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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する H02G
管理番号 1080496
審判番号 訂正2003-39060  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-01-22 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-03-28 
確定日 2003-05-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3178802号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3178802号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続きの経緯・訂正の内容
特許第3178802号の請求項1~3に係る発明は、平成9年6月27日に出願され、平成13年4月13日にその発明についての特許権の設定登録がされ、その後、特許異議の申立てがなされ平成14年8月5日にその特許を取消す旨の決定がなされた。
平成14年9月20日にこの取消決定に対する訴えが東京高等裁判所に提起され、平成14年9月20日に特許第3178802号の明細書を訂正する審判が請求され(以下、前回訂正審判という。)、訂正拒絶理由が通知され、平成15年2月10日にその訂正は認められない旨の審決がなされた。
そして、本件審判請求は、平成15年3月28日になされたもので、その請求の要旨は、特許第3178802号の特許明細書を特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項a~eのとおり訂正することを求めるものである。
・訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】欄の【請求項1】(特許第3108802号公報第1頁の【特許請求の範囲】欄の【請求項1】)を
「【請求項1】
ケーブルを挿通する添架管(6)を並べた添架管群(5)に覆設する構造物であって、
該添架管群(5)の両側面及び下面に対面する断熱材(20)を内装した断面略U字状の受溝(4)と該添架管群(5)の上面に対面する断熱材(18)を内装した断面略逆U字状の蓋溝(3)とからなり、
受溝(4)と蓋溝(3)とは重なり合う長手方向側面において結合して単位長ボックス(2)を構成し、
添架管(5)の延設方向に順次構成する単位長ボックス(2)の受溝(4)同士及び蓋溝(3)同士を重なり合う端部側面において連結してなるケーブルボックス(1)であって、
各溝(3,4)それぞれに相似な断面形状に形成した薄鋼板からなり可撓性を有する蓋アグプタ(7)及び受アダプタ(9)によるアダプタ材に各溝(3,4)の長手方向に延びる長孔(25)を設け、
連結させる各ボックスの一方の端部に予め各アダプタ材(7,9)をリベット(8)止め又はネジ(10)止めすることで各アダプタ材(7,9)を各溝(3,4)と一体化し、
添架管(6)の延設方向に順次構成する単位長ボックス(2)の受溝(4)同士又は蓋溝(3)同士の各端面を突合わせることにより、
該アダプタ材(7,9)を端面の突き合う各溝(3,4)の端部側面間にわたって宛がい、
重なり合う蓋溝(3)の端部側面と蓋アダプタ(7)の端部側面とを長孔(25)の位置でネジ(10)止めし、
重なり合う受溝(4)の端部側面と受アダプタ(9)の端部側面とを長孔(25)の位置でネジ(10)止めすることにより、
アダプク材(7,9)を介して受構(4)同士又は蓋溝(3)同士を連結してなる、ケーブルボックス。」
に訂正する。

・訂正事項b
特許明細書の【特許請求の範囲】欄の【請求項2】(特許第3108802号公報第1頁の【特許請求の範囲】欄の【請求項2】)を
「【請求項2】 添架管群(5)に対面する各断熱材(18,20)の表面には、可撓面材(21)を張り付けた請求項1記載のケーブルボックス。」
に訂正する。

・訂正事項c
特許明細書の【特許請求の範囲】欄の【請求項3】(特許第3108802号公報第1頁の【特許請求の範囲】欄の【請求項3】)を削除する。

・訂正事項d
特許明細書の【発明の名称】欄の、「ケーブルボックス及びケーブルボックスの敷設方法」を「ケーブルボックス」に訂正する。

・訂正事項e
特許明細書の【発明の属する技術分野】欄を、「本発明は、電話線、電力ケーブル等(以下、ケーブルと総称する)を挿通した添架管を所定配列で並べた添架管群に覆設するケーブルボックスに関する。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
(2-1)訂正事項aについて
訂正前の請求項1に訂正前の請求項2の構成を付加し、また、「アダプタ材」を「各溝(3,4)それぞれに相似な断面形状に形成した薄鋼板からなり可撓性を有する蓋アグプタ(7)及び受アダプタ(9)によるアダプタ材に各溝(3,4)の長手方向に延びる長孔(25)を設け、」という構成を付加することで限定し、さらに、アダプタ材と溝との結合関係を「連結させる各ボックスの一方の端部に予め各アダプタ材(7,9)をリベット(8)止め又はネジ(10)止めすることで各アダプタ材(7,9)を各溝(3,4)と一体化し、」「長孔(25)の位置でネジ(10)止めし、」との構成を付加することで限定
するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前特許明細書の段落【0009】【0010】【0012】【0015】【0018】の記載からみて、この訂正は願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2-2)訂正事項bについて
訂正前の特許請求の範囲に記載された「断熱材」の構成を「添架管群に対面する各断熱材の表面には、可撓面材を張り付けた」と限定するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正前特許明細書の段落【0006】【0017】【0021】の記載からみて、この訂正は願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2-3)訂正事項cについて
この訂正は、請求項の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2-4)訂正事項d,eについて
訂正事項d,eは、訂正事項cとの整合をとるために訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項d,eは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.独立特許要件について
(3-1)本件訂正発明
本件訂正後の発明は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1」「本件訂正発明2」という)。(上記訂正事項a、b参照。)

