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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する B41F
管理番号 1113873
審判番号 訂正2004-39263  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-11-16 
確定日 2005-01-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2673339号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2673339号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 [1]本件審判請求書の要旨は、特許第2673339号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち下記訂正事項1乃至訂正事項31のとおり訂正することを求めるものである。

訂正事項1:原請求項1〜16まで及び原請求項18、19、20、24、25、26を削除する。
訂正事項2:原請求項17の全文をつぎのように訂正し、これを【請求項1】とする。
「クリーニングファブリックのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、
これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、 このファブリックをおよそゼロから20パーセントの範囲の揮発性をもつ低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、このファブリックに前記溶剤を含浸させ、前記溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールを得、
前記円筒状コアの開口端にエンドキャップを装着し、 熱シール性プラスチックスリーブを前記ファブリックロールのまわりに配置し、
このプラスチックスリーブに真空作用を受けさせてこれを前記ファブリックロールに緊密に接触させ、 その後前記プラスチックスリーブに十分高い温度を受けさせ、前記プラスチックスリーブをファブリックロールのまわりで熱シールして、
前記ファブリックロールをその溶剤の分布状態が実質上乱れないように気密に包囲することにより、使用前、予め溶剤が含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送および保管しても、前記ファブリックロールのクリーニング力が損なわれないようにしたことを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。」
訂正事項3:原請求項21の「低揮発性溶剤」の前に「前記」の2字を挿入し、「請求項14、15、16または17の何れかに記載の」とあるのを「請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の」と訂正し、これを【請求項2】とする。
訂正事項4:原請求項22の「請求項15または17の何れかに記載の」とあるのを「請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の」と訂正し、これを【請求項3】とする。
訂正事項5:原請求項23の「請求項15または17の何れかに記載の」とあるのを「請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の」と訂正し、これを【請求項4】とする。
訂正事項6:発明の名称を「包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法」と訂正する。
訂正事項7:特許公報3頁、発明の詳細な説明の【0001】項、産業上の利用分野の項、49〜50行目「プランケットクリーニングファブリック」と「に関するものである」との間に「の製造方法」5字を挿入する。
訂正事項8:同3頁最終行〜4頁3行目まで「便宜上、ここでは印刷機のシリンダをクリ-ニングするものについて説明するが、この発明のファブリックは他の形式の機械のシリンダのクリーニングにも利用することができる。」の4行を削除する。
訂正事項9:同4頁【0006】項16行〜18行「ことを特徴とする包装され、含浸されたクリーニングファブリックを提供する。」とあるのを「包装され、含浸されたクリーニングファブリックが得られる。」と訂正する。
訂正事項10:同4頁【0007】項全文を削除する。
訂正事項11:同4頁【0008】項全文を次のように訂正する。
「この発明は、クリーニングファブリッグのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、これを真空チャンバー内において前記ファブリツクに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、このファブリックをおよそゼロから20パーセントの範囲の揮発性をもつ低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、このファブリックに前記溶剤を含浸またはしみ込ませ、前記溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールを得、前記円筒状コアの開□端にエンドキャップを装着し、熱シール性プラスチックスリーブを前記ファブリックロールのまわりに配置し、このプラスチックスリーブに真空作用を受けさせてこれを前記ファブリックロールに緊密に接触させ、その後 前記プラスチックスリーブに十分高い温度を受けさせ、前記プラスチックスリーブをファブリックロールのまわりで熱シールして、前記ファブリックロールをその溶剤の分布状態が実質上乱れないように気密に包囲することにより、使用前、予め溶剤が含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送および保管しても、前記ファブリックロールのクリーニング力が損なわれないようにしたことを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法を提供する。」
訂正事項12:同5頁【0014】の項、20行〜22行までの3行全文を削除する。
訂正事項13:同5頁【0015】の実施例の説明の項、39行目「コア11にシャフト21(図2)を収容する」とあるのを、「コア11にシャフトを収容する」と訂正する。
訂正事項14:同5頁【0017】の項全文を削除する。
訂正事項15:同5頁【0018】の項、11行目〜14行目まで「スロットのあるケース23が使用されるときは、エンドキャップは使用されないことは明らかである。」の3行を削除する。
訂正事項16:同6頁【0026】の項、31行目「この発明の」の5字を削除する。
訂正事項17:同6頁【0029】の項「他の実施例として、熱シール性プラスチックスリ-ブ が使用される場合、」とあるのを、「本発明の最適実施例として、熱シール性プラスチックスリーブを使用し、」と訂正する。
訂正事項18:同7頁【0036】の項全文を削除する。
訂正事項19:同7頁【0037】の項、30行ないし31行「前述したケース23と同じで構成することができ、」の25字を削除する。 訂正事項20:同7頁【0039】の項、4行〜5行目「この発明の包装され、含浸されたブランケットクリーニングシステム」とあるのを「この発明によって得られる包装され、含浸されたブランケットクリーニングファブリック」と訂正し、11行ないし12行「この発明のクリーニングファブリック・クリーニングシステムの大きな利点である。」とあるのを「この発明によって得られるクリーニングファブリック及びこれを使用するクリーニングシステムの大きな利点である。」と訂正する。
訂正事項21:同7頁【0040】の項、13行目「この発明の」とあるのを「この発明によって得られる」と訂正する。
訂正事項22:同7頁【図面の簡単な説明】の項、22行目「【図1】この発明の」とあるのを「【図1】この発明によって得られた」と訂正する。
訂正事項23:同7頁24行〜27行まで、【図2】の説明の項を全て削除する。
訂正事項24:同7頁【符号の説明】の項、36行「21シャフト」の6字、37行「ケース」の3字を削除する。
訂正事項25:明細書添付図面【図2】を削除する。
訂正事項26:特許公報第5頁【0012】の項、14行目「ブリックロール」とあるのを「ファブリックロール」と訂正する。
訂正事項27:特許公報第5頁【0015】の項、35行目「スリーブ15に内に」とあるのを「スリーブ15内に」と訂正する。
訂正事項28:特許公報第5頁【0018】の項、15行目「熱シールしる」とあるのを「熱シールし得る」と訂正する。
訂正事項29:特許公報第7頁【0035】の項、16行目「部分をを」とあるのを「部分を」と訂正する。
訂正事項30:特許公報第7頁【0038】の項、37行目「印刷機などのの」とあるのを「印刷機などの」と訂正する。
訂正事項31:段落番号の一部削除に伴い、段落番号を整理する。

