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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1115712 |
審判番号 | 不服2001-10753 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-09-08 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-25 |
確定日 | 2005-04-28 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 47059号「顧客管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-242723〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は平成11年2月24日の出願であって、平成13年5月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月24日付で手続補正がなされたものである。 2.平成13年7月24日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成13年7月24日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「主計算機、端末装置、データ保存装置、カード発行機及び印字機とからなる顧客管理システムにおいて、 顧客のコード番号、氏名、性別、年齢、住所、電話番号の個人情報を登録した顧客情報を記憶する手段、 販売商品の販売元会社、部門、商品名の各クラス、商品コード、原単価、売単価の商品情報を記憶する手段、 前記顧客の商品買上情報を収集する売上げデータ収集する売上データ収集手段、 前記商品買上情報から期間及び商品クラスを条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索しする顧客情報検索、宣伝広告した商品の購入実績が設定期間内にない顧客の顧客情報を検索する未稼動顧客検索からなる顧客情報出力手段及び 地域あるいは地区に採番しておいた地区コード番号の設定をして入力することができる地区マスタ保守、各商品の商品名、仕入先、単価等を入力することができる商品マスタ保守及び顧客の氏名、住所、電話番号、顧客コードを設定することができる顧客マスタ保守とからなり、ある期間を通して殆ど変わらない地域情報、商品情報、顧客情報の入力や変更、削除を行うことができるマスタ保守手段と を有する主計算機と、 顧客自身の情報を登録し、発行されているカードにデータとして記録されている個人情報に基づいて前記主計算機に保存されている個人情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うと共に、購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行する端末装置と、 顧客の買上情報を保存するデータ保存装置と、 前記端末機に登録された店のサービスを享受するために希望する情報、前記主計算機に登録された情報等顧客自身の情報、前記顧客自身の情報の登録と同時に各顧客に顧客管理用の番号として採番された顧客番号等を読み書き可能な記憶媒体に記憶させて各顧客に送付するカードを発行するカード発行機と、 前記主計算機の画面に出力された検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機とからなり、 一度商品を購入している顧客に対し、直に安い商品の広告を郵送することができ、確実に顧客を誘引することができるができるようにしたことを特徴とする顧客管理システム。」と補正された。 なお、請求項1には「顧客自身の情報を登録し、発行されているカードにデータとして記録されている個人情報に基づいて前記主計算機に保存されている個人情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うため端末装置と、購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行すると同時に顧客の買上情報を保存するデータ保存装置」と記載されているが、明細書の発明の詳細な説明の記載(段落0012及び図2)から明らかなように、「購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行する」のは端末装置であるので、上記のように認定した。