞した場合に大当り遊技の実行が確定的となることから、V入賞後について大当りと同等とみなし、V入賞後の大入賞口20への入球によって発生した賞球、およびV入賞後に発射されたセーフ玉、アウト玉の総数を、ベース値の算出の対象外となるよう制御する手法を採用する。V入賞後に大当りと同等の遊技状態と満たすための方法としては、小当り遊技中にV入賞したことに基づいて、条件装置または役物連続作動装置の作動にかかるフラグを大当り中と同等になる値に切り替えることがあげられる。」

(ト)【0270】の「特別遊技が終了すると、・・・「時短」・・・と呼ばれる特定遊技に移行する」の記載、【0290】の「(2)特図2の変動回数が9回(時短9回付与の場合)」の記載からみて、「時短」は、1回の遊技を指しているものと認められる。
しかしながら、【0102】の「特定遊技制御手段270は、・・・特別遊技の終了後に遊技状態を・・・時短状態・・・へ移行させる」の記載を踏まえると、【0044】の「時短において・・・通常状態の場合と比べて、・・・大当りの獲得容易性を相対的に高めることができる」の記載、【0271】の「第2始動口12への入球容易性が高まる時短中」、【0275】の「時短終了後の4回の図柄変動」、【0290】の「時短の終了条件は、・・・のいずれかが成立した場合に満たされる。特定遊技制御手段270は、特別遊技終了後の通常遊技の遊技状態を時短に移行させ、・・・特定遊技制御手段270は、上記の終了条件が満たされた場合、時短を終了させる」、及び【0293】の「特定遊技制御手段270は、特図1または特図2の変動により時短の終了条件が満たされた場合、当該変動における特図1または特図2の停止表示時(言い換えれば変動時間終了時)に時短を終了させ、遊技状態を通常状態に戻す」の記載において、「時短」は1回の遊技ではなく、「遊技状態が」「時短状態」であることを意味していると認められる。
よって、【0044】及び【0293】の「時短」、【0271】の「時短中」、【0275】の「時短終了後」、及び【0290】の「時短の終了条件」は、それぞれ、「時短状態」、「時短状態中」、「時短状態終了後」、及び「時短状態の終了条件」を意味していると認められる(認定事項(ト))。

(ナ)【0003】の「小当りとなった場合に可変入球装置内の特定領域(Vゾーン)に遊技球を通過させることで「小当り」から「大当り」へと昇格させ、新たな特別遊技(以下、「小当り発展大当り」または「小当りV」ともいう)」の記載から、「小当り発展大当り」と「小当りV」は同義であることが認められる(認定事項(ナ))。

(ニ)【0279】の「小当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したこと(「V入賞」とも呼ぶ。)」の記載から、「V入賞」は、「小当り遊技中に遊技球が特定領域を通過したこと」と同義であると認められる(認定事項(ニ))。

