• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1383902
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-06 
確定日 2022-04-07 
事件の表示 特願2018− 1982「表示制御プログラム、表示制御装置、表示制御方法及びサーバ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月22日出願公開、特開2019−121276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
1 手続の概要
本願は、平成30年1月10日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 2月 1日 :新規性の喪失の例外証明書提出書の提出
令和 2年11月13日付け:拒絶理由通知
令和 3年 1月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月25日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 7月 6日 :手続補正書、審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和3年7月6日に提出された手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、このうち、請求項11に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりの発明である。

「 表示制御装置に、
ユーザが選択した1または2以上の気象種別に係る気象に関する予測データ又は実績データが地図上にプロットされた画像を取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された画像を表示する表示面を含むインターフェイスを提供する提供手順と、
前記提供手順によって提供されたインターフェイスにおけるユーザの操作に基づいて、前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像の当該インターフェイスにおける表示を制御する表示制御手順と、
を実行させることを特徴とする表示制御プログラム。」

なお、本件補正後の特許請求の範囲の請求項11は、本件補正により本件補正前の特許請求の範囲の請求項2が削除されたことにともなって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項12がそのまま請求項11に繰り上がったものであり、本件補正によって実質的な補正はなされていない。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1、4ないし6及び12ないし15に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、また、本願の請求項2及び8ないし11に係る発明は、以下の引用文献1、2及び6に記載された発明に基いて、本願の請求項3に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、また、本願の請求項7に係る発明は、以下の引用文献1、2及び5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものある。
よって、原査定の拒絶の理由は、本願の請求項12に係る発明([当審注]前記第2のなお書きより、本件補正後の特許請求の範囲の請求項11に係る発明(本願発明)に相当する。)は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含む。

引用文献1:特開2003−121172号公報
引用文献2:特開2007−156658号公報
引用文献3:岡本 ゆかり,スマホ&タブレットを使い倒す! 便利アプリ活用法,日経PC21,日本,日経BP社,2015年 1月24日,第20巻 第3号,130〜133
引用文献4:BIOWEATHER SERVICE,2018年 8月 6日,[2020年11月12日検索],インターネット,<URL:https://web.archive.org/web/20170806204343/http://www.bioweather.net/rain/amedas0.htm>
引用文献5:特開2007−102586号公報
引用文献6:特開2002−357670号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (なお、下線は強調のため当審が付与した。これ以降についても同様。)

ア 「【0011】
【発明の実施の形態】<実施形態1>……以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。最初に、図1〜図4を参照して実施形態1について説明する。図1には、本実施形態のシステム構成が示されている。同図に示すように、本形態の地図表示装置(ナビゲーション装置)12は、車両10(移動体に相当)に搭載されており、気象情報センタ20との通信によって得た気象情報を、車両10の利用者に提供するものである。なお、車両10は、通常複数存在する。
【0012】地図表示装置12は、各種演算処理を行うCPU100を中心に構成されており、該CPU100で実行するためのプログラムを格納するプログラムメモリ110、外部から入手した情報や各種プログラムの実行によって得られたデータ(車両位置データ120a、時刻データ120b、気象情報データ120c)などを記録するためのワークメモリ120(記憶手段に相当)、各種道路地図データを集積した道路地図データベース130を備えている。」

イ 「【0014】前記通信部180は、公衆回線網や無線基地局(いずれも図示せず)を介して、無線により気象情報センタ20などと通信を行うもので、送信装置、受信装置を含む通信機器によって構成されている。通信部180としては、地図表示装置12の内部に予め備え付けられている自動車電話などのほか、携帯電話やPHSなどの外部の独立した通信機器を代用するように構成することも可能である。地図表示装置12は、通信部180を介して気象情報センタ20から最新の気象情報(過去の情報から将来の予測情報まで含む)を入手すると、ワークメモリ120に記録する。」

