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審決分類 審判 訂正 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正する A61K
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61K
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61K
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61K
管理番号 1103518
審判番号 訂正2004-39142  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-05-09 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-06-18 
確定日 2004-08-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1996397号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1996397号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第1996397号発明(平成1年9月14日特許出願、平成7年12月8日設定登録)の明細書を、請求書に添付した訂正明細書のとおり、即ち下記のとおりに訂正することを求めるものである。

(訂正事項1)
請求項1において、「ある、」とあるを「あって、当該前濃縮物がシクロスポリン5〜25重量%、親水相成分0.5〜90重量%、親油相成分0.5〜90重量%および親水性界面活性剤0.5〜90重量%(重量%は組成物の全量に基づく)を含有し、シクロスポリン、親水相成分、親油相成分および親水性界面活性剤の相対的比率が当該前濃縮物をその1重量部に対し5重量部の水で希釈したとき、平均粒子径が1,500Å未満である水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成するものである、経口投与用」と訂正する。
(訂正事項2)
請求項2において、「親水相成分」のまえに「有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン前濃縮物であって、」を挿入し、「請求項1に記載の」とあるを 「医薬」と訂正する。
(3訂正事項3)
請求項3において、「更に、」のまえに「有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン前濃縮物であって、」を挿入し、「請求項1に記載の」とあるを「医薬」と訂正する。
(訂正事項4)
もとの請求項12を削除する。
(訂正事項5)
もとの請求項13(訂正後の請求項12)において、「12」とあるを「1〜11」と訂正する。
(訂正事項6)
もとの請求項14(訂正後の請求項13)において、「13」とあるを「12」と訂正する。
(訂正事項7)
もとの請求項15(訂正後の請求項14)において、「12〜14」とあるを「1〜13」と訂正する。
(訂正事項8)
もとの請求項16(訂正後の請求項15)において、「12〜15」とあるを「1〜14」と訂正する。
(訂正事項9)
もとの請求項17(訂正後の請求項16)において、「16」とあるを「15」と訂正する。
(訂正事項10)
もとの請求項18(訂正後の請求項17)において、「12〜17」とあるを「1〜16」と訂正する。
(訂正事項11)
もとの請求項19(訂正後の請求項18)において、「12〜18」とあるを「1〜17」と訂正する。
(訂正事項12)
もとの請求項20(訂正後の請求項19)において、「12〜18」とあるを「1〜17」と訂正する。
(訂正事項13)
もとの請求項21(訂正後の請求項20)において、「12〜20」とあるを「1〜19と訂正する。
(訂正事項14)
もとの請求項22(訂正後の請求項21)において、「1〜11」とあるを「2〜11」と訂正する。
(訂正事項15)
もとの請求項23(訂正後の請求項22)において、「22」とあるを「21」と訂正する。
(訂正事項16)
もとの請求項24(訂正後の請求項23)において、「1〜23」とあるを「1〜22」と訂正する。
(訂正事項17)
もとの請求項25(訂正後の請求項24)において、「1〜23」とあるを「1〜22」と訂正する。
(訂正事項18)
もとの請求項26を削除する。
(訂正事項19)
もとの請求項27を削除する。
(訂正事項20)
もとの請求項28を削除する。
(訂正事項21)
もとの請求項29を削除する。
(訂正事項22)
もとの請求項31(訂正後の請求項26)において、「30」とあるを「25」と訂正する。
(訂正事項23)
もとの請求項32(訂正後の請求項27)において、「30または31」とあるを「25または26」と訂正する。
(訂正事項24)
もとの請求項33(訂正後の請求項28)において、「32」とあるを「27」と訂正する。
(訂正事項25)
もとの請求項34(訂正後の請求項29)において、「30」とあるを「25」と訂正する。
(訂正事項26)
もとの請求項35(訂正後の請求項30)において、「30」とあるを「25」と訂正する。
(訂正事項27)
もとの請求項36(訂正後の請求項31)において、「35」とあるを「30」と訂正する。
(訂正事項28)
もとの請求項37(訂正後の請求項32)において、「36」とあるを「31」と訂正する。
(訂正事項29)
もとの請求項38(訂正後の請求項33)において、「30〜37」とあるを「25〜32」と訂正する。
(訂正事項30)
もとの請求項39(訂正後の請求項34)において、「30〜35」とあるを「25〜30」と訂正する。
(訂正事項31)
もとの請求項40(訂正後の請求項35)において、「30〜39」とあるを「25〜34」と訂正する。
(訂正事項32)
もとの請求項41(訂正後の請求項36)において、「40」とあるを「35」と訂正する。
(訂正事項33)
もとの請求項42(訂正後の請求項37)において、「41」とあるを「36」と訂正する。
(訂正事項34)
もとの請求項43(訂正後の請求項38)において、「40〜42」とあるを「35〜37」と訂正する。
(訂正事項35)
もとの請求項44(訂正後の請求項39)において、「40〜43」とあるを「35〜38」と訂正する。
(訂正事項36)
もとの請求項45(訂正後の請求項40)において、「44」とあるを「39」と訂正する。
(訂正事項37)
もとの請求項46(訂正後の請求項41)において、「40〜45」とあるを「35〜40」と訂正する。
(訂正事項38)
もとの請求項47(訂正後の請求項42)において、「40〜46」とあるを 「35〜41」と訂正する。
(訂正事項39)
もとの請求項48(訂正後の請求項43)において、「40〜46」とあるを「35〜41」と訂正する。
(訂正事項40)
もとの請求項49(訂正後の請求項44)において、「40〜48」とあるを「35〜43」と訂正する。
(訂正事項41)
もとの請求項50(訂正後の請求項45)において、「30〜39」とあるを「25〜34」と訂正する。
(訂正事項42)
もとの請求項51(訂正後の請求項46)において、「50」とあるを「45」と訂正する。
(訂正事項43)
もとの請求項52(訂正後の請求項47)において、「30〜51」とあるを「25〜46」と訂正する。
(訂正事項44)
もとの請求項53(訂正後の請求項48)において、「30〜51」とあるを「25〜46」と訂正する。
(訂正事項45)
もとの請求項54(訂正後の請求項49)において、「30または31」とあるを「25または26」と訂正する。
(訂正事項46)
もとの請求項55(訂正後の請求項50)において、「54」とあるを「49」と訂正する。
(訂正事項47)
もとの請求項56(訂正後の請求項51)において、「54」とあるを「49」と訂正する。

もとの請求項30および57については、本文中には何らの訂正もないが、それぞれ訂正後の請求項25および52として項数のみを訂正するものである。

2.当審の判断

2-1 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

(ア)訂正事項1について

訂正事項1のうち、「水中油型ミクロエマルジョンの前濃縮物」を「シクロスポリン5〜25重量%、親水相成分0.5〜90重量%、親油相成分0.5〜90重量%および親水性界面活性剤0.5〜90重量%(重量%は組成物の全量に基づく)を含有」するとしてその成分と含有率の範囲を限定し、「シクロスポリン、親水相成分、親油相成分および親水性界面活性剤の相対的比率が当該前濃縮物をその1重量部に対し5重量部の水で希釈したとき、平均粒子径が1,500Å未満である水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成するもの」として成分の相対比率を限定する訂正、及び医薬組成物を「経口投与用」のものに限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正に関する個別の要素については、本件特許明細書(以下記載箇所は対応する特公平7-25690号公報中の箇所で表示する。)中の特に次に示す箇所にその訂正の根拠がみられる。
すなわち、シクロスポリン含有量範囲5〜25重量%については公報27欄第3行に、「ミクロエマルジョン前濃縮物」が親水相成分、親油相成分、親水性界面活性剤成分からなることは、公報13欄13行〜17行、14欄1行〜19欄17行に、また、それらの含有量が0.5〜90重量%であることについては26欄32〜43行に記載されている。
さらに、相対的比率の決定に当たって採用する希釈率、ミクロエマルジョンが自然発生的に形成され、平均粒子サイズ1,500Å未満であることに関しては公報12欄7〜20行、同欄46〜50行、13欄29〜50行、28欄1〜17行に記載されている。
経口投与用とする点については、公報26欄45行〜27欄4行の記載およびもとの請求項12に記載されている。
また、本件明細書には実施例1、2に経口用量形態として本件訂正で特定されたシクロスポリン、親水性相成分、親油相成分及び親水性界面活性剤相成分の4成分を含むミクロエマルジョン前濃縮物である1.1〜2.3の13例の経口用量形態であるカプセル剤の処方が示され、実施例1(1.1、1.2及び1.6)、実施例2(2.1及び2.2)については犬における生物学的利用能の実験、実施例1の1.1の処方については臨床試験が行われ、その効果の裏付けがなされている。
上記処方については相対比率を決定するにあたって実際に採用した希釈率や形成されたミクロエマルジョンの平均粒子サイズの記載はないが、上述の通り本件明細書(13欄36〜38行)に一般的な希釈率として5倍量の例示があるほか、経口投与時に医薬組成物1重量部に対して5重量部という水の量は、体内において接触する水の量としては十分に想定可能な量であり、1,500Å未満という平均粒子サイズもミクロエマルジョンとして通常のものであるから、これらを採用して相対比率を決定することは本件明細書の記載から自明の範囲のものである。
したがって、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)訂正事項2、3について

訂正前の請求項2、3は請求項1の従属項であったが、これをそのまま維持したのでは、その技術的範囲が訂正前の請求項1に従属させて理解すべきものであるのか、訂正後の請求項1に従属させて理解すべきものであるのか明らかではないため、訂正前の請求項2に訂正前の請求項1の記載を挿入することにより、請求項2の技術的範囲を明らかにしたものである。従って、訂正事項2、3は、特許法第126条第1項第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)訂正事項4及び18〜21について

これらの訂正は、もとの請求項12及び26〜29を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、減縮を目的とするものではあるが、請求項全体が削除された結果、独立特許要件を検討すべき発明は存在しない。

(エ)訂正事頃5〜13、17及び22〜47について

これらの訂正は、上記削除に伴い、もとの請求項13〜25及び31〜56をそのまま維持したのでは従属関係が不明瞭となるので、それらの項数を整理するものである。従って、訂正事項5〜17及び22〜47は、いずれも特許法第126条第1項第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(オ)訂正事項14について

この訂正は、請求項1のシクロスポリンの濃度の限定及び請求項12の削除に伴い、もとの請求項22をそのまま維持したのでは従属関係が不明瞭となり不整合がおこるので、引用する項数を整理するものである。従って、訂正事項14は特許法第126条第1項第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

なお、請求項の削除に伴い訂正前の請求項13以下の項番号を繰り上げる訂正は、不明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かかる訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-2 独立特許要件

訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第126条第1項ただし書き第1号に該当するから、訂正後における発明(以下訂正発明という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでなくてはならない。
ところで、本件特許第1996397号については、平成14年10月31日に特許無効審判請求(無効2002-35474号)がなされ、訂正前の請求項1、10、12〜15、18並びに20〜29に係る発明に関し、平成15年11月27日付けで特許を無効とする審決がなされたが、この審決を不服として、東京高等裁判所に訴え(平成16年行(ケ)第136号)が提起されている。
本件訂正審判は、当該訴え提起後、特許法第126条第2項に規定する期間内にされたものである。そこで、以下においては上記無効審判で訂正前の請求項1の無効理由とされた特許法第36条3項、及び同条4項1号及び2号の不備が訂正後において存在するか否か検討する。

本件訂正後の請求項1には、シクロスポリンを含有する水中油型(oil-in-water)のミクロエマルジョン前濃縮物である医薬組成物について、それを構成する成分の種類と含有量の範囲及びそれらの成分の相対比率、さらにそれが経口投与用であることが記載されている。相対比率については「シクロスポリン、親水相成分、親油相成分および親水性界面活性剤の相対的比率が当該前濃縮物をその1重量部に対し5重量部の水で希釈したとき、平均粒子径が1,500Å未満である水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成するもの」と機能的に表現されているものの、この記載によりシクロスポリン濃度や各相の成分を選択した後の相対比率の決定方法が特定されるから、訂正後の請求項1は、組成物の構成を特定するために欠くことのできない事項が明確に記載されている。
そして、本件訂正明細書には、組成物を構成する各相の成分(親水相成分、親油相成分、親水性界面活性剤成分)についてその具体的成分名が列挙されており、また、シクロスポリンと各相の成分の相対比率は、上記濃度範囲内において種々の相対比率の組成物を作成し、その組成物1重量部に対し5重量部の水で希釈したとき、平均粒子径が1,500Å未満である水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成することをもって決定される(公報第29欄及び第1、2図参照)ものと理解することができる。
本件訂正発明は経口投与用の組成物であり、吸収/生物学的利用能レベルの向上、および吸収/生物学的利用能レベルにおける変動低減化を合わせもつ有効なシクロスポリン投与を可能にすること(第11欄11〜30行)がうたわれているが、本件訂正明細書におけるミクロエマルジョンの定義によれば「・・・それらの成分を接触させた時点で自然発生的・・に形成され・・」(公報12欄17行)とされ、経口投与後のシクロスポリンの血中への移行はミクロエマルジョン前濃縮物が消化管内でミクロエマルジョンに変化した後におこると解されるところ、第4図に見られるように、経口投与後速やかにシクロスポリンの血中濃度の上昇が見られることから、上記の5重量部の水での希釈によるミクロエマルジョンの形成は比較的短時間に起こるものでなくてはならないことも自明である。
そうすると、当業者はシクロスポリン含有量を選定後、各相に対応する成分の組み合わせを決定し、それらを上記含有量の範囲内で種々の相対比率で含む組成物を作成し、これらの1重量部を5重量部の水で希釈したとき短時間で1,500Å未満の平均粒子径の水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成する組成物を選定することにより、相対比率を容易に決定することが可能である。

