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審決分類 審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正する G03G
審判 訂正 2項進歩性 訂正する G03G
管理番号 1060254
審判番号 訂正2002-39027  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-03-17 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-02-01 
確定日 2002-04-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2890727号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2890727号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2890727号発明(平成2年7月26日特許出願、平成11年2月26日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(16)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)請求項1を削除する。
(2)請求項2に記載中の、「静電潜像を現像する現像方法」を「静電潜像を反転現像する現像方法」と訂正する。
(3)同 「EB≧|VI-VB|/2D」を「6000≧EB≧|VI-VB|/2D」と訂正する。
(4)同 「絶縁破壊電圧(ボルト)」を「絶縁破壊電圧(ボルト/cm)」と訂正する。
(5)請求項2の番号を繰り上げて請求項1に訂正する。

(6)願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)第5頁第13行~第7頁第4行(特許公報第2頁右欄第2~28行)の記載
「本発明の第1のものは、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、現像部位の最大現像電界
|VI-VB|/D
〔式中、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕における比抵抗が109Ω・cm以上であるものを用いることを特徴とする。
本発明の第2のものは、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm 以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする。
EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」を
「本発明は、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm 以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」と訂正する。
(7)特許明細書第8頁第3~12行(特許公報第2頁右欄下から2行~第3頁左欄第7行)の記載
「本発明は、このような観点においてなされたものである。そして、本発明者等は、現像条件下におけるキャリアの比抵抗が109Ω・cm以上であれば、キャリア付着の発生がないことを確認した。さらにまた、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。」を
「本発明は、このような観点においてなされたものである。そして、本発明者等は、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上で6000V/cm以下の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。」と訂正する。
(8)特許明細書第10頁第2~11行(特許公報第3頁左欄第34~43行)の記載
「即ち、第1の場合においては、現像部位の最大現像電界である。
|VI-VB|/D
のもとで測定した比抵抗が109Ω・cm以上であるものを用いる。
また、第2の場合には、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧EBが、下記式で示される条件を満たすものを用いる。
EB≧|VI-VB|/2D」を、
「即ち、本発明は、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧EBが、下記式で示される条件を満たすものを用いる。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D」と訂正する。
(9)特許明細書第16頁第5行(特許公報第4頁右欄第8行)の「ポリメチルメタクリレートまたは」を削除する。、
(10) 特許明細書第16頁第9~10行(特許公報第4頁右欄第12~13行)の記載「より行った。得られたキャリアの被覆状態及び比抵抗を第1表に示す。」を
「より、103V/cmにおける比抵抗及び絶縁破壊電圧が第1表に示される値になるように樹脂被覆を行った。得られたキャリアの被覆状態も第1表に示す。」と訂正する。
(11) 特許明細書第16頁第11~17行(特許公報第4頁右欄第14~20行)の「ポリメチルメタクリレートで被覆したキャリアの場合は、スチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体(Mn=8,000、Mw=100,000)に、カーボンブラック(BP1300、デグサ社製)をトナー全重量に対して10重量%添加し、混練粉砕法によって得た平均粒径10μmのトナーを使用した。また、」を削除する。
(12) 特許明細書第18頁(特許公報第5頁)の第1表を削除する。
(13) 特許明細書第19頁第1~7行(特許公報第5頁第1表の下の左欄第1行~右欄第3行)の「例2 例1におけると同様にしてキャリアを作成した。但し、103V/cmにおける比抵抗及び絶縁破壊電圧が、第2表に示される値になるように樹脂被覆を行った。例1と同様のトナーを使用し、同様の条件でコピー操作を行った。それらの結果を第2表に示す。」を削除する。
(14) 特許明細書第20頁(特許公報第6頁)の第2表の記載を、添付した訂正明細書第8頁の第1表のように、すなわち、「第2表」を「第1表」と訂正し、試験No.9~12のデータを削除し、試験No.13~16を試験No.1~4に訂正する。
(15) 特許明細書第13頁第2~3行(特許公報第3頁右欄第40行)の「絶縁破壊電圧を所定の値のするためには、」を「絶縁破壊電圧を所定の値にするためには、」と訂正する。
(16) 特許明細書第16頁第8行(特許公報第4頁右欄第10~11行)の「例えばを」を「例えば、」と訂正する。