上記記載事項(ア)〜(テ)、認定事項(ト)〜(ニ)を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

「 遊技者が発射ハンドル107を手で回動させると、遊技球が遊技領域81へ発射され、遊技領域81の上部へ発射された遊技球が一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20の各入賞口へ落入すると、その入賞口の種類に応じた賞球が払い出され(【0031】)、
一般入賞口33等の各入賞口に落入した遊技球はセーフ球として処理され、アウト口34に落入した遊技球はアウト球として処理され(【0031】)、
第1始動口11は、左打ち、すなわちセンター飾り64の左側通路へ流れるように狙って比較的弱めに発射したときに入球可能ないし入球容易となるような位置に設けられ(【0015】)、
第2始動口12は、右打ち、すなわちセンター飾り64の右側通路へ流れるように狙って比較的強めに発射したときに入球可能ないし入球容易となるような位置に設けられる(【0015】)
ぱちんこ遊技機100(【0011】)であって、
メイン基板200を備え(【0045】)、
メイン基板200は、第1抽選手段211および第2抽選手段212を備え(【0055】)、
第1抽選手段211は、第1抽選値取得手段216、第1当否判定手段221を含み、第1始動口11への入球に対応する当否抽選として第1当否抽選を実行し、第1抽選手段211による各種の抽選結果に基づき、第1当否抽選の判定結果に対応した図柄である第1特別図柄51の変動表示がなされ、
第2抽選手段212は、第2抽選値取得手段217、第2当否判定手段222を含み、第2始動口12への入球に対応する当否抽選として第2当否抽選を実行し、第2抽選手段212による各種の抽選結果に基づき、第2当否抽選の判定結果に対応した図柄である第2特別図柄52の変動表示がなされ(【0021】、【0059】)、
第1抽選値取得手段216は、第1始動口11への入球を契機に、当否判定用の第1当否抽選値を取得し、第2抽選値取得手段217は、第2始動口12への入球を契機に、当否判定用の第2当否抽選値を取得し(【0060】)、
第1当否判定手段221は、第1当否抽選値に基づき、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技へ移行することを示す「大当り」、小当り遊技へ移行することを示す「小当り」、特別遊技および小当り遊技には移行しないことを示す「外れ」、のいずれに該当するかを判定する当否判定を実行し、
第2当否判定手段222は、第2当否抽選値に基づき、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技へ移行することを示す「大当り」、小当り遊技へ移行することを示す「小当り」、特別遊技および小当り遊技には移行しないことを示す「外れ」、のいずれに該当するかが判定する当否判定を実行し(【0014】、【0061】)、
新たに第1当否抽選値または第2当否抽選値が取得されるときに、それ以前に取得されていた第1当否抽選値または第2当否抽選値に対応する図柄変動が表示されている場合、新たに取得された第1当否抽選値または第2当否抽選値に対応する図柄変動の開始を保留し、その当否抽選値を対応する図柄の変動表示開始まで記憶する特図保留手段241を含む保留制御手段240と(【0055】、【0082】)、
第1抽選手段211による第1当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第1特別図柄51の変動を第1特別図柄表示部41に表示させる第1特図制御手段251と、第2抽選手段212による第2当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第2特別図柄52の変動を第2特別図柄表示部42に表示させる第2特図制御手段252と、を含むメイン表示制御手段250と(【0055】、【0084】)、
第1当否抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第1特別図柄51が、図柄変動を経て、所定の大当り態様で停止されたときに、大入賞口20の開閉動作を複数回数連続して継続する特別遊技を実行し、
第2当否抽選が特別遊技への移行を示す結果となった場合、第2特別図柄52が、図柄変動を経て、所定の大当り態様で停止されたときに、大入賞口20の開閉動作を複数回数連続して継続する特別遊技を実行する特別遊技制御手段260と(【0038】、【0055】、【0098】、【0099】)、
第1抽選手段211による第1の抽選が小当りを示す結果となった場合、大入賞口20を開放させることにより小当り遊技を実行し、第2抽選手段212による第2の抽選が小当りを示す結果となった場合、大入賞口20を開放させることにより小当り遊技を実行する小当り遊技制御手段265と(【0055】、【0100】)、
特別遊技の終了後に遊技状態を時短状態および入球容易状態へ移行させる特定遊技制御手段270とを、さらに備え(【0055】、【0102】)、
特別遊技のうちの通常特別遊技では、大入賞口20の開放が約30秒間続いた後、または9球以上の遊技球が落入した後で一旦閉鎖され(【0039】)、
特別遊技が終了すると移行する時短状態は、第2始動入賞口への入球容易性を通常状態より高めた状態であり、第2始動口12への入球容易性も増すため、第2始動口12への入球数が増加する可能性も高い入球容易状態に対応するものであり(【0043】、【0270】、認定事項(ト))、
時短状態において、大当りの獲得容易性を相対的に高めることができ(【0044】、認定事項(ト))、
第2始動口12への入球容易性が高まる時短状態中には小当りが発生しやすく、小当り発展大当りの発生可能性も高まり(【0271】、認定事項(ト)、認定事項(ナ))、
時短9回が付与される大当りの場合、特別遊技終了後に時短状態の通常遊技へ移行され、特図2の変動が9回実行される間と、その終了時に残存する保留4個分の図柄変動(典型的には特図2の4回の変動)が実行され(【0274】)、
時短状態終了後の4回の図柄変動では、特図2の変動結果が小当りとなったことを契機とする小当り発展大当りが発生しうるものであり(【0275】、認定事項(ト)、認定事項(ナ))、
大入賞口20は、右打ちで発射された遊技球が入球可能または入球容易となる位置に設けられ(【0277】)、
大入賞口20の内部には、遊技球が通過することにより小当り発展大当りが発生する特定領域が設けられており、当否抽選の結果(当否判定の結果とも言える)が小当りの場合、特定領域への入球を検出すると、特別遊技へ移行し(【0278】)、
時短状態、小当り遊技状態または特別遊技状態にある場合は、右打ちをすべき遊技状態であり(【0280】)、
時短状態の終了条件は、(1)大当りまたは小当りが発生したこと、(2)特図2の変動回数が9回(時短9回付与の場合)または1回(時短1回付与の場合)に達したこと、(3)特図1の変動回数が7回に達したこと、(4)特図1と特図2の変動回数の合計が15回(時短9回付与の場合)または7回(時短1回付与の場合)に達したことのいずれかが成立した場合に満たされ(【0290】、認定事項(ト))、
特定遊技制御手段270は、時短状態の終了条件が満たされた場合、時短状態を終了させ、遊技状態を通常状態に戻し(【0293】、認定事項(ト))、
通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)における、セーフ球とアウト球の合計である発射球総数に対する総賞球数の比率であるベース値を算出して表示する性能表示部159(【0473】)を備え、
小当り遊技中は、通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)と同じ状態であり、獲得した遊技球が通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ(【0474】)、
小当り発展大当りとなる小当り遊技の実行中において、遊技球が特定領域を通過した後の大入賞口20への入球によって発生した賞球、および遊技球が特定領域を通過した後に発射されたセーフ玉、アウト玉の総数を、ベース値の算出の対象外となるよう制御する(【0476】、認定事項(ニ))、
ぱちんこ遊技機100(【0011】)。」

イ 周知例1
周知技術の例として引用する、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−196264号公報(以下「周知例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0050】
さらに、一括表示装置50には、遊技機10の排出球数を表示する排出球数表示部66、遊技機10の出玉率を表示する出玉率表示部67、遊技機10の役物比率を表示する役物比率表示部68が設けられている。排出球数表示部66、出玉率表示部67、役物比率表示部68は、各々、複数(一つでも可)の7セグメント型の表示器(LEDランプ)等で構成されており、これら表示部は、排出球数、出玉率、役物比率を表示する表示手段を構成する。」

(イ)「【0053】
出玉率は、排出球数(或は発射球数)に対する賞球数の合計の比率(割合)であり、(獲得球数÷排出球数)×100(%)で計算される。即ち、出玉率は、排出球数100個当りの獲得球数(賞球数の合計)となる。この定義による出玉率は、入賞時に賞球数がカウントされるので、球切れ等で実際の賞球の払い出しが行われなくても得ることができる。なお、出玉率は、本実施形態のように排出球数が100個になる度に、排出球数が0から100個になるまでの間の獲得球数から簡易に求めてもよいし、遊技機の電源投入から現在まで積算した獲得球数(賞球数の合計)と排出球数を用いて、上記の定義から正確に算出してもよい。なお、従来は出玉率を表示することは行われていなかったが、本実施形態では、出玉率表示部67(出玉率表示手段)が出玉率を表示することで、遊技者に一般入賞口35への興味と関心を抱かせることができる。そして、遊技の興趣を高めることができる。」