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「マスタ保守手段」について「地域あるいは地区に採番しておいた地区コード番号の設定をして入力することができる地区マスタ保守、各商品の商品名、仕入先、単価等を入力することができる商品マスタ保守及び顧客の氏名、住所、電話番号、顧客コードを設定することができる顧客マスタ保守とからなり」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 (a)原審の拒絶の理由に引用された特開平5-250384号公報(以下、引用例1という。)には、「顧客検索装置」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。 A.「【産業上の利用分野】 本発明は大型小売店のダイレクトメール(以下DMと称する)発行業務等における顧客検索装置に関する。(略)DMの回収率を上げるには、買上金額が多い顧客、買上回数が多い顧客を抽出してDMを発行すればよい。また、ある特定の部門の商品のセールを行う場合には顧客が過去にどの店舗で買上げているか、どの商品を買上げているかを記録したデータを利用して過去にその部門の商品を買上げたことのある顧客を抽出する必要がある。」(公報段落番号0001~0004) B.「11は顧客の検索条件をパラメータとして入力するキーボード等の入力手段である。12は処理部であり、パラメータ解析手段13、使用データベース判定手段14、検索手段15より成る。16は記憶部であり、顧客の氏名、住所、郵便番号、性別といった基本属性のデータを有する基本属性データベース17と、顧客の買上日、買上商品、買上店舗、買上金額といった買上情報を有する買上情報データベース18とを設けている。パラメータ解析手段13は、入力されたパラメータが顧客の基本属性に関するものであるか、あるいは顧客の買上情報に関するものであるかを解析する。使用データベース判定手段14はパラメータ解析結果に従って買上情報データベースの使用の有無を判定する。検索手段15は入力されたパラメータに合致する顧客データを基本属性データベース17あるいは買上情報データベース18の中から検索する。基本属性データベース17の識別キーは顧客コードであって買上情報データベース18にも顧客コードを持たせることにより2つのデータベースの対応が取られる。次に、図2により動作を説明する。まず、顧客を検索するに当ってオペレータは検索条件をパラメータとしてパラメータ入力手段11を操作して入力する(ステップ21)。ここではパラメータの項目として性別、年齢、買上店舗、買上商品、買上金額の5項目が設定されているものとし、性別パラメータと買上店舗パラメータが入力され他の3つのパラメータは未入力であったとする。パラメータ解析手段13はどのパラメータが入力されたか、さらには入力されたパラメータは顧客の基本属性に関するものであるか、買上情報に関するものであるかを解析する(ステップ22)。ここでは性別パラメータと買上店舗パラメータが入力され、さらに性別パラメータは基本属性に関するもの、買上店舗パラメータは買上情報に関するものであるということが解析される。この買上情報に関するパラメータが入力されたという解析結果を受けて使用データベース判定手段14は買上情報データベース18を使用することを決定する(ステップ23)。検索手段15はパラメータ解析と使用データベース判定の結果に従ってデータ構成からなる買上情報データベース18を検索し、入力パラメータである買上店舗コードを持つレコードを抽出する(ステップ24)。次に、抽出された買上情報レコードの顧客コードをキーとして基本属性データベース17を読み、もう一つのパラメータである性別を参照する。この性別が、パラメータとして入力された値と合致する時のみ、例えば図3に示すデータ構成からなる基本属性データベース17から氏名、住所、郵便番号といったDM発行に必要な項目を取り込んで、例えば図3に示すデータ構成からなる別ファイル20に出力する(ステップ25)。」(公報段落番号0009~0015) C.「【発明の効果】以上説明したように本発明によれば一定買上金額、一定買上回数、買上商品部門といった条件により顧客を検索できる。例えば1988年4月1日から1989年9月30日までの間に10万円以上の買上があった20才以上の顧客を検索するといったことが可能となる。このようにして抽出された顧客に対してDMを発行すれば、従来の性別、年齢等によって抽出していた場合と比較してDMの回収率を上げることができる。また、抽出した顧客データを入力して自動的にDM用シールを出力するようにすればDM発行が高速に行える。」(公報段落番号0016~0017) ここで、買上情報データベースは「顧客の買上日」も買上情報の一つとして含んでおり、また、Cにおいて、「例えば1988年4月1日から1989年9月30日までの間に10万円以上の買上があった20才以上の顧客を検索するといったことが可能となる。」と記載されていることから、引用例1記載の顧客検索装置においては、条件として期間も設定して顧客情報を検索することが出来るものと認められる。 