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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1385696
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-27 
確定日 2022-03-31 
事件の表示 特願2019−504580「液晶パネルおよび液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日国際公開、WO2018/164063〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月5日(優先権主張 平成29年3月6日)を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和2年 4月15日付け:拒絶理由通知書
令和2年 6月17日 :意見書の提出
令和2年11月 5日付け:拒絶査定
令和3年 1月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 9月30日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月25日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜7に係る発明は、令和3年11月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
IPSモードの液晶セル、
前記液晶セルの視認側から順に配置された第1光学機能層および第1偏光フィルムと、
前記液晶セルの背面側から順に配置された第2光学機能層および第2偏光フィルムを有する液晶パネルにおいて、
前記第1光学機能層が、色素を含有し、かつヘイズが0.2〜2%の範囲にあり、第2光学機能層が色素を有しないことを特徴とする液晶パネル。」

第3 拒絶の理由
令和3年9月30日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について

・請求項 1〜6
・引用文献等 1

●理由2(進歩性)について

・請求項 1〜6
・引用文献等 1、2

<引用文献等一覧>
1.特開2010−134349号公報
2.特開2011−231288号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1
ア 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【0013】
<1.第1の実施の形態(VAモードの液晶表示装置の例)>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置の断面構成を模式的に表したものである。この液晶表示装置は、液晶表示パネル10と、バックライトユニット20と、液晶表示パネル10およびバックライトユニット20の間に設けられた色光吸収層30とを備えている。この液晶表示装置は、例えば、図示しないゲートドライバから供給される駆動信号によって、データドライバから伝達される映像信号に基づいて画素ごとに映像表示を行うアクティブマトリクス方式の表示装置である。
【0014】
液晶表示パネル10は、マトリクス状に配置された複数の画素、例えば赤(R:Red)を表示する画素、緑(G:Green)を表示する画素、青(B:Blue)を表示する画素を有している。液晶表示パネル10は、液晶表示セル11(液晶表示素子)と、液晶表示セル11を挟持するように設けられた一対の偏光板16,17とを有している。
【0015】
液晶表示セル11は、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)基板12とCF(Color Filter;カラーフィルタ)基板15との間に、一対の配向膜13A,13Bを介して液晶層14が設けられている。
【0016】
TFT基板12は、ガラス基板12AのCF基板15と対向する表面に、例えば、マトリックス状に複数の画素電極12Bが配置されたものである。ガラス基板12Aは、例えばガラスなどを含んで構成されている。ガラス基板12Aには、各画素をそれぞれ駆動するゲート・ソース・ドレイン等を備えたTFTスイッチング素子(図示せず)が形成されている。また、ガラス基板12Aには、これらTFTスイッチング素子に接続されるゲート線およびデータ線などの各種配線(図示せず)も形成されている。画素電極12Bは、例えばITO(インジウム錫酸化物)などの透明電極材料により構成されている。
【0017】
CF基板15は、ガラス基板15AのTFT基板12と対向する表面に、画素ごとに形成されたカラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)と、有効表示領域ほぼ全面にわたって対向電極15Cが配置されたものである。ガラス基板15Aは、例えば、ガラスやプラスチックなどの透明材料により構成されている。カラーフィルタ15B(15B(R),15B(G),15B(B))は、それぞれ赤色、緑色および青色の着色層を配列して構成されている。このカラーフィルタ15Bは、例えば、顔料分散型カラーフィルタ等であり、それぞれ赤色、緑色および青色の波長領域の光を透過すると共に、それ以外の波長領域の光を吸収するようになっている。対向電極15Cは、画素電極12Bと同様に、例えば、ITOなどの透明電極材料により構成されている。なお、ここでは、赤色、緑色および青色の波長領域の光を透過するカラーフィルタを用いた場合について説明しているが、その他の色の波長領域の光を透過するものを用いてもよい。
・・・
【0021】
偏光板16は、TFT基板12のバックライトユニット20側に、偏光板17は、CF基板15の表示面側にそれぞれ設けられている。液晶表示セル11を外側から挟持する一対の偏光板16,17は、特定の方向に振動する偏光を透過させ、それと直交する方向に振動する偏光を吸収するようになっている。偏光板16,17は、それぞれの透過軸が、互いに直交するように配置されている。偏光板16が偏光子、偏光板17が検光子となっている。この偏光板16,17としては、例えば、テレビ用のニュートラルグレイが挙げられ、単体透過率が40%以上42%以下であると共に、偏光度が99.9%以上のものが好ましい。ここでは、偏光板16は、TFT基板12側から粘着層16A、位相差層16B、偏光層16Cおよび保護層16Dを積層して有している。また、偏光板17は、CF基板15側から粘着層17A、位相差層17B、偏光層17C、保護層17Dおよびハードコート層17Eを積層して有している。偏光板16,17は、例えば、上記した各層を構成する材料フィルム(以下、単に材料フィルムという)を上記の順に、ポリビニルアルコールなどの接着剤を用いて加圧しながら貼り合わせることにより形成される。
【0022】
粘着層16A,17Aは、偏光板16,17をTFT基板12およびCF基板15のそれぞれに接着するための層である。粘着層16A,17Aは、例えば、アクリル系粘着材などにより構成されている。アクリル系粘着材としては、例えば、ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体などが挙げられる。この粘着層16A,17Aの材料フィルムは、例えば、雛形フィルム(剥離フィルム)上に、溶剤に粘着材を分散させた分散液を塗布したのち、乾燥させて形成される。なお、偏光板16,17では、粘着層の材料フィルムを形成する際に用いた雛形フィルムは剥離して用いる。このため、粘着層の材料フィルムを単独で保存する場合には、粘着層を雛形フィルムで両面から挟持した構造としてもよい。この雛形フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラートフィルムなどが挙げられる。
・・・
【0024】
偏光層16C,17Cは、特定の方向に振動する偏光を透過させ、それと直交する方向に振動する偏光を吸収するためのものである。偏光層16C,17Cの材料フィルムは、例えば、一軸延伸したポリビニルアルコールフィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬したのち、ヨウ化カリウムおよびホウ酸を含む水溶液に浸漬し、そののち乾燥させることにより形成される。」

