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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1384628
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-27 
確定日 2022-05-18 
事件の表示 特願2018−211677「分散型クロスプラットフォームユーザインタフェースおよびアプリケーション投写」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日出願公開、特開2019− 57921〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月3日を国際出願日(パリ条約による優先権主張2013年9月30日米国(US)、2012年12月4日米国(US))とする特願2015−546562号の一部を平成30年11月9日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月 7日 :手続補正
令和 1年 8月15日付け:拒絶理由通知
令和 1年11月19日 :手続補正及び意見書提出
令和 2年 4月21日付け:拒絶査定
令和 2年 8月27日 :拒絶査定不服審判請求及び手続補正
令和 2年12月 1日 :前置報告

第2 本件発明
本件の請求項8に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、令和2年8月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された(令和1年11月19日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載のものと同じ)次のとおりのものである。(なお、本件発明の各構成の符号は、請求項の記載を分節するために当審で付したものであり、請求項の記載を符号を用いて、以下、構成A〜Dと称する。)

(本件発明)
A 外部システムに対応するウェブブラウザにおいてウェブベースアプリケーションを実行するモバイル装置であって、該モバイル装置は、
A1 命令セットを実行するためのプロセッサと、
A2 前記命令セットを保存する非一過性の媒体とを含み、
B 該命令セットは、
B1 前記モバイル装置と前記外部システムとの間の第1の通信リンクを確立する命令と、
B2 前記モバイル装置において、特定のウェブベースアプリケーションに対応するコンテンツをレンダリングする命令であって、前記レンダリングは、
B21 前記外部システムに対して適切な解像度により
B22 前記モバイル装置上で実行されるウェブブラウザを使用して、
B23 フルスクリーンビットマップまたはベクトルコマンドのセットのうちの1つを含むスクリーンバッファを生成することを含む、
B2 レンダリングする命令と、
B3 前記スクリーンバッファをホストコマンドに符号化する命令と、
B4 前記ホストコマンドを、前記第1の通信リンクを介して表示のために前記外部システムへ送る命令
B とを含む
A モバイル装置。

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である、特表2010−514604号公報には、以下の記載がある(下線は強調のために当審で付した)。

ア 「【0015】
図面を一般的に参照すると、リモートソース上に生成及び表示された表示を再現又は複製するべく車両制御システムが与えられる。車両制御システムは、リモートソースとの(有線又は無線の)データ接続を確立する。リモートソースは1つ以上のアプリケーションを実行する。かかるアプリケーションに関連してリモートソース上に表示された画像は車両制御システムへ送信される。ひとたび車両制御システムによって受信されると、画像は車両ディスプレイシステムに与えられる。画像の他、リモートソースの1つ以上のユーザインタフェース機能もまた、車両制御システムに与えられるか又は利用可能とされる。車両制御システムは、車両のユーザインタフェース要素を使用して、リモートソースの当該1つ以上のユーザインタフェース機能にコマンド及び制御を与える。
・・・
【0019】
図3を参照すると、車載制御システム106は、通信リンク118を介してリモートソース116からのデータファイルにアクセスすることができる。例えば、車載制御システム106は、メディアファイル、電話帳データファイル、カレンダーデータ、画像データ等の任意のアクセス可能データにアクセスできる。これらは、車載制御メディアシステム106によって使用される。車載制御システム106はまた、通信リンク118を介してリモートソース116から及び/又はリモートソース116へ、要求を送信、ファイルを受信、コマンドを送受信、並びに他の任意のタイプのデータを送信及び/又は受信する。
【0020】
車載制御システム106は一般に、通信装置120、データ処理システム122、ディスプレイドライバ124、ユーザインタフェース126、オーディオ入力装置128、オーディオ出力装置130、出力ディスプレイ108、及びメモリ装置132を含む。
【0021】
通信装置120は一般に、リモートソース116との通信リンク118を確立する。一実施例において、車載制御メディアシステム106は、例えばBluetooth通信プロトコル、IEEE802.11プロトコル、IEEE802.16プロトコル、セルラーシグナル、共有無線アクセスプロトコル・コードアクセス(SWAP-CA)プロトコル、無線USBプロトコル等任意の適した無線テクノロジによって、無線通信リンクを確立する。他の実施例において、車載制御メディアシステム106は、例えばUSBテクノロジ、IEEE1394テクノロジ、光テクノロジ、他のシリアル若しくはパラレルポートテクノロジ、又は他の任意の適切な有線リンクによって、有線通信リンクを確立する。通信装置120は、リモートソース116から1つ以上のデータファイルを受信する。様々な実施例において、データファイルは、テキスト、数値データ、オーディオ、動画、プログラムデータ、コマンドデータ、情報データ、座標データ、画像データ、ストリーミングメディア、又はこれらの任意の組み合わせを含む。」