(3-2)引用刊行物記載の発明
(3-2-1)
取消決定で引用した特開昭58-6022号公報(異議申立人の提出した甲第1号証、以下、刊行物1という。)には、以下の事項が記載されている。。
「(1)感熱部材、特に石油化学設備の電気ケーブルを保護するための防火被覆において、被覆が剛性のミネラルウール構造部材(1,4,8,18)から形成されており、少くとも外側に防火積層を有することを特徴とする防火被覆。」(特許請求の範囲)、
「ミネラルウールは火災の場合防火層によって保護される。特に防火層は比較的大きい伝熱性によって局部的な熱の差を平均する。」(第3頁左上欄第15行~第17行)、
「この発明による防火被覆のミネラルウール構造部材は特に圧縮された成形部分である。」(第3頁左下欄第7行~第8行)、
「第1図に斜視図で示した部分は本質的にU字形に形成された構造部材1を有する。この構造部材は圧縮されたミネラルウール材料でできており、図中下向きの側面に防火層を有し、そのフランジ形に構成された縁部2は水平平面にある。・・・縁部2には一様な間隔をおいて相対する凹部3を有する。この凹部には図示してないケーブルホルダーの側端部が入る。それらのケーブルホルダーはそれぞれ真直ぐなウェブから構成することができるが、個々のケーブルの敷設に役立つ波形のくぼみをもつこともできる。こうしてケーブルは構造部材によって支持され、管路の中で全面が空気に囲まれる。ケーブル用の支持架台は省かれる。相前後して設けられたいくつかの構造部材1によって構成されたみぞはやはり相前後して設けられたいくつかの構造部材4によって被われている。第1図にその構造部材4を一個だけ示してある。構造部材4はその形と寸法が構造部材のそれと対応しており、やはり圧縮されたミネラルウール材でできていて、外側に、即ち図面で上に向けられた側面に防火積層をそなえている。構造部材4はその縁部5を部材1のそれの上にのせており、下にある部材に対して瓦のようにずれている。部材1と4の間の移行位置にそれぞれ、本質的にU字形の金属クランプ6を設けてある。クランプ6は縁部2,5に嵌合している。しかし、クランプ6のための固定要素、たとえばねじを設けるのが有利であることが判った。」(第5頁右下欄第1行~第6頁左上欄第13行)、
「第4図に示した防火被覆では部材1とその下にある部材8との間に別の防火積層がある。これによって、二つの部材層の間に薄い金属箔、たとえばアルミニウム箔を設けることができる。このような金属箔は部材1,4,8の中へも組込むことができる。これによって部材は一方で補強を、そして他方では気体と液体の侵入を防ぐ密封を補強されることになる。」(第6頁左下欄第6行~第13行)、
「第7図に示したように、下側の部材1は相互に密封するために共に作用する断面を有する。同じことが上側の部材4についても当てはまる。この部材は下側の部材1の縁部2に接続してのせることができる。・・・ケーブルは上側の部材4をのせる前に敷設するか或いはあとから引入れことができる。ケーブルホルダー11を挿入しようと思ったら、上側部材をのせる前に、そのために下側の部材1に設けた凹部に入れることができる。個々のケーブルホルダー11は事前又は事後、特に鉄板で作った樋16を介して相互に結合することができる。その後この樋の中に保護すべきケーブル17を敷設することができる(第9図)。続いて上側の部材4で被う。更に第9図から判るように、下側のレール9は特別のねじによって下側の部材1に固定することができるので、上側の部材4は必要に応じて、下側のレール9をとり外さなくてもとり除くことができる。第10図には、個々の部材1,4,8を特に相互にずらして設けることができることを示してある。」(第6頁右下欄第7行~第7頁左上欄第15行)、
「この発明による防火被覆には、既存の装備、たとえばケーブルルート用にあとから装着することもできるし、またケーブルルートを新設する場合にも装着することができること、及び特に絶縁作用が大きいことを特徴とする利点がある。」(第8頁右上欄第11行~第16行)、及び、
第8図には、クランプのねじ止めにより、上側の部材と下側の部材、及び、長手方向に突き合う上側部材同士と下側部材同士が、上側の部材と下側の部材の各端部側面において連結している、複数ケーブルの防火被覆の構成が示されている。

(3-2-2)
取消決定で引用した特開平8-57073号公報(同甲第2号証、以下、刊行物2という。)には、以下の事項が記載されている。。
「【0002】【従来の技術】橋りょうに沿ってケーブル(通信ケーブル、電力ケーブル等)を布設する場合には、橋りょうにケーブル管を添架し、このケーブル管の中にケーブルを引き込んで布設している。ケーブル管は通常の場合、橋りょうの下側に添架される。・・・」、
「【0005】本発明の目的は、このような問題点に鑑み、施行が容易で、断熱性の確実な、橋りょう添架ケーブル管の耐火構造体を提供することにある。」、
「【0019】耐火複合板25は厚さが数mm以下の薄いものであるので、スペーサ19の外周への巻き付けも可能であるが、図2のようにほぼ円筒形に成形したもの(定尺もの)を使用すると、スペーサ19外周への取り付け作業を容易に行える。またこの場合、金属板21の両側縁に、接合片27a、27bを形成しておき、耐火複合板25をスペーサ19の外周に被せた後、両接合片27a、27bを面接触させて、ねじ止め、リベット止め又はスポット溶接などにより接合すると、耐火複合板25の取り付け作業を能率よく行える。」、
「【0025】図5は請求項1の発明のさらに他の実施例を示す。この実施例は複数本のケーブル管13が接近して配置されている場合である。このような場合には、複数本のケーブル管13の上下に棒状のスペーサ19を渡し、その上下から耐火複合板2 5を被せる構成とすることができる。スペーサ19はケーブル管13の長手方向に適当な間隔をおいて配置される。耐火複合板25は、金属板21をケーブル管13とスペーサ19の組合せ体の上半分と下半分を覆う形に形成し、その外面に熱発泡性耐火塗料23を塗布したものである。それ以外は図1の実施例と同様であるので、同一部分(または対応部分)には同一符号を付して説明を省略する。」、
「【0029】図9および図10は請求項3の発明の実施例を示す。この実施例は、橋りよう11に添架されたケーブル管13の外周に、耐火ネット41を巻き付け、その上に、金属板21に熱発泡性耐火塗料23を塗布してなる耐火複合板25を熱発泡性耐火塗料2 3側の面を外側にして被せたものである。」

