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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) D06F |
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管理番号 | 1107221 |
審判番号 | 無効2002-35488 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-05-20 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-11-11 |
確定日 | 2004-12-02 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2949062号発明「物干竿に対するハンガーの係止装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2949062号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 当事者の求めた審決 1 請求人 結論同旨 2 被請求人 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 第2 事案の概要 本件は、請求人が、本件特許第2949062号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1に係る発明についての特許(以下「本件特許」という。)は、特許法第29条の規定に違反してされたものであると主張して、その無効を求めている事案である。 1 争いのない事実 当事者の提出した証拠及び口頭審理の結果から次の事実が認められる。 (1) 手続の経緯 平成 7年11月10日 特許出願(特願平7-317328号) 同 11年 7月 2日 特許権の設定登録 同 14年11月11日 本件審判請求 同 15年 1月31日 答弁書提出 同 15年 3月26日 弁駁書及び陳述要領書(請求人)提出 同 15年 4月 9日 理由補充書(請求人)提出 同 15年 5月16日 意見書(被請求人)提出 (2) 本件発明 本件発明を特定するために必要と認める事項(以下「特定事項」という。)は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりであると認めるところ、特定事項毎に符号を付して表記すると以下のとおりである。 「【請求項1】 A 弾性を具備する資材により、ハンガーAの主体部1の上部に設けた鈎部 2の内側空間を横切る長さの長脚片30と前記内側空間の内径より短い長 さの短脚片31とがボス部3aからV字状に突出し、かつ、それらの突出 端側の間隔dが物干竿Sの直径Dより幾分狭い距離となる形状の係着部材 3を形成し、 B その係着部材3を、それの長脚片30が上位で短脚片31が下位となる 姿勢とし、かつ、その長脚片30が鈎部2の内側空間を横切りその長脚片 30と短脚片31との間隔内に物干竿Sの周面の一半側を抱き込ませた状 態においてその物干竿Sの周面の他半側が鈎部2の内壁面wに圧接してい くように配位し、鈎部2に設けた連結軸4に、ボス部3a中心に上下に回 動するように装架して、長脚片30と短脚片31との間隔内に周面の一半 側を抱え込む物干竿Sの周面の他半側を、長脚片30と短脚片31の弾性 の復元力により鈎部2の内壁面wに圧着させてハンガーAを物干竿Sに係 着させるようにした C ことを特徴とする物干竿に対するハンガーの係止装置。」 2 当事者の主張 (1) 請求人の主張の概要 請求人は、証拠として本件特許公報である甲第1号証並びに本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証(実願平4-37663号(実開平6-3294号)のCD-ROM)及び甲第3号証(実願昭59-105336号(実開昭61-21490号)のマイクロフィルム)を提出して、おおよそ以下のように主張している。 本件発明と甲第2号証又は甲第3号証記載の発明とを対比すると、本件発明と甲第2号証又は甲第3号証記載の発明とは、特定事項の大部分が一致しており、本件発明と甲第2号証又は甲第3号証記載の発明との相違は、本件発明では、係着部材3を弾性を具備する資材により形成し、物干竿Sの周面の他半側を、係着部材3の長脚片30と短脚片31の弾性の復元力により鈎部2の内壁面wに圧着させているのに対して、甲第2号証又は甲第3号証記載の発明では、そのようになっていない点だけである。 しかしながら、甲第2号証の【図1】~【図20】の実施例は、板ばね等弾性部材を使用している。例えば、段落【0008】の弾性部材51、段落【0009】の弾性部材57、段落【0010】、【0011】の板ばね61、段落【0012】の板ばね71等である。このような板ばねの復元力によって物干し竿4をフック部分へ加圧している。