イ 「【0031】
一実施例によれば、リモートソース116は、送受信機を含む任意の適切なリモートソースであってよく、通信リンク118(無線又は有線のいずれか)を介して車載制御システム106と連動することができる。様々な実施例において、リモートソース116は、インターネット又は他の様々なリモートソースに接続可能な1つ以上の携帯電話144、携帯情報端末(PDA)146、メディアプレーヤ148、携帯ナビゲーション装置(PND)150、ポケットベル152、リモートサーバ154であってよい。リモートソース116は、格納装置、1つ以上の処理装置、及び1つ以上の通信装置を有してよい。一実施例によれば、リモートソース116は、グローバル・ポジショニング・システム対応のリモートソースである。様々な実施例によれば、リモートソース116は、第1通信装置によってインターネット又は他の任意のリモートソースに接続する一方で、第2通信装置によって制御システムと通信することができる。」

ウ 「【0032】
図5を参照すると、一実施例による、出力ディスプレイ108上にリモートソース116の表示を複製する車載制御システム106が示される。リモートソース116は、支持アーム502に置かれたPDA又はPNDとして示される。ここで、車載制御システム106は、リモートソース116と無線通信する。リモートソース116は、ナビゲーションデータにアクセスしてそのナビゲーションデータを使用するGPS対応リモートソースであってよい。リモートソース116は、リモートディスプレイ501上に示される画像を少なくとも部分的に生成する。車載制御システム106は、リモートソース116との通信リンクを確立し、ビットマップ再現モードを開始し、リモートソース116からビットマップを受信し、及び受信したビットマップを出力ディスプレイ108上に表示する。様々な実施例によれば、リモートソース116は、自身のディスプレイに出力するべくグラフィクスを生成(例えば、部分的に生成、完全に生成、又はそれ以外に生成等)することができる。また、表示されたグラフィクスの画像(例えば、最近表示された、現在表示されている、又は将来表示される等)を制御システム106に通信することができる。画像は、任意の画像、ラスターグラフィクス、ビットマップ、ベクトルグラフィクス、デジタル画像、データファイル、又は、一般に矩形の画素格子を表示できる他の任意構造であってよい。画像は圧縮されてもよく及び/又は様々な任意の画像ファイルタイプであってよい。例えば、画像は、JPEGファイル、JPGファイル、TIFFファイル、PDFファイル、GIFファイル、PNDファイル、BMPファイル、及び/又は、リモートソースの組み込みディスプレイ上に生成及び表示可能な画像を表示できる過去、現在、若しくは将来の任意のファイルであってよい。
【0033】
一実施例によれば、リモートソース116は、そのディスプレイシステムからの画像を車載制御システム106に転送するべく画像をキャプチャするための任意の数の処理、ソフトウェア、及び/又はハードウェアを含んでよい。例えば、リモートソース116は、リモートディスプレイ502上に現在又は最近表示された情報の画像を抽出(例えばスクリーンショット、「スクリーンダンプ」、スクリーンキャプチャ等)するソフトウェアプログラムを含んでよい。このソフトウェアは、リモートソースの情報抽出用ハードウェア装置(例えばメモリ装置、ディスプレイバッファ、ディスプレイドライババッファ、ディスプレイハードウェア等)を読み込むこと、及び/又は他の情報抽出用ソフトウェア(例えば、ディスプレイドライバソフトウェア、オペレーティングシステムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア等)を使用することを含む任意の数の方法で動作してよい。
【0034】
一実施例によれば、リモートソース116はまた、キャプチャされた画像をリモートソース116から車載制御システム106まで転送する通信ソフトウェアを有してよい。キャプチャ画像の転送を行う通信ソフトウェアは、当該画像キャプチャソフトウェアに統合されてもよく、相対的に分離されたソフトウェアとしてもよい。リモートソース116のソフトウェア及び/又は制御システム106のソフトウェアは、処理システムが画像のキャプチャ・転送機能の動作を決定するべく使用する任意の数の変数を含んでよい。例えば、リモートソース116にロードされるソフトウェアには、リフレッシュレート変数(例えば、画像をキャプチャする頻度、画像を送信する頻度等)、キャプチャ変数(例えば、キャプチャすべきスクリーンの量、キャプチャが行われる解像度等)、及び転送変数(例えば、転送頻度、転送試行頻度、画像転送に伴い含められるメタ情報、転送前の画像圧縮の要否等)を使用するソフトウェアが含まれてよい。これらの変数は、リモートソース116が与えるユーザインタフェース、又は車載制御システム106が与えるユーザインタフェースを使用して変更又は編集してよい。例えば、車両内のユーザは、入力装置112、114、タッチスクリーンディスプレイ108、及び/又は音声認識によって当該通信及び表示の変数を編集できる。当該変数情報は、リモートソース116、車載制御システム106、又は双方のメモリ装置内に格納されてよい。変数情報は、プロファイル情報としてリモートソース116又は車載制御システム106内に(例えば、表示プロファイル、通信プロファイル等内に)格納されてよい。プロファイル情報は、不揮発性メモリ(例えば、図4の不揮発性メモリ142等)に格納されて、車載制御システム106がディスプレイ再現モード動作に入るたびごとに呼び出されてよい。」

