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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H02M
管理番号 1121877
審判番号 訂正2005-39085  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-12-08 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2005-07-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3413754号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3413754号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許出願:平成9年5月23日
(2)特許権の設定登録:平成15年4月4日
(3)特許公報の発行:平成15年6月9日
(4)特許異議の申立て:平成15年12月9日(異議2003-72988号)
(5)取消理由通知:平成16年4月27日
(6)意見書の提出:平成16年7月12日
(7)特許異議の決定(取消決定):平成17年1月19日
(8)高等裁判所への出訴:平成17年3月4日(平成17年行ケ第10387号)
(9)本件訂正審判の請求:平成17年5月30日

2.訂正の内容
本件訂正審判において請求人が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 全波整流器と;
この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサと;
平滑コンデンサに対して並列に接続されたNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの直列回路を主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と;
直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する制御手段と;
平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する起動回路と;
を具備したことを特徴とする電源装置。」

(2)訂正事項b
請求項5を削除する。

(3)訂正事項c
請求項6ないし10を1ずつ繰り上げて請求項5ないし9とするとともに、それに伴い、各請求項において従属する請求項を1ずつ繰り上げる。

(4)訂正事項d
発明の詳細な説明において、段落【0008】の【課題を解決するための手段】の記載を、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電源装置は、全波整流器と;この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサと;平滑コンデンサに対して並列に接続されたNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの直列回路を主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と;直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する制御手段と;平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する起動回路とを具備したもので、制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを動作させるため、1つの制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路の出力でそれぞれNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを異なる状態に制御でき、回路構成が簡素化する。」

(5)訂正事項e
発明の詳細な説明において、段落【0009】の記載を、次のように訂正する。
「また、全波整流器の出力を平滑コンデンサで平滑し、起動回路の起動用の抵抗を介してインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタに電圧を印加して起動する。」

(6)訂正事項f
発明の詳細な説明において、段落【0009】ないし段落【0011】の記載を段落【0010】ないし段落【0012】に繰り下げる。

(7)訂正事項g
発明の詳細な説明において、段落【0013】ないし段落【0017】の「請求項6記載の」ないし「請求項10記載の」の記載をそれぞれ「請求項5記載の」ないし「請求項9記載の」に訂正するとともに、段落【0013】の「請求項1ないし5いずれか一記載の」の記載を「請求項1ないし4いずれか一記載の」に、段落【0014】及び【0015】の「請求項1ないし6いずれか一記載の」の記載を「請求項1ないし5いずれか一記載の」に、段落【0016】の「請求項8記載の」の記載を「請求項7記載の」に、段落【0017】の「請求項7ないし9いずれか一記載の」の記載を「請求項6ないし8いずれか一記載の」に訂正する。

(8)訂正事項h
発明の詳細な説明において、段落【0046】の「共振回路の共振によりによりNチャネルの」を「共振回路の共振によりNチャネルの」に訂正する。

(9)訂正事項i
発明の詳細な説明において、段落【0047】の記載を、次のように訂正する。
「また、全波整流器の出力を平滑コンデンサで平滑し、起動回路の起動用の抵抗を介してインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタに電圧を印加して起動できる。」

(10)訂正事項j
発明の詳細な説明において、段落【0047】ないし段落【0049】の記載を段落【0048】ないし段落【0050】に繰り下げる。

(11)訂正事項k
発明の詳細な説明において、段落【0051】ないし段落【0055】の「請求項6記載の」ないし「請求項10記載の」の記載をそれぞれ「請求項5記載の」ないし「請求項9記載の」に訂正するとともに、段落【0051】の「請求項1ないし5いずれか一記載の」の記載を「請求項1ないし4いずれか一記載の」に、段落【0052】及び【0053】の「請求項1ないし6いずれか一記載の」の記載を「請求項1ないし5いずれか一記載の」に、段落【0054】の「請求項8記載の」の記載を「請求項7記載の」に、段落【0055】の「請求項7ないし9いずれか一記載の」の記載を「請求項6ないし8いずれか一記載の」に訂正する。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否について
上記2.(1)の訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1を、登録時の請求項1に請求項5を追加し、さらに発明特定事項に限定を付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、この訂正は、登録時の明細書の段落【0035】、【0038】及び【図1】などの記載によれば、新規事項の追加に該当せず、かつ、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものでもない。
また、上記2.(2)ないし(11)の訂正事項bないしkは、上記2.(1)の特許請求の範囲の請求項1に係る訂正に整合させるためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、かつ、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものでもない。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号ならびに同条第3項及び第4項に適合する。

4.独立特許要件について
前述のように本件特許請求の範囲に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明9」という。)が、出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件訂正発明1ないし9
本件訂正発明1ないし9は、本件訂正審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載されている事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。

