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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 B65D 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 B65D 審判 全部申し立て 発明同一 B65D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65D |
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管理番号 | 1132538 |
異議申立番号 | 異議2003-71738 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-07-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-08 |
確定日 | 2005-10-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3365236号「環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3365236号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
理 由 1.手続の経緯 特許第3365236号 の請求項1~5に係る発明についての出願は、平成8年12月24日に特許出願され、平成14年11月1日にその発明についての特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人日本ゼオン株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月5日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正の内容は、平成16年8月5日に提出された訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、以下のとおりである。 1)訂正事項a 請求項1の「且つ容器外表面の環状オレフィン系共重合体の分子配向が緩和されており」を「且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており」と訂正する。 2)訂正事項b 請求項1の「特徴とする容器」を「特徴とする耐衝撃性に優れた延伸成形容器」と訂正する。 3)訂正事項c 明細書の段落【0008】の記載のうち、「且つ容器外表面の環状オレフィン系共重合体の分子配向が緩和されており」を「且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており」と訂正する。 4)訂正事項d 明細書の段落【0008】の記載のうち、「特徴とする容器」を「特徴とする耐衝撃性に優れた延伸成形容器」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項a、bは、請求項1に記載されている事項の一部を明細書に記載されていた下位概念のものと置換するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項c、dは、上記訂正事項a、bに付随的に生じる記載の不備を解消するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、上記訂正事項aにより、請求項1に係る発明は、環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されていることを同請求項に係る発明の特定事項とすることが明確となったため、同請求項1に係る発明、及び、同請求項1に従属する請求項2~4に係る発明は、いずれも、本件特許明細書における比較例3の態様を包含しなくなり、同請求項1~4に係る発明の特許についての、特許法第36条第4項~第6項の規定に対する違反は解消された。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)申立ての理由の概要 異議申立人日本ゼオン株式会社は、本件発明の特許に対して、証拠として甲第1号証(特願平7-241585号の願書に最初に添付した明細書(特開平9-77038号公報))、甲第2号証(高橋治彦作成の実験成績証明書)、甲第3号証(特開平3-726号公報)、甲第4号証(特開平7-80919号公報)、甲第5号証(特公平4-19926号公報)、甲第6号証(特開平4-94916号公報)を提出し、請求項1~4に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、請求項1~5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、請求項1~5に係る発明の特許は、第36条第4項~第6項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。 (2)本件発明 特許第3365236号 の請求項1~4に係る発明の特許についての、特許法第36条第4項~第6項の規定に対する違反は、既述の如く解消されたため、同特許第3365236号 の請求項1~5に係る発明は、平成16年8月5日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりである。 「少なくとも容器の外表面が環状オレフィン系共重合体から形成された容器において、容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体が少なくとも一軸方向に分子配向されており、且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており、容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内であることを特徴とする耐衝撃性に優れた延伸成形容器。」 (3)引用刊行物等 1)特願平7-241585号の願書に最初に添付した明細書(特開平9-77038号公報)(異議申立人の提出した甲第1号証)、 2)刊行物2:特開平3-726号公報(異議申立人の提出した甲第3号証)、 3)刊行物3:特開平7-80919号公報(異議申立人の提出した甲第4号証)、 4)刊行物4:特公平4-19926号公報(異議申立人の提出した甲第5号証)、 5)刊行物5:特開平4-94916号公報(異議申立人の提出した甲第6号証) (4)刊行物等に記載された発明 1)特許異議申立人が証拠として提出した本件出願前の他の出願であって甲第1号証の特許出願明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、下記a~cの点が記載されている。 a.「環状オレフィン成分を5~60モル%含有するポリオレフィン樹脂が60重量%以上を占める樹脂層を外層とし、ポリオレフィン系樹脂層を内層として容器壁が構成され、容器外表面にフレーム処理が施されていることを特徴とする、多層ブロー容器。(【請求項1】)、 b.「本発明は、光沢の優れたブロー容器であって、特にフレーム処理を施すことによって表面光沢が更に改善された多層ブロー容器に関するものである。また特にパール光沢の優れた多層ブロー容器に関するものである。(段落【0001】)、 c.「<第1実施例>容器壁の構成が外層から順に、環状オレフィン成分60モル%、エチレン成分40モル%の共重合体層/ポリエチレン層、とからなる多層ブロー容器を作成し、容器の外表面にフレーム処理を施した。」(段落【0009】)。 2)刊行物2には、下記a~dの点が記載されている。 a.「第1図に、本発明に係るブロー成形品の内、インジェクションブロー法に使用されるプリフォームの断面図を示す。第1図に示すプリフォーム10はコア型とキャビティ型で構成される型内部に溶融樹脂を射出することにより成形され、溶融樹脂は環状オレフィン系重合体からなっている。」(第17頁右下欄第2~7行)、 b.「このようなプリフォーム10はブロー成形部へ移行した後、割型で挟んでエアを吹き込みブロー成形を行う。また、プリフォーム10の延伸倍率は容積比で2~20倍の範囲が好ましい。」(第18頁左上欄第1~4行)、 c.「実施例1 エチレンと1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン(・・・)とのランダム共重合体(・・・)を用いてインジェクションブロー成形した。成形条件およびブロー成形品の物性を表1に示した。」(第18頁右下欄下から10~末行)、 d.「以上説明したように本発明に係るブロー成形品を、特定の環状オレフィン系共重合体で構成したことにより、ブロー成形品は耐酸性、耐アルカリ性および耐沸水性等に耐薬品性が向上したものとなる。また、環状オレフィン系共重合体を一定の条件の下に選択的に素材として使用しているので、機械的強度、特に、衝撃強度が改善される。」(第20頁左上欄第2~9行)。 3)刊行物3には下記a~eの点が記載されている。 a.「【請求項1】延伸ブロー成形品の樹脂組成が、環状オレフィン成分5~60モル%を有するポリオレフィンからなることを特徴とするポリオレフィン製延伸ブロー成形品。 