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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B28B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B28B 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 B28B |
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管理番号 | 1091499 |
異議申立番号 | 異議1999-74260 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-03-16 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-11-11 |
確定日 | 2004-01-20 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第2930940号「コンクリート製品の製造方法、耐久性型枠および埋設物」の請求項1ないし23に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2930940号の請求項1ないし23に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2930940号の請求項1~23に係る発明についての出願は、平成6年12月12日(優先権主張平成5年12月15日、平成5年12月29日)に特許出願した特願平6-307822号の一部を平成10年7月17日に新たな特許出願としたものであって、平成11年5月21日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、岡部株式会社(以下、申立人Aという)、小林産業株式会社外1名(以下、申立人Bという)、小原英一(以下、申立人Cという)よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成12年7月31日付けで訂正請求書と特許異議意見書が提出され、その後訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内の平成13年5月21日付けで特許異議意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否 2-1.独立特許要件 (1)訂正後の本件請求項1に係る発明 本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】インサート保持具または該インサート保持具が装着されたインサートを耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、それらから耐久性型枠側に突き出た少なくとも1本の突起部を、裏面に鞘管が設けられた耐久性型枠の設定孔に表面から挿入して設定し、脱型する際にコンクリート製品と前記耐久性型枠の間に働く力によって前記突起部が分断されることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。」 (2)先の訂正拒絶理由で引用された刊行物について 先の訂正拒絶理由で本件訂正発明1について引用された刊行物は、以下の刊行物1~8である。 刊行物1:実公昭59-3863号公報(申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第2号証、申立人Cの甲第3号証) 刊行物2:実公昭50-43161号公報(申立人Cの甲第1号証) 刊行物3:実願昭56-23675号(実開昭57-136712号)のマイクロフィルム(申立人Bの甲第3号証) 刊行物4:実公昭50-38183号公報(申立人Aの甲第4号証、申立人Bの甲第1号証、申立人Cの甲第2号証) 刊行物5:実願昭49-130181号(実開昭51-55868号)のマイクロフィルム(申立人Aの甲第5号証) 刊行物6:実願昭58-144769号(実開昭60-51014号)のマイクロフィルム(申立人Aの甲第2号証) 刊行物7:特開昭61-169543号公報(申立人Aの甲第3号証) 刊行物8:特開昭61-177208号公報(申立人Bの甲第4号証) (2-1)刊行物の記載内容 刊行物1:実公昭59-3863号公報 (a)「インサートしようとする金物を嵌合支持させるフランジ付の筒体と、この筒体のフランジ側に連設して型枠に設けた螺孔へ螺合させる取付ねじと、この取付ねじと前記筒体との堺部に周設して脱型時ちぎれさせる切込みと、前記ねじに設けた工具掛け手段とを備えさせたことを特徴とするコンクリート成形のインサート金物保持具。」(実用新案登録請求の範囲) (b)「第3図において5はプラスチック等により形成した筒体で、螺筒等のインサート金物3を嵌合支持させる孔6と型枠1に当るフランジ7とを有し、且、筒体5の下部には型枠1に設けた螺孔8に螺合するねじ9を連設し、この取付けねじ9と前記筒体5との堺部には脱型時に取付ねじ9がちぎれる様に切込み10を入れてある。11は取付ねじ9の中央に設けた工具の掛孔で、脱型後この掛孔11に工具を掛けて回し、取付ねじ9を型枠1から取り除くために使うものである。」(第1頁第2欄第31~第2頁第3欄第4行) (c)「しかし、打込んだコンクリートが固つて製品が完成したとき、型ばらしを行えば、製品にインサートされた筒体5と、型枠1にねじ込まれた取付ねじ9とが反対方向に引張られるため、保持具は切込み10の位置から切れ、筒体5は金物3と共に製品にインサートされ、取付ねじ9は型枠1に残るから、この取付ねじ9を掛孔11に工具を掛けて取外せば、螺孔8に新しい保持具の取付ねじ9を螺合して次のインサート成型に対処出来るものである。」