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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1080657
審判番号 不服2000-13194  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-21 
確定日 2003-07-29 
事件の表示 平成 8年特許願第327242号「商品販売システム、その情報通信方法およびその端末装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 6月26日出願公開、特開平10-171879]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明

本件審判請求に係る出願は、平成8年12月6日付けの出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年4月4日付け手続補正書によって補正された明細書と図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
なお、平成12年9月20日付け手続補正書でなされた手続補正は、本審決と同日付けで、決定をもって却下された。

「商品の購入に関する商品関連情報と注文を行うための指示情報とを有する案内情報を広域ネットワーク上に提供可能な情報サービス装置と、
前記広域ネットワークに接続可能な端末装置であって、前記案内情報を前記広域ネットワークを介して前記情報サービス装置から取得する第1通信手段と、当該取得された案内情報の商品関連情報および注文の指示のための特定情報を表示する表示手段と、前記特定情報を前記表示手段の表示画面上で指定するポインティング手段と、注文に関連する注文情報を入力する入力手段と、前記ポインティング手段による指定に応じて前記入力手段からの注文情報の入力を許可する制御手段と、当該入力された注文情報を前記広域ネットワークとは別の通信ネットワークを介して送信する第2通信手段とを有する端末装置と、
前記別の通信ネットワークを介して前記注文情報を受信する注文受け付け装置とを具えたことを特徴とする商品販売システム。」

2.引用例記載の発明

(引用例1)
これに対して、原査定の拒絶の理由において引用された本願の出願前に国内において頒布された刊行物である「『バーチャル空間でお買い物-エレクトロニック・コマース最前線』、日経MAC 95.11 、日経BP社、1995年11月15日、
pp.206-211」(以下、「引用例1」という。)には、エレクトロニック・コマースのシステムとして、概略次の事項が記載されている。

(ア)WWWサーバーにあるいわゆるサイバー・モールは、日本酒やお菓子などの食品からメガネまで、多種多様なサービスが提供されており、商品写真や説明を表示したり、価格を表形式で見せることができるので、カタログ・ショッピングとほとんど変わらない。また、その場で注文できる。(第206頁左欄第16行~右欄第19行及び図1~3)
(イ)Internetでデータをやり取りする場合、「安全性」という面では課題が多い。パソコン通信は公衆回線や専用回線を使って、ユーザーのパソコンとホスト局が直接データを送受信できるため、制約はあるものの、機密をかなり保つことができる。一方、Internetでは、サイバー・モールがあるWWWサーバと通信する場合、まずは公衆回線でInternetの接続業者にアクセスし、そこからInternetに入り込み、様々な通信回線を経由してデータをやり取りする。気に入った商品を見つけて、購入する場合に、注文に関する情報を直接入力する画面が表示される。入力したデータ、特にクレジット・カード番号はInternet上を駆け巡っているから、盗聴の可能性はないとは言えない。(第208頁左欄第4行~右欄第4行及び図6)
(ウ)個人データをそのままInternet上に流すのは危険で、現状では、注文だけをInternetで実施して、決済は従来通りにファックスや銀行/郵便振り込み、着払いにするのが現実的である。決済まで電子化できれば、取引に関わる作業が簡略化でき、余計なコストを省くことができる。ネットワーク上の決済を安全に行う方法は、基本は個人情報をできるだけ公開せずに解決すること、WWW上では商品情報のやりとりを行うだけで、クレジット・カード番号はFAXか電話で行うこと。(第209頁左欄第1~14行及び図7)

上記記載事項(ア)によれば、サイバー・モールでその場で注文できるとあるから、引用例1のWWWサーバーが提供するサイバー・モールの情報には、商品写真や説明、価格の情報に加えて、注文を行うためのボタンや文字列等の情報が含まれており、WWWサーバーはパソコンから注文情報を受信することは明らかである。
また、引用例1にはパソコンの装置構成の記載はないが、一般に、パソコンが表示手段、ポインティング手段、入力手段、制御手段、通信手段を備えることは自明のことであり、同(ア)~(ウ)には、サイバー・モールで注文可能で、注文だけをInternetで実施するとあるから、引用例1のパソコンは、Internetに接続可能であって、WWWサーバーが提供するサイバー・モールの情報を表示手段に表示し、表示手段の表示画面上で指定するポインティング手段の操作に応じて、注文に関する情報を直接入力する画面を表示し、注文に関する情報の入力の終了後にInternetを介してWWWサーバーに送信する処理を行っていることは明らかである。

よって、引用例1には、
「商品の購入に関する商品写真や説明、価格の情報と注文を行うためのボタンや文字列等の情報とを有するサイバー・モールの情報をInternet上に提供するWWWサーバーと、
前記Internetに接続可能なパソコンであって、前記サイバー・モールの情報を前記Internetを介して前記WWWサーバーから取得する第1の通信手段と、当該取得された前記サイバー・モールの情報の商品写真や説明、価格の情報および注文を行うためのボタンや文字列等の情報を表示する表示手段と、前記注文を行うためのボタンや文字列等の情報を前記表示手段の表示画面上で指定するポインティング手段と、注文に関する情報を入力する入力手段と、前記ポインティング手段による指定に応じて前記入力手段からの注文に関する情報の入力を制御する制御手段と、当該入力された注文に関する情報の入力後に前記Internet介して送信する第1の通信手段とを有するパソコンと、
前記Internetを介して前記注文に関する情報を受信するWWWサーバーと、
クレジット・カード番号を送信するFAX等を備えたエレクトロニック・コマースのシステム。」
(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用例2)
また、原査定の拒絶の理由において引用された本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開平7-307813号公報には、通信販売サービスに用いる通信端末に関して、次の事項が記載されている。
「通信端末6は、通信販売情報抽出器5を内蔵する構成のでもよく、網インタフェース62、発呼スイッチ63、制御部66などで構成される。利用者は、欲しい商品を見つけたとき、通信端末6の発呼スイッチ63を押す。発呼スイッチ63が押されると、映信端末6の制御部66は、網インタフェース62を通じて通信販売受付センタ1に電話をかけ、通信販売受付センタ1との接続を確認した後、注文スイッチ64が押されると、利用者の名前、住所、利用者番号、クレジットカード番号等の利用者情報を商品注文を示すデータと共に通信販売受付センタ1に送る。」(以下、「引用例2記載の発明」という。)