ハンガーを安定保持する為に板ばね等の弾性変形資材の復元力を利用して物干し竿をフック部分へ押圧する技術は、当業者が常時実施している普通の技術である。 したがって、甲第2号証における【図21】~【図26】の腕154、155(又は旋回部材161)を板ばね等の弾性資材に変換し、その復元力を利用して物干し竿4を押さえる発想を得ることについて、この発明を予測する為の阻害要因は何等なく、当業者の容易に発明し得るところである。 本件発明によれば、弾性資材の例として「合成樹脂材により成形」(甲第1号証段落【0020】)としているが、甲第3号証の実施例に示されたフック8も図示された形状から合成樹脂成形品と推定できる。何故ならば、現に実用化されているこの種係着部材の実施例は、金属板ばね材又は金属線ばね、或いは合成樹脂成形品からなっているからである。 したがって、甲第3号証の第2図の実施例によれば、掛鉤5を下げると、フック8は支軸11を中心にして回動し、物干竿20を図示のように押し込み、その結果掛鉤5、フック8の3点に強い力がかかり、安定保持する。フック8、掛鉤5のいずれが弾性変形するか否か不明であるが、いずれにしても物干竿20が当接面で弾性的圧力により加圧保持されることは明らかである。 甲第2号証の【図21】~【図26】の実施例によれば、V字状の腕により、物干し竿4をフック部分3へ押しつけている。この場合に腕154、155が合成樹脂成形品であれば、多少の弾性があるので、その復元力がある。また、金属製とすれば、必ず弾性金属でなければならない。何故ならば、弾性金属でなければ、変形する毎に永久変形し、ついには物干し竿4を押さえつけられなくなるからである。 したがって、本件発明は、甲第2号証、甲第3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。 (2) 被請求人の主張の概要 これに対して、被請求人は、おおよそ以下のように反論している。 ア 甲第2号証の第3の実施例の落下防止機構15は、旋回部材151の一方の腕154を、外面側がフック部分3の内壁面の曲率に対応し、内面側がこの外面側と平行する弧状のアーム状をなし、かつ、突出端側の外面側に、フック部分3の両側面に対し重合して嵌合していく一対の突起部を具備する形状に形成し、また、旋回部材151の他方の腕155にあっては、内面側に、内側に向けて膨出する肉厚部を形設して、その肉厚部の内面に物干竿4の周面の曲率に倣う弧状の凹面を形成し、その肉厚部よりも先端側を外側に向けて屈曲して突出する角片に形成している形状のものであって、旋回部材151の全体が、不整な形状の略くの字状をなすように形成してあるものであって、本件発明の特定事項Aにおける「係着部材3」の形状とは異なる形状のものである。 本件発明における「係着部材3」は、長脚片30と短脚片31とがボス部3aからV字状に突出することでV字形に形成されるものではあるが、そのV字形は、長脚片30と短脚片31との間隔内に物干竿Sの周面の一半側を抱き込むようになり、物干竿Sがその間隔内に押し込まれることで、長脚片30と短脚片31とを撓わませてそれらの間隔を拡げながらその間隔内に物干竿Sを嵌入していくようになるV字形である。 これに対して、甲第2号証の前述の実施例の落下防止機構15の旋回部材151は、短脚片31に対応する他方の腕155の肉厚部の内面側に物干竿4の周面に倣う凹面が形成されていることから、フック部分3を物干竿4に引き掛けることで、この旋回部材151の一方の腕154がそれの下面側に当接してくる物干竿4により、その一方の腕154が上方に回動し、それに伴い他方の腕155が回動して、物干竿4を、他方の腕155が抱え上げるようになったとき、その物干竿4の周面が他方の腕155の内面に形成してある凹面に嵌合することで、その嵌合により規制される位置に保定されるようになって、その位置から間隔の奥に向けてずり込むようにはならず、そのため、間隔を押し拡げるように腕154と腕155とを撓曲させるようになることはなく、その撓曲の復元により物干竿4を間隔の外に向けて押し出すようになることのないものである。 しかも、この第3の実施例の落下防止機構15の旋回部材151は、甲第2号証の段落【0022】に「図27、図28および図29には、第3の実施例のさらに別の変形例を示している。この例の落下防止機構17においては、旋回部材を板バネ171から形成し、」とあるように、弾性部材を用いたものではなく、かつ、物干竿4に引き掛けたときに、その物干竿4により押し上げられる上位側の腕154は、それの上面側がフック部分3の内壁面の上縁側に接当して一体的に重合することで、物干竿4による荷重をフック部分3に支えさせるようになっているものであるから、物干竿4により押し上げられる上位側の腕154と共に回動する下位側の腕155によって物干竿4を上方に押しつけるようになるだけのものである。 それ故、この甲第2号証の第3の実施例における旋回部材151は、本件発明におけるV字状の係着部材3と対応するものではなく全く別異の形状・構成のものであり、これにより、前述の本件発明におけるV字状の係着部材3についての構成が、甲第2号証に開示されている、とし得る内容のものではない。 