(第2頁第3欄第20~29行) (d)「殊にこの保持具は、製品にインサートされた筒体と、型枠に取付ねじ込まれたねじとの堺に切込みを入れてあるため、コンクリートのインサート成形を終って型ばらしを行えば、この際製品と型枠とに働く引離し力により、前記切込み部がちぎれて筒体と取付ねじを自然分離させるため、製品の脱型も容易、迅速に行われて、然も、製品脱型後は、型枠の螺孔に残ったねじを除去すれば、この螺孔にねじを嵌めて別の保持具にインサート金物のセットを行い、インサート成形を能率的に行うことが出来て、然も、この保持具以外には全く部品を要しない特有の効果を奏するものである。」(第2頁第4欄第10~21行) (e)第3頁の第3、4図には、フランジの面が型枠の面に接していることが示されている。 刊行物2:実公昭50-43161号公報 (f)「型枠に穿設した貫通孔にインサート金具支承片を嵌挿保持させる場合に、貫通孔5に嵌挿する支承片7とインサート金具1の先端部に嵌着される防錆用被覆枠8とを合成樹脂にて一体成形し、かつ支承片7と被覆枠8との境界線上に沿って切欠部9を形成してなるコンクリート型枠におけるインサート金具支承具。」(実用新案登録請求の範囲) (g)「即ちこの考案によれば、貫通孔5に嵌挿する支承片7とインサート金具1の先端部に嵌着される防錆用被覆枠8とを合成樹脂にて一体成形し、かつ支承片7と被覆枠8との境界線上に沿って切欠部9を形成してなるため、型枠4から凝固したコンクリート板を強制的に脱離させる際にこの切欠部9に剪断力が働いて脱型時に同時に切欠部9が剪断されて支承片7を切り離し、インサート金具1には防錆用被覆枠8のみが被着されて防錆取付孔が形成されるのである。」(第1頁第2欄第38行~第2頁第3欄第9行) 刊行物3:実願昭56-23675号(実開昭57-136712号)のマイクロフィルム (h)「(1)合成樹脂ネジ(3)に穴(4)を明けた合成樹脂中空ネジ(1)にナット(7)を取付ける横面インサート固定具(2)合成樹脂中空ネジ(1)を、合成樹脂有頭ボルト(5)に穴(4)を明け合成樹脂中空有頭ボルトとした実用新案登録請求第1項の横面インサート固定具(2)」(実用新案登録請求の範囲) (i)「本考案は、その様な欠点を除く為なされたもので、仮止めボルトを合成樹脂中空ボルトとし、PC板を型枠から脱着時の力をボルトに加わるせん断力として分断する方法である。図面について説明すると、第2図のように取付け位置の型枠(8)に穴(9)を明けインサート(6)をネジ(1)とナット(7)により仮止めする。コンクリート打込み、養生後PC板を、型枠から脱着する時、ボルトにはせん断が加わり切れて分断され第3図の様になります。」(第2頁第1~11行) 刊行物4:実公昭50-38183号公報 (j)「第1図ないし第3図に示す第1実施例においては、ボルト螺合用雌ねじ6を有する埋込金具1の先端部に、合成樹脂製環状キャップ3が圧入嵌合され、かつその環状キャップ3の先端外縁部に連設された筒状保持片4は、先端側外周にテーパ部分8を有すると共に基端側に位置決め用フランジ9を有し、その保持片4は、型枠10に固定された支承ブロック11の段付き孔12に嵌合固定されている。」(第1頁第1欄第36行~第2欄第6行) (k)「第4図および第5図に示す第2実施例においては、保持片4のテーパ外周面に、環状突条14が形成され、この環状突条14は、支承ブロック11のテーパ孔15内に設けられた環状溝16内に嵌合されて、振動などにより保持片4が支承ブロック11からみだりに抜け出さないように確実に保持される。」(第1頁第2欄第13~19行) 刊行物5:実願昭49-130181号(実開昭51-55868号)のマイクロフィルム (l)「第1図および第2図において、1は型枠(・・・)で、該型枠1の所定位置(・・・)には透孔1a下方にその上部を溶接によって固定した中空円筒状のカラーで、該カラー2の中空部分は下方に向って狭まるテーパー部2aおよびリング差し込み段部2bから順次構成されている。3は該カラー2の中空部分にその下部を挿入する埋込栓ボルトで、該ボルト3は中間の径方向に張出した段部3aと、該段部3aを挟んで上部に雄ねじ部3bと段部3a下部に前記カラー2のテーパー部2aに収容される如きテーパー状に形成されかつ下部外周にリング収容凹部3dを形成した頭部3cとから一体的に構成される。また、4は該ボルト3のリング収容凹部3dに収容される金属製リングで、該リング4は頭部3cのカラー2への挿入前は第1図に示すように頭部3cの径以上に張り出して凹部3dに係止され、かつ頭部3cがカラー2内に挿入されテーパー部2aを通過するときは径方向に縮小して凹部3d内に収容され、さらに段部2bにおいては若干拡大して段部2b内壁にある程度の圧力をもって密着するような形状とバネ性を付与したものとする。このリング4の例を第3図に示す。」(第3頁第5行~第4頁第7行) (m)「なお、第1図の如くボルト3の雄ねじ部3bにあらかじめ埋込栓5をその下端フランジが段部3aに接触するまで螺合しておけば、第2図に示す如く埋込栓5の下端フランジとカラー2上端が接することになる。」(第5頁第8~12行) 刊行物6:実願昭58-144769号(実開昭60-51014号)のマイクロフィルム (n)「この雌ねじキャップはコンクリート柱形成時に、コンクリート柱成形用型枠の内周に固定し、コンクリート柱に埋設させているが、かかる型枠に雌ねじキャップを固定する手段として、従来は第1図に示すように、足場取付位置に相当する型枠1に貫通孔を形成し、型枠1の外周の前記貫通孔の開口部に内周面に雌ねじ部を形成した管状の雌ねじ金具2を溶接により固定し、該雌ねじ金具2に螺合するねじ部3と、該ねじ部3の先端に雌ねじキャップ4を螺合する小径のねじ部5を有する雄ねじ金具6を用意して、この雄ねじ部5に雌ねじキャップ4を螺着し、この雌ねじキャップ4を前記雌ねじ金具2から型枠1内に挿入するようにして雄ねじ部3を雌ねじ金具2に螺着するようにして固定している。そして型枠1内に流し込んだコンクリートが固化した後、雄ねじ金具6を雌ねじ金具2から外すことにより、雄ねじ金具6の小径のねじ部5に螺着してある雌ねじキャップ4がコンクリート内に残り、コンクリート柱に埋設されるものとなっている。」