「【請求項1】全波整流器と;
この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサと;
平滑コンデンサに対して並列に接続されたNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの直列回路を主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と;
直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する制御手段と;
平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する起動回路と;
を具備したことを特徴とする電源装置。
【請求項2】 Nチャネルのトランジスタは、高電位側に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】 インバータ回路に接続されたバラストチョークを備え、
制御手段は、このバラストチョークに磁気的に接続された二次巻線を有し、
この二次巻線に誘起された電圧で共振回路のインダクタおよびコンデンサが共振してNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを駆動する
ことを特徴とする請求項1または2記載の電源装置。
【請求項4】 トランジスタは、MOS型電界効果トランジスタおよびIGBTのいずれかである
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の電源装置。
【請求項5】 起動回路は、共振回路のコンデンサに直列に接続されNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加するコンデンサを有する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の電源装置。
【請求項6】 請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;
この電源装置により点灯される蛍光ランプと;
を具備したことを特徴とする蛍光ランプ装置。
【請求項7】 口金を有する基体と;
この基体に収容される請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;
基体に取り付けられインバータにより点灯される蛍光ランプと;
を具備したことを特徴とする蛍光ランプ装置。
【請求項8】 基体に取り付けられこの基体とともにほぼ電球型となるグローブを具備したことを特徴とする請求項7記載の蛍光ランプ装置。
【請求項9】 請求項6ないし8いずれか一記載の蛍光ランプ装置と;
蛍光ランプ装置が取り付けられる器具本体と;
を具備したことを特徴とする照明装置。」

(2)引用刊行物
(2-1)引用例1
平成17年1月19日付けの異議の決定において引用した特開昭63-310597号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の記載がある。
a.「本発明の目的は従来の変換器における欠点を除去すると共に、回路に必要とされる部品を最少に減らすように適切に接続配置した直流-交流変換器を提供することにある。
本発明は、冒頭にて述べた種類の直流-交流変換器において、前記第2スイッチング素子の制御回路が前記第1スイッチング素子の制御回路に接続した整流素子に接続される電圧測定点を有することを特徴とする。
第2スイッチング素子の制御回路は主制御回路として機能し、かつ第2スイッチング素子の制御回路は補助制御回路として機能する。第2スイッチング素子の瞬時導通状態は斯かる補助制御回路にて整流素子を介して固定される。第1スイッチング素子は、第2スイッチング素子の制御回路の電圧値に基いて第2スイッチング素子の導通状態とは反対の導通状態に持たされる。」(2頁下段左欄4-20行。)

b.「さらに、従来の変換器と比較するに、回路に必要とされる電気部品の数も少なくて済む。さらにまた、(例えば「表面取付デバイス」技法により)部品の集積化が一層実用的となる。これにより、一般的な照明目的用の白熱ランプに取って替わるコンパクトな放電ランプに変換器を首尾良く使用することができる。」(2頁下段右欄6-12行。)

c.「第2図における第1図の素子と同一素子を示すものには同一符号を付して示してある。12及び13は直流電圧源(220V、50Hz)に接続する入力端子を示す。入力端子12を抵抗14を介してダイオードブリッジ15の入力端子に接続する。ブリッジ15の2つの入力端子はコンデンサ16によって相互接続する。抵抗14とコンデンサ16は入力フィルタを構成する。ブリッジ15の出力端子を平滑コンデンサ17によって相互接続する。」(3頁下段右欄11-19行。)

d.「コイル19はコイル5における補助巻線21を介してコイル5に電気的に接続する。」(4頁上段右欄4-5行。)

e.「変換器は始動回路も具えており、この始動回路は抵抗33と34の接続点と、第2スイッチング素子7の制御電極との間に配置する抵抗31と二方向性のブレークダウン素子(ダイアック)32との直列回路で構成する。抵抗33と34との接続点と、前記接続点Aとの間にはコンデンサ35も接続する。」(4頁下段左欄3-9行。)

f.「本発明による変換器はつぎのように作動する。端子12及び13を給電幹線(220V,50Hz)に接続すれば、コンデンサ17はダイオードブリッジ15を介して充電される。これによりコンデンサ4及び11もコイル18を経て充電される。始動コンデンサ35も回路18,33,35及びA、Dを経て充電される。コンデンサ35の電圧が回路素子32のスレッショールド電圧に達すると、この素子32が導通して、これは回路素子31を介して第2半導体スイッチング素子7を導通させる。」(4頁下段左欄14行-同右欄3行。)

g.「第1スイッチング素子6を導通させる制御信号はコンデンサ4及び11の電圧によって直接供給される。コイル19とコンデンサ20(LC発振回路)によって周波数が極めて正確に決定される直流電圧が点PとAとの間のコンデンサ20の両端間に発生する。この直流電圧に応答して第2スイッチング素子7をスイッチ・オフさせることができる。電流が依然コイル5を経て流れている間は第1スイッチング素子6にフリーホイール電流が流れて第2スイッチング素子7はスイッチ・オフされる。従って、点Aの電位は点Dにおける電位と同じとなる。点Pにおける電圧が点Aにおける電圧に対して負となる場合に、補助トランジスタ22の制御が整流素子10を介してオフセットされ、この補助トランジスタ22はターン・オフする。しかし、点PとAとの間の電圧差が再び零となるや歪や補助トランジスタ22はターン・オンし、第1スイッチング素子6は非導通となる。ついで第2スイッチング素子7が再び導通し、このような状態が繰返えされる。従って、点Pの電圧は第2スイッチング素子7の制御回路9にて測定され、この測定電圧は第1スイッチング素子6を導通させる時点を決定する。」(4頁下段右欄7行-5頁上段左欄9行。)

h.「MOST-FET6:タイプBST78
MOST-FET7:タイプBST78」(5頁上段右欄3-4行。)

