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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G03G |
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管理番号 | 1061277 |
異議申立番号 | 異議2000-70475 |
総通号数 | 32 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-07-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-02-03 |
確定日 | 2002-05-30 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2930241号「画像形成装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2930241号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2930241号の請求項1~2に係る発明についての出願は、平成1年11月29日に出願され、平成11年5月21日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人杉谷良二より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間である平成12年9月20日に意見書が提出されたものである。 2.特許異議の申立ての概要 特許異議申立人杉谷良二は、下記の甲第1~3号証、参考資料1~2を提出し、 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。または、甲第1号証および甲第2号証に基づいて、当業者が容易にすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張し、 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。または、甲第1号証および甲第2号証に基づいて、当業者が容易にすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。または、甲第1号証(、甲第2号証)と甲第3号証に基づいて、当業者が容易にすることができた発明であるから、この発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。 甲第1号証:特表平1-503221号公報 甲第2号証:特開昭63-138359号公報 甲第3号証:特開昭63-173078号公報 参考資料1:本件特許出願に対応するアメリカ国出願の包袋資料 参考資料2:特許公報(USP第5036341号) 3.特許異議の申立てについての判断 (1)請求項1に係る発明について 本件特許第2930241号の請求項1に係る発明(以下、「発明1」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「通電制御により画像情報に対応したトナー通過空孔を形成するトナー通過手段を挟んでトナー担持体と背面電極を配置するとともに、該背面電極表面に沿って記録材を移動させながら、前記通過手段を通過したトナーを記録材上に転移可能に構成した画像形成装置において、前記トナー担持体とトナー通過手段を一体化してユニット体となすとともに、該ユニット体を背面電極から接離する方向に装置本体から着脱自在に構成した事を特徴とする画像形成装置」 (2)引用刊行物の記載事項 当審が通知した取消理由において引用した刊行物1(甲第1号証と同じ)には、 「電気信号から電荷潜像パターンを生成し、顔料粒子により情報キャリア上でこの潜像パターンを現像する方法において、情報キャリア(3;12)は、少なくとも一つのスクリーン状または格子状マトリックス、好ましくは電極マトリックス(4,5,6;4,61,62)と電気的に協働する状態にされ、このマトリックスは所望のパターン構成に従う制御のため、少なくとも一つの電源へのガルバノ接触によりマトリックスを通過する通路を少なくとも部分的に開閉すること、および情報キャリアに対して顔料粒子を引寄せるための電界が解放された通路を通して露出されることを特徴とする方法。」(特許請求の範囲の請求項1)、 「本方法により可能となる更に別の原理は、現像機1と紙3との間に電極マトリックスを設けることに基づく。編成ネットまたは多層マトリックスのいずれにできる電極マトリックス4,5は顔料粒子2に対し、透過性を有する。第10a図には、編成ネットを有する本方法に係るデバイスが示されている。電極4および5は、各電極対間の空間よりも横断面がかなり細い。この原理によれば、紙は紙自体の導電性によりネット4,5を通して良好なブラックにする電位に帯電するか、電極マトリックス4,5を通してブラックにするのに充分な電界強度を発生するプレート電極6に紙3を例えば静電力で附着してもよい。」(第9頁左下欄第3行~同欄第14行)、 「第13a図~第13c図および第14a図~第14c図は本発明をベースにした全プリントカートリッジのより実用的な設計例を示す。寿命すなわちトナー汚染の恐れが制限されたすべての部品を含む使い棄てカートリッジを提供することが市場で試みられている。