(第2頁第18行~第3頁第17行) 刊行物7::特開昭61-169543号公報 (o)「第2図は従来の遠心力プレストレスコンクリートポールに組み込む足場ボルトの受金具としてのインサート金具1が遠心成形用の型枠3に取付けられた状態を示すもので、2はコンクリート製品を示している。この図でインサート金具1の内面には、ピッチPのねじ部をもち、型枠3に設けた開口部4の外側に溶接等の手段で固定したナット部品5のねじ部に金具取付ボルト6の大径部8の雄ねじをねじ込み、このボルト6の小径部9の雄ねじをインサート金具1のねじ部にねじ込み、かつボルト6の大径部8の下端面にゴム等のリング状の漏れ止め部材7を装着している。組付けに際しては、金具取付ボルト6の小径部9をインサート金具1にねじ込んでセットした該金具取付ボルト6を六角の頭部10に係合したインパクトレンチ等を用いてナット部品5にねじ込み、インサート金具1を開口部4を経て型枠3内に突出させる。」(第1頁右下欄第8行~第2頁左上欄第6行) 刊行物8:特開昭61-177208号公報 (p)「この図で、インサート金具1の内面には、ピッチPのねじ部をもち、型枠3に設けた開口部4の外側に、溶接等の手段で固定したナット部品5のねじ部に金具取付ボルト6の大径部8をねじ込み、このボルト6の小径部9の雄ねじをインサート金具1のねじ部にねじ込み、かつボルト6の大径部8の下端面にゴム等のリング状の漏れ止め部材7を装着している。組付けに際しては、金具取付けボルト6の小径部9をインサート金具1にねじ込んでセットした該金具取付ボルト6を、六角の頭部10に係合したインパクトレンチ等を用いてナット部品5にねじ込み、インサート金具1を開口部4を経て型枠3内に突出させる。」(第1頁右下欄第16行~第2頁左上欄第9行) (3)対比・判断 上記(c)の「打込んだコンクリートが固つて製品が完成した」との記載から、刊行物1にはコンクリート製品の製造方法が記載されており、また、上記(c)の「新しい保持具の取付ねじ9を螺合して次のインサート成型に対処出来る」との記載から、インサート金物保持具の一部である取付ねじを型枠の所定の螺孔に繰り返して設定することは明らかであるから、 刊行物1には上記(a)~(c)から、「インサートしようとする金物を嵌合支持させるフランジ付の筒体と、この筒体のフランジ側に連設した取付ねじとからなるインサート金物保持具を型枠の所定の螺孔に繰り返し設定する際に、取付ねじを型枠に設けた螺孔へ螺合させ、脱型時に、金物と共に製品にインサートされた筒体と、型枠にねじ込まれた取付ねじとが反対方向に引張られ、インサート金物保持具は取付ねじと筒体との堺部に周設してある切込みの位置からちぎれる様に切れるコンクリート製品の製造方法。」という発明(以下、刊行物1発明という)が記載されていると云える。 そこで、本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「インサート金物保持具」、「取付ねじ」、「型枠」、「螺孔」は、本件訂正発明1の「インサート保持具」、「突起部」、「耐久性型枠」、「設定孔」にそれぞれ相当し、刊行物1発明の取付ねじは型枠の表面から螺合されるから、両者は、 「インサート保持具を耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、それらから耐久性型枠側に突き出た突起部を、耐久性型枠の設定孔に表面から挿入して設定し、脱型する際にコンクリート製品と耐久性型枠の間に働く力によって突起部が分断されることを特徴とするコンクリート製品の製造方法」で一致し、次の点で一応相違していると云える。 ・本件訂正発明1では、裏面に鞘管が設けられた耐久性型枠であるのに対して、刊行物1発明では、その点が記載されていない点 そこで検討すると、 刊行物4には、上記(j)、(k)から、筒状保持片が、型枠裏面の支承ブロックに嵌合固定されていることが記載されている。 してみると、本件訂正発明1の突起部に相当する保持片が本件訂正発明1の鞘管に相当する支承ブロックで固定されていると云える。 また、刊行物5には、中空円筒状のカラーが、インサート保持具である埋込栓ボルトが装着されている。 してみると、従来からインサート保持具を型枠だけで保持するのではなく、型枠裏面に設けた本件発明9の鞘管に相当する支承ブロック、カラーで保持することが普通に行われているものと云える。 以上のことから、本件訂正発明1は、刊行物1、4、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 したがって、訂正後の本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 2-2.まとめ よって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.特許異議申立てについて 3-1.本件発明1~23について 特許権者の上記訂正は、認めることができないから、本件請求項1~23に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~23に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1~23」という)。 「【請求項1】インサートまたはインサート保持具を耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、それらから耐久性型枠側に突き出た少なくとも1本の突起部を、裏面に鞘管が設けられた耐久性型枠の設定孔に表面から挿入して設定し、脱型する際にコンクリート製品と前記耐久性型枠の間に働く力によって前記突起部の少なくとも1部が破壊、分断または変形して抜けることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。 