ウ 「【0016】前記プログラムメモリ110には、CPU100が実行する車両位置検出プログラム110a、走行履歴記録プログラム110b、気象情報取得プログラム110c、描画プログラム110dが格納されている。CPU100は、プログラムメモリ110から必要なプログラムをロードして実行する。すなわち、前記各センサの検出結果に基づいて決定された現在地データに基づいて、道路地図データベース130を参照して車両位置を特定し、さらに、車両位置の検出時刻の気象情報をワークメモリ120から読み出して表示部200に表示する。」

エ 「【0021】次に、図2〜図4を参照して、本実施形態の動作を説明する。図2は、本形態の主要動作を示すフローチャートであり、図3は、地図表示装置12の表示部200上に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。図4は、表示部200に表示される気象情報の表示画面例を示す図である。
【0022】車両10の利用者は、地図表示装置12の入力部190を利用して、表示部200に、図3に示すようなメニュー画面210を表示する(ステップS10)。メニュー画面210には、「メニュー」、「設定」、「その他」のメニュータブがあり、「メニュー」タブの中には、「地図登録」、「地点検索」、「周辺施設検索」、「気象情報表示」、「ルート編集」、……などの項目が表示されている。利用者が気象情報を見る場合には、このようなメニュー画面210から、「気象情報表示」ボタン220を選択する(ステップS12)。これにより、地図表示装置12に、気象情報の表示の指示を与えることができる。利用者からの地図表示装置12への指示は、このような画面上でのメニュー選択のほか、地図表示装置12に音声認識手段が備えられている場合には、利用者が「気象情報」などと発声することで行うことができる。
【0023】利用者から気象情報の表示の指示を受けると、地図表示装置12では、CPU100が描画プログラム110dを実行し、ワークメモリ120に記憶された過去の任意の車両位置と、該車両位置を検出した時刻の気象情報を抽出する(ステップS14)。この時、ワークメモリ120に気象情報が記憶されていない場合には、気象情報取得プログラム110cを起動して、最新の気象情報を気象情報センタ20から取得する。そして、これらの車両位置及び気象情報を、地図データとともに表示部200に表示する(ステップS16)。図4には、表示部200に表示される気象情報の表示画面例が示されている。すなわち、前記ステップS12で、利用者が前記図3に示したメニュー画面210で「気象情報表示」ボタン220を選択すると、表示部200の画面表示が、図4で示す画面に変更される。
【0024】図4は、気象情報として各地の降水量を地域ごとにメッシュ分けして表示した場合の例である。これらの図は、いずれも上方が方位の「北」となっている。また、画面下部にメニューバーBが表示されている。メニューバーBには、前の時刻または次の時刻の気象情報に画面を切換えるためのボタンとして「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2が設けられている。また、「連続表示」ボタンB3は、気象情報を過去から現在に至るまで連続的に表示するためのボタンである。「他の気象データ」ボタンB4は、表示する気象情報として、降水量の代わりに、降雪量、積雪量、天気、気温、湿度、風速、風向などの気象情報を切り替えるためのボタンである。表示する気象情報はこのほか、気象注意報や警報、台風の位置などでもよい。「終了」ボタンB5は、気象情報の表示を終了するためのボタンである。」

オ 「【0028】以上のようにして降水量の情報を確認したら、利用者は、他の気象情報を見るか検討し(ステップS20)、他の気象情報を見る場合には(ステップS20でYes)、メニューバーBの中の「他の気象データ」ボタンB4を選択して表示させたい気象情報を選択する(ステップS22)。そして、前記ステップS16〜ステップS20を繰り返して、所望の気象情報を全て順に表示させる。全ての気象情報を表示させて確認し終わったら(ステップS20でNo)、いずれかの表示画面のメニューバーBの中の「終了」ボタンB5を選択して、気象情報の表示を終了する。」

カ 「【0031】<実施形態2>……次に、図5〜図7を参照して、本発明の実施形態2について説明する。図5は、本実施形態のシステム構成を示した図である。なお、上述した実施形態1に対応する構成要素には、同一の符号を用いることとする。本形態の地図表示装置400は、車両現在地から目的地までの経路を探索し、探索された経路上の任意の地点を車両10が通過する時刻を予想し、該予想された通過時刻の気象情報を、その時刻の通過予定地点とともに、表示部に表示するものである。すなわち、いわゆるナビゲーション時に本発明を適用した実施形態である。」

