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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G10H 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する G10H 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する G10H 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する G10H 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G10H |
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管理番号 | 1040272 |
審判番号 | 訂正2000-39096 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1990-11-19 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2000-08-29 |
確定日 | 2000-12-04 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2760436号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2760436号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1 請求の要旨 本件審判請求の要旨は、特許第2760436号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正するもので、その訂正の内容は次のとおりである。なお、下線部が訂正された箇所である。 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、上記発生された時間データに達したか否かを判別する手段」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、 この計測された時間が、上記発生された時間データに達したか否かを判別する手段」と、訂正する。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1の中の「この繰り返し生成の終了の後、上記発生された別のセクションデータ及び上記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの別の異なるセクションの繰り返し生成に移行する手段」を、「この繰り返し生成の終了の後、上記発生された次の別のセクションデータ及び上記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの次の別の異なるセクションの繰り返し生成に移行する手段と、 少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクションの繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手段」と、訂正する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項2の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、 この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段」と、訂正する。これは特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4)訂正事項d 特許請求の範囲の請求項2の中の「これら両判別結果に応じて上記繰り返し生成を終了する手段」を、「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、 少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる手段」と、訂正する。 (5)訂正事項e 特許請求の範囲の請求項4の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測させ、 この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、」と、訂正する。 (6)訂正事項f 特許請求の範囲の請求項4の中の「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させる」を、「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させ、 少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶させ、 この所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、次の別の所定時間を書き込ませ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる」と、訂正する。 2 当審の判断 そこでこれら訂正事項について検討する。 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aないしfは、特許請求の範囲を減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 上記訂正事項a、c、eは、願書に添付した明細書の[発明の概要]に「繰り返し生成時間を計測し、この計測時間が予め定められた繰り返し生成のための一定時間に達したとき、上記繰り返し生成を終了させる」(特許公報2頁3欄25行ないし27行)と記載され、願書に添付した明細書の31頁5行ないし11行に「ループカウンタ142は、与えられるパルス信号をタイムカウントして、比較器146に与える。比較器146は、上記データラッチ107又はデータラッチ108より与えられるループ時間データLTMiと、ループカウンタ142からのタイムカウントデータとを比較し、一致したら、その一致信号をループ時間到達信号として出力する。」と記載されているので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。また、実質上特許請求の範囲が拡張され、又は変更されたものではない。 上記訂正事項b、d、fは、願書に添付した明細書の24頁20行ないし25頁11行に「ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiは、制御装置10及びアドレスコントローラ85によって、ROM13より読み出され、データラッチ107、108のいずれかにラッチされる。 データがラッチされない方のデータラッチには、現在再生中の楽音波形データWDの繰り返し読み出しを行うループセクションに関するループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMi がラッチされていて、書き込みが行われるデータラッチと、読み出しが行われるデータラッチとが交互に切り換えられる。」(特許公報6頁11欄21行ないし31行)と記載され、また、データラッチ107、108の書き込み、読み出しについては願書に添付した明細書33頁1行ないし11行、33頁20行ないし34頁16行(特許公報7頁14欄10行ないし18行、7頁14欄26行ないし40行)に記載されているので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。また、実質上特許請求の範囲が拡張され、又は変更されたものではない。 (2)独立特許要件の判断 ところで、訂正前の本件特許に対しての特許異議の訂正拒絶理由において刊行物として、特開昭64-26899号公報、特開昭63-155097号公報(以下それぞれ「刊行物1」、「刊行物2」という。)が提示されているので、独立特許要件について検討する。 刊行物1には、複数の区間毎にループ再生が行えるようにした電子楽器において、ループタイムエンドの判別およびループエンドの判別により次の区間のループ再生を行うようにした構成が記載されている。 また、刊行物2には、鍵タッチ信号、音色選択信号、キーコード等に応じて.波形メモリに記憶されている同一波形を繰り返し出力する回数値が設定される点が記載されている。 訂正明細書の請求項1、2の発明と上記刊行物1記載のものとを比較すると、以下の点で相違する。 (i)相違点1 訂正明細書の請求項1、2の発明においては「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段」を備えているのに対して、上記刊行物1記載のものにおいては備えていない点 (ii)相違点2 「上記発生された時間データに達したか否かを判別する手段」が、訂正明細書の請求項1、2の発明においては「計測された時間」が「上記発生された時間データに達したか否かを判別する」のに対して上記刊行物1記載のものにおいては「計測された時間」に関する記載がない点 (iii)相違点3 訂正明細書の請求項1の発明においては「少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクションの繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手段」、訂正明細書の請求項2の発明においては「少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる手段」を備えているのに対して、上記刊行物1記載のものにおいては備えていない点 上記相違点について検討する。 