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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05B
管理番号 1384258
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-25 
確定日 2022-04-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第6875418号発明「スプレイキャップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6875418号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6875418号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)4月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年4月20日 アメリカ合衆国、2017年3月27日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2018−555239号に係るものであって、令和3年4月26日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年5月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月25日に特許異議申立人 サタ ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし19)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし19に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
システム(10)であって、
スプレイツール(12)に結合するように構成されたスプレイキャップ(29)であって、前記スプレイキャップ(29)が、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
前記流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成された流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内を貫通して延びる膨張室(18)であって、前記膨張室(18)は、前記流動制御通路(14)から下流であり、前記膨張室(18)は、第2の半径幅(256)よりも大きい、不変の第3の半径幅(200)を備える、膨張室(18)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成された1つ又は複数の空気成形出口(20)であって、前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、前記膨張室(18)より下流である、1つ又は複数の空気成形出口(20)と、
を備えるスプレイキャップ(29)、
を備える、システム(10)。
【請求項2】
前記流動制御インサート本体(180)が、1つ又は複数の接続部分(244)によって一緒に結合された内側インサート部分(240)と外側インサート部分(242)を備え、前記流動制御通路(14)が、前記内側インサート部分(240)と前記外側インサート部分(242)との間に配置される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記流動制御通路(14)が、前記流動制御インサート本体(180)と前記スプレイキャップ(29)の前記一体スプレイキャップ本体(108)との間に配置される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記流動制御インサート本体(180)が、前記一体スプレイキャップ本体(108)の第2保持部分(186)と結合するように構成された第1保持部分(182)を備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記第1保持部分(182)と前記第2保持部分(186)が、一緒にスナップ嵌めするように構成される、請求項4に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記流動制御インサート本体(180)が、前記一体スプレイキャップ本体(108)の凹部(195)の中へプレス嵌め又は締まり嵌めする、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記流動制御インサート本体(180)が、前記一体スプレイキャップ本体(108)の凹部(195)の中へネジ式に結合される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記流動制御インサート本体(180)が、前記一体スプレイキャップ本体(108)の第2整列特徴体(222)と境界面を成すように構成された第1整列特徴体(220)を備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記第1の通路(250、260)の前記第1の半径幅(254)が、前記流動制御インサート本体(180)の上流側に隣接する前記スプレイツール(12)の上流室(16)の上流半径幅(134)及び前記流動制御インサート本体(180)の下流側に隣接する前記膨張室(18)の前記不変の第3の半径幅(200)の約50パーセント以下である、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記第1の通路(250、260)の前記第1の半径幅(254)が、前記流動制御インサート本体(180)の上流側に隣接する前記スプレイツール(12)の上流室(16)の上流半径幅(134)及び前記流動制御インサート本体(180)の下流側に隣接する前記膨張室(18)の前記不変の第3の半径幅(200)の約25パーセント以下である、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記流動制御通路(14)が、前記スプレイキャップ(29)の中心軸線(119)の周りに円周状に延びる実質的に環状の通路である、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記第1の半径幅(254)及び前記第2の半径幅(256)が、前記スプレイキャップ(29)の中心軸線(119)に沿って軸方向に不変である、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項13】