キ 「【0046】<他の実施形態>……本発明には数多くの実施形態があり、以上の開示に基づいて多様に改変することが可能である。例えば、次のようなものも含まれる。
(1)表示する気象情報としては、この他にも、予想降水量、降雪量、積雪量、天気、気温、湿度、風速、風向、台風の位置、霧中の視界距離、花粉の飛散量を表す指数、紫外線量などでもよい。例えば、図8(A)に示す表示画面には、気象情報として、気温と湿度が一緒に示されている。また、同図(B)に示す表示画面には、風向、風速、台風情報が合わせて示されている。同図(C)に示す例では、降雪量、積雪量が示されている。更に、同図(D)には、天気、予想降水量、霧中視界距離が表示されている。これらの各表示画面は、画面下方に設けられたメニューバーBの中から「他の気象データ」ボタンを選択することにより切り替えることが可能である。」

ク 「【0049】(4)上述した実施形態のシステム構成及び動作は一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。また、前記実施形態2では、現時点よりも先の気象情報を、気象予測情報として表示することとしたが、表示の切り替えにより、過去の履歴を表示するようにしてもよいし、過去の履歴から未来の予測までを連続して表示するようにしてもよい。前記実施形態は、本発明をいずれも車両用の表示装置に適用した例であるが、他に航空機、船舶など各種の移動体に適用してよい。」

ケ 「【図1】



コ 「【図2】



サ 「【図4】



シ 「【図7】



ス 「【図8】



(2)引用発明
前記(1)のアの【0012】より、引用文献1には、「地図表示装置12」の「CPU100で実行するため」に「プログラムメモリ110」に格納された「プログラム」が記載されているといえる。
よって、前記(1)のアないしオ及びケないしサより、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「 地図表示装置12のCPU100で実行するためにプログラムメモリ110に格納されたプログラムであって、
地図表示装置12は、通信部180を介して気象情報センタ20から最新の気象情報(過去の情報から将来の予測情報まで含む)を入手すると、ワークメモリ120に記録し、
プログラムメモリ110には、CPU100が実行する車両位置検出プログラム110a、走行履歴記録プログラム110b、気象情報取得プログラム110c、描画プログラム110dが格納され、
利用者から気象情報の表示の指示を受けると、地図表示装置12では、CPU100が描画プログラム110dを実行し、ワークメモリ120に記憶された過去の任意の車両位置と、該車両位置を検出した時刻の気象情報を抽出し、これらの車両位置及び気象情報を、地図データとともに表示部200に表示し、すなわち、利用者がメニュー画面210で「気象情報表示」ボタン220を選択すると、表示部200の画面表示が、気象情報の表示画面に変更され、
気象情報として各地の降水量を地域ごとにメッシュ分けして表示した場合、画面下部のメニューバーBには、前の時刻または次の時刻の気象情報に画面を切換えるためのボタンとして「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2が設けられ、「他の気象データ」ボタンB4は、表示する気象情報として、降水量の代わりに、降雪量、積雪量、天気、気温、湿度、風速、風向などの気象情報を切り替えるためのボタンであり、
利用者は、他の気象情報を見る場合には、メニューバーBの中の「他の気象データ」ボタンB4を選択して表示させたい気象情報を選択し、所望の気象情報を全て順に表示させる、
プログラム。」

(2)引用文献1技術事項1
前記(1)のカ、ク及びシより、引用文献1には、以下の技術事項(以下、「引用文献1技術事項1」という。)が記載されているといえる。

「 車両現在地から目的地までの経路を探索し、探索された経路上の任意の地点を車両10が通過する時刻を予想し、該予想された通過時刻の気象情報を、その時刻の通過予定地点とともに、表示部に表示すること、並びに、
現時点よりも先の気象情報を、気象予測情報として表示することとしたが、表示の切り替えにより、過去の履歴を表示するようにしてもよいし、過去の履歴から未来の予測までを連続して表示するようにしてもよいこと。」

