• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1139393
異議申立番号 異議2003-70463  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-12-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-19 
確定日 2006-04-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3315993号「使い捨てパンツ」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3315993号の請求項1、3ないし7に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第3315993号発明についての出願は、平成3年6月3日に特許出願され、平成14年6月7日に特許権の設定登録がなされ、その後、秋元義雄より、請求項1ないし7に係る発明についての特許に対し特許異議の申立てがなされ、当審において取消しの理由を通知したところ、その指定期間内の平成16年9月16日に意見書の提出とともに、訂正請求がなされた。

〔2〕訂正請求について
1 訂正請求の内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第3315993号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり、訂正事項は以下のとおりである。

訂正事項1
明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】 上記立体カフスは、弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨てパンツ。」
を、
「【請求項2】 上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、
上記立体カフスは、上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨てパンツ。」
と訂正する。

訂正事項2
明細書の特許請求の範囲の請求項7の記載
「【請求項7】 上記レッグ弾性部材はその一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の使い捨てパンツ。」
を、
「【請求項7】 上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出されており、
上記レッグ弾性部材は、その一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の使い捨てパンツ。」
と訂正する。

訂正事項3
明細書の段落【0017】における「尚、伸縮性の不織布を用いた場合には、……ウエスト弾性部材8A、8Bを省略することもできる。」との記載を削除する。

2 訂正の適否
上記訂正事項1は、訂正前の請求項2に記載されていた「立体カフス」を、「上記立体カフスは、固定部分及び自由部分を有し、上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており」と、立体カフスの構成を限定し、訂正前の請求項2に記載されていた「弾性部材が幅方向に張設され」を、「上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設され」と、弾性部材が幅方向に張設される箇所を限定するものである。上記訂正事項2は、訂正前の請求項7に記載されていた「立体カフス」を、「上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出しており」と、立体カフスの構成を限定するものであり、これらの限定事項は、明細書の段落【0013】ないし【0015】に記載されている。
したがって、上記訂正事項1及び2の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされるものである。
上記訂正事項3の訂正は、請求項1の記載に関連する発明の詳細な説明における不明瞭な記載を削除するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条1項ただし書及び2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

〔3〕特許異議の申立てについて
1 異議申立ての理由の概要
異議申立人は、甲第1号証ないし甲第5号証を提出して、請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知慣用技術(甲第3号証ないし甲第5号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1ないし7に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。

甲第1号証:特開平3-82467号公報
甲第2号証:特開昭64-26701号公報
甲第3号証:実公昭39-19633号公報
甲第4号証:実願昭55-107567号(実開昭57-34509号) のマイクロフィルム
甲第5号証:米国特許第4,936,840号明細書

2 本件発明
上記のように訂正が認められたので、本件請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】 液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する本体を備え、該本体は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部と、背側に位置する背側部とに区分されており、上記腹側部及び上記背側部それぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、
上記ウエスト開口部に隣接してウエスト弾性部材が該開口部全周にわたって配置されており、且つ、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、
上記吸収体の長手方向両端縁から幅方向外方に延出する、上記腹側部及び上記背側部の左右一対のサイドフラップの少なくとも長手方向中央部にギャザーを形成するサイド弾性部材が配置されており、
また、一対のレッグ部のサイドフラップには、一対の上記レッグ開口部それぞれにギャザーを形成するレッグ弾性部材を備えており、該レッグ弾性部材は、少なくとも2本配されており、それぞれ一方の上記レッグ部から他方の上記レッグ部に亘って上記吸収体と重ねられた部分を有して配されていることを特徴とする使い捨てパンツ。
【請求項2】 上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、
上記立体カフスは、上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨てパンツ。
【請求項3】 上記ウエスト弾性部材は、複数本の線状弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の使い捨てパンツ。
【請求項4】 上記立体カフスは、上記バックシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の使い捨てパンツ。
【請求項5】 上記立体カフスは、上記トップシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の使い捨てパンツ。
【請求項6】 上記立体カフスは全周にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の使い捨てパンツ。
【請求項7】 上記立体カフスは、固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出されており、
上記レッグ弾性部材は、その一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の使い捨てパンツ。」

3 引用例の記載事項
(1)当審で通知した取消理由に引用した、本件特許に係る出願前に国内において頒布された、特開平3-82467号公報(異議申立人が提出した甲第1号証、以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。
・記載1-1(1頁右下欄4ないし6行)
「本発明は、使い捨て着用物品に関し、さらに詳しくは、オムツ・失禁パンツ・トレニングパンツなどの着用物品に関する。」
・記載1-2(特許請求の範囲第1項)
「(1)トップップシートと、バックシートと、該両シートの前後区域間に位置する股下区域の両側に形成した脚周りに沿って取り付けた弾性部材とを有する使い捨て着用物品において、前記両脚周り弾性部材を第1及び第2部材で構成し、該第1及び第2部材の中央部分を前記股下区域のほぼ中央部に位置させるとともに、該第1部材の両側部分を前記両脚周りのほぼ前半部分にかつ該第2部分の両側部分を前記脚周りのほぼ後半部分にそれぞれ位置させ、……特徴とする前記着用物品。」
・記載1-3(2頁左下欄1行ないし右下欄2行)
「第1図は、着用物品1の斜視図を示す。着用物品1は、脚周り2と、腰(胴)周り3とを有し、それぞれに弾性部材4,5を取り付けてある。第2図は、物品1の分解斜視図を示す。物品1は、伸縮・透水性トップシート6と、伸縮・透水性バックシート7と、マットまたはシート状の吸水性コア8と、前記脚周りおよび腰周り弾性部材4,5とから構成してある。トップおよびバックシート6,7の前後区域10,11の間に位置する股下区域12の両側縁には前記脚周り2用の凹欠縁13,14を形成してある。図示してないが、バックシート7の少なくとも中央域にトップおよびバックシート6,7よりも伸縮弾性強力が強い不透水性プラスチックフィルムを……接合してもよい。……脚周り弾性部材4は、第1部材4Aと、第2部材4Bとから構成してある。」
・記載1-4(3頁左上欄7ないし10行)
「こうして構成した積層体は、その中央部で縦方向に二つに折り重ねてその両側縁をヒートシール手段で接合することで、第1図に示す物品1に構成してある。」
・記載1-5(3頁右上欄6ないし9行)
「弾性部材4,5は1本以上の糸状または帯状ゴムまたはプラスチックフィルムをそれぞれ用いることができる。」
そして、第2図によれば、パンツ型の使い捨てパンツが、吸収性コアの長手方向両端縁から幅方向外方に延出する、前区域及び後区域の左右一対のサイドフラップを有することは、当業者に明らかである。
また、第1図には、脚周り弾性部材により脚周り開口部にギャザーが形成された状態が示されている。
以上の記載並びに第1図及び第2図によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「透水性トップシートと、バックシートと、これら両シート間に配置される吸収性コアとを有する本体を備え、該本体は着用時に着用者の腹側に位置する前区域と、背側に位置する後区域とに区分されており、前区域及び後区域それぞれの両側縁を接合して腰周り開口部と一対の脚周り開口部とを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、腰周り開口部に隣接して腰周り弾性部材が開口部全周にわたって配置されており、一対の脚周り部のサイドフラップには、一対の脚周り開口部それぞれにギャザーを形成する脚周り弾性部材を備えており、該脚周り弾性部材は、第1と第2の2本配されており、それぞれの中央部分が股下区域のほぼ中央部に位置し、第1の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ前半部分に、第2の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ後半部分に位置するように配されている使い捨てパンツ」