イ 本件発明の特定事項のうちで、甲第2号証に開示されていない構成は「弾性を具備する資材により、長脚片30と短脚片31を構成している」点だけではない。ハンガーAの主体部1の上部に設けた鈎部2に旋回自在に設ける係着部材3を、「弾性を具備する資材により、鈎部2の内側空間を横切る長さの長脚片30と前記内側空間の内径より短い短脚片31とが、ボス部3aからV字状に突出し、かつ、それらの突出端側の間隔dが物干竿Sの直径Dより幾分狭い距離となる形状の係着部材3に形成する」点と、「この係着部材3の長脚片30と短脚片31との間隔d内に物干竿Sの周面の一半側が抱き込まれたときに、その物干竿Sが押し込まれることで、長脚片30と短脚片31とを押し拡げながら間隔内に押し込まれ、その長脚片30と短脚片31とが弾性の復元力で閉じ合わされる方向に復元することで物干竿Sを逆に間隔dの外に向け押し出していくようにする」点である。これらの点についての開示は、甲第2号証には全くない。 ウ 本件発明におけるV字状をなす長脚片30と短脚片31との弾性による復元力は、長脚片30と短脚片31とが、それらの間隔d内に押し込まれる物干竿Sによりその間隔dを拡げる方向に撓曲した状態から、その間隔dを閉じ合わせる方向に復元してくるときに、物干竿Sを挟み付ける方向に働く長脚片30と短脚片31との二つの復元方向の力が合成されて、物干竿Sを間隔dの開放口側に押し出していくように働く復元力である。 すなわち、撓んだ弾性材が、それの復元により、撓んだ方向と逆方向に物干竿Sを押し返す通常の弾性の復元力を利用したものではなく、弾性材よりなる長脚片30と短脚片31とが、それらの間隔内に挟み込むようになった物干竿Sを、撓曲して復元する方向に対し略90度方向を変えて、間隔dから押し出す方向に合成された応力として用いている復元力である。 本件発明は、このV字状に対向する長脚片30と短脚片31とが弾性により復元してくるときの合成応力により物干竿Sを間隔dの開放口の外側に向けて押し出し、それにより物干竿Sを鈎部2の内壁面wに圧着させるようにしている技術思想のものである。 そして、この本件発明の技術思想は、甲第2号証には全く記載がなく、また、甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。 請求人の主張は、この本件発明の技術思想を看過して、本件発明を誤解してなされたもので理由のないものである。 また、合成樹脂材のプラスチック成形品は、通常、硬質のものとして成形されているところ、甲第3号証の第2図のものは、それのフック8の内面側に、弾性変形するゴム等のスベリ止め7を設けていることから、そのフック8は、弾性変形のない通常の硬質のプラスチック成形品と見られるものであり、これをもって、フック8が弾性変形する資材よりなるものであるとはいえないものである。 しかも、このフック8は、下位側の腕が、内側に湾曲する弧状に成形されていて、上位側の腕との間に嵌入する物干竿20を、抱え込むようになっているもので、物干竿20を間隔の外に押し出すようにはならないものであり、本件発明とは、全く技術手段の内容が相違するものであって、本件発明の進歩性を否定する理由となるものではない。 エ 甲第2号証の【図1】~【図20】記載の実施例は、板ばねその他の弾性資材の復元力が、復元する方向にストレートに働いて物干竿4をダイレクトに押し上げているものであって、本件発明の、V字状に対向する長脚片30と短脚片31とが弾性により復元してくるときの合成応力により物干竿Sを間隔dの開放口の外側に向けて押し出し、鈎部2の内壁面wに圧着させるようにしている技術思想とは全く相違しているものであり、この本件発明を想到し得るような内容のものではない。 また、甲第2号証の【図21】~【図26】記載の実施例は、一方の腕154が物干竿4により回動することで一緒に回動してくる他方の腕155により物干竿4を押し上げるようにしているものであり、これら実施例のものには、腕154,155を弾性資材で形成する技術についての開示はない。 また、請求人は、腕154,155が合成樹脂成形品であれば、多少の弾性があり、その復元力がある、と主張しているが、合成樹脂材の成形品には硬質のものと軟質のものとがあり、また、合成樹脂材の成形品は、組成により弾性を有するものに成形することができるものであるが、弾性を有するものとするには、それの組成をそのように選択しなければならない。したがって、合成樹脂材の成形品であることだけでは弾性を具備する資材により係着部材を形成している技術が開示されているとする理由となるものではない。 オ 以上のとおり、甲第2号証及び甲第3号証には、本件発明の特定事項のうちの、特に、特定事項Aについての開示がなく、しかも、「係着部材3の長脚片30と短脚片31との間隔d内に挟み込まれて、鈎部2の内壁面wに押し付けられる物干竿Sが、内壁面wから受ける反力で押し返されることで、係着部材3の長脚片30と短脚片31とを、それらが具備する弾性によってそれらの間隔を拡げる方向に撓曲させて、それら長脚片30と短脚片31との間に押し込まれていき、それら長脚片30と短脚片31とが弾性により閉じ合わされる方向に復元しようとする弾力により、物干竿Sを逆に鈎部2の内壁面wに押し付けていき、これによる圧着でハンガーAを物干竿Sに係着させていくようにする。」