前記第1の半径幅(254)が、前記スプレイキャップ(29)の中心軸線(119)に沿って軸方向に増大及び/又は減少する、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項14】
前記第1の半径幅(254)が、前記スプレイキャップ(29)の中心軸線(119)の周りで円周方向に増大及び/又は減少する、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項15】
前記一体スプレイキャップ本体(108)を貫通して延びる空気噴霧化通路(114)を備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項16】
前記一体スプレイキャップ本体(108)の中に流体ノズル用キャビティ(170)を備え、前記流体ノズル用キャビティ(170)が、スプレイに噴霧化される流体を出力する流体ノズル(22)を受け入れるように構成される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項17】
前記スプレイキャップ(29)を有する前記スプレイツール(12)を備える、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項18】
システム(10)であって、
スプレイツール(12)であって、
流体通路(40)と空気通路(66、68)とを有する本体部分(19)と、
前記流体通路(40)及び前記空気通路(66、68)に流体結合されたヘッド部分(28)と、
を備えるスプレイツール(12)、
を備え、
前記ヘッド部分(28)が、
流体ノズル受入れ体(170)と空気噴霧化通路(114)とを備える一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
流動制御通路(14)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)を貫通して延び、かつ前記流動制御通路(14)より下流に配置された、膨張室(18)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)のエアホーン(110)内に形成され、かつ前記膨張室(18)より下流に配置された、1つ又は複数の空気成形出口(20)とを備える、空気成形通路(116)であって、前記流動制御通路(14)は、前記流動制御インサート本体(180)を貫通して延び、前記流動制御通路(14)は、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)、前記第2の通路(252、260)、前記膨張室(18)、及び前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、直列に流体接続されており、前記第1の通路(250、260)は、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)は、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)は、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、空気成形通路(116)と、
前記流体ノズル受入れ体(170)の中に配置される流体ノズル(22)と、
を備える、
システム(10)。
【請求項19】
システム(10)であって、
スプレイツール(12)のスプレイキャップ(29)の一体の本体(108)の凹部(195)内に据え付けるように構成された流動制御インサート(180)であって、前記流動制御インサート(180)が、第1の軸方向端と、前記第1の軸方向端に対向する第2の軸方向端とを有する1つの部品であり、前記流動制御インサート(180)内を貫通して延びる流動制御通路(14)を備え、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)の下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きく、かつ、前記流動制御通路(14)が、前記第1の軸方向端の上流の軸壁(246)から第2の軸方向端の下流の軸壁(246)へ内部に延びる、流動制御インサート(180)、
を備える、システム(10)。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年11月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 証拠方法
甲第1号証:米国特許第2479507号明細書
甲第2号証:欧州特許第1987886号明細書
甲第3号証:米国特許第6471144号明細書
甲第4号証:米国特許出願公開第2012/0160935号明細書
甲第5号証:中国特許出願公開第200920004049.9号明細書
以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1の記載及び甲1発明
ア 甲1には以下の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文のみ記載する。
・「図面を参照すると、参照番号1においてスプレイガンの本体が示されている。本体には、液体吐出端部2が装着される。液体吐出端部2は、参照番号3の個所で本体と螺合する。本体上のこのネジ領域は、霧化空気に通路を提供する一連の長尺溝4によって周方向が間欠的に分断されている。」(第1欄第20行目〜第26行目)
・「前記端部の外側で前記端部に当接して、エアキャップ6が保持リング5によって保持される。
コーティング液は、進入路7から軸方向中ぐり8を通って吐出端部2に到達する。端部の出口9は、従来のニードル弁10によって制御される。」(第1欄第27行目〜第32行目)
・「コーティング剤を霧化し、噴霧を扇状に成形するための空気は、主空気路11から前方に進む。主空気路11からの図示しない分岐路によって空気の一部が円形空洞13に運ばれる。分岐した空気は、バッフル26を通過し、その後、キャップの内向きフランジ15内に設けられた周空通路14からキャップと端部の間の空間16に入り、ホーン型通路17に沿って対向する複数の吐出ロ18に至る。この空気は、吐出噴霧を扇状に平坦化し、且つ、霧化状態を向上させるために用いられる。」(第1欄第33行目〜第44行目)
・「



