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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1385066
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-29 
確定日 2022-04-28 
事件の表示 特願2020−101827「熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置及び熱間圧延鋼帯の蛇行量測定方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年11月18日出願公開、特開2021−179414〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年5月14日に出願された特願2020−85279号の一部を令和2年6月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 6月22日 :手続補正書の提出
令和3年 5月26日付け:拒絶理由通知書
同年 6月29日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 8月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月31日:原査定の謄本の送達)
同年 9月29日 :審判請求書及び手続補正書の提出


第2 令和3年9月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月29日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年9月29日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前(令和3年6月29日に補正されたものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置であって、
隣り合う圧延機間に設置されたエッジ位置検出装置であって、走行する600℃〜1000℃の熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線カメラ、及び該赤外線カメラで撮像された赤外線の強度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部を備えたエッジ位置検出装置と、
該エッジ位置検出装置で検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置とを備えていることを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置であって、
隣り合う圧延機間に設置されたエッジ位置検出装置であって、走行する600℃〜1000℃の熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線の波長8〜14μmを用いる赤外線カメラ、及び該赤外線カメラで撮像された赤外線の強度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部を備えたエッジ位置検出装置と、
該エッジ位置検出装置で検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置とを備えていることを特徴とする熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置。」

2 本件補正の適否についての当審の判断
本件補正は、請求項1において、本件補正前の「赤外線カメラ」が「赤外線の波長8〜14μmを用いる」ものであることを限定したものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献等
ア 引用発明
(ア) 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開2017−32545号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。以下同様である。)

「【0001】
本発明は、板位置測定装置、板ずれ制御装置及び板ずれ計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板(strip)に対する工程環境は劣悪であるため、板の位置が肉眼で識別されることが困難である可能性がある。また、板に対する工程で板の位置が既定の位置を外れる場合、板ずれが発生する可能性がある。
【0003】
例えば、熱間圧延ラインで板の位置が肉眼で識別されることが困難であり、仕上げ圧延機の最終スタンドで板ずれが発生する場合は、通板安定性と製品の形状が急激に悪くなる可能性がある。
【0004】
したがって、熱間圧延ラインで板位置測定及び板ずれ制御は生産性と直結されるが、従来は、主に操業者の手動介入、即ち、操業者が肉眼で板の位置を識別し、圧延機のロールギャップのレベルを手動で変化させることにより、板ずれを制御した。よって、板位置測定の正確度及び板ずれ制御には限界があった。」

「【0015】
図1は、本発明の一実施例による板位置測定装置を示した図である。
【0016】
図1を参照すると、上記板位置測定装置100は、映像計測部110及びエッジ検出部120を含み、感知部130をさらに含むことができる。
【0017】
映像計測部110は、板(strip)10に対する映像情報を獲得することができる。例えば、上記映像計測部110は、熱間圧延ラインにおける最終スタンド20に進入した板10に対して板10の板ずれ値を測定するために最終スタンド20に設置されることができる。ここで、板10はコイル(coil)、鋼板(steel plate)などであり得る。
【0018】
例えば、上記映像計測部110は、4個のCCDカメラを介して最終スタンド20の入口側に一定距離離隔し、板10を既定の時間単位で連続撮影することができる。ここで、測定された板10の位置と最終スタンド20の位置は一致しなくてもよい。これは、追加のモデル予測制御技法などにより補償されることができる。
【0019】
エッジ検出部120は、映像計測部110によって獲得された映像情報に対して前処理(pre−filtering)過程を行って板10のエッジ(edge)を検出することができる。ここで、前処理過程は、映像の特定部分を選択的に抽出する映像フィルタリングにより具現されることができる。ここで、映像フィルタリングは、映像の雑音を除去し、関心のある視覚特徴を抽出し、映像再サンプリングを行う過程を意味する。」

「【0024】
したがって、上記エッジ検出部120は、1次的に板10のエッジ領域を検出し、検出されたエッジ領域に対して加重値を付与した後、2次的に板10のエッジ領域を検出することができる。例えば、上記エッジ検出部120は、加重値が付与された映像に対して閾値(threshold)方式又は微分方式を利用して上記板のエッジを検出することができる。
【0025】
これにより、板のエッジ部位に外乱が発生する場合にも正確にエッジ値が得られる。このように検出されたエッジ情報によって正確な鋼板の板ずれ値が計算されることができる。ここで、板ずれは、スラブ、バー、ストリップなどの素材が移動時に左右の幅方向に移動する現象を意味し、これは、圧延工程の通板不安定性を拡大させ、また、仕上げ圧延中にねじれを誘発し得る。」