(2)当審で通知した取消理由に引用した、本件特許に係る出願前に国内において頒布された、特開昭64-26701号公報(異議申立人が提出した甲第2号証、以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。
・記載2-1(3頁右上欄5ないし9行)
「本発明は、使い捨てオムツ、さらに詳しくは、ウエストバンド部に通気防液性構造を備え、該バンド部においてオムツの内外部の通気をはかると同時に、該バンド部からの体液の漏れを防止するようにした該オムツに関する。」
・記載2-2(4頁左上欄9行ないし右上欄18行)
「第1および第2図に示すように、オムツは、透液性トップシート1と、不透液性バックシート2と、該両シートの間に吸収性コア3と、……背側における横対向側に備えるテープファスナー6とを含んでいる。……本発明の特徴は、コア3の縦対向縁から外方に延出して相会する該両シート1,2の部分で形成される、前側および背側における第1のウエストフラップ7a,7bの上面に伸縮弾性で通気防液性の第2のウエストフラップ8a,8bを備え、各第1のウエストフラップ7a,7bと各第2のウエストフラップ8a,8bとの間に内方へ開口するポケット9が形成されていることにある。第3図ないし第5図に示すように、第2のウエストフラップ8a,8bは、……その横方向に沿う内縁10で包まれるとともにその横方向に間欠的に接着されている伸縮弾性部材11を備え、これによってウエスト回り方向に伸縮弾性化されている。したがって、第2のウエストフラップ8a,8bは、伸縮弾性部材11が収縮しているときには、その収縮程度によって上向きに傾斜ないし起立し、ポケット9の開口が大きくなって充分に機能することができる。」
・記載2-3(4頁左下欄10ないし13行)
「第2のウエストフラップ8a,8bの横方向の長さは、第1のウエストフラップ7a,7bの横対向縁15の近傍まで延長していてもよい。」
・記載2-4(特許請求の範囲第17項)
「(17)前側および背側における前記各第2のウエストフラップは、前記第1のウエストフラップの外縁から外方に延出する前記トップシート部分が内方に折り返され、……特許請求の範囲第12項記載のオムツ。」
・記載2-5(4頁右下欄16ないし19行)
「第7図においては、第2のウエストフラップ8a,8bは、第1のウエストフラップ7a,7bの横方向に沿う外縁12から外方に延出するトップシート2の部分内方に折り返され、」
・記載2-6(4頁右下欄8ないし12行)
「第6図においては、第2のウエストフラップ8a,8bは、第1ウエストフラップ7a,7bと別の素材で形成され、その横方向に沿う外縁13aが第1のウエストフラップ7a,7bに固定され、」
以上の記載及び図面によれば、引用例2には、「ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、コア3の縦対向縁から外方に延出する透液性トップシート1と、不透液性バックシート2で形成される、前側および背側における第1のウエストフラップ7a,7bの上面に伸縮弾性で通気防液性の第2のウエストフラップ8a,8bを備え、第2のウエストフラップ8a,8bは、第1のウエストフラップの外縁から外方に延出するトップシート部分が内方に折り返されて形成され、横方向に伸縮弾性部材11を備え、伸縮弾性部材11が収縮して第1のウエストフラップ7a,7bと第2のウエストフラップ8a,8bとの間に内方へ開口するポケット9が形成された、使い捨てオムツ」
の発明が記載されていると認められる。