という本件発明の技術思想については、全く開示がなく、かつ、この本件発明の技術思想を想到するためのヒントすら開示のないものである。 したがって、甲第2号証及び甲第3号証は、その記載事項に基づいて、当業者が本件発明を容易に発明することができたとする理由の証拠となるものではなく、本件発明は、甲第2号証、甲第3号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものではないことが明らかであり、請求人の主張は理由がない。 第3 当審の判断 1 甲各号証の記載内容 (1) 甲第2号証 甲第2号証には、「落下防止機構付きハンガー」に関して以下の事項が記載されている。 ア 段落【0001】~【0005】 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、物干し用等に使用されるハンガーに関し、さらに詳しくは、このハンバーが物干し竿等から落下するのを防止可能な落下防止機構を備えたハンガーに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 物干し用等に使用されるハンガーは、ビニール等で被覆された金属製の線材から構成されたもの、あるいはプラスチック製の一体成形物などが知られている。いずれのハンガーにおいても、基本的には、偏平なほぼ三角形をしたハンガー本体と、その頂部から上方にのびるフック部分から構成されている。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 このようなハンガーを用いて、ワイシャツあるいはセーターなどを物干し竿につり下げた場合には、風等によってフック部分が移動して、物干し竿の一方の集まってしまい、充分に乾燥されないことがある。また、風が強い場合などには、フック部分が物干し竿から外れて落下してしまい、折角洗った洗濯物がまた汚れてしまうということもある。 【0004】 本考案の課題は、このような問題点に着目し、簡単な構成により、ハンガーを物干し竿などの任意の位置に固定することにより、落下を防止することの可能となった落下防止機構付きハンガーを実現することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 上記の課題を解決するために、本考案のハンガーは、そのフック部分との間に物干し竿等を挟持するための弾性部材あるいは押さえ部材を備え、この弾性部材あるいは押さえ部材による弾性力あるいは押しつけ力によって、ハンガーが物干し竿等から落下することを防止するようにしている。」 イ 段落【0007】~【0009】 「【0007】 図1、図2および図3には本考案の第1の実施例を示してある。これらの図に示すように、ハンガー1は、洗濯物などを吊るすためのハンガー本体2と、このハンガー本体2を物干し竿4に吊り下げるためのフック部分3と、このフック部分3が物干し竿4から落下するのを防止するための落下防止機構5とを有している。 【0008】 第1の実施例における落下防止機構5は、くの字状に形成された弾性部材51を有している。この弾性部材51は、その元端側にフック部分3への取付け用ススリット52を有し、ここにフック部分3を通してビスなどの締結用金具54によって、フック部分3に固定されている。また、弾性部材51の折れ曲がり部55にはフック部分3の通し孔56が開けてあり、ここにフック部分3を通してある。この通し孔56よりも先端側に位置する弾性部材の部分57は、物干し竿4につり下げた状態において当該物干し竿4に直接に接触するフック部分の係合部分31に対峙している。この部分57とフック部分の側の係合部分31との間に物干し竿4が挟まれるようになっている。さらに、この部分57の先端には僅かに湾曲した指掛け部分58が形成されている。 【0009】 ここに、弾性部材の部分57とフック部分の側の係合部分31との間隔は、物干し竿4の直径よりも狭くなるように設定してある。したがって、これらの間に物干し竿4を強制的に入れると、弾性部材の部分57が図1の示す想像線57’の位置から弾性変形して広がり、したがって、この弾性変形により発生した弾性復帰力によって、物干し竿4は、これらの間に挟持された状態になる。一般的には、指掛け部分58に指を掛けて予め弾性部材を押し広げて、物干し竿4にフック部分3をつり下げる。このようにして、物干し竿4からハンガー1が落下してしまうことを防止できる。」 ウ 段落【0019】、【0020】 「【0019】 次に、図21、図22および図23には、本考案の第3の実施例を示してある。この例の落下防止機構15は、フック部分3と同一面内を、図23に示す竿開放位置と、図21に示す竿固定位置との間を旋回可能な略くの字形状の旋回部材151を有している。この旋回部材151の略中心に位置する折れ曲がり部分152が、ピン153によって、フック部分3の先端に回転自在に取付けられている。 