相違点1、2について 一般に所定の時間を計測するための手段として、カウンタを用い、カウンタの値が所定の値に達したか否かを判別するようにすることは周知の技術であり、上記刊行物1のループタイムエンドを判別するにあたり、この周知の計測手段を用いることは、当業者であれば適宜採択しうる設計的事項にすぎない。 また、発生された時間データに達したか否かを判別するのに周知の計測手段により計測された時間を用いることは、当業者が適宜なし得ることである。 相違点3について 相違点3については、刊行物2に記載されておらず、示唆する記載もない。 そして、メモリを2つ用いて、一方のメモリからデータが読み出される間にもう一方のメモリにデータが書き込まれ、次に、一方のメモリからデータが読み出された後に、もう一方のメモリからデータが読み出されることは、交替バッファとして周知の技術(例えば、特開昭54-35645号公報、特開昭57-182246号公報、特開昭59-206896号公報)であるが、刊行物1、2記載のもの及び周知の技術を組み合わせても「少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクションの繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手段」、または「少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる手段」は得られない。 よって、訂正明細書の請求項1、2の発明は、刊行物1、2記載のもの及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 また、訂正明細書の請求項3の発明は、訂正明細書の請求項1、2を引用しているので、訂正明細書の請求項1、2の発明と同様な理由により、刊行物1、2記載のもの及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 さらに、訂正明細書の請求項4の発明は、訂正明細書の請求項2の発明における「手段」を削除し、「もの」の発明から「方法」の発明にしたものであるが、上記相違点3については実質的に変わりがないので、訂正明細書の請求項2の発明についてと同様の理由により、刊行物1、2記載のもの及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 したがって、訂正明細書の請求項1ないし4の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法第126条第1項第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項に規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 楽音に関する波形データの生成装置及び生成方法 (57)【特許請求の範囲】 1.楽音に関する波形データを保持する手段と、 この保持された楽音に関する波形データの繰り返しセクションの先頭と末尾を示す任意に指定可能な複数の異なるセクションデータと、この繰り返しの時間を示す時間データとを発生する手段と、 この発生されたセクションデータに基づいて、上記保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を行う手段と、 この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、 この計測された時間が、土記発生された時間データに達したか否かを判別する手段と、 この判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、 この繰り返し生成の終了の後、上記発生された次の別のセクションデータ及び上記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの次の別の異なるセクションの繰り返し生成に移行する手段と、 少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクションの繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手段とを備えたことを特徴とする楽音に関する波形データの生成装置。 2.楽音に関する波形データを保持する手段と、 この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を行う手段と、 この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、 この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段と、 上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達したか否かを判別する手段と、 これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、 少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる手段とを備えたことを特徴とする楽音に関する波形データの生成装置。 3.上記判別される時間、または上記判別される所定時間は、音色、音域、エフェクト、発音操作の強弱又は遅速によって変化するものであることを特徴とする請求項1または2記載の楽音に関する波形データの生成装置。 4.楽音に関する波形データを保持させ、 この保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき、繰り返し生成を行わせ、 この楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測させ、 この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、 上記楽音に関する波形データの繰り返し生成が、繰り返しセクションの末尾に達したか否かを判別させ、 これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させ、 少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶させ、この所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、次の別の所定時間を書き込ませ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させることを特徴とする楽音に関する波形データの生成方法。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、楽音に関する波形データを生成する装置及び方法に関する。 [発明の概要] 本発明では、楽音に関する波形データの一部又は全部の繰り返し生成の時間を計測し、この計測時間が予め定められた繰り返し生成のための一定時間に達したとき、上記繰り返し生成を終了させることにより、音高のいかんにかかわらず、波形の繰り返し生成の時間を常に一定にし、音高の変化によって、余分な楽音内容の変化因子がはいってしまうことを防止するものである。 また本発明では、あるセクションから別のセクションへ移行するもののほか、1つのセクションだけを繰り返し生成したのち終了するものも含まれる。このような1つのセクションだけの繰り返し生成は、楽音のアタック部分のみの生成や、打楽器音の生成などといった、時間的に短く変化の激しい楽音部分や楽音では有益である。 [従来技術] 従来、楽音に関する波形データとしては、楽音波形を例にとると、第15図及び第16図に示されているものがある。 第15図は、波形読出アドレス発生装置を示し、この波形読出アドレス発生装置は、本発明では第4図の波形読出アドレス発生装置28の部分に相当し、この第4図の回路は、第3図のトーンジェネレータ15、16…に相当するものである。 第15図おいて、楽音波形のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ回数データLCiは、制御装置(図示せず)によって、ROM(図示せず)より読み出され、波形読出アドレスコントロールデータメモリ284にすべて書き込まれる。このループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ回数データLCiは、第8図に示すように、楽音波形データWDの繰り返し読み出しを行うループセクションの先頭アドレスデータ、最終アドレスデータ、繰り返し読み出しの回数データを示している。 スタートアドレス保持メモリ270には、読出スタートアドレスデータSTが、キーオンタイミングに(又はこれに先だったタイミングで)、上記制御装置によって、ROMより読み出されてセットされ、位相角ステップデータメモリ271には、位相角ステップデータPDが、同じくキーオンタイミングに(又はこれに先だったタイミングで)、上記制御装置によって、ROMより読み出されてセットされる。 上記読出スタートアドレスデータSTは、第8図に示すように、楽音波形データWDの読み出しのスタート地点の読出アドレスデータRADを示している。