「【0027】
また、上記感知部130は、板10の周囲に分布する流体を感知することができる。板10に対する工程環境で板10の周囲には水蒸気や冷却水などが分布し得る。このような水蒸気や冷却水などは光を散乱させる特性を有するため、エッジ検出部120のエッジ検出に歪曲を誘発し得る。上記感知部130によって感知された流体に関する情報は、エッジ検出部120の加重値の設定に反映されることができる。例えば、板10の周囲に水蒸気や冷却水などが多く分布する場合、エッジ検出部120が付与する加重値は大きくなり得る。これにより、水蒸気や冷却水によって板10のエッジ部位に外乱が発生する場合にもエッジ値のハンチングがない正確なエッジ値が計算されることができる。」

「【0029】
図2は、本発明の一実施例による板ずれ制御装置を示した図である。
【0030】
図2を参照すると、上記板ずれ制御装置200は、映像計測部210、エッジ検出部220及び制御部240を含み、感知部230をさらに含むことができる。
【0031】
映像計測部210は、熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側に備えられ、前のスタンド30を通って熱間仕上げ圧延最終スタンド20に進入する板10に対する映像情報を獲得することができる。上記映像計測部210によって板10の幅方向の動きが測定されることもできる。」

「【図1】



「【図2】



また、図1(b)及び図2の記載から、映像計測部(110、210)が板(10)の幅方向両端部の映像情報を獲得していることが分かる。

(イ) 引用発明の認定
上記(ア)の記載内容を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「映像計測部及びエッジ検出部120を含む板位置測定装置100であって、(【0016】)
上記映像計測部は、熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側に備えられ、前のスタンド30を通って熱間仕上げ圧延最終スタンド20に進入する板10に対する幅方向両端部の映像情報を獲得し、、板10の板ずれ値を測定するためのものであり、板10は鋼板であり、(【0017】、【0031】、【図1】(b)、【図2】)
エッジ検出部120は、映像計測部によって獲得された映像情報に対して前処理過程を行って板10のエッジを検出することができ、(【0019】)
このように検出されたエッジ情報によって正確な鋼板の板ずれ値を計算することができ、板ずれは、素材が移動時に左右の幅方向に移動する現象を意味する、(【0025】)
板位置測定装置100。」

イ 引用文献1に記載の技術
(ア) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された特開平5−296728号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば連続処理ラインを通板する鋼板の幅寸法を非接触で、かつ連続して測定する方法に関する。」

「【0008】
【課題を解決するための手段】このため本発明に係る鋼板の幅測定方法は、可視光線に代えて赤外線を利用することとし、すなわち鋼板が輻射する赤外線を検出し、その検出値から鋼板の幅を算出することを特徴とするものである。」

「【0010】図1は本発明法を実施し得る装置構成の一例を示している。図示のように、本実施例では通板する鋼板3の処理ライン上部に、その幅方向に沿って2台のリニアレイ式赤外線カメラ1、2を設置している。
【0011】該赤外線カメラ1、2は、鋼板3の幅方向を1次元として鋼板3が輻射する赤外線を検知し、その両端部を検出するもので、水平走査による板幅方向1次元の位置センサとして用いている。そして、この赤外線カメラ1、2には所定波長の赤外線を検出し得るようにカットオンフィルタが備えられているが、特に後述のように鋼板3の温度に対応させてそのフィルタが交換自在な構成となっている。なお、検出する波長は、水蒸気等の影響を受けにくい3〜5μmを基準とするのがより好ましい。」

「【図1】


(イ) 引用文献1に記載の技術の認定
上記(ア)の記載内容を総合すると、引用文献1には次の技術事項(以下「引用文献1に記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
[引用文献1に記載の技術]
「通板する鋼板3の処理ライン上部に、その幅方向に沿って2台のリニアレイ式赤外線カメラ1、2を設置し、(【0010】)
該赤外線カメラ1、2は、鋼板3の幅方向を1次元として鋼板3が輻射する赤外線を検知し、その両端部を検出する(【0011】)ようにした鋼板の幅測定方法(【0008】)であって、
検出する波長は、水蒸気等の影響を受けにくい3〜5μmを基準とする(【0011】)幅測定方法。」