【0020】 図23に示す状態にある旋回部材151を上側から竿につり下げると、旋回部材151の一方の腕154が竿4の上面によって押し上げられる。このため、旋回部材151の他方の腕155の側も、それに伴って上方に旋回する。この結果、図21に示す状態で、ハンガー1は竿4からつりさがった状態になる。このため、ハンガーの自重およびそこにつり下げた洗濯物の重さによって、旋回部材151は図21に示す状態に保持されるので、結果として、竿4は旋回部材151の下側の腕155によって上方の押しつけられる(当審注:「上方の」は、「上方へ」の誤記である。)。よって、フック部分3が竿4から落下することが防止される。」 エ 段落【0025】 「【0025】 【考案の効果】 以上説明したように、本考案のハンガーにおいては、そのフック部分に落下防止機構を配置した構成を採用しているので、物干し竿等に吊るした場合に、風などでハンガーが移動してしまう、あるいは落下してしまうといった弊害を防止することができる。」 オ 【図21】 (ア) 一方の腕154と他方の腕155との突出端側の物干竿4に当接する 箇所の最大間隔が物干竿4の直径より幾分狭い距離となる形状に形成され ていること。 (イ) 物干竿4の周面の一半側は、一方の腕154と他方の腕155との間 隔内に抱え込まれており、物干竿4の周面の他半側は、フック部分3の内 壁面に圧着されていること。 これらの記載事項ア~オを本件発明に照らして整理すると、甲第2号証には次の発明が記載されていると認める。 a ハンガー1の本体2の上部に設けたフック部分3の内側空間に侵入可能 な長さの一方の腕154と他方の腕155とが折れ曲がり部分152から 略くの字形状に突出し、かつ、それらの突出端側の物干竿4に当接する箇 所の最大間隔が物干竿4の直径より幾分狭い距離となる形状の旋回部材1 51を形成し、 b その旋回部材151を、一方の腕154と他方の腕155との間隔内に 物干竿4の周面の一半側を抱き込ませた状態においてその物干竿4の周面 の他半側がフック部分3の内壁面に圧接していくように配位し、フック部 分3の先端に設けたピン153に、折れ曲がり部分152中心に上下に回 動するように装架して、一方の腕154と他方の腕155との間隔内に周 面の一半側を抱え込む物干竿4の周面の他半側を、フック部分3の内壁面 に圧着させてハンガー1を物干竿4に係着させるようにした c 物干竿4に対するハンガー1の落下防止機構15。 (2) 甲第3号証 甲第3号証には、「物干器」に関して以下の事項が記載されている。 ア 第2頁第8行~第3頁第6行 「o産業上の利用分野 本考案は洗濯物等を吊り下げて干すための物干器に関するものである。 o従来の技術 物干器としては、複数個のピンチを取り付けた吊枠を鎖等の連結手段を介して略?状の掛鉤に連結してあるものが一般に使用されている。 o考案が解決しようとする問題点 上記物干器はこれを物干竿に吊り下げるに当つては単に略?状の掛鉤を物干竿に係止するにすぎないため、風等により物干器が物干竿から落下し、あるいは物干竿上で横すべりするおそれが大きいという問題点があつた。 本考案は物干器における掛鉤に物干竿に対する固定手段を具えさせることにより上記の問題点を解決しようとしたものである。」 イ 第3頁第7行~第5頁第13行 「o問題点を解決するための手段 符号1は複数個のピンチ2,2・・・を取り付けた吊枠である。吊枠1は鎖3,3・・・、連結板4等の連結手段を介して掛鉤5に連結する。 本考案においては掛鉤5に物干竿に対する固定手段を具えさせるものである。すなわち、中央に掛鉤挿通溝6を具えると共に好ましくは物干竿当接部にゴム等のスベリ止め7を設けた略フ字状のフック8における該掛鉤挿通溝6内に掛鉤5の頭部5′を挿通した状態で、当該フック8をその屈曲部9にて上下方向に回動自在に掛鉤5の頭部5′に枢着する。フック8の屈曲部9を掛鉤5の頭部5′に枢着するに当つては、一例として、該頭部5′の所定部分を屈曲させることにより軸受部10を形成し、フック8の屈曲部9に取り付けた支軸11を該軸受部10に支承させる。12,13はフック8の下方向への回動範囲を規制するストッパーであるが、13はすベり止め7の取り付け台を兼ねている。14は軸受支持部であつて、支軸11との間に掛鉤5の軸受部10を挟持するようにしている。 o作用 物干器を物干竿20に吊り下げていないときは、フック8はその自重により下限まで回動した状態、すなわち、第3図に示すようにストッパー12,13が掛鉤5の頭部5′に当接した状態にある。 物干器を物干竿20に吊り下げる際には、第3図に示す状態にある略フ字状フック8を単に物干竿20に係止すればよい(第2図)。しかるときは、掛鉤5の頭部5′に上下方向に回動自在に枢着されているフック8は物干器の自重により上方(第2図の矢印に示す方向)に回動する結果、物干竿20は第2図に示すように掛鉤5の頭部5′の内縁5′aとフック8の内縁8aとすべり止め7とにより挟持される。この場合、フック8は物干器の自重により常時上方に回動する傾向が与えられるため、物干竿20は確実に把持され、掛鉤5は物干竿20に固定される。