カートリッジの寿命は、収納されているトナー量(通常400コピー)の寿命に等しく、ことのことはレーザプリンタおよび複写機でも同様である。」(第11頁左上欄第3行~同欄第10行)、 「第13図c図は、プリントスロットの一部を略図で示す。t1~t8の参照符号の付いた黒色の正方形によるラインは紙上の水平ライン内のドット10bを示す。2つの隣接ドット、例えばt5およびt6は、一つのメッシュピッチを実際の紙速度で紙が移動するときに要する時間内にプリントされる。」((第11頁右上欄第5行~同欄第10行)、 「第13a図内のカートリッジは、8メッシュ幅(S)のプリントスロット73を有する。紙3は、ローラ状のブラック化電極65によりプリントスロット73上を搬送される。紙と電極との間の隙間(C)はプリントスロット73内の側面の一つを構成するスライディングエッジにより決定される。この構成は、第13b図に示されている。」(第11頁右上欄第18行~同頁左下欄第4行)、 が図面と共に記載されている。 また、図面第13a図~第13b図には、現像機のコンテナーから紙3へ磁性顔料粒子を搬送するための磁石を囲むコンベアローラ63と、トナーコンテナー71と、プリントスロット73と、電極をコントローラに別々に接続するためのコネクタ74を備えた全プリントカートリッジ70の構成、及び、プリントスロット73の電極を挟んでコンベアローラ63と紙を搬送するためのローラ状のブラック化電極65が配置され、ローラ状のブラック化電極65に沿って紙3が移動する構成が図示されており、図面第13c図には、プリントスロット内で角度を付けて配置した電極の一部として、制御層4の電極8と走査層内の電極9が格子状に配置された構成が図示されている。 そして、上記記載及び図面から、顔料粒子がトナーであり、電極マトリックスを通過したトナーがローラ状のブラック化電極の表面に沿って移動する紙上にプリントされること、および、プリントカートリッジ70がコンベアローラ63とプリントスロット73を一体に備えた構成であることは明らかであり、 加えて、刊行物1におけるプリントカートリッジ70は使い棄てのカートリッジである旨記載されていることから、プリントカートリッジ70はレーザプリンタや複写機等の画像形成装置に着脱自在である構成として理解される。 してみると、刊行物1には、 「所望のパターン構成に従う制御のため、少なくとも一つの電源へのガルバノ接触によりマトリックスを通過する通路を少なくとも部分的に開閉するプリントスロットの電極マトリックスを挟んでコンベアローラと紙を搬送するためのローラ状のブラック化電極を配置するとともに、ローラ状のブラック化電極の表面に沿って紙を移動させながら、前記プリントスロットの電極マトリックスを通過したトナーを紙上にプリントするように構成した画像形成装置において、前記コンベアローラとプリントスロットの電極マトリックスを一体化してプリントカートリッジとなすとともに、該プリントカートリッジを画像形成装置本体から着脱自在に構成した画像形成装置」が記載されていると認められる。 (3)対比判断 本件の発明1と刊行物1を対比すると、 刊行物1の「所望のパターン構成に従う制御のため、少なくとも一つの電源へのガルバノ接触によりマトリックスを通過する通路を少なくとも部分的に開閉するプリントスロットの電極マトリックス」、「コンベアローラ」、「紙を搬送するためのローラ状のブラック化電極」、「紙」、「トナー」、「画像形成装置」、「プリントカートリッジ」は、 各々本件の発明1の「通電制御により画像情報に対応したトナー通過空孔を形成するトナー通過手段」、「トナー担持体」、「背面電極」、「記録材」、「トナー」、「画像形成装置」、「ユニット体」に相当することは明らかであるから、 両者は、表現は相違するが、 「通電制御により画像情報に対応したトナー通過空孔を形成するトナー通過手段を挟んでトナー担持体と背面電極を配置するとともに、該背面電極表面に沿って記録材を移動させながら、前記通過手段を通過したトナーを記録材上に転移可能に構成した画像形成装置において、前記トナー担持体とトナー通過手段を一体化してユニット体となすとともに、該ユニット体を装置本体から着脱自在に構成した画像形成装置」の点で一致しており、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件の発明1が、ユニット体を装置本体から着脱自在とする方向に関し、「背面電極から接離する方向に」を構成としているのに対し、 刊行物1の図面13a図には、プリントカートリッジ70の上面に、プリントスロット73から上流側に向かう矢印が表示されているが、刊行物1には、プリントカートリッジ70がローラ状のブラック化電極65に対し、どの様な方向で着脱されるのかは明示されていない。 そこで、上記相違点1について検討すると、 当審が通知した取消理由において引用した刊行物2(甲第2号証と同じ)には、「支持構造本体と、ユニット枠及び該ユニット枠に装着された静電写真感光体を含み、該ユニット枠は該支持構造本体に着脱自在に装着されているプロセスユニットと、を具備する画像生成機において;・・中略・・該プロセスユニットは、該補助支持枠体を該開位置にせしめることによって形成される該支持構造本体の上面開□を通して該支持構造本体に装着及びこれから離脱される、ことを特徴とする画像生成機。」(特許請求の範囲第1項)、 「原稿からの反射光は光学系46及びユニット枠18の上壁48に形成された露光開口50を通して、露光域52において回転ドラム20の周表面に投射される。ハウジング2の略中央下部には、転写用コロナ放電器54及びこれに隣接してその下流側に位置する剥離用除電器56が配設されている。」