(3-2-3)
取消決定で引用した実願平5-10632号(実開平6-66251号)のCD-ROM(同甲第3号証、以下、刊行物3という。)には、以下の事項が記載されている。。
「【0007】
【作用】
前記の本考案のケーブル用トラフの作用はつぎのとおりである。
・・・トラフ本体1は、橋桁等に固定し設置して橋梁等に布設されるケーブルを内部に収容する。
・・・トラフ本体1の端部1aに取り付けたトラフ継手23は、その端部1aから突出する突出継手半部23aに他の連結すべきトラフ本体1′の端部1′bを差し込んで嵌合することにより、多数のトラフ本体の端部を連結し、ケーブル布設路に添って長く連結されたケーブルトラフ路を構成する。・・・」
「【0014】
図1と図4に示した23は前記のトラフ本体1を並べてその端部を差し込み連結するトラフ継手であり、図4に示したように、前記トラフ本体1の断面U字形の端部が内部に嵌合する形状に断面U字形にガラス繊維補強プラスチック板にて構成し、トラフ本体1の一方の端部1aの外周にトラフ継手23の後半部を嵌合してビス24で固着し、このトラフ継手23の前半部を前記端部1a外に突出させて突出継手半部23aを形成したものである。1bはこのトラフ本体1の他方の端部である。」
(3-2-4)
実願昭58-54147号(実開昭59-161331号)のマイクロフィルム(同甲第4号証、以下、刊行物4という。)には、以下の事項が記載されている。。
「しかし、長大な橋梁の橋桁内の如き狭い構造物内にトラフを配置する場合には蓋体のフランジ止めの作業性が低い上にトラフ内部の点検がフランジ止めによって面倒となり、またトラフのフランジが横方向に張出しているため限られた空間内ではトラフの実質容積が低下する欠点があった。
本考案の目的は、狭い構造物内でもトラフの点検等の作業性を向上し、またスペースの無駄を省くことができる防災トラフを提供することにある。・・・
防災トラフ10は、縦方向に並べられた難燃性強化プラスチック又はコンクリート製の複数のトラフ本体22と各トラフ本体に密閉状態で被ふせられる難燃性強化プラスチック製の複数の蓋体24とから成っている。隣合うトラフ本体22は、第2図及び第3図に示すように、その相対する端部に跨ってその外側に設けられた本体カラー26によって密閉されるように連結され、また隣合う蓋体24は、その相対する端部に跨ってその内側に設けられた蓋体カラー28によって密閉されるように連結されている。
各蓋体24は、特に第5図に詳細に示すように、その両側に蓋体24が橋桁のグレーチング20又は20´に衝き当るまで浮上ってもトラフ本体22から外れないようにトラフ本体に摺動自在に係合する側緑24aを有する。そして、各蓋体24は、第4図に示すように、その一端でゴム等の結束バンド30によって開閉自在に取付けられている。」(第2頁第9行~第4頁第4行)
(3-2-5)
前回訂正審判の審決で引用した実公昭58-32426号公報(以下、刊行物5という。)には、以下の事項が記載されている。
「第1図に示す如く、鋼板等の金属板製ケーブルダクト1の内周面又は第2図に示す如く該ケーブルダクト1の外周面に予め珪酸カルシウム板に50~300重量%の水分を含水せしめ且つその表面に表面粗地調整用のアルカリシーラーを塗布乾燥せしめその全外周面に厚さ約100μのアルミニウム箔を接着剤を介して貼着した厚さ約25mmの耐火断熱板2を被覆し、本考案耐火性ケーブルダクトを得るものである。」(第1頁右欄末行~第2頁左欄第9行)
「第3図に示す如く火災模擬実験を行なった結果について説明する。・・・施工:ダクトの側面と底面を被覆する。耐火断熱板どうしのコーナー部は耐熱接着剤で接着させ、耐火断熱板を金属製のバンドでダクトに支持した。上ぶたは、耐火断熱板5を耐熱接着剤で鋼板上ぶた内面に貼付けた。」(第2頁左欄第20行~第34行)
「(2)耐火断熱板の表面が金属箔で覆われているため、辺や角の部分がくずれたり、該板にクラックが入ったとしてもくずれ落ちることがない。」(第2頁右欄第36行~第38行)
第1図には、耐火断熱板を内装した側面と底面を有する部分と、耐火断熱板を内装したふた部分とが、側面において結合しており、ケーブルダクト内部には、つい立て4が形成されている図が示されている。

