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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21V
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21V
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21V
審判 全部申し立て 特29条の2  F21V
管理番号 1385191
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-09 
確定日 2022-03-28 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6811809号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6811809号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜3〕について訂正することを認める。 特許第6811809号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6811809号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成27年4月28日に出願された特願2015−91870号(以下「原出願」という。)の一部を令和1年6月19日に新たな特許出願としたものであり、令和2年12月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年7月9日に特許異議申立人平位和也(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年10月12日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年12月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和4年1月20日に意見書を提出した。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すため当審が付与したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「光源ユニット」を「長尺状の光源ユニット」と、「照明器具」を「長尺状の照明器具」と、「前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」と訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に記載の「光源ユニット」を「長尺状の光源ユニット」と、「照明器具」を「長尺状の照明器具」と、「前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」と訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。

2 一群の請求項
本件訂正請求は、一群の請求項〔1〜3〕に対して請求されたものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
請求項1に記載の「光源ユニット」を「長尺状の光源ユニット」と、「照明器具」を「長尺状の照明器具」と、「前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」とする訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、「長尺状の光源ユニット」、「長尺状の照明器具」が記載されるとともに、「位置決め部」について放熱効果を担保するために光源ユニットのカバー側部と照明器具の開口縁部との間に隙間部を設けることが記載されている。よって、「長尺状の光源ユニット」、「長尺状の照明器具」及び「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を有する発明は、明細書に記載されている。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を引用する請求項3も、同様である。
(2)訂正事項2について
請求項2に記載の「光源ユニット」を「長尺状の光源ユニット」と、「照明器具」を「長尺状の照明器具」と、「前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」とする訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、「長尺状の光源ユニット」、「長尺状の照明器具」が記載されるとともに、「位置決め部」について放熱効果を担保するために光源ユニットのカバー側部と照明器具の開口縁部との間に隙間部を設けることが記載されている。よって、「長尺状の光源ユニット」、「長尺状の照明器具」及び「前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」を有する発明は、明細書に記載されている。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を引用する請求項3も、同様である。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜3〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
以上のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。
【請求項2】
長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットにおける前記取付部の側となる位置、或いは、前記照明器具における前記取付部と反対側の位置の少なくとも何れか一方に設けられ、前記光源ユニット或いは前記照明器具における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具と、
前記プレート部と前記底面部とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。
【請求項5】
一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具と、
前記プレート部と前記底面部とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。
【請求項6】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で、前記プレート部、又は前記光源ユニットにおける前記プレート部より前記底面部の側の位置、或いは、前記底面部、又は前記照明器具における前記底面部より前記プレート部の側の位置の少なくとも何れかに設けられ、前記プレート部或いは前記底面部における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項4又は請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部における前記底面部と対向する側の位置、或いは、前記底面部における前記プレート部と対向する側の位置の少なくとも何れか一方に設けられ、前記プレート部或いは前記底面部における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項5に記載の照明装置。」


第4 各甲号証の記載等
申立人は、特許異議申立書に添付して甲第1号証〜甲第4号証(以下「甲1」〜「甲4」という。)を提出した。
甲1:特開2013−80679号公報(公開日:平成25年5月2日)
甲2:特開2014−78426号公報(公開日:平成26年5月1日)
甲3:特開2014−11055号公報(公開日:平成26年1月20日 )
甲4:特願2014−249788号(特開2016−110933号公 報)(出願人:東芝ライテック株式会社、出願日:平成26年12 月10日、公開日:平成28年6月20日)
さらに、申立人は、令和4年1月20日の意見書に添付して参考資料A〜参考資料C(以下「参A」〜「参C」という。)を提出した。
参A:特開2011−142063号公報(公開日:平成23年7月21 日)
参B:特開2012−3993号公報(公開日:平成24年1月5日)
参C:特開2015−35274号公報(公開日:平成27年2月19日 )

1 甲1
(1)記載事項
原出願前に日本国内で頒布された甲1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付与したものである。
ア 明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光ダイオード(以下、LEDと称する。)等の発光素子を光源として、導光板を用いて照明を行う照明装置に関する。」
「【0012】
図1乃至図5に示すように、照明装置は、取付部材1と、光源部本体2とを備えている。取付部材1には、点灯装置3及び取付部4としてのアダプタガイドが配設されている。また、光源部本体2は、光源部5、導光板6、サポートシャーシ7、本体枠8及び複数の電気的補助部品が設けられた補助部品ユニット9を備えている。
【0013】
さらに、照明装置は、装置取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタA及び光源部2の点灯状態を制御する赤外線リモコン送信器Rcを備えている。このような照明装置は、略正方形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。これらの構成要素について順次説明する。
【0014】
取付部材1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から略正方形状に形成され、前面側が開放するように背面側が凸をなした装置本体であり、具体的にはシャーシである。略中央部には、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCb及びアダプタAに対向する後述する取付部4が配置される円形状の開口11が形成されている。
【0015】
また、取付部材1の対向する一辺側(図示上、左側)における開放縁部の2箇所には、鍵状に折曲され外側へ突出する係止受金具12がねじ等の固定手段によって取付けられている。一方、他辺側(図示上、右側)における開放縁部の2箇所には、この係止受金具12と対向するように、背面側へ突出する係止受金具13が同様に、ねじ等の固定手段によって取付けられている。
さらに、取付部材1の背面側には、スポンジ製のパッキンPが取付けられている。」
「【0032】
本体枠8は、ABS樹脂やポリカーボネート等の合成樹脂から作られていて、略正方形状であって前記導光板6の寸法より大きな枠状に形成されており、図5に示すように、側壁81と、この側壁81の下端部から内側に向かって斜め下方に延出し、さらに内側に向かって斜めに立ち上がる傾斜状部を有する底壁82とを備えている。また、底壁82には、複数のボス83が立設されており、このボス83には、サポートシャーシ7の取付片72がねじ止めされるようになっている。
【0033】
さらに、本体枠8の対向する一辺側(図示上、左側)における縁部の2箇所には、係止孔85aを有して外側へ突出する係止金具85がねじ等の固定手段によって取付けられている。一方、他辺側(図示上、右側)における縁部の2箇所には、この係止金具85と対向するように、係止金具86が取付けられている。この係止金具86は、クランプ金具であり、湾曲状に形成されてばね性を有しており、先端側には係止部86aを備えて本体枠8に回動可能に軸支されている。
【0034】
このような係止金具85、86は、前述の取付部材1に設けられた係止受金具12、13と対向するように配設されており、詳細を後述するように係止受金具12、13に係止されるようになっている。
なお、本実施形態においては、これら係止金具85、86及び係止受金具12、13によって係止手段が構成されている。」
「【0042】
まず、図3に示すように天井面Cに引掛けシーリングボディCbが設置されている。また、この引掛けシーリングボディCbには、アダプタAが電気的かつ機械的に接続されている。
【0043】
この状態で図6に示すように、取付部材1側をアダプタAに取付ける。具体的には、取付部材1における取付部4としてのアダプタガイドの係合口41をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口41に確実に係合するまで取付部材1を下方から手で押し上げて取付け操作を行う。この状態でアダプタAから導出されている電源コネクタCn4を点灯装置3の受電用コネクタCn1に接続する。
【0044】
次いで、この取付部材1に光源部本体2側を取付ける。図7に示すように、本体枠8の係止金具85における係止孔85aを取付部材1の鍵状の係止受金具12に挿通させ、係止金具85引掛けて支持する。その後、点灯装置3から導出されている給電用コネクタCn2と光源部5から導出されている受電用コネクタCn3とを接続する。この場合、図6に示すように点灯装置3から導出されている給電用コネクタCn2は、自重により下方に垂れ下るようになっているので、この給電用コネクタCn2と光源部5から導出されている受電用コネクタCn3との接続作業が容易となる。
【0045】
続いて、図8に示すように、光源部本体2を係止金具85側を支点として回動し、取付部材1の前面側を覆うように閉塞する。この状態で本体枠8に軸支されている係止金具86を回動し、係止部86aを背面側へ突出した係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合する。この状態が取付完了状態である(図2参照)。
【0046】
照明装置の取付状態では、アダプタAが取付部材1の開口11を挿通し、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口41に係止され、取付部材1の背面側に設けられたパッキンPが弾性変形し、取付部材1の背面側と天井面Cとの間に圧縮状態で介在されるようになる。したがって、照明装置は、アダプタAにがたつきなく、しっかりと係合し、安定して取付状態が保持される。
【0047】
また、照明装置を取外す場合には、概略的には、本体枠8に軸支されている係止金具86を回動して係止受金具13との係合を解き、光源部本体2を取付部材1から取外し、取付部材1の前面側を開放する。そして、アダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取付部材1を取外すことができる。
このように光源部本体2は、取付部材1の前面側に開閉可能に、かつ着脱可能に取付けられるようになっている。
【0048】
以上のような照明装置の取付状態において、点灯装置3は、取付部材1側に配設されている。このため、取付部材1に結合される光源部本体2側の重量が軽減され、係止手段を構成する係止金具85、86及び係止受金具12、13にかかる荷重負担が軽減され強度的に有利となる。」
「【0057】
また、上記実施形態においては、四角形状に形成された導光板を用い、発光面が略四角形状に形成される場合について説明したが、例えば、導光板を六角形や八角形等に形成し、これらの各辺に対応して発光素子を配置するとともに、本体枠を円形状に形成し、導光板の発光面が円形状に露出されるようにして、円形状の発光面が形成されるように構成することもできる。」
イ 図面
(ア)【図1】


(イ)【図3】


(ウ)【図4】


(エ)【図5】


(2)認定事項
ア 【0012】の「照明装置は、取付部材1と、光源部本体2とを備えている。」との記載、及び【0047】の「光源部本体2は、取付部材1の前面側に開閉可能に、かつ着脱可能に取付けられるようになっている。」との記載から、照明装置は、取付部材1と、該取付部材1の前面側に開閉可能に、かつ着脱可能に取付けられる光源部本体2とを備えていることが理解できる。また、図2及び5から、光源部本体2は、取付部材1の縁部に取り付けられるものであることが看取できる。
イ 【0012】の「取付部材1には、点灯装置3及び取付部4としてのアダプタガイドが配設されている。」との記載、段落【0013】の「照明装置は、装置取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタA及び光源部2の点灯状態を制御する赤外線リモコン送信器Rcを備えている。」との記載、及び【図3】等を参照すると、取付部材1は、取付部4としてのアダプタガイドが配設され、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAに取り付けられていることが理解できる。
ウ 【図3】から、取付部材1は、取付部4から水平に延びる平坦部と該平坦部の端部から前面側に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の端部から水平に延びる水平部と、該水平部の端部から垂直に延びる開放縁部を有する凹部形状であることが看取できる。
エ 【0032】の「本体枠8は、ABS樹脂やポリカーボネート等の合成樹脂から作られていて、略正方形状であって」及び図1、4からみて、本体枠8を有する取付部材1及び光源部本体2が略正方形状であることは明らかである。
オ 【0045】の「この状態で本体枠8に軸支されている係止金具86を回動し、係止部86aを背面側へ突出した係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合する。この状態が取付完了状態である(図2参照)。」との記載、及び【図5】等を参照すると、係止部86aを背面側へ突出した係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合することで、光源部本体2の本体枠8を取付部材1の係止受金具13の前面側の端部に当接させることが理解できる。