また、本件訂正明細書には実施例1、2に経口用量形態として訂正発明におけるシクロスポリン、親水性相成分、親油相成分及び親水性界面活性剤相成分を含むミクロエマルジョン前濃縮物である1.1〜2.3の13例のカプセル剤の処方が示され、生物学的利用能の実験、臨床試験の記載があるが、上記処方の相対比率を決定するにあたって実際に採用した希釈率は不明である。しかしながら、前述の通り医薬組成物1重量部に対し5重量部という希釈率は一般的希釈率として当初から例示があり、かつ経口投与持に医薬組成物が体内において接触する水の量として十分に想定可能な量であるから、この希釈率を採用して相対比率を決定した場合、実施例において確認されたと同様の生物学的利用能の向上が期待できることは当業者が容易に理解しうることである。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者が訂正発明を実施することができる程度にその発明の目的、構成、効果が記載されている。
以上の通り、本件訂正発明に関して特許法36条3項、4項1、2号の不備はない。

また、他に独立特許要件を否定すべき理由を発見しない。
したがって、本件訂正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

3、むすび

以上のとおりであるから、本審判の請求は、特許法第126条第1項第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シクロスポリン含有医薬組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油(oil-in-water)型のミクロエマルジョン前濃縮物であって、当該前濃縮物がシクロスポリン5〜25重量%、親水相成分0.5〜90重量%、親油相成分0.5〜90重量%および親水性界面活性剤0.5〜90重量%(重量%は組成物の全量に基づく)を含有し、シクロスポリン、親水相成分、親油相成分および親水性界面活性剤の相対的比率が当該前濃縮物をその1重量部に対し5重量部の水で希釈したとき、平均粒子径が1,500Å未満である水中油型ミクロエマルジョンを自然発生的に形成するものである、経口投与用医薬組成物。
【請求項2】 有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン前濃縮物であって、親水相成分として1,2-プロピレングリコールを含有する、医薬組成物。
【請求項3】 有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン前濃縮物であって、更に、(1)医薬的に許容されるC1-5アルキルジ-または部分エーテルを含む親水相成分、(2)親油相成分、および(3)界面活性剤を含有する、医薬組成物。
【請求項4】 親水相成分が更にC1-5アルカノールを含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】 C1-5アルカノールがエタノールである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】 親油相成分が脂肪酸トリグリセリドを含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】 界面活性剤がポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化植物油を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】 界面活性剤が共界面活性剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】 界面活性剤としてポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化植物油、共界面活性剤としてモノグリセリドを含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】 水と接触させたとき、平均粒子径<1,000Åのミクロエマルジョンを提供することが出来る、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】 粘度上昇剤を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】 単位用量形態である、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】 ゼラチンカプセルに封入されている、請求項12記載の組成物。
【請求項14】 シクロスポリン5〜20重量%を含有する、請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】 1,2-プロピレングリコールを全組成物の3〜45重量%の割合で含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】 シクロスポリン対1,2-プロピレングリコールの重量比が1:0.5〜1:3である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】 親油相成分が全組成物の2〜45重量%の割合で存在する、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】 親油相成分と1,2-プロピレングリコールの重量比が1:0.15〜1:6である、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】 界面活性剤が全組成物の20〜90重量%の割合で存在する、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】 シクロスポリン対界面活性剤の重量比が1:1〜1:10である、請求項1〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】 シクロスポリンが全組成物の0.05〜15重量%の割合で存在する、経口投与または局所投与に適した、請求項2〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】 シクロスポリン0.1〜10重量%を含有する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】 シクロスポリンが「シクロスポリン(Ciclosporin)」である、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】 シクロスポリンが「[Nva]2-シクロスポリン([Nva]2-Ciclosporin)」である、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】 有効成分としてシクロスポリンを含有し、更に、(1)1,2-プロピレングリコールを含む親水相成分、(2)親油相成分、および(3)界面活性剤を含有するミクロエマルジョン前濃縮物である、医薬組成物。
【請求項26】 前濃縮物が水中油型のものである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】 親水相成分が更にC1-5アルカノールを含む、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項28】 C1-5アルカノールがエタノールである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】 親油相成分が脂肪酸トリグリセリドを含有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】 界面活性剤がポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化植物油を含有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】 界面活性剤が共界面活性剤を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】 界面活性剤としてポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化植物油、共界面活性剤としてモノグリセリドを含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】 水と接触させたとき、平均粒子径<1,000Åのミクロエマルジョンを提供することが出来る、請求項25〜32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】 粘度上昇剤を含む、請求項25〜30のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】 経口投与に適した、請求項25〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】 単位用量形態である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】 ゼラチンカプセルに封入されている、請求項36記載の組成物。
【請求項38】 シクロスポリン5〜20重量%を含有する、請求項35〜37のいずれかに記載の組成物。
【請求項39】 1,2-プロピレングリコールを全組成物の3〜45重量%の割合で含有する、請求項35〜38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】 シクロスポリン対1,2-プロピレングリコールの重量比が1:0.5〜1:3である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】 親油相成分が全組成物の2〜45重量%の割合で存在する、請求項35〜40のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】 親油相成分と1,2-プロピレングリコールの重量比が1:0.15〜1:6である、請求項35〜41のいずれかに記載の組成物。
【請求項43】 界面活性剤が全組成物の20〜90重量%の割合で存在する、請求項35〜42のいずれかに記載の組成物。
【請求項44】 シクロスポリン対界面活性剤の重量比が1:1〜1:10である、請求項35〜44のいずれかに記載の組成物。
【請求項45】 シクロスポリンが全組成物の0.05〜15重量%の割合で存在する、経口投与または局所投与に適した、請求項25〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】 シクロスポリン0.1〜10重量%を含有する、請求項45記載の組成物。
【請求項47】 シクロスポリンが「シクロスポリン(Ciclosporin)」である、請求項25〜46のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】 シクロスポリンが「[Nva]2-シクロスポリン([Nva]2-Ciclosporin)」である、請求項25〜46のいずれかに記載の組成物。
【請求項49】 請求項25または26に記載の前濃縮物を水と共に混合して含有する、ミクロエマルジョン形態の医薬組成物。
【請求項50】 シクロスポリンが「シクロスポリン(Ciclosporin)」である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】 シクロスポリンが「[Nva]2-シクロスポリン([Nva]2-Ciclosporin)」である、請求項49に記載の組成物。
【請求項52】 有効成分としてシクロスポリン(Ciclosporin)または[Nva]2-シクロスポリン([Nva]2-Ciclosporin)を含有し、更に(1)医薬的に許容されるモノまたはポリオキシ(C2-12)アルカンジオールのC1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリルジ-または部分エーテルあるいは1,2-プロピレングリコールを含む親水相成分、(2)脂肪酸トリグリセリドを含む親油相成分、および(3)ポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化植物油およびモノグリセリドを含む界面活性剤を含有する、水中油型ミクロエマルジョン形態の前濃縮物であり、水と接触させたとき平均粒子径<1000Åのミクロエマルジョンを形成することが出来る、経口用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、有効成分としてシクロスポリンを含有する新規製剤に関するものである。
[従来の技術]
シクロスポリン類は、通常薬理活性、特に免疫抑制、抗炎症および/または抗寄生虫活性を有する、構造上明確な環状ポリ-N-メチル化エンデカペプチドの種類を包含する。最初に単離されたシクロスポリン類は、シクロスポリンAとしても知られ、商標名サンディムン(SANDIMMUNまたはSANDIMMUNE、商標)で市販されている、天然菌類中間代謝物「シクロスポリン」(CiclosporinまたはCyclosporine)であった。「シクロスポリン」は、式(A)で示されるシクロスポリンである。

[式中、-MeBmt-は、式(B)