(3)引用文献1技術事項2
前記(1)のキ及びスを参酌すると、引用文献1には、「天気、予想降水量、霧中視界距離が表示されている」場合(図8(D))において、「予想降水量」が、メッシュ分けされていないハッチングにより表示することが見て取れるのに対し、前記(1)のエ(【0024】)及びサ(【図4】)を参酌すると、過去の時刻における「各地の降水量」は「地域ごとにメッシュ分けして表示」することが記載されている。
よって、引用文献1には、以下の技術事項(以下、「引用文献1技術事項2」という。)が記載されているといえる。

「 天気、予想降水量、霧中視界距離が表示されている場合の予想降水量は、メッシュ分けされていないハッチングにより表示し、過去の時刻における各地の降水量は、地域ごとにメッシュ分けして表示すること。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

セ 「【0021】
落雷地域予測設備3は、本実施形態では、図2に示すように、落雷位置標定装置31(LLS:Lightning Location System)で収集した落雷情報と、気象局32((財)日本気象協会など)の気象情報とに基づいて落雷予測地域を割り出すものであり、一般に広く知らせている設備であるため、ここでは詳細な説明を省略するが、概略以下のような構成となっている。すなわち、落雷位置標定装置31は、各DF局に設置されたサンサ311と、PA局に設置された位置解析装置312とを備え、落雷時に発生する電磁波を各DF局のサンサ311によって捕らえて、そのデータを位置解析装置312で解析することで落雷位置を標定する。そして、標定された落雷位置が気象局32に送信されると、この落雷位置と気象情報とに基づいて落雷予測地域が割り出されるものである。また、この落雷地域予測設備3は、定期的に落雷予測地域を割り出すようになっている。すなわち、本実施形態では、10分ごとに落雷予測地域を割り出し、後述するホストサーバ41に送信するようになっている。さらに、落雷地域予測設備3は、現時点から複数の時間後において落雷が予測される落雷予測地域を割り出すようになっている。すなわち、本実施形態では、現時点から60分後、120分後、180分後における落雷予測地域を割り出し、現時点での落雷地域(現況)とともにホストサーバ41に送信するようになっている。このようにして、10分ごとに、例えば図3に示すような現況(a)および、60分後(b)、120分後(c)、180分後(d)の落雷予測地域がホストサーバ41に送信される。ここで、落雷予測地域は、落雷の可能性が相当ある地域と、落雷の可能性がある地域と、落雷の可能性がややある地域とに分けて地図上に表示される。」

ソ 「【図3a】



タ 「【図3b】



チ 「【図3c】



ツ 「【図3d】



(2)引用文献2技術事項
前記(1)のソ(【図3a】)より、落雷地域予測設備3からホストサーバ41に表示される「落雷地域」(現況)に関しては「落雷地点」が地図上に表示されるものと認められる。
よって、前記(1)より、引用文献2には、以下の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されているといえる。

「 落雷地域予測設備3は、現時点から複数の時間後において落雷が予測される落雷予測地域を割り出し、現時点での落雷地域(現況)とともにホストサーバ41に送信し、例えば、現況および、60分後、120分後、180分後の落雷予測地域がホストサーバ41に送信され、落雷地域は、落雷地点が地図上に表示され、落雷予測地域は、落雷の可能性が相当ある地域と、落雷の可能性がある地域と、落雷の可能性がややある地域とに分けて地図上に表示される、こと。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

1 引用発明の「地図表示装置12」は、その「CPU100」が「描画プログラム110dを実行し、ワークメモリ120に記憶された過去の任意の車両位置と、該車両位置を検出した時刻の気象情報を抽出し、これらの車両位置及び気象情報を、地図データとともに表示部200に表示」する制御を行う装置であるから、本願発明の「表示制御装置」に相当する。

2 引用発明は、「プログラムメモリ110には、CPU100が実行する車両位置検出プログラム110a、走行履歴記録プログラム110b、気象情報取得プログラム110c、描画プログラム110dが格納され」との構成を備えることから、「描画プログラム110d」は、「地図表示装置12のCPU100で実行するためにプログラムメモリ110に格納されたプログラム」(以下、単に「引用発明プログラム」という。)に含まれるものである。
そうすると、前記1を参酌すれば、引用発明プログラムは、「地図表示装置12」(「表示制御装置」)に、表示制御に係る各手順を実行させる「表示制御プログラム」といい得るものである。