【請求項2】インサートまたはインサート保持具を耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、それらから耐久性型枠側に突き出た少なくとも1本の突起部を、裏面にナット部が設けられた設定孔に表面からねじ込み、脱型する際にコンクリート製品と耐久性型枠の間に働く力によって前記突起部の少なくとも1部が破壊または分断されることを特徴とするコンクリート製品の製造方法。 【請求項3】インサートまたはインサート保持具を所定の位置に繰り返し設定可能な耐久性型枠であって、滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分を有し、それら滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分に、前記インサートまたはインサート保持具から突き出た少なくとも1本の突起部を挿入可能な設定孔が形成されており、さらに、その設定孔の裏面に前記突起部との付着力が得られる鞘管が設けられていることを特徴とする耐久性型枠。 【請求項4】インサートまたはインサート保持具を所定の位置に繰り返し設定可能な耐久性型枠であって、滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分を有し、それら滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分に、前記インサートまたはインサート保持具から突き出た少なくとも1本の突起部をねじ込み可能な設定孔が形成されており,さらに、その設定孔の裏面に前記突起部がねじ込まれるナット部が設けられていることを特徴とする耐久性型枠。 【請求項5】インサートまたはインサート保持具から耐久性型枠に向かい、その耐久性型枠に設けられた設定孔に挿入可能な少なくとも1本の突起部が突き出た埋設物であって、前記突起部は、前記設定孔の裏面に設けられた鞘管と接触し付着力が得られる長さを備えており、脱型するときに働く力によって少なくとも1部が破壊、分断または変形可能であることを特徴とする埋設物。 【請求項6】インサートまたはインサート保持具から耐久性型枠に向かい、その耐久性型枠に設けられた設定孔にねじ込み可能な少なくとも1本の突起部が突き出た埋設物であって、前記突起部は、前記設定孔の裏面に設けられたナット部にねじ止め可能な長さを備えており、脱型するときに働く力によって少なくとも1部が破壊または分断可能であることを特徴とする埋設物。 【請求項7】請求項5において、前記突起部は、次の該突起部が前記設定孔に挿入されたときに分断された該突起部が前記設定孔から押し出されることを特徴とする埋設物。 【請求項8】請求項5において、前記突起部は、先端に向かって広がった部分を備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項9】請求項5または6において、前記耐久性型枠に面する設定面を有し、この設定面の周囲に前記耐久性型枠の表面に合わせて変形可能なシールを備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項10】請求項5または6において、前記突起部は樹脂製であることを特徴とする埋設物。 【請求項11】請求項5または6において、前記突起部と前記インサートまたはインサート保持具の接続部分の断面積が前記突起部の断面積よりも小さいことを特徴とする埋設物。 【請求項12】請求項5または6において、前記突起部は、前記設定孔に合わせて略弾性的に変形する柱部分を備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項13】請求項5または6において、前記突起部は、半径方向に延びた複数のリブを備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項14】請求項5または6において、前記突起部は、先端が非尖塔状に細くなっていることを特徴とする埋設物。 【請求項15】請求項5において、前記突起部は、前記設定孔と嵌合する柱部分を備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項16】請求項5において、前記突起部は前記耐久性型枠を貫通した後に広がる貫通部分を備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項17】請求項5において、前記突起部は前記耐久性型枠を貫通し耐久性型枠の裏面に引っ掛かることを特徴とする埋設物。 【請求項18】請求項5において、少なくとも2つの前記突起部を有し、これらの突起部は、前記設定孔を貫通し、前記耐久性型枠の裏面に沿って外側に延びる部分を備えていることを特徴とする埋設物。 【請求項19】請求項5または6において、前記突起部は中空であることを特徴とする埋設物。 【請求項20】請求項6において、前記突起部はねじ込まれる雄ねじが形成されていることを特徴とする埋設物。 【請求項21】請求項6において、前記突起部をねじ込む際に雄ねじが切られることを特徴とする埋設物。 【請求顔22】請求項5または6に記載の埋設物が埋設されたコンクリート製品であって、前記突起部の少なくとも1部が破壊または分断されているコンクリート製品。 【語義項23】請求項22において、前記埋設物が、前記耐久性型枠を滑らせるように脱型した面に埋設されていることを特徴とするコンクリート製品。」 3-2.特許異議申立ての理由の概要 (1)申立人Aの申立ての理由の概要 (1-1)本件請求項1~6、9、10、11、19、20、22、23に係る発明は甲第1~5号証により当業者が容易に発明できたものであるから、本件請求項1~6、9、10、11、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであり取り消されるべきものである。 (1-2)本件特許の出願日の及は認められず、本件請求項1~6、9、10、11、19、20、22、23に係る発明は甲第6号証と同一であるから、本件請求項1~6、9、10、11、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号に違反してされたものであり取り消されるべきものである。 (1-3)本件明細書の記載は記載不備であるから、本件請求項1~6、9、10、11、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第36条第4~6項に違反してされたものであり取り消されるべきものである。 (2)申立人Bの申立ての理由の概要 (2-1)本件請求項1、5に係る発明は甲第1、2号証により、本件請求項2、4、6、20に係る発明は甲第2~4号証により、本件請求項3に係る発明は甲第1、5号証により、本件請求項9~11、19、22、23に係る発明は甲第1~4号証により、それぞれ進歩性が否定される。 したがって、本件請求項1~6、9~11、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (2-2)本件請求項1~6、9~11、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第36条第4、5項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。 (3)申立人Cの申立ての理由の概要 (3-1)本件請求項1~23に係る発明の特許は甲第1~3号証、甲第4号証(甲第4号証は、本件特許が分割要件を備えていないため出願日が繰り下がるため、本件出願日前に頒布された文献である)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~23に係る発明の特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであり取り消されるべきものである。 (3-2)本件請求項1~6に係る発明の特許は特許法第36条第4~6項に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。 3-3.先の取消理由通知の概要 先の取消理由通知の概要は以下のとおりである。 (1)理由1 本件の出願日のそ及は認められず、本件出願日は、実際の出願日である平成10年7月17日と認められる。 そして、本件請求項1~23に係る発明は原出願の公開公報である引例1(特開平7-232314号公報)に記載されていると云える。 したがって、本件請求項1~23に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (2)理由2 本件請求項1~23に係る発明は、引例2~9に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、本件請求項1~23に係る発明の特許は特許法第29条第2項に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (3) 理由3 本件特許明細書は記載不備であるものと認められるので、本件請求項1~23に係る発明の特許は特許法第36条第4~6項に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 3-4.上記理由1について 本件の請求項1には、「インサートまたはインサート保持具を耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、・・・」と記載されており、これは「インサートを耐久性型枠に設定する構成」と「インサート保持具を耐久性型枠に設定する構成」とが選択的に記載されていると云える。 しかしながら、分割前の原出願(特願平6-307822号)の出願当初の明細書及び図面(特開平7-232314号公報参照)では、「【課題を解決するための手段】本発明のインサート保持具は、少なくとも一方の端が開口と中空のインサートを型枠に装着するものであって、インサートの開口に挿入可能なプラグ部を備え、このプラグ部の型枠に面した側を略平担は設定面としている。さらに、この設定面から少なくとも1本の突起が突き出ており、この突起を型枠に設けた設定孔に装着することによって、インサートが設定、すなわち、インサートが型枠の所定の位置に装着できるようにしている。」(特開平7-232314号公報第4頁右欄第17~25行)と記載されているように、インサートを、インサート保持具を介してではあるが、型枠に装着することは記載されているものと云える。 なお、優先権主張の元になる特願平5-353343号の出願当初の明細書及び図面には「【課題を解決するための手段】本発明に係るインサート保持具は、封止部をインサートの開口側へねじ込んでインサートに対し固定でき、さらに、この封止部の表面から突出した突起を型枠に用意された穴にねじ込むことにより、インサートを型枠に設定できるタイプのものである。」(明細書段落【0010】)と記載され、また同じく優先権主張の元になる特願平5-343703号の出願当初の明細書及び図面には「【課題を解決するための手段】本発明に係るインサート保持具は、インサートの開口側を外周側から支持するのではなく、インサートの開口側へ密着して挿入でき、インサートの開口側を内側から支持する支持体を用い、この支持体に開口側を閉塞できる封止部を設けるようにしている。そして、支持体から突出し、型枠に用意した穴に合わせて変形可能な断面を持つ突起、あるいは、型枠を貫通した後に広がる形状の突起を用いてインサートを型枠に設定できるようにしている。」(明細書段落【0009】)と記載され、それぞれインサートを、インサート保持具を介してではあるが、型枠に装着することは記載されているものと云える。 以上のとおり、原出願には、インサートを、インサート保持具を介してではあるが、型枠に装着することは記載されているものと云え、それを「インサートを耐久性型枠に設定」と表現することは、後述するように記載上の問題はあるものの、原出願の出願当初の明細書及び図面に記載されていない「インサートのみを耐久性型枠に設定」という別発明が記載されているとまですることはできない。 したがって、本件特許の出願日のそ及は認められる。 3-5.