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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1146405
異議申立番号 異議2003-71806  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-05-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-14 
確定日 2006-09-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3367533号「画像形成装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3367533号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
特許第3367533号の請求項1~2に係る発明は、平成5年10月14日に特許出願され、平成14年11月8日にその特許権の設定登録がなされ、平成15年7月14日付けでキヤノン株式会社、藤掛栄蔵および鈴木祐子から異議申立がなされ、平成16年6月9日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月29日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正を請求する事項は、以下の通りである。

(ア)訂正事項
本件特許の特許公報における特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、特許公報第1頁左欄第8行の「現像器によりトナー画像を形成するプロセス部」を、
「現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に設けられ前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系」
と訂正する。
(イ)訂正事項
本件特許の特許公報における特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、特許公報第1頁左欄第10行の「駆動系を備えているとともに、」を、
「駆動系、および」
と訂正する。
(ウ)訂正事項
本件特許の特許公報における特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、特許公報第1頁左欄第11~12行の「制御装置を備えており、」の次に、
「前記駆動モータは、スローアップ、スローダウンおよび定速回転に駆動制御されるステップモータであり、」
を追加訂正する。
(エ)訂正事項
本件特許の特許公報における特許請求の範囲の【請求項2】を削除する
訂正をする。
(オ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0007】の記載において、特許公報第2頁右欄の第31~32行の「トナー画像を形成するプロセス部」を、
「現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系」,
と訂正する。
(カ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載において、特許公報第2頁右欄の第39~40行の「現像器によりトナー画像を形成するプロセス部」を、
「現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に設けられ前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系」
と訂正する。
(キ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載において、特許公報第2頁右欄の第41~42行の「駆動系を備えているとともに、」を、
「駆動系、および」
と訂正する。
(ク)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載において、特許公報第2頁右欄の第43行の「備えており、」の次に、
「前記駆動モータは、スローアップ、スローダウンおよび定速回転に駆動制御されるステップモータであり、」
を追加訂正する。
(ケ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0008】の記載において、特許公報第2頁右欄の第45~49「とする。また、本発明の画像形成装置は、前記プロセス部の現像器にトナーを補給する補給手段も、前記プロセス部および前記定着器とともに前記1つの駆動モータで駆動することを特徴とする。」を、
「とする。」
と訂正する。
(コ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0009】の記載において、特許公報第3頁左欄の第2行の「トナー画像を形成するプロセス部」を、
「トナー画像を形成するプロセス部の現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系」
と訂正する。
(サ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0009】の記載において、特許公報第3頁左欄の第4行の「プロセス部」を、
「プロセス部のトナー循環系」
と訂正する。
(シ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0009】の記載において、特許公報第3頁左欄の第25~30行の「防止される。更に、プロセス部の現像器にトナーを補給するトナー補給手段もプロセス部および定着器とともに1つの駆動モータで駆動されることで、トナー補給時のトナー固着による定着器の損傷が防止されるとともに、トナー補給時の起動トルクが小さくでき、小型のモータが使用可能となる。」を、
「防止される。」
と訂正する。
(ス)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0042】の記載において、特許公報第7頁右欄の第16行の「プロセス部」を、
「プロセス部の現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系」
と訂正する。
(セ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0042】の記載において、特許公報第7頁右欄の第25行の「。。」を、
「。」
と訂正する。
(ソ)訂正事項
本件特許の特許公報における発明の詳細な説明の段落番号【0042】の記載において、特許公報第7頁右欄の第34~39行の「防止できる。更に、プロセス部の現像器にトナーを補給するトナー補給手段もプロセス部および定着器とともに1つの駆動モータで駆動することで、トナー補給時のトナー固着による定着器の損傷を防止できるとともに、トナー補給時の起動トルクを小さくでき、小型のモータを使用できる。」を、
「防止できる。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(ア)は、発明を特定する事項である現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に対し、更に現像機にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系を構成要件として含むものに限定するものである。また、トナー循環系を有するプロセス部については、願書に最初に添付した明細書の【0011】に
「図1は、本発明をプリンタに適用した一実施例である。この装置は、給紙ローラ11と分離パッド12からなる給紙部、図示しないレーザー光源と偏光装置21、折返しミラー22からなる露光部20、感光ドラム31、帯電ローラ32、現像器33、転写ローラ34、トナー循環路35、トナータンク36などからなる電子写真プロセス部30、トナー面に接する定着ローラ41と加圧ローラ42などからなる定着器40、外部のホストコンピュータとの通信、定着器ヒータの制御、モータの駆動制御、電子写真プロセス用電源の制御などを行う制御回路部50などからなり、それらが枠体60の中に収められている。」
と記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(イ)は、進歩性を明確にする上でその記載内容を登録時の明細書又は図面に記載された範囲内において明確にするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(ウ)は、発明を特定する事項である駆動系に設けられた駆動モータに対し、更にスローアップ、スローダウン及び定速回転に駆動制御されるステップモータであることを構成要件として含むものに限定するものである。また、駆動モータがスローアップ、スローダウン及び定速回転に駆動制御されるステップモータである点については、願書に最初に添付した明細書の【0013】に
「図示されない駆動系70は駆動モータ71とギア列72からなり、ギア列72はトナー循環系、感光ドラム31、定着ローラ41などに動力を伝達する。駆動モータ71はステップモータで制御系51によりスローアップ、スローダウン、定速回転などに駆動制御される。」
と記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(エ)は、請求項を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(オ)、(カ)、(コ)、(サ)、(ス)は、上記訂正事項(ア)と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(キ)は、上記訂正事項(イ)と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(ク)は、上記訂正事項(ウ)と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(ケ)、(シ)、(ソ)は、上記訂正事項(エ)と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項(セ)は、本来その意であることが明らかな内容の字句に正すものであって、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。

いずれの訂正事項も平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書各号に規定する事項を訂正の目的とするものである。また、いずれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件の請求項1に係る発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「転写後の支持体上のトナー画像を少なくとも熱により定着を行う定着器を備えた画像形成装置において、
前記定着器は、回転しながら熱による定着を行う定着部材とこの定着部材のまわりに接触する接触部材とを有する定着器からなり、
現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に設けられ前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系および前記定着器をともに駆動する1つの駆動モータを少なくとも有する駆動系、および前記定着部材を加熱した後に前記駆動モータの駆動を開始する制御装置を備えており、
前記駆動モータは、スローアップ、スローダウン及び定速回転に駆動制御されるステップモータであり、
前記制御装置は、前記定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに前記駆動モータの駆動を開始することを特徴とする画像形成装置。」

2.刊行物に記載された発明
2.1 刊行物
刊行物1:特開平5-35148号公報
(異議申立人キヤノン株式会社が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭54-89742号公報
刊行物3:特公平1-40351号公報
(異議申立人キヤノン株式会社が提出した甲第2号証)
刊行物4:特開昭63-26674号公報
(異議申立人鈴木祐子が提出した甲第2号証)