上記引用例1の記載によれば少なくとも以下のことが明らかである。

ア.上記aないしh及び図面から、引用例1の第2半導体スイッチング素子7及び第1半導体スイッチング素子6の実施例として、それぞれ同一タイプ(タイプBST78)のMOST-FET7及びMOST-FET6が記載され、これら2つのMOST-FETはトランジスタであって、この2つのトランジスタをスイッチング素子とした回路は、ハーフブリッジ型のインバータ回路を成すといえる。

イ.上記a、gから、上記2つのスイッチング素子のうち、MOST-FET6は、少なくとも、補助トランジスタ22及び整流素子10よりなる制御回路8(補助制御回路)により制御されるものであるといえる。

ウ.上記g及び第2図から、少なくとも制御回路9および補助制御回路8は、直列に接続されたインダクタ(コイル19)およびコンデンサ(コンデンサ20)の共振回路(LC発振回路)を有し、この共振回路の共振により前記同一タイプより成るMOST-FET7のゲート及び(整流素子10と補助トランジスタ22等により構成される)補助制御回路8によりMOST-FET6のゲートに交互に電圧を印加して前記インバータ回路のMOST-FET7およびMOST-FET6を制御する制御手段であるといえる。

エ.引用例1の直流-交流変換器は、その全体として電源装置を構成するといえる。

オ.上記e、f及び第2図から、電源装置(直流-交流変換器)は、全波整流器(ダイオードブリッジ15)と、この全波整流器の出力を平滑化するとともにインバータ回路のMOST-FET7およびMOST-FET6の直列回路が並列に接続された平滑コンデンサ(平滑コンデンサ17)と、この平滑コンデンサの一端に接続された起動用の抵抗(抵抗33)を有し、少なくとも起動用の抵抗を介してインバータ回路のMOST-FET7に電圧を印加する起動回路(始動回路)とを具備する。

以上のことから、引用例1には、自明の事項も含め少なくとも次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「全波整流器(ダイオードブリッジ15)と、
この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサ17と、
平滑コンデンサに対して並列に接続された同一タイプのMOST-FET7からなるトランジスタおよび補助制御回路8により制御されるMOST-FET6からなるトランジスタの直列回路をスイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と、
直列に接続されたインダクタ(コイル19)およびコンデンサ(コンデンサ20)の共振回路を有し、この共振回路の共振によりMOST-FET7からなるトランジスタのゲートおよび補助制御回路8を介してMOST-FET6からなるトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のMOST-FET7からなるトランジスタおよびMOST-FET6からなるトランジスタを制御する制御手段(制御回路9および補助制御回路8)と、
平滑コンデンサの一端とブレークダウン素子(ダイアック)32と抵抗31を介してMOST-FET7からなるトランジスタのゲートとの間に接続された起動用の抵抗(抵抗33)を有し、少なくとも該起動用の抵抗を介してインバータ回路のMOST-FET7に電圧を印加する起動回路(始動回路)と、
を具備したことを特徴とする電源装置。」

(2-2)引用例2
同じく平成17年1月19日付けの異議の決定において引用した特開昭63-73884号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。
a.「NチャンネルMOSFETとPチャンネルMOSFETの各ゲート端子及び各ソース端子を接続し、該ゲート端子及びソース端子間に正、負のゲート電圧を加えるゲート駆動回路を備えて構成したことを特徴とするパワーMOSFETによるインバータ回路。」(特許請求の範囲)

b.「〔従来の技術〕
従来この種のインバータ回路として第4図のものが知られている。この従来構造は2個のNチャンネルMOSFET51・52と2組の互いに絶縁されたゲート駆動回路53・54とで構成されている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
この回路構成の場合素子のターンオフ遅れやゲートパルスの伝達遅れに伴いスイッチング時に上下の素子が同時導通するアーム短絡が生じ、素子の定格を脅かし、スイッチング損失を増大させるなどの不都合を生じる。
この短絡防止対策として第5図の如くアームを構成する上下の素子の制御パルスに一定のデッドタイムを設ける方法がある。
しかしながらこの方法の場合、素子のターンオフ時間は負荷電流の大きさや温度条件により変化し、またゲートドライブ回路の影響も受けるため十分な余裕をとってデッドタイムを設定する必要がある。
またデッドタイムを持たせることはゲート駆動回路を複雑にするとともにインバータの出力波形の精度を低下し、素子の利用率の低下や制御系の不安定現象を生じさせることがあるという不都合を有している。」(1頁下段左欄20行-2頁上段左欄8行。)

c.「〔作用〕
NチャンネルMOSFETとPチャンネルMOSFETの両ゲート端子間及び両ソース端子間の電圧は同一となり、同時導通は起こり得ず、スイッチング過渡時のアーム短絡は回避される。」(2頁上段右欄18行-同下段左欄2行。)

d.「〔実施例〕
第1図乃至第3図は本発明の実施例を示し、1はNチャンネルMOSFET、2は同一定格のPチャンネルMOSFETであって、各ゲート端子3,4を直結している。
5はゲート駆動回路である。
第3図は、第1図の回路を100〔V〕の直流電源に接続し、ゲート端子3・4間とすでに直結されているソース端子間を第2図の正、負のゲート電圧で駆動して無負荷運転したとき得られた波形である。
すなわち第3図から、大きなピーク電流や素子電圧の上昇は生ぜず、短絡現象の起こっていないことが理解される。」(2頁下段左欄3-20行。)

e.「〔発明の効果〕
本発明は上述の如く、スイッチング過渡時の電源短絡を回避でき、このためパワーMOSFET固有の高速スイッチング性能を充分に活用でき、高周波大電力のスイッチングが容易にできるとともにゲート駆動回路も一組でよく部品点数の減少や装置の小型、軽量化を図ることができ、かつゲートとソース間を直接駆動するため電源や負荷条件に関係なくスイッチングでき、電力変換回路への適用が可能となる。」(2頁下段右欄5-18行)

