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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H03B |
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管理番号 | 1119445 |
異議申立番号 | 異議2003-72566 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-03-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-20 |
確定日 | 2005-07-04 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第3398331号「温度補償型水晶発振器の製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについてされた平成16年7月27日付の取消決定に対し、知的財産高等裁判所において、「特許庁が異議2003-72566号事件について平成16年7月27日にした決定を取り消す。」との判決言渡(平成17年(行ケ)第10022号,平成17年4月27日)があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3398331号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 ・平成10年 8月31日 特許出願(特願平10-244277号) ・平成15年 2月14日 設定登録(特許第3398331号、請求項の数2) ・平成15年10月20日 荒木恒彦による特許異議の申立 ・平成15年10月21日 池田英治による特許異議の申立 ・平成16年 5月11日 取消理由通知(発送日) ・平成16年 7月12日 意見書及び訂正請求 ・平成16年 7月27日 異議決定(請求項1,2に係る特許を取り消す) ・平成16年 9月21日 異議決定取消訴訟(平成17年(行ケ)第10022号(平成16年(行ケ)第421号)) ・平成16年10月21日 訂正審判請求(訂正2004-39237号) ・平成17年 1月 4日 訂正拒絶理由通知(発送日) ・平成17年 2月 2日 意見書 ・平成17年 3月17日 訂正認容審決 ・平成17年 3月29日 同審決確定 ・平成17年 4月27日 異議決定取消判決(平成17年(行ケ)第10022号) 第2.本件発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正審判(訂正2004-39237号)の訂正容認審決により訂正が認められた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。 なお、本件特許についての前記訂正の審判において、訂正を認める旨の審決が前述のとおり確定したので、平成16年7月12日付けの訂正請求書は取り下げられたものとみなす。 「【請求項1】下面にキャビティー部を有し、上面に水晶振動子が実装される電極パッドを、該キャビティー部の内表面にモニタ電極パッドを設けた容器体を準備する工程と、前記容器体の上面に水晶振動子を実装するとともに、該水晶振動子を前記モニタ電極パッドに接続する工程と、前記モニタ電極パッドを用いて前記水晶振動子の発振特性を測定しつつ、必要に応じて発振特性の調整を行う工程と、前記水晶振動子を熱エージングする工程と、前記水晶振動子を蓋体で気密封止する蓋体を被覆する工程と、前記キャビティー部内に、前記モニタ電極パッドの下方に配置されるようにICチップを収容する工程と、前記ICチップに前記水晶振動子の温度補償を行うための温度補償データを書き込む工程とから成ることを特徴とする温度補償型水晶発振器の製造方法。 【請求項2】前記容器体の側面には、ICチップと接続し且つ温度補償データを書き込むためのIC制御端子電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の温度補償型水晶発振器の製造方法。」 (以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」という。) 第3.特許異議の申立ての理由の概要 1.荒木恒彦は、訂正前の請求項1及び2に係る発明の特許は、下記の甲第1ないし4号証に示された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。 甲第1号証 特開平8-204452号公報 甲第2号証 1998 IEEE INTERNATIONAL FREQUENCY CONTROL SYMPOSIUM 「Manufacturing Optimization for Improved AT Crystal aging」(以下「刊行物8」という。) 甲第3号証 特開平10-28024号公報 甲第4号証 特開平10-98151号公報 (異議申立人は「申立の理由」の「申立の根拠」において、根拠条文として特許法第29条第2項の他に“特許法第29行(「条」の誤記と認められる。)