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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B23K |
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管理番号 | 1126400 |
審判番号 | 無効2003-35491 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-11-28 |
確定日 | 2005-09-30 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1592995号発明「自動溶接装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第1592995号の明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 ・本件特許第1592995号に係る出願は、昭和60年10月17日に特許出願され、平成2年4月11日に特公平2-15310号として出願公告がなされ、平成2年12月14日に特許の設定登録がなされた。 ・これに対して、請求人アイセル株式会社より平成15年11月28日付けで、本件特許を無効とする、審判請求費用は被請求人の負担とする趣旨の審決を求める無効審判の請求がなされた。 ・被請求人は平成16年3月8日付けで答弁書及び訂正請求書を提出し、同訂正請求書により、明細書の訂正が請求された。 ・請求人は平成16年4月28日付けで口頭審理陳述要領書を、被請求人は平成16年5月25日付けで口頭審理陳述要領書を提出したところ、平成16年5月25日に第1回口頭審理が行われた。 第2 訂正の適否についての当審の判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項a 特許請求の範囲第1項の 「短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、 入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が設けられた溶接治具と、 溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、 ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなることを特徴とする自動溶接装置。」を 「短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、 入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具と、 溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、 ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなることを特徴とする自動溶接装置。」と訂正する。 (2)訂正事項b 明細書の発明の詳細な説明に記載の 「(問題点を解決するための手段) 本発明は、短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が設けられた溶接治具と、溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなるものである。」を 「(問題点を解決するための手段) 本発明は、短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具と、溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなるものである。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 特許請求の範囲第1項についての訂正事項aは、溶接治具について、溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられたことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許に係る公告公報3頁左欄7~14行、図面第1ないし3図に記載されていた事項であるから、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。 訂正事項bは、上記訂正事項aと、発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、同訂正事項bは新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。 3.むすび したがって、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書き及び同条第5項で準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 請求人の主張の概要 請求人は、本件の特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第1ないし10号証を提示し、本件発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載の発明、甲第3号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にされるべきものであるとし、以下の旨を主張している。 1.