(3-2-6)
前回訂正審判の審決で引用した特開平8-275334号公報(以下、刊行物6という。)には、以下の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーブルを挿通する添架管を収納する略四角筒状の外筒と、該外筒に設けた支持部材とからなるケーブルボックス。
【請求項2】 請求項1記載の外筒がケーブルを挿通する円筒状添架管の外径のほぼ整数倍である縦横寸法を有し、隅部を前記外径よりも小さい直径の円弧で形成してなる略四角筒であり、支持部材が前記外筒の外側に嵌合した枠体に設けてなるケーブルボックス。
【請求項3】 請求項1記載の外筒内に、添架管を分離独立して個別に収納する又は複数のケーブルを直接、かつ単位本数毎に分離独立して個別に収納するための格子状仕切枠を設けてなるケーブルボックス。
【請求項4】 請求項1記載の外筒内面又は収納する添架管外面に断熱材を取り付けてなるケーブルボックス。
【請求項5】 請求項1記載の外筒が、断面略コの字状の溝形半体を突き合わせ、該突合母線に沿って溶着して形成してなるケーブルボックス。
【請求項6】 請求項1記載の外筒がシール材を介装させた内挿筒と外挿筒とを組み付けて、前記外挿筒に対する内挿筒の挿入長さを伸縮自在にしてなるケーブルボックス。
【請求項7】 請求項1記載の支持部材が、外筒の外側に嵌合した枠体に設けられ、かつ外筒にほぼ平行なベースプレートであるケーブルボックス。」
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話線、電力ケーブル等(以下、ケーブルで総称する)を挿通した添架管を入れて保護するためのケーブルボックスに関する。」
「【0007】また、外観は同じケーブルボックスの外筒内に、添架管を分離独立して個別に収納する、又は複数のケーブルを直接かつ単位本数毎に分離独立して個別に収納するための格子状仕切枠を設けてもよい。」

(3-2-7)
前回訂正審判の審決で引用した特開昭63-174508号公報(以下、刊行物7という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)
「第1図及び第2図に示すように、・・・端面が突き当て状となる端部での左右側板、底板相互の外側面に当接装着される断面がほぼ溝形を呈する外カップリング式の継ぎ金物12に、継ぎ孔11位置に合致するほぼ横長の長円形状の継ぎ長孔13を開穿する。なお、図に示すように、継ぎ孔11及び継ぎ長孔13は、金属ダクト材1及び継ぎ金物12夫々の左右側板に設けられており、・・・継ぎ孔11及び継ぎ長孔13に合致貫挿させる継ぎボルト14・・・金属ダクト材1、継ぎ金物12を締結する。」(第3頁左上欄第12行~右上欄第12行)
(b)
「第14図乃至第17図においては、金属ダクト材1の端部相互を重ね合せ状とし、・・・具体的には、相互に接続される金属ダクト材1における左右側板、底板のうち、一方の末端部分に、・・・直線状のままの他方の末端部分を重ね合せ、ねじ止めする。」(第5頁左上欄第9行~右上欄第1行)

(3-3)対比・判断
(3-3-1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明を対比する。
刊行物1に記載された、被覆がミネラルウール構造部材とその外側に防火積層を有する複数のケーブルを保護する防火被覆であって、本質的にU字形に形成された上側の部材と下側の部材はその縁部において重なり合いクランプとねじで結合し、長手方向に突き合う上側の部材同士と下側の部材同士は各端部側面において前記クランプとねじで結合してなる防火被覆において、
「ミネラルウール構造部材」は、人造鉱物繊維からなる部材であり、本件訂正発明の「断熱材」に含まれると解される(本件明細書【0005】「断熱材は、・・・等の人造鉱物繊維からなり」の記載参照)。
本質的にU字形に形成された構造部材の外側の防火積層は、構造部材同様U字形であるので、外側に防火積層を有する「下側の部材」と、外側に防火積層を有する「上側の部材」は、本件訂正発明1の断面略U字状の「受溝」と「蓋溝」に相当する。
「防火被覆」は、ケーブルを被覆する構造物であるので、本件訂正発明1の「ケーブルボックス」に相当する。
また、刊行物1に記載された上側の部材と下側の部材は、各部材の側面にある縁部において重なり合い結合し、この結合形態がケーブルの延設方向に連続して接続されているので(図7,8,9参照)、上側の部材と下側の部材からなる結合形態は、本件訂正発明1の「単位長ボックス」に相当する。
そして、刊行物1に記載されたねじ止めされる「クランプ」は、端面の突き合う各部材を連結しているので、本件訂正発明1の「アダプタ」に相当する。

よって、本件訂正発明1と、刊行物1に記載された発明とは、
「ケーブルを覆設する構造物であって、
ケーブルの両側面及び下面に対面する断熱材有する断面略U字状の受溝とケーブルの上面に対面する断熱材を有する断面略逆U字状の蓋溝とからなり、
受溝と蓋溝とは重なり合う長手方向側面において結合して単位長ボックスを構成し、
ケーブルの延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士及び蓋溝同士を重なり合う端部側面において連結してなるケーブルボックスであって、
ケーブルの延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士又は蓋溝同士の各端面を突合わせることにより、
該アダプタ材を端面の突き合う各溝の端部側面間にわたって宛がい、
各溝の端部側面とアダプタ材の端部側面とをそれぞれネジ止めすることにより、
アダプク材を介して受構同士又は蓋溝同士を連結してなる、ケーブルボックス」という点で一致し、
(相違点1)
本件訂正発明1は、ケーブルを挿通する添架管を並べた添架管群に覆設する構造物であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、複数のケーブルを覆設する構造物であり、添架管を有していない点、
(相違点2)
本件訂正発明1は、断熱材を内装する構成であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、ミネラルウール構造部材と外側の防火積層が積層する構成である点、
(相違点3)
刊行物1に記載された発明の、上側の部材と下側の部材は、その側面にある縁部において重なり合っているのに対し、本件訂正発明1では、縁部があるともないとも限定されていない点、
(相違点4)
本件訂正発明1は、各溝それぞれに相似な断面形状に形成した薄鋼板からなり可撓性を有する蓋アグプタ及び受アダプタによるアダプタ材に各溝の長手方向に延びるネジ止め用の長孔を設けているのに対し、刊行物1に記載された発明では、アダプタに相当するクランプは、各溝に相似な断面形状ではなく、可撓性を有するのか不明であり、ネジ孔は有するもののその形状まで限定されていない点、
(相違点5)
本件訂正発明1は、連結させる各ボックスの一方の端部に予め各アダプタ材をリベット止め又はネジ止めすることで各アダプタ材を各溝と一体化しているのに対し、刊行物1に記載された発明では、そのようになっているか不明である点、
で相違している。