ウ 技術常識1
(ア) 引用文献6の記載事項
新たに引用する、本願の出願日(令和2年5月14日)より前に発行された特表2017−504724号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板及びその製造方法に関する。」

「【0010】
本発明の他の一側面である溶接性及びバーリング性に優れた熱延鋼板の製造方法は、重量%で、C:0.03〜0.1%、Si:0.01〜1.2%、Mn:1.2〜1.9%、Al:0.01〜0.08%、Cr:0.005〜0.8%、Mo:0.01〜0.12%、P:0.01〜0.05%、S:0.001〜0.005%、N:0.001〜0.01%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含み、上記各成分が下記数式1を満たす鋼スラブを設ける段階と、上記鋼スラブを1200〜1300℃で再加熱する段階と、上記再加熱された鋼スラブを850〜1000℃の仕上げ圧延温度で熱間圧延して鋼板を得る段階と、上記熱間圧延された鋼板を500〜750℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で1次冷却する段階と、上記冷却された鋼板を4〜10秒間空冷する段階と、上記空冷された鋼板を300〜500℃の温度まで10〜100℃/秒の冷却速度で2次冷却する段階と、を含む。」

(イ) 技術常識1の認定
上記(ア)の記載内容からみても、次の技術事項は技術常識(以下「技術常識1」という。)であったものと認められる。
[技術常識1]
「熱延鋼板の製造方法において、熱間圧延の仕上げ圧延温度として850〜1000℃程度が通常想定し得るものであること。」

エ 技術常識2
(ア) 引用文献8の記載事項
新たに引用する、本願の出願日(令和2年5月14日)より前に発行された特開2012−81503号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、熱間粗圧延後の粗バーの先端や後端に形成された不定形部を切断したクロップが、粗バーから正常に分離し、落下したか否かを検出するクロップ落下検出方法に関するものである。」

「【0008】
如上に鑑み、本発明者らは、水蒸気やミストが充満する環境下においても、クロップを精度良く且つ容易に検出するために鋭意検討を重ねた結果、粗バーからの切断直後の高温のクロップは赤外線の放射が強く、その中でも波長が3.5μm〜14μm程度の遠赤外線については、上記近赤外線よりは放射が弱いものの、水蒸気に対する透過率が高いこと、及び光は波長より小さい粒径のミストによって散乱されにくいため、長波長である遠赤外線は粒径0.1μm〜5μmのミストに対する透過率が近赤外線に比べて非常に高いことに着目した。そして、クロップから放射される遠赤外線を検出して、クロップを熱画像として認識することができるようにすることにより、クロップの分離、落下の安定的な検出が可能であることはもちろん、クロップがクロップシュートに引っ掛って、複数のクロップがクロップシュート上に停滞、堆積した場合であってもその状態を容易に認識することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」

「【0017】
ここで、クロップ4の落下を検出する手段として上記遠赤外線検出装置7を用いたのは、既に述べたように、粗バーからの切断直後のクロップは未だに1000℃以上の温度を有しているが、このような高温の物体は赤外線の放射が強いためである。さらには、赤外線の中でも、波長3.5μm〜14μm、特に波長7.5μm〜13μm程度の遠赤外線は、近赤外線よりは放射が弱いものの、光は波長より小さい粒径のミストによって散乱されにくい特性があるため、水蒸気はもちろん、ミスト(粒径0.1μm〜5μm程度)に対する透過率が近赤外線に比べて非常に高いためである。
上述のように、上記クロップシャー3,3には常時又は間欠的にブレード用の冷却水8が噴射されており、またクロップシュート5にはクロップを強制的に押し流す水噴射装置12が設けられていて、必要に応じてあるいは常時水12aが噴射されることから、このような水が高温のクロップに接触した場合には、水蒸気が発生し、一部は大気により冷されてミスト化する。
このため、クロップシュート5及びその近傍には水蒸気やミスト14が充満するため、クロップの落下の確実且つ安定的な検出にはこれらの水蒸気やミストの影響を排除する必要がある。
【0018】
そこで、本発明の方法においては、クロップ4の落下を検出する手段として上述のような遠赤外線検出装置7を用い、たとえ放射強度が近赤外線よりも小さくても、水蒸気やミストをきわめて透過しやすい遠赤外線を検出することにより、水蒸気やミストが充満する環境下であってもクロップの落下を精度良く且つ容易に検出することができるようにしている。
なお、この実施の形態の遠赤外線検出装置7においては、7.5μm〜13μmの波長帯の遠赤外線を常時検出することができる検出素子を備えた放射温度計を用いているが、これは、この波長帯の遠赤外線については、粒径0.1μm〜5μm程度のミストに対する透過率が高い値で安定しており、比較的検出し易いためである。」

