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関連判例 | 平成16年(行ケ)44号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B |
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管理番号 | 1104046 |
審判番号 | 不服2002-14968 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-12-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-08 |
確定日 | 2004-10-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第140899号「使い捨て紙おむつ」拒絶査定に対する審判事件[平成11年12月21日出願公開、特開平11-347064]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成9年4月9日に出願した特願平9-90697号の一部を平成11年5月21日に新たな特許出願としたものであって、平成14年7月9日に拒絶査定がなされ、これに対して平成14年8月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年9月9日に手続補正がなされたものである。 II.平成14年9月9日の手続補正についての却下の決定 [補正却下の結論] 平成14年9月9日の手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「透液性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収体を有し、さらに製品の両側にバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて、 (1)前記吸収体の両側縁より外方であって、かつ、少なくとも股間部において長手方向に沿って; 先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第2バリヤーカフスと、その位置より内方において、先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第1バリヤーカフスと、前記吸収体の両側縁より外方であって前記第2バリヤーカフスより外方位置にガスケットカフス用弾性伸縮部材を設けて形成したガスケットカフスとを有し、 (2)前記第1バリヤーカフスを構成するバリヤーシートと前記第2バリヤーカフスを構成するバリヤーシートとを共通の1枚のシートで形成し、 (3)前記第2バリヤーカフスの起立線が、前記ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置していることを特徴とする使い捨て紙おむつ。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、第2バリヤーカフスより外側位置に設けた「弾性伸縮部材」を、「ガスケットカフス用弾性伸縮部材」と限定すると共に、「第2バリヤーカフス」の位置について、「前記第2バリヤーカフスの起立線が、前記ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置している」旨の限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用した、実願平2-403992号(実開平4-90322号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という)には、次の記載事項1~記載事項3の事項が図面とともに記載されている。 記載事項1.(4ページ7行~18行、【0002】段落) 「【0002】 【従来の技術】 従来、使い捨てオムツなどの着用物品に関する特開昭62-250201号公報において、透液性内面シートと不透液性外面シートとの間に介在した吸液性コアの対向側縁から外側へ延出し弾性部材が取り付けられたベースフラップ(ガスケットカフス)と、それぞれ弾性部材の内側におけるベースフラップの上面から分岐しその自由縁に取り付けられた弾性部材の収縮力でその分岐縁から起き上がる性向を有する分岐フラップ(バリヤカフス)とを備えているものが開示されている。前記ベースフラップは着用者の大腿に圧接する。前記分岐フラップは、内側へ倒された状態で縦方向対向端において固定されていて、その中央部がその収縮力で起き上がる性向を有し、その中央部の自由縁が着用者の大腿付根に圧接する。」 記載事項2.(5ページ20行~6ページ1行、【0007】~【0008】段落) 「【0007】 【実施例】 図面を参照して、この考案に係る着用物品の実施例を、使い捨てオムツを例にとって説明すると、以下のとおりである。 【0008】 図1ないし図3に示すように、オムツ10は、透液性内面シート11と、不透液性外面シート12と、吸液性コア13と、両側にそれぞれ位置する、ベースフラップ14、第1分岐フラップ15及び第2分岐フラップ16とを有している。ベースフラップ14は、コア13の外側縁から外側方向へ延出し互いに接着剤又は溶着(超音波溶着を含む)で接合する内外面シート部分17,18から成っている。」 記載事項3.(6ページ2行~6ページ12行、【0009】段落) 「【0009】 第1及び第2分岐フラップ15,16は、シート19から成り、そのほぼ中央部がベースフラップ14の上面に接着剤又は溶着(超音波溶着を含む)で接合している。更に、第1分岐フラップ15は、シート19の一部から形成されたスリーブ部20の自由縁内に、その長さ方向への伸長下に取り付けられた弾性部材21で弾性伸縮化され、その弾性伸縮力でベースフラップ14上における分岐縁22を支点として上方向へ起き上がる性向を有している。第2分岐フラップ16は、自由縁に形成されたスリーブ部23内に、その長さ方向への伸長下に取り付けられたもう一つの弾性部材24で弾性伸縮化され、その弾性伸縮力でベースフラップ14上の、分岐縁22と内側へ適宜離れたもう一つの分岐縁25を支点として起き上がる性向を有している。・・・(以下省略)・・・」 3.対比 本願補正発明と、上記引用例に記載されたものとを対比する。 引用例には、「使い捨てオムツ」が記載されており、この、「オムツ10は、透液性内面シート11と、不透液性外面シート12と、吸液性コア13と、両側にそれぞれ位置する、ベースフラップ14、第1分岐フラップ15及び第2分岐フラップ16とを有している」(記載事項2参照)。 そこで、引用例に記載された「使い捨てオムツ」は、本願訂正発明の「使い捨て紙おむつ」に、「透液性内面シート11」は「透液性トップシート」に、「不透液性外面シート12」は「不透液性バックシート」に、「吸液性コア13」は「吸収体」に、それぞれ相当する。 また、引用例に記載された「第1分岐フラップ15」及び、その内側にある「第2分岐フラップ16」は、図2,図3を参照すると、吸液性コア13の両側縁より外側で、少なくとも股間部の長手方向に沿って設けられており、それぞれ、自由縁に弾性部材21,24を有しており、その収縮力により、各々の分岐縁22,25を支点として、上方向すなわち着用者側に起き上がるようになっている(記載事項3参照)。 