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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1118998
審判番号 不服2000-11431  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-25 
確定日 2005-07-14 
事件の表示 平成 7年特許願第 6271号「ディスプレイを有するコンピュータに使用する装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 8月 4日出願公開、特開平 7-200172]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、昭和62年12月11日(パリ条約による優先権主張 1986年12月11日、米国(US))に出願された特願昭62-312448号の一部を平成7年1月19日に新たな特許出願(発明の数1)としたものであって、その発明の要旨は、平成7年1月25日付け、平成8年4月18日付け、平成11年5月11日付け、及び平成12年8月24日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載よりみて、その特許請求の範囲の第1項(請求項1)に記載された次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「協働するディスプレイを有するコンピュータに使用する装置において、
前記ディスプレイがタッチ式スクリーンを備えており、a)複数の情報フィールドを提供し、b)前記各情報フィールドに対して前記情報フィールドに挿入されるべき情報の複数の種類のうちの1つを識別するパターンを、前記ディスプレイ上に表示する手段と、
情報が挿入されるべき前記情報フィールドのうちの特定の情報フィールドを指示し、前記フィールドの1つに係わる所定のツールを同時に表示する手段であって、前記所定のツールが前記1つのフィールドに対して識別された種類の情報を提供するように動作し、前記ツールが、選択メニューから個々の入力を供給するように構成された少なくとも1つのツールと、前記ユーザが前記情報を構成することを許容するように構成された少なくとも1つのツールとを含む所定のツール群から選択されるようになっている手段と、
前記ユーザが前記タッチ式スクリーン上の1以上の選択された位置を触わり、
前記表示されたツールを動作させた結果得られたデータを前記特定の情報フィールドに挿入する手段とを具備することを特徴とする装置。」

2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭60-50589号公報(以下「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
(i)「<発明の技術分野>
本発明は例えば日本語ワードプロセッサの如き文書処理装置の文書作成方式の改良に関するものである。」(第1頁右上欄第3~6行目を参照。)
(ii)「1.作成中の文書に図形パターンを含む別画面を重ねて表示し、前記重ねて表示された図形パターンを指示することにより前記作成中の文書に対して特定の処理を実行せしめるように成したことを特徴とする文書作成方式。
2.前記文書はあて名を空白にしたものであり、前記別画面は組織図であり、前記表示された組織図内の特定の組織名を指示することにより前記文書の空白のあて名欄に指示された組織名を入れる処理を実行せしめるように成したことを特徴とする特許請求の範囲の第1項記載の文書作成方式。
3.別画面がキーボードを含む電卓の図形パターンであり、該キーボードを指示して計算された計算結果を文書中に移動せしめる処理を実行せしめるようにし成したことを特徴とする特許請求の範囲の第1項記載の文書作成方式。」(特許請求の範囲の欄の記載を参照。)
(iii)「第4図は本発明を日本語ワードプロセッサに適用した場合の一実施例を示すブロック図である。
第4図において、50は中央処理装置(CPU)、51はCRTのコントローラ(CRTC)、52はこのCRTのコントローラ(CRTC)51内に設けられたウィンドウコントローラ(WDC)、53はCRT上の表示と1ドットずつ対応する数画面分の記憶容量のフレームメモリ、57はCRTの表示画面である。また、58はキーボード、60はキャラクタジェネレータ、64はマウスあるいはライトペン等の画面位置指示装置である。」(第3頁左下欄第5~17行目を参照。)
(iv)「次に上記のように構成された装置の文書処理の動作を第5図に示す動作フロー図と共に説明する。
今、表示画面57上に第6図(a)に示すように親睦会旅行費用の表(ただし各項目欄の数字は空白のもの)を表示し、その表示画面上に上記したマルチウィンドウ表示技術によってフレームメモリ55の領域67に記憶されされた電卓の図形パターンを左側に重ねて優先的に表示しているものとする。・・・(中略)・・・
