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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C11C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C11C
管理番号 1384283
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-17 
確定日 2022-03-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6889700号発明「天然油由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6889700号の請求項17ないし23に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6889700号の請求項17〜23に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)5月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年(平成27年)5月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月25日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項17〜23に係る特許に対し、令和3年12月17日に特許異議申立人 白井雅恵(以下、単に「申立人」ということもある。)が、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6889700号の請求項17〜23の特許に係る発明(以下、「本件発明17」〜「本件発明23」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項17〜23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項17】
(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、栄養食品組成物または医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも10重量%含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、超長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも20重量%含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記超長鎖多価不飽和脂肪酸が、少なくとも5重量%のC28:7および/またはC28:8の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項17〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、C20-C22長鎖多価不飽和脂肪酸を少なくとも25重量%含む、請求項17〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、オメガ-3 DPAを少なくとも5重量%含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が超長鎖多価不飽和脂肪酸および/またはC20-C22多価不飽和脂肪酸を遊離脂肪酸形態、エチルエステル形態および/またはトリグリセリド形態で含む、請求項17〜22のいずれか1項に記載の組成物。」

第3 申立理由の概要
申立人は、後記10の甲第1〜12号証を提出し、次の1〜9について主張している(以下、甲号証は、単に「甲1」などと記載する。)。
1 理由1:特許法第29条第1項第3号新規性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜19及び21〜22は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
2 理由2:特許法第29条第1項第3号新規性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜20は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
3 理由3:特許法第29条第1項第3号新規性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜18、21及び23は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
4 理由4:特許法第29条第1項第3号新規性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜18及び21は、甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
5 理由5:特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜19及び21〜22は、甲1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
6 理由6:特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜20は、甲2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
7 理由7:特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜19、21及び23は、甲3に記載された発明及び技術常識(甲5、甲6、甲10、甲11)に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
8 理由8:特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜19及び21は、甲4に記載された発明及び技術常識(甲5、甲6、甲10、甲11)に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
9 理由9:特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明17〜21及び23は、甲7に記載された発明に甲8の記載、甲9の記載及び技術常識(甲5、甲6、甲10、甲11)を組み合わせることにより、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
10 証拠方法
甲1:Rezanka, "Analysis of Very Long Chain Polyenoic Fatty Acids by High performance Liquid Chromatogtraphy and Gas Chromatography -Mass Spectrometry with Chemical Ionization", LC-GC, Volume 8, Number 7, 1990, 542-545
甲1a:Rezanka et al., "Chromatography of very long-chain fatty acids from animal and plant kingdoms", Analytica Chimica Acta 465 (2002) 273, 293
甲2:Mansour, "Reversed-phase high-performance liquid chromatography purification of methyl esters of C16-C28 polyunsaturated fatty acids in microalgae, including octacosaoctaenoic acid [28:8(n-3)]", Journal of Chromatography A, 1097 (2005) 54-58
甲3:Ota et al., "Occurrence of All-cis-6,9,12,15,18,21-Tetracosahexaenoic Acid in Flatfish Lipids", Fisheries Science, 1994, Vol. 60, No. 2, p. 171-175
甲4:露木英男ら,「ブリ油について(第2報) 内臓油脂肪酸組成の季節的変化」、油化学,1959,Vol. 8, No. 1,p. 31-34
甲5:特表2011−522913号公報
甲6:特開平11−209785号公報
甲7:特開平10−195023号公報
甲8:門田靖彦ら,「銀担持球状鉱物を用いたクロマトグラフィーによる高度不飽和酸の分離(第1報) 超臨界流体クロマトグラフィーによる高純度ドコサヘキサエン酸の大量分取」,日本油化学会誌,1997, Vol. 46, No. 4, 397-403
甲9:門田靖彦ら,「銀担持球状鉱物を用いたクロマトグラフィーによる高度不飽和脂肪酸の分離(第2報) 高純度ドコサヘキサエン酸の工業レベルの大量分取」,日本油化学会誌,1998, Vol. 47, No. 4, 351-357
甲10:山村隆治ら,「高度不飽和脂肪酸の高度精製技術」,日本油化学会誌,1998, Vol. 47, No. 5, 449-456
甲11:特表2012−528901号公報
甲12:特願2018−511579号の審査における令和3年4月5日付け意見書