本件発明と甲第1号証記載の発明との相違点は、 (イ)本件発明は、入口がワーク径より大きく、内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、位置決め部材が設けられ、出口近傍に溶接用の開口部が設けられている溶接治具でワークを縮径するのに対し、甲第1号証記載のものは、鼓型のスクイズロールで縮径する点。 (ロ)本件発明は、溶接治具の溶接用の開口部に配置したトーチで溶接するのに対し、甲第1号証のものは、スクイズロール13,13の間に配置したトーチで溶接する点。 (ハ)本件発明は、送り手段でオープンパイプを押して、溶接治具に送り込み、溶接治具で縮径させて継目部を密着させて、継目部を溶接して溶接治具から排出するのに対し、甲第1号証のものは、送りロール16でオープンパイプを入り口側の駆動ローラ38,38に送り込み、スクイズロール13,13で縮径させて継目部を密着させて、継目部を溶接し、出口側の駆動ローラ38で連続的に排出する点。 である。 これら相違点は、オープンパイプの縮径手段が鼓型ロールによるものか、スクイズブロックによるものかの違いに集約される。(審判請求書11頁6行~12頁9行) 2.相違点(イ)(ロ)については、継目のガイド板を溶接トーチの前方に配置することは甲第1号証、甲第3号証に記載されていること、継目を溶接トーチの直前で案内することは周知であること(例えば、甲第4号証)、オープンパイプをパイプにフォーミングする手段は様々なものが周知であること(例えば、甲第5ないし10号証)を勘案すれば、甲第2号証の自動溶接装置におけるスクイズブロックによる縮径手段を甲第1号証のものに適用することにより当業者が容易に成し得たことである。(審判請求書12頁10行~14頁4行) 相違点(ハ)については、縮径手段にオープンパイプを押し込んで縮径させることは甲第3号証に記載されるように周知のものである。相違点(ハ)は、相違点(イ)及び(ロ)の変更に伴う当然の設計的事項であり、当業者が周知の事項(例えば甲第3号証)に基いて容易に成し得たことである。(審判請求書14頁5~16行) 3.特許請求の範囲第2ないし4項(実施態様項)の特徴事項は甲第1号証のものが備えている事項であるから、特許法第126条第4項の規定により、特許請求の範囲第1項を第2ないし4項に限定することもできない。(審判請求書15頁1行~16頁1行) 4.管の継目溶接に際して、短管、長尺管(連続管)共に、溶接部分で正確に突き合わせることが必要であるとの課題は共通であり、そのための技術において短管、長尺管(連続管)の間に本質的な差異はない。(第1回口頭審理調書 請求人2) <証拠方法> 甲第1号証:特開昭55-24782号公報 甲第2号証:実願昭57-192488号(実開昭59-99073号)のマイクロフィルム 甲第3号証:特開昭52-133053号公報 甲第4号証:特開昭59-76690号公報 甲第5号証:特開昭57-68292号公報 甲第6号証:実願昭51-24729号(実開昭52-135433号)のマイクロフィルム 甲第7号証:特開昭60-141826号公報 甲第8号証:特開昭59-85316号公報 甲第9号証:特開昭47-27844号公報 甲第10号証:実公昭53-32124号公報 第4 被請求人の主張の概要 被請求人は、上記の無効理由に対して、本件発明は、甲第1ないし10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求人の主張する無効理由は失当であるとし、以下の旨を主張している。 1.本件発明と甲各号証記載の溶接装置の構成、溶接対象物の相違について(答弁書7~8頁(6)) (1)甲第1ないし10号証には、溶接治具に貫通穴の全周が閉じる部分を設けるという構成は記載されていない。 (2)甲第2号証、甲第4ないし9号証に記載のものはいづれも長尺管の溶接装置に関する技術であるのに対し、本件発明は短管の溶接装置である。長尺管の溶接装置においては、短管の溶接装置に特有の問題(熱歪等の影響で後端の継目が開く。溶接部分が起き上がる。)は起こりようがない。 2.本件発明と甲第1号証記載の溶接装置との目的の相違について(答弁書4頁16~19行、12頁6~22行) 本件発明は、ワーク先端から溶接していくと熱歪等の影響で後端の継目が開くという問題及び溶接部分が起き上がるという問題を解決することを目的としている(答弁書3頁4~6行)。これに対し、甲第1号証記載の技術はダフ板と呼ばれる突起物を設ける従来の溶接方法によると、ダフ板の突起部分だけ円周上に余分な材料の無駄があり、手間がかかるうえ製品の仕上りにも均一性を欠くものであったという問題を解決することを目的としている。両者の目的の相違から、本件発明と甲第1号証に記載の技術との相違点が「オープンパイプの縮径手段が鼓型ロールによるものか、スクイズブロックによるものかの違いに集約される。」という請求人の主張は失当である。したがって、請求人の、甲第1号証記載の技術と甲第2、3号証記載の技術を組み合わせによる進歩性欠如の主張は理由がない。 3.本件発明の溶接治具と甲第2号証記載のスクイズブロックとの相違点について(答弁書13頁14行~15頁18行) (1)甲第2号証記載のスクイズブロックには、貫通穴の全周が閉じた部分が設けられていない。甲第2号証記載のスクイズブロックは左右2個一対のものとして形成され、その対向間隔が調節可能となっているため、必然的に貫通穴の閉じた部分を設けることができない。したがって、ワークのクランプが不十分となり、特に、スクイズブロックの上部間の隙間の存在により、ワークの継目の部分をクランプできない。このため、甲第2号証記載のスクイズブロックを短管の溶接装置に適用した場合には、寸法精度の高い短管製品を得ることはできない。