上記引用例2の記載によれば少なくとも以下のことが明らかである。
ア.そのNチャンネルMOSFET1及びPチャンネルMOSFET2はMOS型電界効果トランジスタ、即ちトランジスタである。

イ.第1図の回路は、前記トランジスタを主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路である。また、それが電力変換回路へ適用された場合に電源装置として利用できることは当業者に自明である。

以上のことから、引用例2には、自明の事項も含め少なくとも次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「NチャンネルのトランジスタおよびPチャンネルのトランジスタを主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と、
(第2図の正、負のゲート電圧を発生する)駆動回路を有し、この駆動回路の駆動によりNのチャンネルのトランジスタのゲートおよびPチャンネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャンネルのトランジスタおよびPチャンネルのトランジスタを制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする電源装置。」

(3)本件訂正発明1と引用発明1との対比
上記本件訂正発明1(前者)と引用発明1(後者)とを以下に対比する。
前者の「NチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタ」も、後者の「同一タイプのMOST-FET7からなるトランジスタおよび補助制御回路8により制御されるMOST-FET6からなるトランジスタ」も、共に少なくともそれらをハーフブリッジ型のインバータ回路のスイッチング素子とした「2つのトランジスタ」であるといえる。
また、前者の制御手段が「共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する」ことも、また、後者の制御手段が「共振回路の共振によりMOST-FET7からなるトランジスタのゲートおよび補助制御回路8を介してMOST-FET6からなるトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のMOST-FET7からなるトランジスタおよびMOST-FET6からなるトランジスタを制御する」ことも、共に少なくとも「共振回路の共振により2つのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路の2つのトランジスタを制御する」ことであるといえる。
また、前者の起動回路が「平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する」ことも、後者の起動回路が「平滑コンデンサの一端とブレークダウン素子(ダイアック)32と抵抗31を介してMOST-FET7からなるトランジスタのゲートとの間に接続された起動用の抵抗(抵抗33)を有し、少なくとも起動用の抵抗を介してインバータ回路のMOST-FET7に電圧を印加する」ことも、共に少なくとも「平滑コンデンサの一端と少なくとも一方のトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗を有し、少なくとも該抵抗を介してインバータ回路のトランジスタに電圧を印加する」ことであるといえる。
以上のことから、本件訂正発明1と引用発明1とは以下の一致点及び相違点を有している。
(一致点)
「2つのトランジスタをスイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と、;直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振により2つのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路の2つのトランジスタを制御する制御手段と;平滑コンデンサの一端と少なくとも一方のトランジスタのゲートに接続された抵抗を有し、少なくとも該抵抗を介してインバータ回路のトランジスタに電圧を印加する起動回路と;を具備したことを特徴とする電源装置。」
(相違点1)
ハーフブリッジ型のインバータ回路のスイッチング素子として、本件訂正発明はNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを主スイッチング素子としたものであるのに対し、引用発明1は同一タイプのMOST-FET7からなるトランジスタおよび補助制御回路8により制御されるMOST-FET6からなるトランジスタをスイッチング素子としたものであり、そのことに伴って、本件訂正発明1の制御手段は共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御するのに対し、引用発明1の制御手段は共振回路の共振によりMOST-FET7からなるトランジスタのゲートおよび補助制御回路8を介してMOST-FET6からなるトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のMOST-FET7からなるトランジスタおよびMOST-FET6からなるトランジスタを制御する点。
(相違点2)
起動回路に関して、本件訂正発明1は平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加するのに対し、引用発明1は平滑コンデンサの一端とブレークダウン素子(ダイアック)32と抵抗31を介してMOST-FET7からなるトランジスタのゲートとの間に接続された起動用の抵抗(抵抗33)を有し、少なくとも起動用の抵抗を介してインバータ回路のMOST-FET7に電圧を印加する点。

(4)本件訂正発明1についての判断
(相違点1)について
上記(2-2)において示したように、引用例2には引用発明2が記載されている。この引用発明2は、ハーフブリッジ型のインバータ回路のスイッチング素子として、NチャンネルのトランジスタおよびPチャンネルのトランジスタをスイッチング素子としたものであるから、引用発明1のハーフブリッジ型のスイッチング素子として、同一タイプのMOST-FET7からなるトランジスタおよび補助制御回路8により制御されるMOST-FET6からなるトランジスタに替えて、この引用発明2のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを適用して本件訂正発明1の前記相違点1に係る発明特定事項を想到することは、その適用により本件訂正発明1の前記発明特定事項が自動的(必然的)に得られ、また、前記適用を阻害すべき特段の事情も認められない以上、当業者が適宜容易になし得た程度のものであり、その効果も前記適用により当然に予測されるものにすぎない。