(式中、-x-y-は-CH=CH-(トランス)である)
で示されるN-メチル-(4R)-4-ブタ-2E-エン-1-イル-4-メチル-(L)トレオニル残基を表す]
この種類の母体として、「シクロスポリン」はこれまで最も注目されてきた。「シクロスポリン」に関する臨床研究の主領域は、免疫抑制剤として、特に臓器移植、例えば心臓、肺、心肺同時、肝臓、腎臓、すい臓、骨髄、皮膚および角膜移植および特に異型臓器移植の受容者へのその適用に関するものであった。この分野で、「シクロスポリン」は著しい成果をおさめ、評判を得た。
同時に、様々な自己免疫疾患および炎症状態、特に自己免疫要素を含む病因を有する炎症状態、例えば関節炎(例えばリウマチ様関節炎、慢性進行性関節炎および変形性関節炎)およびリウマチ性疾患への「シクロスポリン」の適用性は高く、インビトロ、動物モデルおよび臨床試験における報告および結果は、文献に広く記載されている。「シクロスポリン」療法が提案または適用されている具体的な自己免疫疾患には、自己免疫血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、先天性形成不良性貧血および特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、硬皮症、ウェゲネル肉眼腫症、皮膚筋炎、慢性急性肝炎、重症筋無力症、乾せん、スチーブン-ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼病、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年型糖尿病(I型真性糖尿病)、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾燥性角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾せん性関節炎および糸球体腎炎(腎炎症候群を伴う場合および伴わない場合がある、例、特発性腎炎症候群または微細病変ネフロパシーを含む)がある。
研究の別の領域は、抗寄生虫、特に抗原生動物剤としての有望な適用性であり、可能な用途としては、マラリア、コクシジオイデス症および住血吸虫症の処置および、さらに最近では腫ようなどにおける抗新生物薬剤耐性の解除または撤廃用薬剤としての使用が提案されている。
シクロスポリンの最初の発見以来、広範な種類の天然シクロスポリン類が単離および同定され、全もしくは半合成手段または修飾培養技術の適用により、さらに多くの非天然シクロスポリン類が製造されている。すなわち、現在シクロスポリン類が包含する種類は多く、例えば、天然シクロスポリンAないしZ[参考、トラバー等、1、「ヘルベティカ・シミカ・アクタ](Helv.Chim.Acta.)、60、1247-1255頁(1977年)、トラバー等、2、「ヘルベティカ・シミカ・アクタ」(Helv.Chim.Acta.)、65、ナンバー162、1655-1667頁(1982年)、コーベル等、「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー」(Europ.J.Applied Microbiology and Biotechnology)、14、273-240頁(1982年)、およびフォン・バルトブルク等、「プログレス・イン・アラージー」(Progress in Allergy)、38、28-45頁(1986年)]、並びに様々な非天然シクロスポリン誘導体および人工または合成シクロスポリン類、例えばいわゆるジヒドロ-シクロスポリン類[-MeBmt-残基の-x-y-部分(上記式B)の飽和により-x-y-=-CH2-CH2-を形成]、誘導体化シクロスポリン類(例、シクロスポリン分子の3位のサルコシル残基のα-炭素原子に別の置換基が導入されている)、-MeBmt-残基が異性体形態で存在しているシクロスポリン類(例、-MeBmt-残基の6’および7’位を横切る立体配置はトランスではなくシスである)並びに変異型アミノ酸がペプチド配列内の特定位置に組み込まれているシクロスポリン類が含まれる。これらは、例えばベンガーにより開発されたシクロスポリンの完全合成製造方法の使用によるものである。例えば、トラバー1、トラバー2およびコーベル(前出)、アメリカ合衆国特許出願第4108985号、同第4210581号および同第4220641号、ヨーロッパ特許公開第0034567号および同第0056782号、国際特許公開第WO86/02080号、ベンガー1、「トランスプランテーション・プロシーディングス」(Transp.Proc.)、15、補遺、1:2230(1983年)、ベンガー2、「アンゲバンテ・ヘミー、インターナショナル・エディション」(Angew.Chem.Int.Ed.)、24、77(1985年)およびベンガー3、「プログレス・イン・ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・ナチュラル・プロダクツ」(Progress in the Chemistry of Organic Natural Products)、50、123(1986年)参照。
すなわち、現在シクロスポリン類が包含する種類は実際非常に大きく、例えば、[Thr]2-、[Val]2-、[Nva]2-および[Nva]2-[Nva]5-「シクロスポリン」(各々シクロスポリンC、D、GおよびMとしても知られている)、[3-O-アシル-MeBmt]1-「シクロスポリン」(シクロスポリンA酢酸塩としても知られている)、[ジヒドロ-MeBmt]1-[Val]2-「シクロスポリン」(ジヒドロシクロスポリンDとしても知られている)、[(D)フルオロメチル-Sar]3-「シクロスポリン」、[(D)Ser]8-「シクロスポリン」、[MeIle]11-「シクロスポリン」、[(D)MeVal]11-「シクロスポリン」(シクロスポリンBとしても知られている)、[MeAla]6-「シクロスポリン」、[(D)Pro]3-「シクロスポリン」などが含まれる。
[シクロスポリン類に関する現行慣用的命名法に従い、これらを、「シクロスポリン」(すなわちシクロスポリンA)の構造を引用して定義する。これは、まず、「シクロスポリン」に存在するものとは異なって存在するアミノ酸残基を示し(例、「[(D)Pro]3」は、問題のシクロスポリンが3位に-Sar-残基ではなく-(D)Pro-を有することを示す)、次いで「シクロスポリン」の語を適用して、「シクロスポリン」に存在するものと同一であるという残りの残基の特徴を示すことにより行なわれる。個々の残基については、1位の残基-MeBmt-または-ジヒドロMeBmt-から始めて番号を付す]
これらのさらに別のシクロスポリン類の非常に多くは、「シクロスポリン」に匹敵する医薬的有用性またはさらに特異的な有用性、例えば特に細胞増殖抑制療法に対する腫よう耐性の解除活性を呈し、治療剤としてのそれらの適用性に関する提案は文献に多く記載されている。
「シクロスポリン」は、特に臓器移植領域および自己免疫疾患の治療に非常に多大な貢献をしたにも拘わらず、さらに有効で好都合な投与手段の提供で直面する困難および報告されている望ましくない副作用の発生、特に腎臓毒性反応は、そのさらに広い使用または適用に対する明白で深刻な障害となっている。シクロスポリン類は高い疎水性を特徴とする。従来、例えばシクロスポリンの経口投与用に提案された液体製剤は、主として担体媒質としてのエタノールおよび油または類似賦形剤の使用に基づくものであった。すなわち、市販されている「シクロスポリン」飲用液は、界面活性剤としてのラブラフィルと組み合わせて担体媒質としてエタノールおよびオリーブ油を用いている。例えばアメリカ合衆国特許第4388307号参照。しかしながら、当業界において提案された飲用液および類似組成物の使用は、多様な困難を伴う。
まず、特に長期治療を目的とする場合、油または油に基づく担体を使用する必要性から、製剤は不快な味になるか、さもなくば風味が低下したものになり得る。これらの作用は、ゼラチンカプセル形態で製剤化することにより遮蔽され得る。しかしながら、溶液中にシクロスポリンを維持するためには、エタノール含有量を高く保たなければならない。例えば開いた時、例えばカプセルまたは他の形態からエタノールが蒸発した結果、シクロスポリン沈澱が現れる。それらの組成物を例えばゼラチン軟カプセル封入形態に製剤化する場合、この特定の難点により、気密性区画、例えば気密性ブリスターまたはアルミニウムホイル・ブリスター-パッケージに封入製品をパッケージすることが必要になる。一方、この方法によると製品は大きく、かつ製造コストは高くなる。前述の製剤の貯蔵特性は理想とはかけ離れている。
また、現行の経口シクロスポリン投与システムを用いて達成される生物学的利用能レベルは低く、個体間、個々の患者のタイプ間および単一個体では治療経過中の様々な時点において広範な変動を呈する。すなわち、文献での報告は、市販の「シクロスポリン」飲用液を用いる現在利用可能な療法が、約30%の平均絶対生物学的利用能しか提供せず、個々の群、例えば肝臓(比較的低い生物学的利用能)および骨髄(比較的高い生物学的利用能)移植受容者間に著しい変動が見られることを示している。対象間の生物学的利用能における報告された変動は、患者によっては1または数パーセントの範囲もあれば、90%またはそれ以上にもなる範囲で見られる。そして既に述べた通り、個体における生物学的利用能の著しい経時的変化は頻繁に観察される。
有効な免疫抑制療法を達成するためには、シクロスポリン血液または血清レベルを特定範囲内に維持しなければならない。一方、要求される範囲は、処置される特定状態、例えば治療が移植拒絶阻止を目的とするのか、自己免疫疾患の制御を目的とするのか、および別の免疫抑制療法をシクロスポリン療法と同時に用いるか否かにより異なり得る。常用用量形態により達成される生物学的利用能レベルは広く変動するため、要求される血清レベルの達成に必要な一日用量はまた、個体間、さらに単一個体においてもかなり変化する。この理由により、定期的で頻繁な間隔でのシクロスポリン療法を受けている患者の血液/血清レベルをモニターすることが必要である。一般にRIA(ラジオイムノアッセイ)または均等内容の免疫検定技術、例えばモノクローナル抗体に基づく技術を用いて行なわれる、血液/血清レベルのモニターを定期的に実施しなければならない。これは必然的に時間の浪費および不都合な結果になり、実質的に治療の全体費用に加えられる。
何よりも、これらの非常に明白な実践上の問題点は、利用可能な経口用量形態を用いて観察される、既に軽くふれた望ましくない副作用の発生に存する。
当業界では、固体および液体経口用量形態の両方を含め、これらの様々な問題点を解決する幾つかの提案が為されている。しかしながら、まだ残っている最優先問題は、水性媒質におけるシクロスポリン類、例えば「シクロスポリン」の固有の不溶性であり、従って、好都合な使用を可能にし、さらに例えば胃または腸管腔からの有効な吸収および一貫した適当に高い血液/血清レベルの達成を可能にするといった、生物学的利用能に関して要求される基準を満たすのに充分な高濃度でシクロスポリンを含み得る用量形態の供給である。
シクロスポリンによる経口投与に関して遭遇する特定の問題点により、比較的軽症または危険の少ない疾患状態の処置におけるシクロスポリン療法の使用が必然的に制限される。この点に関する問題の特定領域は、自己免疫疾患および皮膚に影響する他の状態の処置、例えばアトピー性皮膚炎および乾せんの処置、並びにまた当業界では広く提案されている、毛髪成長促進、例えば老齢または病気による脱毛症の処置におけるシクロスポリン療法の採用である。
すなわち、経口「シクロスポリン」療法は、この薬剤が例えば乾せんにかかった患者にとって、かなり有望な恩恵を与えるものであることを示すが、経口治療後の副作用の危険性により一般的使用は妨げられている。当業界では、局所形態でのシクロスポリン類、例えば「シクロスポリン」の適用に関する様々な提案が為されており、幾つかの局所送達システムが報告されている。しかしながら、局所適用での試みは、明らかに有効な治療法を全く提供できなかった。例えば乾せんの処置において、有用で有効な皮膚デリバリーを提供する局所適用手段があれば、シクロスポリン療法は、必要に迫られている大きな患者集団にとって効果的に利用可能なものになる。
[発明の構成]
この発明により、ミクロエマルジョン前濃縮物形態を呈し、および/または前述の特定溶媒媒質の使用に基づく新規シクロスポリン製剤であって、これまで当業界が直面してきたシクロスポリン、例えば「シクロスポリン」療法における問題点を解決または実質的に低減化する製剤が提供される。特に、この発明の組成物は、例えば生物学的利用能特性に関して、改善された効力を達成すると同時に、例えば慣用的経口投与を行える程度に充分高い濃度でシクロスポリンを含有する固体、半固体および液体組成物の製造を可能にすることが判った。
さらに詳しく述べると、この発明による組成物は、シクロスポリン療法を受けている個々の患者について、また個体間での両方において達成される吸収/生物学的利用能レベルの向上および吸収/生物学的利用能レベルにおける変動低減化を合わせもつ有効なシクロスポリン投与を可能にすることが判った。この発明の教理を適用することにより、個々の患者に関する用量間並びに個体/個々の患者群間において得られたシクロスポリン血液/血清レベルの変動が低減化されたシクロスポリン用量形態を得ることができる。すなわち、この発明は、有効な治療の達成に必要とされるシクロスポリン用量レベルの低減化を可能にする。さらにこの発明は、シクロスポリン療法を受けている個々の患者および同等の治療が行なわれている患者群に関して継続している一日用量必要条件のより精密な標準化および最適化を可能にする。
個々の患者の投与割合および血液/血清レベル応答並びに患者群に関する服用および応答パラメーターをより精密に標準化することにより、モニターの必要性を減少させることができ、すなわち実質的に治療費を減らす結果になる。
必要とされるシクロスポリン用量の減少/達成された生物学的利用能特性の標準化により、この発明はまた、シクロスポリン療法を受けている患者における、望ましくない副作用、特に腎臓毒性反応の発生を低減化させ得る手段を提供する。
さらに、この発明は、非アルカノール基剤による、例えばエタノール不含有または実質的に不含有であり得る組成物の製造を可能にする。それらの組成物は、既知アルカノール組成物に固有の、前述した安定性および関連した処理上の問題点を回避する。すなわち、この発明は、特に例えばカプセル、例えばゼラチン硬または軟カプセル形態を呈する場合に優れた適用性を示し、および/または例えばゼラチン軟カプセル封入形態に関して、例えば先に述べた、パッケージに伴う困難を排除または実質的に低減化する組成物を提供する。
局所適用については、さらにこの発明は、有効成分としてシクロスポリン、例えば「シクロスポリン」を含有し、皮膚に影響する自己免疫疾患、特に表皮の病的増殖および/または角質化、特に乾せんおよびアトピー性皮膚炎を含む皮膚疾患の処置を改善させ得る新規製剤の製造を可能にする。この発明による局所適用可能な組成物はまた、脱毛症の処置、例えば毛髪成長促進での使用に有用である。
第一態様において、特にこの発明は、有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物であって、「ミクロエマルジョン前濃縮物」形態である組成物を提供する。
この明細書で使用されている「ミクロエマルジョン前濃縮物」という語は、水と接触、例えば水に添加した場合にミクロエマルジョンを提供し得るシステムを包含する。この明細書で使用されている「ミクロエマルジョン」という語は、水および疎水性(親油性)有機成分を含めた有機成分を含有する非オペーク(透明)または実質的に非オペークのコロイド状分散液として慣用的に許容されている意味で用いられる。ミクロエマルジョンは、次の特徴のうちの1つまたはそれ以上を有するものとして同定可能である。それらは、それらの成分を接触させた時点で自然発生的または実質的に自然発生的に形成され、すなわち、実質的なエネルギー供給は受けず、例えば加熱または高度せん断装置または他の実質的撹はん手段の使用の非存在下で形成される。それらは熱力学的安定性を呈する。それらは単相性である。それらは実質的に非オペークであり、すなわち、光学顕微鏡手段により観察した場合透明またはオパールのような光彩を放っている。例えばx-線技術を用いると、非等方性構造が観察され得るが、平静状態ではそれらは光学的に等方性である。
ミクロエマルジョンは分散または粒状(小滴)相を含み、それらの粒子は2000オングストローム未満のサイズを有するため、それらは光学的に透明である。ミクロエマルジョンの粒子は球形であり得るが、他の構造、例えばラメラ状、六方晶系または等方性対称を有する液状結晶の場合もあり得る。一般的に、ミクロエマルジョンは、最大寸法(例、直径)が1500オングストローム未満、例えば一般的には100〜1000オングストロームである小滴または粒子を含む。[ミクロエマルジョンの特徴についてさらに詳しくは、例えば、ロゾフ、「プログレス・イン・サーフィス・アンド・メンブラン・サイエンス」(Progress in Surface and Membrane Science)、12、405および次頁、アカデミック・プレス(1975年)、フリバーグ、「ディスパージョン・サイエンス・アンド・テクノロジー」(Dispersion Science and Technology)、6(3)、317および次頁(1985年)およびミュラー等、「ファーム.インド.」(Pharm.Ind.)(3)370および次頁(1988年)を参照]。
前述したことから、この発明の「ミクロエマルジョン前濃縮物」は、水単独と接触させたときに自然発生的または実質的に自然発生的にミクロエマルジョンを形成し得る有効成分としてシクロスポリンを含有する製剤系であることが判る。
有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬用「ミクロエマルジョン前濃縮物」組成物は新規である。従って、一態様において、この発明は、A)有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物であって、「ミクロエマルジョン前濃縮物」である組成物を提供する。
(特許請求の範囲を含むこの明細書で使用されている「医薬組成物」という語は、個々の構成材料または成分自体が医薬的に許容し得るものである、例えば経口投与が予想される場合、経口用途に許容され得、また局所投与が予想される場合、局所的に許容され得る組成物を定義するものとして理解すべきである。)
シクロスポリン有効成分に加えて、この発明の「ミクロエマルジョン前濃縮物」組成物は、適宜1)親水相、
2)親油相、および
3)界面活性剤
を含有する。
シクロスポリンは親水相に含まれる。好適には、親水相および親油相の両方が担体媒質として用いられる。
この発明の「ミクロエマルジョン前濃縮物」は、o/w(水中油)ミクロエマルジョンを提供するタイプに属する。しかしながら、明らかに、(A)による組成物は少量の水を含有し得るか、または別法として、例えばo/wまたはw/o(油中水)タイプのミクロエマルジョンの微細構造特性を呈し得る。従って、この明細書で使用されている「ミクロエマルジョン前濃縮物」という語は、それらの可能性を包含するものとして理解されるべきである。
この発明の「「ミクロエマルジョン前濃縮物」組成物を水または他の水性媒質と接触させたときに得られるミクロエマルジョンは、熱力学的安定性を呈し、すなわち、それらは、長期間にわたって、例えば混濁または一定のエマルジョン・サイズの小滴形成または沈澱を生じること無く、周囲温度で安定している。[勿論、ミクロエマルジョンを得るために、適当な水分が要求されるのは当然である。希釈率の上限は厳密ではないが、一般的に1:1、例えば1:5ppw(「ミクロエマルジョン前濃縮物」:H2O)またはそれ以上の希釈率が適当である。]好ましくは、水との接触時に、この発明の「ミクロエマルジョン前濃縮物」組成物は、少なくとも2時間、さらに好ましくは少なくとも4時間、最も好ましくは少なくとも12〜24時間の間にわたって、光学的に観察可能な混濁または沈澱が一切存在しないことにより立証されるように、周囲温度で安定しているミクロエマルジョンを提供することができる。例えば上記希釈率で、この発明の「ミクロエマルジョン前濃縮物」から得られるミクロエマルジョンは、好ましくは約1500オングストローム未満、さらに好ましくは約1000または1100オングストローム未満、例えば約150〜200オングストローム以下の平均粒子サイズを有する。
この発明によると、親水相が、
1.1.低分子量モノ-またはポリ-オキシ-アルカンジオールの医薬的に許容し得るC1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ-または部分エーテル、または
1.2.1,2-プロピレングリコール
を含む(A)項記載の組成物が特に好ましい。
適当な成分(1.1.)は、例えば2〜12個、特に4個の炭素原子を含むモノ-またはポリ-、特にモノ-またはジ-オキシ-アルカンジオールのジ-または部分-、特に部分エーテルである。好ましくはモノ-またはポリ-オキシ-アルカンジオール部分は直鎖状である。この発明による使用に特に適したものは、式(I)で示されるジ-または部分エーテル類である。
R1-[O-(CH2)2]x-OR2 (I)
(式中、
R1はC1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリルであり、
R2は、水素、C1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリルであり、
xは、1〜6、特に1〜4、さらに限定すれば2前後の整数である)
この発明による使用に特に好ましいものは、上記部分エーテル、例えば式(I)(ただし、R2は水素である)で示される生成物である。
上記エーテルにおけるC1-5アルキル部分は分枝鎖状または直鎖状であり得、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルおよびt-ブチル基が含まれる。
それらのエーテル類は公知製品で市販されているか、または公知製品と同様に製造され得る。この発明による使用に特に好ましい式(I)の生成物は、トランスクトールおよびグリコフロールの商標名で市販されている公知製品である。
トランスクトールは、式(I)(ただし、R1=C2H5、R2=Hおよびx=2)で示される化合物ジエチレングリコール・モノエチルエーテルである。
テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルまたはα-(テトラヒドロフラニル)-ω-ヒドロキシポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)としても知られているグリコフロールは、式(I)(ただし、

