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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1013967
審判番号 審判1998-5010  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-04-01 
確定日 2000-02-23 
事件の表示 平成1年特許願第11416号「電気制御装置用の表示操作ユニット」拒絶査定に対する審判事件(平成2年7月26日出願公開、特開平2-190909)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (手続きの経緯・本願発明)
本願は、平成1年1月19日の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「1)ドット表示器と、該ドット表示器の前面に配設する透明なスイッチ板と、ユニット本体とからなり、該ユニット本体は、表示画面作成用のデータを含む外部からのコマンドに対応して前記ドット表示器の表示画面を作る表示画面作成部と、該表示画面作成部によって起動され、表示画面に含まれるスイッチを特定するための情報をスイッチマトリクスに書込み更新するスイッチマトリクス作成部と、前記スイッチ板の押し操作位置を検出する走査部と、該操作部の出力と前記スイッチマトリクスの内容とを照合し、操作されたスイッチを特定して外部に出力信号として出力するスイッチ検出部とを備えることを特徴とする電気制御装置用の表示操作ユニット。」(以下、「本願発明」という。)
(引用例)
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭60-54018号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、「以下、本発明を原子力発電プラントにおける原子炉給水制御装置に適用した場合を例にとり」(第2頁上段左欄第12-13行)、「第1図は本発明の一実施例を示すプロセス制御装置のブロック図である。図において、1は透明な導電性皮膜を使用した感圧式位置検出装置(以下、タッチスクリーンと称す。)、2はCRT表示装置、3はタッチスクリーン制御装置、4はCRT制御装置、5はプロセス計算機、6はプロセス入出力装置である。そのプロセス計算機5はプロセス入出力制御装置6からのプロセス信号を入力し、CRT制御装置4に対して表示信号を発する。CRT制御装置4はCRT表示装置2に対し、数値もしくはバーチャートなどの表示を行なう。一方、タッチスクリーン制御装置3はタッチスクリーン1上の感圧を電気信号として検知し、これをディジタル信号の形に変換し、X軸、Y軸位置をプロセス計算機5に送出する。」(第2頁上段左欄第15行-同右欄第10行)、「一方、プロセス計算機5に接続されたプロセス入出力制御装置6はプロセス入力の他に制御装置、たとえば給水流量制御装置とかバルブ開閉操作器等とも接続されており、プロセス計算機5は設定値等を接点信号の組み合わせの形でプロセス入出力制御装置6を介してこれらの制御装置に出力する。」(第2頁下段右欄第6-11行)、「14はタッチスクリーン入力処理部で、タッチスクリーン制御装置3からのデータを処理し、CRT表示部11を起動する。15は表示位置記憶部であって、操作器表示のCRT表示画面上のX-Y座標を画面番号に記憶している。CRT表示部11は操作シンボル表示を行なうときに、この表示位置記憶部15を参照して表示位置を判定する。また、タッチスクリーン入力処理部14は入力位置判定時同様に表示位置記憶部15を参照する。第5図はこの表示位置記憶部15の内容を示したものである。画面番号毎に操作表示器の表示座標Xij、Yijを記憶している」(第2頁下段右欄第18行-第3頁上段左欄第10行。この部分の引用例の記載を以下、「記載A」という。)、「第8図はCRT表示装置2上に表示される操作パネル図の他の例を示したものである。~17は画面選択操作器表示であって、この図において1~5の画面選択スイッチを意味する。今、画面選択操作器表示17の1~5のどれかの表示に対応したタッチスクリーン1の位置を触れた場合、タッチスクリーン制御装置3は前述のようにX-Y座標をプロセス計算機5に転送する。プロセス計算機のタッチスクリーン入力処理部14はX-Y座標より画面選択操作器表示17のうちのどれかを判断し、画面番号をCRT表示部11に送る。CRT表示部11は画面番号に従った画面、即ち、第7図においては給水制御にかかわる2つの事前に定められたプロセス量、たとえばタービン駆動原子炉給水ポンプ流量A、Bに関するデータを表示する。CRT表示部11の作用は現在値、設定値に関する限り、画面番号に応じた動作を行うことで前述と同様であるが」(第3頁下段左欄第18行-同下段右欄第18行。同じくこの部分の記載を以下、「記載B」という。)と記載されている。
これらの事実によれば、引用例には、表示操作の作用を行なうものであって、原子力発電プラントにおける原子炉給水制御装置に適用したプロセス制御装置が記載され、タッチスクリーン制御装置3・CRT制御装置4・プロセス計算機5・プロセス入出力制御装置6が制御機能部を構成し、そのCRT表示部11はCRT表示装置2の表示画面を作り、また、表示位置記憶部15に記憶される表示座標Xij、Yijは、該表示画面に含まれる操作器表示2c、2e、2f(操作シンボル表示)を特定し、透明な感圧式位置検出装置1(タッチスクリーン)は該CRT表示装置2の前面に配設され、該タッチスクリーン1は感圧式であるから当然押し操作が行なわれるものであって、タッチスクリーン制御装置3は該タッチスクリーン1の押し操作位置を検出し、タッチスクリーン入力処理部14は該タッチスクリーン制御装置3からのX、Y座標値の出力と表示位置記憶部15にあらかじめ記憶している内容である操作器の表示位置と照合し、操作された操作器表示を特定して給水制御装置などの外部に出力信号として出力するものと認められる。
そして、引用例における、特に第8図の操作パネル図の他の例を示したものについて考察すると、画面選択操作器表示17,即ち1~5の画面選択スイッチの操作に対応して該CRT表示装置2の表示画面が作られることは明らかであるから、