(ウ)「【0063】
図2C(II)のように、遊技球の発射中以外の状態や客待ちデモ状態(即ち客待ち状態)で、出玉率表示部67は表示器のセグメントが消灯して非表示の状態となってよい。一方、客待ちデモ中でない状態や遊技球の発射中の状態では、出玉率表示部67において表示器のセグメントは点灯し、遊技中の遊技者が認識できるよう出玉率を表示する。これは、遊技中の遊技者に対する特典となるため、遊技機10の稼働を上げることができる。さらに、遊技機10の電源投入後に排出球数が100個になるまで、出玉率が得られないため、出玉率表示部67は非表示の状態となってよい。」

以上の記載事項(ア)〜(ウ)を総合すると、周知例1には、以下の事項が記載されている。

「排出球数(或は発射球数)に対する賞球数の合計の比率(割合)であり、(獲得球数÷排出球数)×100(%)で計算される出玉率を計算し(【0053】)、
一括表示装置50に設けられている出玉率表示部67に出玉率を表示する遊技機10であって(【0050】)、
出玉率は、排出球数が100個になる度に求め(【0053】)、
遊技機10の電源投入後に排出球数が100個になるまで、出玉率が得られないため、出玉率表示部67は非表示の状態とする遊技機10(【0063】)。」

ウ 周知例2
周知技術の例として引用する、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−161273号公報(以下「周知例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0012】
はじめに、ぱちんこ遊技機の遊技機枠Dは、外枠ユニットD12、前枠ユニットD14、透明板ユニット(又はガラスユニットともいう)D16、扉ユニット(又はガラス扉、ともいう)D18、球皿ユニットD17(上球皿D20、下球皿D22及び発射ハンドルD44を総称してD17としている)を主体として構成される。」

(イ)「【0039】
次に、入球状態表示装置J10は、第1主遊技始動口A10、第2主遊技始動口B10及び一般入賞口P10への遊技球の入球状況{非確率変動遊技状態且つ非時間短縮遊技状態(主遊技確変フラグオフ且つ主遊技時短フラグオフ)での入球状況を表示してもよい}が正常であるか異常であるかの情報を表示する表示装置である。尚、入球状況が異常であるとは、一般入賞口P10に向けて遊技球が流下するように誘導する遊技釘が遊技機の出荷時とは異なる方向に曲がっており、一般入賞口P10へ向けて遊技球を発射し続けても入り難い状況である、等を異常としている。尚、本実施形態においては、第1主遊技始動口A10又は第2主遊技始動口B10へ入球した遊技球と一般入賞口P10へ入球した遊技球との比率が想定した範囲外となっている場合に異常であると判定するよう構成されている。また、詳細は後述することとなるが、入球状態表示装置J10にて表示し得る要素は、上述したものには限定されず、ベース値(所定の入賞口による賞球払出数を遊技球の総発射球数で除算した値を100倍した値であり、詳細は後述する)等、様々な要素を表示可能に構成されている。」

(ウ)「【0459】
また、入球状態表示装置J10には、所定球数(例えば、60000球)以上の発射球数が計測された場合に役物比率、連続役物比率、ベース値、を表示するよう構成してもよい(発射球数が前記所定数未満である場合には入球状態表示装置J10に役物比率、連続役物比率、ベース値、を表示しない)。」

以上の記載事項(ア)〜(ウ)を総合すると、周知例2には、以下の事項が記載されている。

「所定の入賞口による賞球払出数を遊技球の総発射球数で除算した値を100倍した値であるベース値を表示可能な入球状態表示装置J10を備える(【0039】)ぱちんこ遊技機であって(【0012】)、
入球状態表示装置J10には、所定球数(例えば、60000球)以上の発射球数が計測された場合にベース値を表示するよう構成し、発射球数が前記所定数未満である場合には入球状態表示装置J10にベース値を表示しない(【0459】)ぱちんこ遊技機(【0012】)。」

エ 周知例3
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す周知技術の例として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−61794号公報(以下「周知例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0011】
A.第1実施形態:
A1.遊技機の構造:
図1は、第1実施形態におけるパチンコ遊技機(以下、「パチンコ機」ともいう)の斜視図である。パチンコ機10は、略矩形に組み合わされた木製の外枠11を備えている。パチンコ機10を遊技ホールに設置する際には、この外枠11が遊技ホールの島設備に固定される。また、パチンコ機10は、外枠11に回動可能に支持されたパチンコ機本体12を備えている。パチンコ機本体12は、内枠13と、内枠13の前面に配置された前扉枠14とを備えている。内枠13は、外枠11に対して金属製のヒンジ15によって回動可能に支持されている。前扉枠14は、内枠13に対して金属製のヒンジ16によって回動可能に支持されている。内枠13の背面には、主制御装置、音声発光制御装置、表示制御装置など、パチンコ機本体12を制御する制御機器が配置されている。これら制御機器の詳細については後述する。さらに、パチンコ機10には、シリンダ錠17が設けられている。シリンダ錠17は、内枠13を外枠11に対して開放不能に施錠する機能と、前扉枠14を内枠13に対して開放不能に施錠する機能とを有する。各施錠は、シリンダ錠17に対して専用の鍵を用いた所定の操作が行われることによって解錠される。」