(3)甲1に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「略正方形状の取付部材1の縁部と、該取付部材1の前面側に開閉可能に、かつ着脱可能に取付けられる略正方形状の光源部本体2とを備え、
前記取付部材1は、
取付部4としてのアダプタガイドが配設され、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAに取り付けられ、
前記取付部4から水平に延びる平坦部と該平坦部の端部から前面側に傾斜する傾斜部と、該傾斜部の端部から水平に延びる水平部と、該水平部の端部から垂直に延びる開放縁部を有する凹部形状であり、
前記取付部材1の対向する一辺側における開放縁部の2箇所には、鍵状に折曲され外側へ突出する係止受金具12がねじ等の固定手段によって取付けられ、他辺側における開放縁部の2箇所には、この係止受金具12と対向するように、背面側へ突出する係止受金具13がねじ等の固定手段によって取付けられており、
前記光源部本体2は、
光源部5、導光板6、サポートシャーシ7、及び本体枠8を備え、
前記本体枠8の対向する一辺側における縁部の2箇所には、係止孔85aを有して外側へ突出する係止金具85がねじ等の固定手段によって取付けられ、他辺側における縁部の2箇所には、この係止金具85と対向するように、係止金具86が取付けられており、この係止金具86は、クランプ金具であり、湾曲状に形成されてばね性を有しており、先端側には係止部86aを備えて前記本体枠8に回動可能に軸支されるものであって、
前記取付部材1に前記光源部本体2側を取付ける際には、前記光源部本体2の前記本体枠8の前記係止金具85における係止孔85aを前記取付部材1の鍵状の前記係止受金具12に挿通させ、前記係止金具85を引掛けて支持し、続いて、前記光源部本体2を前記係止金具85側を支点として回動し、前記取付部材1の前面側を覆うように閉塞し、この状態で前記本体枠8に軸支されている前記係止金具86を回動し、前記係止部86aを背面側へ突出した前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合することで、前記光源部本体2の前記本体枠8を前記取付部材1の前記係止受金具13の前面側の端部に当接させる照明装置。」

2 甲2
原出願前に日本国内で頒布された甲2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)記載事項
ア 明細書
「【請求項1】
長尺状に形成された器具本体と、前記器具本体に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニットとを備え、
前記光源ユニットは、複数のLEDが実装されたLED基板と、前記複数のLEDが前記器具本体と反対側を向くようにして前記LED基板を前記器具本体に取り付けるための取付部材と、前記複数のLEDに点灯電力を供給する電源装置とを有し、
前記光源ユニットは、前記光源ユニットの幅方向における一端側を回動中心として回動させることで前記器具本体に取り付けられ、
前記電源装置は、前記光源ユニットの重心が前記光源ユニットの中心軸に対して回動側となるように配置されることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記器具本体の一面には、前記光源ユニットの少なくとも一部を収容するための矩形の収容凹部が前記器具本体の長手方向に沿って設けられており、
前記取付部材は、前記取付部材の幅方向における一端側に延出し且つ先端に引掛け部が設けられた係止板と、前記取付部材の幅方向における他端側に設けられた係止ばねとを有し、
前記収容凹部の幅方向における一端側の側面部には、前記係止板を挿通するための挿通孔が設けられ、前記収容凹部の幅方向における他端側には、前記係止ばねを係止するための係止部が設けられており、
前記係止板が前記挿通孔内に挿入され前記引掛け部が前記挿通孔の端縁に引っ掛けられて前記光源ユニットが前記器具本体に吊り下げられた状態から、前記係止板が前記挿通孔の端縁に当接し且つ前記係止ばねが前記係止部に係止した状態で前記係止板側を回動中心として前記光源ユニットが回動することで、前記光源ユニットが前記器具本体に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の照明器具。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関するものである。」
「【0012】
本実施形態の照明器具Aは、図1〜図4に示すように、天井直付け型の照明器具であり、吊ボルト(図示せず)を用いて天井材100に取り付けられる器具本体1と、器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2とを備える。
【0013】
器具本体1は、板金に曲げ加工を施すことで長尺且つ上面(天井材100との対向面)が開口する扁平な箱状に形成され、天井材100と反対側(つまり下側)には光源ユニット2を収容するための矩形の収容凹部11が器具本体1の全長に亘って設けられている。また、器具本体1の左右方向(幅方向)において収容凹部11の両側には、収容凹部11の開口端縁から延出し且つ外側に行くほど上側(天井材100側)に傾斜する傾斜面12,12がそれぞれ設けられている。また、収容凹部11の底面部111には、電線を通すための孔111aが前後方向(長手方向)に沿って複数(図2では5個)設けられており、さらに前後方向における両端寄りの位置に吊ボルトを通すための孔111bがそれぞれ2個ずつ設けられている。さらに、収容凹部11の左側の側面部112には、図4に示すように、矩形の挿通孔112aが器具本体1の前後方向における両端寄りの位置にそれぞれ設けられている。また、器具本体1の前後方向における両端部には、図2及び図3に示すように、エンドキャップ3がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
光源ユニット2は、図2に示すように、複数(図2では2個)のLED基板22と、LED基板22が取り付けられる取付部材21と、LED基板22を覆うようにして取付部材21に取り付けられるカバー部材23と、LED基板22に所定の点灯電力を供給する電源装置24と、端子台ブロック25とを有する。
【0015】
LED基板22は、前後方向に長い矩形板状に形成されたプリント基板221からなり、プリント基板221の下面には複数のLED(発光ダイオード)222が前後方向(長手方向)に沿って実装されている。また、一方(図2中の右側)のLED基板22の一端部(右端部)には、電源装置24との間を電気的に接続するためのコネクタ223が実装されている。このコネクタ223には電線(図示せず)が接続されており、この電線の端部を電源装置24に接続することでLED基板22と電源装置24とが電気的に接続される。また、各LED基板22において隣接するLED基板22と対向する端部には、電源供給用のコネクタ224がそれぞれ実装されている。そして、両LED基板22,22のコネクタ224,224を接続することで、一方(図2中の右側)のLED基板22から他方(図2中の左側)のLED基板22に電源を供給することができる。
【0016】
取付部材21は、板金に曲げ加工を施すことでU字状に形成され、長尺且つ矩形板状に形成された底面部211と、底面部211の左右方向(幅方向)における両端から上下方向(底面部211と直交する方向)に延出する一対の側面部212とで構成される。各側面部212の先端には、図1及び図5に示すように、互いに離れる方向に傾斜する傾斜部212aがそれぞれ全長に亘って設けられている。底面部211の前後方向(長手方向)における一端部(図2中の右端部)には、LED基板22と電源装置24とを電気的に接続する上記電線を通すための孔211aが設けられている。また、底面部211の前後方向における略中央には、底面部211の一部を上向きに突出させることで形成された矩形の凹部211bが設けられている。この凹部211bは、両LED基板22,22を取付部材21に取り付けた状態で、コネクタ224と取付部材21の底面部211との間の絶縁距離を確保するためのものである。なお、上述したLED基板22は、例えば取付部材21の底面部211の一部を切り起こすことで形成された係止爪(図示せず)により取付部材21に固定される。」
「【0020】
ここで、図7は上述した取付部材21の要部拡大図であり、本実施形態では、取付部材21を器具本体1に係止するための係止金具26及び係止ばね27が取付部材21に取り付けられている。係止金具26は、板金に曲げ加工を施すことで形成され、略矩形板状に形成された金具本体261の左端縁には、側方(左側)に延出する矩形板状の係止板262が設けられている。また、係止板262の先端には、係止板262と直交する方向(図7中の下方向)に延出する引掛け部262aが設けられている。さらに、金具本体261の右端縁には、係止ばね27を保持するための保持部263と、係止ばね27の一方の腕部272が係止される係止部264とが設けられている。
【0021】
係止ばね27は、線ばねをコイル状に巻回して形成された基端部271と、基端部271の両端から互いに離れる方向に延設された一対の腕部272,273とを有する。この係止ばね27は、基端部271が係止金具26の保持部263に保持され、さらに一方の腕部272が係止部264に係止された状態で係止金具26に取り付けられる。そして、これらの係止金具26及び係止ばね27は、図4に示すように、取付部材21の前後方向(長手方向)における両端寄りの位置に、取付ねじ200を用いてそれぞれ1組ずつ取り付けられる。なお、取付状態では、各係止ばね27の腕部273が、互いに離れる方向、つまり前後方向における外向きに延出するようにそれぞれ配置される(図4参照)。
【0022】
図5は光源ユニット2を器具本体1に吊り下げた状態の一部拡大図であり、器具本体1の収容凹部11の底面部111には、上述した係止ばね27の腕部273を係止するための係止金具28(係止部)が取り付けられている。この係止金具28は、図5及び図6に示すように、底面部111に取り付けるための取付片281と、係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されている。また、係止片282の前後方向における両端縁には、図5に示すように、溝282a,282aがそれぞれ設けられている。そして、この係止金具28は、取付ねじ201を用いて収容凹部11の底面部111に取り付けられるが、本実施形態では、器具本体1の前後方向における両端寄りの位置に各1個の係止金具28がそれぞれ取り付けられており、各係止金具28は各組の係止金具26及び係止ばね27にそれぞれ対応している。
【0023】
次に、光源ユニット2の組立手順について説明する。なお以下の説明では、係止金具26及び係止ばね27が取付部材21に予め取り付けられているものとして説明する。まず最初に、作業者は、電源装置24及び端子台ブロック25をそれぞれ取付部材21の上面側に取り付け、さらに電源装置24と端子台ブロック25の間を電線により接続する。その後、作業者は、上記係止爪によりLED基板22を取付部材21の底面部211に固定し、さらにLED基板22のコネクタ223から導出する電線を取付部材21の底面部211に設けた孔211aに通した後、その端部を電源装置24に接続する。そして最後に、作業者は、開口側を上向きにした状態でカバー部材23を取付部材21に組み付ける。このとき、カバー部材23の各突壁部233にそれぞれ設けた突起部233aが、取付部材21の各側面部212にそれぞれ設けた傾斜部212aと係合し、カバー部材23が取付部材21に取り付けられる。以上のような手順に従って、光源ユニット2が組み立てられる。なお、カバー部材23を取付部材21に取り付ける上記方法は一例であり、他の方法であってもよい。
【0024】
続けて、照明器具Aの施工手順について説明する。なお以下の説明では、係止金具28が器具本体1に予め取り付けられているものとして説明する。まず最初に、作業者は、室内側に露出する上記電源線を器具本体1に設けた孔111aに通し、さらに天井材100を通して室内側に露出する吊ボルト(図示せず)を孔111bに通した後、吊ボルトにナット(図示せず)をねじ込んで器具本体1を天井材100に固定する。その後、作業者は、上記電源線を端子台251に接続し、少なくとも電源装置24及び端子台ブロック25が収容凹部11に収容されるようにして光源ユニット2を器具本体1に取り付ける。
【0025】
ここで、光源ユニット2を器具本体1に取り付ける手順について詳述する。まず最初に、作業者は、取付部材21に取り付けた各係止金具26の係止板262を器具本体1の収容凹部11の側面部112に設けた各挿通孔112aにそれぞれ挿入した後、各係止板262の先端に設けた引掛け部262aを挿通孔112aの端縁にそれぞれ係止させて光源ユニット2を器具本体1に吊り下げる(図1(a)参照)。次に、作業者は、係止金具26側(図1(a)中の左側)を回動中心として光源ユニット2を左回り(反時計回り)に所定位置(係止ばね27の腕部273が係止金具28に届く位置)まで回動させる。その後、作業者は、光源ユニット2を保持した状態のまま、各係止ばね27の腕部273の先端に設けた引掛け部273aを、対応する係止金具28の係止片282に設けた内側の溝282aの端縁にそれぞれ係止させる。そしてこの状態から、作業者が光源ユニット2を左回りに回動させていくと(図1(b)参照)、各係止ばね27の腕部273が対応する係止金具28の係止片282の裏面に摺動しながら、図6に示す位置まで移動し、光源ユニット2が器具本体1に取り付けられる(図1(c)参照)。なおこのとき、各係止金具28に対して対応する係止ばね27より下向きのばね力が加えられ、この反力により光源ユニット2が上向き(器具本体1側)に押し上げられており、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される。またこのとき、各係止金具26の係止板262が、対応する挿通孔112aの端縁にそれぞれ当接している(図1(c)参照)。以上のような手順に従って、照明器具Aが天井材100に施工される。」
イ 図面
(ア)【図1】