(3)当審で通知した取消理由に引用した、本件特許に係る出願前に米国において頒布された、米国特許第4,936,840号明細書(異議申立人が提出した甲第5号証、以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載(当審翻訳)がある。
・記載3-1(4欄45ないし49行)
「Fig.2を参照すると、本発明によって、エラストマーの外カバーを備えた使い捨てオムツのような、10で示された解剖学的に体にフィットし、一般に自動調整の使い捨て吸収性衣服が提供される。」
・記載3-2(7欄50ないし55行)
「Fig.2,4,5,7を参照すると、本発明によって、前部ウエストパネル28に取り付けられ、少なくとも前部ウエストパネル28の中央部を横切って、矢印41で示された身体を横切る方向に延びる腹部サポートバンド65が提供される。」
・記載3-3(8欄33ないし47行)
「使い捨てオムツに、ウエストパンドより1ないし3インチ下に位置するサポートバンドを供給することにより、オムツは、現在販売されているオムツにみられるよりも良好に、前部パネルのずり落ちがより少なく、位置に保持されるだろう。……サポートバンドは、多くの形態をとり得る。第1に、従来の単一のオムツでは、バンドは、エラストマー材料が引き伸ばされ、外カバーに取り付けられ、プラスチックフィルム外カバーを収縮させ、サポートライン(図示なし)に沿って収縮力を与えるものがあり得る。バンド65は、前部ウエストパネルのみに、同様に後部パネル30に、あるいは前部及び後部のみの部分に位置することができる。」
そして、Fig.2に、吸収性インサートの長手方向両端縁から幅方向外方に延出する左右一対のサイドフラップに腹部サポートバンド65が配置された状態が示され、Fig.7に、腹部サポートバンド65によりギャザーが形成された状態が示されている。
以上の記載及び図面によれば、引用例3には、
「吸収性インサートの長手方向両端縁から幅方向外方に延出する前部及び後部の左右一対のサイドフラップの中央部にギャザーを形成するエラストマー材料からなる腹部サポートバンド65を設けた使い捨てオムツ」
の発明が記載されていると認められる。

4 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「透水性トップシート」は本件発明1の「液透過性のトップシート」に相当し、以下、同様に、「吸収性コア」は「吸収体」に、「前区域」は「腹側部」に、「後区域」は「背側部」に、「腰周り開口部」は「ウエスト開口部」に、「脚周り開口部」は「レッグ開口部」に、「腰周り弾性部材」は「ウエスト弾性部材」に、それぞれ相当し、また、引用例1記載の発明の「該脚周り弾性部材は、第1と第2の2本配されており、それぞれの中央部分が股下区域のほぼ中央部に位置し、第1の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ前半部分に、第2の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ後半部分に位置するように配されている」は、本件発明1の「該レッグ弾性部材は、少なくとも2本配されており、それぞれ一方の上記レッグ部から他方の上記レッグ部に亘って上記吸収体と重ねられた部分を有して配されている」に相当する。
そうすると、両者は、
「液透過性のトップシートと、バックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する本体を備え、該本体は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部と、背側に位置する背側部とに区分されており、上記腹側部及び上記背側部それぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、
上記ウエスト開口部に隣接してウエスト弾性部材が該開口部全周にわたって配置されており、
また、一対のレッグ部のサイドフラップには、一対の上記レッグ開口部それぞれにギャザーを形成するレッグ弾性部材を備えており、該レッグ弾性部材は、少なくとも2本配されており、それぞれ一方の上記レッグ部から他方の上記レッグ部に亘って上記吸収体と重ねられた部分を有して配されている使い捨てパンツ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点ア
バックシートが、本件発明1では、液不透過性であるのに対し、引用例1記載の発明では、液不透過性と特定されていない点。
相違点イ
本件発明1では、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような立体カフスを備えていない点。
相違点ウ
本件発明1では、上記吸収体の長手方向両端縁から幅方向外方に延出する、上記腹側部及び上記背側部の左右一対のサイドフラップの少なくとも長手方向中央部にギャザーを形成するサイド弾性部材が配置されているのに対し、引用例1記載の発明では、そのようなサイド弾性部材について言及されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点アについて
吸収体を備えた使い捨てオムツ、使い捨てパンツなどにおいて、バックシートを液不透過性のバックシートとすることは、慣用手段であり、相違点アにおける本件発明1の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
相違点イについて
本件明細書によると、本件発明1は、「上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されている」との構成を採用することにより、着用者の肌に有効にフィットし、ウエスト開口部内側において、本体との間にポケットを形成し、吸収体に吸収されずに使い捨てパンツ内に漂う排泄物を収容し、ウエスト開口部からの排泄物の漏れを防止する(本件明細書の段落【0008】、【0028】)ものである。
一方、引用例2記載の発明の「第2のウエストフラップ」は、本件発明1の「弾性伸縮性の立体カフス」に相当するから、引用例2には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に弾性伸縮性の立体カフスを設けるという技術的事項が記載されている。
引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、体液を外に漏らすことなく吸収保持するために下半身に着用する衣類という同一の技術分野に属するものであるから、引用例1記載の発明に、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、引用例2に記載の上記技術的事項を適用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そして、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているようにすることは、上記技術的事項の適用に際し、体液の漏れを防止できるように、弾性伸縮性の立体カフスにより内方へ開口するポケットが形成されるようにするために、当業者が設計上当然に行う事項にすぎない。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の上記技術的事項を適用して、相違点イにおける本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、特許権者は、平成15年9月16日付けの特許異議意見書において、「刊行物2記載の発明は、従来のウエストバンド部(第1のウエストフラップ)に弾性部材を備えた使い捨ておむつにおける前記問題点(漏れ易い、シワの派生等)を解決するために、第1のウエストフラップに弾性部材を設けず、その代わりに、該第1のウエストフラップに、伸縮弾性の第2のウエストフラップを設けたものである。このような刊行物2記載の発明においては、前記要件b-1で規定するように、ウエストバンド部に弾性部材を設けることは、刊行物2記載の発明の効果〔前記記載(ii)〕を阻害するものとしてむしろ排除されている。従って、刊行物1記載のパンツ型使い捨てオムツにおける『弾性部材5を備えた腰回り3』(前記要件b-1のウエスト弾性部材を備えたウエスト開口部に相当)に、刊行物2記載の『伸縮弾性の第2のウエストフラップ』を設けることは、刊行物1及び2の記載からは示唆されないし、そのような組合せには阻害要因があると言える。」(6頁下から8行ないし7頁5行)と主張し、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の「伸縮弾性の第2のウエストフラップ」を適用することに阻害要因がある旨主張している。
しかし、引用例2記載の発明は、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、ウエスト部の内側に弾性伸縮性の立体カフス(伸縮弾性の第2のウエストフラップ)を設けるという技術的事項を開示しており、この技術的事項を、ウエストバンド部に弾性部材を有しないものにしか適用できないとする技術的な理由はない。引用例2記載の発明が、第1のウエストフラップに弾性部材を設けていないのは、ウエストバンド部を締結するためのテープファスナーを用いたオムツにおける問題を解決するためであるから、引用例2記載の発明において、第1のウエストフラップに弾性部材を設けていない点は、上記技術的事項を腰周り弾性部材を備えた引用例1記載の発明に適用することを妨げる要因とはならない。
したがって、特許権者の上記主張を採用することはできない。