(イ)「【0125】
CPU308は、演算実行条件記憶用メモリ307に記憶されている演算実行条件が成立したか否かを判定するとともに、演算実行条件が成立したと判定した場合には、賞球数データ記憶用メモリ306に記憶された賞球数データと、レジスタ304に記憶された各入球口への遊技球の入球個数とに基づいて、各種の遊技履歴情報を算出する。本実施形態では、CPU308は、レジスタ304に記憶された排出通路通過個数NOUTの値が500個に達する毎に、遊技履歴情報として下記の値を算出する。
【0126】
・役物比率
=役物作動によって賞球として払い出された遊技球の個数(役物賞球数)/賞球として払い出された遊技球の合計個数(総賞球数)
=(N2×P2+NS×PS)/(NN1×PN1+NN2×PN2+NN3×PN3+N1×P1+N2×P2+NS×PS)
・連続役物比率
=連続役物作動によって賞球として払い出された遊技球の個数(連続役物賞球数)/賞球として払い出された遊技球の合計個数(総賞球数)
=(NS×PS)/(NN1×PN1+NN2×PN2+NN3×PN3+N1×P1+N2×P2+NS×PS)
・出玉率(トータル)
=賞球として払い出された遊技球の合計個数(総賞球数)/遊技盤30に発射された遊技球の個数
=(NN1×PN1+NN2×PN2+NN3×PN3+N1×P1+N2×P2+NS×PS)/NOUT」

(ウ)「【0134】
このように、本実施形態では、排出通路を通過した遊技球の個数が500個に達する毎に、すなわち、500個の遊技球が遊技盤30に発射される毎に、役物比率等の遊技履歴情報が算出されて演算結果記憶用メモリ309に記憶される。そして、算出された遊技履歴情報が検査機320の表示部328に表示されることになる。」

(エ)【0134】の「500個の遊技球が遊技盤30に発射される毎に、役物比率等の遊技履歴情報が算出され・・・算出された遊技履歴情報が検査機320の表示部328に表示されることになる」の記載から、500個の遊技球が発射されるまでは、遊技履歴情報は算出されないのであるから、算出結果が表示部328に表示されないことは明らかである。
よって、周知例3には、500個の遊技球が発射されるまでは、遊技履歴情報は検査機320の表示部328に表示されないことが示されていると認められる(認定事項(エ))。

以上の記載事項(ア)〜(ウ)、認定事項(エ)を総合すると、周知例3には、以下の事項が記載されている。

「排出通路通過個数の値が500個に達する毎に、すなわち、500個の遊技球が遊技盤30に発射される毎に、遊技履歴情報として、賞球として払い出された遊技球の合計個数(総賞球数)/遊技盤30に発射された遊技球の個数である出玉率を算出し、
算出された遊技履歴情報が検査機320の表示部328に表示されることになり、
500個の遊技球が発射されるまでは、遊技履歴情報は検査機320の表示部328に表示されないパチンコ機10(【0011】、【0125】、【0126】、【0134】、認定事項(エ))。」

オ 周知例4
周知技術の例として引用する、本願出願前に日本国内又は外国において公然知られた、あるいは、本願出願前に頒布された刊行物である「(案)性能表示モニタの搭載要件(Ver.106),日本遊技機工業組合提供資料(「性能表示モニタ」に関する技術資料),2017年5月11日,P.1−5(以下「周知例4」という。)」には、次の事項が記載されている。

(ア)1頁1〜9行に
「1.実装条件(ハード)
(1)主基板(払出制御基板は不可)上に表示器および回路部を搭載する。なお、表示部と回路部をユニット化した表示器を主基板上に搭載することは可。
(2)表示部は、遊技機裏面の見やすい場所に設置し、シールや構造物等で隠れないこと。
(3)表示器は、7セグLED等を使用して、4桁の数字を表示することが可能であること。
(4)7セグLED等は4桁を横に並べること。
(5)7セグLED等の数字の下にはドットポイントを設けること。」
と記載されている。

(イ)2頁1行〜3頁7行に
「2.実装条件(ソフト)
(表示例)

(1)表示器は常時点灯とする。
(2)計測方法
仕様は以下のとおりとする。
図1−1(原文は丸囲みされた1)
・初回電源投入(RWMオール初期化)から全遊技状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)の計測を開始する。
<区間A(総アウト個数が300個未満の任意の個数に達するまで)>
【識別セグの「bL.」側】
・識別セグ「bL」は点滅、比率セグは「−−」を表示する。
【識別セグの「b6.」側】
・識別セグ「b6.」は点滅、比率セグは「−−」を表示する。
図1−2(原文は丸囲みされた2)
・総アウト個数、低確率時かつ時短無時の払出個数(以下、「低確払出個数」)および低確率時かつ時短無時のアウト個数(以下、「低確アウト個数」)を初期化して1回目の計測を開始する。」と記載されている。
<区間B(1回目の総アウト個数が60000個に達するまで)>
【識別セグの「bL」側】
・識別セグ「bL.」は低確アウト個数が0〜5999は点滅、低確アウト個数が6000以上は点灯、比率セグは低確率時かつ時短無時のベースをリアルタイムに計算して表示する。
【識別セグの「b6.」側】
・識別セグ「b6.」は点滅、比率セグは「−−」を表示する。」

(ウ)4頁に図1、表1が記載されている。




(エ)5頁1〜3行に
「(3)計算方法
比率セグに表示される数値は、「(低確払出個数÷低確アウト個数)×100」で計算すること。」と記載されている。

(オ)上記(ア)の「表示器は、7セグLED等を使用して、4桁の数字を表示することが可能であること。」の記載、及び「7セグLED等の数字の下にはドットポイントを設けること。」の記載からみて、上記(イ)に「表示例」として示された「bL.35」、「b6.35」は、表示器の表示例であると認められる。
そうすると、上記(イ)の「表示例」から、表示器は、比率セグを備えていると認められる(認定事項(オ))。