[2]訂正の適否についての判断
2-1.手続の経緯
本件特許は、平成6年5月31日(パリ条約による優先権主張1993年10月29日)の出願であり、平成6年7月18日特許権の設定登録後、平成13年4月25日付で請求された無効審判(2001年審判第35183号)においては、審判請求成立の審決(平成15年10月2日送達)がなされたものであるが、平成15年12月29日に東京高等裁判所に審決取消の出訴(平成15年(行ケ)第590号)がなされ、東京高等裁判所おける審理中の平成16年11月16日付けで本件訂正審判がなされた。
したがって、本件訂正審判請求時点では、上記無効審判事件は特許庁に係属していない。
なお、平成16年11月30日東京高等裁判所においてこの特許庁の審決を維持する旨の判決がなされたが、当判決は現時点では確定していない。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(a)訂正事項1について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項を削除するものであり、特許請求の範囲の滅縮を目的とするものである。
(b)訂正事項2について
訂正事項2は、原明細書(特許公報)特許請求の範囲【請求項20】および明細書【0013】、明細書【0011】項、【0024】項、原特許請求の範囲【請求項18】、明細書【0029】の記載に基づいて、原請求項17に記載したクリーニングファブリックを製造する方法において、
(1)ファブリックを巻きつけるコアに「エンドキャップを装着する」工程、(2)溶剤を含浸させる前に 「ファブリック内のエアーを抜きとっておく」工程、(3)含浸させるべき溶剤として、揮発性が20%以下の有機溶剤を選定すること、(4)プラスチックスリーブに真空作用を受けさせて、これをファブリックロールに緊密に密着させる工程、の4つの手段を、他の構成要件との有機的な関連のもとに発明構成要件として付加限定したものである。
したがって、特許請求範囲の滅縮を目的とするものである。
(c)訂正事項3について
訂正事項3は、原請求項21に記載の溶剤が、訂正した請求項1に記載した溶剤であることを明りょうにするとともに、引用請求項の表示を訂正した請求項1に合わせたものである。従って明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(d)訂正事項4及び訂正事項5について
訂正事項4及び訂正事項5は、訂正事項1、訂正事項2に伴って特許請求の範囲内での整合を図るものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
(e)訂正事項6〜訂正事項25について
訂正事項6〜訂正事項25は、訂正事項1ないし訂正事項5に伴って、明細書及び図面の記載の整合を図るためのもので、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
(f)訂正事項26〜訂正事項30について
訂正事項26〜訂正事項30は、単なる誤記の訂正であり、誤記の訂正を目的とするものである。
(g)訂正事項31は、単に段落番号を整理したものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
(h)上記訂正事項1乃至訂正事項31による訂正は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.独立特許要件の判断
[先行刊行物]
ア.前記無効審判における引用例
前記無効審判の審決における無効の理由で引用した刊行物は下記刊行物1乃至刊行物9である。
刊行物1:特開平2-11329号公報
刊行物2:実願昭63-20525号(実開平1-127762号)のマイクロフィルム
刊行物3:実願平3-43270号(実開平4-126855号)のマイクロフィルム
刊行物4:特開平2-8055号公報
刊行物5:特開昭48-23503号公報
刊行物6:特公昭56-1230号公報
刊行物7:特公昭51-49242号公報
刊行物8:特開平3-1952号公報
刊行物9:実願平3-17623号(実開平4-113960号)のマイクロフィルム

刊行物1には、次の事項が記載されている。
a.「布供給ロールと布巻取りロールと前記両ロール間に張り渡される帯状の洗浄布と洗浄時に前記洗浄布を印刷機のシリンダの外周に押圧する手段とを有する印刷機のシリンダ洗浄装置において、前記洗浄布が前記洗浄装置に装着する前に洗浄液を含浸させた布であることを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄装置。」(特許請求の範囲、第1項)。
b.「本発明の目的は、洗浄布への洗浄液の供給装置を省略した印刷機のシリンダ洗浄装置を提供することである。」(第2頁右上欄第10〜12行)。
c.「前記洗浄布は、合成樹脂、天然繊維、または木材パルプ等を原料とする織物または不織布、あるいは合成樹脂、天然繊維、または木材パルプ等のうち少なくとも2種の複合体である。」(第2頁左下欄第4〜7行)。
d.「いずれの場合も、前記洗浄布に含浸させる洗浄液は、例えばジエチレングリコール90部およびポリエチレングリコール10部の混合液を採用できる。」(第2頁左下欄第8〜11行)。
e.「洗浄液の蒸散を防止するには、前記供給ロールの両端部を貫通させるとともに、使用前はシールされ使用時に前記洗浄布を引き出すスリットとなる開口を有し、密閉した筒状のケースに、洗浄布を収納し、カセット化する。」(第2頁左下欄第12〜16行)。
f.「洗浄布2は、通気性の無い円筒状のケース20に収納されて、カセット式に印刷機に装着される。ケース20には使用時は(図示しない)シールにより密封され使用時に洗浄布を引き出すスリット22を形成してある。また、ケース20の両端部には、シール26を介して布供給ロール4を貫通状態で軸受けするふた24をはめてある。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第5行)。
g.「通気性のないケース20に収納する方式に代えて、第5図に示すように、洗浄液を含浸させた洗浄布2の裏側全面に、通気性がなくごく薄いフィルム30をラミネートして布供給ロール4に巻いてもよい。洗浄布2の両端面からの洗浄液の蒸散は、例えば布供給ロール4にフランジを形成して防ぐことができる。ちなみに、第3図〜第5図実施例において、布供給ロール4が中空でもよいことは勿論である。」(第3頁左上欄第18行〜右上欄第6行)。