(イ)「【0034】
色光吸収層30は、光源21から発せられる光のうち、カラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)を透過する複数色の光のうち透過波長域が互いに隣り合った2つの色における各透過波長域同士が重なり合った重複領域(以下、中間色の波長領域という)の色光を選択的に吸収すると共に、それ以外の波長の光を透過するものである。これにより、表示面から発せられる光の色純度が向上する。すなわち、ここでは、上記したように、カラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)がそれぞれ赤色、緑色および青色の波長領域の光を透過する。よって、色光吸収層30は、赤色と緑色との重なる波長領域、および緑色と青色との重なる波長領域のうちの少なくとも一方の色光を吸収すると共に、それ以外の波長の色光を透過する。
【0035】
色光吸収層30の光吸収ピーク波長は、570nm以上610nm以下の範囲および440nm以上510nm以下の範囲のうちの少なくとも一方の範囲にあるのが好ましい。この範囲内にあれば、範囲外にあるよりも効率よく中間色の波長領域の色光を吸収できるからである。特に、570nm以上610nm以下の範囲にあるのが好ましい。光源21からの白色光には、ここでの中間色の波長領域である黄色の波長領域の光が多く含まれやすいため、より高い色純度が得られるからである。
【0036】
色光吸収層30は、例えば、中間色の波長領域の色光を吸収する1種あるいは2種以上の色素と、その基材となる樹脂とを含んでいる。
【0037】
中間色の波長領域の色光を吸収する色素(以下、単に色素という)としては、例えば、上記した波長の光を吸収するものであれば任意であり、染料であってもよいし、顔料であってもよい。色素としては、例えば、キサンテン系、スアリリウム系、シアニン系、オキソノール系、アゾ系、ピロメテン系あるいはポリフィリン系の化合物などが挙げられる。中でも、ポルフィリン系化合物が好ましい。容易に入手可能であると共に、安定性および吸収特性が高いからである。特に、ポルフィリン系化合物は、テトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン錯体あるいはテトラ−neo−ペンチル−テトラアザポルフィリン錯体などの分岐アルキル基を置換基として有する化合物であることが好ましい。t(ターシャリ)−ブチル基やneo−ペンチル基などの分岐アルキル基を有すると、ポルフィリン系化合物の立体構造が3次元的に高い立体性を有することになり、会合体形成や結晶化による吸収特性の低下が抑制されると共に、溶剤等への溶解性が向上する。これにより、例えば、キャスティング法などの溶剤を使用して樹脂フィルムを成型する方法を用いて色光吸収層30を形成する場合に、色素の分散性がより均一になり、高い吸収特性が得られる。ポルフィリン系化合物としては、上記した化合物の他に、例えば、特開2006−63195号公報に記載された化合物などが挙げられる。また、ポルフィリン系化合物は、J.Gen.Chem.USSR,vol.47,1954−1958(1977)に記載された方法により合成することができる。なお、ここで用いる色素は、上記のものに限定されるものではない。
・・・
【0040】
色光吸収層30中における色素の含有量は、色素の吸収特性や、層の厚さや、目的とする透過特性などによって異なるが、樹脂に対して数質量ppm〜数質量%であってもよい。
・・・
【0055】
次に、上記した液晶表示装置の作用、効果について説明する。
【0056】
液晶表示装置では、バックライトユニット20から射出された光のうち中間色の波長領域の色光が色光吸収層30により吸収されて、それ以外の光が液晶表示パネル10に入射する。詳細には、バックライトユニット20の光源21から発せられた光は、拡散板22および第1拡散シート23により、面内方向の輝度を均一に保つように拡散されながら集光シート24に入射する。集光シート24に入射した光は、光源21側に反射されると共に液晶表示パネル10の法線方向に集光され、反射偏光子25に入射する。反射偏光子25に入射した光のうち特定の偏光成分の光は透過され、それ以外の光は光源21側に反射される。集光シート24および反射偏光子25により光源側21に反射された光は、光源21により反射されて再度、上記と同様にして集光シート24および反射偏光子25に入射する。このように光源21と反射偏光子25との間で反射および拡散を繰り返した光のうち特定の偏光成分の光も併せて反射偏光子25を透過し、第2拡散シート26に入射する。第2拡散シート26に入射した光は、拡散されながら表示面側に射出される。
【0057】
上記のようにバックライトユニット20から射出された光は、色光吸収層30に入射し、中間色の波長領域の光成分を吸収すると共に、それ以外の波長の光を偏光板16に入射する。偏光板16に入射した光は、特定の偏光成分のみが透過され、液晶表示セル11のTFT基板12側からに液晶層14へ入射する。液晶層14では、画像データに基づいて各画素電極12Bと対向電極15Cとの間に印加される電圧によって、光が変調される。液晶層14を透過した光は、画素ごとに、CF基板15に設けられたカラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)によって、それぞれ赤、緑、青の光として取り出されたのち、偏光板17によって特定の偏光成分のみが透過されて、表示が行われる。ここでは、色光吸収層30が反射偏光子25とTFT基板12との間に設けられているので、液晶表示パネル10の表示面側から射出される光は、色光吸収層30を設けなかった場合と比較して、色純度の高いものとなる。
【0058】
ここで、従来の液晶表示装置では、中間色の波長領域の光を吸収する色光吸収層が反射偏光子よりも光源側に含まれている。この場合、光源と反射偏光子との間で反射および拡散を繰り返す光は、色光吸収層への入射および透過を繰り返すことになる。従って、この繰り返す光では、色光吸収層を通過する距離(=光路長)がその繰り返しによって長くなり、中間色の波長領域の光成分は繰り返し吸収されることになる。ところが、色光吸収層の吸収ピークには有限な幅があり、そのピークの裾野は中間色の波長領域以外にも広がっていることにより、中間色の波長領域以外の波長の光成分も吸収される。また、色光吸収層による光吸収量は、色光吸収層の厚さや色光吸収層を通過する距離の長さなどの光路長に対して線形(正比例)になるものではなく、光路長が短くても色光吸収層による光吸収量が大きい波長ほど早くその光吸収量は飽和する傾向にある。このため、色光吸収層を通過する光路長が長くなると吸収ピークがブロード化し、中間色の波長領域以外の波長の光成分の吸収量が相対的に高くなる。すなわち、色光吸収層を反射偏光子よりも光源側に含む場合には、カラーフィルタによって取り出される複数色の光の一部も吸収され、表示面側に射出される光量が低下する。その上、カラーフィルタによって取り出される複数色の光成分と中間色の光成分との光量の差も小さくなるため、表示面側に射出される光の色純度も低くなる。
【0059】
これに対して、本実施の形態の液晶表示装置では、反射偏光子25よりも表示面側にある第2拡散シート26と、液晶表示パネル10の光源側に設けられた偏光板16との間に色光吸収層30を含むようにした。これにより、中間色の波長領域の光成分が吸収されると共に、それ以外の光の吸収が抑制されるため、表示面側に射出される光量が確保されると共にその光の色純度が向上する。よって、消費電力を抑えつつ、輝度を確保すると共に色再現性を向上させることができる。また、色光吸収層30が偏光板16と反射偏光子25との間に設けられているので、色光吸収層30を透過した光が散乱しても、液晶表示パネル10における偏光板16と偏光板17との間の偏光状態を乱すおそれがないため、十分なコントラストを確保することができる。さらに、色光吸収層30は、比較的簡単に形成され、しかも、液晶表示パネル10とバックライトユニット20との間に配置されているため、容易に製造することができる。」