第1項第3号”を記載している。しかし、異議申立人荒木恒彦が提出した「特許異議申立書」内の「申立理由の要約」には特許法第29条第2項の規定についてのみ記載しており特許法第29条第1項第3号については比較検討していない。さらに「特許異議申立書」内の「具体的な理由」において請求項1に記載された発明と甲第1号証に記載された発明を比較し、その相違点についての検討を行い、判断として「当業者が容易に想到することができたもの」と記載しており、“同一である”旨の判断はないことから、特許法第29条第2項違反について主張しているものと認める。) 2.池田英治は、下記の甲第1ないし5号証より、訂正前の請求項1及び2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。 甲第1号証 特開平7-106901号公報(以下「刊行物9」という。) 甲第2号証 特開平10-22777号公報 甲第3号証 特開平10-98151号公報(異議申立人荒木恒彦による甲第4号証と同じ) 甲第4号証 特開平9-172325号公報(以下「刊行物10」という。) 甲第5号証 特開平5-275957号公報 第4.当審の判断 1.訂正審判(訂正2004-39237号)において当審が通知した訂正拒絶理由について 訂正審判での訂正拒絶理由は、当該審判請求に係る訂正明細書の請求項1及び2に記載された発明が、頒布された下記の刊行物1~7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないというものである。(なお、下記の刊行物1~5は、本件異議申立人が提出した刊行物であり、かつ、取り消された平成16年7月27日付の異議の決定の理由に引用されたものである。) 刊行物1 特開平8-204452号公報 (異議申立人荒木恒彦による甲第1号証) 刊行物2 特開平5-275957号公報 (異議申立人池田英治による甲第5号証) 刊行物3 特開平10-22777号公報 (異議申立人池田英治による甲第2号証) 刊行物4 特開平10-28024号公報 (異議申立人荒木恒彦による甲第3号証) 刊行物5 特開平10-98151号公報 (異議申立人荒木恒彦による甲第4号証,異議申立人池田英治による甲第3号証) 刊行物6 特開平8-255992号公報 刊行物7 特開平8-255993号公報 2.刊行物の記載 ・上記刊行物1(特開平8-204452号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (ア)「本発明は改善された両面(double-sided)温度補償された水晶発振器(TCXO)パッケージ100を提供する。このパッケージは概略的に基板に結合された、感温部品(temperature-sensitive components)を有する補償回路を含む。パッケージ100は該パッケージ100の一部の上に実装された圧電素子を受けるよう構成され、それによって前記補償回路と圧電素子との間に電気的接続が提供され未同調(untuned)周波数制御装置を生成する。周波数同調の後、ハーメチックシールが前記圧電素子の回りに与えられる。この発明のパッケージ100によれば、従来技術の周波数制御装置の寸法的な制限は実質的に克服される。」(段落【0012】) (イ)「前記上部開口リセプタクル112はまた前記圧電素子134を同調するよう構成された導電性パッド152および154および典型的にはDC電圧バイパス容量として機能する第1および第2のチップ容量128および130のための十分なスペースを含む。IC126はそれ自体温度補償機能を提供する。」(段落【0019】) (ウ)「下部開口リセプタクル114は少なくとも圧電素子134を含みかつもし望むならば他の部品を含むことができる。圧電素子134は広範囲のものとすることができる。その例としてはクオーツ、ATカットクオーツ条片(strip)、その他を含むことができる。好ましい実施例では、圧電素子134は、温度補償可能な、約-40℃から約90℃まででふるまいが良好な(well-behaved)周波数対温度関係を得るためATカットのクオーツ条片からなる。圧電素子134を他の部品から隔離することにより圧電素子134が汚染され、その結果その周波数の望ましくない変化を生じる可能性を最小にする。」(段落【0020】) (エ)「図2および図4を参照すると、圧電素子134はカップリング140および142の上に配置されかつ該カップリング140および142に結合されている。該カップリング140および142は圧電素子134に対し機械的および電気的接続を提供する。」(段落【0024】) (オ)「好ましい実施例では、図1~図4におけるパッケージ100を制作することに関連する方法は次のステップを含む。 1)両面TCXOパッケージ100が準備される。該パッケージ100は台座(platform)102に結合された、上部側壁108を規定する多層セラミック部分および下部側壁110を規定する金属をろう付けした(metalbrazed)リングを含む。 