(イ)【図3】


(ウ)【図6】


(2)認定事項
ア 請求項1の「器具本体」は、【0012】の「本実施形態の照明器具Aは、図1〜図4に示すように、天井直付け型の照明器具であり、吊ボルト(図示せず)を用いて天井材100に取り付けられる器具本体1」との記載からみて、天井材100に取り付けられる長尺形状の器具本体1であることが理解できる。また、光源ユニット2は、図3からみて、器具本体1と同じく長尺状であることが看取できる。
イ 請求項2の「係止部」は、段落【0022】の「係止金具28(係止部)」との記載から、係止金具28であることが理解できる。
ウ 【0022】の「この係止金具28は、図5及び図6に示すように、底面部111に取り付けるための取付片281と、係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されている。」との記載から、係止金具28は、収容凹部11の底面部111に取り付けるための取付片281と、係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されていることが理解できる。

(3)甲2に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「天井材100に取り付けられる長尺状に形成された器具本体1と、前記器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる長尺状の光源ユニット2とを備え、
前記光源ユニット2は、複数のLED222が実装されたLED基板22と、前記複数のLED222が前記器具本体1と反対側を向くようにして前記LED基板22を前記器具本体1に取り付けるための取付部材21と、前記複数のLED222に点灯電力を供給する電源装置24とを有し、
前記光源ユニット2は、前記光源ユニット2の幅方向における一端側を回動中心として回動させることで前記器具本体1に取り付けられ、
前記器具本体1の一面には、前記光源ユニット2の少なくとも一部を収容するための矩形の収容凹部11が前記器具本体1の長手方向に沿って設けられており、
前記取付部材21は、前記取付部材21の幅方向における一端側に延出し且つ先端に引掛け部262aが設けられた係止板262と、前記取付部材21の幅方向における他端側に設けられた係止ばね27とを有し、
前記収容凹部11の幅方向における一端側の側面部には、前記係止板262を挿通するための挿通孔112aが設けられ、前記収容凹部11の幅方向における他端側には、前記係止ばね27を係止するための係止金具28が設けられており、
前記係止金具28は、前記収容凹部11の底面部111に取り付けるための取付片281と、前記係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されており、
前記係止板262が前記挿通孔112a内に挿入され前記引掛け部262aが前記挿通孔112aの端縁に引っ掛けられて前記光源ユニット2が前記器具本体1に吊り下げられた状態から、前記係止板262が前記挿通孔112aの端縁に当接し且つ前記係止ばね27が前記係止金具28に係止した状態で前記係止板262側を回動中心として前記光源ユニット2が回動することで、前記光源ユニット2が前記器具本体1に取り付けられる照明器具Aであって、
前記光源ユニット2は、前記LED基板22を覆うようにして前記取付部材21に取り付けられるカバー部材23を有し、
各係止金具28に対して対応する係止ばね27より下向きのばね力が加えられ、この反力により光源ユニット2が器具本体1側に押し上げられており、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される照明器具A。」

3 甲3
原出願前に日本国内で頒布された甲3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)記載事項
ア 明細書
「【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、取付ばねによって器具本体に灯具本体を取り付けた際に、灯具本体を器具本体に対して位置決めするとともに所望の姿勢で取り付けることができる照明器具を提供することを目的とする。」
「【0011】
以下、本発明に係る実施形態の照明器具について、図面を用いて説明する。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の照明器具10は、被取付部である天井11に設けられている取付穴12に取り付けて、下方を照明するのに用いることができる。
照明器具10は、下方に開口する矩形箱状の器具本体20と、器具本体20に取り付けられる灯具本体30を有する。
【0012】
図2(A)および(B)にも示すように、器具本体20の下端部には、器具本体20を天井11の取付穴12に取り付けた際に、天井11の下面に当接して下方に露出する枠部26が設けられている。
器具本体20の天板21には長手方向の両端部に吊金具(吊具)22が設けられており、天井11の取付穴12に設けられている取付ボルト13に吊金具22を取り付けることにより、器具本体20を天井11の取付穴12に取り付ける。」
「【0015】
図3(A)および(B)に示すように、吊金具22は、取付ボルト13に取り付けられる上板221と、上板221の両端から下方に延びる対向した一対の側板222、222を有する。各側板222の下端には、器具本体20の長手方向に折曲げられた係止板223を有する。
吊金具22は、器具本体20の天板21に設けられている開口211に、下側から挿入し、器具本体20の天板21の下面に当接する係止板223をねじ止め(ねじ224)して取り付けられる。
【0016】
吊金具22において、器具本体20の長手方向中央側(図3(B)において右側)の係止板223には、L字形状の位置決め材225が一体的に折曲げ形成されている。位置決め材224は、器具本体20内部において、幅方向両端に一対設けられている。
位置決め材224の先端(下端)には、ストッパ部226が、水平方向に設けられている。
【0017】
図2(A)および(B)に示すように、灯具本体30は、下方に開口した断面C字形状の取付板33を有する。取付板33の上板331の幅寸法は、器具本体20の内幅寸法よりも小さく、器具本体20内部に挿入可能となっている。
取付板33の上板331の下面には、LEDユニット32が取り付けられる。LEDユニット32の前方(下方)には、透光性のカバー34を有する。
【0018】
取付板33の上板331の上面には止め金具36が取り付けられており、止め金具36には取付ばね35が取り付けられる。
取付ばね35は全体V字形状をしており、左右一対のアーム部351、351を有する。アーム部351の先端は、外側に折曲げられて係止部352が形成されている。一対のアーム部351、351は、互いに離反する方向(図2(B)中矢印A参照)へ付勢されている。
【0019】
従って、灯具本体30を器具本体20に取り付ける際には、図2(A)に示すように、灯具本体30の取付ばね35の先端を狭めて、器具本体20のばね用開口29(図4参照)に挿入する。
この状態では、取付ばね35の係止部352が器具本体20のばね用開口29の周面に係止されて、灯具本体30は、仮止めされる。
【0020】
次いで、灯具本体30を器具本体20内部に押し上げる(図2(A)中矢印A参照)と、図2(B)に示すように、取付ばね35の一対のアーム部351、351が外側に拡がる。これにより、灯具本体30は器具本体20の内部に取り付けられる。
このとき、灯具本体30の上面である取付板33の上板331が、器具本体20の位置決め材225のストッパ部226に当接する。
【0021】
これにより、幅方向の一対のストッパ部226、226が取付板33に当接して、幅方向に水平に位置決めされる。
また、位置決め材225が、器具本体20の長手方向両端部に設けられている吊金具22に一体的に設けられているので、灯具本体30は、長手方向にも器具本体20に沿って水平に位置決めされる。」
イ 図面
(ア)【図1】


(イ)【図2】


(イ)【図3】


【図4】


(ウ)【図5】


(2)認定事項
ア 【0017】の「灯具本体30は、下方に開口した断面C字形状の取付板33を有する。取付板33の上板331の幅寸法は、器具本体20の内幅寸法よりも小さく、器具本体20内部に挿入可能となっている。取付板33の上板331の下面には、LEDユニット32が取り付けられる。LEDユニット32の前方(下方)には、透光性のカバー34を有する。」という記載及び図2から、LEDユニット32は、発光素子であるLEDを有する光源であることは明らかであるので、灯具本体30は、取付板33の上板331の下面にLEDユニットが取り付けられた取付板33を有するものであるといえる。
イ 【0020】の「灯具本体30は器具本体20の内部に取り付けられる。」、【0021】の「灯具本体30を器具本体20から取り外す際には、灯具本体30を引き下げる(図2(B)中矢印B参照)。」という記載、図1及び図2から、灯具本体30が器具本体20の内部に着脱自在に取り付けられるものである。また、【0012】の「器具本体20の天板21には長手方向の両端部に吊金具(吊具)22が設けられており、天井11の取付穴12に設けられている取付ボルト13に吊金具22を取り付けることにより、器具本体20を天井11の取付穴12に取り付ける。」という記載及び図2から、器具本体20は天板21を有するが、灯具本体30は器具本体20の天板21には取り付けられないものであるといえる。
ウ 【0018】の「取付板33の上板331の上面には止め金具36が取り付けられており、止め金具36には取付ばね35が取り付けられる。」という記載及び図2から、取付ばね35は灯具本体30の取付板33に取り付けられたものであるといえる。また、【0019】の「灯具本体30を器具本体20に取り付ける際には、図2(A)に示すように、灯具本体30の取付ばね35の先端を狭めて、器具本体20のばね用開口29(図4参照)に挿入する。この状態では、取付ばね35の係止部352が器具本体20のばね用開口29の周面に係止されて、灯具本体30は、仮止めされる。」、【0020】の「次いで、灯具本体30を器具本体20内部に押し上げる(図2(A)中矢印A参照)と、図2(B)に示すように、取付ばね35の一対のアーム部351、351が外側に拡がる。これにより、灯具本体30は器具本体20の内部に取り付けられる。」という記載及び図2から、器具本体20の天板21に設けられたばね用開口29と灯具本体30の取付ばね35は、相互に係止することによって灯具本体30を器具本体20に取り付ける取付機構を構成しているといえる。さらに、【0018】の「取付ばね35は全体V字形状をしており、左右一対のアーム部351、351を有する。アーム部351の先端は、外側に折曲げられて係止部352が形成されている。一対のアーム部351、351は、互いに離反する方向(図2(B)中矢印A参照)へ付勢されている。」という記載及び図2(B)から、取付ばね35は、その一対のアーム部351、351がばね用開口29の周面に係止してそこを支点として外側に拡がることから、灯具本体30を器具本体20内部に押し上げる方向に沿って付勢(弾性力を作用)するものであることは明らかである。
エ 【0020】の「灯具本体30の上面である取付板33の上板331が、器具本体20の位置決め材225のストッパ部226に当接する。」、【0021】の「これにより、幅方向の一対のストッパ部226、226が取付板33に当接して、幅方向に水平に位置決めされる。また、位置決め材225が、器具本体20の長手方向両端部に設けられている吊金具22に一体的に設けられているので、灯具本体30は、長手方向にも器具本体20に沿って水平に位置決めされる。」という記載及び図4から、位置決め部材225が、灯具本体30が器具本体20に取り付けられた状態で取付板33の上板331と器具本体20の天板21との間に設けられており、器具本体20に対する灯具本体30について長手方向及び短手方向において水平に位置決めするものであることは明らかである。また、図4から、位置決め部材225は、取付機構(取付ばね35及びばね用開口29の周面)が設けられていない箇所に配置されていることが看取できる。

(3)甲3に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「取付板33の上板331の下面にLEDユニットが取り付けられた取付板33を有する灯具本体30と、
天井に取り付けられた状態で、灯具本体30が着脱自在に取り付けられる内部を有する器具本体20であって、灯具本体30は器具本体20の天板21には取り付けられない器具本体20と、
器具本体20の天板21に設けられたばね用開口29と灯具本体30の取付ばね35は、相互に係止することによって灯具本体30を器具本体20に取り付ける取付機構であって、取付板33に取り付けられた取付ばね35が、天板21に設けられた開口29の周面に係止され外側に広がり、灯具本体30を器具本体20内部に押し上げる方向に沿って弾性力を作用することで、灯具本体30が器具本体20に取り付けられる取付機構と、
灯具本体30が器具本体20に取り付けられた状態で取付板33の上板331と器具本体20の天板21との間に設けられており、器具本体20に対する灯具本体30について長手方向及び短手方向において水平に位置決めする位置決め部材225とを備え、
位置決め部材225は、取付機構が設けられていない箇所に配置されている照明器具。」