(ウ)「【0060】
<2.第2の実施の形態(他のVAモードの液晶表示装置の例)>
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置の断面構成を模式的に表したものである。この液晶表示装置は、色光吸収層30を設ける代わりに、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが上記した色光吸収層30と同様の機能を有することを除き、第1の実施の形態と同様の構成を有している。すなわち、本実施の形態では、中間色の波長領域の色光を吸収する色光吸収層として、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが中間色の波長領域の色光を吸収する色光吸収層として兼用されている。これにより、光源21から発せられた光は、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つにより、中間色の波長領域の色光が吸収され、表示面側から射出される光は、色純度が向上する。
【0061】
偏光板16が色光吸収層として兼用される場合には、粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dのうちのいずれか一つの層が、上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を含んでいる。すなわち、この場合における偏光板16では、粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dのうちの少なくとも一つ色光吸収層として兼用されている。この場合、中でも、保護層16Dが色光吸収層として兼用されることが好ましい。高いコントラストが得られるからである。具体的には、色光吸収層を偏光層16Cよりも表示面側に含むと、色光吸収層中の色素の局在状態により、偏光層16Cと偏光層17Cとの偏光状態を乱れやすくなり、黒表示時の輝度が上昇してコントラストが低下するおそれがあるからである。
【0062】
色素を含む粘着層16Aは、例えば、溶剤に粘着材を分散させると共に上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を溶解させた分散液を用いて上記した粘着層16A,17Bと同様に形成される。色素を含む位相差層16Bは、樹脂材料と共に色素を一軸押出機によって溶融押出することにより作製された原板フィルムを用いて、上記した位相差層16B,17Bと同様にして形成される。色素を含む保護層16Dは、例えば、溶剤にセルロース樹脂と共に色素を溶解させた溶液を用いて上記した保護層16D,17Dと同様にして形成される。
【0063】
第2拡散シート26が色光吸収層として兼用される場合には、上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を有している。色素を含む第2拡散シート26は、例えば、さらに色素を添加して調製したバインダ層形成溶液を用いて、上記した第2拡散シート26と同様にして形成される。
【0064】
この液晶表示装置は、色光吸収層30を用いる代わりに、中間色の波長領域の色光を吸収可能な偏光板16および第2拡散シート26のうちの少なくとも一方を用いることを除き、第1の実施の形態における液晶表示装置と同様に製造することができる。
【0065】
この液晶表示装置では、バックライトユニット20の光源21から発せられた光は、拡散板22および第1拡散シート23により、面内方向の輝度を均一に保つように拡散されながら集光シート24に入射する。集光シート24に入射した光は、光源21側に反射されると共に液晶表示パネル10の法線方向に集光され、反射偏光子25に入射する。反射偏光子25に入射した光のうち特定の偏光成分の光は透過され、それ以外の偏光成分の光は光源21側に反射される。光源21と反射偏光子25との間で反射および拡散を繰り返した光のうち特定の偏光成分の光も併せて反射偏光子25を透過し、第2拡散シート26に入射する。第2拡散シート26に入射した光は、バックライトユニット20から射出された光として偏光板16に入射し、特定の偏光成分のみが透過され、液晶表示セル11のTFT基板12側からに液晶層14へ入射する。液晶層14では、画像データに基づいて各画素電極12Bと対向電極15Cとの間に印加される電圧によって、光が変調される。液晶層14を透過した光は、画素ごとに、CF基板15に設けられたカラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)によって、それぞれ赤、緑、青の光として取り出されたのち、偏光板17によって特定の偏光成分のみが透過されて、表示が行われる。ここでは、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが中間色の波長領域の光を吸収することにより、液晶表示パネル10の表示面側から射出される光は、色純度の高いものとなる。
【0066】
すなわち、本実施の形態の液晶表示装置では、反射偏光子25とTFT基板12との間に中間色の波長領域の光を吸収する色光吸収層を設けるようにした。具体的には、偏光板16および第1拡散シート26のうちのいずれか1つが色光吸収層として兼用されるようにした。これにより、反射偏光子25よりも光源21側に色光吸収層を設けた場合よりも、中間色の波長領域の光成分が吸収されると共に、それ以外の光成分の吸収が抑制されるため、表示面側に射出される光の光量が確保されると共に色純度が向上する。よって、消費電力を抑えつつ、輝度を確保すると共に色再現性を向上させることができる。この場合、偏光板16の保護層16Dが色光吸収層として兼用されるようにすれば、輝度および色再現性と共にコントラストをより向上させることができる。その上、偏光板17が色光吸収層として兼用される場合に黒表示時における外光によって生じるおそれがある表示面の色づきも回避することができる。」

(エ)「【0071】
ちなみに、第2の実施の形態では、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが色光吸収層として兼用される場合について説明したが、偏光板17が色光吸収層の機能を有していてもよい。偏光板17が色光吸収層として兼用される場合には、粘着層17A、位相差層17B、保護層17Dおよびハードコート層17Eのうちの少なくとも一つの層が、上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を含んでいる。すなわち、粘着層17A、位相差層17B、保護層17Dおよびハードコート層17Eのうちのいずれか一つが色光吸収層として兼用されている。ただし、この場合、高いコントラストを得るためには、保護層17Dあるいはハードコート層17Eが色光吸収層として兼用されることが好ましい。上記したように、色光吸収層を偏光層17Cよりも液晶セル11側に含むと、色光吸収層中の色素の局在状態により、偏光層16Cと偏光層17Cとの偏光状態が乱れやすくなり、コントラストが低下し、黒表示時の輝度が上昇するおそれがあるからである。ところが、その一方で、偏光層17Cよりも表示面側に色光吸収層を含んでいると、色光吸収層中の色素の種類やその含有量によっては、黒表示時に外部からの光により表示面が色づいてみえるおそれがある。このため、黒表示時の表示面の色づきを回避するには、粘着層17Aおよび位相差層17Bのうちの少なくとも一方が色光吸収層として兼用されるほうがよい。
【0072】
色素を含む粘着層17A、位相差層17Bおよび保護層17Dは、上記の色素を含む粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dと同様にして形成される。色素を含むハードコート層17Eは、さらに色素を添加して調製した樹脂混合剤を用いて、上記のハードコート層17Eと同様にして形成される。」