2.2 刊行物に記載された発明
刊行物1には、以下に列挙する事項が記載されている。
(a)【0001】
「本発明は、電子写真装置等において、加熱ローラ及び加圧ローラからなる一対の定着ローラを用いて像担持体上のトナー像を定着する画像形成装置における定着装置に関する。」
(b)【0012】~【0014】
「そして定着ローラ27は、加熱手段であるヒータ27aを内蔵し、アルミニウム素管表面に、PTFE(ポリテトラ・フルオロエチレン)をコーティングした加熱ローラ27b及び、金属製ローラ芯29aの外周に耐熱性シリコンゴム29bを形成し、表面にPTFEからなるチューブを被せた加圧ローラ27cとから成り、いずれも直径約50[mm]とされている。この加圧ローラ27cは、加圧スプリング(図示せず)により加熱ローラ27bに加圧接触されている。又、加熱ローラ27bは駆動手段である装置本体1のメインモータ70によりメインベルト71、サブメインベルト72、第1乃至第3のギア73a~73cを介し回転され、加圧ローラ27cもこれに圧接し従動回転される様になっている。更にメインモータ70は第2のギア73bからドラムベルト74、ドラムドライブギア75を介し感光体ドラム10を駆動する一方、サブメインベルト72から現像ユニットドライブギア76、スリーブギア77を介し現像装置13の現像スリーブ13aやミキサ13b、13c等を駆動し、更に第3のギア73cから第4のギア73d、搬送ベルトギア78を介し搬送ベルト26を駆動可能としている。又、加熱ローラ27bのリア側表面には加熱ローラ27b表面の温度を検知し、検知温度を電圧に変換しヒータ制御装置32に入力する検知手段であるサーミスタ33が接触されている。更に、34は剥離爪、36はクリーニングフェルトである。」
(c)【0018】~【0021】
「次に図7を参照して作用について説明する。室温が18~25[℃]の常温の範囲である場合には、装置本体1の設置時等サービスマンコードにおいて、プレラン選択キー51をオン状態に設定し、更に、テンキー47より、プレラン開始時間60[sec]、プレラン終了時間90[sec]を入力しておく。尚、この設定時間の調整は、例えば外気が低温である場合には、プレラン開始時の加熱ローラ27b温度が常温時と同程度になるよう、プレラン開始時間を常温時より多少長く設定する一方、外気が高温である場合には、逆にプレラン開始時間を常温時より短く設定等すれば良い。更に高温時プレランが不要であれば、プレラン選択キー51をオフ状態に設定しておき、プレランを行なわない様にしても良い。この様な状態で電源を投入すると、制御装置38の起動によりウォーミングアップが開始される。即ち、制御装置38を介しヒータ制御装置32によりヒータ27aがオンされ、加熱ローラ27bの表面温度は室温例えば25[℃]から図6に示す様な温度勾配で温度上昇される事となる。これと同時にカウンタパルス発振装置44が作動される。そして制御装置38が、カウタパルス発振装置44からのパルスをカウントし、ヒータ27aオン後、一定時間である60[sec]を経過した旨を検知し、サーミスタ33からの入力が230[℃]に達していない旨を検知すると、制御装置38は、メインモータ70を駆動し、メインベルト71、サブメインベルト72、第1乃至第3のギア73a~73cを介し加熱ローラ27bを矢印r方向に回転する。これにより加圧ローラ27cは、加熱ローラ27bに従動し矢印s方向に回転され、既に約85[℃]に温度上昇された加熱ローラ27b表面からの熱伝導により、表面全体が加熱される事となる。尚、この定着ローラ27のプレランの間、コピー操作中では無いものの、各ベルトやギアを介し感光体ドラム10、現像装置13、搬送ベルト26がメインモータ70により駆動されている。」
(d)【0032】
「尚、ウォームアップ開始からプレラン開始迄60[sec]を経過しており、加熱ローラ27b表面は、約80~90[℃]に加熱されており、前の定着時にオフセットされたトナーも溶融され、クリーニングフェルト38に拭き取られる事から、プレラン時に、固化したトナーにより定着ローラ27表面が損傷されるおそれも無い。」

したがって、上記記載事項および第3図の記載からみて、刊行物1には、以下のとおりの事項(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「転写後の支持体上のトナー画像を少なくとも熱により定着を行う定着器を備えた画像形成装置において、前記定着器は、回転しながら熱による定着を行う加熱ローラ27bとこの定着部材のまわりに接触する剥離爪34およびクリーニングフェルト36とを有する定着器からなり、トナー画像を形成する部位に設けられた現像装置および前記定着器をともに駆動する1つのメインモータ70を少なくとも有する駆動系、および前記加熱ローラ27bを加熱した後に前記メインモータ70の駆動を開始する制御装置を備えており、前記制御装置は、前記加熱ローラ27bの温度がトナーが溶融するに足る温度になるよう設定された時期に前記メインモータ70の駆動を開始することを特徴とする画像形成装置。」

刊行物2には、以下に列挙する事項が記載されている。
(e)公報1ページ右下欄1~3行目
「本発明は…被現像体の潜像を現像する工程を有した像形成装置に関し、」
(f)公報3ページ右上欄7行目~左下欄8行目
「…現像に寄与された現像剤は…戻しスクリュー15により搬送され…上記搬送された現像剤の一部をクリーニング手段への送りスクリュー17に落下させる。…送りスクリュー14に受け渡された現像剤は、…スリーブ8上に吸引されて現像に寄与する。また、…送りスクリュー17上に落下した現像剤は、該スクリュー17によりクリーニング手段9の送りスクリュー18の下部まで導かれる。」
(g)公報3ページ右下欄10行目~4ページ左上欄6行目
「…クリーニング手段9においてクリーニングに寄与した現像剤は…クリーニング手段9の長手方向に沿って搬送され、クリーニング手段容器の略端部で…その一部を現像手段4への送りスクリュー25上に落下させる。上記送りスクリュー25は…現像手段の送りスクリュー14の下部まで現像剤を搬送する。」
(h)公報4ページ左上欄16行目~右上欄7行目
「…トナー補充手段26…は送りスクリュー25の途中に設けられており、現像装置に送られて来る現像剤中に十分なトナーを供給する。…スクリュー14又は25により十分攪拌混合された後に、スリーブ8上に引き上げられるようにする。」

これらの記載より、刊行物2には以下のとおりの事項が開示されているものと認める。「現像剤を用いて被現像体の潜像を現像する現像装置を有する像形成装置において、現像剤をスクリューを介して搬送するとともに、スクリューの途中に設けられたトナー補充手段によってトナーが補充されるように構成された系を有する像形成装置。」