本件発明の溶接治具では、溶接用の開口部の入口側に貫通穴の全周が閉じた部分が設けられており、この部分でワークの全周をクランプしながら継目の溶接を行うことによって、熱歪等によるワークの継目の開き及び溶接部分の起き上がりが規制され、寸法精度の高い短管製品を得ることができる。 また、本件発明は短管を溶接対象としているのに対し、甲第2号証記載の技術は長尺管を溶接対象としている。長尺管の溶接装置では、熱歪等によるワークの継目の開き及び溶接部分の起き上がりという、短管の溶接装置に特有の問題は起こらない。 (2)甲第2号証記載のスクイズブロックには、貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられていない。このため、ワークを送り込む際、ワークの継目を真上に向けた状態を維持することが困難となる不具合を有する。また、甲第2号証記載のスクイズブロックは、左右2個一対のブロック間の間隔を変更可能な隙間を有するため、その間に位置決め部材を安定して取り付けることが困難な構成である。 (3)甲第2号証記載のスクイズブロックは、溶接対象が長尺管であるため、その管軸方向の略中間部にトーチ切欠が設けられている。 4.甲第4ないし10号証について(答弁書15頁19行~16頁13行) (1)甲第4号証の記載(くさび形のガイド板の配置)をもとに、短管の溶接装置においてセンターガイドを溶接トーチの前方に配置することが周知とはいえない。 (2)甲第5ないし10号証の記載によれば、オープンパイプをパイプにフォーミングする様々な手段が示されているに過ぎず、この記載をもって直ちに当該手段が周知であるとは言えない。また、甲第5ないし9号証記載の技術は、長尺管の溶接装置に関するものである。 5.これらのことより、請求人のいう、相違点(イ)、(ロ)、(ハ)は、甲第2号証に記載されているスクイズブロックによる縮径手段を甲第1号証にものに適用することにより当業者が容易に想到し得たことであるとの主張は失当である。(答弁書16頁13行~17頁3行) 6.管の継目溶接に際して、短管は長尺管(連続管)と比べて、突き合わせに要求される精度が高い点等で、両者は本質的に相違する。短管特有の課題解決のために「貫通穴の全周が閉じる部分」が必要とされる。(第1回口頭審理調書 被請求人1) 第5 無効理由についての当審の判断 本件は、昭和60年10月17日に出願されたものであるから、特許請求の範囲の第1項に記載された事項を本件発明の要旨とするものであり、同第2ないし4項は、その実施態様を記載するものである。したがって、当審では、特許請求の範囲第1項に係る発明についてのみ判断する。 1.本件発明 訂正後の本件発明の要旨は、訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正後の特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。 「短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、 入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具と、 溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、 ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなることを特徴とする自動溶接装置。」 2.甲各号証記載の発明・事項 甲各号証には、それぞれ以下の事項が記載されていると認める。 (1)甲第1号証(以下、「刊行物1」という。) ア 「本発明は短管の溶接方法の改良及びその改良された溶接装置に関するものである。短管は切板を冷間ロール成形等でオープンパイプ状にした後シーム部を溶接して製造される。」(1頁右下欄1~4行) イ 「本発明に係る短管の溶接方法は、・・・連続的にオープンパイプのシーム位置を一定方向に安定させながら送り込み、駆動部本体の駆動ロール上に固定された溶接トーチにて連続的に溶接し、定径パイプにして送り出し、溶接部を順次切り離し定径短管の製品とする・・・」(1頁右下欄18行~2頁左上欄4行) ウ 「オープンパイプ(11)はシーム線(12)を上にして各オープンパイプのシーム線が一直線に合う状態で、各オープンパイプを突き合せて連続的に駆動ロール(38)へ送り込み、スクイズロール(13)によりオープンパイプ(11)のシーム線(12)を合せ終つたところで溶接トーチ(14)を当てて溶接を行う・・・溶接部への送り込みは、第2図に示すようにモーター(35)により回転する送り込みローラー(16)の回転により移動させ、シーム線(12)の位置を規制するためにシームガイド(17)が送り込みローラー(16)上に設けられ、溶接部の駆動ロール(38)との間にもロータリーシームガイド(18)が設けられ、これらシームガイドによつて常に溶接トーチ(14)直下にシーム線(12)が位置するようになされている。」(2頁左上欄7行~同頁右上欄3行) エ 「(22)はストツク台であり、この上へ供給された多数のオープンパイプ(11)を横に並べて置く。・・・供給板上の1本のオープンパイプ(11)のみが押し上げられ案内板(25)から検出駆動ローラー(26),(26)上へころがり込む。検出駆動ローラー(26)上へ乗つたオープンパイプ(11)の上方にはシーム線(12)の位置検出用のリミツトスイツチ又は無接触スイツチ等(27)を、・・・配置し、慣性ブレーキローラー(29)との併用によつてシーム線(12)を真上にしてオープンパイプ(11)を静止させ、次いでシームガイド(30)を降下させてシーム線(12)内へ突込ませる。・・・シームガイド(30)がシーム線(12)内へ入り、第6図のようにオープンパイプ(11)がシームガイド(30)により保持されると、シリンダー(33)により上昇していた検出駆動ローラー(26)を降下させ、オープンパイプ(11)を送り込みローラー(16)に乗せる。」