(オ)「【実施例】
【0073】
本発明の実施例について、詳細に説明する。
【0074】
(実験例1−1)
以下の手順により、図1に示した液晶表示装置を作製した。この際、バックライトユニット20として図4に示したバックライトユニット20を用いた。
【0075】
まず、液晶表示パネル10を作製した。ガラス基板12Aの表面に、マトリクス状にITOからなる画素電極12Bを設けることにより、TFT基板12を形成した。続いて、ガラス基板15Aの表面に、R、G、Bのカラーフィルタ15B(R),15B(G),15B(B)をパターニングしたのち、そのカラーフィルタ15B(R,G,B)の上に、ITOからなる対向電極15Cを設けてCF基板15を形成した。続いて、画素電極12Bおよび対向電極15Cの表面を覆うようにポリイミドを含む垂直配向剤を塗布して焼成することにより配向膜13A,13Bをそれぞれ形成した。
【0076】
続いて、TFT基板12に設けられた配向膜13Aに対して、セルギャップを確保するためのプラスチックビーズを散布すると共に、スクリーン印刷法によりエポキシ接着剤を用いて、シール部を印刷した。こののち、TFT基板12とCF基板15とを、配向膜13A,13B同士が対向するように、スペーサおよびシール部を介して貼り合わせると共に、ネガ型液晶からなる液晶材料を注入した。その後、加熱してシール部を硬化することにより、液晶層14をTFT基板12とCF基板15との間に封止し、液晶表示セル11が完成した。
【0077】
続いて、偏光板16,17を作製した。始めに、各層を構成するフィルム(材料フィルム)を形成した。この場合には、粘着層16A,17Aの材料フィルムは、雛形フィルム上に、屈折率1.50のブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体を含む市販のアクリル系粘着材を塗布したのち、乾燥させて厚さ25μmの粘着層を有するフィルムを形成した。この雛形フィルムとしてはポリエチレンテレフタラートフィルム(厚さ38μmのテトロンフィルム;帝人デュポン社製)を用いた。
・・・
【0079】
偏光層16C,17Cの材料フィルムは、以下の手順により形成した。厚さ120μmポリビニルアルコールフィルムを110℃の雰囲気下で5倍に一軸延伸した。続いて、延伸されたポリビニルアルコールフィルムを、水100g対してヨウ素0.075gおよびヨウ化カリウム5gの割合で含む水溶液中に60秒間浸漬した。こののち、延伸されたポリビニルアルコールフィルムを引き上げて、水100gに対してヨウ化カリウム6gおよびホウ酸7.5gを含む水溶液(液温68℃)中に浸漬した。次いで、延伸されたポリビニルアルコールフィルムを引き上げて、水洗したのち乾燥させた。
・・・
【0082】
次に、上記した各層の材料フィルムを貼り合わせて偏光板16を作製した。この場合には、まず、位相差層16Bおよび保護層16Dの各材料フィルムの偏光層16Cと接する面を60℃の2mol/dm3水酸化ナトリウム溶液中に90秒間浸漬して、鹸化処理を行った。その一方で、固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤の中に、偏光層16Cの材料フィルムを1〜2秒間浸漬し、そののち余分な接着剤を除去した。続いて、位相差層16Bの材料フィルムと偏光層16Cの材料フィルムと保護層16Dの材料フィルムとを所定の順に重ね合わせ、ハンドローラを用いて20〜30N/cm2の圧力をかけながら、ローラスピードを2m/分として貼り合わせた。最後に、粘着層16Aの材料フィルムから雛形シートを剥離したのち、粘着層16Aを位相差層16B上に空気が入らないように貼りつけた。
【0083】
また、次に、上記した各層の材料フィルムを貼り合わせて偏光板17を作製した。この場合には、まず、位相差層17Bの材料フィルムの偏光層17Cと接する面と、保護層17Dの材料フィルムの両面とを60℃の2mol/dm3水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬して、鹸化処理を行った。また、ハードコート層17Eの材料フィルムの保護層17Dと接する面(トリアセチルセルロースフィルムが露出した面)を上記と同様にして鹸化処理を行った。続いて、固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤の中に偏光層17Cの材料フィルムを1〜2秒間浸漬すると共に、ハードコート層17Eの材料フィルムの鹸化処理面に同じ接着剤を塗布し、そののち余分な接着剤を除去した。続いて、位相差層17Bの材料フィルムと偏光層17Cの材料フィルムと保護層17Dの材料フィルムと、ハードコート層17Eの材料フィルムとを所定の順に重ね合わせた。この重ね合わせた材料フィルムをハンドローラを用いて20〜30N/cm2の圧力をかけながら、ローラスピードを2m/分として貼り合わせた。最後に、位相差層17B上に粘着層17Aを空気が入らないように貼りつけることにより、偏光板17を得た。
【0084】
続いて、TFT基板12の下面およびCF基板15の上面に、偏光層16C,17Cの透過軸が互いに直交すると共に、粘着層16A,17Aとガラス基板12A,15Aとがそれぞれ接するように、偏光板16および偏光板17を貼り合わせた。これにより、液晶表示パネル10が完成した。
【0085】
次に、光源21と拡散板22と反射偏向子25と集光シート24とを用意すると共に第1拡散シート23を作製し、そののち、それらが所定の配置となるように組み立てることにより、バックライトユニット20が完成した。
・・・
【0087】
次に、コーティング法を用いて色光吸収層30を形成した。この場合、厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタラートシフィルム(テトロンフィルム;帝人デュポン社製)上に、色素を含むコーティング剤を塗布したのち、乾燥させて厚さ25μmの樹脂層を形成した。この際、コーティング剤は、色素としてテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm;山田化学工業株式会社製)を透明アクリル樹脂塗料(ダイヤナールHR;三菱レイヨン株式会社製)の固形分に対して1200重量ppmとなるように添加して調製した。この色光吸収層30について、分光光度計(日本分光株式会社製V−7100)を用いて、可視光領域の光線透過率を測定したところ、波長590nmの光の透過率が極小値を示し、その透過率は、18%であった。
【0088】
最後に、上記のように作製した液晶表示パネル10、バックライトユニット20および色光吸収層30を用いて、液晶表示パネル10の偏光板16側とバックライトユニット20との間に、色光吸収層30を配置し、組み立てた。これにより、図1に示した液晶表示装置(図4に示したバックライトユニット20を備える)が完成した。
【0089】
(実験例1−2)
色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む保護層16Dを有する偏光板16を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。偏光板16は、保護層16Dの材料フィルムを形成する際に、セルロース樹脂溶液中にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して420重量ppmとなるように添加したことを除き、実験例1−1と同様に作製した。この保護層16Dの材料フィルムについて、実験例1−1と同様に可視光領域の光線透過率を測定したところ、波長590nmの光の透過率が18%で極小値を示した。
・・・
【0091】
(実験例1−4)
色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む粘着層16Aを有する偏光板16を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。偏光板16は、粘着層16Bの材料フィルムを形成する際に、アクリル系粘着剤にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して1250重量ppmとなるように添加したことを除き、実験例1−1と同様に作製した。この粘着層16Aの材料フィルムについて、実験例1−1と同様に可視光領域の光線透過率を測定したところ、波長590nmの光の透過率が19%で極小値を示した。
【0092】
(実験例1−5)
色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む第2拡散シート26を備えたバックライトユニット20(図2)を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た。色素を含む第2拡散シート26は、以下の手順により作製した。まず、テトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)400重量ppm、ポリエステル樹脂(パイロン200:東洋紡績社製)100重量部、トルエン200重量部、およびメチルエチルケトン50重量部を混合してバインダ層形成溶液を調製した。続いて、バインダ層形成溶液を基材フィルムである厚さ100μmのポリエチレンテレフタラートフィルム(ルミラー100T56:東レ社製)の上に、コンマダイレクト法により、塗布した。こののち、塗布膜を120℃1分間熱風加熱乾燥させて、厚さ10μmの樹脂バインダ層を形成した。続いて、ポリエチレン球状粒子(メディアン径17μm;テクポリマーSBX−17、積水化成品工業社製)100重量部とトルエン200重量部とを混合した微粒子分散液を樹脂バインダ層上にコンマダイレクト法により塗布した。こののち、120℃1分間熱風加熱乾燥させて、厚さ10μmの光拡散層を形成した。これにより、平行線透過率が1.2%の第2拡散シート26を得た。」