【請求項2】 延伸ブロー成形のプリフォームの材料として環状オレフィン成分5~60モル%を有するポリオレフィンを使用し、該プリフォームを延伸ブロー成形することを特徴とするポリオレフィン製延伸ブロー成形品の製造方法。 【請求項3】請求項1のポリオレフィン製延伸ブロー成形品をガラス転移点以上融点未満の温度で加熱することにより、延伸ブローする前のプリフォーム形状まで戻すことを特徴とするポリオレフィン製延伸ブロー成形品の処理方法。(【特許請求の範囲】)、 b.「 <実施例1> 環状ポリオレフィン共重合体(環状オレフィン成分;25%,エチレン成分;75モル%)を射出成形し、直径30mmのフランジ部、直径27.4mmの胴部、長さ120mm、厚さ3.4mmのプリフォーム(有底パリソン)を得た。 該プリフォームを再加熱し110℃とし徐冷してプリフォーム温度を均一に90℃とし、延伸ロッド圧力;7kgf/cm2、一次ブロー;1.0kgf/cm2,1s、二次ブロー;20kgf/cm2,3sにて延伸ブロー成形して、縦延伸倍率2.0倍、横延伸倍率2.4倍、ボトル高さ235mm、直径65mmの500mlの延伸ブロー容器を得た。 外観は透明で、肉厚0.4mmにも関わらず非常に硬く剛性のある容器である。該容器の水蒸気バリア性、ヘーズ等の測定を行った。 また、該プリフォームを使用し同様の延伸ブロー成形方法により、縦延伸倍率1.4倍,横延伸倍率2.2倍,ボトル高さ165mm,直径60mmの300mlの延伸ブロー容器も得た。」(段落【0020】)、 c.「【発明の効果】 以上詳細に説明した、延伸ブロー成形のプリフォームの材料としてポリオレフィンに環状オレフィン成分を有する環状ポリオレフィン共重合体を使用する発明により、透明性,水蒸気バリア性,耐熱性,剛性等優れた延伸ブロー成形品が容易に得られる。 また、環状ポリオレフィン共重合体を用いたことで、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル成形品に比べ比重が2.5割小さい為、強靭な成形品にも関わらず成形品の重量を軽くすることができる。 さらに、有機溶媒、酸、アルカリ等への耐薬品性も優れている為、内容物の制限がなく、成形品としての使用範囲が広く、特に水蒸気バリア性が優れていることから薬品,食品等の粉体,錠剤等の容器に最適である。」(段落【0028】)、 d.「さらに、上記延伸ブロー成形品が不要になった時、加熱するだけで嵩張らないプリフォーム形状まで戻る。また、延伸ブロー成形品の加熱により元のプリフォームまで収縮する性質を利用して複雑な絵柄、彫刻を成形品に施すことができる。(段落【0029】)。 e.表1には、実施例1~4のヘーズ値として、1.5~5.0%の数値が記載されている。(第5頁、表1)、 4)刊行物4には下記a~cの点が記載されている。 a.「1 ポリ塩化ビニル系延伸ブローボトルに内層冷却用液体を充填し、次いで該ブローボトルの外表面の分子配向を解消し得る高温で火炎を外面に0.8~25秒間接炎して加熱処理することを特徴とするポリ塩化ビニル系延伸ブローボトルの処理方法。」(特許請求の範囲)、 b.「延伸ブローボトルの成形は、プリフォームの成形後、80~120℃の範囲で延伸を加えながらブローを行うもので、ダイレクトブローのように樹脂の溶融温度で成形するものと大きく異っている。そのため、樹脂は分子配向し、部分結晶化が起こる。・・・本発明者らは、延伸によって生じた分子配向を解消するには、びんの表層部を高温に加熱すればよいことを着想し、表面加熱法について研究を重ね本発明を完成した。本発明の目的は、摩擦によって変化したPVCボトルの表面構造を摩擦に対して強固にするとともに、延伸で得られた強度を損わない手法を提供することに在る。」(第2頁第3欄第5~36行)。 c.「例えば、1lびんで、プロパン炎(1000℃)の場合、ボトルを回転させながら、0.8秒~25秒処理すればよい。」(第2頁第4欄第22~24行)。 5)刊行物5には下記a、bの点が記載されている。 a.「(1) インモールド成形により商品ラベルを側面に付設する容器を前工程でブロー成形し、ブロー成形後の容器を、外側に対向して配置された熱処理装置の火炎バーナ間にセットして、商品ラベルの存在する部分はバーナからの短い火炎で比較的低温により加熱し、商品ラベルの存在しない部分はバーナからの長い火炎で比較的高温で加熱することにより、商品ラベルを白化させず、高光沢性の容器肌が得られる高光沢性容器の製造方法。」(特許請求の範囲)、 b.「前工程で、第1図に示すような容器1が成形素材のパリソンをブロー成形法により成形される。この容器1は、内面が高密度の硬質ポリエチレンで、外面が低密度の軟質ポリエチレン製であり、共押し出しにより成形されたものである。」(第2頁左下欄第4~8行)。 (5)対比・判断 1)特許法第29条の2違反について 本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と上記の先願明細書に記載された発明(以下、「先願発明」という。)とを対比すると、両者はいずれも「少なくとも容器の外表面が環状オレフィン系共重合体から形成された成形容器」である点で同じであるが、本件発明には下記a~dの点について記載されているのに対し、先願発明にはこれらの点については、記載も示唆もない点で互いに相違する。 a.容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体が少なくとも一軸方向に分子配向されており、 b.且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており、 c.容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内であることを特徴とする、 d.耐衝撃性に優れた延伸成形容器。 したがって、本件発明は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。 なお、特許異議申立人は、上記先願発明について追試を行い、実験成績証明書(異議申立人の提出した甲第2号証)を提出しているが、この追試はあくまで「多層ブロー容器」に基づいて行ったものであって、本件発明のような「容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体が少なくとも一軸方向に分子配向されて」いる「延伸成形容器」について、追試を行ったものではないから、先願発明の正確な追試とはいえないから、先願発明の追試によって得られたヘーズ値等がたまたま本件発明の数値と一致するものがあったとしても、その数値を論拠として、本件発明が先願発明と同一であるとすることはできない。 2)特許法第29条第2項違反について 本件発明と刊行物2に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、両者はいずれも「少なくとも容器の外表面が環状オレフィン系共重合体から形成された延伸成形容器」である点で同じであるが、本件発明には下記a、bの二点が記載されているのに対し、引用発明にはこれらの点の記載がない点で互いに相違する。 a.環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されている点、 b.容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内である点。 そこで、これらの相違点について、まず相違点bから検討するに、 本件発明における相違点bに係る構成、すなわち、「容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内である」との構成の技術的意義について検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の各記載がある。 ・「環状オレフィン系共重合体から成る容器には、インクジェットブロー法等による未延伸のブロー成形容器と、コールドパリソン法等による延伸ブロー成形容器とに大別されるが、未延伸のブロー成形容器では、落下衝撃に対する強度が低く、包装容器の実用性の点では、延伸成形を行った容器が優れている。しかしながら、延伸成形を行った環状オレフィン共重合体容器には、未延伸の環状オレフィン系共重合体製容器には全く認められない一つの欠点があることが分かった。即ち、環状オレフィン系共重合体製の延伸成形容器に手を触れると、指先の指紋が容器表面に移行して、表面に白い濁りを生じるのである。この現象は、未延伸の環状オレフィン系共重合体の容器では全く認められないものであるから、延伸成形容器における表面汚染の問題は、環状オレフィン系共重合体の分子配向と密接に関連しているものと推定される。」(【発明が解決しようとする課題】の項、段落【0004】~【0005】) ・「本発明者は、環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における外表面の指紋付着による汚れの発生は、この延伸成形容器外表面の分子配向を緩和させることにより、完全に防止されることを見いだした。即ち、本発明の目的は、外表面の指紋付着による汚れの発生が完全に防止された環状オレフィン系共重合体製の延伸成形容器を提供するにある。」(同、段落【0006】~【0007】) ・「この延伸成形容器の外表面を、脂肪族石油留出物(CAS No8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No64742-65-0)との混合物・・・で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、配向緩和させたことが顕著な特徴であり、これにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができる。」