(2頁左下欄5行~同頁右下欄7行) オ 図面第1図及び第2図において、オープンパイプ(11)の移送方向に、送り込みローラー(16)、駆動ロール(38)、スクイズロール(13)、溶接トーチ(14)、スクイズロール(13)が順に設けられていること。溶接トーチ(14)の上流側において、駆動ロール(38)からスクイズロール(13)に向けてオープンパイプのシームが徐々に合わさること。ロータリーシームガイド(18)が上流側のスクイズロール(13)の上流側近傍に設けられていること。 上記摘記事項からみて、刊行物1には次のとおりの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認める。 「切板を成形してオープンパイプ(11)とし、同オープンパイプ(11)のシーム部(2)を溶接する自動溶接装置であって、駆動ロール(38)及びスクイズロール(13)が設けられ、溶接トーチ(14)上流側の駆動ロール(38)とスクイズロール(13)との間にロータリーシームガイド(18)を設け、スクイズロール(13),(13)間に具備された溶接トーチ(14)と、オープンパイプ(11)を駆動ロール(38)に送り込む動作を連続的に行う送り込みローラー(16)とからなる自動溶接装置。」 (2)甲第2号証(以下、「刊行物2」という。) ア 「本考案は、導入される鋼板Aを円管状に成形するため、左右から対向して一対となるスクイズブロツク10,該スクイズブロツク10の対向間隔を調節するためのブロツク移動部20および溶接トーチ30を有する。スクイズブロツク10は管軸方向に長い直方体からなり、その対向面上部に長さ方向に沿つて半円筒状の管案内面11が形成される。そして、更にその上方の両ブロツク対向面には管軸方向略中間部において、スクイズブロツク上面から前記管案内面11にまで達するトーチ切欠12が設けられる。・・・左右の管案内面11で形成される円形はトーチ切欠12の管流れ方向上流側において上流側に沿い漸増大径とされる。下流側は所望鋼管外径と同一にされている。」(明細書2頁16行~3頁19行) イ 「トーチ切欠12には溶接トーチ30が臨設される。」(明細書3頁20行~4頁1行) ウ 「鋼管材料たる鋼板Aは管案内面11の大径側からスクイズブロツク10に送り込まれて該管案内面11によつて挟持され押圧縮径されて管状に成形される。そして、そのスリツトエツジ部に向けられた溶接トーチ30によつて該エツジ部が溶接(図示C)され、鋼管Bとなつて送り出される。」(明細書4頁2~8行) エ 「スクイズブロツク10は僅かのトーチ切欠12を除いて鋼板に面接触するので成形が極めて安定し、突き合せ部がオーバラツプすることがなく安定な溶接が可能である。また管軸方向に長いスクイズブロツクを用いるため、溶接後の管の抱持工程が長く、従来のスクイズロールを用いたものに比べてスプリングバツク(管のはじけ)による溶接割れの発生率が少なく、また、その分だけスピードアツプも可能となつた。」(明細書4頁9~17行) 上記摘記事項からみて、刊行物2には次のとおりの発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されていると認める。 「導入される鋼板Aを円管状に成形するため、左右一対となるスクイズブロック10に半円筒状の管案内面11が形成され、同管案内面11で形成される円形は管流れ方向上流側は上流側に沿い漸次大径、下流側は所望鋼管径と同一とし、上面から管案内面11にまで達するトーチ切欠12が設けられた溶接用スクイズブロツク10。」 (3)甲第3号証(以下、「刊行物3」という。) ア 「本発明は・・・成形された円筒状ワークを受取り、その合せ目を溶接する第2の工程に実施する場合に好適する装置である。」(2頁左上欄5~7行) イ 「円筒ワーク4の合せ目4aがキーパー13と合致したとき、該キーパーに合せ目が嵌つた状態で回転することなくさらに移送される。」(3頁左上欄11~14行) ウ 「キーパー13の終端13aを過ぎる位置から強押用ロール38,38と強押用ガイド37,37によって円筒ワーク4の両側を強く押圧しており、合せ目をきつく閉じるように構成されている。」(3頁右上欄11~15行) エ 「フイードチエン23,23が駆動してマンドレル3に連続的に嵌つている円筒ワーク4の両側を挟んで、該マンドレルに沿つて移送する。そして、トーチ5のところまで移送されたとき、ここで円筒ワーク4の合せ目4aが溶接される。」(3頁左下欄10~14行) (4)甲第6号証(以下、「刊行物4」という。) ア 「金属テープ2が始めて突合された部分b点にはその突合せ側縁がラツプしないようにガイドするシームガイドロール10(第5図参照)があり、更に溶接個所のc点には溶接トーチ5(第6図参照)が設けてあり、これら溶接トーチ5、シームガイドロール10及び位置検出用トレーサ14は一つのホルダー9に設けてあり、」(明細書5頁11~6頁2行) イ 図面第3図、及び第5図において、シームガイドロール10が、金属テープの突合された部分b点の周面上に接していること。また、シームガイドロール10が、溶接トーチの近傍に設けられていること。 (5)甲第4号証 「筒状体3をA矢印方向に送りながら、定位置で回転する加圧ローラ6・6を筒状体3の外周に押圧接当させ、該ローラ6・6間に位置固定した平面視において前記送り方向Aに向かって先細り状のくさび形ガイド板7に両端面2a・2aを強制的に押し当てる。これで筒状体3の両端面2a・2aは、ガイド板7の両側面7b・7b側に押し付けられて行き、ガイド板7の先細り形状に沿って徐々に接近し、ガイド板7の先端7aを通過後に両端面2a・2aが完全に突き合わせ状態になる。」