3 本願発明の「前記提供手順によって提供されたインターフェイスにおけるユーザの操作に基づいて、前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像の当該インターフェイスにおける表示を制御する表示制御手順」との構成からすると、「予測データ」が「表示された画像」と、「実績データ」が「表示された画像」は、異なる表示方法であっても両者が「表示」の対象となるものと理解できるから、本願発明の「ユーザが選択した1または2以上の気象種別に係る気象に関する予測データ又は実績データが地図上にプロットされた画像を取得する取得手順」において、「予測データが地図上にプロットされた画像」と「実績データが地図上にプロットされた画像」との両方が「取得」の対象となるものと理解できる。
そして、引用発明の
「利用者から気象情報の表示の指示を受けると、地図表示装置12では、CPU100が描画プログラム110dを実行し、ワークメモリ120に記憶された過去の任意の車両位置と、該車両位置を検出した時刻の気象情報を抽出し、これらの車両位置及び気象情報を、地図データとともに表示部200に表示し」において、「該車両位置を検出した時刻の気象情報」は、「過去の任意の車両位置」「を検出した時刻の気象情報」すなわち「過去の」「時刻の気象情報」であるから、本願発明の「気象に関する予測データ又は実績データ」とは、「気象に関する実績データ」である点において共通する。
また、引用発明において、「これらの車両位置及び気象情報を、地図データとともに表示部200に表示」するためには、「過去の」「時刻の気象情報」が地図上に描画(プロット)された画像を生成(取得)する処理を行うものと認められる。
また、引用発明は、
「 気象情報として各地の降水量を地域ごとにメッシュ分けして表示した場合、画面下部のメニューバーBには、前の時刻または次の時刻の気象情報に画面を切換えるためのボタンとして「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2が設けられ、「他の気象データ」ボタンB4は、表示する気象情報として、降水量の代わりに、降雪量、積雪量、天気、気温、湿度、風速、風向などの気象情報を切り替えるためのボタンであり、
利用者は、他の気象情報を見る場合には、メニューバーBの中の「他の気象データ」ボタンB4を選択して表示させたい気象情報を選択し、所望の気象情報を全て順に表示させる」
との構成を備えることから、利用者(ユーザ)が選択した「気象種別」(「降雪量」、「積雪量」、「天気」、「気温」、「湿度」、「風速」又は「風向」など)に係る「気象情報」に切り替えて表示させるものであり、利用者(ユーザ)が「気象種別」を選択するたびに、当該選択された1つの「気象種別」に係る「過去の」「時刻の気象情報」が地図上に描画(プロット)された画像を生成(取得)する処理を行うものと認められる。
また、「1つ」は「1または2以上」に含まれる概念である。
以上より、前記2を参酌すれば、引用発明プログラムと、本願発明の「表示制御装置に」「ユーザが選択した1または2以上の気象種別に係る気象に関する予測データ又は実績データが地図上にプロットされた画像を取得する取得手順」「を実行させる」「表示制御プログラム」とは、「表示制御装置に」「ユーザが選択した1または2以上の気象種別に係る気象に関する実績データが地図上にプロットされた画像を取得する取得手順」「を実行させる」「表示制御プログラム」である点において共通する。

4 引用発明は、「すなわち、利用者がメニュー画面210で「気象情報表示」ボタン220を選択すると、表示部200の画面表示が、気象情報の表示画面に変更され」との構成を備えることから、前記3を参酌すれば、利用者(ユーザ)が選択した1つの「気象種別」に係る「過去の」「時刻の気象情報」が地図上に描画(プロット)された画像を表示する領域(表示面)を含む「表示画面」が表示部200に表示されるものといえる。
また、「表示画面」は、その下部に、利用者(ユーザ)が操作可能なボタンB1、B2、B4を含む「メニューバーB」を備えているから、全体としてみれば利用者(ユーザ)との間の「インターフェイス」を提供するものといえる。
以上より、前記2を参酌すれば、引用発明プログラムは、本願発明の「表示制御装置に」「前記取得手順によって取得された画像を表示する表示面を含むインターフェイスを提供する提供手順」「を実行させる」「表示制御プログラム」との構成を備えているといえる。