エ 「【0048】
図8Aを参照すると、リモートソース116を説明するブロック図が示される。リモートソース116は、画像又は画像データ804を制御システム106に送信するほかに当該画像を記述又は補完するメタ情報も送信する。制御システム106は、受信されたメタ情報806を使用して、受信された画像を表示するほかに出力タスクも行う。メタ情報806は受信されるとメモリ装置132に格納される。受信の後、データ処理システム122は、メタ情報806を処理して出力タスクを行う。出力タスクは、ディスプレイ出力タスク及びオーディオ出力タスクを含む幅広いバリエーションの出力タスクであってよい。メタ情報806は、グラフィクス、テキスト、音声であってよい。また、命令、画像若しくはビットマップ座標、構文解析されるプログラムコード若しくは命令、機能入力、又は、受信されたビットマップの表示を補完するべく処理、読み取り、出力、若しくは格納される他の任意の形態であってよい。例えば、メタ情報806は、ナビゲーション支援グラフィクスを表示させる命令、ナビゲーション支援若しくはオーバレイのグラフィクス自身、音声ナビゲーション命令を生成させるコンピュータ命令、方向指示器を生成するコード等であってよい。メタ情報806は、ビットマップを補完可能な任意のデータ又は情報であってよい。メタ情報806は、(図8Aに示されるように)ビットマップデータ804とは別個に送信されてよく、又はビットマップに組み込まれるか若しくは含められてよい。リモートソース116から送信され車載制御システム106に受信されたメタ情報806はまた、他の任意のタイプの情報、データ、又は出力に処理又は変換されてよい。例えば、リモートソース116から通信装置802を介して車載制御システム106に送信される音声情報は、車載制御システム106の出力ディスプレイ108上に示されるビットマップ情報に変換されてよい。一実施例によれば、PNDは、Bluetoothを使用して車載制御システム106に接続されてよい。また、車載制御システム106へのストリーミング音声命令を含むBluetoothデータを送信してよい。車載制御システム106(及びその処理要素)は、かかる受信されたストリーミング音声命令を、ディスプレイ上に表示されるビットマップデータに変換してよい。例えば、PNDは、「100番通りで右折して下さい」というストリーミング音声命令を車載制御システム106に送信してよい。次に車載制御システム106は、かかる命令を100番通りでの右折を示す矢印に変換し、車載制御システム106の出力ディスプレイ108上にオーバレイ及び/又は他の表示をする。」

オ 「【0054】
図10Bを参照すると、一実施例に係る、リモートソースから受信された画像を車両制御システムへ送信する処理1050が示される。リモートソースは、車両制御システムからコマンド又は要求信号を受信する(ステップ1052)。リモートソースはまた(又はその代わりに)、車両制御システムから表示属性を受信する(ステップ1054)。リモートソースは、受信されたコマンド、要求、及び/又は属性を使用して、車両制御システムのグラフィクス能力に関連する決定を行う(ステップ1056)。この決定は、車両制御システムの解像度、車両制御システムのスクリーンサイズ、要求画像サイズ、画像の使用、及び/又は車両ディスプレイシステムの要求されたリフレッシュレートのいずれかに関連してよい。リモートソースは例えば、車両制御システムへの送信用の任意画像のクロップ、リサイズ、鮮明化、アンチエイリアス、コントラスト変更等を行うための車両制御システム表示サイズに関連する表示属性を使用してよい。
【0055】
図10Bをさらに参照すると、処理1050が示される。これは、受信された表示属性に基づいてグラフィクス出力を調整するステップ(ステップ1058)を含む。リモートソースが生成した任意画像を調整するだけでなく、リモートソースはまた(又はその代わりに)、車両制御システムの表示属性に基づいてリモートソースの実際のグラフィクス出力を調整する。処理1050はまた(又はその代わりに)、車両制御システムの決定されたグラフィクス能力に基づいてグラフィクス出力を調整するステップ(ステップ1060)を含んでよい。
【0056】
様々な実施例によれば、グラフィクス出力を調整することは、生成されてリモートソースのディスプレイに与えられるグラフィクス出力を実際に調整することを含んでよい。例えば、リモートソースのディスプレイ上のリモートソースによって「演算量削減(reduced complexity)」ディスプレイ又は「ラージテキスト」ディスプレイが生成及び出力されてよい。グラフィクス出力がひとたび調整されると、画像(例えば、リモートソースのグラフィクス出力の画像)が車両制御システムに送信される(ステップ1062)。」