(2頁右上欄10~20行) (6)甲第5号証 「・・・実施例の1つとして第7図に示す・・・(2a)(2b)(2c)は・・・フインパスロール(駆動式上下ロール)であり、・・・この他、図において(5)は溶接部におけるスクイズロール、(6)は溶接装置(W)における溶接電極を示し・・・加熱炉(4)に続くフインパスロール(2c)は温間成形用上下ロールとして、同図(3)(当審注:原文はローマ数字)に示すようにフインなし真円形孔型面を備えたものであり、・・・」(3頁右上欄12行~同頁左下欄15行) (7)甲第7号証 「第1図(a)及び(b)はスクイズロールの構成例を示すものである。このうち第1図(a)のものは5ロールタイプのもので、管(p)に対応した周胴面を有する左右竪ロール(1)(2)及び下水平ロール(3)と、管上部のビード部両側を圧下する左右のトツプロール(4a)(4b)を備えている。」(第2頁左上欄9~15行) (8)甲第8号証 ア 「円弧状に成形された金属テープ1は、次に成形ダイス8に通してほぼ円形に成形する。次いで、金属テープ1を成形ロール9,10,11に通し、更に円形の成形を行うと共に成形ダイス8からの引取りを駆動タイプの成形ロール9,11で行わせる。」(2頁左上欄3~8行) イ 「スクイズロール15により金属テープ1の合せ目を接触させた状態で溶接機16により金属テープ1の合せ目を溶接し、金属管17を得る。得られた金属管17は冷却器18で冷却した後、縮径ロール19,20,21,22で縮径し、次に第4図に示すような縮径ダイス23に送り込み、引取機24で引取りつつ更に縮径する。」(2頁左上欄18行~同頁右上欄4行) (9)甲第9号証 「管体(1)を支持するため管体外周を囲む複数個で1組のロールを設ける。第4,5図はその2例で(18)が支持ロール,(19)が管体をまたぐ支持機枠,(20)がこれに固定された空気加圧シリンダ,(21)がその先端につけたロール受けである。」(2頁右上欄14~19行) (10)甲第10号証 ア 「本考案は、予め筒状体に成形された一定長さの素材の突合せ面を溶接し、管体を製造する連続製造装置に関するもので、」(1頁右欄20~22行) イ 「このローダー装置Aは、シユート1により素材Wを移送ラインl-l’上に送給し、該素材Wを流体圧シリンダ3の作動によって前進操作される押込み用ロツド2により位置決め装置Bに送込むようになっている。」(2頁左欄19~23行) 3.対比・判断 本件発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 後者の「切板を成形してオープンパイプ」とすることは、その技術的意味からみて、前者の「短板を曲げ加工して予め略真円状の短管」とすることに相当し、したがって、後者の「オープンパイプ(11)」は、前者の「略真円状の短管となされたワーク」に相当する。また、後者の「シーム部(2)」、「送り込みローラー(16)」はそれぞれ前者の「継目」、「送り手段」に相当し、後者の「ロータリーシームガイド(18)」は、縮径過程で継目を位置決めする手段である限りにおいて、前者の「ワークの位置決め部材」と一致する。 また、刊行物1の記載事項(上記2.(1)ウ及びオ)からみて、2つのスクイズロール(13),(13)がオープンパイプを縮径する作用を成すことは明らかであるから、2つのスクイズロール(13),(13)と、本件発明の「溶接治具」とは、ワークを縮径する手段である限りにおいて一致する。 してみると、両者は次の一致点、相違点を有する。 一致点 「短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、 ワークを縮径する手段と、縮径過程で継目を位置決めする手段と、 溶接トーチと、 ワークを、ワークを縮径する手段に送り込む動作を連続的に行う送り手段とからなることを特徴とする自動溶接装置。」 相違点1 本件発明においては、ワークを縮径する手段が「溶接治具」であり、同溶接治具は「入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられ」ているのに対し、刊行物1記載の発明においては、ワークを縮径する手段が「2つのスクイズロール(13),(13)」であって、貫通穴が設けられていないことにより、位置決め部材(ロータリーシームガイド(18))は貫通穴に設けられておらず、溶接用の開口部も存在しない点。 相違点2 本件発明においては、位置決め部材が「刃先がワークの継目内に入り込む」のに対し、刊行物1記載の発明においては、位置決め部材であるロータリーシームガイド(18)がワークの継目内に入り込むか否かについて明らかでない点。 相違点3 本件発明においては、溶接トーチが「溶接治具に設けられた開口部上に具備」されているのに対し、刊行物1記載の発明においては、溶接トーチが2つのスクイズロール(13),(13)の間に設けられている点。 相違点4 本件発明においては、送り手段が、「ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う」のに対し、刊行物1記載の発明においては、送り手段である送り込みローラーは「オープンパイプ(11)を駆動ロール(38)に送り込む動作を連続的に行う」ものの、駆動ロール(38)に送り込んだ後、更に、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を行うか否かについては明かでない点。 上記相違点について検討する。 (ア)相違点1について 刊行物2記載の発明において、管案内面で形成される円形は管流れ方向上流側は、溶接トーチ切欠の上流側に沿い漸次大径、下流側は所望鋼管径と同一となっている。これは、入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られていることに他ならない。