刊行物2には次の事項が記載されている。
a.「染料にて着色された液状インクを含有するインクリボン(R)、若しくは、それを収納したインクリボンカートリッジ(C)を包装材(2)にて包装してあるインクリボン包装体であって、前記包装材(2)を非通気性の材料から構成するとともに、この包装材(2)にて前記インクリボン(R)若しくはインクリボンカートリッジ(C)を気密状態で包装し、かつ、前記包装材(2)内を酸素の少ない又は無い状態に構成してあるインクリボン包装体。」(実用新案登録請求の範囲、第1項)。
b.「長期保存に伴うインクリボンのインク濃度の低下を良好に抑制することができる。それ故に、製品の耐久性向上を図ることができると同時に、輸送時や保管時等における取り扱いの容易化を達成することができるに至った。」(第4頁第17行〜第5頁第2行)。
c.「第1図乃至第3図に示すインクリボン包装体は、染料にて着色された液状インクを含有するインクリボン(R)を収納したインクリボンカートリッジ(C)と、・・・脱酸素剤(1)とを、包装材の一例であるポリ塩化ビニリデンをコートしたポリプロピレンフィルム等の非通気性フィルム(2)にて同梱し、その全周を熱溶着によって気密状態に密封包装してある。この密封包装時には、前記非通気性フィルム(2)内の空気を吸引排出してシュリンク包装してある。」(第5頁第6〜17行)。
d.「前記包装材(2)内を真空にして実施してもよい。」(第7頁第20行〜第8頁第1行)。
e.「例えば、第4図及び第5図に示すように、交換用インクリボン(R)を収納した紙製ケース(3)のみを包装材(2)にて包装したインクリボン包装体に本考案を適用してもよい。」(第8頁第8〜12行)。
f.「前記包装材(2)として、ポリ塩化ビニリデンをコートしたポリプロピレンフィルムを例に挙げて説明したが、この材料に限定されるものではなく、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、飽和ポリエステル等の単独又はこれら二種以上を層状に構成したフィルムから構成して実施してもよい。」(第8頁第13〜20行)。

刊行物3には次の事項が記載されている。
a.「本考案は印刷機ドラムの洗浄シート供給装置に係り、特にブランケット胴等の印刷機ドラムを払拭洗浄する洗浄シートをロール供給するとともに、払拭後の洗浄シートを巻取り回収するように構成した洗浄シート供給装置の改良に関する。」(第3頁第4〜6行)。
b.「このような構成において、前記圧着部に洗浄シート24を供給し、払拭洗浄後の洗浄シート24を巻き取るようにした洗浄シート供給装置が設けられている。これは前記メインステー12の背面部に配置された供給ロール26と、更にその後方にて供給ロール26と平行に配置された巻取りロール28とを備え、供給ロール26から洗浄シート24を繰り出し、前記圧着部に巻き掛けた後、巻取りロール28にて巻き取るようにしている。・・・また、供給ロール26および巻取りロール28は紙管によって形成されており、側板14に設けられた繰り出し軸34、巻取り軸36に着脱可能に装着されるようになっている。」(第6頁第2〜13行)。

刊行物4には次の事項が記載されている。
a.「シリンダ2の両端の本機フレーム201A及び201Bに取付けられた一対のサイドプレート7A及び7Bにそれぞれの端部を回転自在に支持された一対のロールの例えば布供給ロール8と布巻取りロール9との間に懸架され、一方のロールの例えば布供給ロール8から供給される帯状の洗浄布10をシリンダの外周に押圧又は離脱させる押圧手段と、洗浄布10を巻取ってシリンダの外周に対し相対的に移動させる他方のロール例えば布巻取りロール9の駆動手段とを具備した印刷機のシリンダ洗浄装置」(第4頁右上欄第2〜13行)。

刊行物5には次の事項が記載されている。
a.「本発明の目的はオフセット式複写機の印刷円筒を掃除するための装置を提供することにある。この装置は前述の欠点を(溶剤の蒸発)解消し、掃除作用の永久的に効果及び迅速性を保ち、洗浄性材料の消費を最小にし、印刷円筒からインクを取除いた後洗浄性材料の接触するローラー又は他の機構の頻繁な洗浄の必要性を無くする。この目的からして、本発明に従う装置は、単一の狭い開口によつて外部と連絡している内室の備えられた容器を含み、該容器内にある溶剤で浸されたリボン状洗浄性材料の一部が該開口を通して通過し、」(第2頁左上欄第12行〜右上欄第8行)。
b.「該開口27を通してぬれた紙28のリボンが出ており、」(第3頁左上欄第15行〜右上欄第1行)。