2.当審の判断
2.1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)の訂正は、特許請求の範囲の請求項が2つであったものを、1つにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)の訂正は、特許請求の範囲に記載中の静電潜像を現像する現像方法を反転現像に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、かかる訂正は、実施例として、反転現像用に改造した複写機を用いてコピー操作を行った旨の記載(特許公報第4頁右欄第28~30行)及び第2表(特許公報第6頁)の試験No.13~No.16の記載に基づくものである。
(3)の訂正は、特許請求の範囲に記載中の式「EB≧|VI-VB|/2D」において、EBに上限を設けるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許明細書には、実施例として正規現像の場合と反転現像の場合とが記載されており、正規現像の場合にはEBの値は上限値が15000以上であるが、反転現像の場合にはEBの値の上限値は6000であることが第2表(特許公報第6頁)に示されている。そして、(2)の訂正によって、請求項2に係る発明を反転現像の場合に限定したものであるから、(3)の訂正は、第2表(特許公報第6頁)の試験No.13~No.16の記載に基づくものである。
(4)の訂正は、関係式「EB≧|VI-VB|/2D」の右辺の単位がボルト/cmであること、及び本件特許明細書に記載される絶縁破壊電圧の測定法の説明(特許公報第4頁左欄第31行~右欄第2行)からみて、絶縁破壊電圧EBの単位は、感光体と磁気ロールとの間隙を前提として単位長さ当たりのボルト、すなわちボルト/cmとして表記すべきものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
(5)の訂正は、請求項1の削除によって、請求項1が欠番となり不明瞭となることを防ぐものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(6)ないし(14)の訂正は、訂正された特許請求の範囲の記載に整合するように、特許明細書の記載を訂正するものであり、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(15)および(16)の訂正は、明らかな誤記の訂正であり、実質的に意味内容を変更するものではない。
そして、上記各訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

2.2 独立特許要件の判断
訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。
訂正前の特許請求の範囲に記載の発明は、特許異議の決定に記載された理由によって、特許すべきものでないものに対して特許をされたものであるとして、特許を取り消された。
したがって、前記訂正後の特許請求の範囲に記載の発明が前記特許異議の決定に記載された理由を解消し得るか否かについて検討する。

ア.本件訂正後の発明
「【請求項1】 感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする現像方法。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」

イ.刊行物の記載事項
本件特許明細書の請求項1ないし2に係る発明に対し、特許異議の決定で示された刊行物1ないし6は、以下に示すものであって、各々以下に摘示した記載内容がある。
刊行物1:特開昭61-126567号公報(特許異議申立の甲第1号証、本請求の甲第3号証)
刊行物2:特開昭61-126570号公報(特許異議申立の甲第2号証、本請求の甲第4号証)
刊行物3:特開昭61-118767号公報(特許異議申立の甲第3号証、本請求の甲第5号証)
刊行物4:特開昭63-169658号公報(特許異議申立の甲第4号証、本請求の甲第6号証)
刊行物5:特開昭63-174060号公報(特許異議申立の甲第5号証、本請求の甲第7号証)
刊行物6:第19回電子写真学会講習会
「イメージング技術の基礎講座」(昭和60年6月13日、14日)(特許異議申立の甲第6号証、本請求の甲第8号証)

(1) 刊行物1の記載内容
電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像を二成分現像剤により現像する工程を含む画像形成方法に関するものである。
当該刊行物1には、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアスを印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法が記載されており、該樹脂被覆されたキャリアは通常1013Ω・cm以上の電気固有抵抗値を有する絶縁性のものであることが記載されている。
ただし、当該刊行物1において、現像部位の最大現像電界、103V/cmにおける比抵抗が1013Ω・cm以上であること、および絶縁破壊電圧については記載されていない。
また、現像方法は、帯電電位と現像バイアス電位との関係から見て正規現像法によるものと考えられる。

(2) 刊行物2の記載内容
有機光導電性感光体を用いて電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像を二成分現像剤により現像する工程を含む画像形成方法に関するものである。
当該刊行物2には、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアスを印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法が記載されており、前記刊行物1と同様の発明が記載されている。

(3) 刊行物3の記載内容
有機光導電性感光体を用いて電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像を二成分現像剤により現像する工程を含む画像形成方法に関するものである。
当該刊行物3には、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアスを印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法が記載されており、該樹脂被覆されたキャリアは通常1013Ω・cm以上の電気固有抵抗値を有する絶縁性のものであることが記載されている。
ただし、当該刊行物3において、現像部位の最大現像電界、103V/cmにおける比抵抗が1013Ω・cm以上であること、および絶縁破壊電圧については記載されていない。
また、現像方法は、帯電電位と現像バイアス電位との関係から見て正規現像法によるものと考えられる。