また、Bにおいて、「この性別が、パラメータとして入力された値と合致する時のみ、例えば図3に示すデータ構成からなる基本属性データベース17から氏名、住所、郵便番号といったDM発行に必要な項目を取り込んで、例えば図3に示すデータ構成からなる別ファイル20に出力する(ステップ25)。」と記載され、更に、Cにおいて、「抽出した顧客データを入力して自動的にDM用シールを出力するようにすればDM発行が高速に行える。」とも記載されており、これらの記載は、「処理部における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機」についても示唆しているものと認められる。 従って、これらの記載からして、引用例1には次のような発明が記載されていると認められる。 「処理部、記憶部、印字機とからなる顧客検索装置において、 顧客コード、氏名、年齢、住所、郵便番号、性別の個人情報を登録した基本属性データベースと、顧客の買上日、買上商品、買上店舗、買上金額といった買上情報を有する買上情報データベースと、からなる記憶部と、 買上情報データベースから期間及び買上商品を条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索する検索手段を有する処理部と、 処理部における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機と、 からなる顧客検索装置」 (b)同じく原審の拒絶の理由に引用された特開平7-44617号公報(以下、引用例2という。)には、「画像蓄積管理装置及び画像蓄積管理方法」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。 A.「【従来の技術】商品を販売する店舗や販売会社に於いては、商品の販売管理と顧客管理とが重要な管理業務となっている。最近では、販売管理に関しては、POS(ポイント・オブ・セールス)管理が導入され、商品のタグなどに付されたバーコードなどを読み取って、商品の売れ具合を判別し、発注や返品の指針とすることや、また情報を蓄積することにより、どのような商品がどのような季節,曜日,時間帯に売れているかということが容易に判別できるようになってきている。(略)近年、この顧客管理についても、コンピュータ化が進み、バーコードや磁気テープの付いたクレジットカードサイズのサービスカードや会員カード等のIDカードを各顧客に対して発行し、この発行時に、各顧客についての各種情報をデータベース化することも行われてきている。しかし、この場合も蓄積される情報は文字情報だけである。」(公報段落番号0002~0004) B.「本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、それぞれ画像を含む商品についての情報と顧客についての情報とを関連付けて管理できるようにすることを目的とする。 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明による画像蓄積管理装置は、各顧客の画像データと共に各顧客についての情報を蓄積する顧客情報蓄積手段と、各商品の画像データと共に各商品についての情報を蓄積する商品情報蓄積手段と、上記顧客情報蓄積手段及び商品情報蓄積手段の一方を検索して、特定の顧客についての情報及び特定の商品についての情報の一方を画像付きで表示する情報検索表示手段と、それぞれの顧客毎の商品の売り上げ情報を蓄積する売り上げ情報蓄積手段と、上記売り上げ情報蓄積手段に蓄積された売り上げ情報に基づいて、上記顧客情報蓄積手段及び商品情報蓄積手段から、特定の顧客についての情報と当該顧客の購入した各商品についての情報とを検索し、それぞれ画像付きで対応させて表示する顧客-商品検索表示手段とを備えることを特徴としている。」(公報段落番号0007~0008) C.「以下、図面を参照して、本発明の一実施例を説明する。本実施例は、服の企画製造小売りを行う小規模なアパレル店舗に適用した場合をである。(略)このデータ蓄積部22は、顧客に関する情報を蓄積するための客情報蓄積部24,商品に関する情報を蓄積するための商品情報蓄積部26,売り上げに関する情報を蓄積するための売り上げ情報蓄積部28,その他の各種情報を蓄積するためのメモ情報蓄積部30からなっている。客情報蓄積部24は、画像入力部14により入力された顧客の画像データ毎に、画像データ部24A,リンク項目部24B,キー項目部24Cに情報を蓄積する。即ち、画像データ部24Aに蓄積される画像データだけでは、唯の絵でしかないため、それがどのような顧客のものであるのかを表すために、名前,住所,電話番号といったキー情報がキー項目部24Cに蓄積されるようになっている。(略)商品情報蓄積部26も、特に図示はしていないが、上記客情報蓄積部24と同様に、画像入力部14により入力された商品の画像データ毎に、画像データ部,リンク項目部,キー項目部に情報を蓄積する。売り上げ情報蓄積部28は、顧客と商品のリンク情報、商品と顧客とのリンク情報としての売り上げ情報を蓄積する。