(イ) 技術常識2の認定
上記(ア)の記載内容からみても、次の技術事項は技術常識(以下「技術常識2」という。)であったものと認められる。
[技術常識2]
「赤外線の中でも、波長3.5μm〜14μm、特に波長7.5μm〜13μm程度の遠赤外線は、波長より小さい粒径のミストによって散乱されにくい特性があるため、水蒸気はもちろん、ミストに対する透過率が近赤外線に比べて非常に高いこと。」

オ 周知技術
(ア) 引用文献11の記載事項
新たに引用する、本願の出願日(令和2年5月14日)より前に発行された特開平10−318719号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延設備における鋼板の板幅及び蛇行を検出する板幅・蛇行検出方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延設備において、帯板鋼の板幅や蛇行量を正確に検出する技術は、熱間圧延装置の性能を維持する上で必要不可欠な技術である。
【0003】従来の帯板鋼の板幅及び蛇行を検出する装置は、図6に示すように、帯板鋼(圧延材)1の板幅方向のエッジ部(端部)2,3を撮影するため、端部2,3の位置にそれぞれ2台のカメラ4,5及びカメラ6,7を設置し、高温の圧延材1からの可視及び赤外領域の輻射をこれらのカメラ4,5及びカメラ6,7で検出している。カメラ4,5及びカメラ6,7で撮影された画像はアナログ画像信号に変換され、ケーブル9〜12により画像信号入力部13に伝送される。
【0004】画像信号入力部13ではデジタル信号に変換されて記憶され、記憶された画像信号の中から、エッジ検出処理部14で画像輝度のしきい値処理等の画像処理により、圧延材1の端部2,3の位置を検出する。求められた圧延材1の端部2,3とカメラ4,5及びカメラ6,7の設定位置とから、圧延材1の蛇行量や板幅を蛇行量・板幅演算処理部15で演算処理により求め、モニタ部16に検出量として与える。
【0005】求める蛇行量Dは、圧延材1の板幅方向の機械中心17と板幅中心18とのずれ量である。蛇行量Dと板幅Wはカメラ4,5及びカメラ6,7の設定条件であるカメラ4,5及びカメラ6,7の位置、傾き及びカメラ位置を起点とする端部2,3の位置の直線y1,y2,y3,y4から演算することができる。
【0006】上述した従来技術には、対象とする圧延材1が加熱され可視及び赤外領域で自発光する輻射をカメラ4,5及びカメラ6,7で検出する自発光方式と、圧延材1の下側に蛍光灯19等を入れた防水構造の光源20を配置し、圧延材1での自発光を除去する光学フィルタを通した画像から、光源20と圧延材1の境界で明暗の変化する部分を端部として検出するバックライト方式とがある。」

「【図6】



(イ) 引用文献12の記載事項
新たに引用する、本願の出願日(令和2年5月14日)より前に発行された特開2015−139810号公報(以下「引用文献12」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0021】
(冷間圧延設備)
まず、本発明の実施の形態にかかる冷間圧延設備について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる冷間圧延設備の一構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる冷間圧延設備1は、被圧延材の搬送経路の入口端に巻戻し機2を備え、出口端にテンションリール12を備える。また、冷間圧延設備1は、巻戻し機2とテンションリール12との間に、被圧延材の搬送経路に沿って、溶接機3と、ルーパ4と、蛇行修正装置5と、板幅計6と、加熱装置7と、タンデム圧延機8および形状測定部10と、走間シャー11とを備える。このタンデム圧延機8における最上流の圧延機8aには、形状制御アクチュエータ9が設けられている。また、冷間圧延設備1は、蛇行修正装置5および形状制御アクチュエータ9を制御する制御部13を備える。」