R2=Hおよびxは1〜2の平均値を有する)を有する。それは、約190の平均分子量、約80-100℃(40N/m2で)の沸点、約1.070-1.090g/cm3(20℃で)の密度、約300-400のヒドロキシ値、約1.4545の屈折率(ナトリウムD線、589mm)(40℃で)および約8-18mN s/m2(20℃で)の粘度を有する。[参考、「ハンドブック・オブ・ファーマシューティカル・イクシピアンツ」(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、アメリカン・ファーマシューティカル・アソーシエイション/ザ・ファーマシューティカル・ソサエティー・オブ・グレート・ブリテン発行(1986年)、127頁およびフィードラー、「レキシコン・デル・ヒルフストッフェ」(Lexikon der Hilfstoffe)、第3版(1989年)、577頁]
グリコフロールの正確な特性は、相対純度により変化する。すなわち、低品質の場合は、かなりの量のテトラヒドロフルフリルアルコールおよび他の不純物を含有する。この発明の目的を達成するためには、上記物理データに適う製品として、上記式(I)(ただし、x=1-2)を有するフラクションが最小限95%に達するグリコフロール75が好ましい。
特に親水相がシクロスポリン担体媒質として充分に適したものである、例えば、親水相が組成物のシクロスポリン負荷を慣用的治療投与法、例えば経口投与法に適した形にし得る、(A)による組成物を製造する場合には、特に上記(1.1.)および(1.2.)項記載の成分が使用されている。
勿論、親水相として(1.1.)および/または(1.2.)項記載の成分を含有する(A)による組成物は、さらに親水相成分として1種またはそれ以上の別の成分を含有し得る。しかしながら、追加成分がある場合、好ましくは、シクロスポリン担体媒質としての親水相の効力があまり損なわれない状態で、それらはシクロスポリン有効成分が充分に溶け得る材料を含む。可能な追加親水相成分の例は、低級(例、C1-5)アルカノール類、特にエタノールである。
しかしながら、親水相成分としてのアルカノール類、例えばエタノールの使用は、前述の理由から、この発明により考慮されることであるが、これは一般的にはあまり好ましくない。好ましくは、(A)項記載の組成物は非アルカノールに基づく、すなわち、主要親水相成分としてアルカノールを含有しない。好適には、親水相が含むアルカノール成分の割合は、重量にして50%未満、さらに好ましくは25%未満、最も好ましくは10%未満である。最も好適には、親水相はアルカノール成分を全く含まないか、または実質的に含まず、すなわち、アルカノール成分の含有割合は5%未満、好ましくは2%未満、例えば0〜1%である。「アルカノール」とは、特にC1-5アルカノール類、特にエタノールを意味する。
特に好ましい具体例では、(A)項記載の組成物の親水相は、上記(1.1.)または(1.2.)記載の成分、特にトランスクトール、グリコフロールおよび/または1,2-プロピレングリコールにより構成または本質的に構成される。最も好適には、それらは成分(1.1.)または成分(1.2.)により構成または本質的に構成される。
成分(1.1.)、特にグリコフロールを含有する(A)による組成物は、それらがゼラチン軟カプセル形態としての製剤化に充分適しているという点で、特に興味深い。この発明によると、それらの組成物はまた、例えば常温および高温での長期安定性試験で立証されたところでは、予想外に有益な安定性を呈することが見出された。すなわち、それらの組成物は、例えば病院、診療所および同様の施設で、使用者側での長期貯蔵を含む薬剤製品の輸送および貯蔵において一般に直面する障害を克服するのに特に充分適したものである。
(A)項記載の組成物は、さらに親油相(2)を含む。
親油相としての使用に適した成分としては、選択された親水相、例えば(1.1.)または(1.2.)記載の成分と非混和性である医薬的に許容し得る溶媒が全て含まれる。それらの溶媒には、好適には界面活性機能が全く無いか、または実質的に無い。親油相成分(2)としての使用に特に適した成分は、例えば下記の成分である。
脂肪酸トリグリセリド類、好ましくは中位鎖脂肪酸トリグリセリド類。特に適当なのは、中性油、例えば中性植物油、特に分別化ココヤシ油、例えばミグリオール(Miglyol)(参考、フィードラー、前出、808-809頁)の商標名で知られ、市販されている製品であり、例えば下記製品がある。
ミグリオール810:カプリル-カプロン酸トリグリセリドを含み、約520の分子量を有する分別化ココヤシ油。脂肪酸組成=C6最大2%、C8約65-75%、C10約25-35%、C12最大2%、酸価=約0.1、鹸化数=約340-360、ヨウ素価=最大1、
ミグリオール812:カプリル-カプロン酸トリグリセリドを含み、約520の分子量を有する分別化ココヤシ油。脂肪酸組成=C6最大3%、C8約50-65%、C10約30-45%、C12最大5%、酸価=約0.1、鹸化数=約330-345、ヨウ素価=最大1、
ミグリオール818:約510の分子量を有するカプリル-カブロン-リノール酸トリグリセリド。脂肪酸組成=C6最大3%、C8約45-60%、C10約25-40%、C12約2-5%、C18:2約4-6、酸価=最大0.2、鹸化数=約315-335、ヨウ素価=最大10、および
キャプテックス355(1)カプリル-カプロン酸トリグリセリド。脂肪酸含有率=カプロン酸約2%、カプリル酸約55%、カプリン酸約42%酸価=最大0.1、鹸化数=約325-340、ヨウ素価=最大0.5。
また適当なのは、カプリル-カプリン酸トリグリセリド類、例えばミリトール(Myritol)(参考、フィードラー、前出、834頁)の商標名で知られ、市販されている製品、例えば酸価=最大1、鹸化数=約340-350およびヨウ素価=約0.5を有するミリトール813である。
この種類に属するさらに別の過当な製品は、キャプムル(Capmul)MCT(1)、キャプテックス300(1)およびキャプテックス800(1)、ネオビー(Neobee)M5(2)およびマゾール(Mazol)1400(3)である。
〔(1)=キャピタル・シティー・プロダクツ、私書箱569、コロンブス、オハイオ、アメリカ合衆国。(2)=ステパン、ピー・ブイ・オー・デパートメント、ウエスト・ハンター・アベニュー100、メイウッド、ニュージャージー07607、アメリカ合衆国。(3)=メイザー・ケミカルズ、ポレット・ドライブ3938、ガーニー、イリノイ、アメリカ合衆国。]
親油相成分として特に好ましいのは、ミグリオール812製品である。
さらに、(A)項記載の本発明組成物は、医薬的に許容し得る界面活性剤(3)を含有する。界面活性剤成分は、(3.1.)親水性または(3.2)親油性界面活性剤またはそれらの混合物を含み得る。特に好ましいのは、非イオン性親水性および非イオン性親油性界面活性剤である。界面活性剤成分としての使用に適した親水性界面活性剤の例としては、次の生成物がある。
3.1.1.天然または硬化植物油およびエチレングリコールの反応生成物、すなわち、ポリオキシエチレングリコール化天然または硬化植物油、例えばポリオキシエチレングリコール化天然または硬化ひまし油。それらの生成物は、公知方法、例えば西ドイツ国公告公報第1182388号および同第1518819号に開示された方法に従い、例えば天然または硬化ひまし油またはそのフラクションをエチレンオキシドと例えば約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、所望により生成物から遊離ポリエチレングリコール成分を除去することにより製造され得る。特に適当なのは、クレモフォー(Cremophor)の商標名で市販されている様々な界面活性剤である。特に適しているのは、鹸化価約50-60、酸価=<1、ヨウ素価=<1、水分含有率(フィッシャー)=<2%、nD60=約1453-1457およびHLB=約14-16を有するクレモフォーRH40、鹸化価約40-50、酸価=<1、ヨウ素価=<1、水分含有率(フィッシャー)=約<4.5-5.5%、nD25=約1453-1457およびHLB=約15-17を有するクレモフォーRH60並びに分子量(水蒸気浸透圧法による)=約1630、鹸化価=約65-70、酸価=約2、ヨウ素価=約28-32
、およびnD25=約1.471を有するクレモフォーELの製品である(参考、フィードラー、前出、326-327頁)。また、この範ちゅうでの使用に適当なのは、ニッコール(Nikkol)の商標名で市販されている様々な界面活性剤、例えばニッコールHCO-60である。前記製品ニッコールHCO-60は、硬化ひまし油およびエチレンオキシドの反応生成物であり、酸価=約0.3、鹸化数=約47.4、ヒドロキシ価=約42.5、pH(5%)=約4.6、カラーAPHA=約40、融点=約36.0℃、凍結点=約32.4℃、H2O含有率(%、KF)=約0.03といった特徴を呈する。
3.1.2.ポリオキシエチレン-ソルビタン-脂肪酸エステル類、例えばトゥイーン(Tween)の商標名(参考、フィードラー、前出、1300-1304頁)で市販されている公知タイプに属する、例えばモノ-およびトリ-ラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイルエステル類。トゥイ-ンには次の製品がある。
20[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート]、
40[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート]、
60[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート]、
80[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート]、
65[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート]、
85[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート]、
21[ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート]、
61[ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノスーテアレート]、および
81[ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート]。
この発明の組成物で使用されるこの種類に属する特に好ましい製品は、上記製品トゥイーン40およびトゥイーン80である。
3.1.3.ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、例えば、公知タイプに属する、ミルジ(Myrj)(参考、フィードラー、前出、834頁)の商標名で市販されているポリオキシエチレンステアリン酸エステル類およびセチオール(Cetiol)HE(参考、フィードラー、前出、284頁)の商標名で市販されている公知ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類。この発明の組成物で使用されるこの種類のうち特に好ましい製品は、D25=約1.1、融点=約40-44℃、HLB=約16.9、酸価=約0-1および鹸化数=約25-35を有するミルジ52製品である。
3.1.4.例えば公知タイプに属する、プルロニック(Pluronic)およびエンカリクス(Emkalyx)(参考、フィードラー、前出、956-958頁)の商標名で市販されているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・コポリマー。この発明の組成物で使用されるこの種類のうち特に好ましい製品は、プルロニックF68製品である。
3.1.5.例えば、公知タイプに属する、ポロキサマー(Poloxamer)(参考、フィードラー、前出、959頁)の商標名で市販されているポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロック・コポリマー。この発明の組成物で使用されるこの種類のうち特に好ましい製品は、ポロキサマー188製品である。
3.1.6.ジオクチルスクシネート、スルホこはく酸ジオクチルナトリウム、ジ-[2-エチルヘキシル]-スクシネートまたはラウリル硫酸ナトリウム。
3.1.7.燐脂質、特にレシチン類(参考、フィードラー、前出、731-733頁)。この発明の組成物での使用に適したレシチンには、特に大豆レシチンがある。
3.1.8.プロピレングリコールモノ-およびジ-脂肪酸エステル類、例えばプロピレングリコールジカプリレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールヒドロキシステアレート、プロピレングリコールイソステアレート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールリシノレエート、プロピレングリコールステアレートなど(参考、フィードラー、前出、1013頁および次頁)。特に好ましいのは、商標名ミグリオール840(参考、フィードラー、前出、809頁)として知られ、市販されているプロピレングリコールカプリルーカプリン酸ジエステルである。ミグリオール840は、脂肪酸含有率=C6最大約3%、C8約65-80%、C10約15-30%、C12最大3%、酸価=最大0.1、ヨウ素価=約320-340、ヨウ素価=最大1を有する。
3.1.9.胆汁酸塩騏、例えばアルカリ金属塩類、例えばタウロコール酸ナトリウム。
界面活性成分としての使用に適した親油性界面活性剤の例としては、次のものがある。
3.2.1.天然植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換生成物。それらのエステル交換生成物は当業界では公知であり、例えばアメリカ合衆国特許第3288824号に記載された一般的方法に従い製造され得る。それらは、様々な天然(例、非硬化)植物油、例えばとうもろこし油、仁(kernel)油、へん桃油、アメリカホドイモ(ground nut)油、オリーブ油およびパーム油およびそれらの混合物とポリエチレングリコール、特に200〜800の平均分子量を有するポリエチレングリコール類とのエステル交換生成物を含む。2モル部の天然植物油トリグリセリドと1モル部のポリエチレングリコール(例、200〜800の平均分子量を有する)とのエステル交換により得られる生成物が好ましい。前記種類のエステル交換生成物の様々な形態は公知であり、ラブラフィル(Labrafil)(フィードラー、前出、707頁参照)の商標名で市販されている。この発明の組成物の成分として特に有用なのは、ラブラフィルM1944CS製品、すなわち仁油と酸価=約2、鹸化数約145-175およびヨウ素価=約60-90を有するポリエチレングリコールとのエステル交換生成物、並びにラブラフィルM2130CS、すなわちC12-〜C18-グリセリドと融点=約35-40℃、酸価=<2、鹸化数=約185-200およびヨウ素価=<3を有するポリエチレングリコールとのエステル交換生成物である。