2)パッケージが上に面しているときに水晶結晶板(quartz crystal)が下部開口リセプタクルに置かれかつ中央部分104に適切に取付けられる。 3)前記水晶結晶板が、該水晶結晶板をパッケージ100の中央部分104における上部開口リセプタクル112へとアクセス可能な、他の側の金属パッド152および154を通して作動させながら、該水晶結晶板の質量装荷(mass loading)により周波数同調される。 4)前記水晶結晶板が次に下部側壁110の下端部136をカバー116に結合するために平行なシーム溶接を使用して金属カバー116によって気密封止される。これにより水晶部分の製造プロセスが完了する。 5)電子部品が上部開口リセプタクル112内に配置されかつチップ容量128および130を結合するために台座102上にはんだを施すことにより適切に取付けられる。はんだはリフローまで部品を粘着性でかつ適切に保持する。次に、フラックスがIC126の領域の近傍にかつ下に施される。はんだバンプを有するフリップチップICが台座102の中央部分104に整列されかつ配置される。部品は次にはんだリフローされる。また、有機アンダーフィルが施され、それによって該有機アンダーフィルがIC126の下に流れかつ実質的にIC126を環境的に保護できるようにする。 6)その後、TCXOパッケージ100は最終的な電気的セットアップおよび試験に送られる。その後、顧客は典型的には前記平坦部122を回路基板にはんだリフローし電子機器において使用するためにコンタクト124のおのおのを適切な電気的接続部へと接続する。」(段落【0031】) これらの記載事項において、「圧電素子」は具体的には「水晶結晶板」で構成され振動子として機能していることから、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「上部開口リセプタクル112を有し、下部開口リセプタクル114に水晶振動子が実装されるカップリング140および142を、該上部開口リセプタクル112の内表面に金属パッド152および154を設けたパッケージを準備する工程と、 前記パッケージの下部開口リセプタクル114に水晶振動子を実装するとともに、該水晶振動子を前記金属パッド152および154に接続する工程と、 前記金属パッド152および154を用いて該水晶振動子を作動させながら、周波数同調する工程と、 前記水晶振動子を気密封止する金属カバー116を被覆する工程と、 前記上部開口リセプタクル112内にICチップを収容する工程と、 最終的な電気的セットアップおよび試験をする工程と を含むことを特徴とする温度補償型水晶発振器の製造方法。」 ・上記刊行物2(特開平5-275957号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (カ)「エキシマレ-ザを照射する度にAT振動子の周波数を測定しデ-タを制御装置に送る。そして所定の周波数に近くなるに従って、制御装置は連続可変減衰装置を作動させレ-ザの光量を絞り周波数の微調整を行う。」(第2頁第2欄第19~23行) ・上記刊行物3(特開平10-22777号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (キ)「水晶振動子の製造としては、人工水晶を所望の矩形状ATカット水晶振動片に加工し、(1)水晶振動片1に蒸着又はスパッタリング等の薄膜形成方法で電極6を形成し、(2)電極6を形成した水晶振動片1を気密端子にハンダ付けして半完成水晶振動子とし、ハンダ付け後に(3)洗浄し、(4)半完成水晶振動子の振動周波数調整(以下f調という)をし、その後、(5)真空雰囲気中で熱処理し、(9)ハンダ又はニッケルメッキして(10)真空中で熱処理した封止管5を(6)金属環2の外周に圧入封止し、さらに(7)熱処理をして(8)検査をしている。」(第2頁第1欄第41行~第2欄第1行) (ク)「(7)の熱処理工程は、完成後の水晶振動子の振動周波数が高温保存やハンダリフローのような温度上昇により変化するのを防ぐための工程であり、共晶系ハンダを使用している場合は100℃で24時間、Pb系の高温ハンダを使用している場合で170℃で24時間程度である。」(第2頁第2欄第17~22行) ・上記刊行物4(特開平10-28024号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (ケ)「なお基板1の下面の外周部には半円形の切欠が複数個設けられ、この切欠には制御素子5に振動子3の温度補償用データ等を書込むための制御素子15が設けられている。」(段落【0027】) ・上記刊行物5(特開平10-98151号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (コ)「また、他の電極16a,16c,16d,16e,16g,16h,16i,16j,16k,16l,16nは検査電極で、これらの電極は第1の容器1の底面から所定距離だけ上方に離した位置に設けられており、これらの電極を使用して能動素子2の内部のメモリへのデータ書込みや各種の検査が行われる。 