位相角ステップデータPDは、楽音波形データWDの読出アドレスデータRADのインクリメントステップ値を示しており、位相角ステップデータPDを順次加算して新たな読出アドレスデータRADが生成され、この値が大きいほど、楽音波形データWDの読出速度が速くなって、音高も高くなる。上記楽音波形データWDに対し、読出スタートアドレスデータST、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ回数データLCiをいろいろ変えることによって、種々の音色を実現できる。 上記スタートアドレス保持メモリ270の読出スタートアドレスデータSTは、楽音放音開始時に、選択器272を介して、加算器273に与えられ、位相角ステップデータメモリ271からの位相角ステップデータPDと加算される。この加算データは、選択器278を介して、波形読出アドレス保持回路279に記憶され、波形データメモリ(図示せず)に読出アドレスデータRADとして送出されるとともに、楽音放音開始以降は、上記選択器272を介して、上記加算器273へ送出され、位相角ステップデータPDが再び加算される。加算器273と波形読出アドレス保持回路279との加算ループ回路で、読出アドレスデータRADに対する位相角ステップデータPDの累算が行われていく。 また、加算器273からの読出アドレスデータRADは、補数器274で「2」の補数値すなわちマイナス値に反転され、加算器275で、波形読出アドレスコントロールデータメモリ284からのループエンドデータLEiに加算される。これにより、ループエンドデータLEiから読出アドレスデータRADが減算されることになる。 この減算で、楽音波形データWDの読み出しが繰り返し読み出しのループセクションの最後まで到達して、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiに到達し、さらにループエンドデータLEiを越えると、加算器275よりキャリ信号が出力される。このキャリ信号は、差分保持回路276にラッチ信号として与えられ、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiを越えた分の端数データがラッチされる。 この端数データは、加算器277で、ループトップデータLTiに加算されて、端数補正が行われ、これが選択器278を介して、新たな読出アドレスデータRADとして出力される。これにより、楽音波形データWDの読出アドレスデータRADが、ループエンドデータLEiからループトップデータLTiにジャンプするとともに、このジャンプ時に、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiを越えた分の端数データの補正も行われる。上記加算器275からのキャリ信号は、ループエンド到達信号として、上記選択器278に与えられて、加算器277側への選択切換が行われるほか、ループカウンタ281にも与えられて、インクリメントが行われる。 このループカウンタ281のループカウント値は、比較器283に与えられて、ループ回数データLCiに一致したか否かのジャッジが行われ、一致すれば、この一致信号がループ終了信号として読出アドレス発生器285に与えられ、読出アドレス発生器285の読出アドレスデータが+1される。これにより、波形読出アドレスコントロールデータメモリ284より、次のループについてのループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ回数データLCiが読み出されて、次のループ再生にシフトする。上記比較器283からの一致信号は、ノアゲート282を介して、上記ループカウンタ281にクリア信号として与えられる。 また、キーボード(図示せず)のキーが押鍵中の間、ハイレベルとなるキーオン信号は、キーオンイベント検出器280に入力されて、キーオン信号のアップエッジタイテミングでハイレベルとなるとともに、楽音開始以降はロウレベルとなるキーオンイベント信号が出力される。このキーオンイベント信号は、上記ノアゲート282を介して、上記ループカウンタ281にクリア信号として与えられるほか、上記読出アドレス発生器285にも与えられて、読出アドレス発生器285がリセットされる。 [発明が解決しようとする課題] しかしながら、上述のものでは、1つのループセクションにおけるループ再生を回数で決定している。このため、音高が低く、従って楽音波形データWDの読み出し速度が遅い場合には、1つのループセクションの実行に要する時間が長くなり、第16図(1)に示すように、1つの楽音放音開始から終了までの間に、各ループセクションの占める時間が大きくなる。これに対し、音高が高く、従って楽音波形データWDの読み出し速度が速い場合には、1つのループセクションの実行に要する時間が短くなり、第16図(2)に示すように、1つの楽音放音開始から終了までの間に、各ループセクションの占める時間が小さくなる。 これは、音高の変化により、楽音に余分な変化因子がはいってしまうことになる。むろん、音高の変化により、高調成分の含有率を変えること等は、広く行われていることであるが、このようなループ再生にあっては、むしろ余分な変化因子であって、聴感好ましくなく、また実際の楽器の音ともずれてしまうことになる。 本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、音高の変化いかんにかかわらず、常に同じループ再生を行うことのできる楽音に関する波形データの生成装置及び方法を提供することを目的としている。 [課題を解決するための手段] 上記目的を達成するために、本発明においては、保持された楽音に関する波形データの繰り返しセクションの先頭と末尾を示す任意に指定可能な複数の異なるセクションデータと、この繰り返しの時間を示す時間データとを発生し、この発生されたセクションデータに基づいて、楽音に関する波形データの一部又は全部につき繰り返し生成を行い、この繰り返し生成の時間が上記発生された時間データに達したか否かを判別して、繰り返し生成を終了し、この繰り返し生成の終了の後、別の異なるセクションの繰り返し生成に移行するようにした。 また、本発明においては、保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき繰り返し生成を行い、この繰り返し生成の時間が予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かと、上記繰り返し生成が繰り返しセクションの末尾に達したか否かを判別して、上記繰り返し生成を終了するようにした。 [作用] これにより、第9図に示すように、音高のいかんにかかわらず、楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を常に一定にすることができ、音高の変化によって、余分な楽音内容の変化因子がはいってしまうことがなくなる。なお、楽音に関する波形(データ)には、楽音波形、エンベロープ波形、楽音波形にエンベロープ波形が合成された波形等の時間的に逐次レベルの変化する信号のほか、楽音波形の読出アドレスデータ、楽音波形にエンベロープ波形が合成された波形の読出アドレスデータ等の時間的に値の変化する時間関数情報を含み、楽音波形には、矩形波、三角波、正弦波のほか、自然音の波形等、あらゆる波形が含まれる。 [実施例] <全体回路> 第3図は、楽音に関する波形データの生成装置の全体回路を示すもので、ROM13には、制御装置10が各種処理を行うためのプログラムのほか、楽音波形データWDを繰り返し読み出しするためのループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMi、エンベロープ波形生成のためのスピードデータSPDi、レベルデータLVLi、後述する位相角ステップデータPD、読出スタートアドレスデータST、スタート振幅値LVL0をはじめとする楽音信号生成に必要な各種データが記憶されている。RAM14には、制御装置10の各種中間処理データやキーボード11や音色/パラメータスイッチ部12の操作状態を検出するためのデータ、あるいは操作状態に応じて割り当てられたデータ等の内容が記憶される。このRAM14に、次述するトーンジェネレータ15、16…各々へ割り当てた楽音に関する情報を記憶させてもよい。 キーボード11や音色/パラメータスイッチ部12の各キー及び各スイッチの操作は、制御装置10によってサンプリング検出され、各キーで指定された音高、キータッチ及び各スイッチで指定された音色/パラメータ等に応じた楽音の生成放音処理が実行される。トーンジェネレータ15、16…では、上記指定された音高、キータッチ及び音色/パラメータの楽音信号が生成され、サウンドシステム17よりミキシング出力される。トーンジェネレータ15、16…は、1チッLSIで構成されている。 このトーンジェネレータ15、16…では、楽音波形データWDの各ループごとの再生やエンベロープ波形の各フェーズごとの生成が行われており、各ループ終了ごと又は各フェーズ終了ごとに書込要求信号が出力される。この書込要求信号は、制御装置10にいったん与えられた後、アドレスコントローラ40、85…に書込信号として与えられて、ROM13に対する読出アドレスデータが、次のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMi、スピードデータSPDi、レベルデータLVLiについてのものにインクリメントされ、これらのデータが読み出され、トーンジェネレータ15、16…へ送られる。 