(カ)「【0113】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液晶層として垂直配向型の液晶を用いたVAモードの液晶表示装置を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他のモード、例えばTNモード、IPSモードあるいはOCBモードについても適用可能である。この場合においても、本発明の効果は得られる。」

(キ)図1及び図2は次のとおりである。
図1


図2


(ク)上記(ウ)から、「第2の実施の形態」は、「色光吸収層30を設ける代わりに、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが上記した色光吸収層30と同様の機能を有することを除き、第1の実施の形態と同様の構成を有している」(【0060】)ものであって、「偏光板16が色光吸収層として兼用される場合には、粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dのうちのいずれか一つの層が、上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を含んでいる」(【0061】)ところ、上記(オ)の「実施例」の一つである「実験例1−4」は、「色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む粘着層16Aを有する偏光板16を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た」(【0091】)ものであるから、上記第2の実施の形態に係る実験例として示されているといえる。
そして、上記(エ)の「第2の実施の形態では、第2拡散シート26および偏光板16のうちの少なくとも1つが色光吸収層として兼用される場合について説明したが、偏光板17が色光吸収層の機能を有していてもよい。偏光板17が色光吸収層として兼用される場合には、粘着層17A、位相差層17B、保護層17Dおよびハードコート層17Eのうちの少なくとも一つの層が、上記した色素のうちの1種あるいは2種以上を含んでいる。すなわち、粘着層17A、位相差層17B、保護層17Dおよびハードコート層17Eのうちのいずれか一つが色光吸収層として兼用されている。」(【0071】)、「色素を含む粘着層17A、位相差層17Bおよび保護層17Dは、上記の色素を含む粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dと同様にして形成される。」(【0072】)との記載によれば、第2の実施形態において、その粘着層17Aが、色素を含む粘着層16Aと同様に形成されて、色光吸収層として兼用されるように変形された例が記載されており、その具体的な態様として、第2の実施の形態に係る実験例1−4において、その粘着層16Aと同様に粘着層17Aを形成するように変形されたもの、すなわち、粘着層17Aとして、「アクリル系粘着剤にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して1250重量ppmとなるように添加した」(【0091】)ものが記載されているといえる。

(ケ)上記(カ)によれば、【0113】より前に記載された各実施の形態及び各実施例から把握される液晶表示装置において、VAモードに代えてIPSモードの液晶表示セルを適用したものも、同様の効果を奏すると解されるから、上記(ク)に示した、粘着層17Aが色光吸収層として兼用される液晶表示装置においても、IPSモードの液晶表示セル11を適用することが記載されているといえる。

イ 上記アから、引用文献1には、第2の実施の形態に係る実験例1−4が変形された例(【0071】〜【0072】)において、VAモードに代えてIPSモードの液晶表示セルを適用したもの(【0113】)に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(なお、括弧内は認定の根拠とした段落番号などを参考までに示す。)

引用発明
「液晶表示セル11は、液晶層14をTFT基板12とCF基板15との間に封止したものであり(【0076】)、
偏光板16は、位相差層16Bの材料フィルムと偏光層16Cの材料フィルムと保護層16Dの材料フィルムとを所定の順に重ね合わせて貼り合わせ、粘着層16Aを位相差層16B上に貼り付けたものであり(【0082】)、
偏光板17は、位相差層17Bの材料フィルムと偏光層17Cの材料フィルムと保護層17Dの材料フィルムと、ハードコート層17Eの材料フィルムとを所定の順に重ね合わせて貼り合わせ、位相差層17B上に粘着層17Aを貼りつけたものであり(【0083】)、
TFT基板12の下面およびCF基板15の上面に、粘着層16A,17Aとガラス基板12A,15Aとがそれぞれ接するように、偏光板16および偏光板17を貼り合わせたものである、
液晶表示パネル10であって(【0084】)、
偏光板16は、TFT基板12のバックライトユニット20側に、偏光板17は、CF基板15の表示面側にそれぞれ設けられており(【0021】)、
粘着層16A,17Aの材料フィルムは、雛形フィルム上に、屈折率1.50のブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体を含む市販のアクリル系粘着材を塗布したのち、乾燥させて厚さ25μmの粘着層を有するフィルムを形成したものであり(【0077】)、
粘着層17Aは、色光吸収層として兼用されるものであって、アクリル系粘着剤にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して1250重量ppmとなるように添加したものであり(【0091】、上記ア(ク))、
液晶表示セル11は、IPSモードである(【0113】、上記ア(ケ))、
液晶表示パネル10。」

(2)引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0003】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光子を配置することが必要不可欠である。かかる液晶表示装置には、画像を視認するために透明性が要求される他、加熱または加湿条件等の様々な条件下で用いられるため、このような環境下においても表示品位を損なわない高耐久性が要求される。また、液晶表示装置を加熱や加湿条件下においた場合には、偏光子の熱収縮によって液晶パネルの周辺部に表示ムラが生じ、表示不良が生じる問題がある。従って、液晶表示装置に用いられる粘着型光学フィルムには、(1)表示均一性(液晶パネルの周辺部の表示ムラの抑制)、(2)耐久性(粘着剤層に発泡、剥がれが生じないこと)、(3)透明性、が特性として要求される。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究したところ、下記光学フィルム用粘着剤層の製造法方等により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、光学フィルムの少なくとも片面に積層される光学フィルム用粘着剤層であって、
当該光学フィルム用粘着剤層は、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)が8〜30重量部、シランカップリング剤(C)が0.01〜5重量部を含有する粘着剤により形成されており、かつ、
厚さ25μmで測定したヘイズ値が1%以下であることを特徴とする光学フィルム用粘着剤層、に関する。」