なお、能動素子2の内部にはメモリ以外にバラクターダイオードが設けられており、このバラクターダイオードのカソードに供給する電圧を可変し、その容量を変化させ、それによって振動素子6の発振周波数が温度にかかわらず略一定となるように制御している。」(段落【0029】~【0030】) ・上記刊行物6(特開平8-255992号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (サ)「このように、電子部品16を例えば半導体チップとした場合、電子部品21および少なくとも半導体チップが配置される回路基板14の部分は、回路基板14に形成された基準電位層15と、ほぼ全体または少なくとも裏面全面が導電材料から成る半導体チップにより挟まれるため、金属ケース又は金属キャップを用いることなく、十分なシールド効果を得ることができる。」(段落【0017】,図1~4参照。) ・上記刊行物7(特開平8-255993号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (シ)「このような接続構造をとることにより、金属ケース又は金属キャップを用いることなく、電子部品15,20および少なくとも半導体チップが配置される回路基板部分は、ほぼ全体または少なくとも裏面全面が導電材料から成る半導体チップにより挟まれるため、十分なシールド効果を得ることができる。」(段落【0019】,図1~6参照。) ・上記刊行物8(異議申立人荒木恒彦による甲第2号証:1998 IEEE INTERNATIONAL FREQUENCY CONTROL SYMPOSIUM 「Manufacturing Optimization for Improved AT Crystal aging」)には、その記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (ス)「The crystals are high vacuum baked and resistance welded in a UM-1 holder in a highly controlled nitrogen environment.」(第135頁左欄下から第4~6行) (訳すると「水晶は高真空状態で加熱が施され、そして制御された高窒素雰囲気内にてUM-1ホルダー内に抵抗溶接される。」ことが記載されている。) ・上記刊行物9(異議申立人池田英治による甲第1号証:特開平7-106901号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (セ)「図1(a)に実施例の断面図を示す。この例では、2層ラミネートセラミックによる基板1には、裏に発振用ICチップ4を取り付けるための凹部3を有し、表面には圧電振動板2が取り付けられており、圧電振動板2の電極の引き出しは基板を貫通して凹部3の中の圧電振動子特定評価パッド7に接続されている。圧電振動板1を覆ってキャップ6で気密封止が施され、圧電振動子を構成している。 図1(b)に実施例の裏面図を示す。圧電振動板2の電極が圧電振動子特性評価パッド7に接続されているので、該圧電振動子特性評価パッド7を使用して圧電振動子の特性を評価し良品のみを使用する。圧電振動子特性評価パッドは、他のボンディング用パッドより大きく、特性評価のため指針等で接触させるのに都合良く出来ている。 図1(a)及び(b)に示す様に、底面裏の凹部3に発振用ICチップ4を取り付圧電振動子特性評価パッド7、及び端子5を接続し、発振用ICチップ4の上に樹脂をポッティング8した状態の表面実装タイプの圧電発振器が得られる。」(段落【0005】~【0007】,図1参照。) ・上記刊行物10(異議申立人池田英治による甲第4号証:特開平9-172325号公報)には、その実施例及び図面とこれに係る記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。 (ソ)「水晶振動板をその上部に搭載する基台2はセラミックスを積層形成してなり、その内部に必要な電極配線が施され、その一部が後述する電極パッド、外部導出端子として露出している。この基台の上部には水晶振動板を搭載する電極パッド21,22,23が形成され、電極パッド21,22を通じて、水晶振動板に電気信号が入力される。」(段落【0014】,図1~2参照。) 3.本件発明1について (対比) 本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比する。(なお、刊行物1記載の発明では、水晶振動子が収容される部分とICチップが収容される部分の上・下の表現が、本件発明1とは逆になっているので、刊行物1記載の発明に係る温度補償型水晶発振器の上・下を逆にして対比する。)刊行物1記載の発明の「パッケージ」は訂正発明1の「容器体」に相当し、刊行物1記載の発明のパッケージに設けられた「上部開口リセプタクル112」及び「下部開口リセプタクル114」は、それぞれ訂正発明1の容器体下面に設けられた「キャビティー部」及び容器体の「上面」に相当する。