3.2.2.モノ-、ジ-およびモノ/ジ-グリセリド類、特にカプリルまたはカプリン酸とグリセリンとのエステル生成物。この種類のうち好ましい製品は、例えばカプリル/カプリン酸モノ-およびジーグリセリドを主にまたは本質的に含むかまたは成分とする製品、例えばインウィター(Imwitor)(参考、前出、645頁)の商標名で市販されている製品である。この発明の組成物で使用されるこの種類のうち特に適当な製品は、インウィター742製品、すなわち約60ppwカプリル酸および約40ppwカプリン酸の混合物とグリセリンとのエステル化生成物である。インウィター742は、一般的に帯黄色結晶性塊であり、約26℃で液状、酸価=最大2、ヨウ素価=最大1、鹸化数=約235-275、モノグリセリド%=約40-50%、遊離グリセリン=最大2%、融点=約24-26℃、不鹸化率=最大3%、過酸化物=最大1。
3.2.3.例えば公知タイプに属し、スパン(Span)の商標名で市販されているソルビタン脂肪酸エステル類、例えばソルビタン-モノラウリル、-モノパルミチル、-モノステアリル、-トリステアリル、-モノオレイルおよび-トリオレイルエステル類-(参考、フィードラー、前出、1139-1140頁)。
3.2.4.ペンタエリスリトール脂肪酸エステル類およびポリアルキレングリコールエーテル類、例えばペンタエリスライト- -ジオレエート、-ジステアレート、-モノラウレート、-ポリグリコールエーテルおよび-モノステアレート並びにペンタエリスライト-脂肪酸エステル類(参考、フィードラー、前出、923-924頁)。
3.2.5.モノグリセリド類、例えばグリセリンモノオレエート、グリセリンモノパルミテートおよびグリセリンモノステアレート、例えばミバテックス(Myvatex)、ミバプレックス(Myvaplex)およびミベロール(Myvero1)(参考、フィードラー、前出、836頁)の商標名で知られ、市販されている生成物、およびアセチル化、例えばモノ-およびジ-アセチル化モノグリセリド類、例えばミバセット(Myvacet)(参考、フィードラー、前出、835頁)の商標名で知られ、市販されている製品。
3.2.6.グリセリントリアセテートまたは(1,2,3)-トリアセチン(参考、フィードラー、前出、952頁)、および
3.2.7.ステロール類およびその誘導体、例えばコレステロール類およびその誘導体、特にフィトステロール類、例えばシトステロール、カンペステロールまたはスチグマステロールおよびそのエチレンオキシド付加体を含む生成物、例えば大豆ステロール類およびその誘導体、例えばジェネロール(Generol)(参考、フィードラー、前出、554および555頁)の商標名で知られている生成物、特にジェネロール122、122E5、122E10および122E25製品。
上記(A)項記載の組成物は、単一界面活性剤または界面活性剤混合物を含有する系、例えば第一界面活性剤および1種またはそれ以上の共界面活性剤(co-surfactant)を含有する系を含む。界面活性剤および共界面活性剤の組み合わせは、例えば上記(3.1.1.)〜(3.2.7.)項で示された界面活性剤タイプのうちのいずれかから選択され得る。
親水相が、上記(1.1.)項記載のジ-または部分エーテル、特にトランスクトールまたはグリコフロールを含む場合、所望により共界面活性剤を加えることにより、例えば安定特性が改善され得るが、一般的には単一界面活性剤の使用で充分である。単独または主親水相成分として1,2-プロピレングリコールを使用する場合、一般的には少なくとも2種の界面活性剤、すなわち界面活性剤および共界面活性剤の使用が必要である。すなわち、親水相として1,2-プロピレングリコールを含む上記(A)項記載の組成物は、好適には界面活性剤および共界面活性剤の両方を含有する。
上記(3.1.1.)、(3.1.3.)、(3.1.7.)、(3.2.2.)および(3.2.5.)項記載の界面活性剤は、(A)項に記載された組成物での使用に関して特に興味深い。特に適した界面活性剤/共界面活性剤の組み合わせは、親水性/親油性界面活性剤の組み合わせ、例えば(3.1.1.)による界面活性剤と(3.2.5.)による界面活性剤の組み合わせである。
例えば上記(3.1.1.)〜(3.2.7.)に記載された界面活性剤または界面活性剤の混合物の場合のように、界面活性剤がシクロスポリン有効成分に有効な溶媒を含む場合、それは、界面活性剤としてだけでなく、追加担体または共溶媒相として過剰に、すなわち親水性または親油性相の一部として、(A)項記載の組成物に混入され得る。
また、上記(A)による組成物は、4.増粘剤を含有し得る。
適当な増粘剤は、当業界で使用されている公知種類に属するものであり得、例えば医薬的に許容し得るポリマー材料および無機増粘剤が含まれ、例えば次のタイプの製品がある。
4.1.ポリアクリレートおよびポリアクリレート・コポリマー樹脂、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂、例えばカルボポール(Carbopo1)の商標名(参考、フィードラー、前出、254-256頁)で知られ、市販されている生成物、特にカルボポール934、940および941製品、並びに商標名ユードラジット(Eudragit)(参考、フィードラー、前出、486-487頁)、特にユードラジットE、L、S、RLおよびRS製品、および最も限定すれば、ユードラジットE、LおよびS製品。
4.2.セルロースおよびセルロース誘導体、例えばアルキルセルロース類、例えばメチル-、エチル-およびプロピル-セルロース、ヒドロキシアルキル-セルロース、例えばヒドロキシプロピル-セルロースおよびヒドロキシプロピルアルキル-セルロース、例えばヒドロキシプロピル-メチル-セルロース、アシル化セルロース類、例えばセルロース-アセテート、セルロース-アセテートフタレート、セルロース-アセテートスクシネートおよびヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート、並びにそれらの塩類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム。この発明による使用に適したそれらの生成物の例としては、例えばクルセール(Kluce1)およびメトセール(Methoce1)の商標名(参考、フィードラー、前出、688および790頁)で知られ、市販されている製品、特にクルセールLF、MF、GFおよびHF製品並びにメトセールK100、K15M、K100M、E5M、E15、E15MおよびE100M製品がある。
4.3.ポリビニルピロリドン類、例えばポリ-N-ビニルピロリドンおよびビニルピロリドンコポリマー、例えばビニルピロリドン-ビニルアセテート・コポリマー。この発明による使用に適したそれらの化合物の例としては、例えばコリドン(Kollidon)(または、アメリカ合衆国ではポビドン(Povidone))の商標名(参考、フィードラー、前出、694-696頁)として知られ、市販されている生成物、特にコリドン30および90製品がある。
4.4.ポリビニル樹脂、例えばポリビニルアセテートおよびアルコール、並びに他のポリマー材料、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、アルギネート、例えばアルギン酸およびその塩類、例えばアルギン酸ナトリウム。
4.5.無機増粘剤、例えばアタパルジャイト、ベントナイトおよびシリケート、例えば親水性二酸化珪素生成物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特に、エーロジル(Aerosil)の商標名[参考、「ハンドブック・オブ・ファーマシューティカル・イクシピアンツ」、前出、253-256頁]で知られ、市販されているコロイド状二酸化珪素生成物、持にエーロジル130、200、300、380、O、OX50、TT600、MOX80、MOX170、LK84製品およびメチル化エーロジルR972。
経口投与を意図する(A)による組成物の場合、それらの増粘剤を添加することにより、例えば持続放出作用を得ることができる。しかしながら、経口投与を意図する場合、一般に前述の増粘剤の使用は必要とされず、一般にあまり好ましくない。他方、例えば局所適用を意図する場合、増粘剤の使用が指示される。
上記(A)による組成物はまた、1種またはそれ以上の別の成分、特に希釈剤、酸化防止剤[アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、プチルヒドロキシトルエン(BHT)およびトコフェロール、例えばα-トコフェロール(ビタミンE)]、調味剤などを含有し得る。酸化防止剤、特にトコフェロールの使用は特に有益である。
特に経口投与について考える場合、(A)項に記載されたこの発明の組成物が投与それ自体の最終用量形態を含むべきであることは予測されることだが、この発明はまた、有効成分としてシクロスポリンを含有し、ミクロエマルジョンそれ自体である医薬組成物を提供する。すなわち、経口投与を実践する場合、例えば(A)項記載の「ミクロエマルジョン前濃縮物」を水または他の水性媒質で希釈することにより得られたミクロエマルジョンは、飲用製剤として使用され得る。同様に、局所適用を考える場合、ヒドロコロイド増粘剤、例えば上記(4.2.)または(4.4.)項記載のものを含有する組成物はまた、好適には水を含有し、すなわちゲル、ペースト、クリームなどの形態での水性ミクロエマルジョンを提供する。それらの組成物はまた新規である。従って、さらに別の態様において、この発明は、(B)ミクロエマルジョンであり、有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物を提供する。
(B)項記載の組成物は、(A)項記載の組成物に関して上述した成分(1)〜(3)のいずれかおよび水を含有し得る。組成物(B)はo/wミクロエマルジョンである。好ましくは、それらは(A)項記載の組成物から得られるミクロエマルジョンに関して上述した安定性を呈する。
この発明により、さらに、担体謀質としての(1.1.)項記載のジ-または部分-エーテルの使用が、前述の「ミクロエマルジョン前濃縮物」およびミクロエマルジョン製剤の製剤に関してだけでなく、シクロスポリン含有医薬組成物の製造に全く総体的に有利であることが見出された。すなわち、他の経口および特に局所デリバリーシステムの成分としてのそれらエーテルの使用は、驚くべきことに、それ自体前述の当技術分野でこれまで直面してきた問題点を克服することが見出された。それらの組成物はまた新規である。従って、さらに別の態様において、この発明はまた、
(C)低分子量モノ-またはポリ-オキシ-アルカンジオールの医薬的に許容し得るC1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリルジ-または部分-エーテルと一緒に、有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物を提供する。
上記(C)項記載の組成物での使用に好ましいエーテル成分は、(1.1.)に関連して前述した通りであり、トランスクトールおよびグリコフロール製品が特に好ましい。好適には、(C)による組成物は、1種またはそれ以上の別の成分、例えば界面活性剤、共溶媒または増粘剤を含有する。
特に、(C)項記載の組成物はまた、好適には医薬的に許容し得る親水性界面活性剤、特に非イオン性親水性界面活性剤を含有する。適当な親水性界面活性剤成分は、(3.1.1.)〜(3.1.9.)項で前述された成分のいずれかである。
また(C)項記載の組成物は、好適には界面活性剤もしくは共溶媒として医薬的に許容し得る親油性界面活性剤、または医薬的に許容し得る共溶媒を含有する。適当な共溶媒/親油性界面活性剤成分は、(2)および(3.2.1.)〜(3.2.7.)項で前述した成分のいずれかである。
(C)による組成物は、(A)および(B)項記載のもの以外の形態、例えば溶液、懸濁液、分散液、正則(レギュラー)エマルジョンなどを含む。特に、追加的に界面活性剤または界面活性剤および共溶媒の両方を含有する(C)による組成物は、例えばエマルジョン前濃縮物(すなわち、水との接触時に、o/wまたはw/oタイプの正則エマルジョン-ミクロエマルジョンに対して-を提供する組成物)、並びに親水性/親油性および親油性/親水性の両タイプに属する正則エマルジョンを含む。例えば飲用または局所適用を目的とする製剤の場合、それらはまた、特にo/wまたはw/oタイプの水性エマルジョンを含む。一般に、o/wエマルジョンを与えるエマルジョン濃縮物および(ii)o/wエマルジョンそのものが、特に経口投与を考える場合には好ましい。
さらに(C)項記載の組成物は、医薬的に許容し得る増粘剤を含有し得、適当な増粘剤は、(4.1.)〜(4.5.)項で前述した成分のいずれかである。
さらにまた、(C)による組成物は、添加剤、例えば組成物(A)に関連して前述した保存および調味剤等を含み得る。特に、それらはまた、好ましくは酸化防止剤、例えば組成物(A)に関連して前述した具体的な酸化防止剤のいずれかを含む。
この発明による特に興味深いものは、(D)追加的に(5)脂肪酸サッカリドモノエステルを含有する(C)項記載の組成物である。
一般的に(D)項記載の組成物は、成分(1.1.)、例えばグリコフロールまたはトランスクトールを含む挺体媒質中にシクロスポリンおよび成分(5)を含有する。普通、シクロスポリンおよび成分(5)は、各々適宜固溶体を含む分子分散液または溶液中(D)による組成物に存在する。成分(5)は、一般的に(D)による組成物においてシクロスポリンの可溶化剤として作用する。(D)による組成物は、安定性および別に成分(5)に伴うそれら固有の強い吸湿特性により生じる関連した問題点を満たすという特別の利点を有する。
(D)による組成物での使用に好ましい成分(5)は、水溶性脂肪酸サッカリドモノエステル、例えば周囲温度、例えば約20℃で少なくとも3.3%の水に対する溶解度を有する、すなわち水30ml当たり少なくとも1gのモノエステルの量割合で周囲温度において水に溶け得るサッカリドの脂肪酸モノエステルである。
成分(5)の脂肪酸部分は、飽和または不飽和脂肪酸またはそれらの混合物を含有し得る。特に適した成分(5)は、C6-18-脂肪酸サッカリドモノエステル、特に水溶性C6-18-脂肪酸サッカリドモノエステルである。特に適当な成分(5)は、カプロン(C6)、カプリル(C8)、カプリン(C10)、ラウリン(C12)、ミリスチン(C14)、パルミチン(C16)、オレイン(C18)、リシノール(C18)および12-ヒドロキシステアリン(C18)酸サッカリドモノエステル、特にラウリン酸サッカリドモノエステルである。
成分(5)のサッカリド部分は、任意の適当な糖残基、例えばモノ-、ジ-またはトリ-サッカリド残基を含み得る。好適には、サッカリド部分はジ-またはトリ-サッカリド残基を含む。好ましい成分(5)には、C6-14-脂肪酸ジサッカリドモノエステルおよびC6-18-脂肪酸トリサッカリドモノエステルが含まれる。特に適当なサッカリド部分は、サッカロースおよびラフィノース残基である。