(相違点2)について
本件訂正発明1も引用発明1も共に「起動回路」を備えているものの、その具体的構成は異なる。
すなわち、本件訂正発明1の起動回路は、平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加するのに対し、引用例1の起動回路は、起動抵抗のほかにブレークダウン素子(ダイアック)32を備え、本件訂正発明1とは異なる構成となっており、このため、本件訂正発明1の起動回路と作用・機能において相違することは明らかである。
しかも、引用例1全体の記載をみても、本件訂正発明1の起動回路の構成を示唆する事項は何ら見あたらない。
また、引用発明2は、「起動回路」を有していない。
したがって、本件訂正発明1の相違点2に係る構成については、引用例1及び2のいずれにも記載されておらず、また、当業者が容易に想到し得たものとすることはできないから、本件訂正発明が引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものとすることはできない。

(5)本件訂正発明2ないし9についての判断
本件訂正発明2ないし9は、本件訂正発明1において、その構成を更に限定したものに相当するから、(4)で述べたと同様な理由により、引用例1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとは認められない。

(6)独立特許要件についてのむすび
他に本件訂正発明1ないし9が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見当たらない。
したがって、本件訂正発明1ないし9が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできないから、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

5.むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き及び同条第3項〜第5項の規定に適合する。
よって結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電源装置、蛍光ランプ装置および照明装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】全波整流器と;
この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサと;
平滑コンデンサに対して並列に接続されたNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの直列回路を主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と;
直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する制御手段と;
平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する起動回路と;
を具備したことを特徴とする電源装置。
【請求項2】Nチャネルのトランジスタは、高電位側に位置することを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】インバータ回路に接続されたバラストチョークを備え、制御手段は、このバラストチョークに磁気的に接続された二次巻線を有し、この二次巻線に誘起された電圧で共振回路のインダクタおよびコンデンサが共振してNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを駆動することを特徴とする請求項1または2記載の電源装置。
【請求項4】トランジスタは、MOS型電界効果トランジスタおよびIGBTのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の電源装置。
【請求項5】起動回路は、共振回路のコンデンサに直列に接続されNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加するコンデンサを有することを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の電源装置。
【請求項6】請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;
この電源装置により点灯される蛍光ランプと;
を具備したことを特徴とする蛍光ランプ装置。
【請求項7】口金を有する基体と;
この基体に収容される請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;
基体に取り付けられインバータにより点灯される蛍光ランプと;
を具備したことを特徴とする蛍光ランプ装置。
【請求項8】基体に取り付けられこの基体とともにほぼ電球型となるグローブを具備したことを特徴とする請求項7記載の蛍光ランプ装置。
【請求項9】請求項6ないし8いずれか一記載の蛍光ランプ装置と;
蛍光ランプ装置が取り付けられる器具本体と;
を具備したことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、NチャネルおよびPチャネルのトランジスタを用いた電源装置、蛍光ランプ装置および照明装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蛍光ランプ装置として、電球型のものが普及しつつあり、内蔵されている電源装置に、ハーフブリッジ型のインバータ回路が用いられ、このインバータ回路を駆動するために、一般に電流トランスが用いられている。
【0003】
ところが、近年より小型化が図られており、電流トランスを用いない構成として、たとえば平成9年3月28日、社団法人 照明学会発行 平成9年度照明学会第30回全国大会 講演論文集 第46ページに記載の構成が知られている。
【0004】
この講演論文集には、電界効果トランジスタを主スイッチング素子として用い蛍光ランプに電力を供給するハーフブリッジ型のインバータ回路を有し、これら電界効果トランジスタのゲートには、バラストチョークに磁気的に接続された二次巻線と、この二次巻線に直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路が接続され、さらに、それぞれの電界効果トランジスタに同時オンを防止するためのツェナダイオードが接続された放電灯点灯装置が記載されている。
【0005】