刊行物2記載の発明においては溶接する対象は長尺管(連続管)であり、短管ではないが、スクイズブロックにてワークを縮径し、溶接時にその継目を合わせた状態を保つ限りにおいて、スクイズブロックは本件発明の溶接治具と同等の作用効果を成すことは明かであり、この作用効果は、ワークの縮径の過程にて得られるものであることから、溶接する対象が短管であるか、長尺管であるかに依存しないものである。してみれば、刊行物1記載の発明におけるワークを縮径する手段として、刊行物2記載の発明のスクイズブロックを適用することに格別困難な点は見い出せない。 また、刊行物2記載の発明におけるスクイズブロックは、その対向間隔を調節するため、左右から対向して一対となる部材によって構成されているが(上記記載事項2.(2)ア)、該一対のスクイズブロックのそれぞれの内面の曲率は一定であることからみて、対向間隔の調節はあくまでも微調整のためというべきであり、間隔調節の必要がないのであれば同スクイズブロックを一体として構成しても良いことは明かである。してみれば、刊行物2記載の発明における「一対のスクイズブロック」を一体とし、「管案内面11で形成される円形」を貫通穴とすることに格別困難な点は見いだせない。 また、刊行物1記載の発明において、ワークの継目の位置決め手段(ロータリーシームガイド(18))は上流側のスクイズロール(13)の直前に設けられていること、溶接箇所において溶接部とワークの継目との位置の整合を図るためには溶接部に近接した位置に設けなければならないことは技術常識からみて当然であり、位置決め手段を縮径する手段のどの位置に設けるかは適宜定められる設計事項である。 また、被請求人は、答弁書において、甲第2号証(刊行物2)記載のスクイズブロックは上部間の隙間の存在により、ワークの継目の部分をクランプできない旨主張しているが(答弁書14頁1~3行)、刊行物4に記載されるように、ワークの継目の部分をクランプする手段(刊行物4記載のシームガイドロール(10))を設けることは本件出願前に公知である(記載事項2.(4)ア及びイ)。 更に、刊行物2記載の発明において、スクイズブロックには溶接用の開口部が設けられており、その開口部を設ける位置をスクイズブロックのどの部分に設けるかは適宜定められる設計事項であり、溶接する箇所を、ワークの継目の部分をクランプする手段を介して設けることも刊行物4に記載されるように本件出願前に公知である(上記記載事項2.(4)ア及びイ)。 してみれば、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するにあたって、刊行物1、2及び4に記載の事項及び技術常識を勘案して、ワークを縮径する手段を、「入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具」とすることは当業者が容易に成し得たものである。 (イ)相違点2について 刊行物1記載の発明において、同刊行物1の「シーム線(12)の位置を規制するためにシームガイド(17)が送り込みローラー(16)上に設けられ、溶接部の駆動ロール(38)との間にもロータリーシームガイド(18)が設けられ、これらシームガイドによつて常に溶接トーチ(14)直下にシーム線(12)が位置するようになされている。」との記載(上記記載事項2.(1)ウ)、及び、「シームガイド(30)を降下させてシーム線(12)内へ突込ませる。・・・シームガイド(30)がシーム線(12)内へ入り、・・・」との記載(上記記載事項2.(1)エ)からみて、ワークを位置決めする部材であるロータリーシームガイド(18)を、ワークの継目内に入り込むものとすることは当業者が容易に成し得たものである。 (ウ)相違点3について 刊行物2には、「トーチ切欠12には溶接トーチ30が臨設される。」と記載されている(上記記載事項2.(2)イ)。してみれば、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するにあたって、溶接トーチはスクイズブロックの開口部上に設けることとなることは当然の構成である。 (エ)相違点4について 刊行物3の、「円筒状ワークを受取り、その合せ目を溶接する」の記載(上記記載事項2.(3)ア)からみて、同刊行物3は溶接の対象を短管とするものである。そして「フイードチエン23,23が駆動してマンドレル3に連続的に嵌つている円筒ワーク4の両側を挟んで、該マンドレルに沿つて移送する。また、トーチ5のところまで移送されたとき、ここで円筒ワーク4の合せ目4aが溶接される。」(上記記載事項2.(3)エ)の記載からみて、ワークの送り手段であるフイードチエン23,23は、ワークを縮径する手段に送り込み、縮径させ、溶接させ、同縮径する手段から排出させる一連の動作を連続的に行うものである。そして、刊行物1記載の発明においては、送り手段(送り込みローラー)はワークを少なくとも上流側の駆動ロールまで送り込むものであることからすれば、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用するにあたって、送り手段を、ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行うものとすることは当業者が容易に成し得たものである。 (オ)本件発明の作用効果 そして、本件発明の作用効果は、刊行物1、2記載の発明及び刊行物1ないし4記載の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。 