すなわち特に過当な成分(5)は、サッカロースモノカプロエート、サッカロースモノラウレート、サッカロースモノミリステート、サッカロースモノオレエート、サッカロースモノリシノレエート、ラフイノースモノカプロエート、ラフィノースモノラウレート、ラフィノースモノミリステート、ラフィノースモノパルミテートおよびラフイノースモノオレエートである。最も好ましい成分(5)は、ラフィノースモノラウレートおよび特にサッカロースモノラウレートである。
成分(5)は、好適には少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)を有する。
好適には成分(5)は、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のエステル残基純度を有する。成分(5)は、好適には約15℃〜約60℃、さらに好ましくは約25℃〜約50℃の融点を有する。
また(D)による組成物は、さらに別の成分、例えば組成物(C)に関して前述された成分を含有し得る。
特に、それらは、シクロスポリンに関して組成物の放出特性を修飾し得る成分、例えば増粘剤、例えば(4.1.)〜(4.5.)項で前述された成分を含み得る。
特にまた、(D)による組成物は、好適には1種またはそれ以上の酸化防止剤、例えば組成物(A)に関して具体的に前述された成分を含有する。
また(D)による組成物は、特に製剤処理中または貯蔵時における成分(5)の加水分解を防ぐため、好適には1種またはそれ以上の安定剤または緩衝材を含む。それらの安定剤は、酸化防止剤、例えばくえん酸、酢酸、酒石酸またはフマール酸並びに塩基性安定剤、例えば燐酸水素カリウムを含み得る。
それらの安定剤または緩衝剤は、好適には約3〜8、さらに好ましくは約5〜6の範囲内のpHを達成または維持するのに充分な量で加えられ、上記範囲内のpHを有する(D)による組成物が一般に好ましい。
特に(D)による組成物はまた、好ましくはポリオキシアルキレン-不含有親水性界面活性剤、例えば上記(3.1.6.)または(3.1.7.)項記載の成分を含有する。
この発明による組成物は、適当な方法での投与、例えば単位用量形態、例えばゼラチン硬または軟カプセル封入形態で例えば経口的に、例えばクリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布、パップ、プラスター、皮膚パッチなどの形態で、例えば皮膚適用に、または例えば点眼-液、-ローションまたは-ゲル製剤形態で眼科適用として非経口的または局所的に使用され得る。また容易に水分散し得る濃厚懸濁剤形態、例えば溶液およびミクロエマルジョンは、例えば乾せんの処置における病変部内注射用に使用され得るか、または例えば炎症性腸疾患またはクローン病の処置におけるかん腸剤として直腸内投与され得る。しかしながら、この発明による組成物は、主として経口または局所適用、特に皮膚適用を意図したものである。
勿論、この発明の組成物における成分の相対比率は、問題の組成物の特定タイプ、例えばそれが「ミクロエマルジョン前濃縮物」、ミクロエマルジョン、正則エマルジョン、溶液などのどれであるかによりかなり異なる。相対比率はまた、組成物中の成分の特定機能、例えば「ミクロエマルジョン前濃縮物」の界面活性成分の場合、これが界面活性剤としてのみ使用されるのか、界面活性剤および共溶媒の両方として使用されるのかにより異なる。また相対比率は、使用される特定成分および生成物組成の望ましい物理特性により変化し、例えば局所使用組成物の場合、これが自由に流動する液体またはペーストのいずれになるかにより異なる。任意の特定例における実行可能比率の測定は、一般に当技術分野の熟練者の能力の範囲内に含まれる。従って、後記の指示比率および相対重量範囲は全て、好ましいかまたは個々の発明の教理を示すものであって、発明をその最も広い態様において限定するものではないことを理解すべきである。
勿論、この発明の組成物におけるシクロスポリンの量は、例えば意図された投与経路および他の成分、特に前記成分(2)〜(5)がどの程度に存在するかにより異なる。しかしながら、一般にシクロスポリンは、組成物の全重量に対して0.05、特に約0.1〜約35重量%の範囲内の量で存在する。
好適には、成分(1)は、組成物の全重量に基づき約0.5〜約90重量%の量でこの発明の組成物中に存在する。成分(1.1.)(例、グリコフロールまたはトランスクトール)を含むこの発明による組成物の場合、(1.1.)は、組成物の全重量に基づき、一般的には約1〜約90重量%、さらに一般的には約5または10〜約70重量%の量で存在する。成分(1.2.)を含む上記(A)または(B)による組成物の場合、(1.2.)は、組成物の全重量に基づき、一般的には約2〜約50重量%の量で存在する。成分(2)または(3)を含むこの発明による組成物の場合、これらは各々、組成物の全重量に基づき、約0.5〜約90重量%の量で存在する。
特に好ましい態様では、この発明は、
(E)例えば経口投与に適当または好都合な形態の、上記(A)または(C)項記載の経口投与用組成物を提供する。
非局所投与を意図した(A)〜(C)項記載の組成物および特に経口用量形態(E)の場合:
a)シクロスポリンは、組成物の全重量に基づき、一般的に約1または2〜約30重量%、好適には約4〜約25重量%の量で存在するさらに好適には、シクロスポリンは、組成物の全重量に基づき、約5〜約25、特に〜約20重量%、例えば約5〜15重量%の量で存在する。
b)成分(1.1.)が存在する場合、それは、一般的に組成物の全重量に基づき、約15〜約85、好適には約20〜約80、さらに好適には約25〜約70、例えば約30〜約50または60重量%の量で存在する。
c)シクロスポリンおよび成分(1.1.)が存在する場合、それらは、一般的に約1:0.75〜20、好適には約1:1〜15、さらに好適には約1:1〜5、例えば約1:1または1:1.5〜4ppw[シクロスポリン:(1.1.)]の割合で存在する。
d)成分(1.2.)が存在する場合、それは、一般的に組成物の全重量に基づき、約3〜約45、好適には約5〜約30重量%の量で存在する。
e)シクロスポリンおよび成分(1.2.)が存在する場合、それらは、一般的に約1:0.1〜20、好適には1:0.2〜1.0ppwの割合で存在する。さらに好適には、それらは、約1:0.3〜6、例えば約1:0.5〜3ppw[シクロスポリン:(1.1.)]の割合で存在する。
f)成分(2)が存在する場合、それは、一般的に組成物の全重量に基づき、約45重量%以下、好適には約40重量%以下の量で存在する。さらに好適には、成分(2)は、組成物の全重量に基づき、約2〜約45、さらに好適には約3〜約35、最も好適には約5または10〜約30重量%の量で存在する。
g)成分(2)および(1.1.)が存在する場合、それらは、一般的に約1:0.5〜40、好適には約1:0.5〜20、さらに好適には約1:0.75〜10、例えば約1:0.75〜4ppw[(2):(1)]の割合で存在する。
h)成分(2)および(1.2.)が存在する場合、それらは、好適には約1:0.075〜22、好適には約1:0.1〜15、最も好適には約1:0.15〜6ppw、例えば約1:0.5〜3ppw[(2):(1.2.)]の割合で存在する。
i)成分(3)が存在する場合[(3.1.)および(3.2.)タイプの両成分を含む]、それは、一般的に組成物の全重量に基づき、約90以下、例えば約20〜約90重量%の量で存在する。さらに好適には、成分(3)は、組成物の全重量に基づき、約20または25〜約80または90重量%の量で存在し、例えば、成分(1.1.)が使用される場合約25〜約55%、または成分(1.2.)が使用される場合約40〜75重量%である。
j)シクロスポリンおよび成分(3)[(3.1.)および(3.2.)タイプの両成分を含む]が存在する場合、それらは、一般的に約1:0.5〜20、さらに好適には〜12ppwの割合で存在する。好適には、それらは、成分(1.1.)が存在する場合約1:1〜10ppw、例えば約1:1〜5ppw、または成分(1.2.)が存在する場合約1:3〜8ppwの割合[シクロスポリン:(3)]で存在する。
(A)および(B)項記載の組成物[「ミクロエマルジョン前濃縮物」およびミクロエマルジョン]の場合、(1)親水相、(2)親油相および(3)界面活性剤を含む成分の相対比率は、存在するシクロスポリンの濃度により変化する。それらはまた、互いに対する相対比率において変化する。
すなわち、(A)による組成物は、シクロスポリンを、(1)親水相[例、上記(1.1.)または(1.2.)項記載の成分]、(2)親油相[例、上記(2.1.)または(2.2.)項記載の成分]および界面活性剤[例、上記(3.1.)または(3.2.)項記載の成分]と一緒に含有するものとして定義され得、シクロスポリン:(1):(2):(3)の相対比率は、水との接触時に、例えば前述した通り1:1ppw[シクロスポリン+(1)+(2)+(3):H2O]またはそれ以上の相対比率でミクロエマルジョン[例、o/wタイプに属する]が得られる比率である。
同様に、(B)による組成物は、シクロスポリンを、ミクロエマルジョン[例、o/wタイプに属する]の生成に必要とされる、例えば前に示した相対比率で、前述の成分(1)、(2)および(3)および水と一緒に含有するものとして定義され得る。
(A)および(B)による組成物は、シクロスポリン+(1)+(2)+(3)の合計重量に基づき、好ましくは約2〜約30、さらに好ましくは約5〜約20、最も好ましくは約10〜約15重量%のシクロスポリンを含有する。
成分(A)または(B)の(1)が上記(1.1.)項記載の成分である、例えばトランスクトールまたはグリコフロールを含む場合、成分(1.1.)、(2)および(3)は、好ましくは約15〜約85%、さらに好ましくは約25〜約65%の(1.1.)、約2〜約40、さらに好ましくは約3〜約35、最も好ましくは約3〜約30%の(2)および約15〜約85、さらに好ましくは約25〜約55または60%の(3)といった量で存在する。パーセンテージは全て(1.1.)+(2)+(3)の合計重量に基づいている。グリコフロールの使用は特に興味深い。
組成物(A)または(B)の(1)が1,2-プロピレングリコール[上記(1.2.)]である場合、成分(1.2.)、(2)および(3)は、好適には約3〜約35%、さらに好ましくは約3〜約25%の(1.2.)、約2〜約35%、さらに好ましくは約3〜約30%の(2)および約45〜約90%、さらに好ましくは約50〜約90%、例えば約55〜約80%の(3)といった量で存在する。パーセンテージは全て、(1.2.)+(2)+(3)の合計に基づいた重量によるものである。前に示した通り、(1)が1,2-プロピレングリコールである場合、成分(3)は、一般に界面活性剤および共界面活性剤の両方を含有する。共界面活性剤を使用する場合、界面活性剤および共界面活性剤は、好適には約50:1以下、好ましくは20:1以下、さらに好ましくは15:1以下、例えば2〜15:1ppw(界面活性剤:共界面活性剤)の割合で存在する。
添付の第1図は、約10重量%のシクロスポリン(例、「シクロスポリン」)を含む(A)による組成物における成分(1.1.)(例、グリコフロール)、(2)(例、ミグリオール812)および(3)(例、クレモフォーRH40)の相対濃度に関する三方向プロットを表す。成分(1.1.)の相対濃度は、矢印「1.1.」が示す通り、プロットの左手マージンに沿った0%から下方右隅の100%に増加する。成分(2)の濃度は、矢印「2」が示す通り、プロットの右端の0%から下方左隅の100%に増加する。すなわち、50%の(1.1.)および50%の(2)のみを含む組成物は、プロットの基線の中点において示される。成分(3)の相対濃度は、矢印「3」が示す通り、プロットの基線の0%から頂点の100%に増加する。プロット内の線は、各端の0%から反対側頂点の100%へ10%ずつの増分を示す。
(A)および(B)項記載の組成物の場合、成分(1.1.)、(2)および(3)の相対比率は、好適には第1図の線aにより画定された領域A内に存する。さらに好適には、成分(1.1.)、(2)および(3)の相対比率は、第1図の線bにより画定された領域B内に位置し、これらの比率に基づくミクロエマルジョンは、例えば>24時間の非常に大きな安定性/1000オングストローム未満の平均粒子サイズを有することが判る。従って、第1図を引用して前述した相対比率で成分(1.1.)、(2)および(3)を含むこの発明による組成物は、特に好ましい実施態様を表す。
添付の第2図は、約10重量%のシクロスポリン(例、「シクロスポリン」)を含む(A)による組成物における成分(1.2.)、(2)、例えばミグリオール812および(3)の相対濃度に関する三方向プロットを表す。この場合、(3)は、適当な界面活性剤/共界面活性剤混合物を、例えば11:1ppwの割合で含み、例えば11ppwのクレモフォーRH40および1ppwのグリセリンモノオレエートを含む。成分(1.2.)、(2)および(3)の相対量は、第1図の場合、各々矢印「1.2.」、「2」および「3」により示されている。
(A)および(B)項記載の組成物の場合、成分(1.2.)、(2)および(3)の相対比率は、好適には第2図の線xにより画定された領域X内に存する。
さらに好適には、成分(1.2.)、(2)および(3)の相対比率は、第2図の線yにより画定された領域Y内に存する。最も好適には、成分(1.2.)、(2)および(3)の相対比率は、線zにより画定された第1図の領域Z内に存し、領域YおよびZ内の比率に基づくミクロエマルジョンは、各々1100オングストロームおよび<200オングストローム程度の平均粒子サイズ並びに例えば>24時間の安定性を有する。
さらに(E)による組成物は、既に述べた通り、一般的にはあまり好まれないが、増粘剤を含み得る。適当な増粘剤には、上記(4)項記載の成分のいずれかが含まれる。存在する増粘剤の量は、例えば最終生成物の要求される粘ちゅう性、例えば、例えばカプセルなどへの充填用として、増粘流動性形態とすべきか、または例えば錠剤などの製造用として、鋳造または成型可能な程度に充分弾力性のあるものとすべきか否かにより変化し得る。勿論、この量はまた、選ばれた増粘剤の性質により異なる。一般に、成分(4)が存在する場合、それは組成物の全重量に基づき、約25重量%以下の量、さらに好適には約15または20重量%以下の量、例えば組成物の全重量に基づき0.5または5ないし15または20重量%の量で存在する。
また(E)による組成物は、さらに別の添加剤または成分、例えば組成物(A)および(C)に関連して前述された成分を含有し得る。特に、それらは、例えば組成物の全重量に基づき約0.5または1重量%以下の量で酸化防止剤を、また組成物の全重量に基づき約2.5または5重量%以下の量で甘味料または風味剤を含有し得る。
定義(A)による組成物(E)は、経口投与された場合に、例えば粘ちゅう性および達成された高レベルの生物学的利用能の両方に関して、特に有利な特性を呈することが見出された。特に、また例えば当業界で公知の他の製剤システムとは対照的に、それらの組成物は、胃腸管に存在する界面活性材料、例えば胆汁酸塩類と和合性であることが見出された。従って、それらは、これらの天然界面活性剤を含む水性システム中では充分に分散可能であり、すなわち沈澱または微細粒子構造の他の分裂を呈しない安定したミクロエマルジョン・システムをその場で提供することができる。経口投与時におけるそれらのシステムの機能は、どの特定時点または与えられた個体であっても胆汁酸塩類の存在または非存在とは無関係であり、そして/またはそれにより損なわれることはない。従って、それらの組成物は、この発明の特に好ましい実施態様を表す。