5 引用発明は、「画面下部のメニューバーBには、前の時刻または次の時刻の気象情報に画面を切換えるためのボタンとして「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2が設けられ」との構成を備えることから、「表示画面」(「インターフェイス」)における「「前へ」ボタンB1」又は「「次へ」ボタンB2」の操作に基づいて、「表示画面」(「インターフェイス」)の画像の表示を制御するものといえる。
よって、前記2を参酌すれば、引用発明プログラムは、本願発明の「表示制御装置に」「前記提供手順によって提供されたインターフェイスにおけるユーザの操作に基づいて、前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像の当該インターフェイスにおける表示を制御する表示制御手順」「を実行させる」「表示制御プログラム」とは、「表示制御装置に」「前記提供手順によって提供されたインターフェイスにおけるユーザの操作に基づいて、画像の当該インターフェイスにおける表示を制御する表示制御手順」「を実行させる」「表示制御プログラム」である点において共通する。

以上より、本願発明と引用発明は、以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 表示制御装置に、
ユーザが選択した1または2以上の気象種別に係る気象に関する実績データが地図上にプロットされた画像を取得する取得手順と、
前記取得手順によって取得された画像を表示する表示面を含むインターフェイスを提供する提供手順と、
前記提供手順によって提供されたインターフェイスにおけるユーザの操作に基づいて、画像の当該インターフェイスにおける表示を制御する表示制御手順と、
を実行させることを特徴とする表示制御プログラム。」

[相違点]
<相違点1>
「取得手順」において、「取得」対象の「画像」が、本願発明1では、「予測データ」「が地図上にプロットされた画像」も含むのに対し、引用発明では、「地図表示装置12は、通信部180を介して気象情報センタ20から最新の気象情報(過去の情報から将来の予測情報まで含む)を入手すると、ワークメモリ120に記録」するもの、すなわち、「過去の情報」(実績データ)とともに「将来の予測情報」(予測データ)を入手して記録するものではあるが、当該「将来の予測情報」(予測データ)が地図上にプロットされた画像を取得することを具体的に特定していない点。

<相違点2>
「表示制御手順」において、「制御」の対象となる「画像」が、本願発明1は、「前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像」であるのに対し、引用発明は、「将来の予測情報」が地図上にプロットされた画像を取得することを具体的に特定するものではないため、当該画像を表示の対象とすることも具体的に特定するものではなく、よって、「前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像」を表示制御の対象とするものではない点。