そして、バラストチョークの二次巻線に誘起された電圧に従い、インダクタおよびコンデンサを共振させて電界効果トランジスタが交互にオン、オフ駆動し、高周波交流を発生させて蛍光ランプを高周波点灯させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記講演論文集に記載の蛍光ランプ装置の場合、それぞれのトランジスタに対応してインダクタおよびコンデンサの共振回路を設けなければならず、さらに、これら共振回路の動作により双方の電界効果トランジスタが同時にオンすることを防止するため、それぞれの電界効果トランジスタに同時にオンすることを防止するツェナダイオードを接続しなければならず、回路構成が繁雑になる問題を有している。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、回路構成を簡単にした電源装置、蛍光ランプ装置および照明装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電源装置は、全波整流器と;この全波整流器の出力を平滑する平滑コンデンサと;平滑コンデンサに対して並列に接続されたNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの直列回路を主スイッチング素子としたハーフブリッジ型のインバータ回路と;直列に接続されたインダクタおよびコンデンサの共振回路を有し、この共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに交互に電圧を印加してこのインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する制御手段と;平滑コンデンサの一端とNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートとの間に接続された抵抗およびPチャネルのトランジスタのドレイン、ソース間に接続された抵抗を有し、これらの抵抗を介してNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加する起動回路とを具備したもので、制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを動作させるため、1つの制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路の出力でそれぞれNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを異なる状態に制御でき、回路構成が簡素化する。
【0009】
また、全波整流器の出力を平滑コンデンサで平滑し、起動回路の起動用の抵抗を介してインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタに電圧を印加して起動する。
【0010】
請求項2記載の電源装置は、請求項1記載の電源装置において、Nチャネルのトランジスタは、高電位側に位置するもので、制御手段を複雑にすることなく、NチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御する。
【0011】
請求項3記載の電源装置は、請求項1または2記載の電源装置において、インバータ回路に接続されたバラストチョークを備え、制御手段は、このバラストチョークに磁気的に接続された二次巻線を有し、この二次巻線に誘起された電圧で共振回路のインダクタおよびコンデンサが共振してNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを駆動するもので、NチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの駆動電源を簡単な回路構成で得られる。
【0012】
請求項4記載の電源装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の電源装置において、トランジスタは、MOS型電界効果トランジスタおよびIGBTのいずれかであるもので、トランジスタのオン、オフが簡単に制御でき、簡単な回路構成で得られる。
【0013】
請求項5記載の電源装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の電源装置において、起動回路は、共振回路のコンデンサに直列に接続されNチャネルのトランジスタのゲートおよびPチャネルのトランジスタのゲートに電圧を印加するコンデンサを有するもので、起動回路のゲートに共振回路のコンデンサに直列に接続されたコンデンサにより電圧を印加する。
【0014】
請求項6記載の蛍光ランプ装置は、請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;この電源装置により点灯される蛍光ランプとを具備したもので、請求項1ないし6いずれか一記載の電源装置を用いているので、それぞれの作用を奏する。
【0015】
請求項7記載の蛍光ランプ装置は、口金を有する基体と;この基体に収容される請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置と;基体に取り付けられインバータにより点灯される蛍光ランプとを具備したもので、口金を有するものにおいても、請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置を用いているので、それぞれの作用を奏する。
【0016】
請求項8記載の蛍光ランプ装置は、請求項7記載の蛍光ランプ装置において、基体に取り付けられこの基体とともにほぼ電球型となるグローブを具備したもので、電球型のものでも、それぞれの作用を奏する。
【0017】
請求項9記載の照明装置は、請求項6ないし8いずれか一記載の蛍光ランプ装置と;蛍光ランプ装置が取り付けられる器具本体とを具備したもので、それぞれの作用を奏する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の蛍光ランプ装置の一実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
【0019】
図1は蛍光ランプ装置の一実施の形態の点灯回路を示す回路図、図2は蛍光ランプ装置を示す断面図、図3は動作を示す波形図である。
【0020】
図2に示すように、1は基体を構成するカバーで、このカバー1はPBT樹脂などの耐熱性合成樹脂で形成され、このカバー1の一端には円筒部2が一体に形成されており、この円筒部2にはエジソンタイプのE26型などのようなねじ込み型の口金3が被着され、この口金3は接着剤またはかしめなどにより円筒部2に固定されている。
【0021】
また、カバー1の他端は仕切盤4により閉塞され、この仕切盤4はたとえばPBT樹脂のような耐熱性合成樹脂によって形成され、ほぼ円形の皿型をなしている。そして、仕切盤4には、高周波用の点灯回路5のプリント回路基板6が係止されている。
【0022】
さらに、プリント回路基板6の一端部には、接続端子7が突設されているものであり、鞍型の蛍光ランプFLの外部リード線11が巻き付けられて接続される。なお、蛍光ランプFLはU字型、W字型などいずれでもよい。
【0023】
そして、仕切盤4の下面には、保持部としてのランプ取付筒部12が一体に形成されている。これらランプ取付筒部12には蛍光ランプFLが取り付けられており、この蛍光ランプFLは、消費電力15W〜17Wでランプ電流は250mA〜350mAである。なお、明るさとしては60Wの白熱電球程度である。