4 甲4
原出願前の特許出願であって、原出願後に出願公開がされた甲4の特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲4当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)記載事項
ア 明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明器具に関する。」
「【0015】
図1に表すように、照明器具100は、器具本体10と、光源モジュール20と、を備える。照明器具100は、光源モジュール20を下方に向けた状態で室内の天井面に取り付けられる。器具本体10がネジ等によって天井面に取り付けられる。器具本体10は、光源モジュール20の支持に用いられるとともに、天井などの取付対象への照明器具100の取り付けに用いられる。照明器具100は、室内に光を照射する。なお、照明器具100は、天井面に限ることなく、例えば、壁面などに取り付けても良い。また、複数の照明器具100を連結させても良い。
【0016】
図2に表すように、器具本体10は、筐体11と、取付金具14と、電源回路15と、端子台16と、を備える。また、筐体11は、反射板12と、端板13と、を備える。
【0017】
筐体11は、光源モジュール20の一部を収容するための凹部11aを有する。また、筐体11には、照明器具100を天井面などに取り付けるための金具(例えば、ネジ)や電源回路15に電力を供給する電源ケーブルなどを通すための複数の開口が設けられる。」
「【0020】
取付金具14は、ネジ止めなどにより、筐体11の凹部11a内に取り付けられる。取付金具14は、光源モジュール20の保持部材23に設けられた弾性体40と掛止し、筐体11の凹部11aから抜ける方向への移動を規制する。取付金具14には、筐体11と同様の金属材料が用いられる。器具本体10には、保持部材23に対応して複数の取付金具14が設けられる。この例では、2つの取付金具14が設けられる。取付金具14の数は、任意で良い。取付金具14の数は、1つでも良いし、3つ以上でも良い。」
「【0024】
図3及び図4に表すように、光源モジュール20は、支持体21と、カバー22と、保持部材23と、側板24と、基板25と、光源26と、を備える。支持体21は、第1面21aと、第1面21aと反対側の第2面21bと、を有する。基板25は、第1面25aと、第1面25aと反対側の第2面25bと、を有する。
【0025】
支持体21は、光源26が設けられた基板25を支持する。支持体21の第1面21aと、基板25の第2面25bと、が対向するように、支持体21は、基板25を支持する。基板25は、接着などによって支持体21に固定しても良い。また、基板25は、ネジ止めなどによって着脱可能に支持体21に取り付けても良い。支持体21は、基板25を着脱可能に支持しても良い。側板24の取り付け方向から見た支持体21の形状は、略U字状である。」
「【0027】
保持部材23は、カバー22を支持体21に保持する。つまり、保持部材23は、カバー22を支持体21から外れないようにする。光源モジュール20には、複数の保持部材23が設けられる。複数の保持部材23は、支持体21の第2面21bに設けられる。この例では、2つの保持部材23が設けられる。保持部材23の数は、任意で良い。保持部材23の数は、1つでも良いし、3つ以上でも良い。」
「【0031】
基板25には、光源26が設けられている。基板25には、例えば、複数の光源26が設けられる。各光源26は、基板25の第1面25aに並べて配置される。光源26の数は、任意で良い。光源26の数は、例えば、1つでも良い。
【0032】
光源26には、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が用いられる。光源26は、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)、無機エレクトロルミネッセンス(Inorganic ElectroLuminescence)発光素子、有機エレクトロルミネッセンス(Organic ElectroLuminescence)発光素子、または、その他の電界発光型の発光素子などでも良い。光源26は、電球などでも良い。」
「【0034】
図5は、端板13側からみた照明器具100の内部であって、器具本体10の取付金具14が光源モジュール20の保持部材23に弾性体40によって取り付けられている状態を示している。図6(a)及び図6(b)は、取付金具14の正面図及び上面図をそれぞれ示している。図7(a)及び図7(b)は、弾性体40が取付金具14に掛止している状態の側面図をそれぞれ示している。
【0035】
図8(a)及び図8(b)は、保持部材23に設けられた弾性体40の上面図及び斜視図をそれぞれ示している。図9は、弾性体40が取付金具14に掛止している状態の斜視図を示している。図10は、弾性体40が取付金具14に掛止している状態の側面図を示している。なお、図9において、取付金具14を固定する反射板12を図示していない。」
「【0039】
固定部31には、弾性体40が設けられている。弾性体40は、例えば、トーションバネである。弾性体40は、連結した2つのトーションバネである。弾性体40の一部(当接部40f)が取付金具14の一部(掛止部14a)に掛止されることで取付金具14が保持部材23に取り付けられる。これにより、光源モジュール20が器具本体10に取り付けられる。」
「【0040】
図6(a)に表すように、取付金具14は、掛止部14aと、突出部14bと、を有する。例えば、取付金具14は、反射板12に接触する略矩形状の第1板14P1と、第1板14P1上に設けられる略凸状の第2板14P2と、第2板14P2の対向する両辺に設けられる第3板14P3と、を組み合わせて形成される。第2板14P2は、第1板14P1に対して所定の角度で設けられ、第3板14P3は、第2板14P2に対して所定の角度で設けられる。例えば、第2板14P2は、第1板14P1に対して略垂直に設けられ、第3板14P3は、第2板14P2に対して略垂直に設けられる。取付金具14は、複数の板を組み合わせて形成されることに限ることなく、1枚の板から形成されても良い。」
「【0046】
例えば、図7(a)に表すように、弾性体40が取付金具14に掛止して固定されている状態から方向d1(照明器具100の取り付け方向と反対方向)に光源モジュール20に力を加える。弾性体40の弾性力に対して所定の下向きの力を加えると、図7(b)に表すように、弾性体40が取付金具14に掛止している仮吊りの状態になる。つまり、光源モジュール20を器具本体10から取り外す場合、方向d1に光源モジュール20に力を加える。」
「【0055】
第4部分40f4は、第3部分40f3の一端と、本体部40cと、の間に設けられている。第4部分40f4が掛止部14aに掛止されることで取付金具14が保持部材23に取り付けられる。つまり、光源モジュール20は、弾性体40によって器具本体10に取り付けられて固定される。
【0056】
図10に表すように、第4部分40f4の少なくとも一部は、直線部分40lを有する。また、直線部分40lは、取付金具14の挿通孔14oに対して略垂直の方向に挿通し、掛止部14aに対して略垂直に交差して掛止する部分である。このような直線部分40lを第4部分40f4に設けると、弾性力が掛止部14aに方向d3(照明器具100の取り付け方向と反対方向)に加わるので、光源モジュール20が器具本体10に向かってより確実に吸い上がる。つまり、掛止部14aに加わる略垂直方向の弾性力が増加するので、光源モジュール20が器具本体10に向かって吸い上げる力が増加する。これにより、光源モジュール20を器具本体10に確実に取り付けることができる。
【0057】
図11(a)〜図11(c)は、光源モジュールと器具本体との取り付けを説明する図である。
なお、図11(a)〜図11(c)において、取付金具14を固定する反射板12を図示していない。
【0058】
図11(a)に表すように、第1部分40f1及び第2部分40f2が取付金具14の挿通孔14oに挿通した後、第2部分40f2が取付金具14の掛止部14aに掛止されて固定される。光源モジュール20が器具本体10に対して仮吊りの状態となる。仮吊りの状態において、器具本体10内の配線作業等が行われる。仮吊りの状態から光源モジュール20に上方向(矢印方向)の力を加えて押し上げる。
【0059】
図11(b)に表すように、仮吊りの状態から光源モジュール20に上方向(矢印方向)の力を加えて押し上げると、第3部分40f3は、挿通孔14oに入り込む。つまり、弾性体40は、取付金具14に挿入される。
【0060】
図11(c)に表すように、図11(b)の状態から光源モジュール20に上方向の力をさらに加えて押し上げると、第4部分40f4が掛止部14aに掛止される。つまり、第4部分40f4の直線部分40lは、挿通孔14oに対して略垂直の方向に挿通し、掛止部14aに対して略垂直に交差して掛止する。光源モジュール20が器具本体10に向かって吸い上がることで、光源モジュール20は器具本体10に取り付けられて固定される。」
イ 図面
(ア)【図1】


(イ)【図4】


(ウ)【図5】


(エ)【図7】


(オ)図10


(カ)図11



(2)認定事項
ア 図1から、器具本体10及び光源モジュール20はいずれも長尺状であることが看取できる。また、【0025】の「支持体21は、光源26が設けられた基板25を支持する。」、【0031】の「基板25には、光源26が設けられている。基板25には、例えば、複数の光源26が設けられる。各光源26は、基板25の第1面25aに並べて配置される。」、【0032】の「光源26には、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が用いられる。」を踏まえつつ、図4から、光源モジュール20は、第1面25aに複数の発光ダイオードが並べて配置された基板25を支持する支持体21を有することは明らかである。
イ 【0015】の「器具本体10がネジ等によって天井面に取り付けられる」、【0016】の「器具本体10は、筐体11と、取付金具14と、電源回路15と、端子台16と、を備える。」、【0017】の「筐体11は、光源モジュール20の一部を収容するための凹部11aを有する。」、【0039】の「これにより、光源モジュール20が器具本体10に取り付けられる。」、【0046】の「つまり、光源モジュール20を器具本体10から取り外す場合、方向d1に光源モジュール20に力を加える。」、【0055】の「光源モジュール20は、弾性体40によって器具本体10に取り付けられて固定される。」という記載からみて、器具本体10が天井面に取り付けられた状態で、光源モジュール20は器具本体10の筐体11の凹部11aに収容され、そこで弾性体40によって固定されるとともに、取り外しもできるようになっていることは明らかである。つまり、光源モジュール20は、器具本体10の凹部11aに着脱自在に固定されるといえる。
ウ 【0020】の「取付金具14は、ネジ止めなどにより、筐体11の凹部11a内に取り付けられる。」、【0027】の「複数の保持部材23は、支持体21の第2面21bに設けられる。」、【0039】の「器具本体10の取付金具14が光源モジュール20の保持部材23に弾性体40によって取り付けられ」という記載及び図11から、光源モジュールの支持体21に設けられた保持部材23と、器具本体10の凹部11aに取付けられた取付金具14とが相互に掛止ことによって、光源モジュール20が器具本体10に取り付けられる掛止機構を構成していることは明らかである。
エ 【0040】の「取付金具14は、複数の板を組み合わせて形成されることに限ることなく、1枚の板から形成されても良い」という記載及び図5、7、11からみて、取付金具14は、光源モジュール20が取り付けられる方向に沿って立設された板状部材であることは明らかである。
オ 【0056】の「直線部分40lは、取付金具14の挿通孔14oに対して略垂直の方向に挿通し、掛止部14aに対して略垂直に交差して掛止する部分である。このような直線部分40lを第4部分40f4に設けると、弾性力が掛止部14aに方向d3(照明器具100の取り付け方向と反対方向)に加わるので、光源モジュール20が器具本体10に向かってより確実に吸い上がる。つまり、掛止部14aに加わる略垂直方向の弾性力が増加するので、光源モジュール20が器具本体10に向かって吸い上げる力が増加する。これにより、光源モジュール20を器具本体10に確実に取り付けることができる。」という記載及び図10からみて、弾性体40(第4部分40f4)は取付金具14(掛止部14a)に対して光源モジュール20の取り付け方向と反対方向に弾性力を作用させるものであることは明らかである。
さらに、【0060】の「第4部分40f4の直線部分40lは、挿通孔14oに対して略垂直の方向に挿通し、掛止部14aに対して略垂直に交差して掛止する。光源モジュール20が器具本体10に向かって吸い上がることで、光源モジュール20は器具本体10に取り付けられて固定される。」という記載及び図11(c)からみて、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止することで、光源モジュール20と器具本体10を固定しこれらの位置関係を定めるものであることは明らかである。
カ 【0024】の「光源モジュール20は、支持体21と、カバー22と、保持部材23と、側板24と、基板25と、光源26と、を備える。」、【0016】の「器具本体10は、筐体11と、取付金具14と、電源回路15と、端子台16と、を備える。また、筐体11は、反射板12と、端板13と、を備える。」という記載を踏まえると、図1及び図5から、光源モジュール20(支持体21、カバー22、保持部材23、)が器具本体10(反射板12及び取付金具14)に固定されたときに光源モジュール20と器具本体10との長手方向の境界部分に隙間部が形成されていることが看取できる。