(4) 刊行物4の記載内容
電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像を現像するために用いられる静電像現像剤、およびこの静電像現像剤を用いて有機光導電性半導体よりなる感光体の表面に形成された静電潜像を現像するための静電像現像方法に関するものである、特に有機光導電性半導体よりなる感光体の表面に形成された負の静電潜像を現像する場合に好適な静電像現像剤および静電像現像方法に関するものである。
第17頁及び第1図には、感光体と対向して配置された現像剤搬送担体(磁気ロール)に樹脂の被覆層を有するキャリアとトナーとからなる現像剤を担持して現像を行うこと、現像剤搬送担体に直流の現像バイアス電位を印加すること、さらに、現像剤搬送担体は感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送して現像することが記載されている。
また、現像方法は、帯電電位と現像バイアス電位との関係および第2図に示された画像形成装置の説明図から見て正規現像法によるものと考えられる。

(5) 刊行物5の記載内容
電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像を現像するために用いられる静電像現像剤、およびこの静電像現像剤を用いて有機光導電性半導体よりなる感光体の表面に形成された静電潜像を現像するための静電像現像方法に関するものである、特に有機光導電性半導体よりなる感光体の表面に形成された負の静電潜像を現像する場合に好適な静電像現像剤および静電像現像方法に関するものである。
第18頁~第19頁及び第1図には、感光体と対向して配置された現像剤搬送担体(磁気ロール)に樹脂の被覆層を有するキャリアとトナーとからなる現像剤を担持して現像を行うこと、現像剤搬送担体に直流の現像バイアス電位を印加すること、さらに、現像剤搬送担体は感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送して現像することが記載されている。
また、現像方法は、帯電電位と現像バイアス電位との関係および第2図に示された画像形成装置の説明図から見て正規現像法によるものと考えられる。

(6) 刊行物6の記載内容
電子写真乾式現像と転写に係る技術を説明するものに関するものである。
第30頁~第32頁には、キャリア付着とキャリア特性の依存性について記載がある。
第30頁には、キャリア付着には、キャリア特性として粒径、電気抵抗、磁気特性等が関係すると記載されている。
第31頁には、キャリアの電気抵抗が1010Ω・cmを越えれば、急激にキャリア付着が減少することが記載されている。
そして、Fig.15からは、1011Ω・cmの抵抗値のキャリアは粒径によらずキャリア付着が発生しないことが把握できる。

(7) 特許異議申立人の提示した実験成績証明書(1999年11月4日付)(甲第9号証)
目的: 特開昭61-126567公報(刊行物1)、特開昭61-126570号公報(刊行物2)に記載されているキャリアA、及び、特開昭63-169658号公報(刊行物4)、特開昭63-174060号公報(刊行物5)に記載されているキャリアC4を忠実に追試し、その抵抗値が本件(特許第2890727号)の請求項1記載の最大現像電界下での比抵抗が109Ωcm以上であること、本件請求項2記載の103V/cmの比抵抗が109Ωcm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が関係式 EB≧|VI-VB|/2D を満足することを証明する。
実験結果:
測定電位をあげていった場合の抵抗値の推移を図?1及び2(図は省略)に示す。
キャリアA 現像部最大電界での比抵抗
刊行物1の場合 :1.21×1014Ωcm
刊行物2の場合 :1.30×1014Ωcm
1000V/cmの比抵抗:1.38×1014Ωcm
キャリアC4 現像部最大電界での比抵抗:1.23×1014Ωcm
1000V/cmの比抵抗:1.39×1014Ωcm
電界強度約29000V/cmまでの範囲ではキャリアA及びキャリアC4の絶縁破壊電圧は観察されなかった。

(8)特許異議申立人の提示した2000年7月14日付の実験成績証明書
目的: 特開昭63-174060号公報(刊行物5)に記載されているキャリアC1、C3を忠実に追試し、その抵抗値が本件の請求項1記載の最大現像電界下での抵抗値が109~5×1010Ωcmであること、本件請求項2記載の103V/cmの比抵抗が109Ωcm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が関係式 EB≧|VI-VB|/2D を満足することを証明する。
結果: 刊行物5の実施例の|VI-VB|/2Dは、6111V/cmである。
キャリアC1 現像部最大電界での比抵抗:3.7×1010Ωcm
1000V/cmの比抵抗:1.3×1014Ωcm
絶縁破壊電圧 :600V
絶縁破壊電界 :7792V/cm
キャリアC3 現像部最大電界での比抵抗:1.0×1010Ωcm
1000V/cmの比抵抗:1012Ωcm
絶縁破壊電圧 :100V以下
絶縁破壊電界 :1282V/cm以下