(【課題を解決するための手段】の項、段落【0011】) ・「本発明によれば、特定の石油混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、外表面の薄層の環状オレフィン系共重合体を、配向緩和させることにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができる。しかも、分子配向緩和されるのが表面の薄層に限られ、器壁の大部分の環状オレフィン系共重合体では、分子配向が残留しているので、耐衝撃性が実質上低下することなしに維持されているという利点も得られるものである。」(【発明の効果】の項、段落【0078】) 上記各記載によれば、本件発明は、環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器における、指紋付着による白濁の発生を技術的課題とし、当該課題を解決する方法として、延伸成形容器外表面の分子配向を緩和させるとの方法を採用した上、分子配向の緩和の程度について、上記相違点bに係る構成を採用して、本件石油混合物を用いた塗布試験時のヘーズ値が20%以内となるようにしたものであり、これにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができるとともに、耐衝撃性が実質上低下することなしに維持されているという利点も得られるという効果を奏するものであると認められる。 この場合、上記相違点bに係る構成は、環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における指紋付着による白濁の発生という特定の技術的課題を解決し、所期の効果を得るという技術的意義を有するものであり、その意味で、上記相違点bに係る構成に示された、本件石油混合物を用いた塗布試験時のヘーズ値の数値範囲は、上記特定の課題及び効果との関係において最適化されたものであるということができる。 一方、環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における指紋付着による白濁の発生という課題、及び、上記相違点bに係る構成についての直接の記載ないし示唆は、刊行物2~5にはない。 したがって、環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における指紋付着による白濁の発生という課題が、本件特許出願当時、新規の課題であったと認められる以上、当該新規の課題及び効果との関係において本件石油混合物を用いた塗布試験時のヘーズ値の数値範囲を最適化したものである上記相違点bに係る構成につき、他に特段の事情のない本件において、当業者が、これを容易に想到し得たものとは認められない。 なお、仮に、引用発明に刊行物4に記載された発明を適用して、「容器の外表面における分子配向が緩和された環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器」を得ることが、当業者にとって容易であったといい得、また、環状オレフィン系共重合体のヘーズ値が20%以内である、0.1~5%ものが刊行物3に記載されているとしても、指紋付着による白濁の発生という課題が新規の課題である以上、当該新規の課題との関係において、本件石油混合物を用いた塗布試験時のヘーズ値の数値範囲を最適化したものである上記相違点bに係る構成を備えるよう、分子配向の緩和の程度を加減する動機付けが存在しないと言わざるを得ない。 してみると、本件発明における上記相違点bに係る構成について、当業者が、これを容易に想到し得たものとは認められない以上、相違点aについての判断をするまでもなく、本件発明は、刊行物2~5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものとは言えない。 また、本件の請求項2~5に係る発明は、本件発明に従属する発明であって、既述の如く、本件発明が刊行物2~5に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものとすることができない以上、前記請求項2~5に係る発明を刊行物2~5に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものとすることはできない。 (6)特許法第36条第4項~第6項違反について 本件明細書の記載が訂正されたことにより、特許異議申立人のいうような記載不備は解消されたことは、既述のとおりである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1~5に係る発明についての特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。 また、他に本件の請求項1~5に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】少なくとも容器の外表面が環状オレフィン系共重合体から形成された容器において、容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体が少なくとも一軸方向に分子配向されており、且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており、容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内であることを特徴とする耐衝撃性に優れた延伸成形容器。 【請求項2】容器外表面の熱処理により分子配向が緩和されている請求項1記載の容器。 【請求項3】熱処理時の容器の外表面温度が130℃以上である請求項2記載の容器。 【請求項4】容器外表面の火炎処理により環状オレフィン系共重合体の分子配向が緩和されている請求項1記載の容器。 【請求項5】容器の延伸成形が内部では分子配向が保持され且つ外表面では分子配向が緩和されるような温度分布下で行われている請求項1記載の容器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、環状オレフィン系共重合体から形成された包装容器に関するもので、より詳細には、外表面の指紋付着等による汚染が解消された環状オレフィン系共重合体容器に関する。 【0002】 【従来の技術】 環状オレフィン系共重合体は、透明性や耐水分透過性に優れ、耐熱性や機械的特性にも優れたオレフィン系樹脂として、透明包装材料の分野で着目されている。 【0003】 環状オレフィン系共重合体から、ボトル等の中空成形容器を製造することも既に知られており、特開平3-726号公報には、環状オレフィンとエチレンとを付加重合して成る共重合体から成形されたブロー成形品が記載されている。また、特開平7-80919号公報には、環状オレフィン成分5乃至60モル%を有するポリオレフィンから成る延伸ブロー成形品が記載されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 環状オレフィン系共重合体から成る容器には、インジェクションブロー法等による未延伸のブロー成形容器と、コールドパリソン法等による延伸ブロー成形容器とに大別されるが、未延伸のブロー成形容器では、落下衝撃に対する強度が低く、包装容器の実用性の点では、延伸成形を行った容器が優れている。 【0005】 しかしながら、延伸成形を行った環状オレフィン系共重合体容器には、未延伸の環状オレフィン系共重合体製容器には全く認められない一つの欠点があることが分かった。即ち、環状オレフィン系共重合体製の延伸成形容器に手を触れると、指先の指紋が容器表面に移行して、表面に白い濁りを生じるのである。この現象は、未延伸の環状オレフィン系共重合体の容器では全く認められないものであるから、延伸成形容器における表面汚染の問題は、環状オレフィン系共重合体の分子配向と密接に関連しているものと推定される。 【0006】 本発明者らは、環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における外表面の指紋付着による汚れの発生は、この延伸成形容器外表面の分子配向を緩和させることにより、完全に防止されることを見いだした。 【0007】 即ち、本発明の目的は、外表面の指紋付着による汚れの発生が完全に防止された環状オレフィン系共重合体製の延伸成形容器を提供するにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明によれば、少なくとも容器の外表面が環状オレフィン系共重合体から形成された容器において、容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体が少なくとも一軸方向に分子配向されており、且つ該環状オレフィン系共重合体の分子配向が容器内部では保持され且つ容器外表面では緩和されており、容器の外表面を脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内であることを特徴とする耐衝撃性に優れた延伸成形容器が提供される。 