第4 当審の判断
1 理由1、理由5について
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある(()内は仮訳。以下同じ。)。
「Silver-ion-exchange HPLC (8): Preparative HPLC was performed in a gradient LC system G-1 (Shimadzu, Tokyo, Japan) with two LC-6A pumps (4 ml/min), an SCL-6A system controller, an SPD UV detector (208 nm), an SIL-IA sample injector, and a CR3A data processor. A 30 cm x 7.9 mm semipreparative column packed with a strongly acidic cation-exchange resin (-SO3H groups, SCR-101 H, 10 μm spherical particles, Shimadzu, Tokyo, Japan) was employed. After 8.1 mg FAME was injected, a linear gradient was performed from 0% B to 50% B over 30 min. The individual classes of FAME (from zero to four [and more] unsaturated bonds) were collected, evaporated, and weighed.
(銀イオン交換HPLC(8):分取HPLCを、2つのLC−6Aポンプ(4ml/分)、SCL−6Aシステムコントローラ、SPD UV検出器(208nm)、SIL−IA試料インジェクタ、およびCR3Aデータプロセッサを用いて、勾配LCシステムG−1(島津製作所、東京)中で実施した。強酸性陽イオン交換樹脂(−SO3H基、SCR−101H、10μm球状粒子、島津製作所、東京)を充填した30cm×7.9mm半分取カラムを使用して行った。8.1mgの脂肪酸メチルエステル(FAME)を注入した後、直線勾配を0% Bから50% Bに30分間かけて行った。FAMEの個々のクラス(0から4[およびそれを超える]の不飽和結合)を回収し、蒸発させ、重量を測定した。)
Gas Chromatography Mass Spectrometry Chemical Ionization (GC-MS-Cl): Fraction IV from the ion-exchange HPLC of FAME (Figure 1) was separated and identified using a Finnigan MAT 1020 B (Finnigan MAT, San Jose, California). A 15 m x 0.25 mm Supelcowax 10 column with a film thickness of 0.25 μm (Supelco, Gland, Switzerland) was used. Injection temperature was 100°C for 1 min, then 100°C to 230°C over 25 min, and 280°C for 10 min. The carrier gas was helum at a linear flow rate of 70 cm/s. Methane was used as the chemical-ionization reagent. The sepctra were scanned within m/z 60-600.
(ガスクロマトグラフィー質量分析化学イオン化(GC−MS−Cl):FAMEのイオン交換HPLCからの画分IV(図1)を分離し、Finnigan MAT 1020 B(Finnigan MAT、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて同定した。膜厚0.25μmの15m×0.25mmのSupelcowax(登録商標)10カラム(Supelco, Gland, Switzerland)を用いた。注入温度は100℃で1分間、次いで100℃〜230℃で25分間、280℃で10分間であった。キャリアガスは70cm/sの線形流速のヘリウムであった。化学イオン化試薬としてメタンを用いた。スペクトルをm/z 60〜600の範囲で走査した。)
Results and Discussion
The greatest problem is choosing a suitable natural material. Several practical sources exist (for example, sponges) that contain VLCPUFA with unsaturated bonds separated by more than one methylene group (7). Other sources are mammalian sperm and testes, the retina of vertebrates, and Zellweger Syndrome-afflicted human brain. The first two of these sources are not usually available, and the exclusion of the retina and the brain requires surgical knowledge and skill. For these reasons the herring was used, which could be bought frozen (-18°C) in the supermarket.”
(結果と考察
最大の問題は、適切な天然素材を選択することである。複数のメチレン基で隔てられた不飽和結合をもつ超高度不飽和脂肪酸(VLCPUFA)を含むいくつかの実際的な供給源(例えば、海綿)が存在する(7)。その他のものとしては、哺乳類の精子と精巣、脊椎動物の網膜、Zellweger症候群に罹患したヒトの脳がある。これらの供給源のうち最初の2つは通常利用できず、網膜と脳を摘出するには外科的知識と技術が必要である。これらの理由から、スーパーマーケットで冷凍(−18℃)で購入できるニシンを使用した。)」<542頁右欄1行〜544頁4行>


(図1:ニシン由来のFAMEのイオン交換HPLC。クロマトグラフの条件は本文中に記載。)」<544頁右上>


(図2:画分IVのFAMEのGC−MS−CI(図1に示されたイオン交換HPLC)。(a)m/z 151、(b)m/z 109及び(c)総イオンクロマトグラムが示されている。クロマトグラフの条件は本文中に記載。)」<544頁右下>


(表1 脂肪酸組成*
脂肪酸 ピーク** ECL %+
・・・
*科学的イオン化を伴うキャピラリーGC−MSによってFAMEと決定された
**図2cで示されたピーク
+分析された総脂肪酸のパーセンテージ
++保持時間によって同定された)」<545頁表1>

(2)甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の図1には、ニシン由来のFAME(脂肪酸メチルエステル)のイオン交換HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によるクロマトグラムが記載され、図2には、図1の画分IVについてのGC−MS−CIが示され、表1には、図2のピークA〜CCについて、総脂肪酸に対する各脂肪酸の割合が記載されている。図2において示された重量に基づくピークの高さと、表1の割合の数値が一致していることからみて、表1の割合は重量%であると解される。
そうすると、上記画分IVについて、画分IVがピークA〜CCで示される脂肪酸のみからなるとすると、甲1には、次のものが記載されていると認められる。なお、表1と同様に、脂肪酸、ピーク、割合(重量%)の順に記載した。
「16:4ω−3 A 0.09、18:4ω−3 B 6.39、18:5ω−3 C 1.00、20:4ω−6 D 1.17、20:4ω−3 E 1.44、20:5ω−3 F 32.43、21:5ω−3 G 0.74、21:6ω−3 H 0.26、22:5ω−3 J 5.79、22:6ω−3 K 25.97、24:4ω−3 M 5.65、24:5ω−3 N 6.09、24:6ω−3 P 3.91、25:5 Q 0.04、26:5ω−3 R 2.16、26:6ω−3 S 3.04、27:5 T 0.04、28:4ω−3 U 0.17、28:5ω−3 V 0.43、28:6ω−3 W 0.57、28:7ω−6 X 0.43、28:7ω−3 Y 1.97、30:5ω−3 Z 0.08、30:6ω−3 AA 0.09、32:6ω−3 CC 0.04からなる、ニシン由来のFAME(脂肪酸メチルエステル)のイオン交換HPLCによる画分IV」(以下、「甲1発明」という。)

(3)対比・判断
甲1発明における脂肪酸のうち、「24:4ω−3」、「24:5ω−3」、「24:6ω−3」、「25:5」、「26:5ω−3」、「26:6ω−3」、「27:5」、「28:4ω−3」、「28:5ω−3」、「28:6ω−3」、「28:7ω−6」、「28:7ω−3」、「30:5ω−3」、「30:6ω−3」及び「32:6ω−3」は、本件発明17の「超長鎖多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量の和は24.71重量%と求められ、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
また、甲1発明における脂肪酸のうち、「20:4ω−3」、「20:5ω−3」、「21:5ω−3」、「21:6ω−3」、「22:5ω−3」及び「22:6ω−3」は、本件発明17の「C20-C22多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量の和は67.8重量%と求められ、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
そして、本件発明17と甲1発明の「ニシン由来のFAME(脂肪酸メチルエステル)」とは、魚油に由来の組成物である点で共通する。
そうすると、本件発明17と甲1発明とは、「(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1−1)
組成物の用途について、本件発明17は、「栄養食品組成物または医薬組成物」であることが特定されているのに対し、甲1発明の組成物の用途は不明な点
(相違点2−1)
超長鎖多価不飽和脂肪酸及びC20-C22多価不飽和脂肪酸について、本件発明17では、その態様は特定されていないのに対し、甲1発明では、FAME(脂肪酸メチルエステル)である点。