(相違点4について)
上記相違点4について検討するに、溝端部の構成として、連結する溝部材同士の各端面を突合わせ、各溝の長手方向に延びる長孔を設けたアダプタ材を端面の突き合う各溝の端部側面間にわたって宛がい、重なり合う各溝の端部側面とアダプタ材の端部側面とをそれぞれネジ止めする構成は、上記刊行物7に記載されているように(上記(3―2-7)アダプタ材に相当する継ぎ金物12参照)周知技術ではあるが、各溝それぞれに相似な断面形状に形成されたアダプタ材が更に薄鋼板からなり可撓性を有する点については、上記刊行物1~7には記載されていない。
そして、本件訂正発明1は、溝に相似な断面形状のアダプタ材が長孔を有すると共に薄鋼板からなり可撓性を有していることで、蛇腹などの特殊な構造を用いることなく連結角度の調整が可能となる(本件特許明細書【0018】「各アダプタ7,9と別の単位長ボックス2とを連結する際、前記長孔25のどの位置でネジ止めするかによって、図5に見られるように、若干の角度及び位置を調整をしながら単位長ボックス同士2,2の連結を図ることができる。この各アダプタにおける連結角度及び連結位置の調整は、わずかに湾曲する添架管群5に沿ってケーブルボックスを敷設する際に便利である。」参照)という上記刊行物1~7に記載や示唆がされていない効果を奏するものである。
してみると、刊行物1~7に記載された発明から本件訂正発明1に至ることが、当業者にとって容易であるとはいえない。

(3-3-2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1に記載された「断熱材」の構成を「添架管群に対面する各断熱材の表面には、可撓面材を張り付けた」と更に限定するものであるので、本件訂正発明1と同様に、上記刊行物1~7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3-3-3)
よって、本件訂正発明1、2は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではない。

