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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1135480 |
審判番号 | 不服2003-20012 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-02-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-14 |
確定日 | 2006-04-12 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第198183号「通信機能を有する遊技機用セキュリティチップ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月13日出願公開、特開平10- 40099〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成8年7月26日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年7月12日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「 【請求項1】 クロック発生回路10に基づきタイミングをとる遊技機制御用中央処理装置(CPU)11と、 該CPU11とバス回路を介して接続されたワーク用の内蔵RAM13及びユーザープログラム内蔵メモリー14と、 各チップに付与された固有の識別番号を記憶するID番号記憶回路と、 前記ID番号記憶回路15と接続された暗号化回路と復号化回路とを有する外部通信制御回路18と、 外部通信制御回路18が、前記外部通信制御回路18の暗号化回路と復号化回路と同一のものが搭載された外部管理装置22と通信を行うための外部通信インターフェース回路20とからなり、 前記外部通信制御回路18が外部管理装置22からの識別番号の発信を指示する暗号化されたコマンドを復号化を行いその識別番号発信の指示に従いID番号記憶回路15に書き込まれたチップ固有の識別番号を暗号化して外部管理装置22に送信する機能を有することを特徴とする通信機能を有する遊技機用セキュリティチップ。」 2.引用例 これに対し、当審において拒絶の理由で通知した特開平4-332582号公報(以下、引用例1という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 (1)「【0002】 【従来の技術】 従来より、パチンコ,スロットルマシーン等の遊技機器には、遊技機器本体の動作を制御する遊技機器制御装置が設けられており、この遊技機器制御装置は、電子回路をパッケージ内に収納した1チップの集積回路から構成されている。 【0003】 こうした遊技機器を扱うホールでは、複数台の遊技機器をホール管理用のホストコンピュータで一括して監視したい要求がある。各遊技機器に設けられた遊技機器制御装置とホストコンピュータとを回線で結んで、両者間でデータのやりとりがなされる構成をとること自体は技術的に容易である。」【0002】【0003】段落 (2)「 【0011】 図1に示すように、パチンコ機制御装置1は、コントローラである集積回路3を中心として、書き込みおよび消去可能なEPROM(Erasable PROM )5を備え、両者は互いにシステムバス7を介して接続されている。このパチンコ機制御装置1は、遊技場内に設置されたホール管理用のホストコンピュータ9と、LAN(Local Area Network )を介して接続されている。 【0012】 集積回路3は、セキュリティチェック機能を内蔵したC-MOSタイプの8bitマイクロ・コントローラであり、CPU(central processing unit )11を中心に構成されている。CPU11は、コモンバス12を介して、RAM(random access memory)13、I/Oインターフェース15、シリアルI/Oインターフェース17、後述するセキュリティチェックを行なうセキュリティチェック回路19、タイマ21等に接続されている。なお、I/Oインターフェース15には、システムバス7の他に、パチンコ機本体の入賞スイッチ23,デジタルスタートスイッチ25等に直結された波形整形回路27や、パチンコ機本体の当りランプ29,センター役物のデジタル部分でLEDの集合である表示装置31,大入賞口を開口させるソレノイド33等に直結されたドライバ35が接続されている。