【0009】 本発明の容器では、容器外表面の環状オレフィン系共重合体の分子配向が緩和されているが、この分子配向の緩和は、(A)プリフォームから容器を形成するとき、内部では分子配向が保持され且つ外表面では分子配向が緩和されるような温度分布とすることにより行われていても、或いは(B)容器外表面の熱処理、特に熱処理時の容器の外表面温度が130℃以上となるような熱処理より行われていてもよく、また(C)容器外表面の火炎処理により行われていてもよい。 【0010】 本発明において、容器の少なくとも外表面を環状オレフィン系共重合体から形成するのは、環状オレフィン系共重合体が透明性や表面光沢性に優れ、しかも耐水蒸気透過性にも優れていることによる。また、容器の少なくとも胴部を形成する環状オレフィン系共重合体を、少なくとも一軸方向に、好適には二軸方向に分子配向させるのは、環状オレフィン系共重合体は未配向の状態では、耐衝撃性に著しく劣っており、これに分子配向を付与することにより、耐衝撃性が著しく向上するためである。 【0011】 この延伸成形容器の外表面を、脂肪族石油留出物(CAS No8052-41-3)と石油ベースオイル(CAS No64742-65-0)との混合物(以下単に石油混合物と呼ぶことがある)で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、配向緩和させたことが顕著な特徴であり、これにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができる。 【0012】 一般に高分子の分子配向の程度は、複屈折、X線回折、密度法、偏向蛍光法等により評価されているが、環状オレフィン系共重合体は本質的に非晶質乃至低結晶性であること、及び本発明の対象である容器においては、外表面の薄層に限って環状オレフィン系共重合体の配向緩和が生じていることから、従来の手法では、分子配向の緩和の程度或いは分子配向の残留の程度を評価することは困難であった。 【0013】 本発明者らは、環状オレフィン系共重合体の分子配向の程度と、上記石油混合物を環状オレフィン系共重合体に塗布試験したときのヘーズ値との間には密接な関係があり、しかもこの測定法によれば、薄層の分子配向の程度をも正確に評価できることを見いだした。即ち、未配向の環状オレフィン系共重合体成形物では、石油混合物で塗布試験したときも、全く白化を生じないのに対して、延伸成形された環状オレフィン系共重合体では、石油混合物で塗布試験すると、明確に白化を生じるのである。 【0014】 環状オレフィン系共重合体の延伸成形容器における分子配向の程度は、微小X線回折装置を用いて測定したX線回折像における角度(2θ)が7.241度から23.241度までの範囲のピーク面積から算出した半価幅でも評価できることが分かった。図1は環状オレフィン系共重合体の延伸ブロー成形ボトルのX線回折像であり、図2は環状オレフィン系共重合体の溶融ブロー成形ボトルのX線回折像であり、図3は環状オレフィン系共重合体の延伸ブロー成形ボトルの表面にフレーム処理を施したもののX線回折像である。また、後述する表1は、上記3種類のボトル並びにフレーム処理の条件を変えたボトルについて、処理条件と半価幅との関係が示されている。これらの結果から、溶融ブロー成形ボトルでは半価幅が最も小さく、延伸ブロー成形ボトルでは半価幅が最も大きく、フレーム処理した延伸ブロー成形ボトルでは半価幅がこれらの中間であると共に、処理条件が高温になるほど半価幅が狭くなることが分かる。このような現象が生じる理由は、未だ十分明らかではないが、延伸成形ボトルでは内部の歪みがランダムで大きいのに対して、未延伸のボトルでは歪みが小さくより均質に近い状態になっているためと思われる。ただ、X線回折による測定手段では、容器の厚み方向全体を測定対象にしており、厚み方向全体の平均値としての値が測定されるにすぎないのに対して、石油混合物による塗布試験では表面のみを測定対象としている点で優れている。 【0015】 本発明では、後述する例に示すとおり、特定の石油混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、外表面の薄層の環状オレフィン系共重合体を、配向緩和させることにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができる。しかも、分子配向緩和されるのが表面の薄層に限られ、器壁の大部分の環状オレフィン系共重合体では、分子配向が残留しているので、耐衝撃性が実質上低下することなしに維持されているという利点も得られるものである。 【0016】 【発明の実施の形態】 本発明の容器の一例を示す図4(側面図)において、この容器1は、環状オレフィン系共重合体の延伸ブロー成形で形成されており、胴部2、閉塞底部3及び首部4から成っており、首部4にはキャップ係合用ネジ5が形成されている。 【0017】容器胴部の断面構造を示す図5において、容器壁6は二軸延伸により配向されており、外表面の薄層7では、石油混合物で表面処理したときのヘーズ値が20%以内となるように配向緩和されている。尚、図5は、配向緩和された薄層7の実際の厚み比を示すものではなく、その存在が強調されていることが理解されるべきである。 【0018】 容器の少なくとも外表面を構成する環状オレフィン系共重合体としては、オレフィンと環状オレフィンとの非晶質乃至低結晶性共重合体(COC)が使用される。 【0019】 共重合体を構成するオレフィンとしては、エチレンが好適であるが、他にプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル1-ペンテン、1-デセン等の炭素数3乃至20のα-オレフィンが、単独或いはエチレンとの組み合わせで使用される。 【0020】 環状オレフィンとしては、基本的には、エチレン系不飽和結合とビシクロ環とを有する脂環族炭化水素化合物、特にビシクロ[2、2、1]ヘプト-2-エン骨格を有する炭化水素化合物であり、具体的には次のものが挙げられるが、勿論これに限定されるものではない。 【0021】 ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体;例えば下記式(1) 【化1】 ![]() 式中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、或いはアルキリデン基であり、nは1~4の数である(以下同様である)、で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体。特に、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン5,6-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン1-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン6-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン6-n-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン6-イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン7-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン。 【0022】 トリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン誘導体;例えば、下記式(2) 【化2】 ![]() で表されるトリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン誘導体。特にトリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン2-メチルトリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン5-メチルトリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン。 【0023】 トリシクロ[4.4.0.12.5]-3-ウンデセン誘導体;例えば、下記式(3) 【化3】 ![]() で表されるトリシクロ[4.4.0.12.5]-3-ウンデセン誘導体。特に、トリシクロ[4.4.0.12.5]-3-ウンデセン10-メチルトリシクロ[4.4.0.12.5]-3-ウンデセン。 【0024】 テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン誘導体、例えば、下記式(4) 【化4】 ![]() で表されるテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン誘導体。 