「【0033】
板幅計6は、加熱装置7による加熱前の鋼帯16の蛇行量を測定する蛇行量測定部としての機能を有する装置であり、図1に示すように、蛇行修正装置5と加熱装置7との間に配置される。板幅計6は、蛇行修正装置5の出側において鋼帯16の両エッジ部を検出し、検出した両エッジ部の各位置を算出する。ついで、板幅計6は、算出した両エッジ部の各位置をもとに、鋼帯16の板幅方向の中心位置を算出し、この中心位置と鋼帯16の搬送経路中心との差を、鋼帯16の蛇行量として算出する。また、板幅計6は、得られた両エッジ部の各位置をもとに、鋼帯16の板幅を算出する。板幅計6は、このような蛇行修正装置5の出側における鋼帯16の蛇行量および板幅の算出を連続的または所定時間毎に断続的に実行する。その都度、板幅計6は、算出した鋼帯16の蛇行量を、蛇行修正装置5の出側における鋼帯16の蛇行量の測定値として制御部13に送信する。且つ、板幅計6は、算出した鋼帯16の板幅を、蛇行修正装置5の出側における鋼帯16の板幅の測定値として加熱装置7に送信する。」

(ウ) 引用文献13の記載事項
新たに引用する、本願の出願日(令和2年5月14日)より前に発行された特開2007−167927号公報(以下「引用文献13」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、鋼帯などの金属材を、蛇行を抑制しつつ連続圧延するための圧延機及びこの圧延機を用いた金属材の圧延方法に関する。」

「【0010】
その1つは、図11に示すように圧延機の圧延荷重の左右差Pdfにより発生する左右ロール開度差Sdfを打ち消すように、比例制御でレベリング修正量SLを動かす蛇行制御(平行剛性制御)である。図11において、αは制御ゲイン(0〜1)、Mは平行剛性である。この蛇行制御技術は、圧延機の圧下装置(スクリュー、油圧シリンダ等)のレベリング修正量SLを、下記の(ii)式に従い蛇行を抑制する方向に制御する方法(一般にレベリング操作と呼ぶ)である。なお、下記(ii)〜(iv)式において、αは制御ゲイン、Pdfは圧延荷重の左右差、Mは平行剛性または左右剛性、Lは左右圧下装置間距離、ycは熱間圧延ラインの幅方向中心に対する熱延鋼帯の幅中央の蛇行量(以下、単に「蛇行量yc」という)を示す。平行剛性または左右剛性Mは、下記(iii)式に示すように、圧延荷重の左右差Pdfと圧下装置位置での左右ロール開度差Sdfの比で示す。また、蛇行量ycと圧延荷重の左右差との関係は下記(iv)式のように表される。つまり、平行剛性Mが高い圧延機では圧延荷重の左右差Pdf、または蛇行量ycによる左右ロール開度差Sdfが生じにくく、その結果、時間経過に伴う蛇行量ycの拡大も生じにくいことになる。この提案においては、熱延鋼帯の尾端部が当該スタンドの直前のスタンドを抜けてからの時間、または熱延鋼帯尾端部の当該スタンドの直前のスタンドからの距離が増大するほど、下記(ii)式に示す制御ゲインαを小さくなるように変更することにより、熱延鋼帯の尾端部が尻抜けする際の絞り込みを防止することを特徴としている(例えば、特許文献1参照)。」

「【0078】
上記のように、ロールチョック41、42間、およびロールチョック3、41間で楔積層ブロック9による突っ張り手段を形成するタイミングとしては、例えば、以下のようなものがあり得る。
(1)鋼帯の蛇行が検知されたとき
(2)圧延機に鋼帯が噛みこみ、圧延機の圧下位置が制御開始されたとき
(3)圧延機の前段の圧延機から鋼帯の尾端が抜けたとき
(4)その他のタイミング
上記(1)〜(3)のうち(1)の鋼帯の蛇行は、例えば幅計によるエッジ位置の検出又は差荷重の検出に基づき検知することができ、また、上記(3)は、例えば前段の圧延機のロードオフを検出することで検知することができ、これらの検出信号に基づいてアクチュエータ10が作動し、ロールチョック3、41間、およびロールチョック41、42間に楔積層ブロック9による突っ張り手段が形成される。」

「【0081】
金属材の蛇行の問題は、特に熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延において大きな問題となっており、したがって、本発明は、熱延鋼帯を製造するための熱間仕上圧延機及び熱間仕上圧延に適用した場合に特に大きな効果を発揮する。但し、これに限定されるものではなく、例えば、冷延鋼板を製造するための冷間圧延機及び冷間圧延、厚鋼板を得るための厚板圧延機及び厚板圧延、さらには鋼板以外の金属材の圧延機及び圧延など、各種の金属材の圧延機及び圧延に適用することができる。」