刊行物6には次の事項が記載されている。
a.「印刷インキに対して溶解力を有する溶剤を洗浄液として含浸する含液洗浄紙を、印刷機の圧胴とブランケット胴の間に挿入し、その回転圧着を利用してブランケットを洗浄することを特徴とする、ブランケット洗浄法。」(特許請求の範囲、第1項)。
b.「本発明に用いられる印刷インキに対して溶解力を有する溶剤としては、たとえば石油系溶剤たとえばテレピン油、ホワイトスピリット、塩素系溶剤たとえばトリクロルエタンがあげられる。」(第2欄第13〜16行)。
c.「洗浄液又は水を含浸させる用紙としては、組織が粗くて液を含みやすく、かつ液を吸収しやすい性質のものが好ましい。紙としては植物繊維を原料とする和紙のほか、合成繊維又は合成繊維から成る紙状物も用いられる。」(第2欄第19〜23行)。

刊行物7には次の事項が記載されている。
a.「ブランケット面を清掃する洗剤としては、例えば脂肪族炭化水素とナフサとエチレングリコールモノエーテルの混合物を用いる。前記の洗剤は市販品を利用できる。」(第7欄第12〜15行)。

刊行物8には次の事項が記載されている。
a.「洗浄用基布に要求される性能としては、(1)一定時間内における吸水及び吸油性がある、(2)強力が強い、(3)湿摩擦に強く、毛羽立ちにより繊維脱落がない、(4)ワイピング性(紙粉及びインキの汚れ取り)が良い、(5)ウエット時の寸法変化が少ない、(6)基布の厚みが薄い(7)使い捨てのため安価である、等が挙げられる。」(第2頁左上欄第5〜11行)。
b.「目付30〜100g/m2からなる熱可塑性合成長繊維不織布に、アクリル酸エステル共重合体樹脂と親水性-疎水性バランス3.6〜9の脂肪酸エステル若しくは脂肪酸エーテル系界面活性剤との混合物が5〜30g/m2付着されているオフセット印刷洗浄用基布。」(特許請求の範囲、第1項)。
c.「自動洗浄装置の概要は第1図に示す如く、洗浄基布は巻き取り方式によるカートリッジ方法である。原理は、ウエス代替に不織布が使用されており、洗浄液(水及び白灯油、水-白灯油混合)を自動的に一定時間内で一定量放出し、不織布に噴霧及び浸漬方法等で吸水及び吸油させ、紙粉及びインキで汚れているロール(ブランケット胴)に一定時間及び一定圧力をかけ接触させて洗浄する方法である。」(第1頁右下欄第9〜17行)。

刊行物9には次の事項が記載されている。
a.「本考案は、プリンタやファクシミリ等の記録装置に用いられるインクフィルム、特に、熱転写性インクフィルムを供給用コアにロール状に巻き取ってあるインクフィルムロールの包装技術に関する。」(第4頁第4〜6行)。
b.「【請求項1】熱転写性インクフィルム(1)を供給用コア(2)にロール状に巻き取ってあるインクフィルムロール(A)を緩衝材(4)で包み、この緩衝材(4)を含むインクフィルムロール(A)全体を熱収縮性フィルム(5)にて密着包装してあるインクフィルム包装体。」(実用新案登録請求の範囲、請求項1)。
c.「本考案の第1請求項による場合では、インクフィルムロールを熱収縮性フィルムにて密着包装することにより、インクフィルムロールを湿気や塵埃から保護することができるばかりでなく、熱収縮性フィルムの収縮力を利用してインクフィルムロール全体を緊縛することができるから、このインクフィルムロールから繰り出される熱転写性インクフィルムの遊端部を仮止めする程度でも、当該熱転写性インクフィルムの不測の繰り出しを確実に防止することができるとともに、包装後における包装体の体積も可及的に小さくすることができる。しかも、インクフィルムロールは緩衝材で包まれているから、流通過程等でのインクフィルムロールの損傷を良好に抑制することができると同時に、この緩衝材の持つ断熱機能を利用して、熱収縮性フィルムの加熱時における熱転写性インクフィルムへの悪影響をも回避することができる。」(第6頁第7〜17行)。
d.「上述の実施例では、前記インクフィルムロールAから繰り出される熱転写性インクフィルム1の遊端部に巻取用コア3を付設したインクフィルム包装体について説明したが、このような巻取用コア3を設けていないタイプ、つまり、熱転写性インクフィルム1の遊端部を粘着テープ等で仮止めしてあるタイプにも本考案の技術を適用することができる。」(第8頁第28行〜第9頁第3行)。

イ.前記無効審判において、無効審判請求人の提出した他の証拠物件
刊行物10:「11691の化学商品」、化学工業日報社、1991年1月23日、P.349〜351、449〜450、1027
刊行物11:特開昭55-148164号公報
刊行物12:特開平5-15470号公報
刊行物13:特開平4-258244号公報

刊行物10〜刊行物13には、それぞれ下記の事項が記載されている。
(刊行物10)
a.ジエチレングリコールの沸点・引火点が示され、並びに用途としてブレーキ油に用いられることが記載されている。また、ポリエチレングリコールの引火点が示され、不揮発性であることが明示されている。