第6 判断
1 相違点について
(1)相違点1について
引用文献1の記載に接した当業者であれば、「地図表示装置12は、通信部180を介して気象情報センタ20から最新の気象情報(過去の情報から将来の予測情報まで含む)を入手すると、ワークメモリ120に記録し」との構成を含む引用発明において、引用文献1技術事項1(特に、「該予想された通過時刻の気象情報を、その時刻の通過予定地点とともに、表示部に表示すること」)を参酌することにより、「過去の情報」(実績データ)とともに入手し記録した「将来の予測情報」(予測データ)を用いて、予想された通過時刻の気象情報を地図上にプロットされた画像を取得すること、すなわち、「取得」対象の「画像」として、「予測データ」「が地図上にプロットされた画像」をも含めるようにすることは、容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
引用文献1の記載に接した当業者であれば、「画面下部のメニューバーBには、前の時刻または次の時刻の気象情報に画面を切換えるためのボタンとして「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2が設けられ」との構成を含む引用発明において、引用文献1技術事項1(特に、「過去の履歴から未来の予測までを連続して表示するようにしてもよいこと」)を参酌すれば、引用発明において、操作者(ユーザ)が表示画面の「「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2」を操作することにより、「過去の履歴」(実績データ)と「未来の予測」(予測データ)とを連続的に地図上で表示することは、容易に想到し得ることである。
また、引用文献2技術事項にあるように、引用文献2には、「落雷」について、「現況」(実績データ)は、「落雷地点」を表示し、「落雷予測地域」(予測データ)は、落雷の可能性が相当ある地域と、落雷の可能性がある地域と、落雷の可能性がややある地域とに分けて地図上に表示することが記載されており、また、一般的に天気予報を表示する際において、例えば、台風の進路予測において、過去の進路は線で表示し、将来の予測進路は、予報円を加えて表示することが通常行われているように、過去の「実績データ」は正確なあるいは確定的なデータであるのに対し、将来の「予測データ」は予測に基づく未確定なデータであることを識別可能とするため、「実績データ」と「予測データ」とを異なる表示形態で地図上で表示することは、気象分野における本願出願前の周知技術といえる。
加えて、引用文献1技術事項2を参酌すれば、引用文献1には、異なる条件下ではあるものの、「実績データ」と「予測データ」とを異なる表示形態で表示することが示唆され、さらに、引用発明は、「降水量」以外に、「降雪量、積雪量、天気、気温、湿度、風速、風向など」の種々の種類の「気象情報」を表示する場合を含んでいる。
以上から、引用発明に、引用文献1及び2に記載の技術事項及び引用文献1に記載の示唆並びに上記周知技術を参酌することにより、表示する「気象情報」のデータを識別可能とするために、操作者(ユーザ)が表示画面の「「前へ」ボタンB1及び「次へ」ボタンB2」を操作することにより、「過去の履歴」(実績データ)と「未来の予測」(予測データ)とを連続的に地図上で表示するに際して、「過去の履歴」(実績データ)と「未来の予測」(予測データ)とを異なる表示形態で表示するようにして、「前記予測データと実績データとが異なる表示手法で表示された画像」を表示制御の対象とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 効果について
上記相違点1及び2に係る本願発明の構成を引用発明に付加することの効果も、当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。

3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書第4〜5頁において
「補正後の請求項1に記載の発明は、ユーザが指定した条件を満たす予測データまたは実績データについて、ユーザの現在位置を中心とする地図上にプロットして提供し、さらに、ユーザの操作に基づき、ユーザの現在位置を変更することなく、予測データと実績データとを異なる表示手法で表示させます。
このような処理の結果、補正後の請求項1に記載の発明は、例えば、ユーザが所在する位置の周囲の気象に関する情報のうち、ユーザが指定した条件を満たす予測および実績を、シームレスに認識させることができます。
このような構成および有利な効果は、引用文献1〜6には、記載も示唆もされておりません。例えば、審査官殿が指摘する引用文献1には、複数のタイミングにおける天候と、そのタイミングにおける車両の推定位置とを表示する処理が開示されているにすぎません。また、引用文献2には、利用者の現在位置ではなく、所定の場所における天候情報を、過去と将来とで異なる態様で表示しているにすぎません。
このため、請求項1に係る発明は、引用文献1〜6に基づいて、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではないと考えます。
また、本願の請求項2〜14に係る発明も、補正後の請求項1と同様の特徴を有するので、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるものではないと考えます。」
と主張する。
しかしながら、当該主張のうち、下線部は、本願発明の構成に基づくものではないから、採用することができない。
また、「実績データ」のみならず「予測データ」をも表示すること、及び、「予測データと実績データとを異なる表示手法で表示」することについては、前記1で述べたとおり、当業者が容易に想到し得たことである。
また、「予測および実績を、シームレスに認識させる」ことができるという効果も、引用文献1技術事項1の「過去の履歴から未来の予測までを連続して表示するようにしてもよい」との技術事項からして当業者にとって自明なことである。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1及び2に記載された技術事項並びに本願出願前の周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-31 
結審通知日 2022-02-01 
審決日 2022-02-15 
出願番号 P2018-001982
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 林 毅
野崎 大進
発明の名称 表示制御プログラム、表示制御装置、表示制御方法及びサーバ装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