また、フック8は物干器の自重により上方に回動して物干竿20を把持するため、物干竿20の直径に差異があつても掛鉤5は物干竿20に確実に固定される。」 ウ 第6頁第2~8行 「o考案の効果 本考案の物干器はその掛鉤にフックを具えているため、掛鉤は物干竿に確実に固定され、風等により物干器が物干竿から落下し、あるいは物干竿上で横すベりするおそれは解消される。また、物干竿の直径に差異があつても掛鉤が物干竿に確実に固定されることは前述の通りである。」 エ 第2図及び第3図 (ア) フック8は、掛鉤5の内側空間を横切る長さの脚片と適宜の長さのも う一つの脚片とが屈曲部9から略フ字状に突出し、かつ、それらの突出端 側の間隔が物干竿20の直径より幾分広い距離となる形状に形成されてい ること。 (イ) 掛鉤5の内側空間を横切る長さの脚片が上位でもう一つの脚片が下位 となる姿勢とし、かつ、掛鉤5の内側空間を横切る長さの脚片ともう一つ の脚片との間隔内に物干竿20の周面の一半側を抱き込ませた状態におい てその物干竿20の周面の他半側が掛鉤5の頭部5′の内縁5′aに圧接 していくように配位されていること。 (ウ) 物干竿20の周面の一半側は、略フ字状フック8の間隔内に抱え込ま れており、物干竿20の周面の他半側は、掛鉤5の頭部5′の内縁5′a に圧着されていること。 上記イに「・・・好ましくは物干竿当接部にゴム等のスベリ止め7を設けた・・・」とあるように、スベリ止め7を設けることは、甲第3号証のものの必須の事項ではないことを考慮に入れて、上記ア~エの記載事項を本件発明に照らして整理すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。 a′物干器の吊枠1の上部に鎖3、連結板4を介して連結された掛鉤5の内 側空間を横切る長さの脚片と適宜の長さのもう一つの脚片とが屈曲部9か ら略フ字状に突出し、かつ、それらの突出端側の間隔が物干竿20の直径 より幾分広い距離となる形状のフック8を形成し、 b′そのフック8を、それの掛鉤5の内側空間を横切る長さの脚片が上位で もう一つの脚片が下位となる姿勢とし、かつ、掛鉤5の内側空間を横切る 長さの脚片ともう一つの脚片との間隔内に物干竿20の周面の一半側を抱 き込ませた状態においてその物干竿20の周面の他半側が掛鉤5の頭部5 ′の内縁5′aに圧接していくように配位し、掛鉤5に設けた支軸11に 、屈曲部9中心に上下に回動するように装架して、物干竿20を掛鉤5の 頭部5′の内縁5′aとフック8の上位及び下位の脚片の内縁とにより挟 持して物干器を物干竿20に係着させるようにした c′物干竿に対する物干器の係止装置。 2 対比・検討 (1) 甲第2号証記載の発明について 本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証記載の発明の「ハンガー1の本体2」が本件発明の「主体部1」に相当し、以下同様に「フック部分3」が「鈎部2」に、「折れ曲がり部分152」が「ボス部3a」に、「旋回部材151」が「係着部材3」に、「ピン153」が「連結軸4」に、「落下防止機構15」が「係止装置」に、それぞれ相当することが明らかである。 また、甲第2号証記載の発明の「一方の腕154」と「他方の腕155」とは、それぞれ適宜の長さを有する脚片であるという限りで、本件発明の「長脚片30」と「短脚片31」とに、それぞれ対応している。 そして、甲第2号証記載の発明において、係着部材が「略くの字形状」であることは、「二股状」であるという限りで、本件発明において係着部材が「V字状」であることと共通しており、また、甲第2号証記載の発明の「突出端側の物干竿4に当接する箇所の最大間隔」は、単に「突出端側の間隔」と云い得るものである。 したがって、本件発明と甲第2号証記載の発明とは、次の点で一致している。 ア 一致点 A′適宜の長さを有する二つの脚片がボス部から二股状に突出し、かつ、そ れらの突出端側の間隔が物干竿の直径より幾分狭い距離となる形状の係着 部材を形成し、 B′その係着部材を、一方の脚片と他方の脚片との間隔内に物干竿の周面の 一半側を抱き込ませた状態においてその物干竿の周面の他半側が鈎部の内 壁面に圧接していくように配位し、鈎部に設けた連結軸に、ボス部中心に 上下に回動するように装架して、一方の脚片と他方の脚片との間隔内に周 面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、鈎部の内壁面に圧着させ てハンガーを物干竿に係着させるようにした C 物干竿に対するハンガーの係止装置、である点。 そして、本件発明と甲第2号証記載の発明とは、以下の2点で相違している。 イ 相違点1 本件発明では、係着部材が、ハンガーの主体部の上部に設けた鈎部の内側空間を横切る長さの長脚片と前記内側空間の内径より短い長さの短脚片とからなるV字状のものであって、その長脚片が上位で短脚片が下位となる姿勢に配位されているのに対して、甲第2号証記載の発明では、物干竿に対するハンガーの係着時に上位となる脚片の長さが鈎部の内側空間を横切る長さではなく、係着部材が略くの字形状であって、その中央のボス部が鈎部の先端に装架されているので、甲第2号証の【図23】に示されているように、物干竿に対するハンガーの解除時に二つの脚片はいずれも下方に向いており、一方の脚片が上位で他方の脚片が下位となる姿勢に配位されていない点。 