4.むすび
したがって、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ケーブルボックス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーブルを挿通する添架管(6)を並べた添架管群(5)に覆設する構造物であって、
該添架管群(5)の両側面及び下面に対面する断熱材(20)を内装した断面略U字状の受溝(4)と該添架管群(5)の上面に対面する断熱材(18)を内装した断面略逆U字状の蓋溝(3)とからなり、
受溝(4)と蓋溝(3)とは重なり合う長手方向側面において結合して単位長ボックス(2)を構成し、
添架管(5)の延設方向に順次構成する単位長ボックス(2)の受溝(4)同士及び蓋溝(3)同士を重なり合う端部側面において連結してなるケーブルボックス(1)であって、
各溝(3,4)それぞれに相似な断面形状に形成した薄金板からなり可撓性を有する蓋アダプタ(7)及び受アダプタ(9)によるアダプタ材に各溝(3,4)の長手方向に延びる長孔(25)を設け、
連結させる各ボックスの一方の端部に予め各アダプタ材(7,9)をリベット(8)止め又はネジ(10)止めすることで各アダプタ材(7,9)を各溝(3,4)と一体化し、
添加管(6)の延設方向に順次構成する単位長ボックス(2)の受溝(4)同士又は蓋溝(3)同士の各端面を突合わせることにより、
該アダプタ材(7,9)を端面の突き合う各溝(3,4)の端部側面間にわたって宛がい、
重なり合う蓋溝(3)の端部側面と蓋アダプタ(7)の端部側面とを長孔(25)の位置でネジ(10)止めし、
重なり合う受溝(4)の端部側面と受アダプタ(9)の端部側面とを長孔(25)の位置でネジ(10)止めすることにより、
アダプタ材(7,9)を介して受溝(4)同士又は蓋溝(3)同士を連結してなる、ケーブルボックス。
【請求項2】 添架管群(5)に対面する各断熱材(18,20)の表面には、可撓面材(21)を張り付けた請求項1記のケーブルボックス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電話線、電力ケーブル等(以下、ケーブルと総称する)を挿通した添架管を並べた添架管群に覆設するケーブルボックスに関する。
【0002】
【従来の技術】
橋梁等に沿って配設される添架管は、延設するケーブルを複数本毎に束ねると共に、これらのケーブルを物理的に保護する役割をもっている。この添架管は通常ポリ塩化ビニル製であるために、長期にわたる耐候性に劣り、また万一火災に曝されると添架管だけでなく、内装したケーブルをも破損する虞がある。このため、添架管にはケーブルボックスと呼ぶ管又は構造物を覆設する。
【0003】
新規に添架管を設置する場合、当然ケーブルボックスも新設する。この場合、添架管群との兼ね合いを考慮しながら、必要な構造強度や耐久性を考慮してケーブルボックスの構造をある程度自由に決定することができる。ところが、既設してある添架管群に対するケーブルボックスは、橋梁その他の構築物と添架管群との位置関係から構造、仕様が限定されやすい。このため、従来の一般的なケーブルボックスは、添架管群を一体として端からロール状の断熱材を捲回し、その上から単位長の薄鋼板を順次被覆していく構造のものが多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
既設の添架管群の多くは、橋梁に沿って配設されているものが多く、この添架管群に対してケーブルボックスを覆設するのは、足場を確保し、作業員の安全を図るなど、作業を開始するにあたって注意を要する点が多い。また、実際に作業を開始した後においては、添架管群に捲回した断熱材に対して薄鋼板を被覆するに際し、薄鋼板を結合するネジを強く締めすぎて断熱材を貫通し、添架管、場合によっては添架管に挿通したケーブルを破損する問題がしばしば見られていた。ケーブルの破損は、広範囲にわたる電話の不通や停電をもたらし、単なる作業上のミスだけでは済まない場合が少なくない。
【0005】
断熱材はグラスウール、ロックウールや他のセラミックファイバー等の人造鉱物繊維からなり、添架管群への捲回に際しては、作業者に小さな切り傷を与えることもあり、作業環境を悪くする要因となっている。また、薄鋼板は、添架管群に捲回した断熱材に密着して被覆するため、湾曲させやすいように大きさの割には非常に薄く、そのために足場の悪い作業場での取扱いが難しいといった問題があった。そこで、こうした既設の添架管群に対して覆設するケーブルボックスとして、作業性及び作業環境を改善するに適した構造について検討すると共に、このケーブルボックスを用いた実際の敷設作業における作業手順について考究することにした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
検討の結果、開発したものが、ケーブルを挿通する添架管を並べた添架管群に覆設する構造物であって、この添架管群の側面外方の一部を覆う断熱材を内装した受溝とこの添架管群の側面外方の残部を覆う断熱材を内装した蓋溝とからなり、受溝と蓋溝とは重なり合う長手方向側面において結合して単位長ボックスを構成し、添架管の延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士及び蓋溝同士は重なり合う端部側面において連結するケーブルボックスである。単位長ボックスは、添架管群の両側面及び下面に対面する断熱材を内装した断面略U字状の受溝とこの添架管群の上面に対面する断熱材を内装した断面略逆U字状の蓋溝とからなるものを基本とする。添架管群に対面する各断熱材の表面には可撓面材を張り付ける。ここにいう可撓面材は材質を問わず、不織布や織布のほか、薄鋼板、アルミ箔のような金属箔や紙であってもよい。
【0007】
本発明のケーブルボックスは、(1)予め断熱材を内挿した受溝と蓋溝とを組み合わせて一体で添架管群に覆設するだけでよく、(2)ネジ止めは受溝と蓋溝との結合又は単位長ボックス同士の連結に際して必要なだけで、断熱材を突き破って添架管を破損する虞がない。また、作業者は各溝の外面を持って作業でき、直接断熱材に触れる事態が少なくなり、断熱材の表面に可撓面材を張ればより積極的に断熱材からグラスウール等の飛散を防止できる。断熱材を各溝の端面から若干突出しておけば、単位長ボックスを連結したときに断熱材同士が圧接し、ケーブルボックスとしての断熱材の連続性を確保することができる。なお、一体となって添架管群に覆設できればよいので、蓋溝と受溝とは自由な割合、構造で分割でき、また例えば蓋溝又は受溝を更に複数に分割してもよい。基本的には、上述のように蓋溝及び受溝ともに断面略U字状とし、受溝の3面に断熱材、蓋溝に1面の断熱材をそれぞれ内装するとよい。
【0008】