ウ 「【発明の効果】
【0016】
本発明の光学フィルム用粘着剤層は、アクリル系ポリマー(A)に対するイソシアネート系架橋剤(B)の割合が、通常の使用割合よりも多いことから、光学フィルム用粘着剤層に高い凝集力を付与することができ、当該粘着剤層を光学フィルムに適用した場合には光学フィルムの寸法変化を抑えることができる。その結果、表示ムラを低減することができ、表示均一性に優れる粘着型光学フィルムを得ることができる。また、本発明の製造方法により得られる光学フィルム用粘着剤層は、イソシアネート系架橋剤(B)に加えて、シランカップリング剤(C)を併用していることから、加熱または加湿条件等の様々な条件下においても、耐久性に優れている。また、本発明の光学フィルム用粘着剤層は、厚さ25μmで測定したヘイズ値が1%以下と小さく、透明性を維持した、粘着剤層である。」

2 対比、判断
(1)本願発明について
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「液晶表示セル11」であって、「IPSモードである」ものは、本願発明の「IPSモードの液晶セル」に相当する。

イ 本願発明の「第1光学機能層」、「第2光学機能層」は、本願の明細書(以下「本願明細書」という。)【0023】の「本発明の光学機能層は、樹脂層であれば特に限定されない。前記樹脂層としては、フィルム層、粘着剤層等が挙げられる。」の記載によれば、粘着剤層をなす樹脂層を含むと解されるところ、引用発明の「粘着層16A」及び「粘着層17A」は、「屈折率1.50のブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体を含む市販のアクリル系粘着材を塗布したのち、乾燥させ」たものであって、樹脂層であることから、いずれも本願発明にいう「光学機能層」に当たるといえる。
また、引用発明において、「液晶表示セル11は、液晶層14をTFT基板12とCF基板15との間に封止したもの」であり、「偏光板16」は、「粘着層16A」及び「偏光層16Cの材料フィルム」を含み、「偏光板17」は、「粘着層17A」及び「偏光層17Cの材料フィルム」を含むところ、「TFT基板12の下面およびCF基板15の上面に、粘着層16A,17Aとガラス基板12A,15Aとがそれぞれ接するように、偏光板16および偏光板17を貼り合わせたもの」は、「液晶表示セル11」の「下面」側から順に、「粘着層16A」、「偏光層16Cの材料フィルム」が配置され、「液晶表示セル11」の「上面」側から順に、「粘着層17A」、「偏光層17Cの材料フィルム」が配置されたものといえる。
ここで、引用発明の「偏光板16は、TFT基板12のバックライトユニット20側に、偏光板17は、CF基板15の表示面側にそれぞれ設けられて」おり、「偏光板16」は「液晶表示セル11」の背面側に位置し、「偏光板17」は「液晶表示セル11」の視認側に設けられているといえるから、上記「下面」側、「上面」側とは、それぞれ、「液晶表示セル11」の背面側、視認側を意味するものと解される。
そうすると、引用発明の「粘着層17A」、「粘着層16A」、「偏光層17Cの材料フィルム」、「偏光層16Cの材料フィルム」は、それぞれ、本願発明の「第1光学機能層」、「第2光学機能層」、「第1偏光フィルム」、「第2偏光フィルム」に相当し、引用発明は、本願発明の「前記液晶セルの視認側から順に配置された第1光学機能層および第1偏光フィルム」、「前記液晶セルの背面側から順に配置された第2光学機能層および第2偏光フィルム」との構成を有する。

ウ 引用発明の「粘着層17A」は、「アクリル系粘着剤にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して1250重量ppmとなるように添加したもの」であるから、引用発明は、本願発明の「前記第1光学機能層が、色素を含有し」との構成を有する。

エ 引用発明の「液晶表示パネル10」は、本願発明の「液晶パネル」に相当する。

オ したがって、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。

<一致点>
「IPSモードの液晶セル、
前記液晶セルの視認側から順に配置された第1光学機能層および第1偏光フィルムと、
前記液晶セルの背面側から順に配置された第2光学機能層および第2偏光フィルムを有する液晶パネルにおいて、
前記第1光学機能層が、色素を含有する液晶パネル。」

<相違点1>
「第1光学機能層」につき、本願発明では、「ヘイズが0.2〜2%の範囲にある」のに対し、引用発明では、ヘイズの範囲が特定されていない点。

<相違点2>
「第2光学機能層」につき、本願発明では、「色素を有しない」のに対し、引用発明では、この点について特定していない点。

カ 相違点1について
(ア)引用発明の「粘着層17A」(本願発明の「第1光学機能層」に相当。)がどの程度の「ヘイズ」を有しているのかについて検討する。

a まず、本願発明の「ヘイズ」に関して、本願明細書には、「本発明の液晶パネルにおいて液晶セルの少なくとも片側に用いられる光学機能層は色素を有するため、一般的には液晶パネルの広色域化に加え、反射率低減が可能と考えられるが、色素と光学機能層の形成材料との相溶性が悪い場合には光学機能層にヘイズ上昇が生じる。」(【0016】)、「色素が十分に溶解されている光学機能層ではヘイズは非常に小さくでき」(【0018】)と記載されていることから、色素と光学機能層の形成材料との相溶性が高い場合に、光学機能層のヘイズを小さくすることができる点が把握される。
また、本願明細書には、「前記色素を有する光学機能層のヘイズ(0.2〜2%)の調整は、色素の種類の選択、色素の含有量、光学機能層の厚さを制御することにより行うことができる。」(【0027】)と記載されているところ、具体的な色素の種類及び含有量については、「本発明の光学機能層における色素の含有量は、色素の吸収波長域、吸光係数やベースポリマーの種類によって調整されるが、通常、広色域化とヘイズのコントールの両立の観点から、ベースポリマー100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、さらには0.05〜3重量部が好ましく、さらには0.1〜1重量部が好ましい。特に、テトラアザポルフィリン系色素を用いる場合に前記範囲は好ましい。」(【0030】)と記載され、光学機能層の厚さについては、「前記色素を含有する粘着剤層は厚み30μm以下であるのが、当該粘着剤層のヘイズを調整するうえで好ましい。前記粘着剤層の厚みは28μm以下が好ましく、さらには23μm以下が好ましい。」(【0073】)と記載されている。
そして、本願明細書には、実施例として、「厚さ20μmの粘着剤層」であって、「アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して」、「テトラアザポルフィリン系色素(山本化成社製の商品名PD−320:波長595nmに極大吸収波長を有する)0.25部を配合した」もののヘイズが0.44であること(【0099】、【0101】、【0112】;実施例1)と、「厚さ20μmの粘着剤層」であって、「アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して」、「テトラアザポルフィリン系色素を山田化学工業社製の商品名FDG−007(波長595nmに極大吸収波長を有する)0.5部を配合した」もののヘイズが0.91であること(【0099】、【0102】、【0112】;実施例2)が記載されている。加えて、本願明細書には、比較例1として、上記色素を含まないもののヘイズが0.24であること(【0112】)が記載されている。