(3)甲4当初明細書等に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲4当初明細書等には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
「第1面25aに複数の発光ダイオードが並べて配置された基板25を支持する支持体21を有する長尺状の光源モジュール20と、
天井面に取り付けられた状態で、前記光源モジュール20が着脱自在に固定される凹部11aを有する長尺状の器具本体10と、
光源モジュールの支持体21に設けられた保持部材23と、器具本体10の凹部11aに取付けられた取付金具14とが相互に掛止することによって、光源モジュール20が器具本体10に固定される掛止機構であって、取付金具14に対して光源モジュール20の取り付け方向と反対方向に弾性力を作用させる弾性体40と、光源モジュール20が取り付けられる方向に沿って立設された板状部材である取付金具14とからなる掛止機構とを備え、
光源モジュール20が器具本体10に固定されたときに光源モジュール20と器具本体10との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるよう、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止することで、光源モジュール20と器具本体10を固定し、これらの位置関係を定める照明装置。」

5 参考A
原出願前に日本国内で頒布された参考Aには、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)明細書
「【0024】
図1および図2は、本発明の第1実施形態に基づくLED照明装置を示している。本実施形態のLED照明装置A1は、マウント1およびLEDユニット2によって構成されており、たとえば屋内の天井面に取り付けられた状態で、床面を照らす用途に用いられものであり、長さが1227mm程度、幅が120mm程度、高さが38mm程度とされている。
【0025】
マウント1は、本体10および複数のホルダ11を備えている。本体10は、x方向に延びる細長状であり、たとえばアルミ製である。本体10には、凹部10aが設けられている。凹部10aは、LEDユニット2を収容するためのものである。本体10は、凹部10aを挟んで連続するような曲率とされた曲面を有している。
【0026】
ホルダ11は、たとえば金属製のプレートに対して折り曲げ加工を施すことによって形成されており、1対の係止片11aおよび1対の可撓部11bを有している。図9に示すように、可撓部11bは、係止片11aを支える格好となっている。1対の可撓部11bは外力が与えられると、1対の係止片11aを互いに接近離間させる方向に弾性変形可能とされている。1対の係止片11aは、LEDユニット2に係合する部分であり、図9(a)において図中上方に向かうほど互いに距離が小となるように傾いている。本実施形態においては、複数のホルダ11が凹部10a内に設けられている。
【0027】
図3および図4に示すように、LEDユニット2は、複数のLEDモジュール20、支持部材3、カバー4、および電力変換部5を備えている。LEDユニット2は、マウント1のx方向両端にいたる長さ(1220mm程度)とされている。」
「【0029】
図3および図4に示すように、支持部材3は、複数のLEDモジュール20を支持しつつ、これに電力を供給するためのものであり、基板31およびブラケット32からなる。
【0030】
基板31は、x方向を長手方向、y方向を幅方向とする帯状であり、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる。本実施形態においては、基板31には、288個のLEDモジュール20が搭載されている。
【0031】
図4に示すように、ブラケット32は、ベース部321および1対のアウター部322からなる。ベース部321およびアウター部322は、たとえばアルミ製である。ベース部321は、断面コの字状であり、その底面の外側に基板31が取り付けられている。アウター部322は、ベース部321の略片側部分と、基板31のy方向端縁とを覆う形状とされている。図3および図4に示すように、ベース部321とアウター部322とは、複数のネジ33によって締結されている。
【0032】
図4に示すように、各アウター部322には、係止溝323が形成されている。係止溝323は、x方向に延びており、z方向においてLEDモジュール20の出射方向とは反対側に窪んでいる。係止溝323は、ホルダ11の係止片11aと係合する部分である。」
「【0044】
図10は、LED照明装置A1を組み立てる際に、LEDユニット2をマウント1に取り付ける様子を示している。本図によく表れているように、まず、たとえば天井に固定されたマウント1に対してLEDユニット2を下方から接近させる。そして、ホルダ11の1対の係止片11aの間にLEDユニット2を押し込む。すると、可撓部11bが若干撓むことにより、1対の係止片11aが互いにいったん離間する。しかる後に、図2に示すように、係止片11aが支持部材3の係止溝323と係合する。このように、LEDユニット2を容易に取り付けることができる。」
(2)図面
ア 図1


イ 図2


ウ 図10



6 参考B
原出願前に日本国内で頒布された参考Bには、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)明細書
「【0011】
図1乃至図4において、天井面へ設置される天井直付けタイプの照明器具が示されており、この照明器具は、逆富士型をなしていて、横長であって長尺状をなす器具本体1と、この器具本体1に配設された光源部2及び点灯装置3と、光源部2を器具本体1に取付けて保持する係止部材4とを備えている。」
「【0015】
・・・
光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とを備えている。
【0016】
図8及び図9の参照を加えて示すように、取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有している。また、第1の側壁21bにおける取付面21a側には、複数の切起し片21dが略等間隔に幅方向の外側に突出して形成されている。
取付部材21には、亜鉛めっき鋼板やアルミニウムの板材等の熱伝導が良好な材料が用いられている。
【0017】
基板23は、略長方形状に形成されており、複数、すなわち、4枚の基板23が直線状に並べられて取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が取付面21aに密着するように取付けられている。この基板23の表面側には、複数の発光素子22が実装されている。」
「【0023】
このように構成されたカバー部材24は、複数の発光素子22が実装された基板23を覆うように取付部材21に取付けられている。具体的には、図4に示すように、カバー部材24の一対の嵌合溝24aに取付部材21の切起し片21dがスライドして嵌合し、取付けられるようになっている。
以上のように、光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成されている。」
「【0027】
係止部材4は、図12及び図13の参照を加えて示すように、ステンレス材料等のばね材によって略コ字状に折曲して形成されている。また、係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成されている。この係止部材4は、図2乃至図4に示すように、器具本体1の収容凹部11の両端部側に外側から重合するように一対取付けられる。より詳しくは、図4に示すように、係止爪4aが収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、収容凹部11の外側にねじ等の固定手段(図3参照)によって取付けられるようになっている。
このように構成された係止部材4には、図5に示すように、光源部2が取付けられる。つまり、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設される。
【0028】
光源部2を器具本体1に対して図示矢印方向に移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接する。この状態からさらに光源部2の移動を進め、係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される(図4参照)。
この場合、第2の側壁21cは、傾斜状に形成されているので、係止爪4aとの関係において、光源部2の取付けを円滑に行うことができる。」
(2)図面
ア 【図1】


イ 【図4】


ウ 【図5】




7 参考C
原出願前に日本国内で頒布された参考Cには、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)明細書
「【0009】
(第1の実施形態)
図1(a)及び図1(b)は、第1の実施形態に係る照明器具を模式的に表す斜視図である。
図1(a)及び図1(b)に表したように、照明器具10は、器具本体12と、光源26(図3参照)と、を備える。器具本体12は、取付対象物である長尺状の光源モジュール14を支持する。この例では、光源モジュール14に光源26が設けられる。なお、図1(b)は、光源モジュール14を取り外した状態を図示している。」
「【0015】
・・・
図2〜図5に表したように、光源モジュール14は、支持体21と、カバー22と、保持部材23と、を備える。
【0016】
支持体21は、基板25を支持する。基板25は、第1面25aと、第2面25bと、を有する。第2面25bは、第1面25aと反対側の面である。支持体21は、第2面25b側から基板25を支持する。基板25は、接着などによって支持体21に固定してもよいし、ネジ止めなどによって着脱可能に支持体21に取り付けてもよい。支持体21は、基板25を着脱可能に支持してもよい。
【0017】
基板25には、光源26が設けられている。基板25には、例えば、複数の光源26が設けられる。各光源26は、基板25の第1面25aに並べて配置される。基板25には、例えば、図示を省略した配線層が設けられ、配線層を介して各光源26のそれぞれが、互いに電気的に接続される。光源26の数は、任意でよい。光源26の数は、例えば、1つでもよい。」
「【0021】
支持体21は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、を有する。第1部分31は、第1方向に延びる表面31aと、表面31aと反対側の裏面31bと、を有する。第1部分31は、板状である。第1部分31は、例えば、第1方向に長い長尺な板である。この例では、表面31a及び裏面31bが、略長方形状である。表面31aの形状及び裏面31bの形状は、長方形状に限ることなく、第1方向に延びる任意の形状でよい。また、この例では、裏面31bが、表面31aに対して実質的に平行である。」
「【0027】
支持体21は、表面31aで基板25を支持する。基板25は、表面31aの上に設けられる。支持体21は、基板25の第1面25aを表面31aの向く方向に向けて、基板25を支持する。これにより、表面31aの向く方向に、光が照射される。」
「【0039】
保持部材23は、対向部50と、第1把持部51と、第2把持部52と、を有する。対向部50は、裏面31bと対向する。対向部50は、例えば、裏面31bに接する。対向部50の幅方向の長さは、裏面31bの幅方向の長さと実質的に同じか、僅かに短い程度である。」
「【0042】
このように、保持部材23は、裏面31b側から支持体21に取り付けられ、第2部分32と第1係合部43とを第1把持部51で挟み、第3部分33と第2係合部44とを第2把持部52で挟むことにより、カバー22を支持体21に保持する。」
「【0049】
第1把持部51には、一対の抑え部51aと、第1爪部51bと、が設けられている。各抑え部51aは、長手方向に並べて設けられる。各抑え部51aは、略U字状に折り曲げられ、第2部分32と第1係合部43とを挟む部分である。第1爪部51bは、各抑え部51aの間に設けられる。第1爪部51bは、裏面31bと実質的に平行な方向において、対向部50と反対の方向に向かって突出する。第1爪部51bは、例えば、幅方向において、外側に向かって突出する。
【0050】
第2把持部52には、一対の抑え部52aと、第2爪部52bと、が設けられている。各抑え部52aは、長手方向に並べて設けられる。各抑え部52aは、略U字状に折り曲げられ、第3部分33と第2係合部44とを挟む部分である。第2爪部52bは、各抑え部52aの間に設けられる。第2爪部52bは、裏面31bと実質的に平行な方向において、対向部50と反対の方向に向かって突出する。第2爪部52bは、例えば、幅方向において、外側に向かって突出する。
【0051】
各爪部51b、52bは、光源モジュール14の器具本体12への取り付けに用いられる。このように、保持部材23は、カバー22の保持に用いられるとともに、光源モジュール14の器具本体12への取り付けにも用いられる。」
「【0055】
図6は、第1の実施形態に係る照明器具を模式的に表す断面図である。
図1及び図6に表したように、器具本体12は、筐体60と、取付部材61と、規制部材62と、を含む。」
「【0059】
取付部材61は、幅方向において互いに対向する一対の係合部61a、61bを有する。取付部材61は、領域60a内に収容された光源モジュール14に一対の係合部61a、61bを係合させる。取付部材61は、例えば、各係合部61a、61bを光源モジュール14の各爪部51b、52bに係合させる。これにより、取付部材61は、光源モジュール14を筐体60に取り付ける。換言すれば、取付部材61は、光源モジュール14の領域60aから抜ける方向への移動を規制する。」
(2)図面
ア 【図1】