シリアルI/Oインターフェース(以下単に、SIOと呼ぶ)17には、ホストコンピュータ9がLANを介して接続されている。 【0013】 EPROM5には、集積回路3で演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや各種データが予め記録されている。なお、制御プログラムには、ホストコンピュータ9とLANを介してデータのやりとりを行なうのに必要なシリアルI/Oインターフェース・プログラムP1が含まれる。各種データとは、センター役物のデジタル(表示装置)に表示する図柄のデータを始めとして、大当たりを決める乱数の発生のための乱数テーブル等のデータである。また、EPROM5には、所定の手法で書き込まれる識別コード(セキュリティコード)CDが記憶されており、このセキュリティコードCDを用いて後述するセキュリティチェックがなされる。」【0011】~【0013】段落 (3)「 【0023】 ステップ230で、信号入力があると判定されると、ホストコンピュータ9から読み出しコードを、SIO17を介して受信する処理を行なう(ステップ240)。続いて、EPROM5に書き込まれたセキュリティコードCDを利用して、読出コードに対応した応答コードを生成する(ステップ250)。この生成処理は、例えば、読出コードに対してセキュリティコードCDを用いた演算を行なった結果を応答コードとして生成するものなどを考えることができる。続いて、その生成した応答コードをSIO17を介してホストコンピュータ9に送信する処理を行なう(ステップ260)。 【0024】 これに対してホストコンピュータ9は、信号入力があるか否かを判定し(ステップ270)、信号入力があると判定されると、次いで、パチンコ機制御装置1から送信された応答コードを受信する処理を行なう(ステップ280)。その後、その受信した応答コードが正当なコードであるか否かを判定し(ステップ290)、ここで、正当なコードであると判定されると、パチンコ機制御装置1に正当に受け付けた旨の受付指示信号を送信するとともに(ステップ300)、パチンコ機制御装置1に要求するデータの種別(以下単に、要求種別と呼ぶ)を送信する(ステップ310)。 【0025】 なお、ステップ210~290によるセキュリティコードCDを用いた読出コードと応答コードとのやり取りは、パチンコ機制御装置1と接続される外部の制御処理装置(ホストコンピュータ9)が正当なものであるか否かを判定するセキュリティチェック機能を果たすが、こうした機能を特に必要としない場合には、ステップ210~290の処理を省略するように構成してもよい。」【0023】~【0025】段落 以上の記載より、引用例1には、以下の発明が記載されている。 パチンコ機制御装置のコントローラであるCPU11と、 該CPU11とコモンバス12を介して接続されたRAM13と、 ホストコンピュータ9との通信を司るシリアルI/Oインターフェース(SIO)17とからなる集積回路3と、 I/Oインターフェースを介して接続された識別コードと制御プログラムを内蔵したEPROM5とを有し、 該SIO17がホストコンピュータからの読出しコードを受信し、前記EPROMの識別コードを利用して、前記読出しコードに対応した応答コードを作成し、該応答コードをホストコンピュータに送信する通信機能を有するパチンコ機制御装置 また、当審において拒絶の理由で通知した特開昭63-37783号公報(以下、引用例2という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 (4)「〔従来の技術〕 テレビ受像機やパーソナルコンピュータ等の機器には大抵品質保証がついており、ユーザの正常な使用状態の下で故障が生じた場合には、保証規定にしたがってメーカが責任をとり故障箇所を修理するようになっている。 したがって、そのような機器の各々を識別する意味で、各機器筐体の片隅等に製造番号(シリアルNO.とも称される)が形名(製品名とも称される)と共にラベル表示される。これにより、メーカのほうでは製造番号を基に各機器製品の製造ラインや流通経路、購入先等を管理できる。」(公報1頁右下欄2行~13行) (5)「なお、製造番号の改ざんは、ディスカウント製品以外にも、盗難品やその他の不正な方法で取り引きされる機器製品に対しても行われている。」(公報2頁右上欄14行~16行) (6)「〔問題点を解決するための手段〕 上記目的を達成する本発明の構成は、当該機器の製造番号をデータとして記憶する不揮発性メモリと;該製造番号の画面表示を指示するためのキー手段と;該キー手段の操作に応答して不揮発性メモリから製造番号データを読み出して製造番号を画面表示する手段とを具備することを特徴とする。」