結局引用例には、
「CRT表示装置2と、該CRT表示装置の前面に配設する透明なタッチスクリーン1と、制御機能部(タッチスクリーン制御装置3・CRT制御装置4・プロセス計算機5・プロセス入出力制御装置6)とからなり、該制御機能部は、画面選択器表示17(画面選択スイッチ1~5)に対応して前記CRT表示装置の表示画面を作るCRT表示部11と、表示画面に含まれる操作器表示2c、2e、2f(操作シンボル表示)を特定するための情報をあらかじめ記憶している表示位置記憶部15と、前記タッチスクリーンの押し操作位置を検出するタッチスクリーン制御装置3と、該タッチスクリーン制御装置の出力と前記表示位置記憶部の内容とを照合し、操作された操作器表示を特定して外部に出力信号として出力するタッチスクリーン入力処理部14とを備える原子力発電プラントにおける原子炉給水制御装置用のプロセス制御装置」
が記載されているものと認める。
(対比)
そこで、本願発明と引用例に記載されたものとを対比すると、本願発明のドット表示器、スイッチ板、ユニット本体、表示画面作成部、スイッチ、走査部、およびスイッチ検出部が、それぞれその機能からみて、引用例のCRT表示装置2,タッチスクリーン1,制御機能部3・4・5・6、CRT表示部11、操作器表示2c・2e・2f、タッチスクリーン制御装置3、およびタッチスクリーン入力処理部14に相当することが明らかであり、また、引用例のプロセス制御装置は表示操作の作用を行なうものであるから、本願発明の総括的な構成である表示操作ユニットは引用例のプロセス制御装置に相当する。
そうすると、両者は次の3点でのみ相違し、その他の点で一致する。
(1)本願発明の表示操作ユニットは電気制御装置用であるのに対し、引用例のものは原子力発電プラントにおける原子炉給水制御装置に適用したものである点。
(2)本願発明の表示画面は表示画面作成用のデータを含む外部からのコマンドに対応して作られるのに対し、引用例の表示画面は画面選択器表示17(画面選択スイッチ1~5)に対応して作られる点。
(3)本願発明は「表示画面作成部によって起動され、表示画面に含まれるスイッチを特定するための情報をスイッチマトリクスに書込み更新するスイッチマトリクス作成部」を備え、走査部の出力は該マトリクス作成部で作成されたマトリクスの内容と照合されるのに対し、引用例はスイッチを特定するための情報はあらかじめ表示位置記憶部15に記憶され、タッチスクリーン制御装置3からの出力は該表示位置記憶部15に記憶された情報(表示座標Xij、Yij)と照合されるものであり、かかるスイッチマトリクス作成部の構成は記載されていない点。
(判断)
上記各相違点につき検討する。
・相違点(1)について
表示操作ユニットを単なる電気制御装置に用いたものは出願前きわめて周知であり、かつ、このように電気制御装置に用いた点に格別の意義が存在するものとも解されないから、本願発明の上記相違点(1)は単なる用途の転換にすぎない。
・相違点(2)について
引用例の画面選択スイッチ(1~5)も表示画面を作るコマンドを形成するものであり、それに対応してCRT表示部11に送られる画面番号は表示画面作成用のデータに他ならないから、引用例のものも画面作成用のデータを含むコマンドに対応して表示画面が作られるものである。そして、画面作成用のデータを含むコマンドを特に本願発明のように外部からのコマンドとする点に格別の意義および困難性は認められないから、本願発明の上記相違点(2)はコマンドを形成する上での設計上の微差にすぎず、格別なものとはいえない。
・相違点(3)について
前述の引用例の記載「A」および「B」からすると、引用例のCRT表示装置2に表示される選択画面を変更する場合には、希望する画面選択スイッチを押すことにより該スイッチに対応した画面番号がCRT表示部11に送られ、該表示部11はその画面番号に従った画面を表示する。
この場合、CRT表示部11が参照している表示位置記憶部15に記憶している操作表示器の表示座標(Xij、Yij)が、希望する画面選択スイッチに対応した画面番号の操作表示器の表示座標に変更されなければならないこと、及び、この参照される表示座標の変更が、画面番号が送られて変更された画面を表示する作用を行なう操作表示器11の起動によって行なわれることは、ともに自明のことというべきである(このとき、引用例のタッチスクリーン入力処理部14も入力位置判定時同様にこの変更された表示位置記憶部15の表示座標を参照することとなる)から、結局引用例に記載のものが、画面変更時にCRT表示部11によって起動され、該CRT表示部が参照すべき操作表示器の表示座標(表示位置記憶部15に記憶されている)を変更する何らかの変更手段を備えていることは明らかである。
そして、このCRT表示部11によって起動される表示座標の変更手段を、本願発明のような「表示画面に含まれるスイッチを特定するための情報をスイッチマトリクスに書込み更新するスイッチマトリクス作成部」による手段とすることは、技術常識からすれば、CRT表示部11に該表示部11が参照すべき情報(即ち表示位置記憶部15に記憶された操作器の表示座標)を変更する機能を持たせるための当然の設計的事項にすぎず、また、これによる効果も格別なものとは認められないから、本願発明の上記相違点(3)は当業者であれば容易に想到し得た程度のものである。
(むすび)
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、上記引用例に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-12-14 
結審通知日 1998-12-22 
審決日 1998-12-28 
出願番号 特願平1-11416
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 鈴木 伸夫
特許庁審判官 岩本 正義
西川 一
発明の名称 電気制御装置用の表示操作ユニット  
代理人 松田 忠秋  

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