(9)特許権者の提示した実験成績証明書(甲第10号証)
目的: 特開昭63-126567号公報(刊行物1)実施例1の記載に準じたキャリアA、及び特開昭63-169658号公報(刊行物4)の実施例の記載に準じたキャリアCを追試作成し、本件訂正明細書のキャリア(No.3)との差を明確にするために絶縁破壊電圧と画質評価の値を測定した。
結果:
キャリアAおよびC共に
1000V/cmでの比抵抗:1.4×1014Ωcm
電界強度2000/0.12=16667V/cmまでの範囲で絶縁破壊電圧は観察されなかった。
キャリアNo.3
1000V/cmでの比抵抗:4×1014Ωcm
絶縁破壊電圧 :6000V/cm
画質評価
キャリアAおよびC:
初期画質:
(総合評価)は△、画像濃度はキャリアAは1.40、キャリアCは1.45、濃度ムラはやや発生、エッジ効果は顕著、キャリア付着はキャリアAは発生なし、キャリアCはやや発生
1万枚後の画質:
(総合評価)は×、画像濃度はキャリアAは1.30、キャリアCは1.35、濃度ムラは著しく発生、エッジ効果は顕著、キャリア付着はキャリアAは発生なし、キャリアCはやや発生、
キャリアNo.3:
初期画質:
(総合評価)は○、画像濃度は1.50、濃度ムラは発生なし、エッジ効果はなし、キャリア付着は発生なし
1万枚後の画質:
(総合評価)は○、画像濃度は1.50、濃度ムラは発生なし、エッジ効果はなし、キャリア付着は発生なし

ウ. 対比・判断
本件訂正請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)と、前記刊行物1ないし5に記載された発明とを対比する。
本請求によって、本件訂正発明は、反転現像法におけるものに限定され、さらに、キャリアの絶縁破壊電圧EBの上限が6000v/cmであることが加えられた。
そこで、まず初めに、反転現像法に限定したことについて検討する。
通常一般的に行われている正規現像法と反転現像法とでは、帯電電位、露光電位、及び現像バイアス電位等の関係が異なるから、用いられているトナー及びキャリアを構成する材料もそれぞれの現像法に対応したものが用いられる。それ故、正規現像法で有効なトナー及びキャリアがそのまま反転現像法においても有効であるということはできない。また、逆の場合も同様である。
それ故、本件訂正発明は、反転現像法において用いることを前提としてキャリアの特性を特定したものであるから、本件訂正発明に用いられているキャリアが、樹脂被覆されたキャリアであって、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、6000≧EB≧|VI-VB|/2D を満たすものであるという条件は、反転現像法に用いられるキャリアであるという前提に立つものとして把握しなければならない。
したがって、本件特許明細書には、本件訂正発明が反転現像法を前提としていることの技術的特徴等については何ら記載されておらず、また、反転現像法自体は周知のものであるが、正規現像法および反転現像法に関する前記技術常識等を加味して考えると、本件訂正発明における現像方法が反転現像法を前提としていることと、キャリアの比抵抗及び絶縁破壊電圧に関する条件とはそれぞれ別個に判断されるものではなく、両者一体のものとして判断されなければならない。
次に、キャリアの絶縁破壊電圧EBの上限が6000v/cmであることについて検討する。
本件訂正明細書の発明の詳細な説明に「本発明者等は、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上で6000V/cm以下の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。」(訂正明細書第3頁第14~18行)と記載されるように、本件訂正発明は、絶縁破壊電圧とキャリア付着との関係、ひいては、キャリア付着の発生しない絶縁破壊電圧の範囲を見出したことに基づくものであって、キャリアの絶縁破壊電圧の上限が6000V/cmであるということは、使用されるキャリアが現像電界領域において絶縁破壊を生じるものであることを意味しているものとして把握される。

以上のことに基づいて、本件訂正発明と刊行物1ないし5に記載の発明とを対比すると、刊行物1ないし5には、本件訂正発明の構成要件のうち、「感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアスを印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法」の構成に関しては開示されているものと認められる。ところが、現像方法の方式に関しては明記されていないものの、刊行物1ないし5に記載の印加される帯電電位、露光電位、および現像バイアス電位の関係をみる限り、いずれも正規現像法によるものと考えられ、反転現像法が採用されていることを示唆する記載はない。
また、刊行物1ないし5にはキャリアの絶縁破壊電圧と現像電界との関係については記載も示唆もされていない。
よって、本件訂正発明と刊行物1ないし5に記載の発明とは以下の点で相違するものと認められる。
相違点a: 本件訂正発明に用いられるキャリアが、反転現像法に用いられる樹脂被覆されたキャリアであって、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、請求項(「2.2ア.」参照)に記載の条件を満たすものであるのに対し、刊行物1ないし5にはこの点が明記されていない点。