(刊行物11)
a.「印刷機のブランケットシリンダを洗浄布帛で洗浄するための装置であって、a)ブランケットシリンダの両端に近接して位置決められたエンドフレーム手段と、b)洗浄布帛供給ロールと、洗浄布帛巻取ロールと、洗浄布帛を前記供給ロールから前記巻取ロールに導くための手段と、c)水を洗浄布帛に導くための手段と、d)水以外の溶媒を洗浄布帛に導くための手段と、e)前記洗浄布帛を移動させ、ブランケットシリンダの一部と接触させる手段とからなり、(イ)前記最後の手段は膨張して洗浄布帛を移動させ、ブランケットシリンダに接触させることができ、緩んで洗浄布帛をブランケットシリンダから離脱させることができる可撓性を有する部材を含むことを特徴とする装置。」(特許請求の範囲(1))。

(刊行物12)
a.「セルロース系短繊維に直接性を有する染料を含む水溶液をセルロース系繊維不織布もしくは紙に含浸させた後、水蒸気透過性100g/m2/hr.以下であるフイルムにより密閉包装することを特徴とするおしぼりの製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1)。
b.「厚さ15μmのポリプロピレンフイルムで包装し、ヒートシールにより密閉した。24時間後におしぼりとして使用したが、色落ちもなく、カラーおしぼりとして十分機能するものが得られた。」(段落【0010】)。

(刊行物13)
a.「熱収縮性プラスチックフィルムから形成された袋の中に、生鮮魚介類と15℃以下の水性液状媒体とが収納されており、この袋内の空気を実質的に除いた後、袋の開口部をヒートシールによって密封し、しかる後、80〜100℃の熱水中に5〜30秒間浸漬して袋の熱収縮性プラスチックフィルムを収縮させることを特徴とする生鮮魚介類の包装法。」(特許請求の範囲【請求項1】)。
b.「【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは熱収縮性プラスチックフィルムから形成された袋の中に、生鮮魚介類と15℃以下の水性液状媒体とが収納されており、この袋内の空気を実質的に除いた後、袋の開口部をヒートシールによって密封し、しかる後、80〜100℃の熱水中に5〜30秒間浸漬して袋の熱収縮性プラスチックフィルムを収縮させることを特徴とする生鮮魚介類の包装法に存する。」(段落【0005】)。

ウ.対比・判断
訂正された請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)と刊行物1ないし刊行物13に記載事項とを対比すると、いずれの刊行物にも、訂正発明1を構成する要件である、「これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、」(以下、「相違点」という。)について、記載がなくこれを示唆する記載もない。
また、上記相違点の訂正発明1に係る構成は、当該技術分野において周知の技術でもない。
そして、訂正発明1は、上記相違点の訂正発明1に係る構成により、「低揮発溶剤であってもこれをファブリック内へ迅速に十分な量だけ浸透させることを実証し、搬送・保管に好適な溶剤を、長尺のファブリック全体に亘って効果的に平衡状態に含浸させることに成功した」(平成16年11月16日審判請求書 第8頁第2〜5行参照)という、各刊行物に記載のものからは期待できない格別の効果を奏するものである。
したがって、訂正発明1が本件出願前に頒布された上記刊行物1乃至刊行物13に記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
してみると、訂正発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

そして、本件訂正発明2ないし訂正発明4は、訂正発明1の全てを主要部とし、さらに種々の構成要件を付加したものである。
してみると、上記のとおり本件訂正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものである以上、本件訂正発明2ないし訂正発明4も特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