イ 甲1発明
上記アの記載と甲1の図面(下記に、甲1を拡大し一部に符号を付したものを参考図1として示す)から、「液体吐出端部2の管状スカート25のフランジ15とエアキャップ6の内壁面との間に形成された周空通路14、液体吐出端部2の外壁面とエアキャップ6の内壁面との間に形成された空間16を備えた流動制御通路と、エアキャップ6に形成されたホーン型通路17、及び、吐出ロ18」が看取できる。
また、甲1の図面(下記参考図1)から、「空間16の半径幅(参考図1の符号B)は周空通路14の半径幅(参考図1の符号A)より大きく、ホーン型通路17の半径幅(参考図1の符号C)は空間16の半径幅(参考図1の符号B)より大きい」ことが看取できる。
さらに、甲1の図面(下記参考図1)から、「周空通路14と空間16を繋ぐ領域Dでは、半径幅が軸方向に増大する構成」が看取できる。
加えて、上記アの記載と図面から、甲1には「スプレイガンシステム」が記載されているといえる。
【参考図1】










これらを踏まえれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。

<甲1発明>
「スプレイガンシステムであって、
スプレイガンの本体1に結合するように構成されたエアキャップ6であって、前記エアキャップ6が、
前記エアキャップ6の本体と、
前記エアキャップ6の本体内に配置された液体吐出端部2と、
流動制御通路であって、前記流動制御通路が、周空通路14と、前記周空通路14から下流の空間16とを備え、前記周空通路14が、第1の半径幅(参考図1の符号A)を備え、前記空間16が、第2の半径幅(参考図1の符号B)を備え、前記第2の半径幅(参考図1の符号B)が、前記第1の半径幅(参考図1の符号A)よりも大きい、流動制御通路と、
前記エアキャップ6の本体内を貫通して延びるホーン型通路17であって、前記ホーン型通路17は、前記流動制御通路から下流であり、前記ホーン型通路17は、第2の半径幅(参考図1の符号B)よりも大きい、不変の第3の半径幅(参考図1の符号C)を備える、ホーン型通路17と、
前記エアキャップ6の本体内に形成された1つ又は複数の吐出ロ18であって、前記1つ又は複数の吐出ロ18は、前記ホーン型通路17より下流である、1つ又は複数の吐出ロ18と、
を備えるエアキャップ6、
を備える、スプレイガンシステム。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「スプレイガンシステム」は、本件特許発明1における「システム(10)」に相当する。
甲1発明の「スプレイガンの本体1」は、本件特許発明1における「スプレイツール (12)」に相当し、同様に「エアキャップ6」は、「スプレイキャップ(29)」に、「エアキャップ6の本体」は「一体スプレイキャップ本体」に、「液体吐出端部2」は、「流動制御インサート本体(180)」に相当する。
甲1発明の「ホーン型通路17」、「吐出口18」は、それぞれ、本件特許発明1における「膨張室(18)」、「空気成形出口(20)」に相当する。
また、甲1発明の流動制御通路を形成する「周空通路14」及び「空間16」は、それぞれ、本件特許発明1における「第1の通路(250、260)」、「第2の通路(250、260)」 に相当する。
甲1発明の「流動制御通路であって、前記流動制御通路が、周空通路14と、前記周空通路14から下流の空間16とを備え、前記周空通路14が、第1の半径幅(参考図1の符号A)を備え、前記空間16が、第2の半径幅(参考図1の符号B)を備え、前記第2の半径幅(参考図1の符号B)が、前記第1の半径幅(参考図1の符号A)よりも大きい、流動制御通路」は、本件特許発明1における「流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に相当する。
また、甲1発明の「前記エアキャップ6の本体内を貫通して延びるホーン型通路17であって、前記ホーン型通路17は、前記流動制御通路から下流であり、前記ホーン型通路17は、第2の半径幅(参考図1の符号B)よりも大きい、不変の第3の半径幅(参考図1の符号C)を備える、ホーン型通路17」は、本件特許発明1における「前記一体スプレイキャップ本体(108)内を貫通して延びる膨張室(18)であって、前記膨張室(18)は、前記流動制御通路(14)から下流であり、前記膨張室(18)は、第2の半径幅(256)よりも大きい、不変の第3の半径幅(200)を備える、膨張室(18)」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)に結合するように構成されたスプレイキャップ(29)であって、前記スプレイキャップ(29)が、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内を貫通して延びる膨張室(18)であって、前記膨張室(18)は、前記流動制御通路(14)から下流であり、前記膨張室(18)は、第2の半径幅(256)よりも大きい、不変の第3の半径幅(200)を備える、膨張室(18)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成された1つ又は複数の空気成形出口(20)であって、前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、前記膨張室(18)より下流である、1つ又は複数の空気成形出口(20)と、
を備えるスプレイキャップ(29)、
を備える、システム(10)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1−1>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明1は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲1発明は、「液体吐出端部2」(「流動制御インサート本体(180)」に相当する。)と、「エアキャップ6」(「一体スプレイキャップ本体(108)」に相当する。)の間に設けられているものである点

以下、相違点1−1について検討する。
一体スプレイキャップ本体の流路内に設ける流体制御インサート本体であって、第1の通路と、前記第1の通路から下流の第2の通路とを備え、前記第1の通路が、第1の半径幅を備え、前記第2の通路が、第2の半径幅を備え、前記第2の半径幅が、前記第1の半径幅よりも大きい流路を内部を貫通して延びて形成されている流動制御インサート本体は、特許異議申立人の提示するいずれの証拠にも記載されていない。
また、甲1発明においての流体吐出端部は、スプレーノズルの流体を吐出するノズル部分を構成する部材であることからみても、当該流体突出端部(流体制御インサート本体)内に、そのような流路を貫通して延びるように形成する動機がない。
してみれば、甲1発明において、相違点1−1に係る形状の流動制御通路を流体制御インサート本体内を貫通して延びて形成するようにすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点1−1に関し、単なる設計事項である旨、又は、甲4及び甲5に記載された事項から容易である旨主張するが、相違点1−1に関わる構成が、設計的事項であることを裏付ける具体的な証拠がないし、甲1発明において、上記のとおり相違点1−1に係る構成とする動機付けもないことから、単なる設計事項との主張は失当であるし、甲4及び甲5に記載されているのは、単に、流動制御インサート本体に相当する部材内に半径幅の一定の流体流路を貫通して延びて形成されたものであって、流動制御インサート本体内に半径の異なる流路を設ける点は開示されていないから、甲4及び甲5に基づく主張も失当であり、採用できない。

