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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1112841
審判番号 不服2003-13834  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-18 
確定日 2005-03-10 
事件の表示 平成11年特許願第182344号「壁用パネル状材の取付金具」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月16日出願公開、特開2001- 12052〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月28日の出願であって、平成15年3月20日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項4には、次のように記載されている。
「【請求項1】 隣り合う壁用パネル状材を端部同士を互いに突き合わせた状態で壁下地材に取り付ける壁用パネル状材の取付構造において、前記隣り合う壁用パネル状材の突き合わせ部に介装されて各壁用パネル状材を前記壁下地材に取り付ける取付金具であって、
前記隣り合う壁用パネル状材のうちの一方のものの裏面に対向され、該壁用パネル状材の前記壁下地材側への移動を阻止する第一の台座部と、前記隣り合う壁用パネル状材のうちの他方のものの裏面に対向され、該壁用パネル状材の前記壁下地材側への移動を阻止する第二の台座部と、前記一方の壁用パネル状材の一端部を係合され、該壁用パネル状材の前記他方の壁用パネル状材側への移動および前記壁下地材から遠ざかる向きへの移動を阻止する第一の係合部と、前記他方の壁用パネル状材の一端部を係合され、該壁用パネル状材の前記一方の壁用パネル状材側への移動および前記壁下地材から遠ざかる向きへの移動を阻止する第二の係合部と、前記第二の係合部と前記第二の台座部との間に設けられており、前記第二の台座部より低く落ち込んでいる凹部とを有してなり、
当該取付金具が前記壁下地材に取り付け済みの状態において、前記他方の壁用パネル状材を、前記壁下地材に対して傾けた状態で一端部を一旦前記凹部に挿入してから前記壁下地材に対し実質的に平行な状態として、前記第二の台座部に前記壁下地材側への移動を阻止される状態とするとともに該壁用パネル状材の一端部を前記第二の係合部に係合できるようになっており、かつ前記凹部の底部のうちの前記第二の係合部に隣接する部分は、前記第二の台座部側から前記第一の台座部側に向かって高くなって行く登坂部を構成していて、この登坂部は前記他方の壁用パネル状材の一端部を前記凹部に侵入させた後、前記第一の台座部側に移動させると、該壁用パネル状材の一端部を前記第二の係合部へ案内するようになっている壁用パネル状材の取付金具。」
「【請求項4】前記第一の係合部は雌実を形成された前記一方の壁用パネル状材の一端部を係合され、前記第二の係合部は雄実を形成された前記他方の壁用パネル状材の一端部を係合される請求項1,2または3記載の壁用パネル状材の取付金具。」
(以下、請求項4に係る発明のうち、請求項1を引用した発明を「本願発明」という。)