特に、 テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-プロピルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-ブチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソブチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-ヘキシルテトラシクロ[4,4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-シクロヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-ステアリルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 5,10-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 2,10-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8,9-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチル-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 11,12-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 2,7,9-トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 2,7-ジメチル-9-エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 9-イソブチル-2,7-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 9,11,12-トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 9-エチル-11,12-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 9-イソブチル-11,12-ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 5,8,9,10-テトラメチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチリデン-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチリデン-9-エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチリデン-9-イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-エチリデン-9-ブチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-n-プロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-n-プロピリデン-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-n-プロピリデン-9-エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-n-プロピリデン-9-イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-n-プロピリデン-9-ブチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソプロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソプロピリデン-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソプロピリデン-9-エチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソプロピリデン-9-イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-イソプロピリデン-9-ブチルテトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン。 【0025】 ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン誘導体;例えば、下記式(5) 【化5】 ![]() で表されるペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン誘導体。特に、 ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン 1,3-ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン 1,6-ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン 14,15-ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン。 【0026】 ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ペンタデセン誘導体、例えば下記式(6) 【化6】 ![]() で表されるペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ペンタデセン誘導体。特に、 ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ペンタデセン メチル置換ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ペンタデセン。 【0027】 ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4,10-ペンタデカジエン誘導体、例えば下記式(7) 【化7】 ![]() で表されるペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4,10-ペンタデカジエン誘導体。特に、 ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4,10-ペンタデカジエン。 【0028】 ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン誘導体、例えば下記式(8) 【化8】 ![]() で表されるペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン誘導体。特に、 ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン 11-メチル-ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン 11-エチル-ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン 10,11-ジメチル-ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン。 【0029】 ペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン誘導体、例えば、下記式(9) 【化9】 ![]() で表されるペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン誘導体。特に、 ペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン 1,3-ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン 1,6-ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン 15,16-ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン。 【0030】 ヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン誘導体、例えば下記式(10) 【化10】 ![]() で表されるヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン誘導体。特に、 ヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン 12-メチルヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン 12-エチルヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン 12-イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン 1,6,10-トリメチル-12-イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン。 【0031】 ヘプタシクロ[8.7.0.12.9.14.7.111.17.03.8.012.16]-5-エイコセン誘導体、例えば、下記式(11) 【化11】 ![]() で表されるヘプタシクロ[8.7.0.12.9.14.7.111.17.03.8.012.16]-5-エイコセン誘導体。特に、 ヘプタシクロ[8.7.0.12.9.14.7.111.17.03.8.012.16]-5-エイコセン。 【0032】 ヘプタシクロ[8.7.0.13.6.110.17.112.15.02.7.011.16]-4-エイコセン誘導体、例えば、下記式(12) 【化12】 ![]() で表されるヘプタシクロ[8.7.0.13.6.110.17.112.15.02.7.011.16]-4-エイコセン誘導体。