カ 「【0059】
図12を参照すると、一実施例に係るディスプレイ再現システム1200のブロック図が示される。第1ディスプレイ部分1204及び第2ディスプレイ部分1206を有する携帯装置ディスプレイ1202が示される。携帯装置は一般に、1つ以上の携帯ディスプレイ部分の画像を、再現用の車両制御システム及び/又はディスプレイシステム1208に送信する。
【0060】
図12に示される実施例によれば、下側又は周縁のディスプレイ部分1210のみが再現用車両ディスプレイ1208に送信される。1つのディスプレイ部分のみが車両ディスプレイ1208上に再現される場合でも、携帯装置上に示されるディスプレイ全体1202を表す画像が車両システムに送信されてよい。画像と共に車両システムに送信されるチェックビット、コマンド、又は他のコードが、画像のどの部分を再現すべきか示してよい。他実施例によれば、車両ディスプレイ1208上の再現のための部分のみが、携帯装置ディスプレイ1202から車両ディスプレイ1208へ送信されてよい。車両システムは、車両ディスプレイサイズ、解像度、ディスプレイ再現に寄与する車両ディスプレイサイズ、又は、車両ディスプレイ1208の属性を記述するための他の情報の通知を携帯装置に送信してよい。
・・・
【0064】
ここで図13を参照すると、一実施例に係る、携帯装置1302の機能を承継するための及び/又は携帯装置1302に機能を与えるための車両制御システム1300のブロック図が示される。携帯装置1302及び/又は車両制御システム1300の機能は変更することができる。携帯装置1302の機能には運転時に操作するには複雑なものもある。携帯装置1302の他の機能は、車両の移動中に操作するには適切でない急速な変化又は詳細な画像を生成及び/又は表示するかもしれない。さらに、携帯装置1302の機能には、車両制御システム1300上で通常は利用可能でないもの及びその逆のものがあり得る。携帯装置1302及び/又は車両制御システム1300は、他の装置の機能を利用してよい。
・・・
【0077】
携帯装置1302の接続アプリケーション1330が車両制御システム1300によって利用される。例えば、TCP/IPスタック、通信プロトコル要素、セキュリティソフトウェア、暗号解読アルゴリズム、ブラウザソフトウェア、又は通信若しくは通信ソフトウェアが車両制御システム1300によって利用されて、車両制御システム通信タスクが実行され及び/又は車両制御システム1300へ転送するための情報が取得される。
・・・
【0082】
携帯装置1302のウェブサービス1340が車両制御システム1300によって利用されて、オンライン通信及び/又は情報受信の提供、情報の構文解析、情報の表示等が行われる。
・・・
【0088】
携帯装置1300の通常のディスプレイ及び/又はメニューモードがディスプレイ再現等にとって望ましくない場合は、携帯装置1302は、通常動作モードから車両動作モードへ切り替えてよい。車両動作モードは、リモートソース上に通常示される画像よりも車両ディスプレイ上での再現及び/又は拡大に適切な画像をリモートソースが生成、表示、及び/又は与えるモードを含む。」

キ 「【0093】
図18を参照すると、一実施例に係る、様々なリモートソースとのデータ接続を有する制御システム106が示される。例えば、制御システム106は、携帯電話144、PDA146、メディアプレーヤ148、PND150等とのデータ接続を確立してよい。制御システム106は、図3の通信装置を使用する複数のリモートソースとの同時データ接続を確立してよい。例えば、制御システム106は、携帯電話144及びメディアプレーヤ148との同時データ接続を確立してよい。様々な実施例によれば、制御システム106は、任意の組み合わせ及び/又は数のリモートソースとの同時データ接続を確立してよい。制御システム106は、データ処理システム及び/又は通信装置を使用して車両制御システム106と複数のリモートソースとの通信を制御してよい。接続されたリモートソースは、車両制御システム106へ又は車両制御システム106から直接データを送信してよい。車両制御システム106はまた、ネットワークゲートウェイ又はルータとして使用されてよく、車両制御システム106に接続された1つのリモートソースから他のリモートソースへ情報をルーティングしてよい。」

2 引用発明、引用文献1記載事項の認定
上記1 アの【0019】には「車載制御システム106はまた、通信リンク118を介してリモートソース116から・・・データを受信する。」という記載が、また上記1 キの【0093】には「制御システム106は、リモートソースと接続を確立してもよい」「接続されたリモートソースは、車両制御システム106へ・・・データを送信してよい。」という記載がある。
これらはいずれも車両制御システム106または車載制御システム106がリモートソース116から送信されるデータを受信することを開示するものといえ、「車載制御システム106」と「車両制御システム106」は同じ事項を指すものといえる。
この点を踏まえると、上記1 ア〜オによれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。引用発明の各構成は、括弧内の【】で示す段落番号の記載を根拠としており、符号a〜b4を用いて、以下、構成a〜b4と称する。