(略)処理部20には、さらに、客特定用入力部38、指示入力部40、表示部42、及び画像出力部44が接続されている。」(公報段落番号0011~0017) D.「上記客特定用入力部38は、来店した顧客が以前に来店した時の画像をデータ蓄積部22から検索出力するためには、その顧客が誰であるか、即ち何という名前で、番号何番の人が来店したのかということが素早く判からなければならないということに鑑みて用意されたものである。即ち、せっかく、画像が蓄積されているということは判っていても、その顧客の名前が判らないものだからそれを使えないというようなことの対策のために、その顧客を特定するための情報を入力する装置である。これは、例えば、顧客に発行したIDカードから当該顧客を特定するための情報を読出すカードリーダやバーコードリーダとすることができる。あるいは、来店した顧客にID番号を入力してもらうキーボードや音声入力テンキーとすることもできる。」(公報段落番号0018) E.「そして、指示入力部40より、商品を特定するためのキーと当該商品を購入した顧客を検索する旨の指示を入力したならば、処理部20は、売り上げ情報に基づいて検索を行い、図2に示すように、商品*顧客お買い上げ表示60として、その結果を表示部42上に表示する。(略)次に、顧客検索列挙表示50,顧客情報個別表示52,顧客*商品お買い上げ表示54を参照して、限定顧客向けのダイレクトメール(DM)を作成して、発送する(ステップS55)。この際、画像出力部44から訪問販売ツール46に商品画像を落とし、ビデオプリンタ等でプリントアウトしたものを、DMに利用することができる。」(公報段落番号0029~0033) したがって、引用例2には、「商品を販売する店舗等において、顧客情報や売上情報と共に商品情報を蓄積し、これらの情報を基に各種の検索を行い管理に利用すること。 また、従来から行われている管理手法として、顧客管理の面においては、顧客を特定するための情報を含む顧客に関する各種情報を磁気記憶媒体に記憶させたIDカードを各顧客に発行し、この発行時に各顧客に関する各種情報をデータベース化し、顧客の来店時には、IDカードの情報をカードリーダーやバーコードリーダーで読込み、既に蓄積されているデータの情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うこと、一方、商品の販売管理の面では、POS管理が導入され、購入された商品等についてのデータをバーコードなどで読取りそのデータを管理のために蓄積すること、が採用されていること。」が、記載されている。 (c)同じく原審の拒絶の理由に引用された「Microsoft Windows NT ADPOP/ISS-CM (JA店舗情報管理システム顧客情報管理) 使用者の手引、 初版、平成8年9月、富士通株式会社,pp.23-24」(以下、引用例3という。)には、「未稼働顧客一覧表」に関して、次の事項が図面と共に記載されている。 A.「未稼働顧客一覧表 利用度の低い顧客の抽出を行います.個々の抽出条件の設定により、限定した未稼働顧客の抽出が容易に行えます.メニューより、未稼働顧客一覧表を選択すると、図3.10の未稼働顧客一覧表の作成条件画面が表示されます. (1)作表月度範囲 抽出対象とする月度を入力してください.(年は西 暦で入力) (2)地区コード 抽出する地区コードを入力してください.(省略時 は全店合計) (3)最終来店日 抽出対象とする最終来店日付を入力してください. (年は西暦で入力) (4)利用高累計 抽出対象とする利用高累計を入力してください. (5)利用回数 抽出対象とする利用回数を入力してください. (6)作表区分 1:未稼働顧客一覧表(一覧表を印刷するとき) 2:抽出(抽出条件を設定するとき) 3:DMラベル(DMラベルを印字するとき)」(第23頁第1行~第24頁第7行) ここで、「(2)地区コード 抽出する地区コードを入力してください.(省略時は全店合計)」と記載されているが、その検索を行うためには、その検索対象となるデータベースが必要であり、ここでは「地区」に関するデータベースが存在していることは明らかであり、また、このデータは未稼働顧客の検索だけでなく、他の顧客検索にも利用されるものと認められる。 したがって、引用例3には、「顧客情報管理の一つとして利用度の低い顧客の抽出を行う未稼働顧客検索を実施すること、また、顧客検索手段のデータベースの一つに「地区」に関するものがあること。」が、記載されている。 (3) 本願補正発明と引用例1に記載された発明の対比 引用例1に記載された発明の「顧客検索装置」は、本願補正発明の「顧客管理システム」に相当する。 そして、引用例1の「イ.検索手段」、「ロ.処理部」、「ハ.基本属性データベース」および「ニ.(検索条件設定のための)買上商品」は、本願補正発明の「イ.顧客情報検索」、「ロ.顧客情報出力手段」、「ハ.顧客情報を記憶する手段」および「ニ.