特に、 ヘプタシクロ[8.7.0.13.6.110.17.112.15.02.7.011.16]-4-エイコセン ジメチル置換ヘプタシクロ[8.7.0.13.6.110.17.112.15.02.7.011.16]-4-エイコセン。 【0033】 ヘプタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン誘導体、例えば、下記式(13) 【化13】 ![]() で表されるヘプタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン誘導体。特に、 ヘプタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン。 【0034】 ヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン誘導体、例えば下記式(14) 【化14】 ![]() で表されるヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン誘導体。特に、 ヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン 15-メチル-ヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン トリメチル置換ヘプタシクロ[8.8.0.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ヘンエイコセン。 【0035】 オクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ドコセン誘導体、例えば、下記式(15) 【化15】 ![]() で表されるオクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ドコセン誘導体。特に、 オクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ドコセン 15-メチルオクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.113.16.03.8.012.17]-5-ドコセン 15-エチルオクタシクロ[8.8.0.12.9.14.7.111.18.013.16.03.8.012.17]-5-ドコセン。 【0036】 ノナシクロ[10.9.1.14.7.113.20.115.18.02.10.03.8.012.21.014.19]-5-ペンタコセン誘導体、例えば下記式(16) 【化16】 ![]() で表されるノナシクロ[10.9.1.14.7.113.20.115.18.02.10.03.8.012.21.014.19]-5-ペンタコセン誘導体。特に、 ノナシクロ[10.9.1.14.7.113.20.115.18.02.10.03.8.012.21.014.19]-5-ペンタコセン トリメチル置換ノナシクロ[10.9.1.14.7.113.20.115.18.02.10.03.8.012.21.014.19]-5-ペンタコセン。 【0037】 ノナシクロ[10.10.1.15.8.114.21.116.19.02.11.04.9.013.22.015.20]-6-ヘキサコセン誘導体、例えば、下記式(17) 【化17】 ![]() で表されるノナシクロ[10.10.1.15.8.114.21.116.19.02.11.04.9.013.22.015.20]-6-ヘキサコセン誘導体。特に、 ノナシクロ[10.10.1.15.8.114.21.116.19.02.11.04.9.013.22.015.20]-6-ヘキサコセン。 【0038】 環状オレフィンの他の例として、次のものを挙げることもできる。 5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-メチル-5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-ベンジル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-トリル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(エチルフェニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(イソプロピルフェニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(ビフェニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(β-ナフチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(α-ナフチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5-(アントラセニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン 5,6-ジフェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物 1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン 1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン 8-フェニル-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-メチル-8-フェニル-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-ベンジル-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-トリル-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン8-(エチルフェニル)-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-(イソプロピルフェニル)-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8,9-ジフェニル-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-(ビフェニル)テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-(β-ナフチル)テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-(αナフチル)-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン 8-(アントラセニル)-テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン (シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物)にシクロペンタジエンをさらに付加した化合物 11,12-ベンゾ-ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン 11,12-ベンゾ-ペンタシクロ[6.6.1.13.6.02.7.09.14]-4-ヘキサデセン 11-フェニル-ヘキサシクロ[6.6.1.13.6.110.13.02.7.09.14]-4-ヘプタデセン 14,15-ベンゾ-ヘプタシクロ[8.7.0.12.9.14.7.111.17.03.8.012.16-5-エイコセン] 【0039】 この共重合体(COC)は、50乃至22モル%、特に40乃至22モル%の環状オレフィンと残余のエチレンとから誘導され且つ200℃以下、特に150乃至60℃のガラス転移点(Tg)を有するのがよい。 【0040】 この共重合体の分子量は、特に制限はないが、デカリン中135℃で測定して、0.1乃至20dl/gの極限粘度[η]を有するのがよく、また、その結晶化度は、X線回折法で測定して、一般に10%以下、特に5%以下である。 【0041】 上記共重合体(COC)は、オレフィンと環状オレフィンとを、それ自体公知のバナジウム系触媒或いはメタロセン系触媒の存在下にランダム重合させることにより得られる。 好適な共重合体(COC)は、三井石油化学株式会社から、APELの商品名で入手しうる。 【0042】 環状オレフィン系共重合体は、単独で用いることが好ましいが、その本質を損なわない範囲、即ち50重量%よりも少ない量、特に30重量%以下の量で、他のオレフィン系樹脂とのブレンド物の形で使用することもできる。他のオレフィン系樹脂としては、オレフィン系ホモポリマーやコポリマーが好適に使用される。例えば、低密度、中密度或いは高密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、プロピレン-エチレン共重合体、アイオノマー、エチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。