(引用発明)
a リモートソースは1つ以上のアプリケーションを実行し、かかるアプリケーションに関連してリモートソース上に表示された画像は車両制御システムに送信されるものであって(【0015】)、リモートソース116は、インターネット又は他の様々なリモートソースに接続可能な1つ以上の携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ナビゲーション装置(PND)であってよく、処理装置を有し(【0031】)、リモートソース116は、第1通信装置によってインターネットに接続する一方で、第2通信装置によって制御システムと通信するものであり(【0031】)、
b1 車載(車両)制御システム106は、通信装置120を含み、通信装置120はリモートソース116との通信リンク118を確立するものであり(【0020】、【0021】)、車載(車両)制御メディアシステム106は、例えばBluetooth通信プロトコルによって、無線通信リンクを確立し(【0021】)、リモートソース116は、通信リンク118を介して車載(車両)制御システム106と連動するものであって、(【0031】)
b2 リモートソース116は、自身のディスプレイに出力するべくグラフィックを生成し、表示されたグラフィックの画像を制御システム106に通信することができ、画像は、ビットマップであってよく(【0032】)、リモートソース116はまた、キャプチャされた画像をリモートソース116から車載(車両)制御システム106まで転送する通信ソフトウェアを有し(【0034】)、
b21 リモートソースは、車両制御システムから表示属性を受信し、受信された属性を使用して、車両制御システムのグラフィックス能力に関連する決定を行い、この決定は、車両制御システムの解像度、車両制御システムのスクリーンサイズに関連してよく、リモートソースは車両制御システムの表示属性に基づいてリモートソースの実際のグラフィックス出力を調整し、グラフィックス出力を調整することは、生成されてリモートソースのディスプレイに与えられるグラフィックス出力を実際に調整することを含んでおり、グラフィックス出力が調整されると、リモートソースのグラフィックス出力の画像が車載制御システムに送信されるものであり(【0054】〜【0056】)、
b23 リモートソース116は、そのディスプレイシステムからの画像を車載(車両)制御システム106に転送するべく画像をキャプチャするためのソフトウェア、例えば、リモートディスプレイ502上に表示された情報の画像を抽出(例えばスクリーンショット、「スクリーンダンプ」、スクリーンキャプチャ等)するソフトウェアプログラムを含んでよく、このソフトウェアは、リモートソースの情報抽出用ハードウェア装置(例えばディスプレイドライババッファ等)を読み込むものであり、情報抽出用ソフトウェア(例えばディスプレイドライバ)を使用するものであり(【0033】)、
b3、b4 リモートソース116は、画像又は画像データを制御システム106に送信するほかに画像を記述するメタ情報も送信するものであり、制御システムは受信したメタ情報を使用して、受信された画像を表示するほかに出力タスクも行うものであり(【0048】)、
メタ情報はグラフィックス、画像若しくはビットマップ、構文解析されるプログラムコード若しくは命令であってよく、メタ情報はビットマップに組み込まれるか含められてよい、(【0048】)
a リモートソース。

また、上記1 カによれば、引用文献1には、次の事項(以下、「引用文献1記載事項」という)が記載されているものと認められる。
(引用文献1記載事項)
携帯装置は携帯ディスプレイ部分の画像を車両制御システムに送信するものであり、携帯装置上に示されるディスプレイ部分全体が車両システムに送信されるものであり(【0059】、【0060】)、
携帯装置1302の接続アプリケーション1330、例えば、ブラウザソフトウェアが車両制御システム1300によって利用されて、車両制御システム1300へ転送するための情報が取得され(【0077】)、
携帯装置1302のウェブサービス1340が車両制御システム1300によって利用されて、オンライン通信及び情報受信の提供、情報の表示等が行われ(【0082】)、
携帯装置1302は、通常動作モードから車両動作モードへ切り替えてよく、車両動作モードは、リモートソース上に通常示される画像よりも車両ディスプレイ上での再現及び/又は拡大に適切な画像をリモートソースが生成、表示、及び/又は与えるモードを含むこと(【0088】)。

第4 本件発明と引用発明との対比及び判断
1 次に、本件発明と引用発明とを対比する。

ア 構成A、A1、A2について
引用発明の構成aの「リモートソース116」は、「処理装置」を有する「携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ナビゲーション装置(PND)」であり、「アプリケーションを実行」することから、本件発明の「命令セットを実行するためのプロセッサ」「を含」む「モバイル装置」に対応する。
次に、引用発明の構成b2、b23にあるように、リモートソース116は通信ソフトウェアプログラムを含んでいることから、本件発明の「命令セットを保存する」「媒体」を含んでいるといえる。
また、引用発明の構成aによれば、該リモートソースは「1つ以上のアプリケーションを実行し、かかるアプリケーションに関連してリモートソース上に表示された画像は車両制御システムに送信される」ことから、リモートソースは車両制御システムに対応して存在しており、アプリケーションを実行し、該アプリケーションに関連する画像を車両制御システムに送信するといえ、車両制御システムに対応するアプリケーションを実行しているといえる。さらに、当該車両制御システムはリモートソースに対して「外部のシステム」であるといえる。
これらを総合すると、該リモートソースは、本件発明と「外部システムに対応する」「モバイル装置」であり、「外部システムに対応する」「アプリケーションを実行するモバイル装置」である点で共通する。
ただし、本件発明は、モバイル装置が「ウェブブラウザにおいてウェブベースアプリケーションを実行する」ものであり、命令セットを保存する媒体として「非一過性」の媒体を含むのに対して、引用発明は、リモートソースが「ウェブブラウザにおいてウェブベースアプリケーションを実行する」ことを特定しておらず、ソフトウェアを含む「非一過性」の媒体を含むことを特定していない点で相違する。

イ 構成B、B1について
引用発明の構成b1の車両制御システム106は、リモートソース116との通信リンク118をBluetooth通信プロトコルによって確立し、引用発明の構成b1のリモートソース116は、通信リンクを介して車両制御システム106と連動することから、リモートソース116は、リモートソースと車両制御システムとの間で該連動を行うための命令を備えているといえる。
そうすると、本件発明と引用発明とは、モバイル装置が「前記モバイル装置と前記外部システムとの間の」処理を行う命令を含む点で共通する。
ただし、モバイル装置が「前記モバイル装置と前記外部システムとの間の」処理を行う命令を含むことに関して、本件発明は、モバイル装置は「前記モバイル装置と前記外部システムとの間の第1の通信リンクを確立する命令」を含むのに対して、引用発明は、リモートソースは該通信リンクを確立する命令を含むことは特定されていない点で相違する。