商品クラス」にそれぞれ相当する。また、本願補正発明の「売上データ収集手段」は顧客の商品買上情報を収集し、その収集されたデータを元に顧客情報検索がなされるものであるので、本願補正発明の「売上データ収集手段」と引用例1の「買上データベース」とは、「(顧客情報出力手段に対し、)顧客情報検索のための顧客の商品買上情報データを提供する手段」である点で一致する。 更に、引用例1の「処理部および記憶部」はその機能(顧客に関するデータや顧客の買上商品に関するデータを記憶し、これらを元に処理部で検索を行うという機能)から本願補正発明の「主計算機」に相当する。 従って、両者は、「主計算機、印字機とからなる顧客管理システムにおいて、 顧客のコード番号、氏名、性別、年齢、住所、の個人情報を登録した顧客情報を記憶する手段と、 顧客情報検索のための顧客の商品買上情報データを提供する手段と、 顧客の商品買上情報データから期間及び商品クラスを条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索する顧客情報検索を有する主計算機と、 主計算機における検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機と、 からなる顧客管理システム」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明は、「販売商品の販売元会社、部門、商品名の各クラス、商品コード、原単価、売単価の商品情報を記憶する手段」を主計算機の構成要件の一つとして有しているが、引用例1記載の発明には「商品情報を記憶する手段」は記載されていない点。 (相違点2) 本願補正発明は、「顧客自身の情報を登録し、発行されているカードにデータとして記録されている個人情報に基づいて前記主計算機に保存されている個人情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うと共に、購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行する端末装置」を設けているが、引用例1記載の発明には「端末装置」は記載されていない点。 (相違点3) 本願補正発明は、「端末機に登録された店のサービスを享受するために希望する情報、主計算機に登録された情報等顧客自身の情報、顧客自身の情報の登録と同時に各顧客に顧客管理用の番号として採番された顧客番号等を読み書き可能な記憶媒体に記憶させて各顧客に送付するカードを発行するカード発行機」を設けているが、引用例1記載の発明には「カード発行機」は記載されていない点。 (相違点4) 本願補正発明は、「顧客情報出力手段」は「宣伝広告した商品の購入実績が設定期間内にない顧客の顧客情報を検索する未稼動顧客検索」を有しているが、引用例1記載の発明の「処理部」は未稼働顧客検索手段は有していない点。 (相違点5) 本願補正発明は、「地域あるいは地区に採番しておいた地区コード番号の設定をして入力することができる地区マスタ保守、各商品の商品名、仕入先、単価等を入力することができる商品マスタ保守及び顧客の氏名、住所、電話番号、顧客コードを設定することができる顧客マスタ保守とからなり、ある期間を通して殆ど変わらない地域情報、商品情報、顧客情報の入力や変更、削除を行うことができるマスタ保守手段」を主計算機の構成要件の一つとして有しているが、引用例1記載の発明には「マスタ保守手段」は記載されていない点。 (相違点6) 本願補正発明では、「顧客情報検索のための顧客の商品買上情報データ」は一旦「データ保存手段」に保持され、その後、主計算機の「売上データ収集手段」により収集されているが、引用例1記載の発明では、記憶部に「買上情報データベース」を設けていることは記載されているが、顧客の買上情報を一旦記憶部外のデータ保存装置に保存した後、記憶部に収集しているかどうかは記載されていない点。 (相違点7) 本願補正発明では、「顧客情報を記憶する手段」に登録される個人情報として電話番号が含まれているが、引用例1の「基本属性データベース」の個人情報には電話番号は含まれていない点。 また、本願補正発明では、主計算機が「画面」を有しており、画面に出力された検索結果を元にして住所等を宛名シール等に印刷しているが、引用例1では、「処理部」の検索結果を画面に出力ことは記載されていない点。 (相違点8) 本願補正発明は「一度商品を購入している顧客に対し、直に安い商品の広告を郵送することができ、確実に顧客を誘引することができる顧客管理システム」であるが、引用例1の顧客検索装置にはこのことは記載されていない点。 (4)当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1) について 商品を販売する店舗等において、顧客情報や売上情報と共に商品情報を蓄積し、これらの情報を基に各種の検索を行い管理に利用することは引用例2に記載されている。 