[3]むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正および明りょうでない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、更に特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法改正前の特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 クリーニングファブリックのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、
これを真空チャンバ内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、
このファブリックをおよそゼロから20パーセントの範囲の揮発性をもつ低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、このファブリックに前記溶剤を含浸させ、前記溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールを得、
前記円筒状コアの開口端にエンドキャップを装着し、
熱シール性プラスチックスリーブを前記ファブリックロールのまわりに配置し、
このプラスチックスリーブに真空作用を受けさせてこれを前記ファブリックロールに緊密に接触させ、
その後前記プラスチックスリーブに十分高い温度を受けさせ、前記プラスチックスリーブをファブリックロールのまわりで熱シールして、
前記ファブリックロールをその溶剤の分布状態が実質上乱れないように気密に包囲することにより、使用前、予め溶剤が含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送および保管しても、前記ファブリックロールのクリーニング力が損なわれないようにしたことを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項2】 クリーニングファブリックを溶剤と接触させる手段が、周囲温度および圧力の下で前記低揮発性溶剤に沈漬する方法であることを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項3】 熱シール性プラスチックスリーブが熱シール性および熱収縮性のものであることを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項4】 プラスチックリーブのシール温度をおよそ142℃から189℃の温度範囲に選定することを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、印刷機のシリンダをクリーニングするクリーニングファブリックに関するもので、特に、印刷機のシリンダをクリーニングする包装され、含浸されたブランケットクリーニングファブリックの製造方法に関するものである。
【0002】
【発明の背景】
印刷機のシリンダをクリーニングする種々のブランケットクリーニングシステムおよびそれを使用した装置が知られている。クリーニングブランケットおよびクリーニング溶液を有する代表的ブランケットクリーニングシステムおよびそれを使用した装置が幾つかの米国特許明細書に記載されている。米国特許第4135448号明細書にはクリーニング布帛が圧力ローラーに到達する前にクリーニング流体または溶液で湿潤されるクリーニング布帛を備えたシリンダクリーニング機構が、また同第4934391号明細書には低蒸気圧を有する低蒸気圧有機化合物からなるインキを除去する化合物が、また同第4986182号明細書には液体でクリーニング布帛を湿らせるクリーニング装置が、また同第5009716号明細書には低揮発性有機化合物からなるインキ除去洗浄方式が、また同第5012739号明細書には洗浄媒体で湿らされたクリーニング布帛からなる洗浄装置が、また同第5069128号明細書にはクリーニング液体をしみ込ませたクリーニング布帛を備えた印刷機用シリンダクリーニング装置がそれぞれ示されている。
【0003】
さらに、同第5104567号明細書には印刷機からインキをクリーニングする液体が、また同第5125342号明細書には印刷機のシリンダをクリーニングする方法が、また同第5143639号明細書にはインキを除去するための低蒸気圧クリーニング薬剤で湿らせた布帛が、また同第5188754号明細書にはクリーニングフォーミュラで湿らせた布帛が、また同第5194173号明細書には印刷機からインキを除去する方法がそれぞれ示されている。さらに、同第4344361号および同第4757763号明細書には印刷機のブランケットシリンダに接触するクリーナファブリックが設けられた自動ブランケットシリンダクリーナが示されている。一方、同第5175080号明細書には印刷機に使用するブランケットシリンダの布帛供給システムが示されている。
【0004】
前述した米国特許のものはその目的をある程度達成できるが、種々の欠点を有する。例えば、実際に使用する前にクリーニング溶剤または溶液をクリーニングファブリックに導入するために自動ブランケットクリーニングシステムの一部にポンプ、スプレイバー、マニホルドパイプ、バルブなどの装置が要求される。さらに、クリーニングロールまたはファブリックロールを予め含浸させる場合、クリーニング溶剤または溶液の損失を最小限に止め効果的なブランケットクリーニングシステムを得るために、前記含浸操作は使用の直前に行わねばならない。
【0005】
したがって、前述した欠点のない包装され、含浸されたブランケットクリーニングシステムを提供することが要望されている。この発明は、このような要望に応じ得るものである。
【0006】
【発明の概要】
この発明によれば、印刷機のシリンダのクリーニングに使用する包装され、含浸されたクリーニングファブリックであってその一つの態様は、(1)細長いコアのまわりに巻き付けられ、低揮発性溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールと、(2)前記ファブリックロールのまわりを、これに含浸された溶剤の分布状態が実質上乱れないように、これを気密に包囲する熱シールされたプラスチックスリーブとからなり、使用前、含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送し、保管することができ且つ前記ファブリックのクリーニング力が損なわれないようにした包装され、含浸されたクリーニングファブリックが得られる。
【0007】
この発明は、クリーニングファブリックのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、このファブリックをおよそゼロから20パーセントの範囲の揮発性をもつ低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、このファブリックに前記溶剤を含浸またはしみ込ませ、前記溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールを得、前記円筒状コアの開口端にエンドキャップを装着し、熱シール性プラスチックスリーブを前記ファブリックロールのまわりに配置し、このプラスチックスリーブに真空作用を受けさせてこれを前記ファブリックロールに緊密に接触させ、その後前記プラスチックスリーブに十分高い温度を受けさせ、前記プラスチックスリーブをファブリックロールのまわりで熱シールして、前記ファブリックロールをその溶剤の分布状態が実質上乱れないように気密に包囲することにより、使用前、予め溶剤が含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送および保管しても、前記ファブリックロールのクリーニング力が損なわれないようにしたことを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法を提供する。