【0024】
また、蛍光ランプFLは、内面に図示しない蛍光体膜が形成され内部に水銀およびアルゴンなどの希ガスが封入されたバルブ13の両端部14が互いに接近して並設され、口金3方向に向けて位置されており、これら両端部14の間にU字型に屈曲された中央屈曲部15を有しており、この中央屈曲部15は両端部14と同一方向を向くように屈曲形成されている。さらに、バルブ13の両端部14にはトリプルコイルのフィラメントFL1,FL2が封装されており、これらフィラメントFL1,FL2にはそれぞれ補助アマルガム17が取り付けられている。そして、これらフィラメントFL1,FL2に接続された各一対の外部リード線11がそれぞれバルブ13の端部14から外部に導かれ、接続端子7にたとえば複数回巻回して接続されている。
【0025】
また、バルブ13の両端部14には細管18が突出されており、これら細管18の少なくとも一方には点灯中の水銀蒸気圧を制御するアマルガム19が収容されている。
【0026】
さらに、蛍光ランプFLは、両端部14が仕切盤4に形成されたランプ取付筒部12に、仕切盤4の下から差し込まれ、これら端部14とランプ取付筒部12との間に充填されたシリコーン系などの熱硬化性接着剤21によって仕切盤4に固定されている。また、蛍光ランプFLの中央屈曲部15は、シリコーン系などの熱硬化性接着剤22によって仕切盤4の下面に接合されている。このため、蛍光ランプFLは、両端部14と中央屈曲部15の合計3箇所により仕切盤4に固定されている。
【0027】
そして、蛍光ランプFLは、たとえばガラス製のグローブ25により覆われており、ガラス製のグローブ25は上端が開口したカップ形状をなしている。なお、グローブ25は、透明または光拡散性の合成樹脂もしくはガラスからなり、このグローブ25は上端開口部を若干径小にしてストレート型の首部26を有してもよい。さらに、この首部26の開口端部には、全周に亘り連続して肉溜まり部27が形成され、この肉溜まり部27は、グローブ25の上端開口部を加熱して軟化させることにより溶融した肉が集まって肉溜まりとなったものである。なお、カバー1およびグローブ25にて、外囲器28を構成している。
【0028】
さらに、点灯回路5を用いて蛍光ランプFLを点灯させると管壁負荷の上昇による紫外線量が無視できないため、グローブ25の内面には図示しない拡散膜が形成され、この拡散膜はたとえば波長185nmの紫外線を含む紫外線を吸収する紫外線吸収金属酸化物などの紫外線吸収無機微粒子の紫外線吸収剤が混入され、紫外線を遮断している。また、紫外線吸収無機微粒子は、平均粒径が1μm未満のため、直線透過率が高くなり、可視光拡散効果が小さくなるとともに、揮発成分が付着してより直線透過率が高くなり内部が透けてしまうので、可視光散乱用に平均粒径1μm以上の無機微粒子を混入する。さらに、単に平均粒径を大きくするのみでは、膜肌が悪化して陰を作ってしまうので、平均粒子径が1μmのものを30%以上含むとともに、平均粒子径が1μm以上のものを30%以上含み、粒子径の分布を広く分散させてもよい。
【0029】
また、このようなグローブ25の首部26は、カバー1の内面と仕切盤4との間に形成されたリング形状の隙間に差し込まれるようになっており、このグローブ25はシリコーン系などの熱硬化性接着剤31によってカバー1の内面および仕切盤4の両者に接合されている。なお、熱硬化性接着剤31は、カバー1の内面または仕切盤4の少なくとも一方に接合するようにすればよい。
【0030】
なお、この熱硬化性接着剤31は熱硬化性で、たとえばシリコーン系が使用されており、硬化時点の硬度は20以上、50以下であり、シリコーン系の場合には、シリコーンに混合される硬化剤の混合割合を調整することにより、硬度の変更が可能である。
【0031】
また、点灯回路5は、図1に示すように、商用交流電源eにヒューズF1を介してフィルタを構成するコンデンサC1が接続され、このコンデンサC1にはフィルタを構成するインダクタL1を介して全波整流器41の入力端子が接続されている。また、この全波整流器41の出力端子には抵抗R1を介して平滑用のコンデンサC2が接続され、このコンデンサC2にはインスタントスタート方式のハーフブリッジ型のインバータ回路42が接続されている。
【0032】
このインバータ回路42は、コンデンサC2に対して並列に、スイッチング素子であるMOS型のNチャネルの電界効果トランジスタQ1およびMOS型のPチャネルの電界効果トランジスタQ2の直列回路が接続されている。
【0033】
そして、電界効果トランジスタQ2のドレイン、ソース間には、バラストチョークL2および直流カット用のコンデンサC3を介して、放電ランプとしての蛍光ランプFLのそれぞれのフィラメントFL1,FL2の一端が接続され、フィラメントFL1の一端とフィラメントFL2の他端間には、始動用のコンデンサC4が接続されている。
【0034】
また、抵抗R1およびコンデンサC2の接続点と電界効果トランジスタQ1のゲートおよび電界効果トランジスタQ2のゲートとの間には、起動回路43を構成する起動用の抵抗R2が接続され、これら電界効果トランジスタQ1のゲートおよび電界効果トランジスタQ2のゲートと電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2の接続点との間に、コンデンサC5およびコンデンサC6の直列回路が接続され、これらコンデンサC5および制御手段としての制御回路44のコンデンサC6の直列回路に対して並列に電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2のゲート保護のためのツェナダイオードZD1およびツェナダイオードZD2の直列回路が接続されている。また、バラストチョークL2には、二次巻線L3が磁気的に接続され、この二次巻線L3にはインダクタL4およびコンデンサC6の共振回路46が接続されている。さらに、コンデンサC5およびインダクタL4の直列回路に対して並列に、起動回路43の抵抗R3が接続されている。
【0035】
さらに、電界効果トランジスタQ2のドレイン、ソース間には、起動回路43の抵抗R4およびスイッチング改善用のコンデンサC7の並列回路が接続されている。
【0036】
次に、上述の実施の形態の作用を説明する。
【0037】
蛍光ランプ装置の点灯回路5に電源が投入されると、商用交流電源eの電圧を、全波整流器41で全波整流し、コンデンサC2で平滑する。
【0038】
まず、抵抗R2を介してNチャネルの電界効果トランジスタQ1のゲートに電圧が印加され、電界効果トランジスタQ1がオンし、バラストチョークL2を介して蛍光ランプFLに電圧が印加される。そして、バラストチョークL2の二次巻線L3に電圧が誘起され、制御回路44のインダクタL4およびコンデンサC6が固有共振して電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2のゲートに交互に電圧が印加され、電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2が交互にオン、オフして、蛍光ランプFLを高周波点灯させる。
【0039】