したがって、引用例1においても、引用例2に記載の手段を採用し、顧客情報や売上情報に加え商品情報を蓄積し管理に活用することは、当業者が容易に考えられることと認められる。 なお、商品情報を蓄積する際、商品情報として具体的にどの様な項目とするかは、当業者が適宜選定できることと認められる。 (相違点2)について 各顧客に関する各種情報を登録し、各顧客に関する各種情報を含んだIDカードの情報をカードリーダーやバーコードリーダーの端末で読込み、既に登録されているデータの情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うこと、また、POS端末で購入された商品等についてのデータをバーコードなどで読取りそのデータを管理のために蓄積することは、いずれも例えば引用例2に記載のように周知の手段であり、更に、顧客が商品を買上した際には、レジ端末装置から領収書が発行されることも例示するまでもなく周知のことである。 したがって、引用例1記載の顧客検索装置においても、この様な周知の端末装置を付加して用いることは、当業者が適宜実施しうる程度のことと認められる。」 (相違点3)について 商品を販売する店舗等において、顧客管理手法の一つとして、顧客を特定する情報を含む各顧客に関する各種情報を磁気記憶媒体に記憶させたIDカードを各顧客に発行することは、例えば、引用例2に記載のように周知のことであり、また、当然のことであるがカードを発行する店舗等はカード発行機を有するものである。 したがって、引用例1記載の顧客検索装置においても、この様な周知の手段を採用し、顧客を特定する情報を含む顧客に関する各種情報を磁気記憶媒体に記憶させたIDカードを発行するカード発行機も併せて用いるようにすることは、当業者が適宜実施しうる程度のことと認められる。 なお、カードに記憶される情報として顧客自身に関する情報以外にどの様な情報を加えるかは、当業者が適宜選定しうることと認められる。 (相違点4) について 引用例3には、顧客情報管理の一つとして利用度の低い顧客の抽出を行う未稼働顧客検索を実施することが記載されている。 したがって、引用例1記載の顧客検索装置においても、引用例3に記載のような手段を採用し、利用度の低い顧客の抽出を行う未稼働顧客検索も実施することは、当業者が容易に考えられることと認められる。 なお、その際、未稼働顧客検索の設定条件をどの様にするかは当業者が適宜選定できることと認められる。 (相違点5)について 一般に、データの保守を行うための入力、変更、削除の機能は、データベースが通常備えているものであり、また、商品を販売する店舗等において、管理に活用する顧客データべース、地区データべース、商品データベースについて、登録、修正、削除のメンテナンスを行うことも周知のことである。(例えば、引用例3の第27頁以降には、「顧客マスタメンテナンス」、「地区コード設定」等について記載されている。更に、引用例3と同じシリーズである「Microsoft Windows NT ADPOP/ISS-MM (JA店舗情報管理システムマスタ管理) 使用者の手引、 初版、平成8年11月、富士通株式会社,pp.9-12」には、商品マスタメンテナンスについて記載されている。) したがって、引用例1記載の顧客検索装置に引用例2,3に記載のような「商品情報手段」や「未稼働顧客検索手段」を加えて用いる際、「ある期間を通して殆ど変わらない地域情報、商品情報、顧客情報の入力、変更、削除を行うことができるマスタ保守手段」を設けること、および、地域情報、商品情報、顧客情報のそれぞれの設定項目をどの様にするかは、当業者が適宜実施しうる程度のことと認められる。 (相違点6)について 顧客の買上情報を蓄積する際、顧客の買上情報データをPOS端末等から直接データベースに蓄積する構成とするか、あるいは、一度FD等のデータ保存手段に保存し、その後そのデータを収集するように構成するか、いずれもデータを収集・蓄積する常套手段であり、どちらの方法を採用するかは当業者が適宜選定しうるものである。 したがって、引用例1記載の顧客検索装置において、顧客の買上情報データを、一度FD等のデータ保存手段に保存し、その後そのデータを収集するように構成することは、当業者が適宜実施しうることと認められる。 (相違点7)について 引用例1記載の顧客検索装置において、「基本属性データベース」に保存される個人情報をどの様な項目にするかは、当業者が適宜選定することができるものと認められる。 また、一般に、検索装置に検索結果を表示する画面を設けることは例示するまでもなく周知のことであり、引用例1記載の顧客検索装置に画面を設け、画面に出力された検索結果を元にして住所等を宛名シール等に印刷することも、当業者が適宜実施しうることと認められる。 (相違点8)について 本願補正発明に記載された「一度商品を購入している顧客に対し、直に安い商品の広告を郵送することができ、確実に顧客を誘引することができる」は、本願補正発明の顧客管理システムが有する効果にすぎず、また、この効果は、引用例1,2,3記載の発明及び周知技術から当業者が予測しうる範囲のことである。 