ウ 構成B、B2について
引用発明の構成aの「リモートソース」が「1つ以上のアプリケーションを実行し、かかるアプリケーションに関連して」「表示された画像は車両制御システムに送信される」ことを踏まえると、引用発明の構成b2の「リモートソース116」は、リモートソースのディスプレイに出力すべくグラフィックを生成することから、リモートソース116の命令セットは所定のアプリケーションに関連するコンテンツをレンダリングする命令を含むものといえる。
そうすると、引用発明の該「命令セット」は、本件発明の構成B2と「モバイル装置において」所定のアプリケーションに関連する「コンテンツをレンダリングする命令」「を含む」点で共通するといえる。
ただし、本件発明における「コンテンツをレンダリングする命令」は「特定のウェブベースアプリケーションに対応する」コンテンツをレンダリングする命令であるのに対して、引用発明は特定のウェブベースアプリケーションに対応するコンテンツをレンダリングする命令とは特定がなされていない点で相違する。

エ 構成B2、B21〜B23について
まず、引用発明の構成b2、b21、b23の「リモートソース」について、構成b2のように「リモートソース116は、自身のディスプレイに出力すべくグラフィックスを生成し、表示されたグラフィックの画像はビットマップでよ」く、構成b21のように、「車両制御システムの解像度に」「関連して」「リモートソースのディスプレイに与えられるグラフィック出力を調整する」ものであり、構成b23のように、リモートディスプレイ上に表示された情報の画像を抽出するソフトウェアにおいて、リモートソースのディスプレイドライババッファを読み込むソフトウェアを使用するものである。
そうすると、上記リモートソースは、自身のディスプレイドライババッファに、車両制御システムの解像度に関連して調整されたグラフィック画像に対応するビットマップ情報を出力し、出力したビットマップ情報を読み出すものといえる。
ここで、上記ディスプレイドライババッファに車両制御システムの解像度に関連して調整されたグラフィック画像に対応するビットマップ情報を出力することから、当該ディスプレイドライババッファには、車両制御システムの解像度に対応するビットマップ情報を保持できるだけの領域が確保されており、この領域はグラフィックを生成する過程で生成されるものといえる。

以上のことから、引用発明の構成b2を踏まえた構成b21、b23における「リモートソース」は、本件発明の構成B21およびB23と、「外部システムに対して適切な解像度により」「スクリーンビットマップを含むスクリーンバッファを生成することを含む」「レンダリングする」点で共通する。
ただし、生成されるスクリーンバッファに含まれる情報が、本件発明の構成B23では、「フルスクリーンビットマップまたはベクトルコマンドのセットのうちの1つ」であるのに対して、引用発明の構成b2を踏まえた構成b23では、「フルスクリーンビットマップ」であるかどうかは特定されておらず、また「ベクトルコマンドのセット」ではない点で相違する。

さらに、本件発明は構成B22に特定されるように「モバイル装置で実行されるウェブブラウザを使用して」レンダリングするのに対して、引用発明はウェブブラウザを使用してレンダリングするものではない点で相違する。

オ 構成B、B3、B4について
引用発明の構成b3、b4のリモートソース116は、制御システム106に対して画像のほかに画像を記述するメタ情報を送信するものであって、メタ情報はビットマップやプログラムコード若しくは命令を含み、また、当該メタ情報はビットマップに組み込まれるか若しくは含まれてよいことから、プログラムコード若しくは命令を含むメタ情報を、構成b2、b23におけるディスプレイドライババッファのビットマップに組み込むための処理が行われているといえる。
ここで、上記「メタ情報」を組み込んだ上記「ビットマップ」は、プログラムコード若しくは命令を含むことから、コマンドでもあるといえる。

以上のことから、上記「メタ情報」を上記「ビットマップ」に組み込むための処理は、本件発明の構成B3の「スクリーンバッファ」を「ホストコマンドに符号化する」ことに相当する。

また、上記「ビットマップ」およびこれに組み込まれた「メタ情報」を送信することは、本件発明の構成B4の「ホストコマンドを、前記第1の通信リンクを介して表示のために前記外部システムへと送信すること」に相当する。
さらに、引用発明は、当該「ホストコマンドを符号化」し、「送信する」ための命令を含む命令セットを含むものといえる。

(2)一致点・相違点の認定
以上の(1)ア〜オの対比に基づき、本件発明と上記引用発明とを比較すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

(一致点)
A’ 外部システムに対応するアプリケーションを実行するモバイル装置であって、該モバイル装置は、
A1 命令セットを実行するためのプロセッサと、
A2’ 前記命令セットを保存する媒体とを含み、
B 該命令セットは、
B1’ 前記モバイル装置と前記外部システムとの間の処理を行う命令と、
B2’ 前記モバイル装置において、所定のアプリケーションに対応するコンテンツをレンダリングする命令であって、前記レンダリングは、
B21 前記外部システムに対して適切な解像度により
B23’ ビットマップを含むスクリーンバッファを生成することを含む、
B2’ レンダリングする命令と、
B3 前記スクリーンバッファをホストコマンドに符号化する命令と、
B4 前記ホストコマンドを、前記第1の通信リンクを介して表示のために前記外部システムへ送る命令
B とを含む
A’ モバイル装置。