このアドレスコントローラ40、85…は、トーンジェネレータ15、16…夫々に対応して複数個設けられている。アドレスコントローラ40、85…からROM13へのアクセスは、実際には第12図に示すような選択器122を通じて、時分割的に行われ、制御装置10からのアドレスデータと交互に切り換えられる。 <トーンジェネレータ15、16…> 第4図は、トーンジェネレータ15、16…の1つを示すもので、キー情報メモリ20には、上記キーボード11の同時操作のキーのうち、当該トーンジェネレータ15、16…にチャンネル割り当てが行われたキーのキー情報が記憶され、このキー情報は、波形読出アドレス発生装置28及びエンベロープ波形発生装置29に送られ、キー情報に応じた楽音が生成される。このキー情報には、主に後述する位相角ステップデータPD、読出スタートアドレスデータ、スタート振幅値LVL0等が記憶される。このキー情報メモリ20は、完全に省略して、これらのデータを、直接ROM13から制御装置10によって読み出すようにしたり、ROM13からRAM14にいったんセットして制御装置10によって読み出すようにしてもよい。 これら波形読出アドレス発生装置28及びエンベロープ波形発生装置29には、上記ROM13より読み出された、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMi、スピードデータSPDi、レベルデータLVLiも与えられ、ループ再生に必要な読出アドレスデータRADや、各フェーズごとにエンベロープデータENVが生成される。このうち波形読出アドレス発生装置28で生成された、ループ再生のための読出アドレスデータRADは、波形データメモリ25に与えられ、楽音波形データWDが読み出され、乗算器26で、上記エンベロープ波形発生装置29からのエンベロープデータENVが乗算され、D/A変換器27を介して、アナログ信号として出力される。 <エンベロープ波形発生装置29> 第2図は、エンベロープ波形発生装置29の回路構成を示すもので、エンベロープ波形の各フェーズごとのレベルデータLVLi、スピードデータSPDiは、制御装置10及びアドレスコントローラ40によって、ROM13より読み出され、データラッチ61、62のいずれかにラッチされる。 データがラッチされない方のデータラッチには、現在生成中のエンベロープのフェーズに関するレベルデータLVLi及びスピードデータSPDiがラッチされていて、書き込みが行われるデータラッチと、読み出しが行われるデータラッチとが、交互に切り換えられる。データラッチ61又はデータラッチ62からのレベルデータLVLi及びスピードデータSPDiのうち、レベルデータLVLiについては、選択器60を介し、補数器33及び加算器36に与えられ、スピードデータSPDiについては、同じく選択器60を介し、乗算器35に与えられる。 これらレベルデータLVLi、スピードデータSPDiは、第6図に示すように、エンベロープ波形の各フェーズにおける、レベル(到達目標)とレート(到達速度)の大きさを示すデータである。 スタート振幅値保持メモリ30には、キーオンタイミングに(又はこれに先だったタイミングで)、エンベロープ波形のスタート地点のスタート振幅値LVL0が、キー情報メモリ20より読み出されてセットされる。この場合、スタート振幅値LVL0を、直接、制御装置10及びアドレスコントローラ40によって、ROM13又はRAM14より読み出してもよい。このスタート振幅値LVL0は、楽音放音開始時には、選択器32を介して、加算器34に与えられる。 一方、上記データラッチ61又はデータラッチ62からのレベルデータLVLiは、補数器33で「2」の補数値、すなわちマイナス値に反転され、加算器34で、上記スタート振幅値LVL0に加算される。これにより、スタート振幅値LVL0から到達目標のレベルデータLVLiが減算される。上記補数器33は、例えばインバータ群で構成することができ、次の加算器34のCin端子にハイレベル信号が入力されて、プラスマイナス反転される。 上記選択器32には、後述する振幅保持回路38からのエンベロープデータENVも与えられており、楽音放音開始以降は、上記加算器34に与えられて、エンベロープデータENVから到達目標のレベルデータLVLiが減算される。このエンベロープデータENVは、そのタイミングごとの現在のエンベロープ波形のレベルを示している。 次いで、このエンベロープデータENVの現在値から、到達目標のレベルデータLVLiが差し引かれた減算データ(エンベロープデータENV-レベルデータLVLi)に対し、乗算器35で、上記データラッチ61又はデータラッチ62からのスピードデータSPDiが乗算される。この乗算データ(エンベロープデータENV-レベルデータLVLi)×スピードデータSPDiは、加算器36で、到達目標のレベルデータLVLiに加算されて、上記振幅保持回路38に記憶されるとともに、エンベロープデータENVとして、乗算器26へ出力される。 これにより、第6図に示すようなエンベロープデータENVが、スピードデータSPDiに応じたレートで変化するとともに、変化のステップが減算データ(エンベロープデータENV-レベルデータLVLi)に応じてさらに変化する。これは、到達目標のレベルデータLVLiに近づくに従って、エンベロープデータENVの変化のステップが小さくなることを意味する。 上記乗算器35からの乗算データ(エンベロープデータENV-レベルデータLVLi)×スピードデータSPDiは、比較器37にも与えられて、「0」になったか否かのジャッジが行われ、「0」になれば、その一致信号がフェーズ終了信号として出力される。このフェーズ終了信号は、D型のフリップフロップ67のCK端子に入力され、このフリップフロップ67のD端子には、常にハイレベル信号が与えられており、CK端子にフェーズ終了信号が与えられると、そのQ出力がハイレベルとなる。 このハイレベルとなるQ出力は、エッジ検出器66を介して、上記アドレスコントローラ40に対する、次のフェーズのスピードデータSPDi、レベルデータLVLiの書込要求信号として出力される。このエッジ検出器66は、入力信号のアップエッジを検出するもので、例えばオペアンプを使った波形整形回路で構成することができる。 上記書込要求信号により、上述したように、スピードデータSPDi、レベルデータLVLiが、データラッチ61、62のいずれかにラッチされる。この場合のラッチ信号は、制御装置10よりの上記書込要求信号に応答したローレベルの書込信号であり、この信号はオアゲート63又はオアゲート64を介して、データラッチ61又はデータラッチ62に与えられる。この書込信号は、上記フリップフロップ67にリセットクリア信号としても与えられる。 上記比較器37からのフェーズ終了信号は、アンドゲート69Aを介して、フリップフロップ69に入力されて、フリップフロップ69のQ出力の状態を反転させる。このフリップフロップ69は、セット(S)、リセット(R)入力付のD型フリップフロップの反転Q出力をD入力に接続した、トグル動作をするT型のフリップフロップであり、リセットクリア信号の入力により、Q出力はローレベルとなる。このフリップフロップ69のQ出力は、上記選択器160に選択切換信号として与えられ、1つのフェーズ終了ごとに、選択器60の選択内容がデータラッチ61とデータラッチ62との間で切り換えられ、次のフェーズのエンベロープデータENV生成の実行にシフトする。 また、フリップフロップ69のQ出力は、そのまま上記オアゲート64に入力されるとともに、インバータ65で反転されて、オアゲート63に入力され、ラッチ可能なデータラッチが、データラッチ61とデータラッチ62とで切り換えられる。上記フリップフロップ67の反転Q出力は、アンドゲート69Aに開成信号として与えられ、この開成は、次のスピードデータSPDi、レベルデータLVLiの書き込みまで、維持される。 また、キーボード11のキーが押鍵中の間、ハイレベルとなるキーオン信号は、キーオンイベント検出器31に入力されて、キーオン信号のアップエッジタイミングでハイレベルとなるとともに、楽音放音開始以降はロウレベルとなるキーオンイベント信号が出力される。このキーオンイベント検出器31は、入力信号のアップエッジを検出するもので、例えばオペアンプを使った波形整形回路等で構成することができる。上記キーオンイベント信号は、上記選択器32に与えられて、楽音放音開始時に、スタート振幅値保持メモリ30のスタート振幅値LVL0への選択切換が行われる。さらに上記キーオンイベント信号はインバータ68で反転されて、フリップフロップ69をクリアして、キーオン時にデータラッチ61の方を使用するようにしている。 <アドレスコントローラ40> 第5図は、アドレスコントローラ40とアドレスコントローラ40によって読み出しが行われるROM13の一部とを示す回路図であり、カウンタ43は、上記トーンジェネレータ15、16…からのキーオンイベント信号によってクリアされる。この場合のキーオンイベント信号は、実際にはインバータ41によって反転されたものが使用される。 またカウンタ43は、制御装置10からの書込信号によって、インクリメントされ、ROM13の各番地のレベルデータLVLi、スピードデータSPDiに対するアドレス指定が順次切り換えられていく。このアドレスコントローラ40から、ROM13には、レベルデータLVLi、スピードデータSPDiの記憶エリアの上位アドレスデータが付加されて出力される。この上位アドレスデータは、ラッチ43Aを用い、このラッチ43Aに制御装置10からプリセットされるが、音色および音高(音域)等に応じて記憶エリアを切換選択するようにしてもよいし、予め複数のローレベルビット(アースレベル)のうちの特定ビットをインバータで反転させて、上位アドレスデータとしてもよい。 