刊行物3には、以下に列挙する事項が記載されている。
(i)公報1ページ1段16~18行目
「本発明は、電子写真複写機における複写紙上のトナー像を定着ローラに導いて加熱定着するようにした加熱定着装置に関する。」
(j)公報3ページ5段20~24行目
「メインモータ56からの動力は、前述のように直接に熱ローラ34および感光ドラム21の回転のために与えられる…。」
(k)公報3ページ6段15~21行目
「メインモータ56は、熱ローラ34の温度Hがトナーの軟化点H1以上になって初めて駆動されて熱ローラ34と圧ローラ35とが回転する。このとき、熱ローラ34と圧ローラ35とに付着していることのあるトナーは軟化しているので、熱ローラ34と圧ローラ35とが損傷することはなく、また剥がし板52が損傷することはない。」

刊行物4には、以下に列挙する事項が記載されている。
(l)公報1ページ左下欄15~18行目「前記定着ローラの表面温度が前記軟化温度に対応した温度に到達した後は前記定着ローラの予備回転を開始せしめる制御手段を備えたことを特徴とする定着装置。」
(m)公報2ページ右上欄12~19行目
「…トナーの成分で決まる軟化点が、設定されている定着ローラの予備回転開始温度よりも高いときには定着ローラに接触配置されている複写用紙の分離爪により定着ローラ上に残留していたトナーが十分に軟化しないまま削られ、定着ローラや分離爪を損傷することになる。」

3.対比
本件発明と引用発明1とを対比する。
定着器における回転しながら熱を発生し定着を行う手段である点で、引用発明1における加熱ローラ27bは本件発明における定着部材に相当する。
定着器における定着部材のまわりに接触する部材である点で、引用発明1における剥離爪34およびクリーニングフェルト36は本件発明における接触部材に相当する。
電子写真プロセスにおける現像を行う手段である点で、引用発明1における現像装置は本件発明における現像器に相当する。

したがって、両者は以下のとおりのものである点で一致する。
「転写後の支持体上のトナー画像を少なくとも熱により定着を行う定着器を備えた画像形成装置において、
前記定着器は、回転しながら熱による定着を行う定着部材とこの定着部材のまわりに接触する接触部材とを有する定着器からなり、
現像器によりトナー画像を形成するプロセス部および前記定着器をともに駆動する1つの駆動モータを少なくとも有する駆動系、および前記定着部材を加熱した後に前記駆動モータの駆動を開始する制御装置を備えることを特徴とする画像形成装置。」

そして、以下に列挙する点で相違している。
(あ)本件発明ではプロセス部にトナー循環系を設け、駆動モータによりトナー循環系を定着器とともに駆動するのに対して、引用発明1ではメインモータ70で現像装置を加熱ローラとともに駆動している点。
(い)本件発明では定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに駆動モータの駆動を開始するのに対して、引用発明1では加熱ローラ27bの温度がトナーが溶融するに足る温度になるよう設定された時期にメインモータ70の駆動を開始する点。
(う)本件発明では駆動モータが、スローアップ、スローダウンおよび定速回転に駆動制御されるステップモータであるのに対して、引用発明1におけるメインモータはどの様なものであるか記載されていない点。

4.判断
上記相違点(あ)~(う)について検討する。
相違点(あ)については、現像装置に付加して、現像剤を循環搬送するとともにトナーを補給する手段を設けることは、たとえば刊行物2に記載されているように当業者に周知である。
引用発明1は上記摘記事項(b)にあるように、メインモータ70が加熱ローラ27bと、感光体ドラム10と、現像装置13の現像スリーブ13a、ミキサ13b、13c等と搬送ベルト26とを駆動するものであるから、上記周知技術を引用発明1に付加するにあたり、現像装置13の現像スリーブ13a、ミキサ13b、13c等と同様に現像剤を循環搬送する手段(刊行物2におけるスクリュー)をメインモータで駆動するよう構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る単なる設計変更程度のものに過ぎない。
相違点(い)については、定着装置において、熱源となるローラの表面温度を測定し、トナーの軟化点以上に表面が加熱された後にメインモータから前記ローラを駆動するよう構成し、固化したトナーによるローラおよび剥がし板、分離爪等の損傷を防ぐことは、たとえば刊行物3および4に記載されている様に当業者に周知の技術思想に過ぎない。また、周知技術により設定された時間に代えてローラの温度によりメインモータの駆動を制御するよう構成したところで、新規の作用効果を奏するものでもない。
相違点(う)については、電子写真装置において、駆動にステッピングモータを用いること、及び、ステッピングモータでスローアップ、スローダウン及び定速回転を行わせるよう制御することは、たとえば特開平4-333451号公報及び特開平5-3700号公報に記載されているように当業者に周知の技術事項に過ぎず、引用発明1におけるメインモータをステッピングモータで構成することは、当業者が必要に応じて適宜行う単なる設計変更程度の微差に過ぎない。
文献の記載および本件出願の明細書および図面の記載からみて、この周知技術におけるステッピングモータは本件発明におけるステップモータと等価である。また、これら文献の記載からみて、トナー循環系および定着器をステッピングモータで駆動することにより、格別の作用効果を奏するものでもない。

したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、平成16年7月29日付特許異議意見書において、特許権者は上記刊行物1~4のいずれにも本件発明のうち
C.現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に設けられ前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系および前記定着器をともに駆動する1つの駆動モータを少なくとも有する駆動系、および前記定着部材を加熱した後に前記駆動モータの駆動を開始する制御装置を備えている点
D.前記駆動モータは、スローアップ、スローダウン及び定速回転に駆動制御されるステップモータである点
の構成が記載されておらず、その結果、
(I)トナー画像を形成するプロセス部の現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系および定着器をともに駆動する1つの駆動モータを、制御装置により定着部材を加熱した後に駆動開始しているので、トナーが溶融または軟化して定着部材とそれに接触する接触部材との間で生じた固着を解消あるいは脆弱化した状態で、駆動モータの駆動を開始できる。これにより、定着器の駆動開始時に定着器の損傷を防止しつつ、トナー搬送動作が行われてトナー循環路内に滞留したトナーの溶融や凝集を防止できるようになる。
(II)また、駆動モータを1つにすることで、廃熱効率が向上する。
という格別の効果を奏することができない旨主張している。