ここで、相違点1−1について検討する。
甲1は、ニシン由来のFAME(脂肪酸メチルエステル)について、イオン交換HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による分析結果を示すに留まり、該FAMEをどのような用途で用いるかについての記載はない。また、画分IVについ、食品としての効果や機能、薬品としての薬効については、なんら記載されていない。
一方、上記相違点1−1に関して、申立人は特許異議申立書において、ニシン油は通常、栄養食品組成物として利用されるものであり、またEPAなどを含む脂肪酸組成物は医薬組成物として通常使用されることは技術常識であるから、実質的な相違点ではなく、また、高度不飽和脂肪酸及び超高度不飽和脂肪酸を含む脂肪酸組成物が栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることは先行技術文献を示すまでもなく周知であるから、容易想到である旨主張している(特許異議申立書43頁末行〜44頁3行、52頁19〜22行)。
しかしながら、甲1発明は、所定の分子量範囲のものを分離した画分IVに係るものであり、栄養食品組成物または医薬組成物として用いられる脂肪酸以外の脂肪酸も含まれている。そうすると、所定の分子量範囲の全てを含む画分IVは栄養食品組成物または医薬組成物として使用されることは本件出願前に周知であるとはいえない。
また、画分IVに含まれる脂肪酸の全てが栄養食品組成物又は医薬組成物といえるものではなく、全ての脂肪酸についてその特性が周知であるとはいえないことから、画分IVに含まれる脂肪酸によっては、人体に対して有用ではないものや、他の脂肪酸の食品として効果や機能、薬品としての薬効を阻害するものの存在を排除することができず、画分IVがニシン油由来だからといって、栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることが、当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。
したがって、上記相違点1−1は実質的な相違点であり、上記相違点2−1について検討するまでもなく、本件発明17は甲1発明であるということはできない。また、本件発明17は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

2 理由2、6について
(1)甲2の記載
甲2には、次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
「The marine dinoflagellate Scrippsiella sp. CS-295/c was obtained from the CSIRO Collection of Living Microalgae.(海産渦鞭毛藻Scrippsiella sp. CS-295/c(当審注:以下、この「海産渦鞭毛藻」を単に「スクリプシエラ」ということもある。)は、CSIRO Collection of Living Microalgaeから入手した。)」<55頁左欄23〜24行>
「2.3. Analytical HPLC
The HPLC method was based on an industrial HPLC system for the purification of DHA from the thraustochytrid, Schizochytrium sp. SR21, which used isocratic elution [10]. We separated the fatty acids as methyl esters. HPLC was performed using a preparative pump with a low pressure quaternary gradient controller (Waters), an autosampler (Gilson) and a reversed phase column (Alltima C18, Alltech, 250mm×4.6mm i.d.) packed with 5 μm spherical particles of 100 Å pore size coated with a polymerically bonded C18 stationary phase with a 16% carbon load and end capped to remove free silanol groups. The elution was isocratic using acetonitrile (MeCN)/H20 (97.5:2.5, v/v) with a flow rate of 1.5 mL/min. Samples (100_L) of a 0.8_g/_L solution of FAME were loaded onto the column.
2.4. Preparative HPLC
HPLC was performed using a RP column (300mm×22mm i.d.) packed with the same type of particles as for the analytical column except they were 10 μm in size. A binary stepwise solvent gradient was used (Table 1) since the isocratic solvent system used for analytical separations did not elute any FAME (see Section 3). Samples (200μL) of 50μg/μL of total FAME from Scrippsiella sp. CS-295/c (10 mg) were loaded onto the column.
(2.3 分析用HPLC
HPLC法は、定組成溶出を用いたスラウストキトリッド、Schizochytrium sp. SR21からのDHAの精製のための工業用HPLCシステムに基づく[10]。脂肪酸をメチルエステルとして分離した。HPLCは、低圧四次勾配制御器(Waters)、オートサンプラー(Gilson)、および16%炭素負荷を有するポリマー結合C18固定相で被覆された100Åの孔径の5μm球状粒子を充填した逆相カラム(Alltima C18、Alltech、250mm×4.6mm内径)を備えた分取ポンプを用いて実施し、遊離シラノール基を除去するために末端を保護した。アセトニトリル(MeCN)/H20(97.5:2.5、v/v)を用い、流速1.5mL/分で定組成で溶出を行った。FAME(当審注:脂肪酸メチルエステル。以下、単に「FAME」という。)の0.8μg/μL溶液の試料(100μL)をカラムに充填した。
2.4.分取用HPLC
HPLCは、粒径が10μmであることを除いて、分析カラムと同じ種類の粒子を充填した逆相カラム(300mm×22mm内径)を用いて行った。分析分離に用いた定組成溶媒系ではFAMEは溶出されなかったため(第3節参照)、二成分系溶媒勾配(表1)を用いた。Scrippsiella sp. CS−295/c(10mg)由来の総FAMEの50μg/μLの試料(200μL)をカラムに装填した。)」<55頁左欄下から6行〜右欄17行>
「3.2. Preparative HPLC
When samples were injected onto the preparative HPLC column using the isocratic solvent system used for the analytical HPLC column, no FAME were eluted. This suggested that 10 μm packing in the preparative column was more selective than the 5 μm packing used in the analytical column and strongly retained all PUFA-ME, as well as the saturated and monounsaturated FAME. Hence, the eluting solvent system was modified by developing a simple stepwise gradient solvent system from 100% MeCN as the initial solvent with CHCl3 or DCM as lipophilic solvent modifiers. This resulted in similar chromatography (Fig. 2) to that achieved using the isocratic solvent system on the analytical column (Fig. 1). Elution of the monounsaturated and saturated FAME also occurred with the preparative column. The resolution was such that this preparative system could be used for quantitative analysis of the main PUFA-ME within 26 min. It required no more than 10 min reequilibration time with MeCN (Table 1).
The chromatography was reproducible and so this system is amenable to automation using an auto-sampler and auto-fraction collector. Separation of PUFA-ME allowed rapid analysis by capillary GC and GC-MS following fraction collection to determine purity and confirm identification of PUFA. This system can be adapted to LC-MS analyses of marine PUFA.
The dinoflagellate VLC-HUFA, 28:8(n-3) was resolved from other major PUFA-ME (Fig. 2) and eluted prior to the 18:1 and 16:0. Capillary GC analysis showed the 28:8(n-3) fraction to be 94% pure.
(3.22.分取用HPLC
分析HPLCカラムに使用した定組成溶媒系を用いて試料を分取HPLCカラムに注入した場合、FAMEは溶出しなかった。このことは、分取カラムにおける10μm充填は、分析カラムで使用される5μm充填より選択性が高く、すべてのPUFA−ME、ならびに飽和および一不飽和FAMEを強く保持することを示唆した。従って、溶出溶媒系を、親油性溶媒改質剤としてCHCl3またはDCMを用いた初期溶媒として100% MeCNからの単純な段階的勾配溶媒系を開発することによって改変した。これにより、分析カラム上の定組成溶媒系を用いた場合と同様のクロマトグラフィー(図2)が得られた(図1)。分取カラムではモノ不飽和および飽和FAMEの溶出も起こった。分離度は、この分取システムを26分以内の主要PUFA‐MEの定量分析に使用できるほどだった。MeCNによる再平衡化時間は10分以内であった(表1)。
クロマトグラフィーは再現性があり、従って、このシステムは、オートサンプラーおよびオートフラクションコレクターを用いた自動化に適している。PUFA−MEを分離することにより、キャピラリーGCおよびGC−MSによる画分収集後の迅速な分析が可能となり、PUFAの純度を測定し、同定することができた。このシステムは海洋PUFAのLC‐MS分析に適用できる。
渦鞭毛藻VLC−HUFA、28:8(n−3)を他の主要なPUFA−ME(図2)から分離し、18:1および16:0の前に溶出した。キャピラリーGC分析では、28:8(n−3)画分が94%の純度であることが示された。)」<56頁右欄下から14行〜57頁左欄14行>
「The total amount of solvent and number of injections needed to prepare a certain amount of PUFA-ME of a required purity, however, depended on the proportion of the PUFA-ME in the sample and loading on the column, which is determined by how well it is resolved from close eluting FAME. Since 18:5(n-3) composed 43% of the total FAME of Scrippsiella sp. CS-295/c (determined by GC) 10 injections were required to prepare 30.5 mg of 18:5(n-3), whereas 10 injections with a further 6 re-injections of the semi-purified 28:8(n-3) fraction were required to increase the to purity of 1mg of 28:8(n-3) to a level of 94%, since 28:8(n-3) is only 2% of the total FAME of Scrippsiella sp. CS-295/c.
(必要な純度の一定量のPUFA−MEを調製するのに必要な溶媒の総量および注入回数は、試料中のPUFA−MEの割合およびカラムへの負荷に依存した。これは、近い溶出のFAMEからどの程度分離されるかによって決定される。18:5(n−3)は、Scrippsiella sp. CS−295/c(GCで測定)の総FAMEの43%を構成するため、30.5mgの18:5(n−3)を調製するためには10回の注入が必要であったが、28:8(n−3)の1mgの純度を94%まで増加させるためには、10回の注入にさらに6回の半精製28:8(n−3)画分の再注入が必要であった。なぜなら、28:8(n−3)は、Scrippsiella sp. CS−295/c.の総FAMEの2%に過ぎないからである。)」<57頁右欄21〜31行>