このようにして電卓を用いて作表する場合、第6図(a)に示すように、まず交通費の欄をマウス64等で指示し(a点)、次に画面上の電卓のキーボードをマウス64等で指示して「8000」を入力する。次に宿泊費、交通費を同様にして順次入力することにより画面上で作表が進行し、最後に電卓上の=キーを操作することにより合計結果「22000」が電卓の表示欄に表示され、この表示をマウスで指示し、次に合計欄を指示すると「22000」が合計欄に移り、作表が完成する。」(第4頁左上欄第3行目~第5頁左上欄第2行目を参照。)
(v)「また、他の例として組織表を用いて宛名を入力する場合について説明すると、今、表示画面57上に第6図(b)に示すように宛名を空白にした文書を表示し、その表示画面上に上記したマルチウィンドウ表示技術によってフレームメモリ55の領域66に記憶されている組織表の図形パターンを左側に重ねて優先的に表示しているものとする。
このような状態において、オペレータはまずマウス64で組織表上の一つ(例えば「総務部長」C1)を指示する。この指示によってCPU50は文字コードバッファメモリ63での対応位置を把握する。次にオペレータが空白の宛名欄C2を指示すると、この指示によってCPU50は文字コードバッファメモリ62での対応位置(b点)を把握し、バッファメモリ63より62へ“総務部長”の文字コードを送ると共に、フレームメモリ54へその文字パターンを送って表示画面57の宛名欄C2に「総務部長」を表示させる。
このようにして、簡単に組織表中の1つ(例えば総務部長C1)をマウス64で指示し、次に空白の宛名欄C2を指示するだけで上記第5図に示した動作フローのステップn13~n21と同様の動作が実行されて宛名欄に「総務部長」の情報が入力され、新規入力を必要としない。しかも、組織表を指示するという、人間の直感に合った操作方法によって宛名欄に入力することができる。」(第5頁左上欄第8行目~同頁右上欄第14行目を参照。)

3.対 比
本願発明と上記引用例に記載されたものとを対比する。
引用例に記載されたものにおける「CRT」が本願発明における「ディスプレイ」に相当し、「スクリーン」を備えていることは明らかである。引用例に記載されたものにおいて、別画面がキーボードを含む電卓の図形パターンの場合の作成中の文書における「項目欄」、及び別画面が組織図である場合の「宛名欄」は、それぞれが本願発明における情報が入力されるべき「情報フィールド」に相当する。引用例に記載されたものにおいては、別画面としてキーボードを含む電卓の図形パターンと組織図の少なくとも2通りの場合があり、別画面がキーボードを含む電卓の図形パターンのときは項目欄(情報フィールド)に挿入されるべき情報は数字であり、別画面が組織図のときは宛名欄(情報フィールド)に挿入されるべき情報は文字であることから、項目欄、宛名欄(情報フィールド)に挿入されるべき情報が数字であるか文字であるか(情報の種類)がCRT(ディスプレイ)上に表示される別画面の図形パターンによって識別されるものである。引用例に記載されたものは、情報が入力されるべき項目欄、宛名欄(情報フィールド)を指示し、この項目欄、宛名欄(情報フィールド)に関する電卓の図形パターン、組織図を表示するものであるから、この電卓の図形パターン、組織図は、本願発明における「所定のツール」に相当するものである。そして、引用例に記載されたものにおいては、電卓の図形パターン、組織図(所定のツール)は、項目欄、宛名欄(情報フィールド)に対して識別して挿入されるべき数字、文字を提供するものである。ここで「組織図」(1つのツール)は、表示された組織名から特定の組織名を選択指示して宛名欄に入力するものであり、その場合、表示された組織名は一種の選択肢(選択メニュー)と考えられるから、本願発明における「選択メニューから個々の入力を供給するように構成された少なくとも1つのツール」に相当し、また、「電卓の図形パターン」(1つのツール)は、ユーザが項目欄に挿入されるべき数字(情報)を構成するものであるから、本願発明における「ユーザが前記情報を構成することを許容するように構成された少なくとも1つのツール」に相当する。
そうすると、本願発明と上記引用例に記載されたものとは、次の点で一致する。
<一致点>
協働するディスプレイを有するコンピュータに使用する装置において、
前記ディスプレイがスクリーンを備えており、a)複数の情報フィールドを提供し、b)前記各情報フィールドに対して前記情報フィールドに挿入されるべき情報の種類を識別するパターンを、前記ディスプレイ上に表示する手段と、