上記アンドゲート42は、第6図のキーオン中の一定レベルを維持する間CL1と、キーオフ後のやはり一定レベル(「0」レベル)を維持する間CL2は閉成される。すなわち、キーオン最終検出器44は、キーオン中の一定レベル期間CL1のすぐ前の、レベルデータLVL6、スピードデータSPD6が読み出されたとき、カウンタ43の出力データ内容から、そのことを検出し、検出信号をアンドゲート47を介し、ノアゲート46で反転させて、アンドゲート42に与えて、アンドゲート42を閉成させて、カウンタ43のインクリメントを一時的にストップさせる。 また、キーオフ最終検出器45は、キーオフ後の一定レベル期間CL2のすぐ前の、レベルデータLVLm、スピードデータSPDmが読み出されたとき、カウンタ43の出力データ内容から、そのことを検出し、検出信号をアンドゲート48を介し、ノアゲート46で反転させて、アンドゲート42に与えて、アンドゲート42を閉成させて、カウンタ43のインクリメントをストップさせる。このとき、キーオン信号はローレベルであり、インバータ49を介して、アンドゲート48の方が開成されている。 こうして、レベルデータLVLi、スピードデータSPDiを記憶しておく場所を、トーンジェネレータ15、16…の中ではなく、ROM13にしておくことができ、このROM13は汎用メモリを用いることができるので、エンベロープ波形発生装置29をより安価なものにすることができるし、エンベロープ波形発生装置29を含んだトーンジェネレータ15、16…のLSI化も容易となる。 <波形読出アドレス発生装置28> 第1図は、波形読出アドレス発生装置28の回路構成を示すもので、楽音波形データWDのループ再生のためのループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiは、制御装置10及びアドレスコントローラ85によって、ROM13より読み出され、データラッチ107、108のいずれかにラッチされる。 データがラッチされない方のデータラッチには、現在再生中の楽音波形データWDの繰り返し読み出しを行うループセクションに関するループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiがラッチされていて、書き込みが行われるデータラッチと、読み出しが行われるデータラッチとが交互に切り換えられる。 データラッチ107又はデータラッチ108のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiのうち、ループトップデータLTiについては、選択器103を介し、加算器77に与えられ、ループエンドデータLEiについては、同じく選択器103を介し、加算器75に与えられ、ループ時間データLTMiについては、やはり選択器103を介し、ループ時間判別部81に与えられる。 上記ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiは、楽音波形データWDの繰り返し読み出しを行うループセクションの先頭アドレスデータ、最終アドレスデータ、繰り返し読み出しの時間データを示している。 スタートアドレス保持メモリ70には、読出スタートアドレスデータSTが、キーオンタイミングに(又はこれに先だったタイミングで)、キー情報メモリ20より読み出されてセットされ、位相角ステップデータメモリ71には、位相角ステップデータPDが、同じくキーオンタイミングに(又はこれに先だったタイミングで)、キー情報メモリ20より読み出されてセットされる。この場合、これら読出スタートアドレスデータST、位相角ステップデータPDを、直接、制御装置10及びアドレスコントローラ40によって、ROM13又はRAM14より読み出してもよい。 上記読出スタートアドレスデータSTは、第8図に示すように、楽音波形データWDの読み出しのスタート地点の読出アドレスデータRADを示している。位相角ステップデータPDは、楽音波形データWDの読出アドレスデータRADのインクリメントステップ値を示しており、位相角ステップデータPDを累算して読出アドレスデータRADが生成され、この値が大きいほど、楽音波形データWDの読出速度が速くなって、音高も高くなる。上記楽音波形データWDに対し、読出スタートアドレスデータST、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiをいろいろ変えることによって、種々の音色を実現できる。 上記スタートアドレス保持メモリ70の読出スタートアドレスデータSTは、楽音放音開始時に、選択器72を介して、加算器73で、上記位相角ステップデータメモリ71からの位相角ステップデータPDが加算される。この加算データは、選択器78を介して、波形読出アドレス保持回路79に記憶され、波形データメモリ25に読出アドレスデータRADとして送出されるとともに、楽音放音開始以降は、上記選択器72を介して、上記加算器73へ送出され、位相角ステップデータPDが再び加算される。加算器73と波形読出アドレス保持回路79との加算ループ回路で、読出アドレスデータRADに対する位相角ステップデータPDの累算が行われていく。 また、加算器73からの読出アドレスデータRADは、補数器74で、「2」の補数値すなわちマイナス値に反転され、加算器75で、上記データラッチ107又はデータラッチ108からのループエンドデータLEiに加算される。これにより、ループエンドデータLEiから読出アドレスデータRADが減算されることになる。上記補数器74は、例えばインバータ群で構成することができ、次の加算器75のCin端子にハイレベル信号が入力されて、プラスマイナス反転される。 この減算で、楽音波形データWDの読み出しが繰り返し読み出しのループセクションの最後まで達して、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiに到達し、さらにループエンドデータLEiを越えると、加算器75よりキャリ信号が出力される。このキャリ信号は、差分保持回路76にラッチ信号として与えられ、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiを越えた分の端数データがラッチされる。 この端数データは、加算器77で、ループトップデータLTiに加算されて、端数補正が行われ、これが選択器78を介して、新たな読出アドレスデータRADとして出力される。これにより、楽音波形データWDの読出アドレスデータRADが、ループエンドデータLEiからループトップデータLTiにジャンプするとともに、このジャンプ時に、読出アドレスデータRADがループエンドデータLEiを越えた分の端数データの補正も行われる。上記加算器75からのキャリ信号は、ループエンド到達信号として、上記選択器78に与えられて、加算器77側への選択切換が行われるほか、ループ時間判別部81にも与えられる。 <ループ時間判別部81> 第10図は、ループ時間判別部81の回路構成を示すもので、基準時間変更器140は、例えばデコーダ等で構成することができ、キー情報メモリ20から与えれる、又は制御装置10によってROM13若しくはRAM14から与えられる、音色データ、音域データ、その他各種パラメータデータ(動的因子又は静的因子)をデコードして、基準時間発生器141に与える。音色データとパラメータデータは、上記音色/パラメータスイッチ部12で選択指定されたものであり、音域データは上記キーボード11からのキーコードに基づいたもので、例えばキーコードのオクターブデータが用いられる。パラメータデータは、エフェクト、リズム等の選択内容や、モジュレーションホイール、ピッチベンダー等のコントローラの指定内容等を指す。 基準時間発生器141は、例えばプログラマブル進数カウンタやプログラマブル分周カウンタ等で構成することができ、上記基準時間変更器140からのデコードデータに応じた周期のパルス信号をループカウンタ142に与える。これにより、楽音波形データWDを繰り返し読み出しするループセクションのループ時間データLTMを、音色、音域、各種パラメータに応じて、変えていくことができる。 ループカウンタ142は、与えられるパルス信号をタイムカウントして、比較器146に与える。比較器146は、上記データラッチ107又はデータラッチ108より与えられるループ時間データLTMiと、ループカウンタ142からのタイムカウントデータとを比較し、一致したら、その一致信号をループ時間到達信号として出力する。このループ時間到達信号は、SR型のフリップフロップ145のS端子に入力されて、フリップフロップ145がセットされ、そのQ出力によりアンドゲート144が開成される。 そして、この直後のループエンド到達信号が、上記開成済のアンドゲート144を介して、ループ終了信号として出力される。このループ終了信号は、上記フリップフロップ145のR端子に入力されて、フリップフロップ145がリセットされるし、ノアゲート143を介して、上記ループカウンタ142にクリア信号として入力される。ループカウンタ142には、キーオンイベント信号もノアゲート143を介して、クリア信号として与えられる。このキーオンイベント信号は、楽音放音開始時にハイレベルとなる信号である。 また、第1図において、上記ループ終了信号は、D型のフリップフロップ102のCK端子に入力され、このフリップフロップ102のD端子には、常にハイレベル信号が与えられており、CK端子にループ終了信号が与えられると、そのQ出力がハイレベルとなる。