(図2 流速10mL/分での勾配溶出(100%MeCN〜100%CHCl3)を用いた逆相カラム(Altima C18, Alltech,内径300mm×22mm、10μm粒子)を用い、蒸発光散乱検出器(Mass Detector Model(質量検出モデル) 750/14, Applied Chromatography Systems, ICI)で検出した、渦鞭毛藻類のScrippsiella) sp.295/cから得たFAMEの分取逆相(C18)HPLCクロマトグラム。Scrippsiella sp. CS−295/c(10mg)由来の総FAMEの50μg/μLの試料(200μL)をカラムに装填した。)」<57頁表2>

(2)甲2に記載された発明(甲2発明)
甲2には、スクリプシエラ(10mg)由来の総FAMEの50μg/μLの試料(200μL)をカラムに装填して、HPLCによって28:8(n−3)画分を分離することで、28:8(n−3)画分が94%の純度であるFAMEを得たことが記載されていることから、甲2には、「スクリプシエラ由来の総FAMEから得られた28:8(n−3)画分が94%の純度であるFAME」(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本件発明17と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「スクリプシエラ」は渦鞭毛藻類であるから、甲2発明の「スクリプシエラ由来の総FAME」は、本件発明17の「藻類油」に相当する。
また、甲2発明の「28:8(n−3)画分」は、本件発明17の「超長鎖多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量は「94%の純度であ」り、蒸発光散乱検出器として質量検出モデルが用いられていることから、その純度は重量に基づくものであると解され、本件発明17の「少なくとも5重量%」を明らかに充足する。
そして、本件発明17と甲2発明の「FAME」とは、藻類に由来の組成物である点で共通する。
そうすると、本件発明17と甲2発明とは、「(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1−2)
組成物の用途について、本件発明17は、「栄養食品組成物または医薬組成物」であることが特定されているのに対し、甲2発明の組成物の用途は不明な点。
(相違点2−2)
本件発明17は、「少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸」を含むのに対し、甲2発明は、そのようなものが含まれるかどうかは不明な点。
(相違点3−2)
超長鎖多価不飽和脂肪酸について、本件発明17では、その態様は特定されていないのに対し、甲2発明では、FAMEである点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず相違点2−2について検討する。
甲2には、「28:8(n−3)は、Scrippsiella sp. CS−295/c.の総FAMEの2%に過ぎないからである。」と記載されていることから、スクリプシエラ由来の総FAMEには、「28:8(n−3)」は2%程度しか含まれておらず、その総FAMEから、特定の分子量のものを取り出すHPLCによって、「28:8(n−3)」を94%の純度に分離しているのであるから、甲2発明には、「28:8(n−3)」の分子量の近傍の分子量のものは少なくとも5重量%含まれることがあるとしても、分子量が異なる「C20-C22多価不飽和脂肪酸」については、「28:8(n−3)」とともに分離される蓋然性は低く、甲2発明に「C20-C22多価不飽和脂肪酸」が少なくとも5重量%含まれるということはできない。したがって、上記相違点2−2は実質的な相違点である。
また、甲2発明では、「28:8(n−3)」を94%の純度にしたものであるから、あえて、「28:8(n−3)」の純度を低減させるような「C20-C22多価不飽和脂肪酸」を少なくとも5重量%含むように添加する動機付けは見いだせない。