相違点ウについて
引用例3記載の発明の「エラストマー材料からなる腹部サポートバンド65」及び「吸収性インサート」は、それぞれ本件発明1の「サイド弾性部材」及び「吸収体」に相当するから、引用例3には、使い捨てオムツにおいて、吸収体の長手方向両端縁から幅方向外方に延出する腹側部及び背側部の左右一対のサイドフラップの長手方向中央部にギャザーを形成するサイド弾性部材を配置するという技術的事項が記載されている。
引用例1記載の発明と引用例3記載の発明は、体液を外に漏らすことなく吸収保持するために下半身に着用する衣類という同一の技術分野に属するものであるから、引用例1記載の発明に引用例3記載の上記技術的事項を適用し、相違点ウにおける本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、全体として、本件発明1が奏する効果も、引用例1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本件発明1は、引用例1ないし3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2を引用して、「上記ウエスト弾性部材は、複数本の線状弾性部材を備えている」との構成をさらに付加したものであるところ、引用例1には、「弾性部材4,5は1本以上の糸状または帯状ゴムまたはプラスチックフィルムをそれぞれ用いることができる。」(上記記載1-5)との記載があり、本件発明3の上記構成が示唆されているから、本件発明1を引用する本件発明3と引用例1記載の発明とは、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点に加え、本件発明3で付加した構成を有する点においても一致している。
したがって、本件発明3は、上記「(1)本件発明1について」で述べたのと同様の理由で、引用例1ないし3記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明4について
本件発明4は、本件発明3を引用して、「上記立体カフスは、上記バックシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されている」との構成をさらに付加したものであり、本件発明3は、本件発明1又は2を引用するものであるところ、本件発明1を引用する本件発明3をさらに引用する本件発明4と引用例1記載の発明とを対比すると、両者は、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点に加えて、本件発明3で付加した構成を有する点においても一致し、上記相違点ア、ウ及び次の点で相違する。
相違点エ
本件発明4では、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、上記立体カフスは、上記バックシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような立体カフスを備えていない点。

上記相違点ア、ウについての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点エについて検討する。
引用例2には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に、弾性伸縮性の立体カフスを設け、弾性伸縮性の立体カフスを、トップシートではあるが、オムツを構成するシートを内方に折り返し、その一部に伸縮弾性部材を設けて形成するという技術的事項が記載されており、引用例1記載の発明に、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、引用例2に記載の上記技術的事項を適用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そして、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているようにし、かつ、立体カフスに設けた弾性部材を該ウエスト弾性部材の下方に位置させることは、上記技術的事項の適用に際し、体液の漏れを防止できるように、弾性伸縮性の立体カフスにより内方へ開口するポケットが形成されるようにするために、当業者が設計上当然に行う事項にすぎない。また、内側へ折り返して立体カフスを形成するシートを、トップシートとするかバックシートとするかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の上記技術的事項を適用して、相違点エにおける本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、全体として、本件発明4が奏する効果も、引用例1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本件発明4は、引用例1ないし3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3において、「上記立体カフスは、上記トップシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されている」との構成をさらに付加したものであり、本件発明3は、本件発明1又は2を引用するものであるところ、本件発明1を引用する本件発明3をさらに引用する本件発明5と引用例1記載の発明とを対比すると、両者は、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点に加えて、本件発明3で付加した構成を有する点で一致し、上記相違点ア、ウ及び次の点で相違する。
相違点オ
本件発明5では、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、上記立体カフスは、上記トップシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような立体カフスを備えていない点。

上記相違点ア、ウについての検討は、既述したとおりである。
そこで、相違点オについて検討すると、引用例2には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に、弾性伸縮性の立体カフスを設け、弾性伸縮性の立体カフスを、トップシートを内方に折り返し、その一部に伸縮弾性部材を設けて形成するという技術的事項が記載されており、引用例1記載の発明に、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、引用例2に記載の上記技術的事項を適用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そして、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているようにし、かつ、立体カフスに設けた弾性部材を該ウエスト弾性部材の下方に位置させることは、上記技術的事項の適用に際し、体液の漏れを防止できるように、弾性伸縮性の立体カフスにより内方へ開口するポケットが形成されるようにするために、当業者が設計上当然に行う事項にすぎない。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の技術的事項を適用して、相違点オにおける本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、全体として、本件発明5が奏する効果も、引用例1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本件発明5は、引用例1ないし3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1ないし5の何れかを引用し、「上記立体カフスは、全周にわたって連続して形成されている」との構成をさらに付加したものであるところ、本件発明1を引用する本件発明6と引用例1記載の発明とを対比すると、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点で一致し、上記相違点ア、ウ及び次の点で相違する。
相違点カ
本件発明6では、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出され、上記立体カフスは、全周にわたって連続して形成されているいるのに対し、引用例1記載の発明では、そのような立体カフスを備えていない点。