しかしながら、上記Cについては、上記相違点(あ)に対して述べた様に引用発明1に周知技術を適宜付加することにより当業者が容易に想到しうるものである。
上記Dについては、上記相違点(う)に対して述べた様に、トナー循環系および定着器を駆動する駆動モータを、スローアップ、スローダウン及び定速回転に駆動制御されるステップモータとすることは、周知技術に基づき当業者が必要に応じて適宜行う単なる設計変更程度の微差に過ぎない。
特許権者の主張する作用効果(I)は、上記相違点(あ)に対して述べた様にトナー循環系を加熱ローラとともにメインモータ70で駆動することにより、結果として導き出されるものであり、格別のものではない。
また、画像形成装置内の複数の装置を1つのモータで駆動することは上述のとおり周知の技術事項に過ぎず、また、新規の作用効果を奏するものでもないから、特許権者の主張する作用効果(II)は新規のものではない。
したがって、特許権者の主張を採用することはできない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記引用文献に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】転写後の支持体上のトナー画像を少なくとも熱により定着を行う定着器を備えた画像形成装置において、
前記定着器は、回転しながら熱による定着を行う定着部材とこの定着部材のまわりに接触する接触部材とを有する定着器からなり、
現像器によりトナー画像を形成するプロセス部に設けられ前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系および前記定着器をともに駆動する1つの駆動モータを少なくとも有する駆動系、および前記定着部材を加熱した後に前記駆動モータの駆動を開始する制御装置を備えており、
前記駆動モータは、スローアップ、スローダウンおよび定速回転に駆動制御されるステップモータであり、
前記制御装置は、前記定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに前記駆動モータの駆動を開始することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真プロセスにより熱溶融性のトナーからなるトナー画像を紙やOHPシートなどの支持体上に形成し、この支持体上のトナー画像を熱ローラや熱ベルトなど定着部材の熱により溶融定着する定着器を有する、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に関し、より詳しくは定着器の駆動を制御する制御装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置には、電子写真プロセスにより熱溶融性のトナーからなるトナー画像を紙やOHPシートなどの支持体上に形成し、この支持体上のトナー画像を熱ローラや熱ベルトなど定着部材の熱により溶融定着する定着器を有する画像形成装置がある。この種の画像形成装置は、熱ローラや熱ベルトなど定着部材の駆動およびこの定着部材による加熱を制御する制御装置を備えている。一方、従来の画像形成装置は、トナー切れになると、現像器に直接トナーを補給していた。ところが、現像器にトナーを直接補給するためには、トナーボトルを現像器付近にまでもって行くためのスペースが必要で、装置を小型化する上での障害となっていた。そこで、小型の装置ではトナー収容部、感光体、帯電器、現像器、クリーナなどを含んで一体化されたカートリッジを交換することで、トナー補給を行っていた。
【0003】
ところが、近年、省資源やごみの減量化が社会問題となり、消耗品であるトナー以外の部品もトナーとともに廃棄するというカートリッジ方式に代わる消耗品補給方式が検討されてきた。その際、装置を大型化しなくともトナーを収容したトナータンクだけを交換してトナー補給することのできる、トナーホッパ方式が特公平3-60433に、トナー循環方式が特願平4-246771(特開平06-317984)に提案されている。
【0004】
このようなトナー補給方式での補給時の動作については、特公平3-60433に現像器内のトナー量が減少したときにホッパモータによりトナーホッパから現像器へトナー搬送することが述べられている。
【0005】
一方、このような小型の装置では、駆動系の省スペースのため駆動モータを1つとし、トナー循環系、画像形成系、定着系を同時に駆動すると良い。駆動モータが1つなので、装置駆動の制御系が簡略化されることはもちろん、転写と定着のような複数のプロセス間での、画像支持体搬送速度の調整をとることも容易になり、さらにモータは一般に駆動時に発熱するが、モータを1つにすることでその発熱源が一箇所になり、小型の装置では特に重要な、排熱の対策が容易となるためである。また、画像形成時には定着器や駆動モータが発熱するため、トナー循環路を含めた装置内部の温度が上昇するが、駆動モータを1つとすることで画像形成時には必ずトナー搬送動作が行われるため、トナーが温度上昇した循環路内に滞留することがなく、トナーの溶融や凝集といった問題が防がれ、好都合である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、駆動モータを1つにして装置全体の駆動を同期させるとともに、加熱定着を行う従来の画像形成装置では、画像形成後定着ローラの温度が低下して行くと、定着ローラのまわりに接触しているセンサーパッドやクリーニングパッド、加圧ローラ、分離爪などの接触部材と定着ローラとの間に溜った溶融したトナーが固化し、定着ローラと接触部材とが固着することがあった。このため、画像形成後少し時間が経過してから定着器を駆動しようしても、定着器が回転せず定着器の駆動モータがロックしてしまうという問題が生じた。そこで、この駆動モータを大型のものに変更して固着を破壊して回転できるようにしたところ、定着ローラとの間で固着していたセンサーパッドやクリーニングパッドなどの接触部材が破損することがあった。また、装置全体の駆動が1つの駆動モータで同期させていることから、このように駆動モータがロックした状態で画像形成を行うと、トナー搬送動作が行われなくなるため、前述のように画像形成時に定着器や駆動モータが発熱することでトナー循環路を含めた装置内部の温度が上昇したとき、トナーが温度上昇した循環路内に滞留してしまい、トナーの溶融や凝集といった問題が生じる。しかも、前述の公告公報記載のトナー補給動作を行うと、画像形成直後にトナー補給する場合は問題無いが、画像形成後少し時間が経過してからトナー補給をしようとすると定着器が回転せず駆動モータがロックして、前述と同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は前述の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、1つの駆動モータで現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系および定着器をともに駆動するとともに、加熱定着を行う画像形成装置において、定着器の駆動開始時にトナーの固化による定着部材と接触部材との固着を防止して定着器の損傷を防止するとともに、トナー循環路内に滞留したトナーの溶融や凝集を防止できる画像形成装置を提供することである。本発明の他の目的は、トナー補給時のトナー固着による定着器の損傷を防止するとともに、トナー補給時の起動トルクを小さくして小型のモータを使用できる画像形成装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の画像形成装置は、転写後の支持体上のトナー画像を少なくとも熱により定着を行う定着器を備えた画像形成装置において、前記定着器が、回転しながら熱による定着を行う定着部材とこの定着部材のまわりに接触する接触部材とを有する定着器からなり、現像器によりトナー画像を形成するプロセス部、前記現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系、前記トナー循環系および前記定着器をともに駆動する1つの駆動モータを少なくとも有する駆動系、および前記定着部材を加熱した後に前記駆動モータの駆動を開始する制御装置を備えており、