したがって、本件発明は、刊行物1、2記載の発明及び刊行物1ないし4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 自動溶接装置 (57)【特許請求の範囲】 1)短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、 入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具と、 溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、 ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなることを特徴とする自動溶接装置。 2)送り装置と溶接治具の間に、ワークを溶接治具の貫通穴と同軸上に位置させるとともにワークの継目を定位置に保持させる位置決め装置を備えた特許請求の範囲第1項記載の自動溶接装置。 3)位置決め装置は、ワークを回動させる2本のローラが上下動可能となされたシリンダのロッド上端に固着された受台に平行かつ水平に軸支され、受台上あるいは受台の近傍にワークの位置検出用のセンサが設けられた特許請求の範囲第2項記載の自動溶接装置。 4)位置決め装置の上位に、ワークを定位置に保持するガイドプレートが設けられた特許請求の範囲第2項又は第3項記載の自動溶接装置。 【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を自動的に溶接する自動溶接装置に関する。 (従来の技術) 従来、この種の自動溶接装置において、円筒状のワークの溶接治具へのセットは、一般にワークセンタを出し、ワーク周面をクランプすることでなされている。そして、このセットされたワークは送り手段によって送られながら溶接され、溶接完了したワークを溶接治具より取り出すことによって溶接工程が終了する。 (発明が解決しようとする問題点) しかるに、溶接時において、ワークの先端から溶接して行くと熱歪等の影響で後端の継目が開く傾向及び溶接部分が起き上がる傾向があり、これらの傾向はワークが厚物になるほど顕著となる。このため、従来の装置においては上記の傾向が加工上のネックとなっていた。またワークの溶接治具へのセット、芯出し、取り外し等の作業が必要なため溶接工程時間がかかるという問題があった。 (問題点を解決するための手段) 本発明は、短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークの継目を溶接する自動溶接装置であって、入口がワーク径より大きくなされるとともに内部が溶接時のワーク径と同径に絞られた貫通穴が設けられ、入口側の端部中央から軸方向に沿って刃先がワークの継目内に入り込むように貫通穴内に突入されたワークの位置決め部材が設けられ、位置決め部材の延長上にある出口側近傍に溶接用の開口部が、貫通穴の全周が閉じる部分を介して設けられた溶接治具と、溶接治具に設けられた開口部上に具備された溶接トーチと、ワークを溶接治具の貫通穴に送り込み、縮径させ、溶接させ、貫通穴から排出させる一連の動作を連続的に行う送り手段とからなるものである。 (作用) 位置決め装置の2本のローラにのせられたワークは光センサ等によりワークの継目が検出され、ワークの継目を真上に位置するように前記ローラが回動する。そして、昇降シリンダによってワークを溶接治具の貫通穴と同軸上に上昇させ、貫通穴と同軸上に位置したワークは、送り装置によって位置決めされるとともに溶接治具の貫通穴内へ送られる。溶接治具の貫通穴径は入口がワーク径より大きく、途中で径がしぼられ、出口近傍の開口部ではワークの継目がぴったり合うワーク径と同径になっている。よって挿入されたワークは溶接治具に設けられたセンタガイドで引き続き位置決めされた状態で貫通穴内を進み、溶接治具の開口部付近に達するとワーク継目がぴったり合うとともに、開口部上方に設けられているセンサがワーク先端を検知して前記開口部で溶接が開始される。そしてワークの継目が溶接されて行き、ワークの後端をセンサが検知すると溶接は終了する。さらに、溶接されたワークは引き続き送り装置によって送られ、溶接治具の出口より送り出される。 (実施例) 以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。 自動溶接装置は、第1図乃至第4図に示すように、短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワーク1の継目2を溶接するための溶接トーチ4と、ワーク1を溶接時にクランプする溶接治具10と、溶接治具10にワーク1を送り込む送り装置20と、ワーク1を位置決めして送り装置20まで運ぶ位置決め装置30とから構成されている。 位置決め装置30は、2本のローラ32,33を有する受台31と、受台31を昇降自在に支持する昇降シリンダ36とから構成されており、2本のローラ32,33は平行かつ水平となるように両端が受台31に軸支され、該ローラ32,33の一端はギア34を介してモータ35と連結されている。そして、受台31にはワーク1の継目2を検出する光センサ37が設けられ、ローラ32,33の回動によりワーク1の継目2が真上に位置するようになされている。また、昇降シリンダ36のロッド端は受台31の下面に固着され、受台31が昇降自在になされている。 送り装置20は、ワーク1を送る時の位置決めをするガイドアーム22とワーク1を溶接治具10に送り込む杆25から構成され、これら各構成部材は台盤21上に載置されている。ガイドアーム22の基端部は台盤21上に軸支され、先端部に円板状のガイドプレート23を回転可能に具備している。24はガイドプレート23をガイドアーム22の先端に枢支するピンである。位置決め装置30において継目2が真上に位置されたワーク1が上昇され、ワーク1の継目2にガイドプレート23が差し込み、係合されることで、溶接治具10に送り込まれるワーク1の位置決めを行っている。送り杆25は、先端にワーク1の径よりもやや大きい径の円板状の押込み部材26が取り付けられている。