3.本願発明と引用例1記載の発明との対比

本願発明(前者)と引用例1記載の発明(後者)とを対比する。
後者の「商品写真や説明、価格の情報」、「注文を行うためのボタンや文字列等の情報」、「サイバー・モールの情報」は、それぞれ前者の「商品関連情報」、「注文を行うための指示情報」及び「注文の指示のための特定情報」、「案内情報」に相当する。
前者の「注文情報」は、請求項1の記載からその技術的意味を特定できないので、願書に最初に添付した明細書の記載を参酌すると、請求項2の「前記注文情報の中にはクレジットカードのID番号が含まれる」の記載及び段落【0003】、段落【0065】、段落【0069】の記載からみて、該注文情報は商品関連の情報と商品購入者に関する情報(クレジットカードのID番号を含む)を含んだものを意味していると解される。一方、後者の「注文に関する情報」は、注文をInternetで実施し、クレジット・カード番号をInternetとは別の通信ネットワークである電話回線で送信することが記載されていることから、前者の「注文情報」と後者の「注文に関する情報」は、クレジットカードのID番号を含むか含まないかの点を除いて、共通するものと認められる。
後者の「第1の通信手段」、「表示手段」、「ポインティング手段」、「入力手段」、「パソコン」は、その機能からみてそれぞれ前者の「第1通信手段」、「表示手段」、「ポインティング手段」、「入力手段」、「端末装置」に相当する。
引用例1の注文に関する情報を直接入力する画面(図6)は、ユーザーが気に入った商品を見つけて、購入をする場合に表示される画面であって、ポインティング手段による指定に応じて当該画面が表示されるので、後者の「制御手段」は、ポインティング手段による指定に応じて注文に関する情報の入力を許可する処理を行っていると認められるから、その機能からみて、前者の「制御手段」に相当する。
後者の「WWWサーバー」は、その機能からみて前者の「情報サービス装置」に相当すると共に、注文情報を受信する点において、後者の「WWWサーバー」と前者の「注文受け付け装置」は共通する。
そして、後者の「エレクトロニック・コマースのシステム」は、前者の「商品販売システム」に相当する。

よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
[一致点]
「商品の購入に関する商品関連情報と注文を行うための指示情報とを有する案内情報を広域ネットワーク上に提供可能な情報サービス装置と、
前記広域ネットワークに接続可能な端末装置であって、前記案内情報を前記広域ネットワークを介して前記情報サービス装置から取得する第1通信手段と、当該取得された案内情報の商品関連情報および注文の指示のための特定情報を表示する表示手段と、前記特定情報を前記表示手段の表示画面上で指定するポインティング手段と、注文に関連する注文情報を入力する入力手段と、前記ポインティング手段による指定に応じて前記入力手段からの注文情報の入力を許可する制御手段とを有する端末装置と、
記注文情報を受信する注文受け付け装置とを具えたことを特徴とする商品販売システム。」

[相違点]
前者の注文情報は、クレジットカードのID番号を含む情報であり、前者の端末装置は、入力された注文情報を広域ネットワークとは別の通信ネットワークと接続し、前記注文情報を前記別の通信ネットワークを介して送信する第2通信手段とを有し、前者の注文受け付け装置は、前記別の通信ネットワークを介して前記注文情報を受信するのに対して、後者の注文情報は、クレジットカードのID番号を含まない情報であり、後者の端末装置は、注文情報を広域ネットワークを介して送信し、後者の注文受け付け装置は前記注文情報を広域ネットワークを介して受信し、クレジットカードのID番号はFAX等を介して送信する点。

4.当審の判断

上記の相違点について検討する。
引用例2には、通信販売サービスに用いる通信端末において、利用者の操作により、案内情報を受信する通信ネットワークとは別の通信ネットワークである電話回線と接続し、クレジットカート番号等の利用者情報を商品注文を示すデータと共に通信販売受付センタに送る通信手段を備えることが記載されており、引用例1には、注文をInternetで実施し、クレジットカード番号をInternetとは別の通信ネットワークである電話回線で送信することに加えて、決済を電子化できれば取引に関わる作業が簡略化できると記載があるから、後者に引用例2記載の発明を適用して、後者の「注文情報を送信する通信手段」を、クレジットカードのID番号を含む注文情報を広域ネットワークとは別の通信ネットワークを介して送信するように構成することは、当業者が容易に推考できたものと認める。
そして、前者の効果は、後者及び引用例2記載の発明の効果から予測できる程度のものであり、格別のものとは認められない。

5.むすび

したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-30 
結審通知日 2002-10-01 
審決日 2002-10-21 
出願番号 特願平8-327242
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 正  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 鳥居 稔
辻本 泰隆
発明の名称 商品販売システム、その情報通信方法およびその端末装置  
代理人 谷 義一  
代理人 阿部 和夫  

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