このハイレベルとなるQ出力は、エッジ検出器101を介して、上記制御装置10、アドレスコントローラ85に対する、次のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiの書込要求信号として出力される。このエッジ検出器101は、入力信号のアップエッジを検出するもので、例えばオペアンプを使った波形整形回路で構成することができる。 上記書込要求信号により、上述したように、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiが、データラッチ107、108のいずれかにラッチされる。この場合のラッチ信号は、制御装置10よりの上記書込要求信号に応答したローレベルの書込信号であり、この信号はオアゲート109又はオアゲート110を介して、データラッチ107又はデータラッチ108に与えられる。この書込信号は、上記フリップフロップ102にリセットクリア信号としても与えられる。 上記ループ時間判別部81からのループ終了信号は、アンドゲート106を介して、フリップフロップ105に入力されて、フリップフロップ105のQ出力の状態を反転させる。このフリップフロップ105は、セット(S)、リセット(R)入力付のD型フリップフロップの反転Q出力をD入力に接続した、トグル動作をするT型のフリップフロップであり、リセットクリア信号の入力により、Q出力はローレベルとなる。このフリップフロップ105のQ出力は、上記選択器103に選択切換信号として与えられ、1つのループセクション終了ごとに、選択器103の選択内容がデータラッチ107とデータラッチ108との間で切り換えられ、次のループセクションの読出アドレスデータ生成の実行にシフトする。 また、フリップフロップ105のQ出力は、そのまま上記オアゲート110に入力されるとともに、インバータ111で反転されて、オアゲート109に入力され、ラッチ可能なデータラッチが、データラッチ107とデータラッチ108とで切り換えられる。上記フリップフロップ102の反転Q出力は、アンドゲート106に開成信号として与えられ、この開成は、次のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiの書き込みまで、維持される。 また、キーボード11のキーが押鍵中の間、ハイレベルとなるキーオン信号は、キーオンイベント検出器80に入力されて、キーオン信号のアップエッジタイミングでハイレベルとなるとともに、楽音放音開始以降はロウレベルとなるキーオンイベント信号が出力される。このキーオンイベント検出器80は、入力信号のアップエッジを検出するもので、例えばオペアンプを使った波形整形回路等で構成することができる。上記キーオンイベント信号は、上記選択器72に与えられて、楽音放音開始時に、スタートアドレス保持メモリ70からの読出スタートアドレスデータSTへの選択切換が行われる。さらに上記キーオンイベント信号はインバータ104で反転されてフリップフロップ105をクリアして、キーオン時にデータラッチ107の方を使用するようにしている。 <アドレスコントローラ85> 第7図は、アドレスコントローラ85と、このアドレスコントローラ85によって読み出しが行われるROM13の一部とを示す回路図であり、カウンタ86は、上記トーンジェネレータ15、16…からのキーオンイベント信号によってクリアされる。この場合のキーオンイベント信号は、実際にはインバータ88によって反転されたものが使用される。 また、カウンタ86は、制御装置10からの書込信号によって、インクリメントされ、ROM13の各番地のループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiに対するアドレス指定が、順次切り換えられていく。このアドレスコントローラ85から、ROM13には、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiの記憶エリアの上位アドレスデータが付加されて出力される。この上位アドレスデータは、ラッチ86Aを用い、このラッチ86Aに制御装置10からプリセットされるが、音色および音高(音域)等に応じて記憶エリアを切換選択するようにしてもよいし、予め複数のローレベルビット(アースレベル)のうちの特定ビットをインバータで反転させて、上位アドレスデータとしてもよい。 上記カウンタ86からの読出アドレスデータは、最終検出器89に与えられ、この読出アドレスデータが、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiの記憶エリアの最終アドレスに達したとき、最終検出器89の出力はローレベルとなって、上記アンドゲート87が閉成される。これにより、ROM13より、最後のループセクションのループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiが読み出された後は、楽音波形データWDの最後のループセクションの繰り返し読み出しが続行される。 こうして、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiを記憶しておく場所を、トーンジェネレータ15、16…の中ではなく、ROM13にしておくことができ、このROM13は汎用メモリを用いることができるので、波形読出アドレス発生装置28をより安価なものにすることができし、波形読出アドレス発生装置28を含んだトーンジェネレータ15、16…のLSI化も容易となる。 上述したような、波形読出アドレス発生装置28により、波形データメモリ25の楽音波形データWDの繰り返し読み出しを行うと、第10図の比較器146では、ループ再生の回数ではなく、ループ再生の時間の比較判別が行われる。従って、第9図(1)のように、音高が低く、楽音波形データWDの読み出し速度が遅くても、また第9図(3)のように音高が高く、楽音波形データWDの読み出し速度が速くても、1つのループセクションのループ再生の時間は常に一定である。第9図(2)に示すように、音高が高く、楽音波形データWDの読み出し速度が速くなって、ループ再生の時間が短くなってしまうことがない。 これにより、音高が高くても低くても、各ループセクションのループ再生の時間を一定となり、1つの楽音放音の間のループセクションのバランスがとられ、音高の変化によって、余分な楽音内容の変化因子がはいってしまうことがなくなる。 <ポリフォニツクシステム例> 第11A図、第11B図、第12図は、時分割処理により、ポリフォニックな楽音生成を行うことのできる実施例を示すものである。 第11A図は、波形読出アドレス発生装置28及びエンベロープ波形発生装置29の、データラッチ61、62、107、108の部分を、8チャンネル分の楽音生成システムに対応させたものである。RAM112は、16個の記憶番地をもち、8個2組で、各組に対し最高8個のレベルデータLVLi、スピードデータSPDi又はループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiが、制御装置10及びアドレスコントローラ40、85によってセットされる。2つの組の各々の記憶番地は、現在データを読み出して楽音を生成中のものと、次に実行されるデータを書き込むものとが、交互に切り換えられる。 RAM112の記憶番地の8個の記憶番地の指定アドレスであるチャンネル信号A0~A2は、データセレクタ113a、113b、113cを介して与えられる。このチャンネル信号A0~A2は、読出用と書込用とが、データセレクタ113a、113b、113cでセレクトされる。読出チャンネル信号A0~A2は、電子楽器全体の同期をとるシステムクロック信号によってカウントされるデータが用いられ、チャンネルタイミング信号と同じもので、第11B図(1)に示すとおりである。書込チャンネル信号A0~A2は、制御装置10より与えられる。この書込チャンネル信号A0~A2は、書込タイミングが、第11B図(1)のチャンネルタイミングと周期がとられるものであれば、読出チャンネル信号A0~A2をそのまま用いてもよい。 RAM112の2つの組は、エリア切換信号によって切換選択され、この信号は、データセレクタ113dに、そのまま及びインバータ115で反転されて与えられる。このエリア切換信号は、上記読出及び書込のチャンネル信号A0~A2の上位アドレスデータA3となるものであり、シフトレジスタ118からの出力が使われる。このシフトレジスタ118は、その出力がイクスクルシブオアゲート116、アンドゲート117を介して帰還入力されるタイプのものである。 イクスクルシブオアゲート116には、上記比較器37からのフェーズ終了信号又はループ時間判別部81からのループ終了信号が与えられて、フェーズ終了時又はループ終了時に、エリア切換信号が反転される。アンドゲート117には、上記インバータ68又はインバータ104からのローレベルのキーオンイベント信号が与えられ、エリア切換信号のクリアが行われる。 RAM112の読出信号はハイレベル、書込信号はローレベルであり、第11B図(3)に示すとおりとなっている。書込信号は制御装置10より与えられ、読出信号は常にハイレベルとなっている信号が使われ、夫々データセレクタ113eを介して、RAM112に与えられる。 上記したデータセレクタ113a~113eのセレクト切換を行うのは、リード/ライトタイミング信号であり、この信号は、第11B図(2)(4)に示すように、1つのチャンネルタイミング内で、読み出しと書き込みを切り換える。この信号は、そのままデータセレクタ113a~113eの書き込み側のアンドゲートに、開成信号として与えられるとともに、インバータ114で反転されて、データセレクタ113a~113eの読み出し側のアンドゲートに、開成信号として与えられる。