(エ) 周知技術の認定
上記(ア)から(ウ)の記載内容からみて、次の技術事項は周知(以下「周知技術」という。)であったものと認められる。
[周知技術]
「圧延設備において、圧延搬送される板部材の位置ずれ値として、圧延材のエッジ位置から蛇行量を算出すること。」

(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)a 引用発明の「熱間仕上げ圧延最終スタンド20」及び「前のスタンド30」の組み合わせは、本件補正発明の「複数の圧延機を備えた仕上圧延設備」に相当するから、引用発明の「鋼板であ」る「前のスタンド30を通って熱間仕上げ圧延最終スタンド20に進入する板10」は、本件補正発明の「複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯」に相当する。
b 本願の明細書の段落【0003】を参酌すると、「各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1から鋼帯10の幅方向の中心CL2までの距離を蛇行量δと呼ぶ。」と記載されている。引用発明においては、「検出されたエッジ情報によって正確な鋼板の板ずれ値を計算」しているところ、「板ずれは、素材が移動時に左右の幅方向に移動する現象を意味する」から、引用発明における「鋼板の板ずれ値」と本願発明における「蛇行量」は、「熱間圧延鋼帯の位置データ」である点で共通している。

(イ)a 引用発明の「熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側に備えられ」た「板10に対する幅方向両端部の映像情報を獲得」する「映像計測部」と、本件補正発明の「走行する600℃〜1000℃の熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線の波長8〜14μmを用いる赤外線カメラ」は、「走行する熱間圧延鋼帯」を「撮像する」「カメラ」である点で共通する。

b 引用発明の「映像計測部によって獲得された映像情報に対して前処理過程を行って板10のエッジを検出することができ」る「エッジ検出部120」と、本件補正発明の「該赤外線カメラで撮像された赤外線の強度分布から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部」は、「該カメラで撮像された画像から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部」である点で共通する。
c 上記a及びbの検討結果を踏まえると、引用発明の「映像計測部」と「エッジ検出部」の組み合わせは、本件補正発明の「エッジ位置検出装置」に相当する。
d 上記aからcの検討結果をまとめると、引用発明と本件補正発明は、「走行する熱間圧延鋼帯を撮像するカメラ、及び該カメラで撮像された画像から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部を備えたエッジ位置検出装置」を備える点で共通する。

(ウ) 引用発明においては、「検出されたエッジ情報によって正確な鋼板の板ずれ値を計算」しているから、引用発明が、映像計測部とエッジ検出部の組み合わせにより検出された板10の幅方向両端部のエッジ情報に基づいて前記板10の位置データを算出する算出装置を備えていることは明らかである。この点も踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「該エッジ位置検出装置で検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の位置データを算出する算出装置」を備えている点で共通する。

(エ) 引用発明の「板位置測定装置100」と、本件補正発明の「蛇行量測定装置」は、「熱間圧延鋼帯の位置データを測定する熱間圧延鋼帯の位置データ測定装置」である点で共通する。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アの対比分析の結果をまとめると、本願発明1と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。

[一致点]
「複数の圧延機を備えた仕上圧延設備で圧延される熱間圧延鋼帯の位置データを測定する熱間圧延鋼帯の位置データ測定装置であって、
走行する熱間圧延鋼帯を撮像するカメラ、及び該カメラで撮像された画像から前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部を備えたエッジ位置検出装置と、
該エッジ位置検出装置で検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の位置データを算出する算出装置とを備えている熱間圧延鋼帯の位置データ測定装置。」

[相違点]
相違点1
本件補正発明においては、「熱間圧延鋼帯の位置データ」が「熱間圧延鋼帯の蛇行量」であり、「位置データ測定装置」が「熱間圧延鋼帯の蛇行量を測定する熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置」であって、「算出装置」が「該エッジ位置検出装置で検出された前記熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置に基づいて前記熱間圧延鋼帯の蛇行量を算出する蛇行量算出装置」であるのに対し、引用発明においては、「熱間圧延鋼帯の位置データ」が、「鋼板の板ずれ値」であり、「熱間圧延鋼帯の蛇行量」であるとは明示されていない点。