勿論これらのオレフィン系樹脂は単独でも二種以上の組み合わせでも使用することができる。 【0043】 ブレンドするこれらのオレフィン系樹脂は、一般に0.1乃至50g/10min、特に0.2乃至30g/10minのMFR(メルトフローレート)を有しているのがよく、成形法に応じて、押出グレードのものや射出グレードのものを適宜選択使用することができる。 【0044】 上記環状オレフィン系共重合体には、それ自体公知の配合剤、例えば顔料、充填剤、酸化防止剤、滑剤、安定剤、紫外線吸収剤等をそれ自体公知の処方に従って配合しうる。 【0045】 環状オレフィン系共重合体或いはその組成物を、押出機や射出機に供給し、溶融混線した後に予備成形体に熱成形し、次いで予備成形体を延伸成形することにより任意の形状の容器に成形する。この際、ガラス転移温度+200℃以下の温度、特にガラス転移温度+150℃以下の温度で溶融混線することが好ましい。 【0046】 押出機としては、任意のスクリュウを備えた押出機が好適に使用される。ダイスとしては、フラットダイやリングダイを使用することができる。 【0047】 射出機としては、射出プランジャまたはスクリューを備えたそれ自体公知のものが使用され、ノズル、スプルー、ゲートを通して前記混合物を射出型中に射出する。これにより、樹脂が射出型キャビティ内に流入し、冷却固化されてプリフォーム等の予備成形品が得られる。 【0048】 容器の製造に際して、コールドパリソン法のように、一旦予備成形体を製造し、この予備成形体を最終成形品に延伸成形することができる。例えば、射出成形により、容器よりも小さい形状の有底プリフォームを成形し、この有底プリフォームに気体を吹き込むと共に軸方向に引っ張り延伸して二軸延伸成形ボトルとする。また、シートに熱成形後、プラグアシスト成形、圧空成形して、延伸カップ状容器とする。この際器壁は高さ方向(一軸方向)に分子配向される。 【0049】 延伸成形は、樹脂の種類(ガラス転移点)にもよるが、一般に70乃至200℃、特に80乃至180℃の範囲から、樹脂の種類によって適切な延伸成形温度を選択する。延伸倍率は、面積倍率で、1.2乃至20倍、特に1.3乃至16倍の範囲が適当である。 【0050】 本発明に用いる包装容器の形状は、例えばボトル、カップ、チューブ、プラスチック缶等の任意のものであってよい。また、この容器は、環状オレフィン系共重合体の単層の容器であっても、また、外表面が環状オレフィン系共重合体で形成されている限り、他の熱可塑性樹脂との積層容器であってもよく、積層される他の熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、ピロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等あるいはそれらの混合物を挙げることができる。 【0051】 本発明では、容器胴部の外表面の薄層の環状オレフィン系共重合体を、脂肪族石油留出物(CAS No.8052-41-3)と石油ベースオイル(CASNo.64742-65-0)との混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、配向緩和させる。 【0052】 配向或いは配向緩和の程度の測定に使用する石油混合物は、米国カリフォルニア州サンヂェゴ市のWD-40カンパニーから、WD-40(登録商標)の商品名で入手しうる。同社のデータシートによると、この商品は、成分として、 脂肪族石油留出物 CAS No.8052-41-3 70% 石油ベースオイル CAS No.64742-65-0 >20% 無害性成分 <10% を含有するものであり、物性として 沸点:300°F(149℃)最小 蒸気密度(空気=1):1より大 水溶性:不溶 比重(水=1):0.800(70°F(21℃)) 揮発分(体積):74% を有するものである。 【0053】 また、CAS(ケミカル・アブストラクツ・サービス)によると、上記8052-41-3は、ナフサ・ソルベントの名称で呼ばれ、鼻につく臭いや異臭のない無色の精製石油蒸留物で、約149℃乃至204.5℃の範囲で沸騰するものとして定義されている。また、上記64742-65-0は、ソルベント・デワックスド・ヘビー・パラフィニック・ディスティレートの名称で呼ばれ、石油留分の溶媒結晶化によりノーマル・パラフィンを除去することにより得られた炭化水素の複合組み合わせで、主としてC20乃至C50の範囲の炭素数を有する炭化水素を主体とし、40℃で19センチストークス以上の粘度を有するオイルとして定義されている。 【0054】 上記石油混合物による環状オレフィン系共重合体への塗布試験及びヘーズ値の測定は、後述する実施例記載の方法により行われる。 【0055】 本発明において、環状オレフィン系共重合体の配向緩和は、外表面の薄層について行えば十分であり、具体的には、5乃至500μm、好適には10乃至300μmの範囲にわたって行うのがよい。即ち、上記範囲を下回ると、表面全体にわたって均一な分子配向緩和を行うことが困難となる傾向があり、一方上記範囲を上回ると、分子配向のロスの程度が大きくなって、耐衝撃性が低下する傾向がある。 【0056】 本発明において、上記の要件を満足するように配向緩和を行う手段は、特に限定されず、延伸成形容器の製造段階或いは延伸成形容器の製造後の任意の段階で行うことができる。 【0057】 例えば、製造上有利で簡単な方法は、内部では分子配向が保持され且つ外表面では分子配向が緩和されるような温度分布を付与して、延伸成形を行う方法である。即ち、延伸ブロー成形すべきプリフォーム或いは延伸シート成形すべきシートの容器外表面となるべき表面部分のみを、延伸温度(分子配向が生じる温度)よりも高温に維持し、延伸成形を行い、外表面の薄層に配向が生じないようにする方法である。このための加熱温度は、環状オレフィン系共重合体のガラス転移点によっても相違するが、一般に延伸成形温度(To)を基準として、To+10℃以上、特にTo+15℃以上の温度範囲が適当である。表面部分のみの選択的加熱は、プリフォーム或いはシートを延伸成形温度に加熱した後、胴部外表面に赤外線を照射して、上記温度に外表面を加熱するか、或いはプリフォーム全体を上記温度範囲に加熱し、延伸成形に際して内部を冷却しつつ延伸成形を行えばよい。 【0058】 また、別法として、延伸ブロー成形或いは延伸シート成形に使用する金型の内面温度を上記配向緩和温度に維持し、成形されつつある容器の外表面が金型と接触して、配向が緩和されるようにしてもよい。この場合、容器の冷却は、容器の内部に冷却用流体を吹き込むことにより、行うことができる。また、配向緩和層の厚みは、金型の温度や金型と容器外表面との接触時間を調節することにより制御できる。 【0059】 延伸成形と容器外表面の配向緩和は、上記のように一段法で行うこともできるし、また、二段法で行うこともできる。二段法の場合、一段目の金型内で延伸成形のみを行い、二段目の金型内で配向緩和を行ってもよく、また、一段目の金型内で延伸成形を行った後、金型外で外表面の加熱による配向緩和を行い、二段目の金型内で最終ブロー成形を行ってもよい。 【0060】 また、延伸成形後の容器に対して、火炎処理等による配向緩和処理を行うこともできる。 【0061】 配向緩和処理の熱源としては、火炎による加熱、赤外線加熱、誘電加熱等の任意の熱源が使用されるが、操作の簡単さ及び短時間の内に効率よく加熱できること等から火炎処理が最も適当である。 【0062】 火炎処理は、完全な還元炎の状態で行うことが、溶融パリソンの燃焼や酸化を引き起こさない点で重要であり、燃料としては都市ガス、プロパンガス、液化天然ガス、液化石油ガス等の任意の燃料ガスが使用される。本発明では、バーナ温度を一般に1200乃至1400℃の温度とし、バーナー先端と容器表面との間隔を20乃至40mm程度とし、胴部全面がバーナー先端と接触するように、加熱を行えば満足すべき結果が得られる。 【0063】 また、延伸成形後の環状オレフィン系共重合体性容器に、プラズマ処理等を行い、外表面の薄層の配向緩和を行ってもよい。 【0064】 プラズマ処理に使用する装置としては、高周波放電、マイクロ波放電或いはグロー放電等のプラズマ放電を生じる装置であれば任意のものでよく、処理雰囲気としては、空気、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム等が単独又は2種以上組合せで使用される。雰囲気圧力は、一般に0.1乃至10Torr、特に0.5乃至5Torrの範囲にあることが好ましい。処理エネルギーは20乃至300W、特に50乃至200Wの範囲が適当であり、処理時間は1乃至600秒、特に5乃至300秒が好ましい。 【0065】 【実施例】 本発明を以下の例により具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。 以下の例において、試験は次の通り行った。 【0066】 ▲1▼分子配向度(ヘーズ値)の測定 測定試料の表面に、石油混合物WD-40(登録商標)を、表面積当たりの塗布量が0.2mg/cm2となるように均一に塗布し、23℃、RH50%の雰囲気に10分間静置した。 塗布後の試料について、SMカラーコンピュータ(スガ試験機(株)製)を用いて、ヘーズ値を測定した。 【0067】 ▲2▼指紋付着による表面汚れの測定 試料容器を数分間手で触った後、指紋付着の有無を観察した。また、SMカラーコンピュータ(スガ試験機(株)製)を用いて、ヘーズ値を測定した。表面汚れの程度を次の基準で評価した。 