前記駆動モータが、スローアップ、スローダウンおよび定速回転に駆動制御されるステップモータであり、
前記制御装置が、前記定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに前記駆動モータの駆動を開始することを特徴とする。
【0009】
【作用】
このように構成された本発明の画像形成装置においては、トナー画像を形成するプロセス部の現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系および定着器をともに1つの駆動モータで駆動しているので、画像形成時に1つの駆動モータによりプロセス部のトナー循環系および定着器がともに駆動されるようになる。その場合、制御装置により定着部材を加熱した後に駆動モータの駆動が開始されるので、定着部材が加熱されてトナーが溶融または軟化した状態で、この1つの駆動モータが駆動開始される。つまり、トナーの固化により定着部材とそれに接触する接触部材との間で生じた固着が解消あるいは脆弱化された状態で、駆動モータの駆動が開始される。これにより、定着器の駆動開始時に定着器の損傷が防止されつつ、トナー搬送動作が行われてトナー循環路内に滞留したトナーの溶融や凝集が防止されるようになる。また、駆動モータを1つにすることで、排熱効率が向上する。また、定着部材と接触部材との間の固着が解消あるいは脆弱化することで、この固着を解除するためのトルクが必要なくなるので、定着器の駆動開始時の起動トルクが小さくなり、小型のモータが使用可能となる。更に、定着部材を加熱してこの定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに駆動モータの駆動が開始されることで、定着部材と接触部材との間の固着が確実に解消された状態で、駆動モータの駆動が開始される。これにより、定着器の駆動開始時に定着器の損傷がより効果的に防止される。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
【0011】
(実施例1)
図1は、本発明をプリンタに適用した一実施例である。この装置は、給紙ローラ11と分離パッド12からなる給紙部、図示しないレーザー光源と偏光装置21、折返しミラー22からなる露光部20、感光ドラム31、帯電ローラ32、現像器33、転写ローラ34、トナー循環路35、トナータンク36などからなる電子写真プロセス部30、トナー面に接する定着ローラ41と加圧ローラ42などからなる定着器40、外部のホストコンピュータとの通信、定着器ヒータの制御、モータの駆動制御、電子写真プロセス用電源の制御などを行う制御回路部50などからなり、それらが枠体60の中に収められている。
【0012】
このプリンタは、ホストのコンピュータからプリントデータを受け取ると、そのデータに応じて制御された露光部20からのレーザー光により、予め帯電ローラ32で均一に帯電された感光ドラム31上に潜像が形成される。感光ドラム31上の潜像は、現像器33によりトナー画像とされる。給紙トレイ13上の支持体である転写シートSは、感光ドラム31上の像形成に同期して給紙ローラ11により感光ドラム31と転写ローラ34のニップ部へ送られ、そこでトナー画像を転写される。転写後の未定着のトナー画像を載せた転写シートは転写ローラ34に送られて定着部40へ進み、定着ローラ41と加圧ローラ42のニップ部で定着ローラの熱と加圧ローラの圧力により、トナー像が定着される。定着部を抜けた転写紙は排紙ローラ80により装置外へ排出される。
【0013】
図示されない駆動系70は駆動モータ71とギア列72からなり、
ギア列72はトナー循環系、感光ドラム31、定着ローラ41などに動力を伝達する。駆動モータ71はステップモータで制御系51によりスローアップ、スローダウン、定速回転などに駆動制御される。
【0014】
枠体60を構成するカバー61はユーザが開放可能で、トナータンク36を交換するときには開放される。インターロックスイッチ62は、カバー61を開放すると解除され、カバーを閉鎖するとセットされる。ユーザの安全のため、カバー61が開いた状態すなわちインターロックが解除された状態では、全てのアクチュエータが非動作とされる。枠体60の表面にはLEDを主体とした表示部63があり、トナーエンド表示ランプ64もここに設けられている。また、枠体60内の空気は図示されない冷却ファン81によりを装置外に排出される。
【0015】
図2は定着器40の主断面図で、41は内部にヒータ43を設けた定着ローラで端部に設けられたギアを介して駆動系70により駆動される。定着ローラ41は、アルミ製のパイプを逆クラウンなど所望の形状に研削し、中央部の直径18mm肉厚0.6mmとしたものの表面に、離型層としてPTFEを30±5μmの厚みでコーティングしたものである。ヒータ43はハロゲンヒータで、制御系51からの信号でオンオフされるSSR52を介して交流電力が印加され、その点滅が制御される。42は加圧ローラで図示しない加圧機構により総荷重6Kgfで定着ローラ41に圧接される。加圧ローラ42は、快削鋼などの金属芯がね421上にLTVシリコンゴムなどの弾性材層422を設けて外径を18mmとしたもので、金属芯がね421は電気的に接地されている。加圧ローラ42の温度が室温付近では弾性材層422の電気抵抗は大きいが、温度の上昇につれ電気抵抗が小さくなるので、通常定着に使用する温度範囲では加圧ローラ42の表面に電荷が存在しても弾性材層422を通じて徐々に接地された芯がね421へ逃げて行き、表面に電荷が過剰に蓄積することが無い。定着ローラ41にはポリイミドシート441を介してサーミスタなどの温度検出素子44が弾性パッド442および板バネ443により押し当てられており、その表面の温度をある時定数だけ遅れて検出する。耐熱ナイロン性のクリーニングパッド45は定着ローラ41の回転によりローラ表面を摺擦し、トナーなどの汚れを拭き取る。分離爪46はPPS樹脂上にフッ素樹脂をコーティングしたもので、バネ461により定着ローラ41に圧接されており、定着後の転写紙が定着ローラ41に巻き付くことを防止している。定着動作時には、定着ローラ41は駆動系70により周速度24mm/secで回転駆動されるとともに、温度検出素子44からの信号に基づいて、ヒータ43の点滅が制御され、定着ローラ41の表面温度が所定範囲に制御される。
【0016】