送り杆25の基端部は油圧モータ、サーボモータ等(図示省略)と連結されている。送り杆25は台盤21の中程に、溶接治具10の貫通穴13と同軸上を水平にストロークするように設けられている。押し込み部材26は、送り杆25と着脱可能とされたワーク1の径に合わせて取り替えられる。 溶接治具10は、第2図に示すように、前面11から背面12に貫通する貫通穴13を設けた四角柱で形成され、上面14の背面12側に端縁中央部にはU字状に切り欠いた開口部15が設けられ、上面14の前面11側の端縁中央から開口部15近傍にかけて軸方向に切り込んだスリット16が設けられている。 スリット16には、該スリット16と長さが略等しいセンタガイドプレート17が刃先を貫通穴13に適当な長さ突入させて固定されており、この突入した部分がワーク1の継目2と係合することによってワーク1の位置決めをする。 貫通穴13は、第3図に示すように、前面11側からスリット16が終わる所くらいまではワーク1の径より大きい径のストレート穴7となされ、スリット16が終わる所くらいから徐々に径が絞られ、開口部15に達する所でワーク1の継目2がぴったり合うようにテーパ穴8となされ、テーパ穴8から背面12までは絞られた径のストレート穴9となされている。貫通穴13のテーパ穴8は本実施例に限らず、例えば、前面11側から開口部15に達する所くらいまでの全体がテーパ穴19に形成されていてもよい(第4図参照)。 溶接治具10は、前面11側がワーク1の入口、背面12側がワーク1の出口となるように貫通穴13の径がそれぞれ違う3台の溶接治具10a,10b,10cとなされ、これら3台の溶接治具が移動台18上に適宜距離を保って固定されている。移動台18はモータ(図示省略)等により移動可能で、3台の溶接治具10a,10b,10cの内、溶接するワーク1の径に合った溶接治具を溶接トーチ4の下方の溶接位置にセットする。なお、移動台18上に固定する溶接治具10は3台とは限らない。 溶接トーチ4は、基台3の上部に固定されたシリンダ5のロッド端にトーチ部材6を介して取り付けられ、溶接トーチ4の口部が溶接治具10の開口部15の上方に位置するようにセッティングされている。トーチ部材6の側面にはワーク1の先端及び後端を検知する光センサ38,39がそれぞれ設けられている。 なお、本実施例においてワーク1の検出は光センサを使用したが、これに限らずリミットスイッチ等を用いてもよい。 次に、本発明の自動溶接装置を用いて円筒状ワーク1を溶接する動作について説明する。 まずワーク1が位置決め装置30にコンベア(図示省略)等で送られると、位置決め装置30ではワーク1の継目2を光センサ37によって検出し、位置決め装置30のローラ32,33の回転によりワーク1の継目2を真上に位置させる。次に、昇降シリンダ36によりワーク1が溶接治具10の貫通穴13と同軸上となるように位置決めする。この時、ワーク1の継目2に送り装置20のガイドプレート23が係合してワーク1を位置決めしている。そして、送り装置20の押し込み部材26をワーク1の端部に当接させて送り杆25でワーク1を溶接治具10方向へ送ると、ワーク1が溶接治具10の貫通穴13内へ送り込まれる。貫通穴13内では溶接治具10のセンタガイドプレート17とワーク1の継目2が係合され、ワーク1が引き続き位置決めされた状態で送り込まれる。さらにワーク1が送り込まれ開口部15の付近に達すると貫通穴13の径の絞りによりワ一ク1の継目2が合わせられるとともに開口部15で光センサ38によってワーク1の先端を検知し、溶接が開始される。さらにワーク1は溶接されながら送られ、光センサ39によってワーク1の後端が検知されると溶接は終了する。そして、溶接が終了したワーク1はそのまま送り装置20によって出口側に押出され溶接工程が終了する。この時の送り速度は光センサ38がワーク1の先端を検知する溶接開始位置までは早送りで送られ、溶接を開始すると溶接に適した速度で送られる。 (発明の効果) 短板を曲げ加工して予め略真円状の短管となされたワークは溶接治具の貫通穴内を通り、ワークの外周面がしっかりクランプされた状態で溶接されるため、熱歪等によるワークの継目の開き及び溶接部分の起き上がりが規制され、初期設定寸法通りの寸法精度の高い短管製品を得ることができる。また、従来のような溶接治具へのワークの取り付け、芯出し、取り出し等の工程が不要となるため溶接工程時間が大幅に短縮される。 【図面の簡単な説明】 第1図乃至第4図は本発明に係る自動溶接装置の実施例を示し、第1図は一部を省略した自動溶接装置の全体斜視図、第2図は溶接治具の斜視図、第3図,第4図は溶接治具の断面図である。 1…ワーク 4…溶接トーチ 10…溶接治具 13…貫通穴 15…開口部 17…センタガイドプレート 20…送り装置 30…位置決め装置 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2004-06-14 |
結審通知日 | 2004-06-16 |
審決日 | 2004-06-30 |
出願番号 | 特願昭60-232496 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(B23K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平山 美千恵 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
上原 徹 神崎 孝之 |
登録日 | 1990-12-14 |
登録番号 | 特許第1592995号(P1592995) |
発明の名称 | 自動溶接装置 |
代理人 | 國富 豪 |
代理人 | 倉内 義朗 |
代理人 | 宮崎 栄二 |
代理人 | 國富 豪 |
代理人 | 園田 敏雄 |
代理人 | 倉内 義朗 |
代理人 | 奥野 隆夫 |