前記相違点aについて検討する。
刊行物1または3には、樹脂被覆されたキャリアであって、比抵抗が109Ωcm以上であるものが記載されており、刊行物2、4または5には、樹脂被覆されたキャリアが記載されている。
ここで、特許異議申立人の提示した1999年11月4日付の実験成績証明書(本請求の甲第9号証)を検討する。
当該実験成績証明書は、前記「2.2イ.(7)」に摘示したように、刊行物1及び刊行物2の実施例に使用されているキャリア、及び刊行物4及び刊行物5に使用されているキャリアを忠実に追試し、その比抵抗を測定した結果、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上の値を示すことが確認されると共に、その測定範囲では絶縁破壊が発生しなかったことが確認された、とするものである。この追試の結果に対しては、特許異議意見書において、特許権者は当面これを争うことはしないとしている。
さらに、特許異議申立人は、上申書と共に実験成績証明書(2000年7月14日付け)を提出しており、これには、前記「2.2イ.(8)」に摘示した内容が記載されている。
また、特許権者は、これらとは別に、実験成績証明書(本請求の甲第10号証)を提出しており、これには前記「2.2イ.(9)」に摘示した内容が記載されている。
前記3つの実験成績証明書によると、刊行物1ないし5に記載されたキャリアは、いずれも103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であることが示されているが、絶縁破壊電圧に関しては、いずれにも本件訂正明細書の請求項1に記載の条件を満たすものは示されていない。
したがって、刊行物1ないし5のものは、いずれも現像方法自体も本件訂正発明とは異なり、キャリアの特性も本件訂正明細書の請求項1に記載の条件を満たしていない。
刊行物6についても、キャリア付着とキャリアの比抵抗との関係が示されているだけであって、キャリアの絶縁破壊電圧については記載も示唆もされていない。
よって、相違点aが刊行物1ないし6に記載のものから容易に想到できたものと認めることはできない。

そして、本件訂正発明は、請求項1に記載の比抵抗および絶縁破壊電圧の条件を満たす樹脂被覆されたキャリアを用いて反転現像することによって、他の構成と相俟って、明細書記載の、キャリア付着等によるキャリア汚染が生じ難く、背景部汚れ及び画像荒れのない高品質の画像を得ることができ、また、長期間使用した場合、キャリア消費の少ない安定した維持性を実現することができる、という効果を奏するものと認められる。

以上のとおり、本件訂正発明が、前記刊行物1ないし6のいずれかに記載された発明であるとも、それらに記載のものから容易に発明をすることができたものともすることはできない。
また、他に本件訂正発明が特許を受けることができない発明であるとする理由を発見しない。
したがって、本件訂正発明は、本件特許出願持に独立して特許を受けることのできない発明であるとすることはできない。

3. むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
現像方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする現像方法。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等により形成される静電荷像を二成分現像剤を用いて現像する現像方法に関する。
【従来の技術】
電子写真法などによって感光体上に形成された静電潜像の現像に用いられる現像剤には、トナーとキャリアが混合されてなる二成分現像剤と、磁性トナー等によりトナー単独で用いられる一成分現像剤とがある。二成分現像剤は、キャリアにより攪拌/搬送/帯電等の機能が付与される。したがって、現像剤として機能分離されているために、制御性がよいなどの特徴があり、現在広く用いられている。特に、樹脂被覆を施したキャリアを用いる場合、帯電制御性が向上し、環境依存性、経時安定性が改善される傾向にある。現像方法としては、古くはカスケード法などが用いられていたが、現在用いられている現像方法の主流は、現像剤搬送担体として、磁気ロールを用いる磁気ブラシ法によるものである。
【発明が解決しようとする課題】
このようなキャリアを用いる磁気ブラシ法における問題点は、トナーの非画像部への付着による背景部汚れの発生、キャリアの画像部への付着による画像荒れとキャリア消費、そしてそのことに伴う画像濃度ムラの発生、更には、現像剤の帯電劣化による画像濃度の低下、著しい背景部の汚れの発生等の点である。
通常、2成分磁気ブラシ現像法の特徴として、感光体と現像剤の移動方向が同一の場合、トナーの非画像部への付着発生は比較的少ないものの、画像部におけるキャリア付着の発生はある程度免れることができない。逆に、感光体と現像剤とが反対方向に移動する場合、キャリア付着は比較的良好であるが、背景部汚れは、現像バイアス等により若干の改善はあるものの、ある程度以上の改善には限界がある。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものである。
したがって、本発明の目的は、上記2成分現像剤を用いる磁気ブラシ法によって現像方法の問題点を改善することにある。即ち、▲1▼背景部汚れ及び画像荒れのない高品質の画像を得ることができ、▲2▼キャリア消費の少ない安定した維持性を実現することができる現像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、背景部汚れに関する初期画質で良好であるところの感光体と現像剤の移動方向が同一である現像方法について鋭意検討の結果、所定の現像条件において特定のキャリア物性を有するキャリアを使用することにより、キャリア付着を制御し、良好な維持性を実現できる現像方法を見出だし、本発明を完成するに至った。
本発明は、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。)
感光体上に形成された静電潜像の画像部へのキャリア付着は、現像剤中のキャリアに画像部電荷に対抗して電荷注入が行われ、それによりキャリア現像が発生するために生じると考えることができる。このキャリア現像の現象は、現像剤の抵抗を高くし、また、現像剤の抵抗の急激な低下(絶縁破壊)を無くすことにより防止することができるが、より厳密には、現像時にかなりの部分のトナーが消費されるから、現像剤の抵抗の制御は、キャリアの抵抗または絶縁破壊電圧の制御によって行えばよい。また経時による劣化後においては、トナー濃度は極端な低濃度で維持されることが通常であるから、キャリアの抵抗を制御すればよい。また、キャリア付着は部分的な絶縁破壊で発生するから、キャリアの絶縁破壊抵抗を制御すればよく、その場合、現像部位における最大電位と現像バイアス電位、感光体―磁気ロール間の空隙の関係が極めて重要である。
本発明は、このような観点においてなされたものである。そして、本発明者等は、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上で6000V/cm以下の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。
以下、本発明について詳細に説明する。
第1図は、本発明を実施する現像装置の概略の構成図である。1は光導電層を有する感光体ドラムであり、静電潜像を担持して矢印方向に回転する。この光導電層は、画像部最大電位VIを保持する能力を有する。2は磁気ロールであって、表面に矢印方向に回転するアルミニウム等の非磁性材料からなるスリーブ21を有し、内部に磁石を設けた構造を有している。この磁気ロールには、バイアス電源3によって、現像バイアス電位VBが付与されている。感光体ドラム1と磁気ロール2とは、空隙Dを隔てて対向している。4は現像剤であり、5は層規制部材である。
上記の現像装置において、感光体ドラムの光導電層上に形成された静電潜像は、感光体ドラムを矢印方向に回転することによって現像部位に達する。一方、現像剤4は層規制部材5によって磁気ロール2のスリーブ上に所定量供給され、磁気ロールを矢印方向に回転することによって、現像部位に搬送される。現像部位には、現像電界が形成されており、スリーブ上に搬送された現像剤が磁気ブラシを形成して、静電潜像の現像が行われる。本発明においては、感光体ドラムの周速と磁気ロールの周速との比率を、1:1.5~4.0の範囲に規定して現像を行うのが好ましい。
本発明において使用する現像剤は、トナーとキャリアよりなるが、キャリアは、樹脂被覆された磁性コア材よりなるものであって、上記のように規定された特定の比抵抗、または絶縁破壊電圧を有するものを使用する。即ち、本発明は、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧EBが、下記式で示される条件を満たすものを用いる。
6000≧EB≧|VI―VB|/2D