図3はトナー循環系とトナータンク36の構成を示す部分切断斜視図である。内部に攪拌器363a、363bをもつトナータンク36は装置にセットされると、蓋361の開口部362からトナー循環路35にトナーを送り出す。トナー循環路35は現像器33とクリーナ部37を結んで閉じたエンドレス状になっている。トナー循環路内には、トナー搬送バネベルト351がエンドレスに張り渡されており、トナー搬送バネベルト351はギア352により駆動され、循環路35内のトナーを搬送する。ギア352は駆動系70により駆動される。トナーエンドセンサ353は発光部と受光部からなる反射型の光学式センサで、循環路35の底部に取り付けられる。循環路のそれと対向する天井部には反射板354が設けられていて、センサ353の発光部から発した光を受光部へと反射する。センサの受光量は循環路内のトナー量により変化し、受光量につれてセンサの出力も変化する。通常使用時には、センサ付近のトナーの量は所定範囲内にあるので、センサの出力も所定範囲内にある。印字に伴いトナーが消費されて装置内のトナー量が減って来ると、受光量が大きくなりセンサ出力は前記の所定範囲より高いレベルとなる。その後トナーがさらに消費され受光量がさらに大きく、センサ出力がさらに高くなるとトナーエンドと判定される。これらの判定のための受光量レベルは任意に設定することができる。
【0017】
図4は制御系51と定着器他のトナー補給動作に関連するユニットとの接続関係を示した図で、制御系は他にも電子写真プロセスの諸要素と接続されているが、ここでは省略した。図中細線は電気的な接続を、細線の二重線は駆動力の伝達を示している。制御系51にはトナーエンドセンサ353の出力信号、定着ローラに接する温度検出素子44の出力信号、インターロックスイッチ62の信号などが入力され、それらの情報を内部のプログラムで処理して、定着ローラやトナー搬送系の駆動信号を駆動系70に、定着器ヒータ43の通電信号をSSR52に、トナーエンドの表示信号をトナーエンド表示64に、ファン駆動信号を冷却ファン11にそれぞれ出力する。メモリ53は、NV-RAMなど装置の電源が切られても内容が保持されるもので、トナーエンド状態かどうかの情報などが記録される。駆動系70は制御系51からの駆動信号に従ってモータ71を回転し、駆動力がギア列72を介して定着ローラ43、トナー搬送ギア352に伝達される。SSR52は、制御系51からの通電信号により、交流電源54とヒータ43を接続あるいは遮断する。通電信号が与えられないときは、電源54とヒータ43は遮断される。トナーエンドセンサ353と温度検出素子44の出力はA/D変換されて制御系51に入力され、そのデジタル値で処理されるが、センサと制御系の間でコンパレータを含む回路などにより、所定値以上かどうかの判定結果が入力されるように構成されても良い。
【0018】
制御系51は、装置が動作している間は、所定時間間隔でトナーエンドセンサ353の出力をモニタし、出力レベルが所定範囲を外れてトナー量が少ない状態であるかどうかを監視する。トナー量が少ないと判断するのは、トナータンク36が空になり交換可能な状態となった時となるようにする。トナータンク中のトナーがなくなるまでは循環路中のトナー量は変化しないので、前述のようにトナー循環路中にセンサ353を設ければ、トナータンク36が空になってからセンサの出力レベルが変化するので、誤検出が防がれる。トナーエンドセンサ353をトナー循環路の現像器33より上流側、トナータンク36より下流側とすれば、現像器33で一時的に大量のトナーが消費されても誤検出することがなく好都合である。この時電気回路のノイズによるセンサ出力レベル変動や、トナー循環路内のトナーの局所的な粗密による一時的なセンサ出力レベル変動が予想されるときには、1度センサ出力が所定範囲を外れても、すぐにはトナーロー状態とは判断せず、複数回検出されてからトナーロー状態と判断させても良い。
【0019】
トナーロー状態と判断されると、制御装置は表示パネルのトナーエンド表示を点滅させ、ユーザにトナー量が少なくなったことを知らせる(トナーロー表示)。トナーの残量によって点滅間隔を変化させたり、表示の色を変えたりしても良い。あるいは、トナー残量メータを設けたり、トナーエンド表示とトナーロー表示を独立の表示装置で表示しても良い。トナーロー表示中は印字動作可能とする。
【0020】
トナーロー表示後ユーザがトナータンク36を交換すると、トナー搬送路35にトナーが再び供給され、印字動作にともなうトナー搬送によりトナーエンドセンサ部のトナー量も増えてトナーエンドセンサの出力レベルが所定範囲に復帰し、トナーロー表示が解除される。
【0021】
トナーロー表示後、トナータンクが交換されずに印字が続けられると、トナー搬送路中のトナー量はさらに減って行く。トナーエンドセンサの出力レベルがさらに変化すると、トナーローの場合と同様の判定基準によりトナーエンド状態と判断される。トナーエンド状態と判断されると、装置の電源を切られても保持されるメモリ53に、トナーエンド状態であることが記録される。こうすることで、次に電源オンした際にトナー量をモニタするために装置を動作させることが省略できる。
【0022】
印字中にトナーエンド状態が検出されると、次のページの印字要求があっても現在印字中のシートSH1を印字するだけで次のページ以降の印字は行わない。前記SH1の定着終了後、印字データのメモリには次のページ以降のデータを保持しておくが、定着器40の温度制御は中止し、ヒータ43は通電されないようになる。SH1の排出後、トナーエンド表示64を点灯させ、ユーザにトナーエンドを知らせる。トナーエンドを知ったユーザは装置のカバー61を開けて、空になったトナータンク36を新しいトナータンク36’に交換する。SH1の排出後にトナーエンドの表示をするので、ユーザがSH1の排出を待たずにカバー61を開けて装置を停止させてしまい結果としてSH1が装置内にとどまってしまうことが防がれる。また、長時間連続で印字したときなど、ヒータ43の通電が停止されても定着器40の温度がすぐには低下しない場合がある。この状態で、カバー61を開放するとインターロックスイッチ62が解除され、ユーザの安全のため冷却ファン81を含め全てのアクチュエータ類が動作停止するので、冷却ファン81により排出されていた定着器付近の熱が排出されなくなる。従って、定着器の温度が低下するまでは、印字停止した状態でトナーエンド表示を「点灯」ではなく「点滅」状態にして、ユーザにカバー開放するのを待ってもらうようにしても良い。この時定着器の温度が低下したことの判断は、温度検出素子44の検出温度が所定温度以下となることや、実験的に求められた定着器温度低下特性に基づいて決められた所定時間の経過によって行うことができる。
【0023】
トナーエンド状態が印字中以外に検出されたときは、新たに印字を開始することは禁止され、定着器温度が低いときには直ちにトナーエンド表示し、定着器温度が高いときには前述のように定着器温度が下がるのを待ってトナーエンド表示する。
【0024】
また、定着器の熱容量を小さくしたり、自然対流などによる排熱によって、定着器付近に滞留する熱を無視できるほど少なくすることにより、前述のように定着器の温度低下を待たずにトナータンクの交換ができるようにしても良い。さらに、装置のカバーを開放しなくても、トナータンク交換用のカバーのみの開放でトナータンクの交換が行えるようにして、冷却ファンが停止しないようにすることにより定着器温度の低下を待たずにトナーエンド表示やトナータンク交換を行えるようにしても良い。この時は、定着ローラの温度低下も少ないので後述するトナー固着解除のための定着ローラ昇温時間が短くなるという利点も有する。
【0025】
さて、トナーエンド表示を認めてユーザがトナータンク36を交換した後、ユーザが再びカバー61を閉じると、トナー補給を開始する。本実施例では、メモリ53にトナーエンド状態が保持されている時、インターロックスイッチ62が解除からセットされることでカバー61が閉鎖されたことを検知すると、トナー補給モードに入る。トナー補給モードへ入る条件は、この他にもカバー閉鎖直後にトナーエンド状態が検出されたときや、トナーエンド状態で電源が投入されしかもカバーが閉じているとき、あるいはユーザが操作するスイッチによるなどいろいろに設定し得る。