上記相違点2−2に関して、申立人は特許異議申立書において、甲2発明においては、精製の原料となる藻類油は大量の22:6(n−3)を含んでいるので94%の28:8(n−3)の組成物を得る前に、5%以上の22:6(n−3)を含む組成物を得ていたことは明らかである旨主張している。
しかしながら、94%の28:8(n−3)の組成物を得る前に、5%以上の22:6(n−3)を含む組成物が得られたとしても、甲2においては、そのような94%の28:8(n−3)の組成物を得る前の組成物を取り出すことは想定されるものではなく、甲2の記載から、5%以上の22:6(n−3)を含む組成物を引用発明として認定することはできない。

以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明17は甲2発明であるということはできない。また、本件発明17は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

3 理由3、7について
(1)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「The component fatty acids of lipids from four species of flatfish (flathead flounder Hippoglossoidesdubius, scalyeye plaice Acanthopsetta nadeshnyi, pointhead flounder Cleisthenes pinetorum herzensteini, and Korean flounder Glyptocephalus stelleri) caught in the Sea of Japan and Funka Bay, Hokkaido were examined using open-tubular gas-liquid chromatography.(日本海及び北海道の噴火湾で捕獲された4種類のカレイ類(アカガレイHippoglossoidesdubius、ウロコメガレイAcanthopsetta nadeshnyi、ソウハチCleisthenes pinetorum herzensteini、及びコリアンフラウンダーGlyptocephalus stelleri)から得られた脂質の脂肪酸成分を、開管ガス−液体クロマトグラフィーを用いて確認した。)」<要約>
「Very long chain fatty acids (VLCFA) greater than C24 chain lengthes have again been of special interest during recent years, in particular as concerns pathological function in living cells.3-6) There are some reports on the occurrence of tetracosapolyenoic acids such as 24: 5n-3 and 24: 6n-3 in fish.7-9) However, the content level of these acids is low (less than 2% of total fatty acids). It is necessary to investigate the distribution of VLCFA in marine organisms in greater detail in order to clarify their origin and functions.(C24超の鎖長を有する超長鎖脂肪酸(VLCFA)が近年再び、特に生細胞における病理学的機能に関連して、注目されている。魚類において24: 5n-3及び24: 6n-3等のテトラコサポリエン酸が生じた例が数件報告されている。しかしながら、これらの酸の含量は低い(全脂肪酸の2%未満)。海洋生物中のVLCFAの発生源及び機能をはっきりさせるためには、海洋生物中のその分布を調査する必要がある。)」<171頁1欄10行〜2欄2行>


(表1 カレイ類の特性及び脂質含量
左欄(上から順に)
カレイ類
アカガレイ
Hippoglassoides dubius
ウロコメガレイ
Acanthopsetta nadeshnyi
ソウハチ
Cleisthenes pinetorum herzensteini
コリアンフラウンダーGlyptocephalus stelleri)」<171頁表1>


(表4 雄アカガレイ(A)の魚肉の脂質クラスの脂肪酸組成
*1:値は2匹の判定の平均
*2:SE、ステロールエステル;TG、トリアシルグリセロール;FFA、遊離脂肪酸;PL、リン脂質
*3:全脂質の%。Tr、微量(1%未満))」<174頁表4>

(2)甲3に記載された発明(甲3発明)
甲3の表1には、1990年2月に、北緯44度50分、東経139度54分で獲れたアカガレイの雄2匹の肉に3.0%の脂質が含まれることが記載され、表4には、該脂質に遊離脂肪酸が2.7%含まれ、該遊離脂肪酸(FFA)は、次のようなものであることが記載されている(脂肪酸 含有量%の順に記載した。)。
「アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸であって、12:0 0.14、iso−14 0.36、l4:0 3.09,4,8,12−TMTD 0.04、iso−15:0 0.41、anteiso−15:0 0.54、15:0 1.24、iso−16 0.39、Pristanic 1.02、16:0 8.13、iso−17:0 0.27、anteiso−17:0 0.17、Phytanic 1.04、iso−18:0 0.20、18:0 1.84、19:0 0.13、20:0 0.17、16:1(n−9) 4.75、16:l(n−7) 1.52、17:1(n−8) 0.13、5−18:1 0.87、18 1(n−9) 6.62、18(n−7) 1.69、5−20:1 0.74、20:1(n−11,n−13) 1.99、20:1(n−9) 0.68、20:1(n−7) 0.57、22:1(n−11,n−13) 0.86、22:1(n−9) 0.89、22:1(n−7) 0.24、24:1(n−9) 0.65、16:2(n−4) 0.05、18:2 (n−6) 0.50、18:3(n−6) 0.70、18:3(n−3) 0.16、18:4(n−3) 0.14、18:4(n−1) 0.05、2 5,11 0.27、20:2,5,13 0.14、20:2(n−6) 0.09、5,11,14−20:3 0.09、20:3(n−3) 0.10、20:4(n−6) 5.03、20:4(n−3) 0.33、22:4(n−6) 0.09、20:5(n−3) 21.69、21:5(n−3) 0.31、22:5(n−6) 0.29、22:5(n−3) 1.26、22:6(n−3) 12.43、24:6(n−3) 11.44からなる遊離脂肪酸。」

(3)対比・判断
甲3発明における遊離脂肪酸のうち、「24:6(n−3)」は、本件発明17の「超長鎖多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量の和は11.44%であり、%は重量%と解されることから、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
また、甲3発明における遊離脂肪酸のうち、「20:3(n−3)」、「20:4(n−6)」、「20:4(n−3)」、「22:4(n−6)」、「20:5(n−3)」、「21:5(n−3)」、「22:5(n−6)」、「22:5(n−3)」及び「22:6(n−3)」は、本件発明17の「C20-C22多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量の和は41.53%と求められ、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
そして、本件発明17と甲3発明の「アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸」とは、魚油に由来の組成物である点で共通する。
そうすると、本件発明17と甲1発明とは、「(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1−3)
組成物の用途について、本件発明17は、「栄養食品組成物または医薬組成物」であることが特定されているのに対し、甲3発明の組成物の用途は不明な点。