(相違点1)
外部システムに対応するアプリケーションを実行するモバイル装置であって、前記モバイル装置において、所定のアプリケーションに対応するコンテンツをレンダリングするにあたって、
本件発明は、「ウェブブラウザにおいてウェブベースアプリケーションを実行する」ものであって、「特定のウェブベースアプリケーションに対応する」コンテンツを「モバイル装置上で実行されるウェブブラウザを使用して」レンダリングを行うのに対して、
引用発明は、「ウェブブラウザにおいてウェブベースアプリケーションを実行する」という特定がされておらず、「特定のウェブベースアプリケーションに対応する」コンテンツを「モバイル装置上で実行されるウェブブラウザを使用して」レンダリングするものではない点。

(相違点2)
「命令セットを保存する」「媒体」が、本件発明においては「非一過性の媒体」であるのに対して、引用発明においては非一過性の媒体である旨の特定がされていない点。

(相違点3)
モバイル装置と外部システムとの間の処理を行う命令を含む命令セットを含む「モバイル装置」について、本件発明においてはモバイル装置が「前記モバイル装置との前記外部システムとの間の第1の通信リンクを確立する命令」を含んでいるのに対して、引用発明においてはリモートソースがリモートソースと車両制御システムとの間の第1の通信リンクを確立する命令を含むことは特定されていない点。

(相違点4)
生成されるスクリーンバッファに含まれる情報が、本件発明は「フルスクリーンビットマップまたはベクトルコマンドのセットのうちの1つ」であるのに対して、引用発明は「フルスクリーンビットマップ」であるかどうかは特定されておらず、また「ベクトルコマンドのセット」ではない点。

(3)相違点に対する判断
ア 相違点1および4について
上記引用文献1記載事項によれば、
携帯装置のディスプレイに画像が表示されるものであって、最終的に当該情報が車両制御システムに送信されるものにおいて、ブラウザソフトウェアが車両制御システム1300によって利用されて車両制御システム1300へ転送するための情報が取得されるものといえる。
ここで、携帯装置1302のウェブサービス1340が車両制御システム1300によって利用されて情報の表示が行われることから、携帯装置1302のウェブサービス1340が得た情報は、まずブラウザソフトウェアによって表示され、その後ブラウザソフトウェアから車両制御システム1300に転送されるものといえる。
そうすると、ウェブサービス1340はブラウザによって実行され、表示される情報はブラウザによってレンダリングされることになり、引用文献1記載事項における「ブラウザソフトウェア」、「ウェブサービス1340」、「情報」は、それぞれ、本件発明の「ウェブブラウザ」、「ウェブブラウザにおいて」実行される「ウェブアプリケーション」、「特定のウェブアプリケーションに対応するコンテンツ」に相当し、引用文献1記載事項は「ウェブブラウザにおいてウェブアプリケーションを実行する」ものであって、「特定のウェブベースアプリケーションに対応する」コンテンツを「モバイル装置上で実行されるウェブブラウザを使用して」レンダリングを行うことを含んでいるが、これは本件発明が備える上記相違点1の構成に他ならない。

ところで、引用文献1の段落【0015】には「図面を一般的に参照すると、リモートソース上に生成及び表示された表示を再現又は複製するべく車両制御システムが与えられる。車両制御システムは、リモートソースとの(有線又は無線の)データ接続を確立する。リモートソースは1つ以上のアプリケーションを実行する。かかるアプリケーションに関連してリモートソース上に表示された画像は車両制御システムへ送信される。」と記載されている。
そうすると、上記引用発明と、上記引用文献1記載事項は、いずれも引用文献1に記載されており、リモートソース上に表示された表示を再現すべくリモートソース上に表示された画像を車両制御システムへ送信するという共通の技術事項に関する、別個の一実施形態として特定されるものである。
したがって、「携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ナビゲーション装置(PND)」である引用発明のリモートソースに対して、引用文献1記載事項における携帯装置に関する技術を適用することは自明の動機付けがあるというべきものである。

そして、引用発明の上記構成aのリモートソース上のアプリケーションに対して、上記引用文献記載1事項における携帯装置1302のウェブサービス1340およびブラウザソフトウェアを適用することで、上記相違点1に係る構成を備える発明を想到することは当業者にとって格別に困難なものではない。

このとき、引用文献1記載事項において、携帯装置上に示されるディスプレイ部分全体が車両システムに送信されるのであるから、ディスプレイ部分のフルスクリーンビットマップを取得することが示されているといえるが、これは上記相違点1に係る構成を備える発明が、「フルスクリーンビットマップ」、すなわち、上記相違点4の「フルスクリーンビットマップまたはベクトルコマンドのセットのうちの1つ」に係る構成をも備えるといえる。