よって、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2ないし17について
本件特許発明2ないし17は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明18について
本件特許発明18と甲1発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)であって、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
流動制御通路(14)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)を貫通して延び、かつ前記流動制御通路(14)より下流に配置された、膨張室(18)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成され、かつ前記膨張室(18)より下流に配置された、1つ又は複数の空気成形出口(20)とを備える、空気成形通路(116)であって、前記流動制御通路(14)は、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)、前記第2の通路(252、260)、前記膨張室(18)、及び前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、直列に流体接続されており、前記第1の通路(250、260)は、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)は、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)は、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、空気成形通路(116)と、
を備える、
システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−2>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明1は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲1発明は、「液体吐出端部2」(「流動制御インサート本体(180)」に相当する。)と、「エアキャップ6」(「一体スプレイキャップ本体(108)」に相当する。)の間に設けられているものである点
<相違点1−3>
「スプレイツール(12)」に関し、本件特許発明18が「流体通路(40)と空気通路(66、68)とを有する本体部分(19)と、前記流体通路(40)及び前記空気通路(66、68)に流体結合されたヘッド部分(28)と、を備え」「前記ヘッド部分(28)が、流体ノズル受入れ体(170)と空気噴霧化通路(114)とを備える」、「流体ノズル受入れ体(170)の中に配置される流体ノズル(22)とを備える」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点
<相違点1−4>
「空気形成出口(20)」に関し、本件特許発明18は、「エアホーン(110)内に形成され」と特定するのに対し、甲1発明は、この点を特定しない点

相違点1−2から検討するに、相違点1−2は上記アの相違点1−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点1−2は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明18は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件特許発明19について
本件特許発明19と甲1発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)のスプレイキャップ(29)の一体の本体(108)の凹部(195)内に据え付けるように構成された流動制御インサート(180)であって、
流動制御通路(14)を備え、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)の下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きく、
を備える、システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−5>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明19は、「流動制御インサート(180)流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲1発明は、「液体吐出端部2」(「流動制御インサート本体(180)」に相当する。)と、「エアキャップ6の本体」(「一体スプレイキャップ本体(108)」に相当する。)の間に設けられているものである点
<相違点1−6>
流動制御通路に関し、本件特許発明19は、「前記流動制御インサート(180)が、第1の軸方向端と、前記第1の軸方向端に対向する第2の軸方向端とを有する1つの部品であり」、かつ、「前記第1の軸方向端の上流の軸壁(246)から第2の軸方向端の下流の軸壁(246)へ内部に延びる」と特定するのに対して、甲1発明は、この点を特定しない点

相違点1−5から検討するに、相違点1−5は上記アの相違点1−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点1−5は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明19は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2(甲2に基づく進歩性)について
(1)甲2に記載されている事項及び甲2発明
ア 甲2に記載されている事項
甲2には以下の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文のみ記載する。
・「図1は、本発明のノズル2がナット3によって結合されているスプレイガンの本体を部分的に示している。」(段落0017)
・「周辺チャンバ8より前において、ノズル2は、ノズル2の外壁19の縁に対して支持され、前記ワッシャとノズルのロックナット3との間に組み付けられたリング状のばね20によって保持されるワッシャ18を備える。ワッシャ18は、ノズル2の内壁21と共に、通過する空気を圧縮するリング状の通路22を形成し、空気の流れを層流にし、完全に誘導された様式で周辺チャンバ8、さらに出口穴11の周辺に到達させる。」(段落0022)
・「リング状の圧縮通路15及び圧縮通路22によって圧縮空気の正しい分配が達成され、その結果、必要な量の空気が、適切な圧力で中央チャンバ7及び周辺チャンバ8にそれぞれ到達する。これらの条件を中央の穴10と周辺の穴11の正しい傾斜と組み合わせることにより、ニードル6がガン1の作動制御によって引き込まれるとき、各スプレイノズルが必要とする空気の量は非常に正確に分配され、チャンバ4に含まれ、出口5を通して供給される流体を完全にスプレー状にするための正しい比率と方向が達成される。」(段落0023)
・「圧縮通路15及び圧縮通路22は、各ノズルの正しい空気流量及び圧力の適切な制御を可能にする。」(段落0024)
・「FIG.1

」(FIG.1)

イ 甲2発明
上記アの記載及びFIG.1から、「ワッシャ18とノズル2の内壁21との間に環状の圧縮通路22が形成され、環状の圧縮通路22の下流側における周辺チャンバ8の半径幅は環状の圧縮通路22の半径幅より大きい、流動制御通路」が看取できる。
また、同じく上記アの記載及びFIG.1から、「圧縮通路22が、ワッシャ18とノズル2との間に配置された構成」が看取できる。
さらに、同じく上記アの記載及びFIG.1から、「環状の圧縮通路22を形成するためのワッシャ18がノズル2に締まり嵌めされた構成」及び、「ノズル2の本体」が看取できる。
加えて、上記アの記載とFIG.1から、甲2には「スプレイガンシステム」が記載されているといえる。
これらを踏まえれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認める。