b(a)他方、引用発明の「粘着層17A」は、「厚さ25μmの粘着層」であって、「アクリル系粘着剤にテトラアザポルフィリン色素TAP−2(吸収最大波長590nm)を固形分に対して1250重量ppmとなるように添加したもの」であるところ、「1250重量ppm」は、ベースポリマーであるアクリル系粘着剤の固形分100重量部に対して0.125重量部に換算される。
そうすると、引用発明の「粘着層17A」は、本願明細書において、色素を有する光学機能層のヘイズ(0.2〜2%)の調整を行う要因として明記されている、色素の種類の選択(テトラアザポルフィリン系色素)、色素の含有量(ベースポリマー100重量部に対して0.1〜1重量部)及び光学機能層の厚さ(28μm以下)のすべての点を満たしていることになる。
加えて、引用発明の「粘着層17A」のベースポリマーは、アクリル系粘着剤の固形分であるから、少なくともアクリル系ポリマーである点において、本願明細書の実施例で使用されているものと共通している。さらにいえば、引用文献1の【0037】に「特に、ポルフィリン系化合物は、テトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン錯体あるいはテトラ−neo−ペンチル−テトラアザポルフィリン錯体などの分岐アルキル基を置換基として有する化合物であることが好ましい。t(ターシャリ)−ブチル基やneo−ペンチル基などの分岐アルキル基を有すると、ポルフィリン系化合物の立体構造が3次元的に高い立体性を有することになり、会合体形成や結晶化による吸収特性の低下が抑制されると共に、溶剤等への溶解性が向上する。」との記載があることも踏まえれば、引用発明の粘着層におけるベースポリマーと色素との相溶性は、本願明細書に示されたものと同程度に高いと考えられる。

(b)引用発明の「粘着層17A」は、上記のとおり、アクリル系粘着剤の固形分100重量部に対して、テトラアザポルフィリン系色素0.125重量部を配合したものであるところ、一般に、色素の含有比率が増大すると、ヘイズは上昇する傾向にあると考えられる一方で、本願明細書の実施例及び比較例においては、アクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、テトラアザポルフィリン系色素が0部(比較例1)、0.25部(実施例1)及び0.5部(実施例2)配合されたときに、ヘイズが、それぞれ、0.24、0.44及び0.91とされている。すなわち、アクリル系ポリマーに対するテトラアザポルフィリン系色素の含有比率の観点からは、引用発明の「粘着層17A」は、本願明細書の実施例1における含有比率の半分に当たるとともに、同比較例1と同実施例1との間に位置付けられることになる。
また、粘着剤層の厚さが増大すると、粘着剤層を通過する光路の長さが長くなり、ヘイズが上昇する傾向があると考えられるところ、本願明細書の実施例1、2及び比較例1における粘着剤層の厚さは、いずれも20μmである(【0099】、【0101】〜【0102】)のに対し、引用発明の「粘着層17A」の厚さは、25μmであるから、本願明細書の実施例1、2及び比較例1のいずれよりも若干大きくなっている。

(c)このように、引用発明の「粘着層17A」については、本願明細書において、色素を有する光学機能層のヘイズ(0.2〜2%)の調整を行う要因として明記されている、色素の種類の選択、色素の含有量及び光学機能層の厚さのすべての点を満たしていること、ベースポリマーがアクリル系ポリマーである点で本願明細書の実施例のものと共通しているとともに、ベースポリマーと色素の相溶性が本願明細書に示されたものと同程度に高いと考えられること、アクリル系ポリマーに対するテトラアザポルフィリン系色素の含有比率(0.125部)が本願明細書の実施例1のもの(0.25部)よりも低い一方で、粘着層の厚さ(25μm)が同実施例1のもの(20μm)よりも若干大きいことを総合的に考慮すれば、引用発明の「粘着層17A」のヘイズは、本願明細書の実施例1のヘイズの値(0.44)と大きく変わるものではなく、相違点1に係る構成のように「ヘイズが0.2〜2%の範囲」を満たしていると推認される。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に、相違点1が実質的な相違点であるとして、以下検討する。
a 引用発明において、粘着層の厚みや色素の含有量、ベースポリマーの種類等の条件を適宜調整することは、当業者における通常の創作能力の発揮の範囲内のことであり、その結果として、相違点1に係るヘイズの範囲を満たすことは、当業者が適宜なし得たものである。

b また、液晶表示装置の光学フィルム用粘着剤層には、透明性が求められており、ヘイズ値を1%以下の程度とすることは、例えば引用文献2(【0016】等)に記載されているように、普通に行われていることからみても、引用発明の粘着層において、相違点1に係るヘイズの範囲を満たすことは、当業者が適宜なし得たものである。

c 相違点1に係る本願発明の作用効果について、上記(ア)で説示した内容によれば、本願発明と引用発明とのヘイズの差は、存在するとしてもさほど大きいものとは言い難いことも踏まえると、引用発明、又は、引用発明及び周知技術に照らして、当業者にとって格別のものということはできない。