理由2について (1)引用刊行物の記載内容 引例2:実公昭50-38183号公報 上記2-1.(2)で述べた刊行物4と同じ。 引例3:実願昭56-23675号(実開昭57-136712号)のマイクロフィルム 上記2-1.(2)で述べた刊行物3と同じ。 引例4:実願昭49-130181号(実開昭51-55868号)のマイクロフィルム 上記2-1.(2)で述べた刊行物5と同じ。 引例5:実願昭58-144769号(実開昭60-51014号)のマイクロフィルム 上記2-1.(2)で述べた刊行物6と同じ。 引例6:特開昭61-169543号公報 上記2-1.(2)で述べた刊行物7と同じ。 引例7:特開昭61-177208号公報 上記2-1.(2)で述べた刊行物8と同じ。 引例8:実公昭50-43161号公報 上記2-1.(2)で述べた刊行物2と同じ。 引例9:実公昭59-3863号公報 上記2-1.(2)で述べた刊行物1と同じ。 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について 上記2-1.(3)で述べたように、上記引例9(上記刊行物1)には、「インサートしようとする金物を嵌合支持させるフランジ付の筒体と、この筒体のフランジ側に連設した取付ねじとからなるインサート金物保持具を型枠の所定の螺孔に繰り返して設定する際に、取付ねじを型枠に設けた螺孔へ螺合させ、脱型時に、金物と共に製品にインサートされた筒体と、型枠にねじ込まれた取付ねじとが反対方向に引張られ、インサート金物保持具は取付ねじと筒体との堺部に周設してある切込みの位置からちぎれる様に切れるコンクリート製品の製造方法。」という発明(以下、引例9発明という)が記載されていると云える。 そこで、本件発明1と引例9発明とを対比すると、引例9発明の「インサート金物保持具」、「取付ねじ」、「型枠」、「螺孔」は、本件発明1の「インサート保持具」、「突起部」、「耐久性型枠」、「設定孔」にそれぞれ相当するから、両者は、 「インサート保持具が装着されたインサートを耐久性型枠の所定の位置に繰り返して設定する際に、それらから耐久性型枠側に突き出た突起部を耐久性型枠に設けられた設定孔に装着し、脱型する際にコンクリート製品と耐久性型枠の間に働く力によって突起部を分断することを特徴とするコンクリート製品の製造方法」で一致し、次の点で一応相違していると云える。 ・本件発明1では、裏面に鞘管が設けられた耐久性型枠であるのに対して、引例9発明では、その点が記載されていない点 そこでこの相違点について検討すると、上記2-1.(3)で述べたように、引例2(上記刊行物4)には支承ブロック、引例4(上記刊行物5)にはカラーが記載されており、従来からインサート保持具を型枠だけで保持するのではなく、型枠裏面に設けた本件発明9の鞘管に相当する支承ブロック、カラーで保持することが普通に行われているものと云える。 以上のとおりであるから、本件発明1は、引例2、4、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1において、型枠の裏面の設定孔に本件発明1の鞘管の代わりにナット部を設けたものである。 引例5(上記刊行物6)には、雌ねじ金具2を型枠に溶接されており、インサート保持具に相当する雄ねじ部を保持しており、引例6、7(上記刊行物7、8)には、型枠にナット部品が溶接されており、インサート保持具に相当する金具取付ボルトを保持している。 してみると、従来からインサート保持具を型枠だけで保持するのではなく、型枠裏面に設けた本件発明2のナット部に相当する雌ねじ金具、ナットで保持することが普通に行われているものと云える。 したがって、本件発明2は、引例5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1のコンクリート製品の製造方法に使用する耐久性型枠の発明と云え、かつ耐久性型枠には、耐久性型枠に滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分を有している。 まず、上記(2-1)で述べたように、本件発明1が当業者が容易に発明をすることができる以上、インサート保持具を設定する耐久性型枠も格別なものとは認めらない。また、滑らせるように脱型する部分について云えば、インサート保持具を、脱型時にコンクリート製品の中に残る部分と、型枠に残る部分とに分離する際に、剪断力を加えることは、引例8、3(上記刊行物2、3)から明らかなように本件出願前公知の事項である。 ここで、剪断力とは、一般に、「(1)物体を断ち切ろうとする力。(2)物体内の任意の面に大きさが等しく、方向が相反するように面に沿って作用する力」(必要ならば、三省堂編集所編「広辞林<第五版>」株式会社三省堂第1141頁(1982年9月1日)参照)とされているから、引例8、3の「剪断力を加える」という記載から、耐久性型枠に滑らせるように脱型する部分を有するようにすることは当業者が容易に想到し得るものである。 また、旋回して取り外す部分について云えば、引例9においても取付ねじが「ちぎれる様」(上記(b))にするのであるから、ちぎれる様にするために型枠を旋回して取り外すことは当業者が容易に想到し得るものである。 なお、付着力については上記(k)に「確実に保持される」とされているように鞘管を設ける以上、当然のことである。 したがって、本件発明3は、引例2、4、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-4)本件発明4について 本件発明4は、本件発明2のコンクリート製品の製造方法に使用する耐久性型枠の発明と云え、耐久性型枠に滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分を有している。 