(カ)上記(ウ)の図1、表1から「区間A」の直後に「区間B」となることが見てとれる。
また、上記(イ)には、「初回電源投入・・・から全遊技状態のアウト個数(以下、「総アウト個数」)の計測を開始する。<区間A(総アウト個数が300個未満の任意の個数に達するまで)・・・比率セグは「−−」を表示する。・・・<区間B(1回目の総アウト個数が60000個に達するまで)>・・・比率セグは低確率時かつ時短無時のベースをリアルタイムに計算して表示する。」と記載されている。
以上のことから、周知例4には、区間A(初回電源投入からの総アウト個数が300個未満の任意の個数に達するまで)では、比率セグは「−−」を表示し、その直後の区間B(1回目の総アウト個数が60000個に達するまで)では、比率セグは低確率時かつ時短無時のベースをリアルタイムに計算して表示することが示されていると認められる(認定事項(カ))。

(キ)上記(エ)の「「(低確払出個数÷低確アウト個数)×100」で計算」される数値が「ベース」であることは遊技機の分野の技術常識からみて明らかである(認定事項(キ))。

以上の記載事項(ア)〜(エ)、認定事項(オ)〜(キ)を総合すると、周知例4には、以下の事項が記載されている。

「表示部が遊技機裏面に設置され、
表示器の比率セグに、「(低確払出個数÷低確アウト個数)×100」で計算される数値(ベース)を表示する遊技機であって((ア)、(エ)、認定事項(オ)、認定事項(キ))、
区間A(初回電源投入からの総アウト個数が300個未満の任意の個数に達するまで)では、比率セグは「−−」を表示し、その直後の区間B(1回目の総アウト個数が60000個に達するまで)では、比率セグは低確率時かつ時短無時のベースをリアルタイムに計算して表示する遊技機((ア)、認定事項(カ))。」

(3)対比
本願補正発明と先願発明とを対比する。

(ア)先願発明の「遊技球が遊技領域81へ発射され」ることは、本願補正発明の「遊技領域へ遊技媒体を発射」することに相当する。
また、先願発明の「通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技」は本願補正発明の「有利状態」に相当し、先願発明の「第1特別図柄51」及び「第2特別図柄52」は、いずれも本願補正発明の「識別情報」に相当する。
さらに、先願発明の「変動表示」は、本願補正発明の「可変表示」に相当する。
そうすると、先願発明の「第1特別図柄51または」「第2特別図柄52の変動表示がなされ」、「通常遊技より遊技者に有利な状態である」「特別遊技へ移行」することは、本願補正発明の「識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能」であることに相当する。
そして、先願発明の「ぱちんこ遊技機100」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項A、Oを備える。

(イ)上記(ア)より、先願発明の「第1特別図柄51」及び「第2特別図柄52」は、それぞれ、本願補正発明の「第1識別情報」及び「第1識別情報とは異なる第2識別情報」に相当する。
そうすると、先願発明の「第1抽選手段211による第1当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第1特別図柄51の変動を第1特別図柄表示部41に表示させる第1特図制御手段251」「を含むメイン表示制御手段250」を備える「メイン基板200」は、本願補正発明の特定事項Bの「前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段」の機能を備えているといえる。
同様に、先願発明の「第2抽選手段212による第2当否抽選の判定結果に対応して決定された変動パターンにしたがい第2特別図柄52の変動を第2特別図柄表示部42に表示させる第2特図制御手段252」「を含むメイン表示制御手段250」を備える「メイン基板200」は、本願補正発明の特定事項Bの「前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Bを備える。

(ウ)先願発明の「賞球」は、本願補正発明の「遊技媒体が進入したことに応じて」「付与される」「遊技媒体」に相当する。
そうすると、先願発明の「遊技球が」「落入すると」、「賞球が」「払い出され」る「一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20」は、本願補正発明の「遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Dを備える。

(エ)先願発明の「通常状態」、「時短状態」は、いずれも本願補正発明の「遊技状態」に相当する。
そして、先願発明の「時短状態」は、「第2始動入賞口への入球容易性を通常状態より高めた状態であ」ることから、「第2始動入賞口」すなわち「第2始動口12への入球に対応する」「第2当否抽選の判定結果に対応した図柄である第2特別図柄52の変動表示がなされ」やすい状態といえる。
そうすると、先願発明の「第2特別図柄52」は、本願補正発明の「第2識別情報」に相当するといえるから、先願発明の「時短状態」は、本願補正発明の「前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態」に相当し、先願発明の「通常状態」は、本願補正発明の「第1遊技状態」に相当するといえる。
したがって、先願発明の「特別遊技の終了後に遊技状態を」「第2始動入賞口への入球容易性を通常状態より高めた状態であ」る「時短状態」「へ移行させる特定遊技制御手段270」を備える「メイン基板200」は、本願補正発明の特定事項Eの「遊技状態制御手段」の機能を備えているといえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Eを備える。

(オ)上記(エ)より、先願発明の「通常状態」は、本願補正発明の「第1遊技状態」に相当する。
また、先願発明の「一般入賞口33等の各入賞口に落入した遊技球」である「セーフ球と」「アウト口34に落入した遊技球」である「アウト球の合計である発射球総数」、「総賞球数」は、それぞれ、本願補正発明の「遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数」、「付与された遊技媒体の数である第2数」に相当するから、先願発明の「セーフ球とアウト球の合計である発射球総数に対する総賞球数の比率であるベース値を算出する」ことは、本願補正発明の「第1数に対して」、「第2数の割合を算出」することに相当する。
そうすると、先願発明は、本願補正発明の特定事項Fの「算出手段」を備えていることは明らかである。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Fを備える。