イ 【図4】


ウ 【図6】




第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要について
訂正前の請求項1〜3に係る特許に対して、当審が令和3年10月12日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、取消理由で通知した引用文献3は原出願の出願前に公開された文献ではないことから、令和3年11月25日に、当審及び特許権者の代理人である溝井国際特許業務法人(弁理士長谷川靖子)は、取消理由2は引用文献1及び2に基づくものとして対応することを確認した。
1 取消理由1(新規性
下記の請求項に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(進歩性
下記の請求項に係る発明は、原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、原出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

1 刊行物
引用文献1(甲1):特開2013−80679号公報
引用文献2(甲2):特開2014−78426号公報
引用文献3(甲4):特開2016−110933号公報
2 取消理由と請求項及び引用文献の関係
(1)取消理由1
・請求項1、引用文献1(甲1)
・請求項2、引用文献2(甲2)
・請求項3、引用文献1(甲1)又は引用文献2(甲2)
(2)取消理由2
・請求項1、引用文献1(甲1)
・請求項2、引用文献2(甲2)及び引用文献3(甲4)
・請求項3、引用文献1(甲1)〜引用文献3(甲4)


第6 対比・判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「略正方形状の光源部本体2」は、「前記光源部本体2は、光源部5、導光板6、サポートシャーシ7、及び本体枠8を備え」るものであって、【図3】等を参照すると、上記各構成要素が光源部本体2としてユニット化されていることは明らかであるから、前者の「長尺状の光源ユニット」とは、「光源ユニット」である点で共通する。
イ 後者の「天井面C」は、前者の「取付部」に相当する。後者の「略正方形状の取付部材1」は、「取付部4としてのアダプタガイドが配設され、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAに取り付けられ」ているものであるから、前者の「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具」とは、「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具」である点で共通する。
ウ 後者は「係止金具86」の「前記係止部86aを背面側へ突出した前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合する」ものであるから、後者の「光源部本体2」の「本体枠8の」「他辺側における縁部の2箇所に」「取付けられ」た「クランプ金具であり、湾曲状に形成されてばね性を有しており、先端側には係止部86aを備えて前記本体枠8に回動可能に軸支され」た「係止金具86」は、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネ」に相当し、後者の「取付部材1の」「他辺側における開放縁部の2箇所に」「ねじ等の固定手段によって取付けられ」た「背面側へ突出する係止受金具13」は、【図5】等を参照すると、「光源部本体2」が取り付けられる方向に沿って立設されているものといえるから、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部」に相当する。そして、後者のかかる「係止金具86」及び「係止受金具13」は、前記取付部材1に前記光源部本体2側を取付ける際に、係止金具86を回動し、前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合するものであるから、前者の「前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構」に相当する。
エ 後者の「前記光源部本体2を前記係止金具85側を支点として回動し、前記取付部材1の前面側を覆うように閉塞し」ている「状態」は、閉塞されることで固定されたものであるといえることから、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態」に相当する。また、後者の「前記光源部本体2の前記本体枠を前記取付部材1の前記係止受金具13の前面側の端部に当接させる」との構成における「係止受金具13の前面側の端部」は、光源部本体2と取付部材1との間に設けられ、前記取付部材1に対する前記光源部本体2の高さを固定することは明らかであるから、前者の「光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」に相当する。また、「係止受金具13の前面側の端部」は、【図5】等を参照すると、立設された係止受金具13の端部といえる。
そうすると、後者の「前記光源部本体2を前記係止金具85側を支点として回動し、前記取付部材1の前面側を覆うように閉塞し、この状態で前記本体枠8に軸支されている前記係止金具86を回動し、前記係止部86aを背面側へ突出した前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合することで、前記光源部本体2の前記本体枠を前記取付部材1の前記係止受金具13の前面側の端部に当接させる」との構成は、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」との構成とは、「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」構成であることで共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
[一致点1−1]
「光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。」
[相違点1−1−1]
光源ユニットについて、本件発明1では、長尺状であるのに対して、甲1発明では、略正方形状である点。
[相違点1−1−2]
照明器具について、本件発明1では、長尺状であるのに対して、甲1発明では、略正方形状である点。
[相違点1−1−3]
照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部について、本件発明1では、光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように固定するのに対して、甲1発明では、光源部本体2が取付部材1の前面側を覆うように閉塞する点。
(2)判断
ア 相違点1−1−1〜1−1−3は、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲1発明であるということはできない。
イ 事案に鑑み、相違点1−1−1〜1−1−3をまとめて検討する。
甲1発明の光源部本体2及び取付部材1は略正方形状である。そして、甲1の【0057】には、「本体枠を円形状に形成し」と記載されているとおり、甲1には、光源部本体2及び取付部材1を円形状とすることについては記載があるものの、長尺状やその他の形状とすることについてまでは記載されておらず、示唆があるともいえない。
また、甲1発明は、光源部本体2と取付部材1の間を閉塞するものである。そして、甲1には、光源部本体2と取付部材1との間に隙間部を生じさせることについて何ら記載されておらず、そのような示唆があるともいえない。
そうすると、甲1発明において、略正方形状の光源部本体2と取付部材1を長尺状にするとともに、これらの長手方向の境界部分に隙間部を形成することについて、動機付けがあるということはできない。
甲1発明における光源部本体2を取付部材1に取り付ける方式は、その一辺側における係止金具85と係止受金具12を支点として光源部本体2を取付部材1に対して回動可能とし、当該一辺側に対向する他辺側の係止金具86と係止受金具13によって弾性を伴って所定の結合力をもって取り付ける回動方式となっている。
ここで、仮に、申立人が主張するように、上記第4の5〜7の参考A〜Cの記載等に基づいて、長尺状の照明装置であって、光源部本体を照明器具に対して下から上に向かって直線的に挿入して取付ける方式のものにおいて、光源本体部と照明器具の長手方向の境界部分に隙間部を設ける技術が原出願前に公知又は周知であったとしても、この技術は、甲1発明とは照明装置そのものの形状が異なるうえに、照明器具に対して光源本体部を取付ける方式も異なるものであることから、甲1発明においてそのような技術を適用することで相違点1−1−1〜1−1−3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易になし得るものであるということはできない。
よって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と引用発明2とを対比すると、
ア 後者の「長尺状の光源ユニット2」は、前者の「長尺状の光源ユニット」に相当する。
イ 後者の「天井材100」は、前者の「取付部」に相当し、後者の「天井材100に取り付けられる長尺状に形成された器具本体1と、前記器具本体1に対して着脱自在に取り付けられる光源ユニット2とを備え」における「器具本体1」は、前者の「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具」に相当する。
ウ 後者は「各係止金具28に対して対応する係止ばね27より下向きのばね力が加えられ、この反力により光源ユニット2が器具本体1側に押し上げられて」いるものであるから、後者の「前記取付部材21の幅方向における他端側に設けられた係止ばね27」は、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネ」に相当し、後者の「前記収容凹部11の底面部111に取り付けるための取付片281と、前記係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されて」いる「係止金具28」と、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部」とは、「前記バネと係合する板部」の点で共通する。そして、後者のかかる「係止ばね27」及び「係止金具28」は、前者の「前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構」に相当する。
エ 後者の「前記係止ばね27が前記係止金具28に係止した状態で前記係止板262側を回動中心として前記光源ユニット2が回動することで、前記光源ユニット2が前記器具本体1に取り付けられ」ている状態は、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態」に相当する。また、後者の「各係止金具28に対して対応する係止ばね27より下向きのばね力が加えられ、この反力により光源ユニット2が器具本体1側に押し上げられており、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される」との構成における「カバー部材23の延出部232」は、光源ユニット2と器具本体1との間に設けられ、前記器具本体1に対する前記光源ユニット2の高さを固定することは明らかであるから、前者の「光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」とは、「光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」である点で共通する。
また、後者の「カバー部材23の延出部232」は、【図1】等を参照すると、前記「延出部232」は、「係止ばね27」及び「係止金具28」が設けられていない箇所に配置されているといえることから、後者の「前記係止ばね27が前記係止金具28に係止した状態で前記係止板262側を回動中心として前記光源ユニット2が回動することで、前記光源ユニット2が前記器具本体1に取り付けられ、」「各係止金具28に対して対応する係止ばね27より下向きのばね力が加えられ、この反力により光源ユニット2が器具本体1側に押し上げられており、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される」との構成と、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された」との構成とは、「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された」との構成である点で共通する。
そうすると、本件発明2と引用発明2の一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。
【一致点2−2】
「長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、
前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。」
【相違点2−2−1】
「板部」について、本件発明2では、光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設されているのに対し、甲2発明では、収容凹部11の底面部111に取り付けるための取付片281と、係止ばね27の腕部273を係止するための係止片282とを有し、側面視の形状がU字状に形成されている点。
【相違点2−2−2】
照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部について、本件発明2では、光源ユニットと照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるようにしているのに対して、甲2発明では、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される点。
(2)判断
ア 相違点2−2−2は、実質的な相違点である。
よって、本件発明2は甲2発明であるということはできない。
イ 事案に鑑み、まず、相違点2−2−2について検討する。
甲2発明は、カバー部材23の延出部232が器具本体1の収容凹部11の開口端縁に当接した状態で保持される、つまり、器具本体1と光源ユニット2の間を閉塞するものである。そして、甲2には、光源ユニット2と器具本体1との間に隙間部を生じさせることについて何ら記載されておらず、そのような示唆があるともいえない。
そうすると、甲2発明において、光源ユニット2と器具本体1の長手方向の境界部分に隙間部を形成することについて、動機付けがあるということはできない。
甲2発明における光源ユニット2を器具本体1に取り付ける方式は、係止板262側を回動中心として光源ユニット2を回動する方式となっている。
ここで、仮に、甲3発明や、申立人が主張するように、上記第4の5〜7の参考A〜Cの記載等に基づいて、長尺状の照明装置であって、光源部本体を照明器具に対して下から上に向かって直線的に挿入して取付ける方式のものにおいて、光源本体部と照明器具の長手方向の境界部分に隙間部を設ける技術が原出願前に公知又は周知であったとしても、この技術は、甲2発明とは、照明器具に対して光源本体部を取付ける方式も異なるものであることから、甲2発明においてそのような技術を適用することで相違点2−2−2に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども容易になし得るものであるということはできない。
よって、本件発明2は、相違点2−2−1について検討するまでもなく、甲2発明及び甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2に対して請求項3において特定した事項をさらに付加することにより限定された発明である。
そうすると、本件発明3も、上記1又は2で示したのと同様の理由により、甲1発明又は甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。