【0008】
方法のその他の態様は、形成されたロールを熱シール性プラスチックスリーブ内に配置し、この熱シール性プラスチックスリーブに高い温度を与えてこれを熱シールする方法である。
【0009】
方法の更に他の態様は、ファブリックを円筒状コアに巻いて、ロールを形成した後、この巻かれたファブリックロールを溶剤に沈め、その後過度の溶剤を取り除くことによってクリーニングファブリックに低揮発性溶剤を含浸させる方法である。
【0010】
またクリーニングファブリックをフラットシートのままで、または円筒状コアに巻かれたロールの状態で含浸させるとき、その含浸がなされる前に真空チャンバ内などにおいてファブリックに真空作用を受けさせ、内部のエアを抜き去っておくことが好ましい。この場合どのような適宜の真空チャンバまたは装置を使用してもよい。
【0011】
また使用されるプラスチックスリーブは、熱シール性だけではなく熱収縮性ももち、スリーブが十分高い温度を受けたときこれがファブリックロールのまわりで熱シールされ、熱収縮するものであってもよい。
【0012】
さらに、ファブリックロールをプラスチックスリーブに挿入する前に、ファブリックロールの外周エッジを越えてのびるエンドキャップを、細長い円筒状コアの開口端に挿入しておいてもよい。
【0013】
【実施例の説明】
図1に示されているように、この発明の包装され、含浸されたクリーニングファブリックは、例えば十分大きい強度の比較的重い厚紙で製造された細長い円筒状コア11に巻き付けられ、このコアは紙または布帛の含浸されたファブリックロール13を支持することができる。コアをスチール、アルミニウムなどの金属で製造することもできる。ファブリックがコア11に巻き取られ、ロール13が形成される前、またはその後、後述するように、ファブリックに低揮発性有機化合物溶剤が平衡状態で含浸され、しみ込み、その後、ロールが熱シール性または熱シールおよび熱収縮性プラスチック材料で製造されたスリーブ15内に挿入され、これをそのエッジ部分17の所で熱シールされるか、またはそのエッジ17に沿って熱収縮および熱シールされ、スリーブ15がファブリックロール13に緊密に接触する。コア11にシャフトを収容するボールベアリングなどの係合手段またはその他の適宜の手段が設けられ、シャフトが印刷機などの適宜の機械(図示せず)上に配置され、また巻取ロールが設けられ、クリーニング作用の達成後、巻取ロールにクリーニングファブリックが巻き取られることが好ましい。
【0014】
この包装され、含浸されたクリーニングファブリックは、使用前、水平または垂直に搬送および保管しても、ファブリックロールの溶剤の分布状態が乱れず、ファブリックのクリーニング能力に有害作用は生じない極めて安定したファブリックである。
【0015】
図3の実施例は、この発明のシステムにプラスチックまたは金属で製造されたエンドキャップ25などが設けられ、これがコア11の開口端に装着される。エンドキャップはファブリックロール13の外周エッジを越えてのび、スリーブ15はエンドキャップのエッジを越えてのびるか、または図1に示されているように、ロール13の先端のまわりを包囲する。さらに、スリーブは、ロールを収容しカバーしこれが収縮または引っ張られたときロールに緊密に接触しまた熱シールし得るような大きさであって、必要に応じてその両端または一端で開口しているものである。
【0016】
ファブリックロールの素材は様々である。例えば、それは紙または布帛で製造したものであってもよい。布帛のファブリックが使用される場合、それは合成または天然繊維の製織または不織布またはその混合物であってもよい。布帛のファブリックに使用することができる合成繊維は、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、およびアクリル繊維などである。使用することができる天然繊維は、コットン繊維、木材パルプ繊維、および麻の繊維などである。
【0017】
紙がファブリック材料として使用される場合、製紙技術で化学的に加工された木材パルプで製造された紙のファブリックが適当である。
【0018】
この発明の実施に紙または布帛のファブリックが使用されるかどうかに関係なく、ここに使用される材料は低揮発性有機化合物溶剤で含浸させ、湿らせることができるようにすることが好ましい。これに関連し、使用されるファブリックは、低揮発性有機化合物溶剤をしみ込ませるとき、ルーチン試験方法において、それはファブリックの2.54cm2当たりおよそ0.05〜およそ0.5ccの溶剤を保持する能力をもつことが好ましい。
【0019】
一般に、この発明の実施に使用される製織および不織ファブリックはおよそ1m2当たり50.9gから203gの範囲内の坪量、およそ1cm当たり3.57kgから35.7kgの範囲の長さ(機械)方向、およびおよそ1cm当たり2.68kgから22.3kgの範囲の幅(横)方向の引張強さを有する。
【0020】
紙がこの発明のシステムのクリーニングファブリックとして使用される場合、それはおよそ18.144kgから40.824kgの範囲の坪量、およそ1cm当たり3.57kgから14.3kgの範囲の長さ(機械)方向、およびおよそ1cm当たり2.68kgから8.93kgの範囲の幅(横)方向の引張強さ、100ccの低揮発性有機化合物溶剤または水を受けるとき、およそ1.0secからおよそ10secの範囲の多孔度(porosity)、およびおよそ1.0%からおよそ6.0%の範囲の伸長度をもち、これらはすべてルーチン試験方法で測定されたものである。
【0021】
この発明の実施に使用される低揮発性有機化合物溶剤は様々であり、一般に、それは容易に蒸発しない少なくとも1つの低揮発性有機化合物溶剤、およびそれと同様の低揮発性有機化合物溶剤または通常の揮発性有機化合物溶剤との混合物を含む。このタイプの適宜の溶剤材料は、ベジタブル油および柑橘類油などから選定される有機化合物溶剤が好ましい。一般に、このような溶剤材料はおよそゼロからおよそ30.0パーセントの範囲の揮発性をもち、特に0パーセントからおよそ20パーセントの範囲の揮発性をもつものが好ましい。これもルーチン試験方法で測定される。この溶剤には通常の揮発性有機化合物溶剤、すなわちミネラルエキスおよび脂肪族炭化水素溶剤などから選定される容易に蒸発するものを含む。これもルーチン試験方法で測定される。
【0022】
種々の熱シール性または熱収縮および熱シール性プラスチック材料がこの発明のプラスチックスリーブとして使用することができる。例えば、スリーブをポリエチレン、ポリオレフィン、ポリビニルクロライド、およびポリアミドなどで製造することができる。一般に、このような材料はおよそ142°Cからおよそ189°Cの範囲の温度で熱シールおよび熱収縮または熱シール可能であり、その温度はとくに165°Cから177°Cの範囲が好ましい。さらに、熱シール性または熱収縮および熱シール性スリーブを熱シール性または熱収縮および熱シール性紙で製造することもできる。
【0023】