相違点2
本件補正発明においては、「エッジ位置検出装置」が「隣り合う圧延機間に設置され」ているのに対し、引用発明においては、「映像計測部」は「熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側」(「前のスタンド30」との間)に備えられているものの、「エッジ検出部120」の配置は不明である点。

相違点3
本件補正発明においては、「走行する」「熱間圧延鋼帯」が「600℃〜1000℃」であるのに対し、引用発明においては、走行する「板10」の温度の限定はない点。

相違点4
本件補正発明においては、カメラは「熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線の波長8〜14μmを用いる赤外線カメラ」であり、これに応じて「エッジ位置検出部」も「赤外線カメラで撮像された赤外線の強度分布から」エッジ位置を検出するものであるのに対し、引用発明においては、赤外線カメラは用いられていない点。

(4) 判断
ア 相違点1について
相違点1について検討する。
a 本件補正発明の「蛇行量」について、本願の明細書及び図面には次の記載がある。
「【0003】
タンデム圧延では、図6に示すように、鋼帯10の幅方向の板厚分布、鋼帯10の幅方向の温度差、及び鋼帯10の幅方向の曲がりによって、鋼帯10が幅方向に移動する蛇行と呼ばれる現象が生じることがある。各圧延機F1〜F7の幅方向(鋼帯10の幅方向と同じ方向)の中心CL1から鋼帯10の幅方向の中心CL2までの距離を蛇行量δと呼ぶ。ここでは、鋼帯10が、各圧延機F1〜F7の操作側に蛇行している場合を「+」とし、各圧延機F1〜F7の駆動側に蛇行している場合を「−」とする。各圧延機F1〜F7の駆動側とは、搬送ロール(図示せず)のモータ(図示せず)に接続されている側を表し、各圧延機F1〜F7の操作側とは、駆動側と幅方向の反対側を表す。なお、図5及び図6における矢印は、圧延時における鋼帯10の進行方向を示している。」
「【図6】



b 上記記載から、本件補正発明の「蛇行量」とは、各圧延機の幅方向の中心から鋼帯の幅方向の中心までの距離により定義されたものであるといえる。

c 他方、引用発明において計算される「板ずれ値」は「素材が移動時に左右の幅方向に移動する」値であるから、板10が熱間圧延ラインを移動する際、当該移動方向に直交する方向(幅方向)に沿って板10の中心位置が変動する量を表すものであるところ、熱間圧延ラインの幅方向の中心位置を当該変動量の基準点として設定すれば、当該変動量は各圧延機の幅方向の中心から板10の幅方向の中心までの距離と等しくなることは明らかであるところ、各圧延機の幅方向の中心を板10が通るように設計することが最も自然であることから、基準点としては、各圧延機の幅方向の中心が、最も自然である。

d また、前記(2)オ(エ)において認定したように、「圧延設備において、圧延搬送される板部材の位置ずれ値として、圧延材のエッジ位置から蛇行量を算出すること。」は周知技術である。

e したがって、熱間仕上げ圧延行程の板位置測定装置である引用発明における熱間圧延鋼帯の位置データとして「蛇行量」を採用した点は、実質的な相違点ということはできない。

イ 相違点2について
相違点2について検討する。
引用発明の「エッジ検出部120」は、「熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側」(「前のスタンド30」との間)に備えられる「映像計測部によって獲得された映像情報に対して前処理過程を行って板10のエッジを検出する」ものであるから、「エッジ検出部120」を配置すべき箇所の候補として、協働する「映像計測部」と同じ「熱間仕上げ圧延最終スタンド20の入口側」を選択することは、当業者が当然に想定すべきものといえる。そして「エッジ検出部120」を設けるにあたり、配置箇所候補の内いずれを選択するかは、装置内のスペース容量や環境、装置外部との連絡などを考慮して決定されるべき設計事項にすぎない。したがって、相違点2は、格別のものではない。

ウ 相違点3について
相違点3について検討する。
前記(2)オ(イ)で述べたように、「熱延鋼板の製造方法において、熱間圧延の仕上げ圧延温度として850〜1000℃程度が通常想定し得るものであること。」は技術常識(技術常識1)であるから、相違点3に係る熱間圧延の仕上げ圧延温度の限定は、格別のものではない。