キ 相違点2について
(ア)引用発明は、「粘着層17Aは、色光吸収層として兼用されるもの」であって、粘着層17Aが色素を含有するものであるところ、このような引用発明において、偏光板16の粘着層16A(本願発明にいう「第2光学機能層」)が色素を含むのか否かにつき、以下検討する。
引用文献1の【0058】には、色光吸収層の配置に関する従来技術の課題として、「従来の液晶表示装置では、中間色の波長領域の光を吸収する色光吸収層が反射偏光子よりも光源側に含まれている。この場合、光源と反射偏光子との間で反射および拡散を繰り返す光は、色光吸収層への入射および透過を繰り返すことになる。従って、この繰り返す光では、色光吸収層を通過する距離(=光路長)がその繰り返しによって長くなり、中間色の波長領域の光成分は繰り返し吸収されることになる。ところが、色光吸収層の吸収ピークには有限な幅があり、そのピークの裾野は中間色の波長領域以外にも広がっていることにより、中間色の波長領域以外の波長の光成分も吸収される。また、色光吸収層による光吸収量は、色光吸収層の厚さや色光吸収層を通過する距離の長さなどの光路長に対して線形(正比例)になるものではなく、光路長が短くても色光吸収層による光吸収量が大きい波長ほど早くその光吸収量は飽和する傾向にある。このため、色光吸収層を通過する光路長が長くなると吸収ピークがブロード化し、中間色の波長領域以外の波長の光成分の吸収量が相対的に高くなる。」との点が挙げられており、これに対して、引用発明は、上記1(1)イの冒頭に示したように、第2の実施の形態が変形された例に基づいて認定されているところ、第2の実施の形態(引用文献1の【0060】〜【0066】)によれば、「反射偏光子25よりも光源21側に色光吸収層を設けた場合よりも、中間色の波長領域の光成分が吸収されると共に、それ以外の光成分の吸収が抑制されるため、表示面側に射出される光の光量が確保されると共に色純度が向上する。」(【0066】)との効果が得られることが把握される。
そうすると、上記第2の実施の形態において色光吸収層として兼用されるもの(偏光板16又は第2拡散シート26)は、中間色の波長領域の光成分を吸収するとともに、それ以外の光成分の吸収が抑制されるように、色素の種類や含有量等が設定されるものであり、そのような色光吸収層が一層あれば足りるものと解される。
以上を踏まえると、引用発明は、上記第2の実施の形態のように色素の種類や含有量等が設定された第2拡散シート26又は偏光板16に代えて、偏光板17を色光吸収層として兼用することとし、色素の種類や含有量等が粘着層16Aと同様に設定された粘着層17Aを形成したものを意味すると解するのが相当であり、よって、粘着層16Aは色素を有しないといえる(仮に、上記のように色素の種類や含有量等が設定された第2拡散シート26又は偏光板16を前提として、さらに粘着層17Aにも色素を含有するものを想定すると、バックライトから出射した光が色光吸収層を通過する距離(光路長)が過剰となるので、上記課題との関係に照らして不合理である。)。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(イ)仮に、上記(ア)のように解することはできず、引用発明が、偏光板16および第1拡散シート26のうちのいずれか1つが色光吸収層として兼用されることを必須とするものであったとしても、色素を含む層が偏光板16の粘着層16Aであるとは限らない。すなわち、引用文献1には、上記第2の実施の形態に対応する実施例として、「色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む保護層16Dを有する偏光板16を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た」ものである実験例1−2(【0089】)や、「色光吸収層30を設ける代わりに、色素を含む第2拡散シート26を備えたバックライトユニット20(図2)を用いたことを除き、実験例1−1と同様の手順を経た」ものである実験例1−5(【0092】)が示されており、ここで、実験例1−1(【0074】〜【0088】)は、偏光板16又は第2拡散シート26のいずれをも色光吸収層として兼用しない例であることを踏まえれば、実験例1−2、実験例1−5において「実験例1−1と同様の手順を経た」ものである粘着層16Aは、色素を有しないものであるといえる。
したがって、引用発明において、偏光板16および第1拡散シート26のうちのいずれか1つが色光吸収層として兼用されるものには、粘着層16Aに色素を有しない態様のものが含まれるといえるから、この点からみても、相違点2は実質的な相違点ではない。

(ウ)仮に、相違点2が実質的な相違点でないとまではいえないとしても、引用発明において、粘着層17Aに色素を有し、かつ、粘着層16Aに色素を有しないものとすることは、上記(ア)、(イ)で示した引用文献1の各記載に照らして、当業者が適宜採用し得たものである。
また、相違点2に係る本願発明の作用効果について、引用発明に照らして、当業者にとって格別のものということはできない。

ク そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、又は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ケ したがって、本願発明は、引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて、若しくは、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は意見書において、本願発明と引用発明を対比すると、
「本願発明では、「第2光学機能層(液晶セルの背面側:光源側)が色素を有しない」のに対して、引用発明では「色光吸収層を、液晶表示装置に対して光源側に有する」点」(相違点A)のほか、
「相違点1:本願発明では、「IPSモードの液晶セル」を用いるのに対して、引用発明では、実質的に「VAモードの液晶セル」を用いている点。
相違点2:本願発明では色素を含有する第1光学機能層を用いているのに対して、これに対応する、引用発明の粘着層17Aでは、「色素」を含有する場合が具体的に記載されていない点。
相違点3:本願発明では「色素」を含有する第1光学機能層は「ヘイズが0.2〜2%の範囲」であるのに対して、これらに対応する、引用発明の粘着層17Aでは、ヘイズに関して記載されていない点。」において相違し、これらの相違点は、引用発明に基づいて容易に想到することができない旨、主張している。

イ 上記アのうち、「引用発明では「色光吸収層を、液晶表示装置に対して光源側に有する」点」に関して、審判請求人は、引用文献1の特許請求の範囲(請求項1〜3)に、液晶表示素子に対して光源側に色光吸収層を設ける構成が特定されていることを根拠として、この構成が引用発明の必須事項であるとしている。
しかしながら、引用発明の認定においては、引用文献1の全体(特許請求の範囲、明細書及び図面)の中から発明を抽出することができるところ、引用文献1の特許請求の範囲は、引用文献1の一部をなすものにすぎず、引用発明を、特許請求の範囲の記載のみに限定して認定すべき理由はない。そして、引用文献1の明細書の記載から、液晶表示素子(液晶表示セル)に対して光源側に色光吸収層を設けないものが把握されることは、上記1(1)に示したとおりである。

ウ 上記アのうち、「引用発明の粘着層17Aでは、「色素」を含有する場合が具体的に記載されていない」点の根拠として、審判請求人は、引用文献1の【0061】に、「保護層16Dが色光吸収層として兼用されることが好ましい。高いコントラストが得られるからである。具体的には、色光吸収層を偏光層16Cよりも表示面側に含むと、色光吸収層中の色素の局在状態により、偏光層16Cと偏光層17Cとの偏光状態を乱れやすくなり、黒表示時の輝度が上昇してコントラストが低下するおそれがあるからである。」と記載されており、【0071】にも同様の記載があることから、「粘着剤層を色光吸収層(色素含有)として用いる場合が好ましくないことが記載されています。」と主張している。
しかしながら、引用文献1の【0071】には、「ところが、その一方で、偏光層17Cよりも表示面側に色光吸収層を含んでいると、色光吸収層中の色素の種類やその含有量によっては、黒表示時に外部からの光により表示面が色づいてみえるおそれがある。このため、黒表示時の表示面の色づきを回避するには、粘着層17Aおよび位相差層17Bのうちの少なくとも一方が色光吸収層として兼用されるほうがよい。」とも記載されており、粘着層を色光吸収層として兼用した場合のメリットが把握されるから、粘着層17Aに色素を含有する場合を排除しているとはいえない。そして、引用文献1の【0091】には、実験例1−4として、粘着層16Aを色光吸収層として兼用する場合について具体的に記載されており、引用文献1の【0072】には、「色素を含む粘着層17A、位相差層17Bおよび保護層17Dは、上記の色素を含む粘着層16A、位相差層16Bおよび保護層16Dと同様にして形成される。」と明示されているのであるから、引用文献1には、粘着層17Aが色素を含有する態様が開示されていると解するほかない。

エ 審判請求人のその余の主張については、上記(1)に説示したとおりである。

オ よって、審判請求人の主張は、いずれも採用することができない。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-20 
結審通知日 2022-01-21 
審決日 2022-02-14 
出願番号 P2019-504580
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
P 1 8・ 113- WZ (G02F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 清水 督史
吉野 三寛
発明の名称 液晶パネルおよび液晶表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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