(カ)上記(オ)より、先願発明の「ベース値」は、本願補正発明の「前記算出手段によって算出された割合に関する情報」に相当するから、先願発明の「性能表示部159」は、本願補正発明の「表示手段」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Gを備える。
また、先願発明は、本願補正発明の特定事項Nと「前記表示手段は」、「前記情報を表示」する点で共通する。

(キ)上記(ウ)より、先願発明の「一般入賞口33、第1始動口11、第2始動口12、大入賞口20」は、本願補正発明の「複数の進入手段」に相当する。
そして、先願発明の「大入賞口20」は、「通常特別遊技」において、「大入賞口20の開放が約30秒間続いた後、または9球以上の遊技球が落入した後で一旦閉鎖され」るのであるから、開放状態と閉鎖状態を備えているといえ、また、遊技機の分野の技術常識からみて、開放状態よりも閉鎖状態の方が遊技球の進入が困難なことは明らかであるから、先願発明の「開放」状態及び「閉鎖」状態は、本願補正発明の「第1状態」及び「第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態」に相当する。
したがって、先願発明の「大入賞口20」は、本願補正発明の「第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段」に相当する。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Jを備える。

(ク)上記(キ)より、先願発明の「大入賞口20」、「大入賞口20」の「開放」状態は、それぞれ、本願補正発明の「可変手段」、「第1状態」に相当する。
そうすると、先願発明の「第1特別図柄51または」「第2特別図柄52の変動表示がなされ」、「小当りを示す結果となった場合」に「移行する」、「大入賞口20を開放させる」「小当り遊技」は、本願補正発明の「識別情報の可変表示を行った後に」、「可変手段」が「第1状態へ変化」する「所定状態」に相当する。
さらに、先願発明の「小当り遊技」は、「特別遊技」とは異なるものであるから、本願補正発明の「有利状態とは異なる状態である所定状態」といえる。
よって、先願発明は、本願補正発明の特定事項Lを備える。

(ケ)
a 先願発明の「特定領域」は、本願補正発明の「特定領域」に相当する。
また、先願発明の「特図2」が「第2特別図柄52」を意味することは、技術常識からみて自明である。
b 上記(エ)を踏まえると、先願発明は「時短状態の終了条件が満たされた場合、時短状態を終了させ、遊技状態を通常状態に戻」すことから、先願発明の「時短状態終了後」の「通常状態」は、本願補正発明の「第1遊技状態」に相当する。
また、上記(ク)より、先願発明の「小当り」となることは、本願補正発明の「所定状態に制御され」ることに相当する。
そうすると、「時短状態終了後の」「通常状態」において「残存する保留」の「図柄変動で」「特図2の変動結果が小当り」となることは、本願補正発明の「前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御され」ることに相当する。
c また、上記(ク)より、先願発明の「大入賞口20」及び「大入賞口20」の「開放」状態は、本願補正発明の「可変手段」及び「第1状態」に、それぞれ相当するから、先願発明の「小当り遊技」において「大入賞口20」が「開放」することは、本願補正発明の「前記所定状態に制御されたことにもとづいて」「前記可変手段」が「前記第1状態へ変化」することに相当する。
d 先願発明は、「通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)における、セーフ球とアウト球の合計である発射球総数に対する総賞球数の比率であるベース値を算出」するのだから、「通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ」る「遊技球として」、「通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)と同じ状態であ」る「時短状態終了後の」「図柄変動で」、「特図2の変動結果が小当り」となった「小当り遊技中」に「開放」された「大入賞口20」への「落入」により「払い出され」た「賞球」も「カウントされ」ることは明らかである。
そして、先願発明の「通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ」る「小当り遊技中」に「払い出され」た「賞球」は、「総賞球数」としてカウントされることは明らかであり、上記(オ)より先願発明の「総賞球数」は、本願補正発明の「第2数」に相当するから、先願発明の「小当り遊技中は、通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)と同じ状態であ」る「時短状態終了後の」「図柄変動で」、「特図2の変動結果が小当り」となった「小当り遊技中」に「開放」された「大入賞口20」への「落入」により「獲得した遊技球が通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ」ることは、本願補正発明の「前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは」、「前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であ」ることに相当する。
e 先願発明の「遊技球が特定領域を通過した後の大入賞口20への入球によって発生した賞球」は、本願補正発明の「該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数」に相当する。
そうすると、先願発明の「遊技球が特定領域を通過した後の大入賞口20への入球によって発生した賞球」「を、ベース値の算出の対象外となるよう制御する」ことは、本願補正発明の「該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算」しないことに相当する。
f 先願発明は「遊技球が特定領域を通過した後の大入賞口20への入球によって発生した賞球」「を、ベース値の算出の対象外と」するのであるから、「小当り遊技中」に「通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ」る「遊技球」は、「遊技球が特定領域を通過」するよりも前に「大入賞口20への入球によって」「獲得した遊技球」であることは明らかである。
よって、先願発明の「小当り遊技中は、通常状態の通常遊技時(低確率遊技状態かつ非時短遊技状態)と同じ状態であ」る「時短状態終了後の」「図柄変動で」、「特図2の変動結果が小当り」となった「小当り遊技中」に「開放」された「大入賞口20」への「落入」により「獲得した遊技球が通常状態の通常遊技時のベース値としてカウントされ」ることは、本願補正発明の「前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であ」ることに相当する。
g 以上のことから、先願発明は、本願補正発明の特定事項Mを備える。

(コ)したがって、本願補正発明と先願発明は、
「A 遊技領域へ遊技媒体を発射し、識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能な遊技機であって、
B 前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段と、
前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段と、
D 遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段と、
E 第1遊技状態と、該第1遊技状態よりも前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、
F 前記第1遊技状態において、遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数に対して、付与された遊技媒体の数である第2数の割合を算出可能な算出手段と、
G 前記算出手段によって算出された割合に関する情報を表示する表示手段と、
を備え、
J 前記複数の進入手段は、第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段を少なくとも含み、
L 前記可変手段は、識別情報の可変表示を行った後に、前記有利状態とは異なる状態である所定状態へ制御されたときに、前記第1状態へ変化し、
M 前記算出手段は、前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であり、該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算せず、
N’前記表示手段は、前記情報を表示する、
O 遊技機。」である点で一致し、次の点で一応相違する。