上記(E)による組成物は、好ましくは、例えば経口投与可能なカプセル・シェル、例えばゼラチン軟または硬カプセル・シェル中に充填することにより、または錠剤化もしくは他の成型方法により単位用量形態に製剤化される。組成物(E)が単位用量形態である場合、各単位用量は、好適には約5または10ないし約200mgのシクロスポリン、さらに好適には約15または25ないし約150mg、例えば25、50または100mgのシクロスポリンを含有する。すなわち、1日1回、2回または3回ないし5回投与に適したこの発明による単位用量形態は、1単位用量当たり例えば約50mgまたは約100mgのシクロスポリンを含有するのが適当である。
経口投与用の上記(B)による組成物は、上記(A)または(E)に関して記載された組成物を水または他の水性システムに、例えば甘味または風味を加えた飲用製剤に関して、例えば前述された相対比率(組成物:H2O)で加えることにより製造され得る。すなわち、それらの組成物は、組成物(A)または(E)に関して前に定義または記載された任意のシステムおよびミクロエマルジョン形成に充分な水を含有し得る。
特に、上記(D)項記載の組成物は経口投与を意図したものであるが、例えば皮膚および点眼、非経口または直腸投与を含む局所投与並びに病変部内注射に適した形態での使用も含まれる。
(D)項記載の組成物の場合、シクロスポリンおよび必要成分(1.1.)は、約1:0.5〜200、好ましくは約1:0.5〜100、さらに好ましくは約1:0.5〜50ppwの割合で存在し得る。さらに好適には、それらは、約1:1〜10、さらに好ましくは1:1〜5、最も好ましくは約1:1.5〜2.5、例えば約1:1.6または1:2ppw[シクロスポリン:(1.1.)]の割合で存在する。シクロスポリンおよび必要成分(5)は、好適には約1:3〜200、好ましくは約1:3〜100、さらに好ましくは約1:3〜50ppwの割合で存在する。さらに好適には、それらは、約1:5〜20、好ましくは約1:5〜10、最も好ましくは約1:6.0〜6.5、例えば約1:6.25ppw[シクロスポリン:(5)]の割合で存在する。
好適には(D)による組成物は、経口投与または他の方法であろうと、単位用量形態で製造される。
勿論、それらの単位用量形態に存在するシクロスポリンの量は、例えば処置される状態、意図された投与方法および所望の効果により変化する。しかしながら、一般に(D)による単位用量形態は、好適には1単位用量当たり約2〜約200mgのシクロスポリンを含有する。
経口投与に適した用量形態には、例えば液体、が粒剤などがある。しかしながら、好ましい用量形態は、単位用量形態、例えば錠剤化またはカプセル封入形態、特にゼラチン硬または軟カプセル形態である。
(D)による経口投与用単位用量形態は、1単位用量当たり好適には約5または10〜約200mg、さらに好適には約15または20〜約100mg、例えば25、50または100mgのシクロスポリンを含有する。
組成物(D)は、それらが、修飾された放出特性、例えば経口投与後の、例えばシクロスポリンの遅延放出または長い期間にわたるシクロスポリンの放出を呈する組成物用の基剤を提供し得るという、さらに別の利点を有する。それらの組成物は、さらにシクロスポリンに関する組成物の放出特性を修飾し得る成分を含有する。それらの成分には、例えば(4)、例えば上記(4.1.)〜(4.5.)のいずれかによる増粘剤が含まれる。
組成物(D)が成分(4)を含む場合、これは、好適にはシクロスポリン+(1.1.)+(4)+(5)の全重量に基づき、重量にして約0.5〜50%、さらに好ましくは約1〜20%、最も好ましくは約2〜10%の量で存在する。
既に示した通り、(D)による組成物は、1種またはそれ以上の安定剤または緩衝剤またはポリオキシアルキレン不含有界面活性剤を含むのが有利である。それらの安定剤および/または緩衝剤は、シクロスポリン+(1.1.)+(5)の重量に基づくと、好適には5重量%以下の量で存在するか、またはくえん酸もしくは酢酸を用いる場合には、10重量%以下の量で存在する。前述の界面活性剤が存在する場合、これは、好適には成分(5)の重量に基づき約5〜約50、さらに好ましくは約10〜約25重量%の量で存在する。
また(D)による組成物は、好適には別の添加剤、特に風味剤または特に酸化防止剤を含有する。適当な酸化防止剤および使用量は、組成物(E)に関して前述した通りである。
また(D)による組成物は、好ましくは低級アルカノール類、持にエタノールを含まないかまたは実質的に含まず、例えば低級アルカノール成分の含有割合は、組成物の合計重量に基づくと、5%未満、さらに好ましくは2%未満、例えば0〜1%である。
また(A)〜(C)項記載の組成物は、局所投与用として特に興味深い。従って、さらに別の態様において、この発明は、
(F)局所用、特に皮膚適用、すなわち局所適用に好適または好都合な形態である、上記(A)〜(C)項のいずれか1項記載の組成物
を提供する。
局所投与を考える場合、シクロスポリンは、組成物の全重量に基づくと、好適には約0.05〜、さらに好ましくは約0.1〜約15重量%の量で存在する。さらに好ましくは、シクロスポリンは約0.1〜約10重量%の量で存在する。
(A)または(B)による組成物である組成物(F)の場合、成分(1)、(2)および(3)の相対割合は、例えば第1図および第2図を引用して、それらの組成物に関して前述した通りである。
他方、(C)による組成物(F)は、任意の適当な形態をとり、例えば溶液、懸濁液、分散液および正則エマルジョンを含み得る。成分(1.1.)は、組成物の全重量に基づくと、好適には約1〜約70重量%、好ましくは約5〜約50重量%、さらに好ましくは約7〜約25重量%の量でそれらの組成物中に存在し得る。
組成物(F)は、好適には1種またはそれ以上の担体または希釈剤および/または担体システムを提供する他の成分、例えば増粘剤、乳化剤、保存剤、湿潤剤、着色剤などを含有する。
組成物(F)は、局所適用、例えば皮膚表面への適用に適した任意の形態、例えば水分散性濃厚懸濁形態、例えば液体または半液体形態、粉末形態または局所適用可能なスプレー形態であり得る。適当な水分散性濃厚懸濁形態の例には、例えば水中油および油中水エマルジョンまたはミクロエマルジョンを含む、ゲル、クリーム、ペーストおよび軟膏など、並びにローションおよびチンキ等が含まれる。またそれらの組成物は、例えば湿布およびパップ並びに経皮パッチシステムを含む。
勿論、それらの製剤の製造用賦形剤の選択は、所望の製剤のタイプ並びに処置される特定の病状、病状の程度、処置される領域、皮膚状態および所望の効果により決定される。すなわち、慢性乾せんプラークは、さらに好適には、疎水性、例えば脂肪基剤組成物、例えば担体媒質としてペトロラタム基剤の軟膏またはクリームを含むこの発明による組成物により処置される。反対に、急性相の炎症性プロセスを含む疾患状態は、さらに好適には、親水性の高い組成物、例えば水中油エマルジョンまたはゲル形態であるこの発明による組成物を用いて処置される。組成物(F)は、例えば希釈剤または希釈成分として例えば低級アルカノール類、例えばエタノールを含み得るが、乾せんの場合のように、例えば傷付いた皮膚を処置する場合、これらの使用は避けるのが好ましい。すなわち、好ましい組成物(F)は、アルカノールを含まないか、実質的に含まず、例えばアルカノール成分、特にエタノールの含有割合は、重量にして5%未満、さらに好ましくは2%未満、例えば約0〜1%である。
特に好ましい組成物(F)は、さらに(6)成分(1.1.)とは非混和性である(別の)医薬的に許容し得る希釈剤または担体を含有する(A)、(B)または(C)による組成物である。前記組成物は、好ましくは水不含有または実質的水不含有エマルジョン形態をとり、すなわち10%未満、好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満の水を含む。それらのエマルジョンは、(6)中に成分(1.1.)を含むエマルジョンおよび(1.1.)中に(6)を含むエマルジョンの両方を包含する。好ましくは、それらは(6)中(1.1.)のエマルジョンを含む。
適当な成分(6)は、例えば、
6.1.固体炭化水素、例えばペトロラタム、例えば白色ワセリンまたはバセリン(商標)、セレシンおよび固体パラフィン、並びに動物性、植物性および合成蝋を含む蝋類、例えば鯨蝋、カルナウバおよび蜜蝋、
6.2.液体炭化水素、例えば液体パラフィンおよび脂肪酸エステル類、例えばイソプロピルミリステートおよびセチルパルミテート、
6.3.シリコーン油およびペーストを含む非揮発性シリコーン、およびシリコーン-ポリアルキレンオキシド・コポリマー[参考、フィードラー、前出、1109および1110頁]、例えばピロエチコン(Piroethicon)の商標名で知られ、市販されている製品
を含む。
成分(6)は、組成物の全重量に基づき、重量にして好適には約80%以下、例えば約5〜約70%、好ましくは約25〜約60%の量で組成物(F)中に存在する。
個々の成分(6)またはそれらの混合物の使用により、エマルジョンは、例えば局所適用に望まれる必要条件次第で液体または半固体形態で製造され得る。
また組成物(F)は、好適には界面活性剤を含有する。適当な界面活性剤には、特に、上記(3.2.1.)〜(3.2.7.)項で列挙された成分のいずれかを含む、親油性界面活性剤、特に約5-7のHLBを有する界面活性剤が含まれる。組成物(F)に関して特に有用性のある界面活性剤の例には、例えば上記(3.1.2.)および(3.2.3.)項記載の界面活性剤並びにグリセリンモノステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレートおよびグリセリンリシノレエートがある。
前記界面活性剤は、組成物の全重量に基づき、重量にして好適には約60%以下、例えば約2〜約50%、好ましくは約10〜約40%の量で組成物(F)中に存在する。
さらに組成物(F)は、1種またはそれ以上の粘ちゅう性促進剤、例えば微晶性蝋、植物油、例えばオリーブ油、とうもろこし油および仁油、並びに硬化植物油および植物油部分グリセリドを含む植物油誘導体を、組成物の全重量に基づき例えば約0.1〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%の量で含有し得る。
組成物(F)はまた、好適には
-組成物の全重量に基づき、例えば約0.01〜約0.5重量%の量で、酸化防止剤、例えば組成物(A)に関して前述した酸化防止剤のいずれか、
-組成物の全重量に基づき、例えば約0.05〜約2重量%の量で、抗菌剤、例えばベンジルアルコール、メチル-またはプロピル-パラベン、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ソルビン酸またはクロロブタノール
-組成物の全重量に基づき、例えば約0.1〜約10重量%の量で、安定剤、例えば微晶性澱粉、ナトリウムEDTAまたは硫酸マグネシウム、および/または、
-組成物の全重量に基づき、例えば約1〜約20、好適には約3〜約15重量%の量で、皮膚浸透促進剤、例えばC12-24モノ-またはポリ-不飽和脂肪酸またはアルコール(例、バクセン酸、シスバクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、オレイン酸、ペトロセリン酸、エルカ酸もしくはネルボン酸またはそれらの対応するアルコールのいずれか、特にオレイン酸またはオレイルアルコール)、またはアゾン(Azone)(参考、フィードラー、前出、190頁)として知られている1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン
を含有する。
前記に加えて、この発明はまた、前述の医薬組成物、例えば上記(A)〜(F)のいずれか1項で前述した組成物の製造方法であって、その個々の成分を緊密に混合し、必要ならば、得られた組成物を単位用量形態に製剤化する、例えば前記組成物をゼラチン、例えばゼラチン軟または硬カプセル中に充填することを含む方法を提供する。
さらに特定の実施態様において、この発明は、上記(A)〜(D)のいずれか1項記載の組成物の製造方法であって、シクロスポリン、例えば「シクロスポリン」を、前記成分(1.1.)と緊密に混合することにより(C)項記載の組成物を得、さらに所望により、前記成分(5)とも緊密混合することにより(D)項記載の組成物を得、または前記成分(1.2.)と緊密混合し、ただし、所望により成分(1.1.)を用いる場合または必然的に成分(1.2.)を用いる場合には、前述の成分をさらに前述の成分(2)および成分(3)と合わせ、このとき成分(1.1.)または(1.2.)、(2)および(3)の相対比率を、(A)項記載の組成物が得られるように選び、さらに必要ならば、得られた組成物(A)を水と接触させて(B)項記載の組成物を得、そして必要ならば、得られた組成物(A)、(C)または(D)を単位用量形態、例えばゼラチン軟または硬カプセル形態に製剤化することを含む方法を提供する。
一実施態様において、この発明は、上記(A)項記載の組成物の製造方法であって、シクロスポリン、例えば「シクロスポリン」を前記成分(1.1.)または(1.2.)および前記成分(2)および成分(3)と緊密混合し、ただし、(1.1.)または(1.2.)、(2)および(3)の相対比率を、使用されるシクロスポリンの量に応じて、「ミクロエマルジョン前濃縮物」、例えば、水に加える時点で[例えば少なくとも1:1ppw(組成物:H2O)の割合で]、個々の粒子が2000オングストローム未満、好ましくは約100〜約1000オングストロームのサイズを有する分散または粒子相を含むシステムを提供し得る組成物が得られるように選択することを含む方法を提供する。
この発明の組成物に関して好ましいシクロスポリンは、「シクロスポリン」である。この発明の教理が適用され得るさらに好ましいシクロスポリンは、シクロスポリンGとしても知られている[Nva]2-「シクロスポリン」である。
以下、実施例によりこの発明による組成物の説明を行う。実施例1、2、4、5および7は、1〜5単位用量/日の投与割合で、例えば移植拒絶の阻止または自己免疫疾患、例えば前述の自己免疫疾患または状態のいずれかの処置における使用に過した経口単位用量形態の組成物の製法を説明する。実施例3および6は、一定間隔、例えば1日1回、2回または3回、治療が望まれる部位、例えば皮膚炎反応もしくは乾せん病変部または頭皮に通用される、例えばアトピー性または接触皮膚炎、乾せんまたは脱毛の処置に適した、局所適用組成物の製法を示す。
これらの実施例は、特に「シクロスポリン」に関して記載されている。しかしながら、任意の他の適当なシクロスポリンを用いても均等内容組成物が製造され得る。特に均等内容組成物は、全ての場合において「シクロスポリン」に関して示した量と同量で「シクロスポリン」を「Nva]2-「シクロスポリン」と置き換えることにより得られる。
[実施例]
実施例1
経口用量形態:「ミクロエマルジョン前濃縮物」タイプの製造。