キャリアの磁性コア材としては公知のもの、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属及びこれらの合金、Fe3O4、γ‐Fe2O3、コバルト添加酸化鉄等の金属酸化物、MnZnフェライト、NiZnフェライト等の各種のフェライト、マグネタイト、ヘマタイト等、或いは強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、例えばMn‐Cu‐Al、Mn‐Cu‐Sn等のMnとCuを含むホイスラー合金と呼ばれるもの、または二酸化クロム等が使用できる。しかしながら、経時の安定性を考慮した場合、フェライトを使用するのが好ましい。コア材の粒径は、30μm~200μm、好ましくは50μm~120μmの範囲のものが使用できる。
コア材を被覆する樹脂としては、スチレン、p-クロルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸3-クロロエチル、アクリル酸フェニル、α-クロロアクリルメチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単量体を重合させたホモポリマー或いは共重合体があげられ、さらにその他の樹脂として、エポキシ樹脂、ロジン変性フェノール-ホルマリン樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の樹脂を単独でまたは混合して使用することもできる。
これらの中でも、フッ素樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等が好適であり、特にポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフルオロアクリレート、ポリフルオロメタクリレート等のフッ素樹脂が好ましい。
コーティング手段としては、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、流動化ベッド法等、通常使用される各種の方法を用いることができる。
キャリアの抵抗及び絶縁破壊電圧を所定の値にするためには、樹脂被覆厚みを上げ、かつ、均一に被覆を行うか、または、コア材料として抵抗が高いものを用いればよい。経時の安定性を考慮した場合、コア材料としては、フェライトを使用するのが好ましい。
本発明において使用する現像剤を構成するトナーは、主成分として、結着樹脂及びその中に分散した着色剤よりなる。
結着樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂が使用できる。その具体例としては、例えば、スチレン、p-クロルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素類、及びクロロプレン等のハロゲン化不飽和炭化水素類等の単量体の1種またはそれ以上よりなる重合体または共重合体、及びこれらの混合物があげられる。また、例えば、ロジン変性フェノール-ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、或いはこれらと上記ビニル系樹脂との混合物を使用することもできる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルー、ローズベンガル、フタロシアニンブルー、またはこれらの混合物をあげることができる。着色剤以外のトナー成分としては、荷電制御剤、オフセット防止剤、流動性向上剤等があげられ、また、必要に応じて磁性体微粉末を含有させてもよい。
なお、キャリアの比抵抗及び絶縁破壊電圧は、次のようにして測定した。第2図は、測定状態を説明する説明図である。まず測定材料11を下部電極12と上部電極13の間に充填し、充填高さH(cm)をダイアルゲージ14にて測定する。次に下部電極と上部電極の間に電圧を印加し、2000Vまで100V刻みで電圧を上昇させて、試料の抵抗値R(Ω)を高電圧抵抗計15で読取り、下記の計算式で、各電界強度における比抵抗(Ω・cm)を求める。また、電圧を上昇させて抵抗値が急激に減少する点の電圧を絶縁破壊電圧とする。
比抵抗=R S/H
(Sは電極面積(cm2)を表わす)
電界強度(V/cm)=印加電圧/充填高さH
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を詳細に説明する。
例1
コア材として、平均粒径80μmのフェライト粒子を使用し、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン共重合体(共重合モル比80:20)で被覆して、キャリアを調製した。被覆は、例えば、ジメチルホルムアミドの溶液として流動化ベッド法により、103V/cmにおける比抵抗及び絶縁破壊電圧が第1表に示される値になるように樹脂被覆を行った。得られたキャリアの被覆状態も第1表に示す。
トナーとしては、次のものを用いた。即ち、フッ化ビニリデン-6フッ化プロピレン共重合体で被覆したキャリアの場合は、スチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体(Mn=8,000、Mw=100,000)に、カーボンブラック(R330、デグサ社製)10重量%及びニグロシン(ボントロンNo.4、オリエント社製)1重量%を添加し、混練粉砕法によって得た平均粒径10μmのトナーを使用した。
上記のキャリアとトナーとを、97:3の重量比で混合して現像剤とし、電子写真複写機(FX5870、富士ゼロックス(株)製)及び反転現像用に改造した複写機を用いてコピー操作を行った。現像条件は、感光体ドラムを周速270mm/秒の移動速度で回転させ、感光体ドラムと磁気ロールとの周速比を1:2.5に設定し、感光体ドラムと磁気ロールとの間隙D、画像部最大電位VI及び現像バイアス電位VBを第1表に示す値に設定して行った。
得られたコピー画像について、初期画質及び10000枚コピー後の画質を評価した。それらの結果を第1表に示す。なお、第1表中、○は、背景部汚れがなく、線の荒れがなく、画像に濃度むらがないことを示し、×は背景部汚れが著しいか、線の荒れが著しいか、または濃度むらが発生した場合を示す。