本発明のケーブルボックスは、特に既設の添架管群に対して別途製造した受溝及び蓋溝からなる単位長ボックスを覆設するために、各添架管の間のみならず、添架管群と各溝の断熱材とに隙間が発生する。こうして、各添架管は、外方から(1)各ボックスを形成する板材、(2)断熱材、そして(3)隙間を満たす空気の3層から保護されることになる。その結果、外力に対しては前記(1)が反射、(2)が減衰させて各添架管を保護し、火災等の熱からは(1)が反射、(2)及び(3)が断熱、更に(3)が熱を逃がす空間として機能し、添架管群を保護することができる。
【0009】
単位長ボックスの連結には、添架管の延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士又は蓋溝同士の各端面を突合わせ、アダプタ材を端面の突き合う各ボックスの端部側面間にわたって宛がい、重なり合う各ボックスの端部側面とアダプタ材の端部側面とをそれぞれネジ止め又はリベット止めすることにより、アダプタ材を介して受溝同士又は蓋溝同士を連結するとよい。アダプタ材としては種々の形態のものが考えられるが、各溝それぞれに相似な断面形状に形成した薄鋼板からなるアダプタ材を例示することができる。このアダプタ材には、ネジ止め用の長孔を設けるとよい。この長孔の方向は、各溝の長手方向に合わせるのが好ましい。
【0010】
アダプタ材は、受溝同士又は蓋溝同士の連結を容易にする。すなわち、各溝の連結により発生する応力をアダプタ材に吸収させ、各溝を無理なく簡単に連結できるようになる。このアダプタ材は、各溝と別体であることを鑑みれば、例えば蓋溝に蓋アダプタ、受溝に受アダプタのように、分割可能な2部材以上で構成するのがよい。なお、蓋アダプタと受アダプタとは結合しなくてもよい。各ボックスに対するアダプタ材の固定は、通常外方からネジ止めすることになるが、連結する各ボックスの一方に予めアダプタ材をリベット止めしておき、アダプタ材の残る他方の端部側面を連結する各ボックスの他方にネジ止めするようにすれば、敷設作業が容易となる。アダプタ材に設けたネジ止め用の長孔は、アダプタ材に対する各ボックスの連結角度又は連結位置の微調整を可能とし、ケーブルボックス全体を湾曲させたり、経路長の調節を可能にする。
【0011】
本発明によれば、ケーブルを挿通する添架管を並べて既設してある添架管群に対し、まずこの添架管群の両側面及び下面に対面する断熱材を内装した断面略U字状の受溝に添架管群を収納し、続いて添架管群の上面に対面する断熱材を内装した断面略逆U字状の蓋溝を前記受溝に被せ、受溝と蓋溝との重なり合う長手方向側面をネジ止めにより結合して単位長ボックスを構成し、添架管の延設方向に順次構成する前記単位長ボックスの受溝同士及び蓋溝同士の重なり合う端部側面をネジ止めにより連結する手順により、ケーブルボックスを敷設することができる。このように、本発明のケーブルボックスでは、断熱材と断熱材を保護する鋼板とを一度に合わせて敷設できるだけでなく、各溝は結合を前提として製造しているから、敷設現場で容易に結合できる利点がある。
【0012】
上記敷設方法では、添架管の延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士又は蓋溝同士を連結するに際し、受溝同士又は蓋溝同士の各端面を突合わせ、アダプタ材を端面の突き合う各溝の端部側面間にわたって宛がい、重なり合う各ボックスの端部側面とアダプタ材の端部側面とをそれぞれネジ止めして、アダプタ材を介して受溝同士又は蓋溝同士を連結するとよい。更には、予めアダプタ材の一方の端部側面を対応する各溝の一方の端部側面にリベット止めしておき、添架管の延設方向に順次構成する単位長ボックスの受溝同士又は蓋溝同士を連結するに際し、受溝同士又は蓋溝同士の各端面を突合わせ、重なり合う各溝の他方の端部側面とアダプタ材の他方の端部側面とをそれぞれネジ止めして、アダプタ材を介して受溝同士又は蓋溝同士を連結するとよい。アダプタ材の使用は、各溝の連結作業を簡易にし、また予め各溝に対してリベット止めしたアダプタ材はアダプタ材の取扱いを各溝と一体にし、連結作業の手順を短縮する。
【0013】
また、受溝に添架管群を収納するに際して、各添架管の隙間、各添架管と受溝の断熱材との隙間及び各添架管とこの受溝に被せた蓋溝の断熱材との隙間を埋める介装材を添架管群に装着するとよい。各添架管の隙間等を熱の散逸空間として利用するには、前記介装材は隙間を全部埋めるのではなく、一部を開けておく。添架管群に介装材を装着することにより、簡単に受溝に対する添架管群の収納位置を規定する(敷設作業の定型化)と共に、ケーブルボックス内部における添架管群の最も良好な配置を簡単に決定する(敷設作業の最適化)。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明のケーブルボックス1の敷設形態を示した斜視図、図2は単位長ボックス2を構成する蓋溝3及び受溝4と添架管群5との組付関係を表した部分破断斜視図、図3は別例の蓋溝3及び受溝4と添架管群5との組付関係を表した部分破断斜視図、図4は結合した蓋溝3及び受溝4の端部拡大斜視図であり、図5は単位長ボックス2,2同士の連結関係を表した斜視図である。なお、各図において、添加管6内部のケーブルについては省略している。
【0015】
本例のケーブルボックス1は、図1~図3に見られるように、断面相似な蓋アダプタ7を予めリベット8で止めた断面略逆U字状の蓋溝3と、同じく断面相似な受アダプタ9を予めリベット8で止めた断面略U字状の受溝4とを、各溝3,4の重なり合う長手方向側面においてネジ10で止めて単位長ボックス2を構成して、各アダプタ7,9を介した単位長ボックス2,2同士の連結により、ケーブルボックス1を構築する。
【0016】
図1では、橋梁11の下面に沿って配設された既設の添架管群5に本発明のケーブルボックス1を覆設した状態を表している。添架管群5は、通常、橋桁(図示せず)等から突設した支持面12に載設している。単位長ボックス2は、前記支持面12に載設する固定枠13に保持して、敷設後の位置安定を図る。本例の固定枠13は、単位長ボックス2へ被せるU字枠14にベースプレート15を螺合して構成し、U字枠14が局所的に蓋溝3と接触して蓋溝3を破損しないように、U字枠14と蓋溝3との間には緩衝プレート16を介装している。
【0017】