[相違点1](特定事項N)
「表示手段」に関し、
本願補正発明は、「第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない」のに対し、
先願発明は、「前記情報を表示する」ことしか特定されていない点。

(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
発射球数に対する賞球数の割合を計算し、計算された割合を表示装置に表示する遊技機において、発射球数が所定数に達するまでは表示装置に割合を表示せず、発射球数が所定数に達すると表示装置に割合を表示するようにすることは、上記周知例1〜4にそれぞれ記載されるとおり、当業者における周知技術である(以下「周知技術1」という。)。
ここで、周知技術1の「発射球数」、「所定数」及び「割合」は、本願補正発明の特定事項Nの「第1数」、「特定数」及び「情報」に、それぞれ相当するから、周知技術1は、本願補正発明の特定事項Nに相当する。
よって、先願発明の「前記情報を表示する」遊技機において、上記周知技術1を参照して、第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示し、前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しないようにすることは、単なる周知技術の付加であり、新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差であるといえる。
よって、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一である。

イ 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、本願補正発明の作用、効果として、次のとおり主張している。
「しかしながら、先願1に対して周知技術を示す文献として引用された引用文献2〜4においては、「第1数が特定数に達したことを条件として情報を表示する」という構成については開示されている一方で、「条件が成立していない場合に(第1数が特定数に達していない場合)、情報表示しない」という構成については開示及び示唆はされておりません。本願発明はこのような構成により、集計数不足で誤差のある可能性が高い情報を表示ししてしまう事を防ぐ格別の効果を奏します。」
しかし、これらの効果は、先願発明、または先願発明に上記周知技術1を付加したものによっても得られるものであり、本願補正発明に特有のものとすることはできない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、先願明細書等に記載された発明である。また、本件出願の発明者が先願1の発明者と同一ではなく、また本件の出願の時に、本件の出願人と先願1の出願人とが同一でもない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年11月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、記号AないしOは、分説するため合議体が付し、便宜上、記号C、H、I、Kは用いていない。

「A 遊技領域へ遊技媒体を発射し、識別情報の可変表示を行った後に有利状態へ制御可能な遊技機であって、
B 前記識別情報として第1識別情報の可変表示を実行可能な第1可変表示手段と、
前記識別情報として前記第1識別情報とは異なる第2識別情報の可変表示を実行可能な第2可変表示手段と、
D 遊技媒体が進入したことに応じて遊技媒体が付与される複数の進入手段と、
E 第1遊技状態と、該第1遊技状態よりも前記第2識別情報の可変表示が実行されやすい第2遊技状態に制御可能な遊技状態制御手段と、
F 前記第1遊技状態において、遊技領域へ発射された遊技媒体の数である第1数に対して、付与された遊技媒体の数である第2数の割合を算出可能な算出手段と、
G 前記算出手段によって算出された割合に関する情報を表示する表示手段と、
を備え、
J 前記複数の進入手段は、第1状態と、該第1状態よりも遊技媒体が進入困難な第2状態とに変化可能な可変手段を少なくとも含み、
L 前記可変手段は、識別情報の可変表示を行った後に、前記有利状態とは異なる状態である所定状態へ制御されたときに、前記第1状態へ変化し、
M 前記算出手段は、前記第1遊技状態において前記第2識別情報の可変表示を行った後に前記所定状態に制御されたことにもとづいて前記第1状態へ変化した前記可変手段に遊技媒体が進入し、該遊技媒体が前記特定領域を通過したときは、該特定領域を通過した遊技媒体よりも前に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算可能であり、該特定領域を通過した遊技媒体よりも後に前記可変手段へ遊技媒体が進入したことによって付与された遊技価値の数を第2数に加算せず、
N1 前記表示手段は、第1数が特定数に達したことを条件として、前記情報を表示する、
O ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
(拡大先願)この出願の、令和2年11月13日に提出された手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

●理由(拡大先願)について
・請求項 1
・先願1、周知例2〜4

<引用文献等一覧>
1.特願2018−158732号(特開2020−31726号)
2.特開2016−87235号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2017−196185号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2018−61794号公報(周知技術を示す文献)

3 引用例
ア 先願1
原査定の拒絶の理由で引用された、先願1は、上記第2〔理由〕3(2)アにて先願1として示したものであり、その記載内容及び先願発明は、上記第2〔理由〕3(2)アにて記載したとおりである。

イ 周知例3
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す周知技術の例として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018−61794号公報の記載事項は、上記第2[理由]3(2)エにて、周知例3として記載したとおりである。

ウ 周知例5
原査定の拒絶の理由に技術常識を示す周知技術の例として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−196185号公報(以下「周知例5」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0014】
本実施形態のパチンコ機1は、遊技ホールの島設備(図示しない)に設置される枠状の外枠2と、外枠2の前面を開閉可能に閉鎖する扉枠3と、扉枠3を開閉可能に支持していると共に外枠2に開閉可能に取付けられている本体枠4と、本体枠4に前側から着脱可能に取付けられると共に扉枠3を通して遊技者側から視認可能とされ遊技者によって遊技球が打込まれる遊技領域5aを有した遊技盤5と、を備えている。」