上記相違点ア、ウについての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点カについて検討すると、引用例2には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に弾性伸縮性の立体カフスを設けるという技術的事項が記載され、さらに、「第2のウエストフラップ8a,8bの横方向の長さは、第1のウエストフラップ7a,7bの対向縁15の近傍まで延長していてもよい。」(上記記載2-3参照。)との記載があり、弾性伸縮性の立体カフスをオムツのウエスト部の左右側端近傍間にわたって形成することが示唆されており、引用例1記載の発明に、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、引用例2に記載の上記技術的事項を適用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そして、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているようにすることは、上記技術的事項の適用に際し、体液の漏れを防止できるように、弾性伸縮性の立体カフスにより内方へ開口するポケットが形成されるようにするために、当業者が設計上当然に行う事項にすぎない。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の上記技術的事項を適用して、相違点カにおける本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、全体として、本件発明6が奏する効果も、引用例1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本件発明6は、引用例1ないし3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1ないし6の何れかを引用して、「上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出されており、上記レッグ弾性部材は、その一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されている」との構成をさらに付加したものであるところ、本件発明1を引用する本件発明7と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「脚周り弾性部材は、第1と第2の2本配されており、それぞれの中央部分が股下区域のほぼ中央部に位置し、第1の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ前半部分に、第2の脚周り弾性部材の両側部分が両脚周りのほぼ後半部分に位置するように配されている」は、本件発明7の「上記レッグ弾性部材は、その一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されている」に相当するから、本件発明7と引用例1記載の発明とは、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点に加えて、本件発明7で付加した構成の一部を有する点で一致し、上記相違点ア、ウ及び次の点で相違する。
相違点キ
本件発明7では、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出されているのに対し、引用例1記載の発明では、そのような立体カフスを備えていない点。
上記相違点ア、ウについての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点キについて検討する。
引用例2には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に弾性伸縮性の立体カフスを設けるという技術的事項が記載され、さらに、引用例2には、「第6図においては、第2のウエストフラップ8a,8bは、第1ウエストフラップ7a,7bと別の素材で形成され、その横方向に沿う外縁13aが第1のウエストフラップ7a,7bに固定され、」(上記記載2-6参照。)との記載があるから、立体カフスが固定部分と自由部分を有するという技術的事項も記載されており、引用例1記載の発明に、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、引用例2に記載の上記技術的事項を適用することは、当業者であれば容易に思いつくことである。
そして、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されているようにすることは、上記技術的事項の適用に際し、体液の漏れを防止できるように、弾性伸縮性の立体カフスにより内方へ開口するポケットが形成されるようにするために、当業者が設計上当然に行う事項にすぎない。また、自由部分をどこまで延出するかは、設計上適宜決め得る事項にすぎない。
そうすると、引用例1記載の発明に引用例2記載の上記技術的事項を適用して、相違点キにおける本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、全体として、本件発明7が奏する効果も、引用例1ないし3記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本件発明7は、引用例1ないし3記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、「上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、
上記立体カフスは、上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されている」との構成をさらに付加したものであるところ、本件発明2と引用例1(甲第1号証)記載の発明とを対比すると、上記「(1)本件発明1について」で挙げた点で一致し、上記相違点ア、ウ及び次の点で相違する。
相違点ク
本件発明2は、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、上記立体カフスは、上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されている点。