【発明の効果】
本発明の現像方法は、上記のように特定の物性を有する樹脂被覆キャリアを使用し、感光体と同一方向に現像剤を移動させて現像を行うから、キャリア汚染が生じ難く、したがって、背景部汚れ及び画像荒れのない高品質の画像を得ることができる。また、長期間使用した場合、キャリア消費の少ない安定した維持性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明を実施する現像装置の概略構成図、第2図は、比抵抗及び絶縁破壊電圧の測定方法を説明する説明図である。
1…感光体ドラム、2…磁気ロール、21…スリーブ、3…バイアス電源、4…現像剤、5…層規制部材、11…測定試料、12…下部電極、13…上部電極、14…ダイアルゲージ、15…高電圧抵抗計。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2890727号の特許明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正する。すなわち、
(1) 請求項1を削除する。
(2) 請求項2を請求項1に繰り上げ、「感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする現像方法。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」
と訂正する。
(3) 願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)第5頁第13行~第7頁第4行(特許公報第2頁右欄第2~28行)の記載
「本発明の第1のものは、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、現像部位の最大現像電界
|VI-VB|/D
〔式中、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕における比抵抗が109Ω・cm以上であるものを用いることを特徴とする。
本発明の第2のものは、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする。
EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」を
「本発明は、感光体と対向して配置された磁気ロール上に、トナーと樹脂被覆されたキャリアとよりなる現像剤を担持し、該磁気ロールに現像バイアス電位を印加しながら感光体の移動方向と同一方向に移動させて現像剤を搬送し、感光体上に形成された静電潜像を反転現像する現像方法において、該樹脂被覆されたキャリアとして、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧が、下記式で示される条件を満たすものを用いることを特徴とする。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D
〔式中、EBはキャリアの絶縁破壊電圧(ボルト/cm)、VIは現像部位における感光体の画像部最大電位(ボルト)、VBは現像バイアス電位(ボルト)、Dは感光体と磁気ロールとの空隙(cm)を意味する。〕」
と訂正する。
(4) 特許明細書第8頁第3~12行(特許公報第2頁右欄下から2行~第3頁左欄第7行)の記載
「本発明は、このような観点においてなされたものである。そして、本発明者等は、現像条件下におけるキャリアの比抵抗が109Ω・cm以上であれば、キャリア付着の発生がないことを確認した。さらにまた、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。」を
「本発明は、このような観点においてなされたものである。そして、本発明者等は、1000V/cmで109Ω・cm以上の抵抗を有し、画像部最大電位と現像バイアス電位及び感光体と磁気ロールの間隙で規定される現像電界の1/2以上で6000V/cm以下の絶縁破壊電圧を示すキャリアを用いれば、キャリア付着の発生がないことを実験的に確認し、本発明を完成したのである。」
と訂正する。
(5) 特許明細書第10頁第2~11行(特許公報第3頁左欄第34~43行)の記載
「即ち、第1の場合においては、現像部位の最大現像電界である。
|VI-VB|/D
のもとで測定した比抵抗が109Ω・cm以上であるものを用いる。
また、第2の場合には、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧EBが、下記式で示される条件を満たすものを用いる。
EB≧|VI-VB|/2D」を、
「即ち、本発明は、103V/cmにおける比抵抗が109Ω・cm以上であり、かつ、絶縁破壊電圧EBが、下記式で示される条件を満たすものを用いる。
6000≧EB≧|VI-VB|/2D」
と訂正する。
(6) 特許明細書第16頁第5行(特許公報第4頁右欄第8行)の「ポリメチルメタクリレートまたは」を削除する。、
(7) 特許明細書第16頁第9~10行(特許公報第4頁右欄第12~13行)の記載
「より行った。得られたキャリアの被覆状態及び比抵抗を第1表に示す。」を
「より、103V/cmにおける比抵抗及び絶縁破壊電圧が第1表に示される値になるように樹脂被覆を行った。得られたキャリアの被覆状態も第1表に示す。」
と訂正する。
(8) 特許明細書第16頁第11~17行(特許公報第4頁右欄第14~20行)の「ポリメチルメタクリレートで被覆したキャリアの場合は、スチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体(Mn=8,000、Mw=100,000)に、カーボンブラック(BP1300、デグサ社製)をトナー全重量に対して10重量%添加し、混練粉砕法によって得た平均粒径10μmのトナーを使用した。また、」を削除する。
(9) 特許明細書第18頁(特許公報第5頁)の第1表を削除する。
(10) 特許明細書第19頁第1~7行(特許公報第5頁第1表の下の左欄第1行~右欄第3行)の「例2 例1におけると同様にしてキャリアを作成した。但し、103V/cmにおける比抵抗及び絶縁破壊電圧が、第2表に示される値になるように樹脂被覆を行った。例1と同様のトナーを使用し、同様の条件でコピー操作を行った。それらの結果を第2表に示す。」を削除する。」
(11) 特許明細書第20頁(特許公報第6頁)の第2表の記載を、添付した訂正明細書第8頁の第1表のように、すなわち、「第2表」を「第1表」と訂正し、試験No.9~12のデータを削除し、試験No.13~16を試験No.1~4に訂正する。
(12) 特許明細書第13頁第2~3行(特許公報第3頁右欄第40行)の記載
「絶縁破壊電圧を所定の値のするためには、」を
「絶縁破壊電圧を所定の値にするためには、」
と訂正する。
(13) 特許明細書第16頁第8行(特許公報第4頁右欄第10~11行)の記載
「例えばを」を「例えば、」と訂正する。
審決日 2002-04-02 
出願番号 特願平2-196215
審決分類 P 1 41・ 113- Y (G03G)
P 1 41・ 121- Y (G03G)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 水垣 親房
小林 紀史
登録日 1999-02-26 
登録番号 特許第2890727号(P2890727)
発明の名称 現像方法  
代理人 佐藤 清孝  
代理人 佐藤 清孝  
代理人 押野 宏  
代理人 押野 宏  

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