ウ 相違点2 本件発明では、係着部材が弾性を具備する資材により形成され、長脚片と短脚片との間隔内に周面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、長脚片と短脚片の弾性の復元力により鈎部の内壁面に圧着させているのに対して、甲第2号証記載の発明では、係着部材がどの様な材料で形成されているのか明らかでなく、したがって、物干竿の周面の他半側を、両脚片の弾性の復元力により鈎部の内壁面に圧着させているのか否かも明らかでない点。 エ 相違点1についての検討 甲第2号証記載の発明では、物干竿に対するハンガーの解除時に二つの脚片はいずれも下方に向いていることから、上記【図23】を参照すると、ハンガーを物干竿に吊り下げようとするとき、脚片154が物干竿の左の方に逸れてしまう可能性があるのに対して、本件発明では、係着部材が、ハンガーの主体部の上部に設けた鈎部の内側空間を横切る長さの長脚片と前記内側空間の内径より短い長さの短脚片とからなるV字状のものであって、その長脚片が上位で短脚片が下位となる姿勢に配位されているので、ハンガーを物干竿に吊り下げようとするとき、長脚片の内縁が必ず物干竿の上面側に当接することになり、甲第2号証記載の発明のようなことは皆無である。 そうしてみると、甲第2号証記載の発明は、甲第1号証の段落【0033】に記載されている「物干竿Sに対するハンガーAの係着と解除とがハンガーAの物干竿Sに対する脱着操作で行なえるようになる。」という本件発明の効果を十全に発揮することができるものであるとはいえない。 したがって、本件発明は、相違点2について検討するまでもなく、甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (2) 甲第3号証記載の発明について 本件発明と甲第3号証記載の発明とを対比すると、甲第3号証記載の発明の「物干器」が本件発明の「ハンガーA」に相当し、以下同様に「吊枠1」が「主体部1」に、「掛鉤5」が「鈎部2」に、「屈曲部9」が「ボス部3a」に、「フック8」が「係着部材3」に、「掛鉤5の頭部5′の内縁5′a」が「鈎部2の内壁面w」に、「支軸11」が「連結軸4」に、それぞれ相当することが明らかである。 また、甲第3号証記載の発明の「掛鉤5の内側空間を横切る長さの脚片」は、鈎部の内側空間を横切る長さの脚片であって上位の脚片であるという限りで、本件発明の「長脚片」に対応し、甲第3号証記載の発明の「適宜の長さのもう一つの脚片」は、下位の脚片であるという限りで、本件発明の「短脚片」に対応している。 また、甲第3号証記載の発明において、係着部材が「略フ字状」であることは、「二股状」であるという限りで、本件発明において係着部材が「V字状」であることと共通している。 さらに、甲第3号証記載の発明において「物干竿20を掛鉤5の頭部5′の内縁5′aとフック8の上位及び下位の脚片の内縁とにより挟持」することは、第2図の記載事項も考慮に入れて解釈すると、上位の脚片と下位の脚片との間隔内に周面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、鈎部の内壁面に圧着させることにほかならない。 したがって、本件発明と甲第3号証記載の発明とは、次の点で一致している。 ア 一致点 A″ハンガーの主体部の上部に設けた鈎部の内側空間を横切る長さの脚片と 適宜の長さのもう一つの脚片とがボス部から二股状に突出し、かつ、それ らの突出端側の間隔が適宜の距離となる形状の係着部材を形成し、 B″その係着部材を、それの鈎部の内側空間を横切る長さの脚片が上位でも う一つの脚片が下位となる姿勢とし、かつ、その上位の脚片が鈎部の内側 空間を横切りその上位の脚片と下位の脚片との間隔内に物干竿の周面の一 半側を抱き込ませた状態においてその物干竿の周面の他半側が鈎部の内壁 面に圧接していくように配位し、鈎部に設けた連結軸に、ボス部中心に上 下に回動するように装架して、上位の脚片と下位の脚片との間隔内に周面 の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、鈎部の内壁面に圧着させて ハンガーを物干竿に係着させるようにした C 物干竿に対するハンガーの係止装置、である点。 そして、本件発明と甲第3号証記載の発明とは、次の点で相違している。 