ここで、相違点1−3について検討する。
甲3は、アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸の分析結果を示すに留まり、該遊離脂肪酸をどのような用途で用いるかについての記載はない。また、該遊離脂肪酸について、食品としての効果や機能、薬品としての薬効については、なんら記載されていない。
一方、上記相違点1−3に関して、申立人は特許異議申立書において、EPAなどを含む脂肪酸組成物は栄養食品組成物または医薬組成物として通常使用されることは技術常識であるから、実質的な相違点ではなく、また、高度不飽和脂肪酸及び超高度不飽和脂肪酸を含む脂肪酸組成物が栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることは先行技術文献を示すまでもなく周知であるから、容易想到である旨主張している(特許異議申立書48頁22〜24行、55頁5〜8行)。
しかしながら、甲3発明は、アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸に係るものであり、栄養食品組成物または医薬組成物として用いられる脂肪酸以外の遊離脂肪酸も含まれている。そうすると、甲3発明が栄養食品組成物または医薬組成物として使用されることは本件出願前に周知であるとはいえない。
また、アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸の全てが栄養食品組成物又は医薬組成物といえるものではなく、全ての遊離脂肪酸についてその特性が周知であるとはいえないことから、アカガレイの雄の肉に含まれる遊離脂肪酸によっては、人体に対して有用ではないものや、他の遊離脂肪酸の食品として効果や機能、薬品としての薬効を阻害するものの存在を排除することができず、遊離脂肪酸がアカガレイ由来だからといって、栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることが、当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。
したがって、上記相違点1−3は実質的な相違点であり、本件発明17は甲3発明であるということはできない。また、本件発明17は、他の証拠について検討するまでもなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

4 理由4、8について
(1)甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「本実験においては寒ブリ(1月)および彼岸ブリ(4月)の生鮮内蔵(エラを除く)から採取した脂肪酸組成およびその季節的変化について研究したので、ここに報告する。
II.実験及びその結果
1.試料油
本実験において用いた試料は表−1のとおりで、いずれも神奈川県小田原市近郊の定置網漁場で漁獲したブリの生鮮内臓(心臓、胃、腸、幽門垂、肝臓、ヒ臓、タンノウ、生殖器などを含み、エラを含まない)である。試料魚(全部雌)は漁獲6hr後に解剖して内臓を分離、細砕し、希薄食塩水と共に煮沸、カクハンして浮上油を得、さらに煮熟残サ(滓)を圧搾して搾出油を得、両者を合一後、遠心分離機で生成して煮取油(試料油)とした。なお、いずれの場合も圧搾操作は繰り返して数回行い、含有脂肪がほとんど残らないようにした(圧搾カスの含油率、試料油1:0.7%、試料油2:0.4%)。

表−1


<31頁右欄3〜19行>
「2.脂肪酸
上記2種の試料油(試料油1:150g、試料油2:155g)をそれぞれ常法どおりアルコール性カセイカリでケン化し、不ケン化物をエチルエーテルで抽出除去後、混合脂肪酸を得た。この混合脂肪酸を鉛塩アルコール法6)で固体酸と液体酸に分別し、さらに後者をリチウム塩アセトン法7)で低度および高度不飽和酸に分別し、このようにして得た3種の脂肪酸を常法8)により、それぞれメチルエステルとした。各種脂肪酸およびメチルエステルの性状は表−3に示すとおりである。
これらのエステルをそれぞれE.H.P分留塔9)(塔頂60cm)を用いて精密に減圧分留し、各留分のケン化価およびヨウ素価を測定した(表−4〜6)。
Hilditchの方法10)により、各留分のケン化価およびヨウ素価から各試料油の脂肪酸組成を算出したが、得られた結果は、表−7,8に示すとおりである。」<31頁右欄最終行〜32頁左欄最終行>


」<第33頁 表−6>


」<第33頁 表−7>

(2)甲4に記載された発明(甲4発明)
甲4の表−7には、寒ブリ内臓油について記載され、脂肪酸として、飽和酸 20.39%と不飽和酸 79.61%が含まれることが記載され、不飽和酸の内訳は C14 0.11%、C16 8.60%、 C18 12.51%、C20 27.03%、C22 23.39%及びC24 7.97%である。
そうすると、甲4には、寒ブリ内臓油の脂肪酸のみが抽出できたと仮定した場合、「飽和脂肪酸 20.39%及び不飽和脂肪酸 79.61%(C14 0.11%、C16 8.60%、 C18 12.51%、C20 27.03%、C22 23.39%及びC24 7.97%)からなる寒ブリ内蔵油の脂肪酸」(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
甲4発明における不飽和脂肪酸のうち、「C24」は、本件発明17の「超長鎖多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量は7.97%であり、%は重量%と解されることから、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
また、甲4発明における不飽和脂肪酸のうち、「C20」及び「C22」は、本件発明17の「C20-C22多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量の和は50.42%と求められ、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
そして、本件発明17と甲3発明の「寒ブリ内蔵油の脂肪酸」とは、魚油に由来の組成物である点で共通する。
そうすると、本件発明17と甲1発明とは、「(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸;および(b)少なくとも5重量%の1種以上のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1−4)
組成物の用途について、本件発明17は、「栄養食品組成物または医薬組成物」であることが特定されているのに対し、甲4発明の脂肪酸の用途は不明な点。