第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、以下の(1)〜(5)のように主張する。
(1)主張1(特許法29条1項3号違反)
本件発明4、6は、甲1に記載された発明であるから、その特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
(2)主張2(特許法29条2項違反)
ア 主張2−1
本件発明4、6及び7は、甲1に記載された発明に基いて、原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
イ 主張2−2
本件発明5、6及び7は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(3)主張3(特許法29条の2違反)
ア 主張3−1
本件発明1は、甲4の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものである。
イ 主張3−2
本件発明4は、甲4の特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものである。
(4)主張4(特許法36条6項1号違反)
本件発明2、3、5〜7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(5)主張5(特許法36条6項2号違反)
本件発明1、3、4及び6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 主張1について
(1)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲1発明を対比する。
(ア)後者の「光源部本体2」は、「前記光源部本体2は、光源部5、導光板6、サポートシャーシ7、及び本体枠8を備え」るものであって、【図3】等を参照すると、上記各構成要素が光源部本体2としてユニット化されていることは明らかであるから、前者の「一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニット」とは、「光源ユニット」である点で共通する。
(イ)後者の「天井面C」は、前者の「取付部」に相当する。後者の「取付部材1」は、「取付部4としてのアダプタガイドが配設され、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAに取り付けられ」ているものであり、また、その「縁部」は、「光源部本体2」を「前面側に開閉可能に、かつ着脱可能に取付け」るものであることから、後者の「取付部材1」は、前者の「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具」とは、「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具」である点で共通する。
(ウ)後者は「係止金具86」の「前記係止部86aを背面側へ突出した前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合する」ものであるから、後者の「光源部本体2」の「本体枠8の」「他辺側における縁部の2箇所に」「取付けられ」た「クランプ金具であり、湾曲状に形成されてばね性を有しており、先端側には係止部86aを備えて前記本体枠8に回動可能に軸支され」た「係止金具86」は、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネ」に相当し、後者の「取付部材1の」「他辺側における開放縁部の2箇所に」「ねじ等の固定手段によって取付けられ」た「背面側へ突出する係止受金具13」は、【図5】等を参照すると、「光源部本体2」が取り付けられる方向に沿って立設されているものといえるから、前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部」に相当する。そして、後者のかかる「係止金具86」及び「係止受金具13」は、前記取付部材1に前記光源部本体2側を取付ける際に、係止金具86を回動し、前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合する機構を形成するものであるといえることから、前者の「相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構」に相当する。
(エ)後者の「前記光源部本体2を前記係止金具85側を支点として回動し、前記取付部材1の前面側を覆うように閉塞し」ている「状態」は、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態」に相当する。また、後者の「前記光源部本体2の前記本体枠を前記取付部材1の前記係止受金具13の前面側の端部に当接させる」という構成は、「係止受金具13の前面側の端部」が光源部本体2と取付部材1との間に設けられ、前記取付部材1に対する前記光源部本体2の高さを固定することは明らかであるから、前者の「前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」とは、「光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部」である点で共通する。また、「係止受金具13の前面側の端部」は、【図5】等を参照すると、立設された係止受金具13の端部といえる。
これらのことを踏まえると、後者の「前記光源部本体2を前記係止金具85側を支点として回動し、前記取付部材1の前面側を覆うように閉塞し、この状態で前記本体枠8に軸支されている前記係止金具86を回動し、前記係止部86aを背面側へ突出した前記係止受金具13に弾性を伴って所定の結合力をもって係合することで、前記光源部本体2の前記本体枠を前記取付部材1の前記係止受金具13の前面側の端部に当接させる」との構成は、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」との構成とは、「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」との構成である点で共通する。
そうすると、本件発明4と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
[一致点4−1]
「光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具と、
相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。」
[相違点4−1−1]
光源ユニットについて、本件発明4では、一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有するのに対して、甲1発明では、光源部5、導光板6、サポートシャーシ7及び本体枠8を備える点。
[相違点4−1−2]
光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具について、その固定される箇所が、本件発明4では、照明器具の底面部であるのに対して、甲1発明では、取付部材11の縁部である点。
[相違点4−1−3]
締結機構について、本件発明4では、プレート部と底面部とのそれぞれに設置されているのに対して、甲1発明では、係止金具86が光源部本体2の本体枠8の縁部に取り付けられ、係止受金具13が取付部材1の開放縁部に取り付けられる点。
[相違点4−1−4]
位置決め部について、本件発明では、プレート部と底面部との間に設けられるのに対して、甲1発明では、光源部本体2と取付部材1との間に設けられる点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点4−1−3について検討する。
甲1発明は、締結機構である係止金具86及び係止受金具13について、係止金具86が光源部本体2の本体枠8の縁部に取り付けられ、係止受金具13が取付部材1の開放縁部に取り付けられることから、締結機構は光源部本体2の導光板6や取付部材1の水平部に設けれるものではないことから、本件発明4とはその設置される場所位置が異なる。
そうすると、相違点4−1−3は、実質的な相違点である。
よって、本件発明4は、相違点4−1−1、相違点4−1−2及び相違点4−1−4について検討するまでもなく、甲1発明であるということはできない。
(2)本件発明6
本件発明6は、本件発明4に対して請求項6において特定した事項をさらに付加することにより限定された発明である。
そうすると、本件発明6も、上記(1)で示したのと同様の理由により、甲1発明であるということはできない。

3 主張2−1について
(1)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲1発明を対比すると、上記2(1)のとおり、一致点4−1で一致し、相違点4−1−1〜相違点4−1−4で相違する。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点4−1−3について検討する。
甲1発明は、締結機構である係止金具86及び係止受金具13について、係止金具86が光源部本体2の本体枠8の縁部に取り付けられ、係止受金具13が取付部材1の開放縁部に取り付けられるものであるが、甲1には係止金具86及び係止受金具13の場所位置を変更することについて記載も示唆もないことから、甲1発明にはその場所位置を変更することについて動機付けがあるとはいえない。
また、特に、甲1発明の光源部本体の平面部を構成する導光板6は、光源部5から光を透過し拡散するという機能があることから、技術常識を踏まえると、そのような機能を有する導光板6に係止金具86を直接取り付けるようなことはしない。そうすると、導光板6に係止金具86を取り付けることには、阻害要因があるといえる。
よって、本件発明4は、相違点4−1−1、相違点4−1−2及び相違点4−1−4について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)本件発明6及び7
本件発明6及び7は、本件発明4に対して請求項6及び7において特定した事項をさらに付加することにより限定された発明である。
そうすると、本件発明6及び7も、上記(1)で示したのと同様の理由により、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4 主張2−2について
(1)本件発明5
ア 対比
本件発明5と甲3発明を対比すると、後者の「取付板33の上板331の下面」は、その機能及び構造からみて、前者の「一面の側」に相当し、以下同様に、「取り付けられた」は「配置された」に、「取付板33」は「プレート部」に、「灯具本体30」は「光源ユニット」に、「天井」は「取付部」に、「取り付けられる」は「固定される」に、「器具本体20」は「照明器具」に、「取付ばね35」は「バネ」に、「取付機構」は「締結機構」に、「位置決め部材225」は「位置決め部」に、「照明器具」は「照明装置」に、それぞれ相当する。
後者の「LEDユニット」は、発光素子であるLEDを内蔵するものであることは明らかであるので、前者の「発光素子」に相当する。
前者の「取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具」と後者の「天井に取り付けられた状態で、灯具本体30が着脱自在に取り付けられる内部を有する器具本体20であって、天板21は有するが灯具本体30は天板21に取り付けられない器具本体20」とは、取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具である点で共通する。
前者の「前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部」と後者の「天板21に設けられたばね用開口29の周面」とは、バネが係合するバネ係合部材である点で共通する。そして、後者の「器具本体20の天板21」は、バネが係合することから締結機構を構成するといえるので、前者の「照明器具」の「底面部」とは、平面部材である点で共通する。
後者の「灯具本体30を器具本体20内部に押し上げる方向」は、後者の「光源ユニットが取り付けられる方向」に相当する。
そうすると、本件発明5と甲3発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。
[一致点]
「一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される照明器具と、
前記プレート部と平面部材とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記バネが係合するバネ係合部材とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。」
[相違点5−3−1]
光源ユニットが照明器具に着脱自在に固定される箇所について、本件発明5では、底面部であるのに対して、甲3発明では、内部であって天板21ではない点。
[相違点5−3−2]
平面部材について、本件発明5では、底面部であるのに対して、甲3発明では、天板21である点。
[相違点5−3−3]
バネ係合部材について、本件発明5では、光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部であるのに対して、甲3発明では、天板21に設けられたばね用開口29の周面である点。
イ 判断
相違点5−3−1〜相違点5−3−3をまとめて検討する。
甲3発明は、灯具本体30の取付板33を器具本体20の内部に挿入するものであり、灯具本体30を器具本体20に取り付けるために、灯具本体30は器具本体20に対して下から上に向かって直線的に挿入する(押し上げる)機構(【0020】を参照。)を採用している。
一方、甲2発明は、器具本体1に光源ユニット2を取り付ける機構として、係止ばね27が係止金具28に係止した状態で係止板262側を回動中心として光源ユニット2が回動する機構となっている。
そうすると、甲3発明と甲2発明とは、器具本体に光源ユニットを取り付ける機構について基本的な構造が異なることから、甲3発明に甲2発明を適用する動機付けは十分であるとはいえない。
また、甲3発明は、灯具本体30の断面C字状の取付板33を器具本体20の内部に挿入するものではあるが、【0011】の記載や図2や図5からみて、天井11内の取付穴12に器具本体20を取り付けることを前提としており、灯具本体30の取付板33の端部は器具本体20の入り口付近ではなく、器具本体20の内部の奥に挿入するものとなっている。してみると、甲3発明は、器具本体20の入り口付近で、取付板33の端部を回動中心部として回動させながら挿入するような構造を採用し得ないことは明らかである。
さらに、甲2発明は、光源ユニット2の係止ばね27を、器具本体1の底面部111に設けられたU字状の係止金具28に対して係止することで、器具本体1に光源ユニット2を取り付ける技術であるが、係止金具28は光源ユニット2が取り付けられる方向に沿って立設されたものとはなっていない。そうすると、仮に、甲3発明の取付ばね35及びばね用開口29の周面に替えて、甲2発明の係止ばね27及び係止金具28の構成を採用したとしても、相違点5−3−1〜相違点5−3−3に係る本件発明5の構成とはなり得ない。
よって、本件発明5は、甲3発明及び甲2発明や甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)本件発明6及び7
本件発明6及び7は、本件発明5に対して請求項6及び7において特定した事項をさらに付加することにより限定された発明である。
そうすると、本件発明6及び7も、上記(1)で示したのと同様の理由により、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5 主張3−1について
(1)対比
本件発明1と甲4発明を対比するに、後者の「光源モジュール20」は、その機能及び構造からみて、前者の「光源ユニット」に相当し、以下同様に、「天井面」は「取付部」に、「器具本体10」は「照明器具」に、「掛止機構」は「締結機構」に、「弾性体40」は「バネ」に、「板状部材である取付金具14」は「板部」に、それぞれ相当する。
また、後者の「取付金具14に対して光源モジュール20の取り付け方向と反対方向に弾性力を作用させる」は、弾性力の作用する方向は光源モジュール20の取付方向に沿っていることから、前者の「光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用する」に相当する。
ここで、本件特許の明細書の【0036】の「図10では、板部1501の上辺部1502が直接底面部211aに当接する。すなわち、板部1501の上辺部1502が位置決め部151を構成する。あるいは、図9に示すように、板部1501の上辺部1502に底面部211aと当接させるための別部材を位置決め部151として配置してもよい。」、【0037】の「位置決め部151は、カバー側部131が開口縁部211baと対向するように光源ユニット100が凹部211に取り付けられた状態で、底面部211aと当たり、光源ユニット100を適切な位置に位置決めする。位置決め部151は、底面部211aと当接する器具当接部、あるいは、照明器具200に対する光源ユニット100の高さを固定する高さ固定部とも称される。」と記載からもわかるとおり、本件発明1では、「立設された板部の端部」に配置された「位置決め部材」が照明器具に当接することで、光源ユニットと照明器具の位置関係を定めるものとなっている。
また、後者の「弾性体40」及び「取付金具14」は、光源モジュール20が器具本体10に固定されたときに、これらの間に配置されたものであることは明らかである。
そうすると、後者の「光源モジュール20が器具本体10に固定されたときに光源モジュール20と器具本体10との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるよう、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止することで、光源モジュール20と器具本体10を固定し、これらの位置関係を定める」構成と、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」とは、前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記光源ユニットと前記照明器具との位置関係を定める部材を備える点で共通する。
してみると、本件発明1と甲4発明の一致点および相違点は、以下のとおりである。
[一致点4−4]
「長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記光源ユニットと前記照明器具との位置関係を定める部材と
を備える照明装置。」
[相違点1−4]
光源ユニットと照明器具との位置関係を定める部材について、本件発明1では、照明器具に対する光源ユニットの高さを固定する位置決め部を備え、位置決め部材は、立設された板部の端部に配置される構成であるのに対して、甲4発明では、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止する構成である点。
(2)判断
相違点1−4について検討する。
本件発明1の光源ユニットと照明器具との位置関係を定める部材は、立設された板部の端部に配置される位置決め部材である。
これに対して、甲4発明は、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止する構成を有することから、甲4発明の光源モジュール20と器具本体10の位置関係を定める部材は、取付金具14である立設された板状の部材ではあとはいえ、その端部ではなく、その内部に形成された掛止部14aとなっている。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、その位置決め部材が異なることから、相違点1−4は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲4発明と同一であるということはできない。