A 指紋付着による白い濁りなし(ヘーズ値20%以下) B 指紋付着により白い濁りが生じた(ヘーズ値30%以上) 【0068】 ▲3▼落下試験 JIS Z 0202に準拠した。具体的には、容器に水を満たし、これをコンクリート床面に高さ120cmから落下させて行った。落下は、10個の水充填容器について行い、室温の条件で容器1個に対して垂直落下10回行った後、水平落下10回行った。評価基準は次の通りである。 A 破損容器なし。 B 破損容器が落下試験に供した全容器の80%以上。 【0069】 ▲4▼緩和状態の測定方法 環状オレフィン系共重合体から成る容器の底部から20mmの位置から10mm角にサンプルを切り出し、微小X線回折装置(PSPC-150C)(理学電気(株)製)用いて緩和状態の測定を行った。サンプルの向きは、容器の高さ方向を測定面の高さ方向にしてセットした。 測定条件は管電圧30kV、管電流100mA、測定時間200秒の条件で行った。測定後、7.241度から23.241度の範囲で積分強度計算を行い、半価幅を求めた。 【0070】 比較例1 環状オレフィン系共重合体APL6508T(三井石油化学(株)製)を、インジェクションブロー成形機(ISK881-F85、Kerplas社製)を使用して、140℃の温度で、目付15.2gの5K規格錠剤瓶に溶融ブロー成形した。 得られた容器についてヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は8.1%であった。 次に、得られた容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は15.1%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Aで有り、耐汚染性には優れていることが分かった。次に、落下試験の結果は評価Bであり、耐衝撃性に劣ることが分かった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0071】 比較例2 環状オレフィン系共重合体APL6508T(三井石油化学(株)製)を、二軸延伸ブロー成形機(日精ASB-50H、日精ASB機械工業(株)製)を使用して、温度100℃、延伸倍率(面積倍率)4~5倍の条件で、目付10.5gの5K規格錠剤瓶に延伸成形した。この環状オレフィン系共重合体の適性延伸成形温度は、95乃至105℃であり、95℃よりも低い温度では底部に白化を生じ、一方105℃よりも高い温度では配向緩和により耐衝撃性低下を生じた。 得られた容器についてヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は3.9%であった。得られた容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は83.7%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Bであり、耐汚染性に劣ることが分かった。次に、落下試験の結果は評価Aであり、耐衝撃性には優れていることが分かった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0072】 実施例1 環状オレフィン系共重合体APL6508T(三井石油化学(株)製)を、二軸延伸ブロー成形機(日精ASB-50H、日精ASB機械工業(株)製)を使用して、温度100℃、延伸倍率(面積倍率)4~5倍の条件で、目付10.5gの5K規格錠剤瓶に延伸成形した。この延伸成形容器の胴部を、ガスバーナーの還元炎を用いて、バーナーと容器胴部の間隔20mmで、容器を6cm/minの早さで通過させ、加熱処理した。このとき試料容器にカプトンテープにより熱伝対を密着させて、加熱処理時の容器表面温度を測定したところ表面温度は158℃であった。処理後の容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は14.5%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Aであり、耐汚染性には優れていることが分かった。次に、落下試験の結果は評価Aであり、耐衝撃性には優れていることが分かった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0073】 実施例2 バーナーと容器胴部の間隔を30mmとした以外は実施例1と同様にして行った。加熱処理時の容器表面温度は144℃であった。処理後の容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は18.7%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Aであり、耐汚染性には優れていることが分かった。次に、落下試験の結果は評価Aであり、耐衝撃性に優れていることが分かった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0074】 比較例3 容器の通過速度を3cm/minとした以外は実施例1と同様にして行った。加熱処理時の容器表面温度は246℃であった。容器の変形は見られたが、処理後の容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は18.4%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Aであり、耐汚染性には優れていることが分かった。しかし、落下試験の結果は評価Bであり、耐衝撃性に劣ることが分かった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0075】 比較例4 バーナーと容器胴部の間隔を50mmとした以外は実施例1と同様にして行った。加熱処理時の容器表面温度は68℃であった。処理後の容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は81.7%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Bであり、耐汚染性には劣ることが分かった。しかし、落下試験の結果は評価Aであった。 また、前記試験▲4▼を行った。これらの結果を表1に示す。 【0076】 実施例3 環状オレフィン系共重合体APL6508T(三井石油化学(株)製)を、二軸延伸ブロー成形機(日精ASB-50H、日精ASB機械工業(株)製)を使用して、プリフォーム温度115℃、金型の胴部対応部の表面温度40℃、延伸倍率(面積倍率)4~5倍の条件で、目付10.5gの5K規格錠剤瓶に延伸成形した。尚、成形後の錠剤瓶は金型内に3.5秒間保持し、瓶内部に冷風を吹き込みつつ、内外の温度分布による分子配向付与と分子配向緩和とを行った。 得られた容器について、石油混合物WD-40の塗布及びヘーズ値の測定を行ったところ、ヘーズ値は18%であった。また、指紋付着による表面汚れは評価Aであり、耐汚染性には優れていることが分かった。次に、落下試験の結果は評価Aであり、耐衝撃性にも優れていることが分かった。 【0077】 【表1】 ![]() 【0078】 【発明の効果】 本発明によれば、特定の石油混合物で塗布試験したときのヘーズ値が20%以内となるように、外表面の薄層の環状オレフィン系共重合体を、配向緩和させることにより、外表面の指紋付着による汚れの発生を完全に防止することができる。しかも、分子配向緩和されるのが表面の薄層に限られ、器壁の大部分の環状オレフィン系共重合体では、分子配向が残留しているので、耐衝撃性が実質上低下することなしに維持されているという利点も得られるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 環状オレフィン系共重合体の延伸ブロー成形ボトルのX線回折像である。 【図2】 環状オレフィン系共重合体の溶融ブロー成形ボトルのX線回折像である。 【図3】 環状オレフィン系共重合体の延伸ブロー成形ボトルの表面にフレーム処理を施したもののX線回折像である。 【図4】 本発明の容器の一例を示す側面図である。 【図5】 図4の容器の断面構造を示す拡大断面図である。 【符号の説明】 1 容器 2 胴部 3 閉塞底部 4 首部 5 キャップ係合用ネジ 6 容器壁 7 表面分子配向緩和層 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-09-06 |
出願番号 | 特願平8-344093 |
審決分類 |
P
1
651・
853-
YA
(B65D)
P 1 651・ 121- YA (B65D) P 1 651・ 851- YA (B65D) P 1 651・ 536- YA (B65D) P 1 651・ 161- YA (B65D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田村 嘉章 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
渡邊 豊英 中西 一友 |
登録日 | 2002-11-01 |
登録番号 | 特許第3365236号(P3365236) |
権利者 | 東洋製罐株式会社 |
発明の名称 | 環状オレフィン系共重合体から成る延伸成形容器 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 西川 繁明 |
代理人 | 小野 尚純 |