[2]引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平11-81615号公報(以下「引用例」という)には、以下のことが記載されている。
(1)段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タイルパネル及びサイディング等の建材を建築構造体に取付ける際に用いる取付具及び該取付具を用いて建材を取付ける施工方法に関するものである。」
(2)段落【0035】〜【0039】
「【0035】図9は本発明の第5実施例に係わる取付具の斜視図であり、図10は第5実施例に係わる取付具を使用したパネルの取付け仕様断面図である。以下、図9及び図10に沿って取付具の構造及び取付具を使用したパネルの施工方法を具体的に説明する。
【0036】図9に示す第5実施例に用いる取付具1Dはステンレス製であり、平板部2と、該平板部2の両端部から垂直に立ち上がる上端立部3a,下端立部3bと、該上端立部3a先端全体が、上端立部3a先端から上方向で且つ平板部2と平行方向に屈曲する上背面受け部4aと、該上端立部3a先端から連続して平板部2方向へ且つ上端立部3aに対して角度60°で屈曲延伸する傾斜片5と、該下端立部3bから上方向で且つ平板部2と平行方向に屈曲する下背面受け部4bと、平板部2の略中央部を前面方向へ、上端立部3a及び下端立部3bと同じ高さまで屈曲突出させた傾斜突出部9と、該傾斜突出部9の突出先端から垂直に立ち上がる係合立部6Aと、該係合立部6Aの先端中央部を下背面受け部4bの方向へ、又該係合立部6Aの先端両側端部を上背面受け部4aの方向へ分割させて、平板部2と水平方向に屈曲延伸する上係合片18a,下係合片18bとからなる係合片18とで構成されている。
【0037】取付具1Dの係合立部6Aは、平板部2の分岐部2jから下部分を、分岐部2jと平板部2cの外周を残して切り欠き、平板部2の面に対し垂直に立ち上げたものである。係合立部6Aの先端を上下に分割した上係合片18a,下係合片18bは、下係合片18bを分岐部2jの全長の略4分の2の長さとし、上係合片18aは、下係合片18bの長さを除いて左右に略4分の1づつの長さとしている。又、分岐部2jから上方で、平板部2の部分には、3つのビス用長孔2eを長さ方向に適宜間隔をおいて配設しており、傾斜片5には3つの釘孔5aを長さ方向に適宜間隔をおいて配設している。
【0038】本実施例に用いるパネル10は、第1実施例で用いたタイルパネル10と同形状であり、本実施例における取付具1Dを使用したタイルパネル10の施工方法は、第1実施例と同様に下方パネル10Aに取付具1Dを挿入係合させ、取付具1Dを釘等の固定具で建築構造体12に固定させた後、上方パネル10B挿入係合係止させ、図10に示す通りの仕様となる。
【0039】取付具1Dの傾斜突出部9を形成したので、下方パネル10A,10Bを挿入する際の上背面受け部4a,下背面受け部4bと下方パネル10A,10B背面との位置決めが容易となる。又、上背面受け部4a及び傾斜片5の形状をこのようにしたことで、一枚の連続した材料で取付具1Dの製作が可能となり、製作が容易となる。」
(3)図9及び図10を参照すると、上係合片18aと、上背面受け部4bとの間に、上背面受け部4bよりも建築構造体側に窪ませた凹状部分が設けられ、前記凹状部分の底部のうちの上係合片18aに隣接する部分は、前記上背面受け部側から前記下背面受け部側に向かって建築構造体との距離が大きくなるように傾斜した傾斜突出部9が構成された点が開示されている。また、図10を参照すると、下方パネル10Aの取付具1Dとの係合部10cが雄実であり、上方パネル10Bの取付具1Dとの係合部10dが雌実であることは、当業者にとって明らかである。
(4)よって、上記引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「隣り合うタイルパネル10を端部同士を互いに突き合わせた状態で建築構造体12に取り付ける建材の取付具1Dであって、前記隣り合うタイルパネル10のうちの下方パネル10Aの裏面に対向され、該タイルパネルの前記建築構造体側への移動を阻止する下背面受け部4bと、前記隣り合うタイルパネル10のうちの上方パネル10Bの裏面に対向され、該タイルパネルの前記建築構造体側への移動を阻止する上背面受け部4aと、前記下方パネル10Aの一端部を係合され、該下方パネル10Aの前記上方パネル側への移動及び前記建築構造体から遠ざかる向きへの移動を阻止する下係合片18bと、前記上方パネル10Bの一端部を係合され、該上方パネル10Bの前記下方パネル側への移動及び前記建築構造体から遠ざかる向きへの移動を阻止する上係合片18aと、前記上係合片18aと前記上背面受け部4aとの間に設けられており、前記上背面受け部4aより低く落ち込んでいる凹状の部分(以下、「凹状部」という。)を有してなり、かつ前記凹状部の底部のうちの上係合片18aに隣接する部分は、前記上背面受け部側から前記下背面受け部側に向かって建築構造体との距離が大きくなるように傾斜した傾斜突出部9を構成した建材の取付具であり、前記下係合片18bは雄実を形成された前記下方パネル10Aの一端部を係合され、前記上係合片18aは雌実を形成された前記上方パネル10Bの一端部を係合される建材の取付具。」