6 主張3−2について
(1)対比
本件発明4と甲4発明を対比するに、後者の「第1面25a」は、その機能及び構造からみて、前者の「一面」に相当し、以下同様に、「発光ダイオード」は「発光素子」に、「基板25を支持する支持体21」は「プレート部」に、「光源モジュール20」は「光源ユニット」に、「天井面」は「取付部」に、「凹部11a」は「底面部」に、「器具本体10」は「照明器具」に、「掛止機構」は「締結機構」に、「弾性体40」は「バネ」に、「板状部材である取付金具14」は「板部」に、それぞれ相当する。
また、後者の「取付金具14に対して光源モジュール20の取り付け方向と反対方向に弾性力を作用させる」は、弾性力の作用する方向は光源モジュール20の取付方向に沿っていることから、前者の「光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用する」に相当する。
ここで、本件特許の明細書の【0036】の「図10では、板部1501の上辺部1502が直接底面部211aに当接する。すなわち、板部1501の上辺部1502が位置決め部151を構成する。あるいは、図9に示すように、板部1501の上辺部1502に底面部211aと当接させるための別部材を位置決め部151として配置してもよい。」、【0037】の「位置決め部151は、カバー側部131が開口縁部211baと対向するように光源ユニット100が凹部211に取り付けられた状態で、底面部211aと当たり、光源ユニット100を適切な位置に位置決めする。位置決め部151は、底面部211aと当接する器具当接部、あるいは、照明器具200に対する光源ユニット100の高さを固定する高さ固定部とも称される。」と記載からもわかるとおり、本件発明1では、「立設された板部の端部」に配置された「位置決め部材」が照明器具に当接することで、光源ユニットと照明器具の位置関係を定めるものとなっている。
また、後者の「弾性体40」及び「取付金具14」は、光源モジュール20が器具本体10に固定されたときに、これらの間に配置されたものであることは明らかである。
そうすると、後者の「光源モジュール20が器具本体10に固定されたときに光源モジュール20と器具本体10との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるよう、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止することで、光源モジュール20と器具本体10を固定し、これらの位置関係を定める」構成と、前者の「前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部とを備え、前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された」とは、前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との位置関係を定める部材を備える点で共通する。
してみると、本件発明4と甲4発明の一致点および相違点は、以下のとおりである。
[一致点4−4]
「一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具と、
前記プレート部と前記底面部とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との位置関係を定める部材と
を備える照明装置。」
[相違点4−4]
光源ユニットと照明器具との位置関係を定める部材について、本件発明4では、照明器具に対する光源ユニットの高さを固定する位置決め部を備え、位置決め部材は、立設された板部の端部に配置される構成であるのに対して、甲4発明では、弾性体40の第4部分40f4が取付金具14の内部に形成された挿通孔oの掛止部14aに対して掛止する構成である点。
(2)判断
相違点4−4は、相違点4−1と同じである。
よって、本件発明4は、上記6(2)で示したのと同様の理由により、甲4発明と同一であるということはできない。

7 主張4について
(1)主張4の概要
申立人の主張は、要するに、本件発明2、3、5〜7の「位置決め部」の位置について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、電源装置140の上面に装置位置決め部141を設ける場合は記載されているが、「締結機構が設けられていない箇所」に設けるまで一般化することはできないというものである。また、「締結機構が設けられていない箇所」は、照明器具の収容部側面と光源ユニットの短手方向の端部との間に両方に面接触する位置決め部を備える構成が含まれているから、本件発明2、3、5〜7は、本件特許の課題を解決できない発明であるというものである。
(2)判断
本件特許の明細書には、以下の記載がある。
「【0005】
本発明では、光源ユニットを照明器具に対して適切な位置に位置決めすることができる照明装置を提供することを目的とする。」
「【0039】
光源ユニット100は、電源装置140が装置取付面部111dに配置されている。
電源装置140は、図9に示すように、光源ユニット100が凹部211に取り付けられた状態で、底面部211aと当たる装置位置決め部141を上面に備える。装置位置決め部141はスペーサとも称される。装置位置決め部141は、例えば、シリコン、プラスチックなどにより形成されていてもよい。あるいは、装置位置決め部141は、電源装置140の上面を切り起こすことにより形成されていてもよい。装置位置決め部141の形状は、直方体形状、円柱形状、楕円柱形状、半球形状などでもよい。また、切り起こしにより形成された場合には、板状でもよい。
電源装置140から底面部211aへの放熱を促進する場合は、装置位置決め部141は熱伝導性が高い材料で形成したり底面部211aとの接触する面積を大きくしたりするとよい。また、底面部211a側から光源ユニット100側への受熱を抑制する場合は、装置位置決め部141は熱伝導性が低い材料で形成したり底面部211aとの接触する面積を小さくしたりするとよい。
【0040】
装置位置決め部141は、光源ユニット100が直線状態を保つ位置で底面部211aと当たるように構成されている。
図9に示すように、光源ユニット100は、長手方向の両端部の近傍で位置決め部151により位置決めされ、2つの位置決め部151の間では、装置位置決め部141により上方に撓むことが防止されている。よって、板バネ230により長時間上方に引き上げられている状態でも、光源ユニット100が上方に撓むことを確実に防ぐことができる。」
また、図9は、以下のとおりである。
【図9】


【0005】、【0039】及び【0040】の記載を踏まえると、本件発明は、光源ユニットを照明器具に対して適切な位置に位置決めすることができる照明装置を提供すること、また、板バネ230により長時間上方に引き上げられている状態でも、光源ユニット100が上方に撓むことを確実に防ぐことを課題としているといえる。
そして、申立人が主張するとおり、「締結機構が設けられていない箇所」の事例として、電源装置140の上面に装置位置決め部141を設ける場合が記載されている。
しかしながら、本件特許の課題である光源ユニット100が上方に撓むことを確実に防ぐためには、2つの位置決め部151の間又は外側のいずれかの場所で、つまり、締結機構が設けられていない箇所で、照明器具に対する光源ユニットの高さを固定する位置決め部をさらに設ければよいことは、構造力学的にみれば、当業者であれば当然理解できるところであり、それが電源装置140の上面に限らなければならないとする理由もない。また、上記外側である場合の位置決め部の場所として、照明器具の収容部の端部と光源ユニットの短手方向の端部とが互いに当接するものも含まれることは明らかである。
よって、本件発明2、3,5〜7は、サポート要件を満たすものである。
なお、本件特許の明細書の【0004】には、「特許文献1,2のように、照明器具の収容部側面と、光源ユニットの短手方向の両壁部あるいは電源ケースとが面接触する構成では、光源ユニットを照明器具に対して適切な位置に位置決めすることができないという課題がある。」と記載されているが、これは、光源ユニットが照明器具に取り付けられる方向とは異なる短手方向において、照明器具の収容部側面と光源ユニットの両壁部が面接触して力が加わることにより生じることによる位置決めの不具合を課題としているもの(特許文献1(特開2014−179209号公報)、特許文献2(特開2014−179210号公報)を参照。)であり、申立人の主張は当を得ない。

8 主張5について
(1)主要5の概要
申立人の主張は、要するに、本件発明1、3、4及び6の「端部」が板部のどの部分を示すか明確でないというものである。
(2)判断
「端」とは、「物の末の部分。先端。」(広辞苑第六版)であり、本件発明1、3、4及び6の「板部の端部」とは、「板部」の先端の部分を意味する。
そして、本件発明1、3、4及び6の「位置決め部」は「照明器具に対する光源ユニットの高さを固定する」ものであることから、「板部の端部」とは、照明器具又は光源ユニットに当接できる板部の先端の部分を意味することは明らかである。
このことは、本件特許の明細書の【0036】の「板バネ230は、板部1501の貫通孔152に挿入され、板部1501を取付方向に引き付けることにより光源ユニット100を凹部211に取り付ける。板部1501は、光源ユニット100が凹部211に取り付けられた状態で、底面部211aと当たる位置決め部151を備える。
なお、図10では、板部1501の上辺部1502が直接底面部211aに当接する。すなわち、板部1501の上辺部1502が位置決め部151を構成する。あるいは、図9に示すように、板部1501の上辺部1502に底面部211aと当接させるための別部材を位置決め部151として配置してもよい。」という記載からも明らかである。
よって、本件発明1、3、4及び6は、明確性要件を満たすものである。


第8むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立書によっては、本件発明1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。
【請求項2】
長尺状の光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される長尺状の照明器具と、
前記光源ユニットと前記照明器具とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットと前記照明器具との間に設けられ、前記光源ユニットと前記照明器具との長手方向の境界部分に隙間部が形成されるように前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記光源ユニットにおける前記取付部の側となる位置、或いは、前記照明器具における前記取付部と反対側の位置の少なくとも何れか一方に設けられ、前記光源ユニット或いは前記照明器具における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具と、
前記プレート部と前記底面部とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、立設された前記板部の端部に配置された照明装置。
【請求項5】
一面の側に発光素子が配置されたプレート部を有する光源ユニットと、
取付部に取り付けられた状態で、前記光源ユニットが着脱自在に固定される底面部を有する照明器具と、
前記プレート部と前記底面部とのそれぞれに設置され、相互に係合することによって前記光源ユニットが前記照明器具に固定される締結機構であって、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って弾性力が作用するバネと、前記光源ユニットが取り付けられる方向に沿って立設され、前記バネと係合する板部とからなる締結機構と、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部と前記底面部との間に設けられ、前記照明器具に対する前記光源ユニットの高さを固定する位置決め部と
を備え、
前記位置決め部は、前記締結機構が設けられていない箇所に配置された照明装置。
【請求項6】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で、前記プレート部、又は前記光源ユニットにおける前記プレート部より前記底面部の側の位置、或いは、前記底面部、又は前記照明器具における前記底面部より前記プレート部の側の位置の少なくとも何れかに設けられ、前記プレート部或いは前記底面部における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項4又は請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記位置決め部は、
前記光源ユニットが前記照明器具に固定された状態で前記プレート部における前記底面部と対向する側の位置、或いは、前記底面部における前記プレート部と対向する側の位置の少なくとも何れか一方に設けられ、前記プレート部或いは前記底面部における前記位置決め部が設けられていない部分に当接する請求項5に記載の照明装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-17 
出願番号 P2019-113874
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F21V)
P 1 651・ 16- YAA (F21V)
P 1 651・ 113- YAA (F21V)
P 1 651・ 537- YAA (F21V)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 畔津 圭介
島田 信一
登録日 2020-12-17 
登録番号 6811809
権利者 三菱電機照明株式会社 三菱電機株式会社
発明の名称 照明装置  
代理人 溝井国際特許業務法人  
代理人 溝井国際特許業務法人  
代理人 溝井国際特許業務法人  

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