【0026】
図5はトナー補給モードの制御の流れを示すフローチャートである。トナー補給モードに入ると、ステップS1で定着ローラ表面設定温度が90℃でヒータ制御が開始される。また、定着器の熱を排出するために冷却ファン81も動作させる(S2)。次いで、サーミスタの検出温度が90℃以上かが判定され(S3)、90℃未満では90℃以上となるまで次のステップへ進まない。サーミスタ検出温度が90℃以上となると、トナー固着が解除されたと判断し、駆動系70をスタートさせ(S4)、トナー補給最大待ち時間タイマをスタートさせる(S5)。この時、加圧ローラの温度も室温より上がっているので、加圧ローラの表面から芯がねまでの電気抵抗が下がり、ローラ表面の電荷が芯がねを通じて徐々に逃げる。駆動系のスタート後トナーエンドセンサの動作を再開し、トナーエンド状態でなくなっているかどうかを判定する(S6)。トナーエンド状態でないとの判断は、トナーエンドセンサの出力レベルが前述の所定範囲内に復帰したかどうかでなされるが、エンド状態の検出同様、複数回連続して所定範囲内と検出されるまで判定を遅らせても良い。トナーエンド状態でないと判断されると、トナーエンド表示を解除して(S7)、定着器の温度制御を停止する(S8)。その後、駆動系を停止し(S9)、冷却ファンを停止し(S10)、トナー補給モードを終了する。判定の結果トナーエンド状態のままと判断されると、最大待ち時間タイマが経過したかが判定され(S11)、経過していないときはトナー補給動作が続けられる。最大待ち時間タイマが経過したときは、トナーエンド表示を解除せずに駆動系を停止させてトナー補給モードを抜け、トナーエンド判定時と同じ状態に戻る。最大待ち時間タイマは、トナーエンド状態でトナータンクを交換することなくカバーが開閉されたときなどに動作停止させるためのタイマで、通常のトナー補給動作に要する時間より長く選ぶことが必要で、本実施例では2分間とした。
【0027】
本実施例では、定着器を所定温度(90℃)まで昇温させることによってトナーの固着解除を行う。トナーの固着解除温度は、トナーの相変化温度、熱伝導率などから計算によって求めることもできるが、トナーの種類やトナーの溜った量や溜り方(厚くたまるか広くたまるかなど)、固着する相手などによって変化する。そこで、ここではトナー固着解除温度を求めるため、下記の実験を行った。
【0028】
(実験)
定着装置の寿命である10万枚相当の定着を行った定着器を、時間遅れの短い放射温度計で表面温度をモニタしながら常温から昇温させ、表面温度が100℃の時に定着ローラの回転を開始し、起動トルクを測定した。表面温度が90℃、80℃の時にも測定し、下記の結果を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
この結果から、常温から昇温して表面温度が90℃にすれば固着解除できることがわかった。
【0031】
トナー固着の解除には、温度だけでなく時間も必要だが、本実施例で使用したサーミスタを初め温度検出素子には時間遅れが有るので、温度検出素子による固着解除温度の検出時点では時間遅れ分だけの時間が経過しているので、固着は解除されている。
【0032】
トナー固着解除温度は、トナーの融点が低くしかも定着ローラに接触する部品が少ない場合には、室温よりわずかに高い温度であるなど、トナーを初めとした装置の構成によって異なるが、上記の実験を繰り返して求めることができる。しかし、より簡便にこの所定温度を求めるには、例えば所定温度を定着温度とすれば、定着装置の昇温に多少余計に時間がかかるが、定着温度は固着強度の弱まる温度より十分高く固着解除が可能な上、制御温度が通常定着時と同一なので制御系の構成が簡略化できる。また、トナー固着解除は温度検出素子の検出温度による他、ヒータのオフ時間や温度検出素子の検出温度の変化率などから予測しても良い。
【0033】
本実施例ではトナー補給モード中、定着器は定着温度より低い90℃で制御されるが、例えば印字途中にトナー補給モードに入った場合は補給終了後即座に印字可能となるように定着器を定着温度で制御し、印字途中でないときは装置内部の昇温を防止するために最低固着解除温度で制御するようにしても良い。
【0034】
このようにトナー補給モードを持ったため、トナータンク交換後循環路や現像器にトナーが行き渡らないために生ずる、画像の濃度むらや画像のカスレが防止され、交換後の第1印字時から良好な画質が得られた。また、トナータンク交換後トナーが循環路に行き渡らないと、トナーエンドセンサが再びトナーエンド状態と誤って判定する心配があるが、トナー補給モードにより循環路内にトナーが行き渡るため、そのような不都合は生じなかった。特にトナー循環方式では、循環路内のトナーの量が均一に減って行くので、トナーエンドを検出したときには循環路内全体でトナー量が減っており、補給モードが無いときには、上記のような不都合が長時間継続するおそれがあった。
【0035】
(実施例2)
トナー循環路や現像器が大きくトナー補給量が多い場合や、装置の動作速度が遅いときなど、トナー補給動作が長くかかる場合は、トナー補給モード中定着器が昇温されているため消費電力が多くなり、望ましくない機内温度上昇が引き起こされるだけでなく、定着ローラから加圧ローラへ流れる熱量が大きくなるため、加圧ローラの温度が通常の印字時に比べ非常に高くなる。トナー補給時間を短縮するためには、トナー補給時に通常より高速で動作させるように装置を構成することができるが、加圧ローラへ流れる熱量は依然として大きく、加圧ローラの温度上昇はやはり引き起こされる。加圧ローラの温度が上昇するとその上昇につれて、芯がねとシリコンゴムの接合部が弱くなり、耐久性に問題が生じてしまう。また、トナー補給直後に印字したとき加圧ローラの熱でシートにしわが発生する場合がある。このように加圧ローラが昇温することが望ましくないときは、定着器の温度をトナー固着が解除できる温度に引き上げて回転を開始した後、定着器を前記の温度以下の温度で制御するか、ヒータの通電を中止するとよい。本発明の第2の実施例はトナー補給モードでそのような制御を行うもので、図6はそのフローチャートである。装置の構成は第1の実施例と同様だが、通紙速度が18mm/秒で、装置の動作速度は第1の実施例のほぼ3/4である。トナー補給モードに入ると、定着ローラ表面設定温度が90℃でヒータ制御が開始され、冷却ファンがスタートされるる(S1’、S2’)。次いで、サーミスタの検出温度が90℃以上であるかが判定され(S3’)、90℃未満ではヒータ制御が続けられる。サーミスタ検出温度が90℃以上となると、トナー固着が解除されたと判断し、駆動系をスタートさせ(S4’)、トナー補給最大待ち時間タイマをスタートさせる(S5’)。ここまでは第1の実施例と同様である。第2の実施例ではステップS4’で駆動系をスタートさせた後、ステップS6’でヒータの制御を中止し、冷却ファンも停止する(S7’)。その後トナーエンドセンサの動作を再開し、トナーエンド状態でなくなっているかどうかを判定する(S8’)。トナーエンド状態でないと判断されると、トナーエンド表示を解除して(S9’)駆動系を停止し(S10’)、トナー補給モードを終了する。判定の結果トナーエンド状態のままと判断されると、最大待ち時間タイマが経過したかが判定され(S11’)、経過していないときはトナー供給動作が続けられる。最大待ち時間タイマが経過したときは、トナーエンド表示を解除せずにステップS10’へ移り駆動系を停止させてトナー補給モードを抜け、トナーエンド検出時と同じ状態に戻る。本実施例では装置の動作スピードが第1の実施例に比べ遅いので、最大待ち時間タイマもそれにともなって長く取った。この第2の実施例では、トナー補給中にヒータオフされ定着器の発熱が少ないので、冷却ファンを駆動する時間が短く、騒音が低減された。