ここで、相違点1−4について検討する。
甲4は、寒ブリ内蔵油の脂肪酸の分析結果を示すに留まり、該脂肪酸をどのような用途で用いるかについての記載はない。また、該脂肪酸について、食品としての効果や機能、薬品としての薬効については、なんら記載されていない。
一方、上記相違点1−4に関して、申立人は特許異議申立書において、脂肪酸組成物は栄養食品組成物または医薬組成物として通常使用されることは技術常識であるから、実質的な相違点ではなく、また、高度不飽和脂肪酸及び超高度不飽和脂肪酸を含む脂肪酸組成物が栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることは先行技術文献を示すまでもなく周知であるから、容易想到である旨主張している(特許異議申立書51頁3〜4行、57頁6〜9行)。
しかしながら、甲4発明は、栄養食品組成物または医薬組成物として用いられる脂肪酸以外の飽和脂肪酸といった脂肪酸も含まれている。そうすると、甲4発明が栄養食品組成物または医薬組成物として使用されることは本件出願前に周知であるとはいえない。
また、寒ブリ内蔵油の脂肪酸の全てが栄養食品組成物又は医薬組成物といえるものではなく、全ての脂肪酸についてその特性が周知であるとはいえないことから、寒ブリ内蔵油に含まれる脂肪酸によっては、人体に対して有用ではないものや、他の脂肪酸の食品として効果や機能、薬品としての薬効を阻害するものの存在を排除することができず、脂肪酸が寒ブリ内臓油由来だからといって、栄養食品組成物又は医薬組成物として使用されることが、当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。
したがって、上記相違点1−4は実質的な相違点であり、本件発明17は甲4発明であるということはできない。また、本件発明17は、他の証拠について検討するまでもなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

5 理由9について
(1)甲7の記載
甲7には、次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な高度不飽和脂肪酸エチルエステルに関する。本発明の新規な高度不飽和脂肪酸エチルエステルは従来の高度不飽和脂肪酸及びそのエチルエステルと同様に医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品等の原料として利用出来るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、高度不飽和脂肪酸エチルエステルとしてよく知られているものには、下記一般式「化2」で示されるドコサヘキサエン酸エチルエステル、下記一般式「化3」で示されるエイコサペンタエン酸エチルエステル、下記一般式「化4」で示されるエイコサテトラエン酸エチルエステル等がある。
【化2】

【化3】

【化4】

【0003】これらの高度不飽和脂肪酸エチルエステルは一般に魚眼窩油に含まれる高度不飽和脂肪酸をエチルエステルの形で濃縮精製して製造される。高度不飽和脂肪酸は種々の生理活性作用を有することが知られている。一般に高度不飽和脂肪酸の生理活性作用としては、記憶力向上作用、網膜反射能向上作用、大腸癌、乳癌、胚癌などの制癌作用、血中脂質低下作用、血小板凝集抑制作用(抗血栓作用)、抗アレルギー作用、抗炎症作用、血糖値低下作用等が挙げられるが、高度不飽和脂肪酸の種類によってこれらの生理活性作用が異なってくることが数多くの研究によって明らかとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、優れた生理活性作用が期待される新規な高度不飽和脂肪酸を提供するべく鋭意研究した結果、魚眼窩油から高度に濃縮されたドコサヘキサエン酸エチルエステルの中に、2重結合を8個有し炭素鎖長28の新規な高度不飽和脂肪酸エチルエステルが存在することを発見し、その精製及び同定を行い本発明を完成するに至った。」
「【0007】以下、本発明を詳述する。
本発明の新規な高度不飽和脂肪酸エチルエステルは2重結合を8個有し炭素鎖長28の上記構造を有する分子量436のオクタデカオクタエン酸エチルエステル(C30H4402)である。
【0008】この新規化合物は、魚眼窩油分解エチルエステルから得られるドコサヘキサエン酸エチルエステルを高度に濃縮した95%濃縮物及び99%濃縮物の中に存在することが発見されたものである。
【0009】したがって、本発明の新規化合物は、第一に魚眼窩油分解エチルエステルからドコサヘキサエン酸エチルエステルを高度に濃縮し、第二にその濃縮物から本発明の新規化合物をカラム分離して製造することが出来る。」
「【0017】[魚眼窩油分解エチルエステルの調製]市販((株)日本化学飼料)の魚眼窩油(トリグリセリド)200gに対し、0.1N KOH/C2H5OHを1リットル、無水硫酸ナトリウムを適量加えた後、水浴上で95℃、10分間エステル交換した後、その液をジエチルエーテル/水系の液−液抽出にて油分を回収した。その後、油分中のジエチルエーテルはロータリーエバポレータで留去した。
[銀担持球状粘土鉱物の調製]合成ヘクトライトの水性ゲルをスプレードライすることによって得られる球状粘土鉱物(粒径2〜50μm、比表面積300m2/g)を粒径15μmに分級した後、その500gを硝酸銀飽和メタノール溶液3リットル中で6時間攪拌しながら、もともと存在するNa+からAg+へとイオン交換する。その後、ガラスフィルターにてろ過し、粉体を100℃で16時間乾燥して調製した。
[超臨界クロマトグラフィーによる95%ドコサヘキサエン酸エチルエステルの製造]銀担持球状粘土鉱物を平衡スラリー法にて耐圧性分取カラム(100φ×500mm)に充填し、SFC用カラムとした。カラムを移動相(CO280vol%、アセトン20vol%)で10分間コンディショニングした後、魚眼窩油分解エチルエステル(DHAエチルエステル28vol%含有)260mlを導入した。その後段階的に移動相の極性を上昇(CO270vol%、アセトン30vol%)させ、カラムから溶出するDHAエチルエステルの純度が80%に上昇したところでアセトンの替りにアセトニトリルを30vol%の割合で700ml導入し、カラムに吸着しているDHAエチルエステルすべてを溶出、回収した。得られたDHAエチルエステルは常に95%以上の純度を有していた。
[オクタデカオクタエン酸エチルエステルの製造及びその同定]上記で得られた95%ドコサヘキサエン酸エチルエステルを用いて、LC用カラムとしてODS系カラム(CAPCELLPAK C18UG120 S−5、4.6mmID×250mm)を用い、移動相としてメタノール/水=95/5を用いて分離することによりオクタデカオクタエン酸エチルエステルを得た。これを、1H−NMR、13C−NMR、FT−IR、LC/MSにより分析し同定した。各機器分析の分析条件を以下に示し、各スペクトルをそれぞれ図1〜図4に示す。LC/MSの正イオンモードで凝分子イオンm/z=437が観測されたことにより分子量が436であることが確認され、同族列の脂肪酸エチルエステルであることを考えるとC30H44O2(不飽和度8)の分子式と推定される。次に13C−NMRで130ppm付近にドコサヘキサエン酸エチルエステルと同様に2重結合が多数存在することを示すオレフィンカーボンが多数観測され、1H−NMRで5.4ppmに−CH=CH−を示すプロトンが16個及び3.4ppmに2重結合にはさまれた−CH2−を示すプロトンが14個(即ち7個のメチレン基)が観測されたことにより、「化5」の構造を有するオクタデカオクタエン酸エチルエステル(当審注:化5の構造からオクタコサオクタエン酸エチルエステルの誤記と認められる。)であることを確認した。FT−IRの結果もこの構造を支持するものであり、712cm−1からall−cis配位であることも確認された。
「1H−NMR分析」
機器:日本電子(株)社製JEOL EX−400
積算回数:64回
基準物質:テトラメチルシラン
溶媒:重クロロホルム
試料濃度:7%
「13C−NMR分析」
機器:日本電子(株)社製JEOL EX−400
積算回数:19000回
基準物質:テトラメチルシラン
溶媒:重クロロホルム
試料濃度:7%
「FT−IR分析」
機器:Bio−RAD社製FTS−40
試料調製方法:KBr錠剤法
分解能:4cm−1
スキャン数:64回
測定波数:400〜4000cm−1
「LC/MS分析」
機器:日立製作所製M−1000H型 日立LC/MSシステム
HPLC条件
移動相:水/メタノール=5/95
カラム:(株)資生堂社製カプセルパックC18UG(4mmφX25cm)
検出器:UV(210nm)
流速:1ml/min
試験溶液:0.5%アセトン溶液 10μl
MS条件
噴霧温度:180℃
脱溶媒温度:399℃
ドリフト電圧:20V(Pos)
掃印質量範囲:100〜500」