情報が挿入されるべき前記情報フィールドのうちの特定の情報フィールドを指示し、前記フィールドの1つに係わる所定のツールを表示する手段であって、前記所定のツールが前記1つのフィールドに対して識別された種類の情報を提供するように動作し、前記ツールが、選択メニューから個々の入力を供給するように構成された少なくとも1つのツールと、前記ユーザが前記情報を構成することを許容するように構成された少なくとも1つのツールとを含む所定のツール群から選択されるようになっている手段と、
前記ユーザが前記スクリーン上の1以上の選択された位置を指示し、前記表示されたツールを動作させた結果得られたデータを前記特定の情報フィールドに挿入する手段とを具備する装置。
そして、次の各点で相違する。
<相違点>
(a) ディスプレイに関し、本願発明においては、タッチ式スクリーンを備えるものであり、スクリーン上の選択された位置を触ることにより表示されたツールを動作させるものであるのに対し、引用例に記載されたものにおいては、CRTを用い、スクリーン上の選択された位置をマウスあるいはライトペン等の位置指示装置で指示することにより電卓の図形パターン、組織図等のツールを動作させている点(以下「相違点a」という。)。
(b) 情報フィールドに挿入されるべき情報の種類を識別するパターンをディスプレイ上に表示する手段に関し、本願発明においては、前記情報の複数の種類のうちの1つを識別するパターンを表示するものであるのに対し、引用例に記載されたものは、このことが特に言及されていない点(以下「相違点b」という。)。
(c) 特定の情報フィールドの1つに係わる所定のツールを表示する手段に関し、本願発明においては、該所定のツールを特定の情報フィールドを指示すると同時に表示するものであるのに対し、引用例に記載されたものにおいては、電卓の図形パターン、組織図(所定のツール)は項目欄、宛名欄(特定の情報フィールド)と共に表示されるものではあるが、項目欄、宛名欄(特定の情報フィールド)を指示すると同時に表示するものであるかどうかは言及されていない点(以下「相違点c」という。)。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて
位置指示装置としてタッチ式スクリーンを備えたディスプレイを用いて、スクリーン上の選択された位置を触ることにより当該位置を指定して表示データ等を入力することは本願出願前に周知の技術(必要があれば、実願昭58-7989号(実開昭59-115382号)のマイクロフィルム、特開昭61-153725号公報を参照されたい。)であり、タッチ式スクリーンを用いるかマウスやライトペンを用いるかは当業者が適宜に定めうる設計上の事項であるから、引用例に記載されたものにおいても、ディスプレイとしてのCRTに上記周知の技術であるタッチ式スクリーンを備えてスクリーン上の選択された位置を触ることにより表示データ等を入力するように構成することは当業者が容易に想到できたものである。
相違点bについて
引用例に記載されたものも、電卓の図形パターン、組織図(所定のツール)は、項目欄、宛名欄(情報フィールド)に挿入されるのが数字であるか、文字であるか(情報の種類)が識別されるものであって、各情報フィールドにはこの挿入されるべき情報の種類を識別するものとして表示されているのであるから、これら電卓の図形パターン、組織図(所定のツール)はパターンとして複数の種類のうちの1つとして識別されており、本願発明のように複数の種類のうちの1つを識別するパターンを表示するものとして構成することは当業者が容易に想到できたものである。
相違点cについて
通常、ツールを表示して使用する際、当該ツールの使用により特定のフィールドの情報(情報フィールド)が指示されて処理されるのであり、引用例に記載されたものにおいても、所定のツールに相当するものである電卓の図形パターン、組織図は項目欄、宛名欄(特定の情報フィールド)と共に表示されるものであるから、特定の情報フィールドが表示された後に所定のツールを表示するか、あるいは同時に表示するかは、当業者が適宜選定し得る設計的事項に過ぎず、本願発明のように同時に表示することは当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本願発明のように構成することによる作用効果も格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-19 
結審通知日 2002-11-20 
審決日 2002-12-05 
出願番号 特願平7-6271
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保田 昌晴下野 和行  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 片岡 栄一
治田 義孝
発明の名称 ディスプレイを有するコンピュータに使用する装置  
代理人 岡部 正夫  
代理人 加藤 伸晃  

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