【0036】
さて、本実施例ではトナー補給中定着ローラの温度が、トナー固着解除温度以下になることがあったが、固着による弊害が生ずることはなかった。その理由は次のように考えられる。例えば定着ローラと加圧ローラの間を例に取ると、その間で固着するためには、トナーが軟化してそれぞれのローラの表面の凹凸に倣い、トナー表面とローラ表面の間に空隙が無くなることが必要だが、ローラ回転中のニップ通過時間は0.1秒程度で、この短時間中に表面の凹凸に倣うことのできる軟化状態から固化状態に変化することはできず、軟化状態のままニップを通過するか、ニップ到達前に凹凸に倣うことができない程度に固化してそのままニップを通過するのである。いずれの場合も定着ローラと加圧ローラを固着させることにはならない。その他の接触部材に関しても同様である。これは、よほど凝固速度の速いトナーでない限り、どんなトナーを用いても同様だと考えられる。
【0037】
本実施例の定着ローラは、小径薄肉で熱容量が小さいため、一旦トナー固着解除温度まで昇温しても蓄積される熱量が少なく、本実施例の制御方式が特に効果的に用いられる。さらに、トナー補給後の昇温も短時間で済むため、トナー固着解除温度を保った場合に比べても、昇温のための待機時間はあまり変わらず、操作性にも違いが少ない点でも好ましかった。
【0038】
図7は、トナー固着解除後に定着器をトナー固着解除温度より低温で制御する場合の、制御のフローチャートである。およその流れは実施例2と同様だが、駆動系をスタートし最大待ち時間タイマをスタートした後にヒータ制御を中止する代わりに、設定温度60℃で制御させる。また、駆動系を停止した後ヒータ制御を停止する。この方式は、トナー補給が長時間かかる場合や低温度環境でトナー補給する場合に特に有効で、加圧ローラの温度が低下し過ぎて表面に摩擦による電荷が溜ることが防がれ、溜った電荷が放電するために生ずるノイズが防止された。
【0039】
以上の説明は、熱ローラを用いた定着装置を例に取ったが、ローラの片方あるいは両方がベルトであるベルト式定着器でも本発明を適用して同様の効果が得られるのは自明で、さらにラジアント定着器でも内部にシート搬送用のローラを持つものやシャッタを持つものなど可動部がトナーで固着するおそれのあるものにも本発明は適用できる。
【0040】
また、トナー補給モードを持つ画像形成装置で本発明を説明してきたが、トナー補給モードを持たない装置でも、画像形成と無関係にトナー循環動作をさせる場合がある。例えば、設置場所が傾斜していたり、装置の運搬中に倒されたりして、現像器やトナー循環路内でトナーが偏ったときに、そのまま画像形成すると印字の濃度むらやかすれが生ずるという問題があるが、画像形成に先だって、トナー循環動作をさせることで、トナーの偏りを解消させることができる。この偏り解消のためのトナー循環動作の際にも、本発明は好ましく適用できる。すなわち、トナー補給後にカバーの閉鎖などでトナー補給動作へ移行する代わりに、装置の傾斜を感知してトナー循環動作を開始させたり、ユーザが操作可能なボタンを操作パネルに設けて、それが押されたときに動作を開始させれば良い。
【0041】
さらに、これまでトナー補給時の動作について説明したが、その他にも転写紙をオートローディングする際に装置全体が駆動される装置などにも適用可能で、同様の効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べてきたように、本発明の画像形成装置によれば、トナー画像を形成するプロセス部の現像器にトナーを搬送することでトナーが補給されるトナー循環系および定着器をともに駆動する1つの駆動モータを、制御装置により定着部材を加熱した後に駆動開始しているので、トナーが溶融または軟化して定着部材とそれに接触する接触部材との間で生じた固着を解消あるいは脆弱化した状態で、駆動モータの駆動を開始できる。これにより、定着器の駆動開始時に定着器の損傷を防止しつつ、トナー搬送動作が行われてトナー循環路内に滞留したトナーの溶融や凝集を防止できるようになる。また、駆動モータを1つにすることで、排熱効率が向上する。また、定着部材と接触部材との間の固着を解消あるいは脆弱化することで、この固着を解除するためのトルクを不要にできるので、定着器の駆動開始時の起動トルクを小さくでき、小型のモータを使用できる。更に、定着部材を加熱してこの定着部材の温度がトナー固着解除温度になったときに駆動モータの駆動を開始することで、定着部材と接触部材との間の固着を確実に解消した状態で、駆動モータの駆動を開始できる。これにより、定着器の駆動開始時に定着器の損傷をより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をプリンタに適用した一実施例の主要断面図。
【図2】定着器の主断面図。
【図3】トナー循環系とトナータンクの構成を示す部分切断斜視図。
【図4】制御系と定着器他のトナー補給動作に関連するユニットとの接続関係を示した図。
【図5】第1の実施例におけるトナー補給時の制御の流れを示すフローチャート。
【図6】第2の実施例におけるトナー補給時の制御の流れを示すフローチャート。
【図7】第2の実施例の変形例におけるトナー補給時の制御の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
11・・・給紙ローラ
12・・・分離パッド
13・・・給紙トレイ
20・・・露光部
21・・・偏光装置
22・・・折返しミラー
30・・・電子写真プロセス部
31・・・感光ドラム
32・・・帯電ローラ
33・・・現像器
34・・・転写ローラ
35・・・トナー循環路
351・・トナー搬送バネベルト
352・・トナー搬送ギア
353・・トナーエンドセンサ
354・・反射板
36・・・トナータンク
361・・蓋
362・・開口部
37・・・クリーナ部
40・・・定着器
41・・・定着ローラ
42・・・加圧ローラ
421・・金属芯がね
422・・弾性材層
43・・・ヒータ
44・・・温度検出素子
441・・ポリイミドシート
442・・弾性パッド
443・・板バネ
45・・・クリーニングパッド
46・・・分離爪
461・・バネ
50・・・制御回路部
51・・・制御系
52・・・SSR
53・・・メモリ
54・・・交流電源
60・・・枠体
61・・・カバー
62・・・インターロックスイッチ
63・・・表示部
64・・・トナーエンド表示ランプ
70・・・駆動系
71・・・駆動モータ
72・・・ギア列
80・・・排紙ローラ
81・・・冷却ファン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-24 
出願番号 特願平5-257285
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 六車 江一
井出 和水
登録日 2002-11-08 
登録番号 特許第3367533号(P3367533)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 画像形成装置  
代理人 青木 健二  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 青木 健二  
代理人 大塚 康徳  

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