<甲2発明>
「スプレイガンシステムであって、
ガン1に結合するように構成されたノズル2であって、前記ノズル2が、
前記ノズル2の本体と、
前記ノズル2の本体内に配置されたワッシャ18と、
流動制御通路であって、前記流動制御通路が、圧縮通路22と、前記圧縮通路22から下流の周辺チャンバ8とを備え、前記圧縮通路22が、第1の半径幅を備え、前記周辺チャンバ8が、第2の半径幅を備え、前記第2の半径幅が、前記第1の半径幅よりも大きい、流動制御通路と、
前記ノズル2の本体内に形成された1つ又は複数の出口穴11であって、前記1つ又は複数の出口穴11は、前記周辺チャンバ8より下流である、1つ又は複数の出口穴11と、
を備えるノズル2、
を備える、スプレイガンシステム。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「ガン1」、「ワッシャ18」、「出口穴11」、「スプレイガンシステム」は、それぞれ、本件特許発明1における「スプレイツール(12)」、「流動制御インサート本体(180)」、「空気成形出口(20)」、「システム(10)」に相当する。
甲2発明の「ノズル2」、「ノズル2の本体」は、それぞれ、本件特許発明1における「スプレイキャップ(29)」、「一体スプレイキャップ本体(108)」に相当する。
甲2発明の「圧縮通路22」、「周辺チャンバ8」は、それぞれ、本件特許発明1における「第1の通路(250、260)」、「第2の通路(252、260)」及び「膨張室(18)」に相当する。
また、甲2発明の「流動制御通路であって、前記流動制御通路が、圧縮通路22と、前記圧縮通路22から下流の周辺チャンバ8とを備え、前記圧縮通路22が、第1の半径幅を備え、前記周辺チャンバ8が、第2の半径幅を備え、前記第2の半径幅が、前記第1の半径幅よりも大きい、流動制御通路」は、本件特許発明1における「流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に相当する。
さらに、甲2発明の「周辺チャンバ8」(「膨張室(18)」に相当する。)は、本件特許発明1における「流動制御通路から下流であり、」「不変の第3の半径幅を備える」を満たしている。

そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)に結合するように構成されたスプレイキャップ(29)であって、前記スプレイキャップ(29)が、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内を貫通して延びる膨張室(18)であって、前記膨張室(18)は、前記流動制御通路(14)から下流である、膨張室(18)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成された1つ又は複数の空気成形出口(20)であって、前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、前記膨張室(18)より下流である、1つ又は複数の空気成形出口(20)と、
を備えるスプレイキャップ(29)、
を備える、システム(10)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2−1>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明1は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲2発明は、「第1の通路」が「ワッシャ18」(「流動制御インサート本体(180)に相当する。)と、「ノズル2」(「一体スプレイキャップ本体(108)に相当する。)の間に設けられ、「第2の通路」が「ノズル2」内に設けられているものである点
<相違点2−2>
「膨張室(18)」に関し、本件特許発明1は、「第2の半径幅(256)よりも大きい、不変の第3の半径幅(200)を備える」と特定するのに対し、甲2発明は、第2の半径幅より小さい一定の半径幅である点

以下、相違点2−1について検討する。
スプレイキャップ本体内に設ける流体制御インサート本体であって、第1の通路と、前記第1の通路から下流の第2の通路とを備え、前記第1の通路が、第1の半径幅を備え、前記第2の通路が、第2の半径幅を備え、前記第2の半径幅が、前記第1の半径幅よりも大きい流路を内部を貫通して延びて形成されている流動制御インサート本体は、特許異議申立人の提示するいずれの証拠にも記載されていない。
そして、甲2発明においての「ワッシャ18」(「流動制御インサート本体(180)に相当する。)内に、そのような流路を貫通して延びるように形成する動機がない。
してみれば、甲2発明において、相違点2−1に係る形状の流動制御通路を「ワッシャ18」内を貫通して延びるように形成することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点2−1に関し、単なる設計事項である旨、又は、甲4及び甲5に記載された事項から容易である旨主張するが、相違点2−1に関わる構成が、設計的事項であることを裏付ける具体的な証拠がないし、甲2発明において、上記のとおり相違点2−1に係る構成とする動機付けもないことから、単なる設計事項との主張は失当であるし、甲4及び甲5に記載されているのは、単に、流動制御インサート本体に相当する部材内に半径幅が一定の流体流路を貫通して延びて形成されたものであって、流動制御インサート本体内に半径幅の異なる流路を設ける点は開示されていないから、甲4及び甲5に基づく主張も失当であり、採用できない。