(第3頁左下欄第9行~同欄第15行)、 「複写紙搬送系64において複写紙の紙詰りが発生した場合には、上部支持枠体6を第1図に示す閉位置から第2図に示す開位置にせしめる。・・中略・・上部支持枠体6と一体にプロセスユニット16も移動される故に、第2図に示す通り、複写紙搬送系64における複写紙搬送経路の少なくとも大部分が開放され、従って複写紙搬送経路において紙詰りした複写紙を充分容易に除去することができる。」(第6頁左上欄第行~同欄第17行)、 「プロセスユニット16の離脱の際には、操作者は把持部材146を把持して上方に持上げる故に、プロセスユニット16を不注意に落とすことは著るしく少なくなる。また、かかる離脱の際はプロセスユニット16を上方に持上げる故に、ユニット枠18の底壁22の開□24を通して幾分突出している回転ドラム20の下部に操作者の指、或いは異物が接触する機会が少なく、離脱時の不注意による感光体の損傷も少なくなる。」(第7頁左上欄第4行~同欄第13行)、 が図面と共に記載されており、 上記刊行物2の記載からは、プロセスユニット16を、複写紙の搬送面に対し接離する方向に移動することにより複写紙搬送経路において紙詰りした複写紙を容易に除去する技術と共に、プロセスユニット16を、その下部にある転写用コロナ放電器から接離する上下方向に着脱自在とすることにより、プロセスユニット16の下部から突出している感光体の損傷を防止する技術が把握される。 そして、本件の発明1におけるトナー通過手段は、記録材を介して背面電極と対向配置される点で刊行物2の感光体と類似するものであり、上記相違点1である「背面電極から接離する方向に」の構成の技術的意義も、刊行物2とプロセスユニット移動方向の技術的意義と類似するものであるから、 刊行物1に刊行物2を適用することにより上記相違点1の構成を想到することに何等困難性は認められない。 (4)請求項2に係る発明について 特許第2930241号の請求項2に係る発明(以下、「発明2」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものである。 「前記ユニット体と背面電極間を位置規制手段を介して弾性的に位置保持可能に構成した事を特徴とする請求項1記載の画像形成装置」 そして、本件の発明2は、上記本件の発明1に「ユニット体と背面電極間を位置規制手段を介して弾性的に位置保持可能に構成した」点を付加するものである。 (5)本件の発明2と刊行物1を対比すると、 両者は、上記発明1との相違点1に加え、「ユニット体と背面電極間を位置規制手段を介して弾性的に位置保持可能に構成した」点(以下、「相違点2」という。)で、更に相違している。 そして、相違点1が、刊行物2から容易に想到できることは上記3.(3)で記載したとおりである。 (6)上記相違点2について検討すると、 当審が通知した取消理由において引用した刊行物3(甲第3号証と同じ)には、「電子写真記録装置の転写帯電器の一部を感光ドラムに突き当てることにより感光体面と常に一定の距離を保つ機構を含むことを特徴とする転写部。」(特許請求の範囲)、 「本発明の転写帯電部は感光ドラムに突き当てる為のスプリングと感光体面に正しく突き当たる様にガイドする為のシャフト部とシャフト部をスライドするガイドブロック及び感光ドラムに突き当てになっているローラ部を有している。」 (第1頁右下欄第5行~同欄第9行)、 「以上説明したように本発明は転写帯電器の一部を感光ドラムに突き当てることにより感光体面と転写帯電器の距離が一定に保たれ感光ドラム及び装置間のばらつきにより生じる濃度むらをおさえることができる効果がある。」(第1頁右下欄第19行~第2頁左上欄第3行)、 が図面と共に記載されており、 刊行物3からは、感光ドラムと転写帯電器間を位置規制手段であるローラ部を介してスプリングにより弾性的に位置保持可能に構成する技術が把握される。 そして、感光ドラムをプロセスユニット化することが刊行物2に記載のように一般的な技術であることを考慮すると、刊行物3には、プロセスユニットと転写帯電器間を位置規制手段を介して弾性的に位置保持可能に構成する技術が示唆されており、 刊行物1に刊行物3を適用することにより、上記相違点2の構成を想到することに何等困難性は認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件の発明1は、刊行物1,2に基づいて、本件の発明2は刊行物1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、何れの発明も特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件の請求項1ないし2に係る発明についての特許は、何れも特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-10-06 |
出願番号 | 特願平1-309546 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
木下 幹雄 |
特許庁審判官 |
川上 益喜 水垣 親房 |
登録日 | 1999-05-21 |
登録番号 | 特許第2930241号(P2930241) |
権利者 | 京セラ株式会社 オーベ ラーソン プロダクション アーバー |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 高橋 昌久 |
代理人 | 高橋 昌久 |