[3]対比
そこで、本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、
本願発明の「取付金具3」、「壁用パネル状材2」、「壁下地材1」、「一方の壁用パネル状材」、「他方の壁用パネル状材」、「第一の台座部4」、「第二の台座部5」、「第一の係合部6」、「第二の係合部7」、「凹部18」は、それぞれ、引用例に記載された発明の「建材の取付具1D」、「タイルパネル10」、「建築構造体12」、「下方パネル10A」、「上方パネル10B」、「下背面受け部4b」、「上背面受け部4a」、「下係合片18b」、「上係合片18a」、「凹状部」に相当し、本願発明における「低く落ち込んでいる」形状、「高くなって行く」形状は、それぞれ引用例に記載された発明における「建築構造体側に窪ませた」形状、「建築構造体との距離が大きくなる」形状に相当するから、
両者は、
「隣り合う壁用パネル状材を端部同士を互いに突き合わせた状態で壁下地材に取り付ける壁用パネル状材の取付構造において、前記隣り合う壁用パネル状材の突き合わせ部に介装されて各壁用パネル状材を前記壁下地材に取り付ける取付金具であって、
前記隣り合う壁用パネル状材のうちの一方のものの裏面に対向され、該壁用パネル状材の前記壁下地材側への移動を阻止する第一の台座部と、前記隣り合う壁用パネル状材のうちの他方のものの裏面に対向され、該壁用パネル状材の前記壁下地材側への移動を阻止する第二の台座部と、前記一方の壁用パネル状材の一端部を係合され、該壁用パネル状材の前記他方の壁用パネル状材側への移動および前記壁下地材から遠ざかる向きへの移動を阻止する第一の係合部と、前記他方の壁用パネル状材の一端部を係合され、該壁用パネル状材の前記一方の壁用パネル状材側への移動および前記壁下地材から遠ざかる向きへの移動を阻止する第二の係合部と、前記第二の係合部と前記第二の台座部との間に設けられており、前記第二の台座部より低く落ち込んでいる凹部とを有してなり、前記凹部の底部のうちの前記第二の係合部に隣接する部分は、前記第二の台座部側から前記第一の台座部側に向かって高くなって行く傾斜した部分が構成された壁用パネル状材の取付金具。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本願発明においては、取付金具に壁用パネル状材を取り付けるにあたって、前記取付金具が前記壁下地材に取り付け済みの状態において、前記他方の壁用パネル状材を、前記壁下地材に対して傾けた状態で一端部を一旦前記凹部に挿入してから前記壁下地材に対し実質的に平行な状態として、前記第二の台座部に前記壁下地材側への移動を阻止される状態とするとともに該壁用パネル状材の一端部を前記第二の係合部に係合できるようになっているのに対して、引用例に記載された発明では、取付金具への壁用パネル状材の取り付け方は記載されていない点。
相違点2:
本願発明においては、前記「傾斜した部分」は、前記他方の壁用パネル状材の一端部を前記凹部に侵入させた後、前記第一の台座部側に移動させると、該壁用パネル状材の一端部を前記第二の係合部へ案内するように、登坂部として構成されているのに対し、引用例に記載された発明における「傾斜した部分」に相当する傾斜突出部9は、そのような機能を有していない点。
相違点3:
本願発明においては、取付金具の第一の係合部は雌実を形成された一方の壁用パネル状材の一端部を係合し、第二の係合部は雄実を形成された他方の壁用パネルの一端部を係合するのに対し、引用例に記載された発明では、第一の係合部に相当する下係合片18bは雄実を形成した壁用パネル状材の一端部を係合し、第二の係合部に相当する上係合片18aは雌実を形成した壁用パネル状材の一端部を係合する点。

[4]当審の判断
(1)上記相違点1について
本願発明は、取付方法の発明ではなく、「取付金具」という物の発明であることは、上記特許請求の範囲の記載から明らかである。物の発明においては、原則として、物の構成をもってその内容を把握すべきであり、構成要件の中に、物の客観的な構成のほかに、当該構成の用途や使用方法等が記載されていたとしても、その用途や使用方法等に適するようにするために当該構成が特定の構成に限られることがなければ、それらの用途や使用方法等の記載は、発明の構成を更に限定するものではないというべきである。そして、そのような場合、発明の構成は、物の客観的な構成を記載した部分によって明らかにされているものと解すべきである。
そこで、本願発明をみると、上記相違点1に係る記載は、壁用パネル状材の取付金具への取付方法に関する記載であり、前記の取付方法に関する記載が物の構成である取付金具の構造ないし性質、性状その他構成自体を特定する要件として特段の意味を有するとは認められず、この記載の有無によって、「取付金具」である両者の構成に実質的な差異があるとは認められない。
(2)上記相違点2について
上記相違点1においても述べたように、本願発明は物の発明であるので、発明の構成は、物の客観的な構成を記載した部分によって明らかにされているものと解すべきである。
そこで、本願発明をみると、前記「傾斜した部分」である登坂部の客観的な構成は、「前記第二の台座部側から前記第一の台座部側に向かって高くなって行く」点のみしか限定されていない。そして、前記登坂部の機能である「前記他方の壁用パネル状材の一端部を前記凹部に侵入させた後、前記第一の台座部側に移動させると、該壁用パネル状材の一端部を前記第二の係合部へ案内する」とした点は、他方の壁用パネル状材の端部が特定の形状、大きさを取ることによってもたらされる機能であって、端部の形状や大きさが変われば、その機能を果たさないものである。
よって、本願発明における登坂部と、引用例に記載された発明における傾斜部は、実質的な差異とは認められない。
(3)上記相違点3について
本願発明のように、壁用パネル状材を相じゃくり方式で互いの側端部を突き合わせた状態で壁下地材に取り付けるにあたって、隣接するパネル状材のうちのどちらを雄実あるいは雌実とするかは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
(4)作用効果について
本願発明が奏する作用効果も、引用例に記載された発明に比べ格別のものとはいえない。

[5]むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-19 
結審通知日 2004-05-20 
審決日 2004-06-01 
出願番号 特願平11-182344
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山田 忠夫
▲高▼橋 祐介
発明の名称 壁用パネル状材の取付金具  
代理人 大森 泉  

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