シクロスポリンを室温で撹はんしながら(1.1)に溶かし、得られた溶液に(2.1.)および(3.1.1.)を再び撹はんしながら加える。得られた混合物をサイズ1のゼラチン硬カプセルに充填し、クオリ-シール技術を用いて密閉する。
下記組成物は、サイズ1または2のゼラチン硬カプセルに充填することにより同様に製造され得る。



組成物1.1、1.2、1.6および1.7は特に好ましい。1.1〜1.5と同等な組成物は、全ての場合において、グリコフロールを同一または同等量のトランスクトールと置き換えることにより製造され得る。
組成物1.1〜1.5と同等な組成物は、50mgのシクロスポリンを15、20または100mgのシクロスポリン(例、「シクロスポリン」)と置き換え、各組成物における残りの成分を示された通りの量で用いることにより製造され得る。
実施例2
経口用量形態:「ミクロエマルジョン前濃縮物」タイプの製造。


シクロスポリンおよび(1.1.)〜(3.1.1.)を実施例1と同様に合わせ、得られた混合物を(4.2.)と均一に混合する。生成物をサイズ2のゼラチン硬カプセルに充填する。
下記組成物は同様の方法で製造され得る。

2.1〜2.3と同等な組成物は、グリコフロール成分を同一または同等量のトランスクトールと置き換えて製造され得る。
実施例3
局所適用可能形態:「ミクロエマルジョン前濃縮物」タイプの製造。

上記組成物は実施例1と同様にして製造される。グリコフロール成分をトランスクトールと置き換えると、同等な組成物が得られる。この組成物は、別の添加剤、例えば前述のヒドロコロイド増粘剤、パラフィン等と組み合わせることにより、クリーム、ゲルなどの基剤にされ得る。
実施例4
経口用量形態:正則エマルジョン前濃縮物タイプの製造。

シクロスポリンを室温で撹はんしながら(1.1.)に溶かし、(3.1.1.)および(3.2.1.)を再び撹はんしながら得られた溶液に加える。得られた混合物をサイズ1のゼラチン硬カプセルに充填し、クオリ-シール技術を用いて密封する。
下記組成物も同様に製造され得、サイズ1または2のゼラチン硬カプセルに適宜充填される。


4.1、4.2または4.4のトランスクトールを同一または同等量のグリコフロールと、または4.3のグリコフロールを同一または同等量のトランスクトールと置き換えることにより、同等な組成物が製造され得る。
実施例5
経口用量形態:増粘化エマルジョン前濃縮物タイプの製造。


(3.1.1)、(3.2.1)および(4.1)を合わせ、撹はんし、軽く温めながら(1.1)に溶かす。次いで、シクロスポリンを軽く温め、さらに撹はんしながら加え、生成物をサイズ2のゼラチン硬カプセルに充填し、密封する。
下記組成物も同様の方法で製造され得、サイズ1または2のゼラチン硬カプセルに適宜充填される。

トランスクトール成分を同一または同等量のグリコフロールを置き換えることにより、同等な組成物が製造され得る。
実施例6
局所用量形態:エマルジョンタイプの製造。
上記実施例2および5と同様の方法で、示された成分を緊密に混合することにより下記組成物を調製すると、局所適用に適した軟膏製剤が得られる。

実施例7
経口用量形態:糖エステルタイプの製造。


(*三菱化成食品会社(東京104、日本)から市販されている製品:HLB=少なくとも12.3、ラウリルエステル残基純度=少なくとも95%、融点=約35℃、約235℃で分解、0.1重量%水溶液の表面張力=72.0dyn/cm、25℃)
実施例7.1の組成物は、シクロスポリンおよび(5)を撹はんし、100℃の油浴において温めながら成分(1.1)に溶かすことにより製造される。実施例7.2および7.3の組成物も同様の方法で製造される。
得られた組成物を温めながらゼラチン硬カプセル・サイズ1(組成物7.1および7.2)または0(組成物7.3)に充填する。
この発明による組成物の有用性は、例えば下記要領で実施された動物または臨床試験において示され得る。
イヌにおけるこの発明による組成物に関する生物学的利用能試験
a)試験組成物
組成物I 実施例1.1による
組成物II 1.2
組成物III 1.6
組成物IV 2.1
組成物V 2.2
組成物VI 4.4
組成物VII 5.3
b)試験方法
8匹のビーグル犬(雄、約11-13kg)から成る群を使用する。試験組成物投与の18時間以内には動物に一切食物を与えないが、投与時まで水には自由に近付けさせる。胃管栄養法により試験組成物、次いで20mlのNaCl-0.9%溶液を投与する。試験組成物投与の3時間後には動物を食物および水に自由に近付けさせる。
投与後-15分(ブランク)、30分、および1、1.5、2、3、4、6、8、12および24時間の時点で2mlの血液試料(またはブランクとして5ml)を伏在静脈から採取し、EDTA含有5mlプラスチック管に集める。血液試料を検定実施まで-18℃で貯蔵する。
血液試料をRIA(ラジオイムノアッセイ))により分析する。血中薬剤濃度対時間曲線下領域を台形規則により算出する。AUC(曲線下領域)、Cmax(最大濃度)およびTmax(最大の時間)に関して変動分析を行う。
c)結果
定型的試験進行状況から算出された平均AUC(ng時/ml-1で)およびCmax(ng/ml-1で)値を、同じ組成物を投与された試験動物間において算出された応答変化(CV)と一緒に下表に示す。

上表から明らかな通り、この発明による組成物は、AUCおよびCmaxの両方に関する対象応答の比較的低い可変性と結び付いた高い生物学的利用能(AUCおよびCmax)を呈する。
この明細書における実施例1、2、4、5および7による他の組成物、特に実施例1の組成物を用いてもこれに匹敵し得る有利な結果が得られる。
経口投与に関するこの発明の組成物の有利な特性はまた、例えば下記要領で実施される臨床試験において立証され得る。
試験対象は成人ボランティア、例えば専門教育を受けた30〜55歳の男性である。試験群は、好適には12対象で構成される。
下記の算入/除外基準が適用される。
算入:正常スクリーニングECG、正常血圧および心はく数、体重=50-95kg。
除外:薬剤吸収、分配、代謝、排出または安全性を妨げ得る臨床的に重大な介人性医学的状態;2週間の試験前期間における重大な臨床的疾患の徴候;臨床的に意味のある異常な実験値または心電図;試験の全過程中における同時医療の必要性;試験前3箇月以内における主要臓器系に対して充分定義された毒性を有し得ることが知られている薬剤の投与;試験開始前6週間以内における研究中薬剤の投与;薬物またはアルコール依存症の病歴;過去3箇月間以内における500mlまたはそれ以上の血液喪失;薬剤副作用または過敏症;薬剤療法を必要とするアレルギー;B型肝炎/HIV陽性。
完全な物理試験およびECGを試験の前および後に実施する。試験前および後の1箇月間以内に下記パラメーターを評価する。
血液:-赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球沈降、スミアー、白血球数、血小板数および空腹時グルコース、
血清/血しょう-総蛋白質および電気泳動、コレステロール、トリグリセリド、Na+、K+、Fe++、Ca++、Cl-クレアチニン、尿素、尿酸、SGOT、SGPT、-GT、アルカリ性ホスファターゼ、総ビリルビン、α-アミラーゼ、
尿-pH、ミクロアルブミン、グルコース、赤血球、ケトン体、沈澱物。
また、クレアチニン・クリアランスは試験開始の1箇月前に測定する。
対象には各々無作為順序で試験組成物を投与する。組成物を経口投与し(1回、合計用量150mgのシクロスポリン、例「シクロスポリン」)、各投与の間、少なくとも14日おく。
10時間の一夜絶食後(ただし、水のみ許可する)の朝に投与を行う。カフェイン不含有飲料のみ投与後24時間以内に許可する。対象は、投与後12時間以内に喫煙を許されない。投与4時間後、対象に標準的昼食を与える。
試験の1時間前並びに試験後0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、9、12、14、24、28および32時間の時点で血液試料(2ml)を採取する。クリアランス測定のため、投与直前および投与の12、24および48時間後に2mlの血液試料を採取する。シクロスポリン測定用試料を、各時点で2本のEDTA被覆ポリスチレン管(各々1ml)に集め、穏やかに撹はん後、-20℃で急速冷凍する。特異的および/または非特異的MABアッセイ(両場合とも検出限界=約10ng/ml)によるRIAを用いて全血中におけるシクロスポリンを測定する。
前記の一試験では、この発明による上記組成物I(ゼラチン硬カプセル封入形態)を組成物Xと比較する。
組成物X[比較(作為的)組成物]
下記成分を含む単位用量形態(ゼラチン軟カプセル):
シクロスポリン 50mg
ラブラフィル 150mg
エタノール 50mg
とうもろこし油 213mg
合計463mg/用量
(最新のサンディムン経口飲用液)
この方法で行なわれた試験では、組成物X(達成された生物学的利用能を100%とする)の場合と比べると、組成物Iの場合には149.0%(±48)の生物学的利用能レベルが記録される。組成物Iに関して確立されたAUC値(0-32時間ng・時/ml)およびCmax値(ng/ml)は、組成物Xにおける2137(±606)および515(±180)と比べ、各々2992(±627)および882(±18)である。
添付の第3図および第4図は、特異的モノクローナルRIA測定による、各々150mgのシクロスポリン用量を与える量での組成物1(第3図)および組成物X(第4図)の単一経口投与後に、12名の被験者全員に関して報告された全血シクロスポリン濃度に関する前記試験結果を重ね合わせてグラフ化したものを提供する。血液濃度(ng/ml)を垂直に、時間(時間)を水平に記録する。
第3図および第4図を比較すると、組成物Xの場合と比べて、組成物Iを投与した場合に記録された生物学的利用能パラメーターに関する対象間応答の可変性における著しい減少が明らかに立証される。組成物XにおけるCmaxに関して測定された変動係数[(標準偏差/平均値)×100]は35%であるが、これに比べて組成物Iの場合の値は20%に過ぎない。
この発明による他の組成物、例えば前記実施例に記載された組成物、特に実施例1の組成物の経口投与後にも類似または同等結果が得られる。
局所形態に関するインビボ試験
モルモットにおけるアレルギー性接触皮膚炎
毛を剃った左右脇腹の印を付けた領域ヘアセトン/オリーブ油(4:1)中50μl、0.5%DNFBを適用することにより、モルモット(ハートレイ、雄、400-500g)を感作する。この第2の攻撃的暴露は、アレルギー性炎症を誘発するため、皮膚は赤くなり細胞浸潤(肥厚)が生じる。200-250mgの量で試験組成物(例、上記実施例3.6.1または3.6.2による)をスパチュラにより右脇腹のDNFB処置領域に適用する。対照として左脇腹を同様にプラセボにより処置する。試験組成物/プラセボの適用を攻撃後20分、8時間、24時間、32時間および48時間の間をあげて5回行う。皮膚を折り重ね、この厚さを測定することにより、各適用前および最終通用の8時間後に再び適用部位の皮膚の厚さを測定する。また、発赤または炎症の程度を0〜4の尺度で視覚的に評価する。プラセボ処置した脇腹に関して報告された結果と比べることにより、炎症応答阻止における試験製剤の効果を測定する。
上記試験方法において、例えば実施例3.6.1または3.6.2による試験組成物の適用後にはブラセボの場合と比べて皮膚の厚さのかなりの減少が達成され、実験完了まで処置全体を通して継続する。
以下、実施例3の組成物に関して報告された結果を示す。

(1)有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物であって、「ミクロエマルジョン前濃縮物」である組成物。
(2)1)親水相
2)親油相、および
3)界面活性剤
を含有する、1記載の組成物。
(3)1.1)低分子量モノもしくはポリ-オキシ-アルカンジオールの医薬的に許容し得るC1-5アルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ-もしくは部分エーテル、または
1.2)1,2-プロピレングリコール
を親水性成分として含有する、2記載の組成物。
(4)親水性成分としてトランスクトールまたはグリコフロールを含有する、2記載の組成物。
(5)親油性成分として中位鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する、2記載の組成物。
(6)ミクロエマルジョンである、有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物。
(7)1記載の組成物および水を含有する6記載の組成物。
(8)(1.1)低分子量モノもしくはポリ-オキシ-アルカンジオールの医薬的に許容し得るC1-5、アルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ-もしくは部分エーテルと一緒に、有効成分としてシクロスポリンを含有する医薬組成物。
(9)さらに5)脂肪酸サッカリド・モノエステルを含有する、8記載の組成物。
(10)各々(1.1)+(2)+(3)の合計に基づき、重量にして約15〜約85%の(1.1)、約2〜約40%の(2)および約15〜約85%の(3)を含有する、3記載の組成物。
(11)各々(1.2)+(2)+(3)の合計に基づき、重量にして約3〜約35%の(1.2)、約2〜約35%の(2)および約45〜約90%の(3)を含有する、3記載の組成物。
(12)[シクロスポリン]+[(1.1)または(1.2)]+(2)+(3)の会計に基づき、シクロスポリンが、重量にして約2〜約30%の量で存在する、10または11記載の組成物。
(13)シクロスポリンおよび(1.1)が約1:0.5〜200ppw[シクロスポリン:(1.1)]の割合で存在し、シクロスポリンおよび(5)が約1:3〜200ppw[シクロスポリン:(5)]の割合で存在する、9記載の組成物。
(14)単位用量形態であり、約5〜約200mgのシクロスポリン/単位用量を含有する、1または8記載の組成物。
(15)シクロスポリンが「シクロスポリン」(Ciclosporin)である、1または8記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
第1図は、約10重量%のシクロスポリンを含む(A)による組成物における成分(1.1)、(2)および(3)の相対濃度に関する3方向プロットを示す。
第2図は、約10重量%のシクロスポリンを含む(A)による組成物における成分(1.2)、(2)および(3)の相対濃度に関する3方向プロットを示す。
第3図および第4図は、それぞれ、組成物I(第3図)および組成物X(第4図)の単一経口投与後に、12名の被験者全員に関して記録された全血シクロスポリン濃度を示すグラフである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-07-23 
出願番号 特願平1-239795
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A61K)
P 1 41・ 856- Y (A61K)
P 1 41・ 531- Y (A61K)
P 1 41・ 853- Y (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松浦 新司  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 竹林 則幸
深津 弘
登録日 1995-12-08 
登録番号 特許第1996397号(P1996397)
発明の名称 シクロスポリン含有医薬組成物  
代理人 高山 裕貢  
復代理人 高山 裕貢  
代理人 岩崎 光隆  
代理人 岩崎 光隆  

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