上記相違点ア、ウについての検討は、既述したとおりである。
そこで、上記相違点クについて検討すると、上記相違点キで述べたように、引用例2(甲第2号証)には、ウエストバンド部からの体液の漏れを防止するために、使い捨てオムツにおいて、ウエスト部の内側に弾性伸縮性の立体カフスを設けるという技術的事項が記載され、さらに、立体カフスが固定部分と自由部分を有するという技術的事項も記載されているといえるものの、「上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、」との構成は、記載されていないし、示唆もされていない。
甲第3号証には、パンツの中央部に横方向にゴム紐を取り付け収縮力を付与した乳幼児用オムツカバー兼用のパンツ、が記載され、甲第4号証には、腹部及び臀部に対応する個所に伸縮度の強い編糸を横方向に編み込んだおむつカバー、が記載されているにすぎず、上記構成については、甲第3号証ないし甲第5号証(引用例3)のいずれにも記載されていないし、示唆もされておらず、また、上記構成が、本件特許に係る出願前に周知の事項であったともいえない。
したがって、本件発明2は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5 むすび
以上のとおり、本件発明1、3ないし7についての特許は、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1、3ないし7についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。
本件発明2についての特許は、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
使い捨てパンツ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する本体を備え、該本体は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部と、背側に位置する背側部とに区分されており、上記腹側部及び上記背側部それぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、
上記ウエスト開口部に隣接してウエスト弾性部材が該開口部全周にわたって配置されており、且つ、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、
上記吸収体の長手方向両端縁から幅方向外方に延出する、上記腹側部及び上記背側部の左右一対のサイドフラップの少なくとも長手方向中央部にギャザーを形成するサイド弾性部材が配置されており、
また、一対のレッグ部のサイドフラップには、一対の上記レッグ開口部それぞれにギャザーを形成するレッグ弾性部材を備えており、該レッグ弾性部材は、少なくとも2本配されており、それぞれ一方の上記レッグ部から他方の上記レッグ部に亘って上記吸収体と重ねられた部分を有して配されていることを特徴とする使い捨てパンツ。
【請求項2】上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、
上記固定部分と上記自由部分との境界点となる固定縁が、上記ウエスト弾性部材と上記吸収体との間に形成されており、
上記立体カフスは、上記自由部分に弾性部材が幅方向に張設されることによって弾性伸縮性が付与されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨てパンツ。
【請求項3】上記ウエスト弾性部材は、複数本の線状弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の使い捨てパンツ。
【請求項4】上記立体カフスは、上記バックシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の使い捨てパンツ。
【請求項5】上記立体カフスは、上記トップシートの一部に弾性部材を張設し、該弾性部材を上記ウエスト開口部内側の上記ウエスト弾性部材の下方に位置させることにより形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の使い捨てパンツ。
【請求項6】上記立体カフスは、全周にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の使い捨てパンツ。
【請求項7】上記立体カフスは固定部分及び自由部分を有し、該自由部分は上記吸収体上まで延出されており、
上記レッグ弾性部材は、その一本は、一方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の腹側部側に湾曲して配されており、また他の一本は、他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配され且つ上記股下部を上記吸収性本体の幅方向に横切って他方の上記レッグ部の背側部側に湾曲して配されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の使い捨てパンツ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、幼児用、大人用、あるいは失禁者用として用いられる使い捨てパンツに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の使い捨ておむつにおいては、特開昭57-77304号公報に開示されているように、左右一対のサイドフラップにおける腹側領域と背側領域を互いに接合固定して左右一対のレッグ開口部及びウエスト開口部をそれぞれ形成した、いわゆるパンツ型の使い捨てパンツが提案されている。該パンツ型の使い捨てパンツ(以下、「使い捨てパンツ」と呼ぶ)は、レッグ開口部及びウエスト開口部がそれぞれ伸縮自在に形成されて、着用者の体型にフィットするように構成されている。このような使い捨てパンツは、通常、着用者自らが、立位の状態で着用することができ、幼児の「おむつ離れ」を促進するためのトイレットトレーニング用として、または失禁者等もしくは歩行可能な成人用として有用とされている。
【0003】
一方、使い捨てパンツの製造方法においても、いくつかの提案がなされている。それらは基本的に特開昭57-77304号公報や特開平1-282102号公報にみられるような、吸収体の長手方向に対し、ウェブの流れ方向を垂直にしたいわゆる「横流し」の製造方法に代表される。
一般に、使い捨てパンツにおけるギャザーは、着用者の運動に該パンツを追従させるためのものであり、ギャザーは排泄物の漏れを防止し、かつ着用者を傷つけないために柔らかくフィットするべきである。着用者を傷つけない手段としては、低モジュラスの弾性部材を用いたり、複数本の弾性部材を広幅に設けたり、クッション材をギャザーと皮膚との間に配置するなど、従来より種々提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、使い捨てパンツのウエストギャザーにおいては、トップシートとバックシートの間に伸長して配置された弾性部材が収縮して、トップシートとバックシートが襞を寄せる構成とし、該ウエストギャザーはウエスト開口部の全周にわたって配置されるが、稀に排泄物が、トップシートの襞の隙間をつたってパンツの外にでて、漏れてしまうことがある。一方、外に漏れ出なくてもトップシートの襞の隙間に排泄液が保持されたままの状態になった場合、着用者の湿疹やかぶれの原因になっていた。
【0005】
このような排泄物の漏れを防止するために、ギャザーの伸長率を高めたのでは、着用者を傷つけることになり、また、襞の隙間を小さくするようにシートの薄肉化を図ると、肌触りが悪くなるという不都合がある。