ここで、耐久性型枠に滑らせるように脱型する部分または旋回して取り外す部分を有することは、上記(2-3)で述べたように当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、本件発明4は、引例3、5~9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1のコンクリート製品の製造方法に使用する埋設物の発明と云え、突起部は設定孔の裏面に設けられた鞘管と接触し付着力が得られる長さを備えているが、付着力のために鞘管を設ける以上、本件発明5において突起部が付着力が得られる長さを備えるようにすることは当業者が容易になしうることである。 したがって、本件発明5は、引例2、4、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-6)本件発明6について 本件発明6は、本件発明2のコンクリート製品の製造方法に使用する埋設物の発明と云え、突起部は設定孔の裏面に設けられたナット部にねじ止め可能な長さを備えているが、ねじ止めのためにナット部を設ける以上、本件発明6において突起部は設定孔の裏面に設けられたナット部にねじ止め可能な長さを備えていることは当業者が容易になしうることである。 したがって、本件発明6は、引例5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-7)本件発明7について 本件発明7は、本件発明5をさらに「突起部は、次の突起部が設定孔に挿入されたときに分断された突起部が設定孔から押し出される」と限定したものであるが、突起部が分断された突起部が設定孔から押し出されることは単なる設計的事項であると云える。 したがって、本件発明7は、引例2、4、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-8)本件発明9について 本件発明9は、本件発明5、6をさらに「耐久性型枠に面する設定面を有し、この設定面の周囲に耐久性型枠の表面に合わせて変形可能なシールを備えている」と限定したものであるが、上記引例9のフランジは設定面と云えるし、上記(p)で「ゴム等のリング状の漏れ止め部材」と記載されているように、変形可能なシールを設けることは普通に行われていることであるから、本件発明9は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-9)本件発明10について 本件発明10は、本件発明5、6をさらに「突起部は樹脂製である」と限定したものである。 引例9には、インサート金物保持具がプラスチック製であることが記載されているように、インサート保持具を樹脂製とすることは普通に行われていることである。 したがって、本件発明10は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-10)本件発明11について 本件発明11は、本件発明5、6をさらに「突起部とインサート保持具の接続部分の断面積が突起部の断面積よりも小さい」と限定したものであるが、突起部とインサート保持具の接続部分の断面積が突起部の断面積より小さくすることは単なる設計的事項であると云える。 したがって、本件発明11は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-11)本件発明12について 本件発明12は、本件発明5、6をさらに「突起部は、設定孔に合わせて略弾性的に変形する柱部分を備えている」と限定したものであるが、上記(2-9)で述べたように樹脂製であるから略弾性的にすることも当業者が容易になしえることである。 したがって、本件発明12は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-12)本件発明14について 本件発明14は、本件発明5、6をさらに「突起部は、先端が非尖塔状に細くなっている」と限定したものであるが、上記引例8(上記刊行物2)の第1、2、3図には突起部の先端が非尖塔状に細くなっていることが示されている。 したがって、本件発明14は、引例2、4、5~9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-13)本件発明15について 本件発明15は、本件発明5をさらに「突起部は、設定孔と嵌合する柱部分を備えている」と限定したものであるが、一般にインサート保持具を設定孔に取付ける際に型枠に嵌合する部分があるのは当然のことであり、それを柱部分とすることも格別なこととは認められない。 したがって、本件発明15は、引例2、4、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-14)本件発明19について 本件発明19は、本件発明5、6をさらに「突起部は中空である」と限定したものであるが、上記引例9(上記刊行物1)第3、4、5図には突起部が中空であることが示されている。 したがって、本件発明19は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-15)本件発明20について 本件発明20は、本件発明6をさらに「突起部はねじ込まれる雄ねじが形成されている」と限定したものであるが、上記引例9(上記刊行物1)の取付ねじには雄ねじが形成されている。 したがって、本件発明20は、引例5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-16)本件発明22について 本件発明22は、本件発明5、6の埋設物が埋設されたコンクリート製品であって、「突起部の少なくとも1部が破壊または分断されている」と限定したものであるが、引例9(上記刊行物1)においても製造されたコンクリート製品は取付ねじが分断されている。 したがって、本件発明22は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (2-17)本件発明23について 本件発明23は、本件発明22をさらに「埋設物が、耐久性型枠を滑らせるように脱型した面に埋設されている」と限定したものであるが、埋設物の設定箇所は当業者が必要に応じて選定する単なる設計的事項であるし、また上記(2-4)で述べたように、型枠を滑らせるように脱型することは当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、本件発明23は、引例2、4、5~7、9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云える。 (3)本件発明8、13、16~18、21について ここでは、取消理由通知についての判断で述べていない本件発明8、13、16~18、21についての各申立人の特許法第29条第2項違反の主張について述べる。 申立人A、Bは上記請求項に係る発明について特許法第29条第2項違反の主張をしていない。 申立人Cの主張について検討すると、甲第4号証(特開平7-232314号公報)は本件出願日前に頒布された文献でないので、甲第1~3号証について検討する。 甲第1号証:実公昭50-43161号公報 上記引例8と同じ。 甲第2号証:実公昭50-38183号公報 上記引例2と同じ。 甲第3号証:実公昭59-3863号公報 上記引例9と同じ。 (3-1)本件発明8について 本件発明8は、本件発明5をさらに「突起部は、先端に向かって広がった部分を備えている」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明8は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (3-2)本件発明13について 本件発明13は、本件発明5、6をさらに「突起部は半径方向に延びた複数のリブを備えている」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明13は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (3-3)本件発明16について 本件発明16は、本件発明5をさらに「突起部は耐久性型枠を貫通した後に広がる貫通部分を備えている」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明16は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (3-4)本件発明17について 本件発明17は、本件発明5をさらに「突起部は耐久性型枠を貫通し耐久性型枠の裏面に引っ掛かる」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明17は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (3-5)本件発明18について 本件発明18は、本件発明5をさらに「少なくとも2つの突起部を有し、これらの突起部は、設定孔を貫通し、耐久性型枠の裏面に沿って外側に延びる部分を備えている」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明18は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (3-6)本件発明21について 本件発明21は、本件発明6をさらに「突起部をねじ込む際に雄ねじが切られる」と限定したものであるが、この点については甲第1~3号証には記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明21は当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 3-6.上記理由3について 上記3-4.で述べたように、本件の請求項1には、「インサートまたはインサート保持具を耐久性型枠の所定の位置に繰り返し設定する際に、・・・」と記載されており、「インサートを耐久性型枠に設定する構成」と「インサート保持具を耐久性型枠に設定する構成」とが選択的に記載されていると云える。 この「インサートを耐久性型枠に設定する構成」については、明細書に具体的に記載されていない、インサートのみを直接、型枠に装着することも含まれている記載なので記載不備と認められる。そしてこの「インサートを耐久性型枠に設定する構成」は本件請求項2~23に係る発明にも含まれているから、本件請求項1~23の記載は記載不備であると云える。 4.むすび 以上のとおり、本件請求項1~7、9~12、14、15、19、20、22、23に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定により、本件請求項1~23に係る発明の特許は特許法第36条第4、5項の規定により、それぞれ特許を受けることができない。 したがって、本件請求項1~23に係る発明の特許は、拒絶をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-09-17 |
出願番号 | 特願平10-202561 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
ZB
(B28B)
P 1 651・ 534- ZB (B28B) P 1 651・ 121- ZB (B28B) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 徳永 英男 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 野田 直人 |
登録日 | 1999-05-21 |
登録番号 | 特許第2930940号(P2930940) |
権利者 | 株式会社オーイケ |
発明の名称 | コンクリート製品の製造方法、耐久性型枠および埋設物 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |
代理人 | 日比 紀彦 |
代理人 | 渡辺 彰 |
代理人 | 岸本 瑛之助 |
代理人 | 岸本 守一 |
代理人 | 日比 紀彦 |
代理人 | 福島 英一 |
代理人 | 今井 彰 |
代理人 | 渡辺 彰 |
代理人 | 岸本 守一 |