よって、本件特許発明1は、相違点2−2について検討するまでもなく、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2ないし17について
本件特許発明2ないし17は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明18について
本件特許発明18と甲2発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲2発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)であって、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に配置された流動制御インサート本体(180)と、
流動制御通路(14)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)を貫通して延び、かつ前記流動制御通路(14)より下流に配置された、膨張室(18)と、前記膨張室(18)より下流に配置された、1つ又は複数の空気成形出口(20)とを備える、空気成形通路(116)であって、前記流動制御通路(14)は、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)、前記第2の通路(252、260)、前記膨張室(18)、及び前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、直列に流体接続されており、前記第1の通路(250、260)は、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)は、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)は、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、空気成形通路(116)と、
を備える、
システム(10)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2−3>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明18は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲2発明は、「第1の通路」が「ワッシャ18」(「流動制御インサート本体(180)に相当する。)と、「ノズル2」(「一体スプレイキャップ本体(108)に相当する。)の間に設けられ、「第2の通路」が「ノズル2」内に設けられているものである点
<相違点2−4>
スプレイツールに関し、本件特許発明18が「流体通路(40)と空気通路(66、68)とを有する本体部分(19)と、前記流体通路(40)及び前記空気通路(66、68)に流体結合されたヘッド部分(28)と、を備え」「前記ヘッド部分(28)が、流体ノズル受入れ体(170)と空気噴霧化通路(114)とを備える」、「流体ノズル受入れ体(170)の中に配置される流体ノズル(22)とを備える」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点
<相違点2−5>
「空気形成出口(20)」に関し、本件特許発明18は、「エアホーン(110)内に形成され」と特定するのに対し、甲2発明は、この点を特定しない点

相違点2−3から検討するに、相違点2−3は上記アの相違点2−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点2−3は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明18は、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件特許発明19について
本件特許発明19と甲2発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲2発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)のスプレイキャップ(29)の一体の本体(108)の凹部(195)内に据え付けるように構成された流動制御インサート(180)であって、
流動制御通路(14)を備え、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)の下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きく、
を備える、システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2−6>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明19は、「流動制御インサート(180)流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲2発明は、「第1の通路」が「ワッシャ18」(「流動制御インサート本体(180)に相当する。)と、「ノズル2」(「一体スプレイキャップ本体(108)に相当する。)の間に設けられ、「第2の通路」が「ノズル2」内に設けられているものである点
<相違点2−7>
流動制御通路に関し、本件特許発明19は、「前記流動制御インサート(180)が、第1の軸方向端と、前記第1の軸方向端に対向する第2の軸方向端とを有する1つの部品であり」、かつ、「前記第1の軸方向端の上流の軸壁(246)から第2の軸方向端の下流の軸壁(246)へ内部に延びる」と特定するのに対して、甲2発明は、この点を特定しない点

相違点2−6から検討するに、相違点2−6は上記アの相違点2−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点2−6は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明19は、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由3(甲3に基づく進歩性)について
(1)甲3に記載された事項及び甲3発明
ア 甲3に記載された事項
甲3には以下の記載がある。なお、原文の摘記は省略し、訳文のみ記載する。
・「図1及び図2に示されるように、本発明は、本質的にノズル(1)、スプレイガンの蓋(2)及びスプレイガン(3)からなる。」(第2欄第48行〜第50行)
・「通気孔(141)を備えた別のストッパー(14)が前記ノズルベース(13)の外周から延在し、前記通気孔(141)を画定する緩衝部(15)は、前記ノズルベース(13)の縁から延設される。」(第2欄第58行〜第61行)
・「組み立てるにおいて、図3に示されるように、ノズル(1)のねじ部(16)は、スプレイガン(3)のエアダクト(31)に設けられている。これらの通気孔(141)及びボア(131)は、それぞれ第1空気出口(32)及び第2空気出口(33)に繋がっており、ノズル(1)の通路(11)及びスプレイガン(3)のエアダクト(31)は相互に接続されている。」(第2欄第65行〜第3欄第4行)
・「拡散操作では、HP空気は、スプレイガン(3)の第1及び第2の空気出口(32、33)からそれぞれ供給される。第1の空気出口(32)内の空気の圧力は、ノズルベース(13)の周囲に設けられたストッパー(14)にボア(141)から出て、ボア(141)の先に設けられたストッパー(15)に当たることによって低下する。次に、圧力が低下した空気が、スプレイガンの蓋(2)の空気出口(22)から排出されます。」(第3欄第10行〜第3欄第17行)
・「



」(FIG.1〜3)

イ 甲3発明
上記アの記載とFIG.1〜3(下記に甲3のFIG.3を拡大し、一部に符号を付したものを参考図3として示す)から、「蓋(2)」が「蓋(2)の本体」から構成されていて、「ストッパー(14)に設けられたボア(141)、ストッパー(15)の外周面とスプレイガンの蓋(2)の内壁面とによって形成された環状の半径幅Aの第1の通路、ストッパー(15)の外周面とスプレイガンの蓋(2)の内壁面とによって形成された環状の半径幅Bの第2の通路、スプレイガンの蓋(2)に設けられた環状の半径幅Cの第3の通路、スプレイガンの蓋(2)の空気出口(22)を備える流動制御通路」が看取できる。
また、上記アの記載とFIG.3(下記拡大した参考図3参照)から、「第2の通路の半径幅Bは第1の通路の半径幅Aより大きく、第3の通路の半径幅Cは第2の通路の半径幅Bより大きい」ことが看取できる。
加えて、上記アの記載とFIG.1〜3から、甲3には「スプレイガンシステム」が記載されているといえる。
【参考図3】