(公報2頁左下欄1行~8行) (7)「さて、本実施例では、従来ならば未使用領域とされていたアドレス「11」~「17」の上位4ビットに製造番号の一位から百万位までの各桁の数字を示すデータがそれぞれ格納される。」(公報3頁右上欄16行~19行) (8)「次に第4図のフローチャートにつき本実施例の動作を説明する。 (中略) そして、製造番号設定モード・キー70が押されたのであれば、製造番号設定モードに入る(ステップ(1))。 (中略) そうであればマイクロコンピュータ16はEAROM18のアドレス「11」~「17」をアクセスして各上位4ビットの製造番号データを読み出しキャラクタ発生器20にそのデータの示す製造番号の映像信号を発生させ、この映像信号は切替回路30を介して32に送られ、テレビ画面には例えば第5図のように製造番号(1100385)が非常にわかりやすく表示される(ステップ(3))。」(公報3頁左下欄3行~右下欄4行) (9)「また、EAROMを内蔵したマイクロコンピュータも開発されているので、そのようなICまたはLSIチップを使用すれば、より一層改ざんが難しくなる。」(公報4頁右上欄1行~4行) 3.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、前者という)と引用例1に記載された発明(以下、後者という)とを比較すると、 CPUがクロックに基づいて動作すること、RAMがプログラム実行時にワークエリアを提供することは技術常識であるから、 後者の「CPU11」「コモンバス12」「RAM13」「識別コード」「ホストコンピュータ9」「読出しコード」は、それぞれ、前者の「遊技機制御用中央処理装置(CPU)11」「バス回路」「ワーク用の内蔵RAM13」「識別番号」「外部管理装置22」「識別番号発信の指示」に相当する。 後者の「制御プログラムを内蔵したEPROM」は、前者の「ユーザープログラム内蔵メモリー14」に対応し、後者の「識別コードを内蔵したEPROM」は、パチンコ機制御装置の不正をチェックするためものであり、前者の「識別番号を記憶するID番号記憶回路」に対応するものである。 また、後者の「シリアルI/Oインターフェース」は、前者の「外部通信制御回路」及び「外部通信インターフェース回路」に対応するものである。 更に、後者の「パチンコ機制御装置」は、セキュリティチェック回路を内蔵している集積回路を中核とした制御装置であるから、セキュリティ機能を有する遊技機用制御装置である点で前者のセキュリティチップと対応している。 してみると、両者は次の点で一致している。 クロック発生回路に基づきタイミングをとる遊技機制御用中央処理装置(CPU)と、 該CPUとバス回路を介して接続されたワーク用の内蔵RAMと、 ユーザープログラム内蔵メモリーと、 識別番号を記憶するID番号記憶回路と、 外部管理装置と通信を行うための外部通信回路とからなり、 外部管理装置からの識別番号発信の指示に従いID番号記憶回路に書き込まれた識別番号に相当するデータを外部管理装置に送信する通信機能を有する集積回路からなるセキュリティ機能を有する遊技機用制御装置 一方、両者は以下の点で相違している。 相違点 (1)外部通信回路の構成が、前者においては暗号化回路と復号化回路及び外部通信インターフェース回路を有する外部通信制御回路であり、暗号化されたコマンドの複合化、識別番号の暗号化を行うものであるのに対し、後者においてはシリアルI/Oインターフェースが暗号通信機能を有するものではない点 (2)外部管理装置からの指示により送信するデータが、前者ではID番号記憶回路に書き込まれたチップ固有の識別番号であるのに対し、後者では、EPROMに記憶された識別コードを利用して作成される応答コードである点 (3)前者ではユーザープログラム内蔵メモリーとID番号記憶回路がセキュリティチップに内蔵されているのに対し、後者では集積回路に外付けされている点 4.相違点についての検討 相違点(1)について 装置間で通信を行う場合に、情報の秘匿性を高めるために情報を暗号化することは必要に応じて行われることであり、暗号化通信のための構成として、双方の装置に同一機能を有する暗号化回路と復号化回路を設けることは普通の構成にすぎない。また、通信機能を実現する際に、通信機能をどのように機能分割するかは単なる設計事項にすぎないから、外部通信インターフェース回路を設けることも格別のことということはできない。 