(イ)「【0174】
[5−3.役物比率算出・表示処理]
図21及び図22は、役物比率算出・表示処理の一例を示すフローチャートである。役物比率算出・表示処理は、主制御MPU1311が実行する。なお、周辺制御基板1510の周辺制御部1511が役物比率算出・表示処理を実行してもよい。周辺制御部1511が役物比率を算出する場合、算出された役物比率はメイン液晶表示装置1600に表示してもよい。例えば、算出された役物比率が所定の範囲内(又は、範囲外)である場合、遊技における演出を変えてもよい。具体的には、役物比率が所定の閾値(基準値より小さい閾値)を超えている場合に、予告演出を変えて、通常の予告演出より興趣が高まる予告演出を行ってもよい。
【0175】
まず、主制御MPU1311のRAM1312の役物比率算出用領域13128のメイン領域からチェックコードを算出し(ステップS140)、算出したチェックコードが、役物比率算出用領域13128に格納されているチェックコードと一致しているかを判定する(ステップS142)。算出したチェックコードと役物比率算出用領域13128に格納されているチェックコードとが一致していれば、メイン領域のデータは正常なので、役物比率算出処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率算出用領域13128に格納する(ステップS156)。具体的には、役物獲得球数÷総獲得球数で役物比率を計算し、連続役物獲得球数÷総獲得球数で連続役物比率を計算する。計算された役物比率及び連続役物比率の小数部分(小数点以下の値)は切り捨てるか、四捨五入するとよい。そして、ステップS160に進む。
・・・
【0187】
続いて、算出された役物比率を役物比率表示器1317に表示する(ステップS172)。」

(ウ)「【0197】
図24は、役物比率算出用領域13128における各データを格納するためのワークエリアの具体的な構造を示す図である。」

(エ)「【0201】
なお、リングバッファの書き込みポインタ及び読み出しポインタは全てのデータに共通であり、所定の賞球数毎に全てのデータ列の書き込みポインタが移動する。また、書き込みポインタの移動に伴い、読み出しポインタも移動する。読み出しポインタは、書き込みポインタより一つ前の記憶領域を指す。これは、賞球6000個分の直近のデータを用いて役物比率を計算するためである。」

(オ)「【0204】
図24(C)は、リングバッファを用いたワークエリアの構造を示す。図24(C)に示すワークエリアの構造では、図24(B)に示すものより詳細なデータを取得でき、普通電動役物獲得球数、特別電動役物獲得球数、始動口獲得球数、その他入賞口獲得球数、連続役物獲得球数、合計獲得球数、役物比率及び連続役物比率を格納する。また各データの記憶領域は、所定数の賞球毎にn個の記憶領域(例えば、賞球6000個毎に10個の記憶領域)を持つリングバッファによって構成されており、合計獲得球数が所定数(6000個)になると書き込みポインタが移動して、データが更新される記憶領域が変わる。そして、n番目の記憶領域に所定数の賞球分のデータが格納された後、書き込みポインタは1番目の記憶領域に移動し、1番目の記憶領域にデータを格納する。なお、合計獲得球数以外のデータ(特別電動役物獲得球数、発射球数、入賞球数、特別図柄変動表示ゲーム数、特別図柄変動表示ゲームの大当り回数など)が所定数となった場合に、書き込みポインタを移動してもよい。」

以上の記載事項(ア)〜(オ)を総合すると、周知例5には、以下の事項が記載されている。

「役物比率算出処理を実行し、役物獲得球数÷総獲得球数で役物比率を算出し(【0175】)、
算出された役物比率を役物比率表示器1317に表示する(【0187】)パチンコ機1(【0014】)であって、
役物比率算出用領域13128における各データを格納するためのワークエリアは(【0197】)、リングバッファを用いており、
また各データの記憶領域は、所定数の賞球毎にn個の記憶領域(例えば、賞球6000個毎に10個の記憶領域)を持つリングバッファによって構成されており、合計獲得球数が所定数(6000個)になると書き込みポインタが移動して(【0204】)、賞球6000個分の直近のデータを用いて役物比率を計算するものであり(【0201】)、
発射球数が所定数となった場合に、書き込みポインタを移動してもよい(【0204】)パチンコ機1(【0014】)。」

4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2〔理由〕3で独立特許要件を検討した本願補正発明から、「前記第1数が特定数に達していない場合に前記情報を表示しない」との特定を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、一部の特定事項を限定した本願補正発明が先願発明と同一であるから、本願発明も先願発明と同一である。

(2)上記第2〔理由〕3において周知技術を示すために提示した文献と、原査定において技術常識を示すために提示した文献とは一部が異なるため、原査定で提示した理由でも原査定が維持できることを念のため検討する。
本願発明と先願発明を対比すると、下記の点で相違し、その余の点で一致する。

[相違点2](特定事項N1)
「表示手段」に関し、
本願発明は、「第1数が特定数に達したことを条件として、前記情報を表示する」のに対し、
先願発明は、「前記情報を表示する」ことしか特定されていない点。

上記相違点2について検討する。
賞球数に関する情報を計算し、計算された情報を表示装置に表示する遊技機において、発射球数が所定数に達すると表示装置に情報を表示するようにすることは、上記周知例3、5にそれぞれ記載されるとおり、当業者における周知技術(以下「周知技術2」という。)であり、当業者にとっての技術常識であるといえる。
よって、先願発明の「前記情報を表示する」遊技機において、上記周知技術2を参照して、第1数が特定数に達したことを条件として前記情報を表示することは、単なる周知技術の付加であり、新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差であるといえる。
よって、本願発明は、先願発明と実質的に同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願1に記載された発明である。
また、本件出願の発明者が先願1の発明者と同一ではなく、また本件の出願の時に、本件の出願人と先願1の出願人とが同一でもない。
したがって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-08 
結審通知日 2022-02-15 
審決日 2022-03-01 
出願番号 P2018-200680
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 鷲崎 亮
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  

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