これらを踏まえれば、甲3には、以下の発明が記載されていると認める。

<甲3発明>
「スプレイガンシステムであって、
スプレイガン(3)のボディに結合するように構成されたスプレイガンの蓋(2)であって、前記スプレイガンの蓋(2)が、
前記スプレイガンの蓋(2)の本体と、
前記スプレイガンの蓋(2)の本体内に配置されたノズル(1)と、
流動制御通路であって、前記流動制御通路が、環状の第1の通路と、前記第1の通路から下流の環状の第2の通路とを備え、前記第1の通路が、第1の半径幅Aを備え、前記第2の通路が、第2の半径幅Bを備え、前記第2の半径幅Bが、前記第1の半径幅Aよりも大きい、流動制御通路と、
前記スプレイガンの蓋(2)の本体内を貫通して延びる第3の通路であって、
前記第3の通路は、前記流動制御通路から下流であり、前記第3の通路は、第2の半径幅Bよりも大きい、不変の第3の半径幅Cを備える、第3の通路と、
前記スプレイガンの蓋(2)の本体内に形成された1つ又は複数の空気出口 (22)であって、前記1つ又は複数の空気出口(22)は、前記第3の通路Cより下流である、1つ又は複数の空気出口(22)と、
を備えるスプレイガンの蓋(2)、
を備える、スプレイガンシステム。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「スプレイガン(3)」、「空気出口(22)」、「スプレイガンシステム」は、それぞれ、本件特許発明1における「スプレイツール(12)」、「空気成形出口(20)」、「システム(10)」に相当する。
甲3発明の「蓋(2)」、「蓋(2)の本体」は、それぞれ、本件特許発明1における「スプレイキャップ(29)」、「一体スプレイキャップ本体(108)」に相当する。
甲3発明の「第1の通路」、「第2の通路」、「第3の通路」は、それぞれ、本件特許発明1における「第1の通路(250、260)」、「第2の通路(252、260)」、「膨張室(C)」に相当する。
また、甲3発明の「流動制御通路であって、前記流動制御通路が、環状の第1の通路と、前記第1の通路から下流の環状の2の通路とを備え、前記第1の通路が、第1の半径幅Aを備え、前記第2の通路が、第2の半径幅Bを備え、前記第2の半径幅Bが、前記第1の半径幅Aよりも大きい、流動制御通路」は、本件特許発明1における「流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に相当する。
また、甲3発明の「第3の通路」(膨張室)は、本件特許発明1における「流動制御通路から下流であり、」「第2の半径幅よりも大きい、不変の第3の半径幅を備える」を満足する。

そうすると、本件特許発明1と甲3発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)に結合するように構成されたスプレイキャップ(29)であって、前記スプレイキャップ(29)が、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
流動制御通路(14)であって、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内を貫通して延びる膨張室(18)であって、前記膨張室(18)は、前記流動制御通路(14)から下流である、膨張室(18)と、
前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成された1つ又は複数の空気成形出口(20)であって、前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、前記膨張室(18)より下流である、1つ又は複数の空気成形出口(20)と、
を備えるスプレイキャップ(29)、
を備える、システム(10)。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3−1>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明1は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲3発明では、第1の通路は、「ノズル1」の「ストッパー(14)」に設けられた「ボア(141)」、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内周面とによって形成されており、第2の通路は、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内壁面とによって形成されている点

以下、相違点3−1について検討する。
スプレイキャップ本体内に設ける流体制御インサート本体であって、第1の通路と、前記第1の通路から下流の第2の通路とを備え、前記第1の通路が、第1の半径幅を備え、前記第2の通路が、第2の半径幅を備え、前記第2の半径幅が、前記第1の半径幅よりも大きい流路を内部を貫通して延びて形成されている流動制御インサート本体は、特許異議申立人の提示するいずれの証拠にも記載されていない。
そして、甲3発明において、特定の形状を有する流動制御通路を、流動制御インサート本体内に形成するようにする動機がない。
してみれば、甲3発明において、相違点3−1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲3発明における「ノズル(1)」が「流動制御インサート本体(180)」に相当すると主張しているので、この点について検討する。
甲3発明の「ノズル(1)」は、甲3のFIG.2及びFIG.3からみて、確かに、「蓋(2)」の内側には設けられているが、当該「ノズル(1)」は、流体噴出ノズルを構成し、スプレーガン本体に組付けられている、もしくは、スプレーガン本体を構成するものといえるから、「蓋(2)」内に配置され、「蓋(2)」とともにスプレイキャップを構成する流動制御インサート本体(180)ということはできない。
また、たとえ、このような対応関係が成立するといえたとしても、甲3発明は、ストッパー部材14よりも下流側にかつノズル1の外周側に半径幅の異なる空気の流路が形成されているにすぎず、特許異議申立人が特許異議申立書において主張する相違点が存在し、当該相違点は、上記1又は2における相違点1−1又は相違点2−1と同様に想到容易といえないから、特許異議申立人の理由は採用できない。