したがって、本願補正発明は、引用例1、2、3記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成13年7月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年3月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「主計算機、端末装置、データ保存装置、カード発行機及び印字機とからなる顧客管理システムにおいて、 顧客のコード番号、氏名、性別、年齢、住所、電話番号の個人情報を登録した顧客情報を記憶する手段、 販売商品の販売元会社、部門、商品名の各クラス、商品コード、原単価、売単価の商品情報を記憶する手段、 前記顧客の商品買上情報を収集する売上げデータ収集する売上データ収集手段、 前記商品買上情報から期間及び商品クラスを条件設定して商品購入実績のある顧客の顧客情報を検索しする顧客情報検索、宣伝広告した商品の購入実績が設定期間内にない顧客の顧客情報を検索する未稼動顧客検索等をする手段及び ある期間を通して殆ど変わらない地域情報、商品情報、顧客情報の入力や変更、削除を行うことができるマスタ保守の手段と を有する主計算機と、 顧客自身の情報を登録し、発行されているカードにデータとして記録されている個人情報に基づいて前記主計算機に保存されている個人情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うと共に、購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行する端末装置と、 顧客の買上情報を保存するデータ保存装置と、 前記端末機に登録された店のサービスを享受するために希望する情報、前記主計算機に登録された情報等顧客自身の情報、前記顧客自身の情報の登録と同時に各顧客に顧客管理用の番号として採番された顧客番号等を読み書き可能な記憶媒体に記憶させて各顧客に送付するカードを発行するカード発行機と、 前記主計算機の画面に出力された検索結果を元にして住所及び郵便番号を封筒、宛名シール等に印字するための印字機とからなり、 確実に顧客を誘引することができるようにしたことを特徴とする顧客管理システム。」 なお、請求項1には「顧客自身の情報を登録し、発行されているカードにデータとして記録されている個人情報に基づいて前記主計算機に保存されている個人情報と照らし合わせ顧客照会の情報管理を行うためk端末装置と、購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行すると同時に顧客の買上情報を保存するデータ保存装置」と記載されているが、明細書の発明の詳細な説明の記載(段落0012及び図2)から明らかなように、「購入した商品のデータ若しくは提供されたサービスのデータを各商品ごとに前記主計算機に繰り返し読み込ませ、領収書を発行する」のは端末装置であるので、上記のように認定した。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」 に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「マスタ保守手段」の限定事項である「地域あるいは地区に採番しておいた地区コード番号の設定をして入力することができる地区マスタ保守、各商品の商品名、仕入先、単価等を入力することができる商品マスタ保守及び顧客の氏名、住所、電話番号、顧客コードを設定することができる顧客マスタ保守とからなり」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、引用例1、2,3記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることが出来たものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2,3記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、 引用例1、2,3記載の発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-06-10 |
結審通知日 | 2004-06-10 |
審決日 | 2004-06-23 |
出願番号 | 特願平11-47059 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小太刀 慶明、▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判長 |
山下 弘綱 |
特許庁審判官 |
竹中 辰利 佐藤 智康 |
発明の名称 | 顧客管理システム |
代理人 | 中川 邦雄 |