なお、第11B図(4)における書き込みのチャンネルタイミングは、第11B図(1)のチャンネルタイミングとは無関係に、制御装置10からの書込チャンネル信号によって決定される。 第12図は、同じく複数チャンネル分の楽音生成システムに対応した、エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28A、制御装置10A、アドレスコントローラ40A、85A等を示すものである。エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28Aからの書込要求信号キーオンイベント信号は、そのままのタイミングで、上記アドレスコントローラ40A、85Aへ送られるほか、書込要求信号は、要求信号弁別器123を介して、制御装置10Aに送られる。また、エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28Aの中の、第11A図で述べた読出チャンネル信号も、要求チャンネル弁別器124を介して、制御装置10Aに送られる。 要求信号弁別器123と要求チャンネル弁別器124は、例えばインタフェースで構成することができ、信号及びデータの弁別、処理タイミングの同期等が行われる。制御装置10Aは、書込要求信号のあったチャンネルについては、アドレスコントローラ40A、85Aに書込信号を与えて、ROM13に対するアドレスデータを+1し、次のフェーズのレベルデータLVLi、スピードデータSPDi、又は次のループのループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMiをROM13より読み出して、エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28Aの上述したRAM112に上記書込信号とともに送る。 ROM13に対するアドレスデータは、アドレスコントローラ40A、85A、制御装置10Aからのものが、選択器122によって、時分割的に切り換えられる。選択器122のセレクト信号は、チャンネルタイミング信号の4倍の周波数のクロックパルス信号が用いられ、各入力が切換セレクトされていく。上記書込チャンネル信号は、上記要求チャンネル弁別器124からの読出チャンネル信号が、そのまま制御装置10Aによって転用される。むろん、要求チャンネル弁別器124を使わず、エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28Aからの読出チャンネル信号を、書込要求信号によって開成されるアンドゲート群を介して、書込チャンネル信号として出力するようにしてもよい。 また、エンベロープ波形発生装置29A、波形読出アドレス発生装置28Aには、楽音放音開始時に、制御装置10Aより、位相角ステップデータPD、読出スタートアドレスデータST、スタート振幅値LVL0等のキー情報が、ROM13より読み出されて送られる。なお、読出スタートアドレスデータST、スタート振幅値LVL0は、RAM14又はキー情報メモリ(図示せず)に記憶しておいてもよい。 このような複数チャンネル分の楽音生成システムを構成するには、他に、次のようなことが必要である。すなわち、位相角ステップデータメモリ71をチャンネル数と同じ段数をもつ、帰還入力型のシフトレジスタとしたり、読み書き可能なメモリ(RAM)としたり、アドレスコントローラ40A、85Aのカウンタ43、86をチャンネル数と同じ数分用意して、デマルチプレクサ又は選択器を介して、書込要求信号又はキーオンイベント信号により、各カウントデータをカウント又はクリアしたり、ループ時間判別部81の基準時間変更器140、基準時間発生器141、ループカウンタ142をチャンネル数と同じ数分用意して、マルチプレクサ又はデータセレクタを介して、ループカウンタ142…からの各タイムカウントデータを比較器146に与えたりすることになる。 <エンベロープ波形のリピート再生> 第13A図は、エンベロープ波形発生装置29の別の実施例を示すもので、この実施例は、第13B図に示すように、エンベロープ波形の各フェーズにつき、レベルデータLVLi、スピードデータSPDiのフェーズとレベルデータLVLj、スピードデータSPDjのフェーズとを交互にリピートするようにしたものである。そして、このリピート回数を示すのがリピート回数データRPiである。 これら、レベルデータLVLi、LVLj、スピードデータSPDi、LVLj、リピート回数データRPiは、制御装置10及びアドレスコントローラ85によって、ROM13より読み出され、データラッチ61、62のいずれかにラッチされる。データラッチ61又はデータラッチ62からのレベルデータLVLi、LVLj、スピードデータSPDi、LVLj、リピート回数データRPiのうち、レベルデータLVLi、LVLjは、選択器60を介し、さらに選択器170を介して、レベルデータLVLi、レベルデータLVLjのいずれかがセレクトされ、加算器36に与えられる。またスピードデータSPDi、LVLjは、選択器60を介し、さらに選択器171を介して、スピードデータSPDi、スピードデータSPDjのいずれかがセレクトされ、乗算器35に与えられる。さらに、リピート回数データRPiは、選択器60を介し、比較器172に与えられる。 そして、エンベロープデータENVがフェーズの最終地点まで到達して、比較器37より一致信号が出力されると、この一致信号はフリップフロップ175に入力されて、フリップフロップ175のQ出力の状態を反転させる。このフリップフロップ175は上述したフリップフロップ69、105と全く同じものであり、キーオンイベント信号によりクリアされる。このフリップフロップ175のQ出力は、上記選択器170、171に選択切換信号として与えられ、1つのフェーズ終了ごとに、選択器170、171の選択内容がレベルデータLVLi、スピードデータSPDiとレベルデータLVLj、スピードデータSPDjとの間で切り換えられる。 このフリップフロップ175のQ出力は、リピートカウンタ173に入力されて、フェーズのリピート回数がカウントされ、このカウントデータは、上記比較器172に与えられる。比較器172には、上記リピート回数データRPiも与えられており、両データが一致すると、一致信号がノアゲート174を介して、リピートカウンタ173にクリア信号として入力されるとともに、アンドゲート69Aを介して、フリップフロップ69に入力されて、フリップフロップ69のQ出力の状態を反転させる。これにより、選択器60の選択内容がデータラッチ61とデータラッチ62との間で切り換えられ、次のリピートセクションのエンベロープデータ生成の実行に移行する。上記リピートカウンタ173は、キーオンイベント信号によってもクリアされる。他の内容は、上記第2図のエンベロープ波形発生装置29と同じである。 このように、エンベロープ波形のフェーズをリピートする信号生成装置についても、レベルデータLVLi、LVLj、スピードデータSPDi、SPDj、リピート回数データRPiを記憶しておく場所を、トーンジェネレータ15、16…の中ではなく、ROM13にしておくことができ、このROM13は汎用メモリを用いることができるので、エンベロープ波形発生装置29をより安価なものにすることができるし、エンベロープ波形発生装置29を含んだトージェネレータ15、16…のLSI化も容易となる。 なお、リピート回数データRPiをリピート時間データRPTiとして、第1図及び第10図のように変更することは容易であり、さらにループセクションのループ時間データRPTiを音色、音域、各種パラメータに応じて変えていくようにすることも可能である。 この場合、第13A図のエンベロープ波形発生装置29においては、比較器172、リピートカウント173をはじめとる鎮線枠の部分を第10図と同じものと置き換えればよい。そして、フェーズ終了信号をループエンド到達信号の代わりに、アンドゲート144に入力させ、キーオンイベント信号は、そのままキーオンイベント検出器31からのものを使用し、ループ終了信号は、リピート終了信号として出力させ、リピート回数データRPをリピート時間データに置き換え、フリップフロップ175のQ出力は、選択器170、171だけに与えられるようにすればよい。 このように、エンベロープ波形のリピート生成においても、リピート生成を一定時間にすることができる。 <ループ再生の他の例> 第14A図乃至第14C図は、波形読出アドレス発生装置28のループ再生の他の実施例を示すものである。 第14A図は、ループセクションを片方向ではなく、両方向にわたって、往復繰り返し読み出しを行うものである。この場合には、加算器75からのループエンド到達信号が出力されるごとに、加算器75と加算器77に与えるデータを、2つの選択器を使って入れ換ればよい。すなわち、上記ループ到達信号をフリップフロップ105と同じフリップフロップに入力し、そのQ出力を上記2つの選択器のセレクト信号として用いる。 そして、2つの選択器に、ループトップデータLTi、ループエンドデータLEiをともに与え、一方には、上記セレクト信号をそのまま与え、他方には、セレクト信号をインバータで反転して与え、各選択器からのセレクトデータを、加算器75、77に与える。また、上記位相角ステップデータメモリ71からの位相角ステップデータPDを、イクスクルシブオアゲート群を介して、加算器73に与え、このイクスクルシブオアゲート群の各ゲートに、上記セレクト信号を与え、さらに加算器73のCin端子に上記セレクト信号を入力させる。 