また、刊行物1記載の発明の「水晶振動子が実装されるカップリング140および142」、「金属パッド152および154」、「金属カバー116」及び、「水晶振動子を作動させながら、周波数同調する」は、それぞれ、訂正発明1の「電極パッド」、「モニタ電極パッド」、「蓋体」及び「発振特性の調整を行う」に相当する。 そうすると、両者は、 「下面にキャビティー部を有し、上面に水晶振動子が実装される電極パッドを、該キャビティー部の内表面にモニタ電極パッドを設けた容器体を準備する工程と、 前記容器体の上面に水晶振動子を実装するとともに、該水晶振動子を前記モニタ電極パッドに接続する工程と、 前記水晶振動子を蓋体で気密封止する蓋体を被覆する工程と、 前記キャビティー部内にICチップを収容する工程と、 を含むことを特徴とする温度補償型水晶発振器の製造方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 a 本件発明1は、モニタ電極パッドを用いて水晶振動子の発振特性を測定しつつ、必要に応じて発振特性の調整を行うのに対し、刊行物1においては、モニタ電極パッドを用いて水晶振動子の発振特性の調整を行うものの、当該発振特性の調整が、発振特性を測定しつつ必要に応じて行われることの記載はない点。 b 刊行物1には、本件発明1の水晶振動子を熱エージングする工程についての記載がない点。 c 刊行物1には、水晶発振器に対して最終的な電気的セットアップおよび試験が行われることの記載はあるが、本件発明1の構成のICチップに水晶振動子の温度補償を行うための温度補償データを書き込むことの記載はない点。 d 本件発明1は、モニタ電極パッドの下方に配置されるようにICチップを収容するのに対し、刊行物1記載の発明は、ICチップの脇にモニタ電極パッドを形成する点。 (検討) 上記相違点dについて先ず検討する。 刊行物6や刊行物7に記載されているように、ICチップによるシールド技術は周知であるものの、この技術は、一般的な放射ノイズや伝導ノイズを遮断することを目的としているものであり、シールドされる対象物がモニタ電極パッドではない。 そして、刊行物1記載の発明においては、モニタ電極パッドがICチップの脇に形成されており、ICチップによるシールド技術を適用しても、モニタ電極パッドのシールドも、浮遊容量の遮断もできないことは明かである。 しかも、本件発明1のモニタ電極パッドの下方に配置されるようにICチップを収容するような構成を採用することで、「プリント配線基板とモニタ電極パッドに発生する浮遊容量を遮断することができる」等の本明細書中に記載された顕著な作用効果を奏するものと認められる。 よって、周知のICチップによるシールド技術を刊行物1記載の発明に適用し、該モニタ電極パッドの下方に配置されるようにICチップを収容することは、当業者が容易になし得たものとすることはできない。 また、モニタ電極パッドの下方に配置されるように、ICチップを収容することは、刊行物1~10に記載された発明をどのように組み合わせても導き出すことができない。 したがって、上記相違点aないしcについての検討をするまでもなく、本件発明1は、刊行物1~10に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1の構成をすべて含む。本件発明2は、上記「3.本件発明1について」で説示した相違点dに係る発明特定事項を具備するものであるが、当該発明特定事項が、刊行物1ないし10に記載されたものをいかに組み合わせても導き出すことができないことは、上記「3.本件発明1について」で述べたとおりである。 そして、本件発明2は、上記発明特定事項を具備することにより、上記「3.本件発明1について」で述べた本件発明1と同じ効果を奏したものと認められる。 したがって、本件発明2も本件発明1と 同様、刊行物1~10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明とすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであって、請求項1及び2に係る発明の特許は、特許異議申立ての理由及び証拠、及び訂正審判(訂正2004-39237号)における訂正拒絶理由に引用した証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び2に係わる発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-06-14 |
出願番号 | 特願平10-244277 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H03B)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
大日方 和幸 |
特許庁審判官 |
大野 克人 内田 正和 |
登録日 | 2003-02-14 |
登録番号 | 特許第3398331号(P3398331) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 温度補償型水晶発振器の製造方法 |