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関連判例 | 平成16年(行ケ)30号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1109439 |
審判番号 | 不服2001-14303 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-10 |
確定日 | 2005-01-11 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第514011号「少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマー及びアニオンポリマーとカチオンポリマーとの少なくとも1つの組合せ物を含む化粧品組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 4月10日国際公開、WO97/12588、平成10年11月24日国内公表、特表平10-512290]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1996年9月16日(パリ条約による優先権主張1995年9月29日、仏国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1の発明は、平成11年12月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。) 「化粧品として許容される媒体中に、少なくとも1つのアニオンポリマーと少なくとも1つのカチオンポリマーとの少なくとも1つの組合せ物、及び、ポリシロキサン部分と非シリコーン有機鎖からなる部分とを含む少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマーを含有し、前記2つの部分の1つはポリマーの主鎖を構成し、他の1つは該主鎖にグラフト化されていることを特徴とするケラチン物質のトリートメント用化粧品組成物。」 2.引用刊行物記載の概要 (1)引用刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された「国際公開第95/108号パンフレット」(以下、「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1-1)「(a)ビニルポリマー主鎖とその主鎖にグラフト化された重量平均分子量約1000~約50,000のシリコーン含有マクロマーを有するシリコーン含有ポリカルボン酸ヘアスタイリングコポリマー約0.1~約10重量%(酸ベース); (b)非シリコーン含有ヘアスタイリング樹脂約0.01~約10重量%;及び (c)ヘアへの適用に向いたキャリアを含む残部; を含んでなる液体ヘア化粧品組成物。」(請求項1) (1-2)「本発明の液体ヘア化粧品組成物の非シリコーン含有ヘアスタイリング樹脂成分にはアニオン系、両性、ノニオン系、カチオン系ポリマー物質又はそれらの混合物がある。」(第10頁第3~5行) (1-3)「本発明で使用上好ましいポリカチオン系ポリマー樹脂にはカチオン系グアーガム、・・・ビニルイミダゾリウム/ビニルピロリドン四級アンモニウムコポリマーとそれらの混合物がある。」(第12頁下から第6行~第13頁第3行) (1-4)「従来のヘアスタイリング樹脂を含有した液体ヘア化粧品組成物にこのようなシリコーン含有ポリマーを低レベルで加えれば、優れたヘア感性能を付与し、しかも従来の樹脂に伴う良好なスタイル保持性を留めることがわかった。」(第2頁下から第5~2行) (2)引用刊行物2 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された「特開平6-92825号公報」(以下、「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (2-1)「ポリシロキサン基よりなる構成単位ならびに不飽和単量体の重合体よりなる構成単位が、スルフィド結合を介して結合された、グラフト型共重合体または交互ブロック型共重合体を含有する毛髪化粧料。」(請求項1) (2-2)「すなわち、上記一般式(3)で示されるメルカプト基含有化合物の存在下に不飽和単量体をラジカル重合することにより、下記一般式(1)で示されるポリシロキサン基よりなる構成単位に、不飽和単量体よりなる構成単位がスルフィド結合を介して結合された、グラフト型共重合体を得ることができる。」(第3頁第3欄下から第2行~第4頁第5欄第2行) (2-3)「前記のようにして得られるポリマーは、・・・。また、従来使用されている公知の天然系ポリマー、天然系変性ポリマー、合成系ポリマーと併用使用してよい。」(第6頁第10欄第22~30行) (2-4)「さらに詳しくは本発明は、毛髪に優れた光沢と艶、および滑らかな感触を付与するポリシロキサン基を有するポリマーに関するものである。本発明の毛髪化粧料は、毛髪の形状保持(セット)、または、毛髪に柔軟性、光沢、櫛通り性、まとまり易さ、ボリューム感の付与、損耗の修復等のコンディショニング機能を与える目的で使用される。」(第2頁第2欄第20~26行) 3.対比・判断 本願発明と引用刊行物1記載のヘア化粧品組成物(上記摘示事項(1-1)参照)を対比すると、引用刊行物1記載のヘア化粧品組成物における、「ヘアへの適用に向いたキャリア」、「ビニルポリマー主鎖とその主鎖にグラフト化されたシリコーン含有マクロマーを有するシリコーン含有ポリカルボン酸ヘアスタイリングコポリマー」は、それぞれ、本願発明における、「化粧品として許容される媒体」、「ポリシロキサン部分と非シリコーン有機鎖からなる部分とを含むグラフト化シリコーンポリマーであって、前記2つの部分の1つはポリマーの主鎖を構成し、他の1つは該主鎖にグラフト化されていることを特徴とするもの」に対応しており、本願発明の「ケラチン物質のトリートメント用化粧品組成物」は、明細書第30~31頁及び請求項43,44からみて、具体的には、ヘアスタイリング製品、シャンプー等のヘア化粧品を包含しているから、両者は、 「化粧品として許容される媒体中に、ポリシロキサン部分と非シリコーン有機鎖からなる部分とを含む少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマーを含有し、前記2つの部分の1つはポリマーの主鎖を構成し、他の1つは該主鎖にグラフト化されていることを特徴とするケラチン物質のトリートメント用化粧品組成物」である点で差異はなく、本願発明においては、当該構成に加え、「少なくとも1つのアニオンポリマーと少なくとも1つのカチオンポリマーとの少なくとも1つの組合せ物」を含有しているのに対し、引用刊行物1記載のヘア化粧品組成物においては、「非シリコーン含有ヘアスタイリング樹脂」を含有している点で差異がある。 