第14B図は、各ループセクションを反対方向から片方向のみ、繰り返し読み出しを行うものである。この場合は、ループトップデータLTiをループエンドデータLEiより小さくし、さらに読出スタートアドレスデータSTをループトップデータLT1より小さくして、位相角ステップデータメモリ71からの位相角ステップデータPDを、インバータ群で反転させるとともに、加算器73のCin端子にハイレベル信号を入力させることになる。 第14C図は、各ループセクションを反対方向から両方向にわたって、往復繰り返し読み出しを行うものである。この場合は、上述した第14A図の場合と全く同じ構成となり、さらにループトップデータLTiをループエンドデータLEiより小さくし、さらに読出スタートアドレスデータSTをループトップデータLT1より小さくすることになる。 このようなループ再生についても、音高が高くても低くても、各ループセクションのループ再生の時間が一定となり、1つの楽音放音の間のループセクションのバランスがとられ、音高の変化によって、余分な楽音内容の変化因子がはいってしまうことがなくなる。 本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明ではレベルデータLVLi、スピードデータSPDi、リピート回数データRPiあるいはループトップデータLTi、ループエンドデータLEi、ループ時間データLTMi(ループ回数データLCi)等を1つのワードのデータとして述べてきたが、これには限定されず、システムのビット数に合わせて、複数に分割し、複数ワードよりなるデータとしてもよい。 また、ループ時間判別部81の基準時間変更器140に入力されるデータは、音色、エフェクトのほか、アフタータッチデータ、イニシャルタッチデータ等の発音操作の強弱又は遅速等のデータ等を含めてもよく、要はループ再生時間が音高のいかんにかかわらず一定にできる要素があればよい。 [発明の効果] 以上詳述したように、本発明によれば、保持された楽音に関する波形データの繰り返しセクションの先頭と末尾を示す任意に指定可能な複数の異なるセクションデータと、この繰り返しの時間を示す時間データとを発生し、この発生されたセクションデータに基づいて、楽音に関する波形データの一部又は全部につき繰り返し生成を行い、この繰り返し生成の時間が上記発生された時間データに達したか否かを判別して、繰り返し生成を終了し、この繰り返し生成の終了の後、別の異なるセクションの繰り返し生成に移行するようにした。 また、保持された楽音に関する波形データの一部又は全部につき繰り返し生成を行い、この繰り返し生成の時間が予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かと、上記繰り返し生成が繰り返しセクションの末尾に達したか否かを判別して、上記繰り返し生成を終了するようにした。 したがって、音高のいかんにかかわらず、楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を常に一定にすることができ、音高の変化によって、余分な楽音内容の変化因子がはいってしまうことがなくなる等の効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 第1図乃至第14図は本発明の実施例を示すもので、第1図は波形読出アドレス発生装置28の回路図であり、第2図はエンベロープ波形発生装置29の回路図であり、第3図はパラメータ信号生成装置の全体回路図であり、第4図はトーンジェネレータ15、16…の回路図であり、第5図はエンベロープ波形についてのアドレスコントローラ40とROM13を示す回路図であり、第6図はエンベロープ波形の各フェーズを示す図であり、第7図は楽音波形についてのアドレスコントローラ85とROM13を示す回路図であり、第8図は楽音波形データWDと楽音波形データWDの各ループセクションを示す図であり、第9図はループ再生の音高に応じた変化を示す図であり、第10図はループ時間判別部81の回路図であり、第11図乃至第12図は本発明の複数チャンネルの楽音生成システムについての実施例を示す図であり、第13図はエンベロープ波形の各フェーズをリピート再生する実施例の回路図であり、第14図は楽音波形データWDのループ再生の他の実施例を示す回路図であり、第15図乃至第16図は従来例を示す図である。 10、10A…制御装置、13…ROM、15、16…トーンジェネレータ、28、28A…波形読出アドレス発生装置、29、29A…エンベロープ波形発生装置、40、85…アドレスコントローラ、61、62、107、108…データラッチ、81…ループ時間判別部、112…RAM、140…基準時間変更器、141…基準時間発生器。 |
訂正の要旨 |
訂正の趣旨 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、上記発生された時間データに達したか否かを判別する手段」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、この計測された時間が、上記発生された時間データに達したか否かを判別する手段」と、訂正する。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1の中の「この繰り返し生成の終了の後、上記発生された別のセクションデータ及び上記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの別の異なるセクションの繰り返し生成に移行する手段」を、「この繰り返し生成の終了の後、上記発生された次の別のセクションデータ及び上記発生された時間データに基づいて、楽音に関する波形データの次の別の異なるセクションの繰り返し生成に移行する手段と、少なくとも上記セクションデータ及び時間データと次の別のセクションデータ及び時間データとを記憶する手段であって、このセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する間に、上記次の別のセクションデータ及び時間データが書き込まれ、上記次の別の異なるセクションの繰り返し生成への移行に基づき、この書き込まれた次の別のセクションデータ及び時間データを読み出して上記波形データの繰り返し生成を行う手段に供給する手段]と、訂正する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項2の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測する手段と、この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別する手段」と、訂正する。 (4)訂正事項d 特許請求の範囲の請求項2の中の「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段」を、「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了する手段と、少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶する手段であって、この所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、上記次の別の所定時間が書き込まれ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出して上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる手段」と、訂正する。 (5)訂正事項e 特許請求の範囲の請求項4の中の「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、」を、「楽音に関する波形データの繰り返し生成の時間を計測させ、この計測された時間が、予め定められた繰り返し生成のための所定時間に達したか否かを判別させ、」と、訂正する。 (6)訂正事項f 特許請求の範囲の請求項4の中の「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させる」を、「これら両判別結果に応じて、上記繰り返し生成を終了させ、少なくとも上記所定時間と次の別の所定時間とを記憶させ、この所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる間に、次の別の所定時間を書き込ませ、上記繰り返し生成の終了に基づき、この書き込まれた次の別の所定時間を読み出しさせて上記所定時間に達したか否かの判別に使用させる」と、訂正する。 |
審決日 | 2000-11-06 |
出願番号 | 特願平1-104127 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(G10H)
P 1 41・ 854- Y (G10H) P 1 41・ 855- Y (G10H) P 1 41・ 851- Y (G10H) P 1 41・ 841- Y (G10H) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡邊 聡 |
特許庁審判長 |
井上 雅夫 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 小林 秀美 |
登録日 | 1998-03-20 |
登録番号 | 特許第2760436号(P2760436) |
発明の名称 | 楽音に関する波形データの生成装置及び生成方法 |
代理人 | 若原 誠一 |
代理人 | 若原 誠一 |