請求人は、平成16年7月12日付の意見書で、 「通常のネットワーク通信における暗号化の目的は、通信中に第三者によって通信内容が盗聴又は盗み取りされるのを防ぐ目的で利用されている。 これに対して本発明にかかる暗号化通信を行う為にセキュリティチップと外部管理装置とに「暗号化回路と復号化回路」を設置する目的は、それ以上に不正チップを検査する目的に利用している点に大きな差異を有する。」と主張している。 しかしながら、回路構成を複雑にすれば回路の偽造がしにくくなること自体は自明のことである。そして、引用例1の34段落には「本実施例のパチンコ機制御装置1は、パチンコ機本体の動作状況を表わす各種データを、EPROM5に記憶されたSIO・プログラムP1に従ってSIO17を介してホストコンピュータ9に送信する構成で、しかも、そのEPROM5が予め規定された正当なものであることを、セキュリティチェック回路19により判定する構成となっている。このため、そのSIO・プログラムP1に従うデータしかホストコンピュータ9に転送することができず、しかも、EPROM5を不正なものに取り替えることもできない。」と記載され、特定のSIO・プログラムに従ってホストコンピュータに送信する構成とすることで偽造防止に役立つことが示唆されている。従って、「暗号化回路と複合化回路」を偽造防止の目的で設置することも格別のことではない。 相違点(2)について 電子機器等の保守、流通管理等の目的で製品に製造番号を付すことが従来より行われており、この製造番号をCPU内の不揮発性メモリに格納し、外部からの指示により表示することは、引用例2に示されるように公知のことである。ここで、製造番号は製品を特定するためのものであり、製品に固有の番号であるから、前者におけるチップ固有の識別番号と言って良いものである。従って、前者において製品管理(偽造品管理を含む)の目的でチップに固有の識別番号を付し、チップ固有の識別番号を外部からの指示で読み出せるようにすることは容易に為し得ることである。なお、コンピュータの分野ではコンピュータに対する指示がコマンドという形式をとることは周知である。 また、後者では、識別番号を直接送信するのではなく、読出しコードに対して識別番号を用いて演算を施した応答コードを返送し、ホストコンピュータ側で応答コードが正当なものかどうかを判定している。このことは読出しコードと演算手法が既知であるホストコンピュータにとっては、識別番号を判定していることに他ならない。見方を変えれば、議別番号が暗号化されて送信されていることになり、このことは相違点(1)においてデータの通信を暗号化することが遊技機関連装置において通常に行われていることを示すものでもある。 相違点3について 引用例1の38段落に「また、前記実施例のパチンコ機制御装置1は、SIO・プログラムP1をEPROM5に格納するように構成されていたが、これに替えて、SIO・プログラムP1をセキュリティチェック回路19に内蔵されたメモリに格納するように構成してもよい。」と記載されているから、プログラム等を集積回路内の記憶手段に格納することは必要に応じて為されることにすぎないものである。 また、引用例2の引用箇所(9)には「また、EAROMを内蔵したマイクロコンピュータも開発されているので、そのようなICまたはLSIチップを使用すれば、より一層改ざんが難しくなる。」と記載されており、メモリを内蔵したLSIチップにすれば改ざんが難しくなることは技術常識に属することである。 一般に集積回路によって装置を構成する場合、ワンチップにどの程度の機能を盛り込むかは、組み立てコストや後の設計変更、生産個数などの様々な要素を考慮して決定する事項である。そして、前述のように、メモリを内蔵したLSI化が改ざん防止に役立つことは当業者に周知の技術常識であるから、ユーザープログラム内蔵メモリーとID番号記憶回路をチップ内蔵とすることを格別のことということはできない。 5.むすび したがって、請求項1に係る発明は、引用例1、2に記載された発明及び当該分野の周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-14 |
結審通知日 | 2005-03-15 |
審決日 | 2005-03-29 |
出願番号 | 特願平8-198183 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 漆原 孝治 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
橋本 正弘 松浦 功 |
発明の名称 | 通信機能を有する遊技機用セキュリティチップ |
代理人 | 押本 泰彦 |