エ 相違点4について
相違点4について検討する。
引用発明の「板10のエッジを検出する」「エッジ検出部120」に換えて、前記(2)イ(イ)で認定した引用文献1に記載の技術における「鋼板3が輻射する赤外線を検知し、その両端部を検出する」「赤外線カメラ1、2」を採用する程度のことは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、前記(2)エ(イ)において認定したように「赤外線の中でも、波長3.5μm〜14μm、特に波長7.5μm〜13μm程度の遠赤外線は、波長より小さい粒径のミストによって散乱されにくい特性があるため、水蒸気はもちろん、ミストに対する透過率が近赤外線に比べて非常に高いこと。」は技術常識(技術常識2)であり、引用文献2においても「板10に対する工程環境で板10の周囲には水蒸気や冷却水などが分布し得る。このような水蒸気や冷却水などは光を散乱させる特性を有するため、エッジ検出部120のエッジ検出に歪曲を誘発し得る。」(段落【0027】)として、水蒸気や冷却水などがエッジ検出の妨害要因として認識されている点をふまえると、上記「赤外線カメラ1、2」を採用する際に、その検出波長域が波長8〜14μmのものを選択することは、当業者が容易に想到し得たものである。

オ 総合検討
前記相違点1から相違点4を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献1に記載の技術、周知技術、技術常識1及び技術常識2から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。

カ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
請求人は、審判請求書において次の主張をしている。
a 請求人の主張1
引用文献1の段落「0011」には、赤外線カメラについて「なお、検出する波長は、水蒸気等の影響を受けにくい3〜5μmを基準とするのがより好ましい。」との記載がある。
引用文献1に記載された赤外線カメラの赤外線の波長は3〜5μmであり、補正後の本願請求項1及び2に係る発明における「赤外線の波長4〜8μmを用いる赤外線カメラ」とは波長帯が異なる。
したがって、引用文献1に記載された発明によっては、補正後の本願請求項1及び2に係る発明の特有の効果である「蒸気で熱間圧延鋼帯のエッジが完全に覆われる場合であっても、高い測定精度で熱間圧延鋼帯のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる」という効果を奏しない。
よって、引用文献1は、補正後の本願請求項1及び2に係る発明の動機づけにはなり得ない。

b 請求人の主張2
引用文献2には、補正後の本願請求項1に係る発明の特徴的構成である「走行する600℃〜1000℃の熱間圧延鋼帯の表面から発せられる赤外線の強度分布を撮像する赤外線の波長4〜8μmを用いる赤外線カメラ、及び該赤外線カメラで撮像された赤外線の強度分布から熱間圧延鋼帯の幅方向両端部のエッジ位置を検出するエッジ位置検出部を備えたエッジ位置検出装置」という構成が記載されていない。
したがって、引用文献2に記載された発明によっては、補正後の本願請求項1及び2に係る発明の特有の効果である「蒸気で熱間圧延鋼帯のエッジが完全に覆われる場合であっても、高い測定精度で熱間圧延鋼帯のエッジ位置を適切かつ迅速に検出することができる」という効果を奏しない。
よって、引用文献2は、補正後の本願請求項1及び3に係る発明の動機づけにはなり得ない。

(イ) 請求人の主張の検討
請求人の上記主張は、結局のところ相違点3及び相違点4に関するものであると認められる。しかしながら、上記相違点3、4に係る本件補正発明の構成とすることついては、前記(4)ア(ウ)(エ)において説示したとおり、当業者が容易に想到し得たものであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。

(5) 本件補正の適否についての当審の判断のむすび
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下したので、本願の請求項1〜4に係る発明は、令和3年6月29日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)の本件補正前の請求項1に特定されるとおりである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

理由2(進歩性
本願発明は、引用文献1(特開平5−296728号公報)に記載された技術を引用文献2(特開2017−32545号公報)に記載された熱間圧延鋼帯の板位置測定装置に適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献2には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明の「赤外線カメラ」が「赤外線の波長8〜14μmを用いる」ものであるという限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2において説示したとおり、引用発明、引用文献1に記載の技術、周知技術、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献1に記載の技術、周知技術、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-28 
結審通知日 2022-03-01 
審決日 2022-03-14 
出願番号 P2020-101827
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
中塚 直樹
発明の名称 熱間圧延鋼帯の蛇行量測定装置及び熱間圧延鋼帯の蛇行量測定方法  
代理人 森 哲也  
代理人 廣瀬 一  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 宮坂 徹  

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