包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造するための具体的な一つの方法は、クリーニングファブリックのストリップを周囲圧力および温度で容易に蒸発しない低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、その布帛に溶剤を含浸させ、しみ込ませ、過度の溶剤を含浸したファブリックから排液し、溶剤が平衡状態でしみ込んだファブリックを得た後、この含浸ファブリックを開口端のある細長い円筒状コアのまわりに巻き取り、ロールを形成し、熱シール性プラスチックスリーブをこのファブリックロールのまわりに配置し、スリーブに十分高い温度を受けさせ、プラスチックスリーブをこのファブリックロールのまわりで熱シールする方法であり、これによってファブリックロールを垂直または水平に搬送および保管してもファブリックロールの溶剤の分布状態が乱れず、ファブリックロールのクリーニング能力に対する有害作用はないようにすることができる。
【0024】
また他の一つの方法では、溶剤と接触する前にファブリックを細長いコアのまわりに巻き取るようにしてもよい。この場合、通常の方法でファブリックをコアに巻き取ることができ、特別の装置は要求されず、種々のロール製造装置によってこれを達成することができる。
【0025】
ロールが形成される前、またはその後、ファブリックが溶剤と接触し、次いで、ロールが熱シール性または熱シールおよび熱収縮性プラスチックスリーブ内に挿入され、スリーブがロールのまわりで適宜の温度で熱シールまたは熱シールおよび熱収縮される。一般に、プラスチックスリーブ内の含浸されたファブリックロールの熱シールまたは熱シールおよび熱収縮を効率よく達成できるのはおよそ142℃からおよそ189℃の範囲の温度であるが、とくに165℃から177℃の範囲の温度が好ましい。
【0026】
本発明の最適実施例として、熱シール性プラスチックスリーブを使用し、ファブリックロールがスリーブに挿入されたとき、組み立てられたスリーブおよびロールが真空作用を受け、これによって熱シール性プラスチックスリーブを巻かれたファブリックロールに緊密に接触させ、同時にエアがスリーブの内部から排出され、その後、熱がスリーブの開口部に加えられ、スリーブがロールを包囲するように熱シールされるようにしてもよい。周知の適宜の真空装置および熱シール装置によってスリーブの真空および熱シールを達成することができる。
【0027】
この方法に使用されるスリーブが熱シール性および熱収縮性の両方を有する場合、スリーブの1つまたはそれ以上の小さい開口部または通気孔(図示せず)をスリーブの開口エッジ付近に設けておき、熱シールおよび熱収縮が行われるとき、エアがこの開口から排出されるようにしてもよく、スリーブの熱シールおよび熱収縮のときにこの開口部は閉じられる。
【0028】
この発明の方法では、ファブリックと溶剤の接触は種々の方法で達成することができる。例えば、適宜の溶剤をファブリックに注ぎ、それに含浸させるかまたは溶剤をファブリックにスプレしてもよい。含浸行程は周囲温度および圧力でなすことができ、過度の溶剤が含浸された場合は、溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックを得られるまで十分長い時間を置くことによって簡単に排除することができる。
【0029】
しかしながら、コアに巻いてロールを形成する前、またはその後、ファブリックを適当な溶剤のタンクに実質上水平方向に沈め、搬送することもできる。含浸後、含浸されたファブリックを簡単に適所に吊り下げ、過度の溶剤を排液し、トラップに回収し、これを再利用することもできる。
【0030】
ファブリックを細長いコアに巻きロールを形成し排液する操作は周囲温度および圧力で達成することもできる。含浸され巻かれてロールが形成された後、ロールが熱シール性または熱収縮および熱シール性プラスチックスリーブに挿入され、スリーブが十分高い温度で熱シールまたは熱収縮および熱シールされることによって、これをファブリックロールに接触させることができる。この場合、使用される熱収縮および熱シール性材料の種類によって熱収縮および熱シール温度が決定され、それはこのような材料の軟化温度から材料の分解温度までの範囲で選ばれる。しかしながら、その温度は高すぎず、プラスチックスリーブ内に配置されたファブリックロールに対する有害作用が生じないようにせねばならない。
【0031】
一般に、熱収縮および熱シールは、炉内に入れるかまたは熱輻射ランプ下で達成することができる。
【0032】
プラスチックスリーブの大きさは適宜選定されるが、巻かれたロールが容易に挿入することができ、その後、スリーブの開口エッジを互いに接触させこの部分をシールし熱収縮させたとき、これがファブリックロールを気密に包囲するのが望ましい。
【0033】
この発明のクリーニングファブリックの製造に際して、エンドキャップ25などが使用される場合、このエンドキャップは、含浸排液工程の後これは円筒状コアの開口端に簡単に挿入される。
【0034】
ファブリックまたはファブリックロールへの溶剤の含浸に使用される用語“平衡状態で含浸”とは、ファブリックまたはファブリックロールがファブリックを湿潤させる量の溶剤を保持し、ファブリックが印刷機などのシリンダをクリーニングするクリーニング力をもつ程度に溶剤が保持された状態を意味する。
【0035】
印刷装置に、コアを挿入することができるシャフトを設けておき、またクリーニング作業後使用済のクリーニングファブリックを巻き取る巻取ロールを設けておくことによって、この発明によって得られる包装され、含浸されたブランケットクリーニングファブリックはどのような印刷装置にも使用することができる。特にクリーニング溶剤または溶液を使用直前にクリーニングファブリックに導くためのポンプ、スプレイバー、マニホルドライン、バルブなどの複雑な装置を、印刷機用の自動ブランケットクリーニングシステムの一部として設けておく必要がない点は、この発明によって得られるクリーニングファブリック及びこれを使用するクリーニングシステムの大きな利点である。
【0036】
さらに、この発明によって得られるクリーニングファブリックは、多数の利点を有する。例えば、それは構造が比較的簡単であり、容易に入手することができる材料を使用すればよく、精密機械を使用する必要のある複雑でコスト高となる処理を伴わず、比較的簡単に製造することができる点である。
【0037】
この発明は、前述した実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明によって得られた包装され含浸されたクリーニングファブリックの断面図である。
【図3】
細長い円筒状コアの開口端に配置され、ファブリックロールの外周エッジを越えてのびるエンドキャップを使用した図1のシステムの断面図である。
【符号の説明】
11 細長い円筒状コア
13 ファブリックロール
15 スリーブ
17 スリーブのエッジ
25 エンドキャップ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-12-22 
結審通知日 2004-12-27 
審決日 2005-01-12 
出願番号 特願平6-142427
審決分類 P 1 41・ 832- Y (B41F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 番場 得造
清水 康司
登録日 1997-07-18 
登録番号 特許第2673339号(P2673339)
発明の名称 包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法  
代理人 武石 靖彦  
代理人 村田 紀子  
代理人 武石 靖彦  
代理人 村田 紀子  

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