従って、本発明の目的は、ウエスト開口部からの排泄物の漏れを防止するとともに、ウエスト開口部に排泄液を保持することのない使い捨てパンツを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する本体を備え、該本体は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部と、背側に位置する背側部とに区分されており、上記腹側部及び上記背側部それぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、上記ウエスト開口部に隣接してウエスト弾性部材が該開口部全周にわたって配置されており、且つ、上記ウエスト開口部内側において、弾性伸縮性の立体カフスが該ウエスト弾性部材の下方から股下部に向かって延出されており、上記吸収体の長手方向両端縁から幅方向外方に延出する、上記腹側部及び上記背側部の左右一対のサイドフラップの少なくとも長手方向中央部にギャザーを形成するサイド弾性部材が配置されており、また、一対のレッグ部のサイドフラップには、一対の上記レッグ開口部それぞれにギャザーを形成するレッグ弾性部材を備えており、該レッグ弾性部材は、少なくとも2本配されており、それぞれ一方の上記レッグ部から他方の上記レッグ部に亘って上記吸収体と重ねられた部分を有して配されていることを特徴とする使い捨てパンツを提供することによって、上記目的を達成したものである。
【0007】
【0008】
【作用】
立体カフスは弾性収縮性であり、使い捨てパンツのレッグ開口部の方向に向かって伏倒されている。立体カフスはウエスト開口部内側の周辺部において弾性化されており、着用者の肌に有効にフィットする。立体カフスは、ウエスト開口部の内側に、本体との間にポケットを形成し、吸収体に吸収されずに使い捨てパンツ内に漂う排泄物を収容し、吸収体に吸収可能な部分は吸収し、吸収できない部分は堰止めることにより、ウエスト開口部への到達が阻止される。
【0009】
【実施例】
以下に、添付図面の図1〜図4を参照しながら、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。
本発明の実施例による使い捨てパンツ1は、図1及び図2に示すように、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これら両シート間に配置される吸収体4とを有する本体5を備え、該本体5は着用時に着用者の腹側に位置する腹側部5Aと、背側に位置する背側部5Bとに区分されており、上記腹側部5A及び上記背側部5Bそれぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部13と一対のレッグ開口部14A、14Bとを形成したパンツ型の使い捨てパンツにおいて、上記ウエスト開口部13に隣接してウエスト弾性部材8A、8Bが該開口部全周にわたって配置されており、且つ、上記ウエスト開口部13の内側において、該ウエスト弾性部材8A、8Bに隣接してウエスト弾性部材の下側から弾性伸縮性の立体カフス20A、20Bが股下部に向かって延出されている。
【0010】
本体5の幅方向両側部には、円弧状に凹んだレッグ部5Cが形成されている。本体5には、着用時に着用者の腹側に位置する腹側部5Aと、背側に位置する背側部5Bとに区分されるが、腹側部5Aと背側部5Bとは、本体5のほぼ中央に位置する縦中心線6を境にほぼ対称に形成されている。
本体5の腹側部5Aと背側部5Bとにおいて、吸収体4の長手方向両端縁には、ここから外方に延出する一対のウエストフラップ7A、7Bと、各ウエストフラップ7A、7Bそれぞれにギャザーを形成するウエスト弾性部材8A、8Bが配置されている。上記吸収体4の両側縁から幅方向外方に延出する、腹側部と背側部の左右一対のサイドフラップ9A、9Bの長手方向中央部には、各サイドフラップ9A、9Bにギャザーを形成するサイド弾性部材10A、10Bが配置されている。また、レッグ部のサイドフラップ9A、9Bには、レッグ開口部14A、14B(図2参照)にギャザーを形成するレッグ弾性部材11A、11Bとを備え、背側と腹側のサイドフラップ9Aと9Bが両側縁12Bと12Aでそれぞれ部分的に接合固定されて、図2に示すように、ウエスト開口部13及び左右一対のレッグ開口部14A、14Bが形成されるようになっている。
【0011】
尚、ウエストフラップ7A、7Bとサイドフラップ9A、9Bとは、基本的にそれぞれトップシート2とバックシート3との重ね合わせ部分であって、本体5に一体に形成されている。レッグ部5Cには、湾曲状に配置されたレッグ弾性部材11Aと11Bとが張設されており、該レッグ弾性部材11Aと11Bは、それぞれレッグ部5Cの馬蹄形に沿って円弧状に形成され、更に一方のレッグ部5Cから他方のレッグ部5Cに亘って形成されている。吸収体4と重ねられた部分においては、レッグ弾性部材11A、11Bは、ともに非伸長であることが望ましい。
【0012】
一方、ウエストフラップ7A、7Bに配置されたウエスト弾性部材8A、8Bは、それぞれウエストフラップ7A、7Bの端縁に沿って、ほぼ平行に配置された複数本の糸状体としてトップシート2とバックシート3との間に連続的に接合されている。
ウエスト弾性部材8A、8Bに隣接した位置には、弾性収縮性の立体カフス20A、20Bが配置されている。これによりウエスト開口部13を形成した際には、ウエスト弾性部材8A、8B及び弾性収縮性の立体カフス20A、20Bは、ウエスト開口部13の周縁に沿って連続的に配置されることとなる。
【0013】
立体カフス20A、20Bは、図3に詳図するように、固定部分21と自由部分22を有し、一般に、シート部材24とカフス弾性部材23を以て構成され、固定部分21はトップシート2もしくはバックシート3に接合固定され、自由部分22はその末端にカフス弾性部材23を介装しており、これによって立体カフス20A、20Bに弾性収縮性を付与している。シート部材24は、トップシート2もしくはバックシート3であってもよく、本実施例ではバックシート3の一部を用いている。また、立体カフス20A、20Bのシート部材24自身が弾性収縮性を有するものであってもよい。この場合には、カフス弾性部材23を省略することができる。
【0014】
上述の固定部分21は、図3に示すように、立体カフス20A、20Bを構成するシート部材24を、ウエスト開口部13端縁付近に接合固定して形成されている。固定部分21は、立体カフス20A、20Bにおいて自由部分22との境界点となる固定縁25を有する。また、高月齢児用あるいは大人用のおむつにおいては吸収体の長手方向の長さが大きくなるので、吸収体上に固定縁25を設けてもよい。この固定縁25はウエスト弾性部材8A、8Bと吸収体4との間に形成されており、固定部分21はウエスト開口部13の開口端から該固定端まで形成されている。尚、固定部分21における接合固定の方法としては、超音波シール、熱シール、接着剤など業界公知のものを利用することができる。本実施例において、固定部分21はウエストギャザーの上面に形成されているので、ウエスト弾性部材8A,8Bの伸縮物性を阻害しないよう接合固定することが好ましい。
【0015】
自由部分22には、その自由端部にカフス弾性部材23が介装されて、自由部分22の弾性収縮性が提供されている。自由部分22は、使い捨てパンツ1を展開した状態において、固定部分21からレッグ開口部14A、14B(股下部)へ向けて本体5に伏倒されるようにして延出されている。そうすることによって、自由部分22が使い捨てパンツ1の着用時及び着用中に反転することがなくなると共に、本体5との間に内向きのポケット部分26が形成される。このポケット部分26には、吸収体に吸収されないではみ出そうとする排泄物を一時的に収容し、保持する。自由端に配されたカフス弾性部材23は着用者に柔軟にフィットする。また、好ましくは、自由部分22は反転防止手段を備えている。反転防止手段とは、例えば、ホットメルト型接着剤などにより立体カフス20A、20Bと本体5具体的にはトップシート2の内側にその合わせ面を接着することにより、自由部分22が外側に翻ることを防止する方法がある。
【0016】
尚、固定部分21の幅(その内側への延出方向の寸法)は、好ましくは、5〜80mmであり、固定縁25はウエスト弾性部材8Bと吸収体4の端縁との間から0〜70mm内側の位置に配置される。また、自由部分22の幅は好ましくは、10〜50mmである。
カフス弾性部材23は、好ましくは糸ゴムであって、そのほか平ゴム、フィルムタイプのゴム、伸縮性の不織布あるいは発砲ポリウレタンなど、業界公知のものであれば何でも用いることができ、1本あるいは複数本であってもよいが、一般に腹側、背側の弾性部材の配置は対称形である。150%伸長時の応力が30から100gであるものが好ましい。30g以下だと弾性が充分でなく自由部分が着用者にフィットできないからであり、100g以上だと弾性が強すぎて着用者を傷つけたりするからである。