しかるに、上記(1-2)に摘示したように、引用刊行物1記載のヘア化粧品組成物においては、非シリコーン含有ヘアスタイリング樹脂成分として、アニオン系、両性、ノニオン系、カチオン系ポリマー物質又はそれらの混合物が使用できるとされているところ、毛髪用化粧品組成物において、アニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの使用はもちろん両者を混合して使用することも周知であること(必要ならば特開昭53-139734号公報、特開昭55-59107号公報などを参照)を考慮すれば、それらの選択肢の中から、非シリコーン含有ヘアスタイリング樹脂成分として、アニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの混合物を選択して使用してみるという程度のことは当業者の容易になし得るところである。 そして、本願明細書に記載されている、髪のソフト感や触感のような化粧品特性に関する本願発明の効果については、上記(1-4)、(2-4)に摘示したように、ポリシロキサン基を有するポリマーを添加した際の効果として、既に知られており、当業者が十分に予測できる範囲のものにすぎない。 請求人は、平成11年12月20日付け意見書の添付資料4、平成13年11月9日付け手続補正書の参考資料1を提出し、本願発明のアニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの混合物の使用の効果は顕著である旨主張しているが、斯かる資料をみても本願発明により当業者の予測を超える格別の効果が普遍的に得られると評価することはできない。 なお、請求人は、平成13年11月9日付け手続補正書において、上記(1-2)の摘示事項に関し、引用刊行物1には、アニオン系又は両性のポリマーを添加することが好ましい旨の記載があることから、アニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの組合せ物の使用は遠ざけられている、と主張している。しかしながら、上記(1-3)に摘示したように、引用刊行物1には、使用可能なカチオン系ポリマーについても具体的に記載されているのであるから(この点はノニオン系ポリマーについても同様)、好適なものとして、アニオン系又は両性のポリマーを例示する記載があったとしても、上記(1-2)に記載されているその他のポリマー又はその他の混合物の使用が遠ざけられることになるものではない。そして、毛髪用化粧品組成物において、アニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの混合物を使用することは、上記したとおり周知であることからすれば、アニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの混合物の選択に特に言及がないことが、これらの使用を妨げる要因となると解することもできない。 なお、本願発明は引用刊行物2に記載の発明からも以下の理由により当業者が容易に発明し得たものである。 本願発明と引用刊行物2記載の毛髪化粧料(上記摘示事項(2-1)参照。)を対比すると、引用刊行物2記載の毛髪化粧料における、「ポリシロキサン基よりなる構成単位ならびに不飽和単量体の重合体よりなる構成単位が、スルフィド結合を介して結合されたグラフト型共重合体」は、本願発明における、「ポリシロキサン部分と非シリコーン有機鎖からなる部分とを含むグラフト化シリコーンポリマーであって、前記2つの部分の1つはポリマーの主鎖を構成し、他の1つは該主鎖にグラフト化されていることを特徴とするもの」に対応する。また、引用刊行物2記載の毛髪化粧料は、その実施例から明らかなように、希釈原液として、純水、無水エタノール等を使用しており、これらは本願発明における「化粧品として許容される媒体」に対応する。そして、本願発明の「ケラチン物質のトリートメント用化粧品組成物」は、具体的には、ヘアスタイリング製品、シャンプー等の毛髪化粧料を包含するから、両者は、 「化粧品として許容される媒体中に、ポリシロキサン部分と非シリコーン有機鎖からなる部分とを含む少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマーを含有し、前記2つの部分の1つはポリマーの主鎖を構成し、他の1つは該主鎖にグラフト化されていることを特徴とするケラチン物質のトリートメント用化粧品組成物」である点で差異はなく、本願発明においては、当該構成に加えて、「少なくとも1つのアニオンポリマーと少なくとも1つのカチオンポリマーとの少なくとも1つの組合せ物」を含有しているのに対し、引用刊行物2記載のヘア化粧品組成物においては、さらなる添加成分が明示されていない点で差異がある。 しかるに、上記(2-3)に摘示したように、引用刊行物2記載の毛髪化粧料においては、従来使用されている公知の天然系ポリマー、天然系変性ポリマー、合成系ポリマーを、上記グラフト型共重合体と併用してよいことが記載されているから、毛髪化粧料において、使用することが周知であるアニオン系ポリマーとカチオン系ポリマーの混合物を、上記グラフト型共重合体と併用して使用してみることは当業者の容易になし得るところである。 4.むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-08-19 |
結審通知日 | 2003-08-26 |
審決日 | 2003-09-10 |
出願番号 | 特願平9-514011 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福井 悟 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
小柳 正之 横尾 俊一 |
発明の名称 | 少なくとも1つのグラフト化シリコーンポリマー及びアニオンポリマーとカチオンポリマーとの少なくとも1つの組合せ物を含む化粧品組成物 |
代理人 | 志賀 正武 |