イ 相違点 本件発明では、係着部材の下位の脚片の長さが鈎部の内側空間の内径より短く、また、両脚片がV字状に突出し、それらの突出端側の間隔が物干竿の直径より幾分狭い距離となっており、さらに、係着部材が弾性を具備する資材により形成され、長脚片と短脚片との間隔内に周面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、長脚片と短脚片の弾性の復元力により鈎部の内壁面に圧着させているのに対して、甲第3号証記載の発明では、係着部材の下位の脚片の長さが鈎部の内側空間の内径より短いのか否か明らかでなく、また、両脚片が略フ字状に突出し、それらの突出端側の間隔が物干竿の直径より幾分広い距離となっており、さらに、係着部材がどの様な材料で形成されているのか明らかでなく、したがって、物干竿の周面の他半側を両脚片の弾性の復元力により鈎部の内壁面に圧着させているのか否かも明らかでない点。 ウ 相違点についての検討 甲第3号証記載の発明は、上記アの一致点で挙げたように本件発明と同様、ハンガーを物干竿に係着させるに当たって、係着部材の上位の脚片と下位の脚片との間隔内に周面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、鈎部の内壁面に圧着させるものであって、略フ字状である係着部材の上位及び下位の脚片の各内縁と鈎部の内壁面との3点で物干竿に当接することを必須の事項とするものである。 ところで、甲第3号証記載の発明は、上記1(2)の後段で指摘したように係着部材の下位の脚片にスベリ止めを設けることを必須の事項とするものではないので、甲第3号証の第2図をスベリ止め7が設けられていないものとして参照すると、下位の脚片と物干竿との当接点は、その突出端よりかなり内方となる。そして、当該当接点よりも突出端側の部分は、物干竿との当接に関与しないことからみて、甲第3号証記載の発明を構成するための必須の部分ではなく、削除可能な部分であるということができる。 そこで、甲第3号証記載の発明において、下位の脚片と物干竿とが当接可能な範囲で突出端側の部分を削除したものを想定してみると、下位の脚片の長さが鈎部の内側空間を横切る上位の脚片の長さより短くなること、両脚片がV字状に突出することが明らかである。また、両脚片がV字状であることから、上位及び下位の脚片と物干竿との当接点の間隔は、必ず物干竿の直径より小となり、両脚片の突出端側の間隔を物干竿の直径より幾分狭い距離とすることが可能である。 そうしてみると、甲第3号証記載の発明において、係着部材の下位となる脚片の長さ、両脚片の形状(V字状か略フ字状か)及びそれらの突出端側の間隔をどのようにするかは、係着部材の上位及び下位の脚片の各内縁と鈎部の内壁面との3点で物干竿に当接することが可能となる範囲内で適宜決定すればよい単なる設計的事項にすぎないということができる。 また、ハンガーの物干竿に対する係着部材を、弾性を具備する資材により形成することは、例えば、上記1(1)のイに示されているように甲第2号証に記載されている外、他に類例が多数ある従来周知の事項である。そして、この従来周知の事項を甲第3号証記載の発明に適用することを妨げる特段の理由もないことからみて、甲第3号証記載の発明の係着部材を、弾性を具備する資材により形成することは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到し得る事項であるということができる。 そして、甲第3号証記載の発明の係着部材を、弾性を具備する資材により形成すると、係着部材の上位の脚片と下位の脚片との間隔内に物干竿の周面の一半側が抱き込まれたときに、物干竿は、上位の脚片と下位の脚片とを撓ませてそれらの間隔を押し拡げながら間隔内に入り込み、上位の脚片と下位の脚片との弾性力で鈎部の内壁面を物干竿に圧着させる、すなわち、本件発明に即していえば、長脚片と短脚片との間隔内に周面の一半側を抱え込む物干竿の周面の他半側を、長脚片と短脚片の弾性の復元力により鈎部の内壁面に圧着させることも当業者が容易に予想できるところである。 したがって、本件発明は、甲第3号証記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のように、本件発明は、甲第2号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないものの、甲第3号証記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。 よって、本件審判費用の負担については特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-06-10 |
結審通知日 | 2003-06-13 |
審決日 | 2003-07-02 |
出願番号 | 特願平7-317328 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
Z
(D06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塩澤 克利 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
宮崎 侑久 林 茂樹 |
登録日 | 1999-07-02 |
登録番号 | 特許第2949062号(P2949062) |
発明の名称 | 物干竿に対するハンガーの係止装置 |
代理人 | 涌井 謙一 |
代理人 | 鈴木 正次 |
代理人 | 新関 和郎 |