なお、ツェナダイオードZD1およびツェナダイオードZD2により、電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2のゲートを保護している。
【0040】
また、具体的には、図3に示すように、電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2のゲートにコンデンサC6およびインダクタL4の共振回路46などによる共振電圧が印加され、このゲート電圧が正の所定値以上の電圧になると、電界効果トランジスタQ1がオンしてドレイン電流が流れ、電界効果トランジスタQ2がオフしてソース、ドレイン電圧が発生して電界効果トランジスタQ2のドレイン電流は流れない。
【0041】
一方、電界効果トランジスタQ1および電界効果トランジスタQ2のゲートにコンデンサC6およびインダクタL4の共振回路46などによる共振電流が印加され、このゲート電圧が負の所定値以下の電圧になると、電界効果トランジスタQ2がオンしてドレイン電流が流れ、電界効果トランジスタQ1がオフする。なお、これら動作に対応してバラストチョークL2の二次巻線L3に電圧が発生している。
【0042】
さらに、図4は蛍光ランプ装置を用いる照明器具であるダウンライトを示す斜視図で、このダウンライト形の照明器具は、下方に開口する円筒状の器具本体51を備え、この器具本体51の内側に蛍光ランプ装置が挿入配置される。器具本体51の内側上部には、蛍光ランプ装置の口金3が螺合接続される図示しないエジソンタイプのソケットが配設されている。
【0043】
次に、他の実施の形態の蛍光ランプ装置を図5を参照して説明する。
【0044】
図5は他の実施の形態の蛍光ランプ装置の点灯回路を示す回路図で、この図5に示す点灯回路5では図1に示す点灯回路5のNチャネルおよびPチャネルの電界効果トランジスタQ1,Q2に代えて、NチャネルおよびPチャネルのIGBT(Insulate Gate Bipola Transistor)Q11,Q12を用いたもので、基本的な動作は、図1に示す構成と同様である。
【0045】
上記いずれの実施の形態でも、NチャネルおよびPチャネルの電界効果トランジスタQ1,Q2またはIGBTQ11,Q12を用い、Nチャネルの電界効果トランジスタQ1またはIGBTQ11を高電位側に接続したので、1つの制御回路44によりNチャネルおよびPチャネルの電界効果トランジスタQ1,Q2またはIGBTQ11,Q12を制御できるとともに、1つの共振回路46およびゲート保護のためのツェナダイオードZD1,ZD2を接続すればよいので、構成を簡素化でき、小型化を図ることができる。
【0046】
【発明の効果】
請求項1記載の電源装置によれば、制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路の共振によりNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを動作させるため、1つの制御手段のインダクタおよびコンデンサの共振回路などによる正負の共振電圧でそれぞれNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを異なる状態に制御でき、回路構成が簡素化できる。
【0047】
また、全波整流器の出力を平滑コンデンサで平滑し、起動回路の起動用の抵抗を介してインバータ回路のNチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタに電圧を印加して起動できる。
【0048】
請求項2記載の電源装置によれば、請求項1記載の電源装置に加え、制御手段を複雑にすることなく、NチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタを制御できる。
【0049】
請求項3記載の電源装置によれば、請求項1または2記載の電源装置に加え、NチャネルのトランジスタおよびPチャネルのトランジスタの駆動電源を簡単な回路構成で得ることができる。
【0050】
請求項4記載の電源装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の電源装置に加え、トランジスタのオン、オフが簡単に制御でき、簡単な回路構成にできる。
【0051】
請求項5記載の電源装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の電源装置に加え、起動回路のゲートに共振回路のコンデンサに直列に接続されたコンデンサにより電圧を印加できる。
【0052】
請求項6記載の蛍光ランプ装置によれば、請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置を用いているので、それぞれの効果を奏することができる。
【0053】
請求項7記載の蛍光ランプ装置によれば、口金を有するものにおいても、請求項1ないし5いずれか一記載の電源装置を用いているので、それぞれの効果を奏することができる。
【0054】
請求項8記載の蛍光ランプ装置によれば、請求項7記載の蛍光ランプ装置に加え、電球型のものでも、それぞれの効果を奏することができる。
【0055】
請求項9記載の照明装置によれば、請求項6ないし8いずれか一記載の蛍光ランプ装置を具備したので、それぞれの効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の蛍光ランプ装置の一実施の形態の点灯回路を示す回路図である。
【図2】同上蛍光ランプ装置を示す断面図である。
【図3】同上動作を示す波形図である。
【図4】同上照明器具を示す斜視図である。
【図5】同上他の実施の形態の蛍光ランプ装置の点灯回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1 基体を構成するカバー
3 口金
25 グローブ
41 全波整流器
42 インバータ回路
43 起動回路
44 制御手段としての制御回路
46 共振回路
51 器具本体
C5 コンデンサ
C6 コンデンサ
FL 蛍光ランプ
L2 バラストチョーク
L3 二次巻線
L4 インダクタ
Q1 Nチャネルの電界効果トランジスタ
Q2 Pチャネルの電界効果トランジスタ
Q11 NチャネルのIGBT
Q12 PチャネルのIGBT
R2 起動用の抵抗
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-06-23 
出願番号 特願平9-133899
審決分類 P 1 41・ 856- Y (H02M)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 佐々木 芳枝
安池 一貴
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3413754号(P3413754)
発明の名称 電源装置、蛍光ランプ装置および照明装置  
代理人 和泉 順一  
代理人 和泉 順一  

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