イ 相違点2について
引用発明のリモートソース116の例である携帯電話や携帯情報端末において実行されるソフトウェアを構成する命令を記憶する媒体を、非一過性の媒体(例えばフラッシュROM)とすることは携帯電話や携帯情報端末における周知慣用技術にすぎず、引用発明のリモートソースにおけるソフトウェアを記憶する媒体を、例えばフラッシュROMのような非一過性の媒体とすることは当業者にとって適宜なし得る設計的事項に過ぎない。

ウ 相違点3について
Bluetooth通信プロトコルによって通信を行う複数の機器(装置)において、通信リンク(連結)を確立しようとする機器(装置)の1つがメッセージを送信してページングを行う際には、他の機器(装置)がメッセージをスキャンする処理を行い、他の機器においてもリンク(連結)を確立することは、Bluetooth通信プロトコルにおける技術的前提ないし周知慣用技術
(例えば、特開2001−189974号公報には、【0007】において、「ブルーツースは中央集中的な管理機能がない無線通信方法である。従ってある機器が他の機器との通信を成すためには照会を行って自分の電波がおよぶ領域にブルーツースを装着している機器があるかどうかを検査する。その機器は照会スキャンにより他のある機器から照会があるかどうかを調べ、これに対して照会応答機能でその照会に応答する。・・・連結を設定しようとする発信機器が特定住所を使用してページ過程を始める。この時着信機器は周期的にページスキャンを行う・・・ページスキャンを通じて自分がページされていることを認識した着信機器は直ちに連結を設定する過程を始め、正常の場合成功的に連結が設定される。」、特開2001−313650号公報には、【0004】〜【0006】には、「図19に、従来例の動作シーケンス例を示す。Bluetooth端末1(BT1)・・・Bluetooth端末(BT2)・・・BT1とBT2は最初はお互いにまだ識別情報も持たず、無線リンクが張られていない状態にある。ここでBT1はマスタデバイスとなるべく常時問い合わせ(Inquiry)メッセージを送信し続けることにより、他のBluetooth端末の検出を試みる(ステップS151)。一方、BT2はBT1のスレーブデバイスとなるべく、BT1からの問い合わせメッセージをスキャン(ステップU151)した後、問い合わせ応答メッセージを返信する(ステップU152)。BT1はBT2からの問い合わせ応答メッセージを受信すると(ステップS152)、BT2に対しページメッセージを送信することで無線リンク(LNK)の確立手順(ページング手順)に入る(ステップS153)。一方、BT2もBT1とのLNK確立のために、BT1からのページメッセージをスキャンする(ステップU153)、BT2がページスキャンに成功すると、BT1に対しページ応答メッセージを返信し(ステップU154)、LNKを確立する(ステップU155)。同様に、BT1でもBT2からのページ応答メッセージを受信し(ステップS154)、BT2との間のLNKが確立する(ステップS155)。これら一連の動作により、BT1とBT2間のLNKが確立する」と記載されている。)
に過ぎない。
そうすると、Bluetooth通信プロトコルによって通信を確立する引用発明においては、車載制御システム106が通信リンクを確立しようとする場合、リモートソース116においても通信リンクを確立するための処理を実行しているものといえ、リモートソース116は当該処理を行うためのソフトウェアないし命令を具備しているものといえる。
したがって、相違点3は引用発明における技術的前提にすぎず、実質的なものではないか、または引用発明においてその前提となるBluetooth通信プロトコルを用いた通信リンクの確立に関する周知慣用技術を適用することで、相違点3に関する構成を備えるようにすることは当業者にとって格別の困難なくなし得たものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は令和2年8月27日付け審判請求書にかかる手続補正書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2−2)引用文献の説明、及び引用文献に記載の発明と本願発明との対比」において、以下のような主張をしている。

「 本願請求項8に係る発明と引用文献1との対比
引用文献1は、「外部システムに対して適切な解像度によりモバイル装置上で実行されるウェブブラウザ」を開示していない。
本願の出願人は、引用文献1での「ブラウザソフトウェア」の唯一の言及が「車両制御システム1300」によって利用される(つまり、ターゲットによって利用される)接続アプリケーションに関するものであり、ターゲットの解像度に基づいたホストのそのようなソフトウェアのレンダリングや視覚化に関しては記載も示唆もされていない(引用文献1の段落0077、WO2008/079891の段落[0102]参照)
本願請求項1に係る発明及び請求項8に係る発明は、引用文献1に対して進歩性を有する発明であると思料する。」

そこで、上記主張について検討する。
上記(1)のエのとおり、引用発明のリモートソースは「車両制御システムの解像度に」「関連して」「リモートソースのディスプレイに与えられるグラフィック出力を調整する」するものであり、これは本件発明において「外部システムに対して適切な解像度により」レンダリングすること、すなわち上記主張における「ターゲットの解像度に基づいたホストのそのようなソフトウェアのレンダリングや視覚化」を行うことに相当する。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明は、引用発明および引用文献1記載事項ならびに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明および引用文献1記載事項ならびに周知技術に基づいて当業者が容易にすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 千葉 輝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-12-13 
結審通知日 2021-12-14 
審決日 2021-12-27 
出願番号 P2018-211677
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 川崎 優
新井 寛
発明の名称 分散型クロスプラットフォームユーザインタフェースおよびアプリケーション投写  
代理人 中尾 洋之  
代理人 舛谷 威志  

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