さらに、引用例に記載された「第1分岐フラップ15」及び「第2分岐フラップ16」は、共通のシート19で形成されている(記載事項3,図3参照)。 そこで、引用例に記載された「第1分岐フラップ15」、「第2分岐フラップ16」は、それぞれ、本願訂正発明の「第2バリヤーカフス」、「第1バリヤーカフス」に相当する。 したがって、本願補正発明の用語を用いて対比すると、両者は次の一致点で一致する。 (一致点) 「透液性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収体を有し、さらに製品の両側にバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて、 (1)前記吸収体の両側縁より外方であって、かつ、少なくとも股間部において長手方向に沿って; 先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第2バリヤーカフスと、その位置より内方において、先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第1バリヤーカフスとを有し、 (2)前記第1バリヤーカフスを構成するバリヤーシートと前記第2バリヤーカフスを構成するバリヤーシートとを共通の1枚のシートで形成し、 ていることを特徴とする使い捨て紙おむつ。」 そして、両者は次の相違点1及び2で相違する(対応する引用例記載の用語を()内に示す)。 相違点1. 本願補正発明は、吸収体の両側縁より外方であって、第2バリヤーカフスより外方位置に、ガスケットカフス用弾性伸縮部材を設けて形成した、ガスケットカフスを有しているのに対し、引用例に記載されたものは、吸収体(吸液性コア13)の両側縁より外方に位置するベースフラップ14の、第2バリヤーカフス(第1分岐フラップ15)より外方の部分に、ガスケットカフス用弾性伸縮部材を設けていないので、ガスケットカフスを有さない点。 相違点2. 本願補正発明では、第2バリヤーカフスの起立線が、ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置しているのに対し、引用例に記載されたものは、そもそも、ガスケットカフス用弾性伸縮部材を設けていないので、第2バリヤーカフス(第1分岐フラップ15)の起立線(分岐縁22)は、ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置していない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 相違点1.について 一般に、吸収体の両側縁外方にバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて、横漏れ防止のために、ガスケットカフス用弾性伸縮部材を、ベースフラップのバリヤーカフスの外側位置に設けて、ガスケットカフスを形成したものは、例えば、引用例に従来技術として紹介されている、特開昭62-250201号公報(記載事項1参照)を始めとして、特開平6-14960号公報、特開平7-328067号公報及び特表平8-512224号公報等に示すように周知であるので、引用例記載のものにおいて、横漏れ防止効果を一層高めるために、ベースフラップの第2バリヤーカフス(第1分岐フラップ15)の外側位置に、ガスケットカフス用弾性伸縮部材を設けて、ガスケットカフスを形成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点2.について 一般に、吸収体の両側縁外方にバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて、バリヤーカフスの起立線を、ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置させることも、例えば、上記「相違点1.について」で示した、特開平6-14960号公報や、特開平7-328067号公報に示すように周知であるので、相違点2に係る構成のようにすることも、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載されたもの、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 平成14年9月9日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成14年6月3日の手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「透液性トップシートと不透液性バックシートとの間に吸収体を有し、さらに製品の両側にバリヤーカフスを有する紙おむつにおいて、 (1)前記吸収体の両側縁より外方であって、かつ、少なくとも股間部において長手方向に沿って; 先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第2バリヤーカフスと、その位置より内方において、先端付近に弾性伸縮部材を有し、その収縮力により装着時において着用者側に起立する第1バリヤーカフスとを有し、 (2)前記第1バリヤーカフスを構成するバリヤーシートと前記第2バリヤーカフスを構成するバリヤーシートとを共通の1枚のシートで形成し、 (3)前記吸収体の両側縁より外方であって前記第2バリヤーカフスより外方位置に弾性伸縮部材を設けてガスケットカフスを形成した、 ことを特徴とする使い捨て紙おむつ。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記II.2に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明から、第2バリヤーカフスより外側位置に設けた「弾性伸縮部材」を、「ガスケットカフス用弾性伸縮部材」であるとした限定を省くと共に、「第2バリヤーカフス」の位置についての、「前記第2バリヤーカフスの起立線が、前記ガスケットカフス用弾性伸縮部材の近傍に位置している」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例に記載されたもの、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例に記載されたもの、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-26 |
結審通知日 | 2003-11-28 |
審決日 | 2003-12-10 |
出願番号 | 特願平11-140899 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A41B)
P 1 8・ 121- Z (A41B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 松縄 正登 |
発明の名称 | 使い捨て紙おむつ |
代理人 | 永井 義久 |