よって、本件特許発明1は、甲3発明、すなわち、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件特許発明2ないし17について
本件特許発明2ないし17は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明、すなわち、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件特許発明18について
本件特許発明18と甲3発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲3発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
スプレイツール(12)であって、
一体スプレイキャップ本体(108)と、
流動制御通路(14)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)を貫通して延び、かつ前記流動制御通路(14)より下流に配置された、膨張室(18)と、前記一体スプレイキャップ本体(108)内に形成され、かつ前記膨張室(18)より下流に配置された、1つ又は複数の空気成形出口(20)とを備える、空気成形通路(116)であって、前記流動制御通路(14)は、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)、前記第2の通路(252、260)、前記膨張室(18)、及び前記1つ又は複数の空気成形出口(20)は、直列に流体接続されており、前記第1の通路(250、260)は、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)は、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)は、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、空気成形通路(116)と、
を備える、
システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3−2>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明1は、「流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲3発明は、第1の通路は、「ノズル1」の「ストッパー(14)」に設けられた「ボア(141)」、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内周面とによって形成されており、第2の通路は、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内壁面とによって形成されている点
<相違点3−3>
「スプレイツール(12)」に関し、本件特許発明18が「流体通路(40)と空気通路(66、68)とを有する本体部分(19)と、前記流体通路(40)及び前記空気通路(66、68)に流体結合されたヘッド部分(28)と、を備え」「前記ヘッド部分(28)が、流体ノズル受入れ体(170)と空気噴霧化通路(114)とを備える」、「流体ノズル受入れ体(170)の中に配置される流体ノズル(22)とを備える」と特定するのに対し、甲3発明は、この点を特定しない点
<相違点3−4>
「空気形成出口(20)」に関し、本件特許発明18は、「エアホーン(110)内に形成され」と特定するのに対し、甲3発明は、この点を特定しない点

相違点3−2から検討するに、相違点3−2は上記アの相違点3−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点3−2は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明18は、甲3発明、すなわち、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件特許発明19について
本件特許発明19と甲3発明とを対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲3発明の間と同様の相当関係が成り立つから、両者は、
「システム(10)であって、
流動制御通路(14)を備え、前記流動制御通路(14)が、第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)の下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きく、
を備える、システム(10)。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3−5>
「第1の通路(250、260)と、前記第1の通路(250、260)から下流の第2の通路(252、260)とを備え、前記第1の通路(250、260)が、第1の半径幅(254)を備え、前記第2の通路(252、260)が、第2の半径幅(256)を備え、前記第2の半径幅(256)が、前記第1の半径幅(254)よりも大きい、流動制御通路(14)」に関して、本件特許発明19は、「流動制御インサート(180)流動制御インサート本体(180)内を貫通して延びて形成され」ているのに対して、甲3発明は、第1の通路は、「ノズル1」の「ストッパー(14)」に設けられた「ボア(141)」、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内周面とによって形成されており、第2の通路は、「ストッパー(15)」の外周面とスプレイガンの「蓋(2)」の内壁面とによって形成されている点
<相違点3−6>
流動制御通路に関し、本件特許発明19は、「スプレイツール(12)のスプレイキャップ(29)の一体の本体(108)の凹部(195)内に据え付けるように構成された」、「前記流動制御インサート(180)が、第1の軸方向端と、前記第1の軸方向端に対向する第2の軸方向端とを有する1つの部品であり」、かつ、「前記第1の軸方向端の上流の軸壁(246)から第2の軸方向端の下流の軸壁(246)へ内部に延びる」と特定するのに対して、甲3発明は、この点を特定しない点

相違点3−5から検討するに、相違点3−5は上記アの相違点3−1と同じであるから、上記アでの検討のとおり、相違点3−5は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明19は、甲3発明、すなわち、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 P2018-555239
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B05B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 岩本 昌大
大島 祥吾
登録日 2021-04-26 
登録番号 6875418
権利者 カーライル フルイド テクノロジーズ,インコーポレイティド
発明の名称 スプレイキャップ  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 南山 知広  
代理人 胡田 尚則  
代理人 三橋 真二  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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