図2に見られるように、蓋溝3は断面略逆U字状に形成した鋼板17に添架管群5の上面に対面する板状断熱材18を内装し、受溝4は断面略U字状に形成した鋼板19に添架管群5の両側面及び下面に対面する板状断熱材20,20,20を内装している。各断熱材18,20には、添架管群5に対面する表面に、不織布からなる可撓面材21を貼着してあり、断熱材18,20からグラスウール等が飛散して作業者を傷つけないようにしている。添架管群5は、図1又は図2に見られるように、相互の隙間を残して上介装材22、中間介装材23及び下介装材24を装着した状態で受溝4に収納する。この介装材22,23,24は、使用する蓋溝3及び受溝4の寸法と収納する添架管6のサイズ、配列間隔とに合わせて用意する。介装材22,23,24の材質、構造は自由であるが、接触する添架管6及び断熱材18,20を傷つけない材質、構造とする。本例では、面取りした金属板を利用している。受溝4に添架管群5を収納した後、蓋溝3を被せ、両者の重なる長手方向側面においてネジ10で止めて結合し、単位長ボックス2を構成する。なお、本例のような断面略蓋溝3と受溝4との結合が難しい場所(橋梁の構造の関係で、図2中奧側のネジ止めが難しい場合等)では、図3に見られるように、断面略L字状の相似な蓋溝3と受溝4とを結合して単位長ボックス2を構成してもよい。
【0018】
蓋溝3に予めリベット8で止めた蓋アダプタ7と、受溝4に予めリベット8で止めた受アダプタ9とには、図4に見られるように、それぞれ各溝3,4の長手方向に延びるネジ止め用の長孔25を設けている。蓋アダプタ7及び受アダプタ9は薄鋼板からなるため、一定の可撓性を有し、各アダプタ7,9と別の単位長ボックス2とを連結する際、前記長孔25のどの位置でネジ止めするかによって、図5に見られるように、若干の角度及び位置を調整をしながら単位長ボックス同士2,2の連結を図ることができる。この各アダプタにおける連結角度及び連結位置の調整は、わずかに湾曲する添架管群5に沿ってケーブルボックスを敷設する際に便利である。
【0019】
図6は敷設後のケーブルボックスにおける断熱材18,20と添架管群5との関係を表した斜視図(蓋溝及び受溝を形成する鋼板並びに各アダプタを省略)、図7は同じく敷設後のケーブルボックス1の状態を表した断面図である。連結する単位長ボックス間における断熱材18,20の連続性は、各溝の端面から若干突出するように断熱材18,20を内挿しておけば、連結する際に突き合わせる各単位長ボックスの断熱材18,20端面が互いに圧接させて確保できる。この断熱材の突出は、上述のアダプタにおける単位長ボックス同士の角度調整及び位置調整に際しても、断熱材の連続性を確保することにも役立つ。こうして敷設を終えた単位長ボックスは、図6に見られるように、添架管群5の延設方向を除く4面を断熱材18,20で囲む経路を構成する。
【0020】
このケーブルボックス1では、図7に見られるように、まず外力Fに対しては各溝3,4を形成する鋼板17,19が反射し、また内部に伝わる外力Fについては断熱材18,20が緩衝機構として作用することにより、各添架管6に対して外力Fを遮断することができる(図7中右参照)。また、火災等の熱Sについては、鋼板17,19が放射による熱Sを反射し、断熱材18,20が熱Sを遮断するほか、更にケーブルボックス1内部に保持された空間26(添架管6の隙間や各添架管6と断熱材18,20との隙間)が空気による断熱層を構成しているので、各添架管6に伝わる熱はほとんどない。また、仮にケーブルボックス1内に伝えられる熱が過剰になっても(例えばケーブルボックス周囲全域で大きな火災が発生した場合等)、添架管6周囲に保持された空間26内に熱による対流が生じ、熱を逃がそうとするので、従来のケーブルボックスに比較して耐火性を大幅に向上させることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明のケーブルボックスは、受溝と蓋溝との結合、こうしてできた単位長ボックスの連結、という作業の定型化を図ることにより、敷設作業における作業性を高め、作業手順を簡素化することができる。また、各溝に内挿した断熱材に可撓面材を張ることにより、断熱材のグラスウール等を飛散させない良好な作業環境を実現する。そして、何よりも本発明のケーブルボックスにおいては、敷設作業に際し、作業者の不注意により添架管を傷つける虞がなくなるという大きな利点がある。これは、経験の浅い作業者でも、確実な敷設作業を遂行できることを意味し、迅速かつ的確なケーブルボックスの敷設を可能にする効果を生み出す。
【0022】
また、外力から添架管を守る各溝の鋼板と特に火災等の熱から添架管を守る断熱材、そしてケーブルボックスの構造に伴う添架管の隙間等により、従来に比してより安全なケーブルボックスの提供ができるようになる。しかも、本発明のケーブルボックスは、既に説明したところから明らかなように、簡単な構成であるために製造費を抑えることができ、上述のように敷設作業が簡易であるため、敷設コストも高くならない。こうして、本発明のケーブルボックスは、極めて高い費用対効果を得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のケーブルボックスの敷設形態を示した斜視図である。
【図2】
単位長ボックスを構成する蓋溝及び受溝と添架管群との組付関係を表した部分破断斜視図である。
【図3】
別例の蓋溝及び受溝と添架管群との組付関係を表した部分破断斜視図である。
【図4】
結合した蓋溝及び受溝の端部拡大斜視図である。
【図5】
単位長ボックス同士の連結関係を表した斜視図である。
【図6】
敷設後のケーブルボックスにおける断熱材と添架管群との関係を表した斜視図(蓋溝及び受溝を形成する鋼板並びに各アダプタを省略)である。
【図7】
敷設後のケーブルボックスの状態を表した断面図である。
【符号の説明】
1 ケーブルボックス
2 単位長ボックス
3 蓋溝
4 受溝
5 添架管群
6 添架管
7 蓋アダプタ
8 リベット
9 受アダプタ
10 ネジ
11 橋梁
12 支持面
13 固定枠
14 U字枠
15 ベースプレート
16 緩衝プレート
17 蓋溝を形成する鋼板
18 蓋溝に内挿する板状断熱材
19 受溝を形成する鋼板
20 受溝に内挿する板状断熱材
21 可撓面材
22 上介装材
23 中間介装材
24 下介装材
25 長孔
26 空間
F 外力
S 熱
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2003-05-09 
出願番号 特願平9-172332
審決分類 P 1 41・ 121- Y (H02G)
最終処分 成立  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 森 竜介
橋場 健治
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3178802号(P3178802)
発明の名称 ケーブルボックス  
代理人 太田 恵一  
代理人 太田 恵一  

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