(2)甲7に記載された発明(甲7発明)
甲7には、魚眼窩油(トリグリセリド)から、魚眼窩油分解エチルエステルを調製し、さらに、超臨界クロマトグラフィーによって、95%以上の純度を有するドコサヘキサエン酸エチルエステルを得たことが記載されている。
そうすると、甲7には、「魚眼窩油(トリグリセリド)から得られた、95%以上の純度を有するドコサヘキサエン酸エチルエステルに加え、少量のオクタコサオクタエン酸エチルエステルを含有する組成物」(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本件発明17と甲7発明とを対比する。
甲7発明の「魚眼窩油(トリグリセリド)」は、本件発明17の「魚油」に相当する。
また、甲7発明の「ドコサヘキサエン酸エチルエステル」は、本件発明17の「C20-C22多価不飽和脂肪酸」に相当し、その含有量は「95%以上の純度を有」し、%は重量%と解されることから、本件発明17の「少なくとも5重量%」を充足する。
そして、本件発明17と甲7発明の「ドコサヘキサエン酸エチルエステル」とは、魚油に由来の組成物である点で共通する。
そうすると、本件発明17と甲7発明とは、「(a)魚油、イカ油、オキアミ油、または藻類油に由来の少なくとも5重量%のC20-C22多価不飽和脂肪酸を含む、組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1−7)
組成物の用途について、本件発明17は、「栄養食品組成物または医薬組成物」であることが特定されているのに対し、甲7発明の組成物の用途は不明な点。
(相違点2−7)
本件発明17は、「少なくとも5重量%の1種以上の超長鎖多価不飽和脂肪酸」を含むのに対し、甲7発明は、コサオクタエン酸エチルエステルを含有するが少なくとも5重量%であるかが不明な点。
(相違点3−7)
C20-C22多価不飽和脂肪酸について、本件発明17では、その態様は特定されていないのに対し、甲7発明では、エチルエステルである点。

ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず相違点2−7について検討する。
甲7の【0007】〜【0008】には、「本発明の新規な高度不飽和脂肪酸エチルエステルは2重結合を8個有し炭素鎖長28の上記構造を有する分子量436のオクタデカ(当審注:オクタコサの誤記)オクタエン酸エチルエステル(C30H4402)である。・・・この新規化合物は、魚眼窩油分解エチルエステルから得られるドコサヘキサエン酸エチルエステルを高度に濃縮した95%濃縮物及び99%濃縮物の中に存在することが発見されたものである・・・」という記載があることから、甲7発明は、オクタコサオクタエン酸エチルエステル(C30H4402)を得るために、純度95%以上のドコサヘキサエン酸エチルエステルとしたものであるということができる。この場合、ドコサヘキサエン酸エチルエステルの純度は95%以上であるから、甲7発明において、「超長鎖多価不飽和脂肪酸」が含まれるとしても、その含有量は5重量%を超えて含まれることはない。
そうすると、ドコサヘキサエン酸エチルエステルを濃縮した甲7発明において、あえて「ドコサヘキサエン酸エチルエステル」の純度を低減させるような「超長鎖多価不飽和脂肪酸」を少なくとも5重量%含むようにする動機付けは見いだせない。

上記相違点2−7に関して、申立人は特許異議申立書において、甲7に基づいて脂肪酸を得ようとする当業者は、甲7の図1のLC条件に従ってオクタデカオクタエン酸エチルエステルを単離してDHAに添加することで、少なくとも20重量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含むことを容易に想到し得る旨主張している(59頁8〜11行)。
しかしながら、ドコサヘキサエン酸エチルエステルからオクタコサオクタエン酸エチルエステルを単離することが可能だとしても、それを、オクタコサオクタエン酸エチルエステルを単離する前のドコサヘキサエン酸エチルエステルにあえて添加する合理性はなく、上記相違点2−7に係る本件発明17の発明特定事項を当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明17は、他の証拠について検討するまでもなく、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

6 理由1〜9のまとめ
上記1〜5で述べたように、本件発明17は、甲1発明〜甲4発明ではなく、甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明18〜23は、本件発明17を引用し、さらに限定するものであるから、同様に、甲1発明〜甲4発明ではなく、甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、申立人の主張は、いずれも採用することができない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明17〜23に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明17〜23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-03-03 
出願番号 P2018-511579
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C11C)
P 1 652・ 113- Y (C11C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 川端 修
亀ヶ谷 明久
登録日 2021-05-25 
登録番号 6889700
権利者 エーパックス ノルウェー アクスイェ セルスカプ
発明の名称 天然油由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 胡田 尚則  
代理人 三橋 真二  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  

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