【0017】
立体カフス20A、20Bを構成するシート部材24は、好ましくは撥水性の通気性を有するシートであって、薄肉にして風合いのよいもの、好ましくは不織布が用いられる。かかるシート部材24は、トップシート2もしくはバックシート3の一部を用いて形成することが、製造上の点において好ましく、本実施例では、バックシート3の一部を用いている。
【0018】
トップシート2は、排泄物を吸収体4へ透過させることのできる液透過性シートで肌着に近い感触を有するものが好ましく、このような液透過性シートとしては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等がある。また、トップシート2の周縁部にシリコン系油剤、パラフィンワックス等の疎水性化合物を塗布する方法や、予めアルキルリン酸エステルのような親水性化合物を塗布し、周縁を温水で洗浄する方法により撥水処理を施し、周縁部における尿等の滲みによる漏れを防止することができる。
【0019】
バックシート3は、ポリオレフィンのような熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸した、蒸気を透過させる透湿性のある液不透過性シートや、肌着に近い感触を有したもの、例えばフィルムと不織布との複合材あるいはフィルムと織布との複合材等が用いられる。
吸収体4としては、解繊パルプを主材とし高分子吸水ポリマーを併用したものが好ましく、また、熱可塑性樹脂、セルロース繊維、高分子吸水ポリマーの混合物に熱処理したもの、さらに一般にポリマーシートといわれるものが好ましい。高分子吸水ポリマーは自重の20倍以上の液体を吸収して保持し得る保持性能を有し、ゲル化する性質を有する粒子状のものが好ましく、このような高分子吸水ポリマーとしては例えば、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト重合体、デンプン-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、アクリル酸(塩)重合体等が好ましい。
【0020】
また、弾性部材8A、8B、10A、10B、11A、11Bとしては、糸ゴム、平ゴム、フィルムタイプのゴム、伸縮性の不織布あるいは発砲ポリウレタンなど、業界公知のものであれば何でも用いることができ、1本あるいは複数本であってもよい。また、1本あたりの弾性部材の150%伸長時の応力が30〜100gであるものが好ましく、腹部に跡がつかないように低応力の弾性部材を複数用いるのがさらに好ましい。
【0021】
次に、本発明の使い捨てパンツを製造するための好適な実施態様について、図4を参照しながら説明する。尚、以下の形成工程においては、本発明の本質を明らかにするため、サイド弾性部材10A、10Bとレッグ弾性部材11A、11Bの形成工程は省略して説明する。
巻き出し装置によってバックシート3のウェブを繰り出し、一方で、吸収体ウェブがカッター50によって、個々の吸収体4に切断され、上記バックシートウェブ3に間欠的に配置される。吸収体4はその長辺が、ウェブの流れ方向とに垂直に直交して配置される(吸収体配置工程)。
【0022】
更に、該吸収体4を実質的に覆うことのできる幅を有するトップシート2を上方から繰り出して、ロール51によりバックシート3と吸収体4の上に重ね合せて、製品ウェブとする(重ね合せ工程)。
次に、立体カフス20A、20Bの形成工程へと移る。本実施例においては、立体カフス20A、20Bはバックシート3の一部によって形成されている。即ち、メインウェブの流れ方向に対して平行に両端縁部にカフス弾性部材23を張設して、バックシート3の両端縁部を、カフス弾性部材23をくるむような形で折り込む(カフス形成程)。
【0023】
本実施例では、カフス弾性部材23を、バックシート3の縁部に連続的に張設して立体カフス20A、20Bを形成するが、上記にとらわれることなく、カフス弾性部材23を配置した立体カフス20A、20Bを別体に形成したシート片をバックシート3に連続的に接合固定する方法であってもよい。
次に、ウエストギャザーの形成工程において、ウェブの流れ方向に対して平行に、両側縁部にウエスト弾性部材8A、8Bを配置し(ウエスト弾性部材配置工程)、バックシート3の両側縁を再び折り込む。カフス弾性部材23と、ウエスト弾性部材8A、8Bとは、このようにしてバックシート3にくるんで配置する。
【0024】
全ての材料を組み立て終えた時点で、打ち抜き工程部52において、レッグ開口部14を打ち抜く。かかる工程部52における打ち抜きは、ロータリーダイカッター等によってなされる。そして、折り畳み工程部53において、メインウェブの流れ方向中心線51において二つ折りし、サイドシール工程部54でウェブのサイドシールを行い、続いて切断工程部55で個々の使い捨てパンツに切断し(カット工程)、最終的に集積する。
【0025】
このようにして、本発明の一実施例である使い捨てパンツ1を製造し、使い捨てパンツ1に、連続する立体カフス20A、20Bを形成する。このような本製造方法によれば、立体カフス20A、20Bの原反及び工程を減らすことができ、加工機の省スペース化に役立つ。
更に、本実施例による製造方法によれば、バックウェブ(トップシートまたはバックシート)の折り込みを利用することによって、立体カフスの配置精度を向上させ、加工機設備の省スペース化を可能とできる。
【0026】
尚、これらの本発明に関する使い捨てパンツの実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更実施可能であることはいうまでもない。例えば、使い捨てパンツ1のサイドシール部分に隣接して、着用者より容易に剥し得るように、引き裂き案内手段を配置した構成であってもよい。この引き裂き案内手段は、切り込み案内線であったり、シール部分であったり、容易に引き裂くことのできるものであるが、着用中に破れたり、裂けたりすることのない強度を有することが必要である。
【0027】
また、本発明にかかる使い捨てパンツの製造においては、立体カフスはウェブと別体に形成し、ウェブにウエスト弾性部材を配置した後にウェブに接合する構成であってもよい。
尚、立体カフスは、シート部材24自体が弾性を有するものであれば、カフス弾性部材を用いなくともよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明の使い捨てパンツによれば、ウエスト開口部からの排泄物の漏れを防止するとともに、ウエスト開口部に排泄液を保持することがない。
【0029】
また、本発明の使い捨てパンツによれば、ギャザリングに伴う隙間の形成によるウエストからの滲み漏れ等をなくすことができるとともに、フラップの風合いに優れ、安価な製品を提供することができる。
更に、立体カフスによって排泄物の防止が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明の実施例による使い捨てパンツの展開状態を示した平面図である。
【図2】
図2は、図1に示す使い捨てパンツの自然状態を示す斜視図である。
【図3】
図3は、図2に示すX-X線の断面図である。
【図4】
図4は、図1に示す使い捨てパンツの製造工程図である。
【符号の説明】
1 使い捨てパンツ
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
8A、8B、ウエスト弾性部材
20A、20B 立体カフス
23 カフス弾性部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-15 
出願番号 特願平3-131420
審決分類 P 1 651・ 121- ZD (A61F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 豊
溝渕 良一
登録日 2002-06-07 
登録番号 特許第3315993号(P3315993)
権利者 花王株式会社
発明の名称 使い捨てパンツ  
代理人 羽鳥 修  
代理人 羽鳥 修  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