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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1152882
審判番号 不服2003-890  
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-15 
確定日 2007-03-01 
事件の表示 特願2000- 47837「吸収体製品の表面被覆シート」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月28日出願公開、特開2001-231815〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月24日の出願であって、平成14年12月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年2月12日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正は、平成14年8月5日付けで補正された明細書をさらに補正するものであり、【特許請求の範囲】の【請求項1】の、
「吸収体製品に、着用者の皮膚に接触した状態で使用される表面シートであって、多数の山部と、隣接する山部間に形成された谷部とを有するようにひだ状に成形された孔あきの疎水性表面シートと、この表面シートの前記谷部のみに接触するように、前記表面シートの下面に接合された親水性層とを備えていることを特徴とする吸収体製品の表面被覆シート。」を、
「吸収体製品に、着用者の皮膚に接触した状態で使用される表面シートであって、多数の山部と、隣接する山部間に形成された谷部とを有するようにひだ状に成形され、かつ前記山部および前記谷部に開口を設けた孔あきの疎水性表面シートと、この表面シートの前記谷部のみに接触するように、前記表面シートの下面に接合された親水性層とを備えていることを特徴とする吸収体製品の表面被覆シート。」
とする補正を含んでいる。
上記補正は、具体的には、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「疎水性表面シート」について、「ひだ状に成形された孔あきの疎水性表面シート」とされていたものを、「ひだ状に成形され、かつ前記山部および前記谷部に開口を設けた孔あきの疎水性表面シート」と、限定的に特定するものであり、補正前の明細書の段落番号【0007】の「図1において、符号1は波形に成形された孔あきの表面シートで、相互に平行な突条により、山部Aおよび谷部Bを形成するように波形に成形されている。…(中略)…図2は開口部を持った表面シート1の展開平面図を示している。この例の表面シート1は疎水性繊維からなる不織布に任意のパターンで多数の開口11を形成したものである。」及び【図2】の記載に基づくものであって、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更がないものであるので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とした補正に該当する。
そこで、上記の特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を含む補正後の本願発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)補正後の本願発明
補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである(以下、これを「本願補正発明1」という。)。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-299402号公報(以下、「引用文献」という。)には、「吸収性物品」に係る発明に関して以下の事項が図面とともに記載されている。
(イ)「液透過性表面層と、液不透過性裏面層と、該表面層及び裏面層の間に介在する吸液コアと、該表面層及び該吸液コアの間に介在する液濾過層とを有する吸収性物品において、
上記表面層は熱可塑性合成繊維を融着させて形成された不織布からなるシートであり、該シートの表面の一部又は全部は、多列の畝部と溝部とが交互に組み合わされており、且つ該畝部は凸状に湾曲し該溝部は凹状に湾曲しており、該溝部に間隔をおいて多数の開孔部を設けると共に該開孔部の周縁部に上記シートの表面から裏面に向けて起立する立体的リブを設け、…であることを特徴とする吸収性物品。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(ロ)「図1及び図2に示す本実施形態の使い捨ておむつ10は、液透過性表面層12と、液不透過性裏面層14と、該表面層12及び裏面層14の間に介在する吸液コア16と、該表面層12及び該吸液コア16の間に介在し且つ該吸液コア16と同寸法の液濾過層18とを有する。更に、図1に示すように、上記使い捨ておむつ10は、上記吸液コア16の長手方向対向縁側から外方へ延出し且つ上記表面層12及び上記裏面層14によって形成される背側フラップ部20、20…上記吸液コア16の長手方向対向縁側から外方へ延出する上記表面層12及び上記裏面層14の間には…上記吸液コア16の幅方向対向縁側から外方へ延出する上記表面層12及び上記裏面層14の間には…」(段落番号【0011】)
(ハ)「上記液透過性表面層12を構成する上記熱可塑性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル及びナイロンのようなポリアミド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。…」(段落番号【0014】)
(ニ)「また、図3及び図4から明らかなように、上記畝部30は凸状に湾曲し、且つ上記溝部32は凹状に湾曲している。そして、上記畝部30及び上記溝部32は交互に組み合わされて、上記液透過性表面層12の肌当接面(即ち、吸収表面)が平面部を有しないように配列されているので、本実施形態の使い捨ておむつ10においては、上記液透過性表面層12が肌に接する面積が小さくなる結果、肌へのベタツキが少なく、ドライ感(サラット感)が向上する。」(段落番号【0016】)
(ホ)「…該液濾過層18は、上記液透過性表面層12から透過してきた体液、特に幼児の軟便のような高粘性体液における粘性の高い体液を捕捉すると共に、粘性の低い体液をその下層に位置する吸液コア16に素早く透過させる濾過目的のために用いられるものである。…」(段落番号【0025】)
(ヘ)「…上記液濾過層18は親水性であることが好ましい。この目的のために、上記液濾過層18は、親水性の繊維から構成されるか又は疎水性の繊維から構成される場合にはその表面を界面活性剤処理して親水性にすることが好ましい。なお、上記液濾過層18を構成する繊維の具体例は、上記液透過性表面層を構成する繊維の具体例として挙げたものと同種のものである。…一層好ましくは、耐剛性に優れる点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂及びナイロンのようなポリアミド系樹脂等からなる熱可塑性合成繊維を親水化処理した繊維が用いられる。(段落番号【0027】)
(ト)【図2】及び【図3】には、液透過性表面層12の下面に、該液透過性表面層12の溝部に設けられた開口部のみに接触するように液濾過層18が接合されている態様が示されている。
以上の記載から、引用文献には、「多数の畝部と隣接する畝部間に形成された溝部を有し、該溝部に開口を設けた液透過性表面層とこの液透過性表面層の溝部に設けられた開口部のみに接触するように液透過性表面層の下面に接合された親水性の液濾過層を備えた吸収体製品」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明1と上記引用発明とを対比する。
引用発明の液透過性表面層は、上記摘示記載(ニ)からも明らかなように、吸収体製品において着用者の皮膚に接触した状態で使用されるのであり、本願補正発明1の「表面シート」に相当し、引用発明の「畝部」及び「溝部」は、それぞれ、本願補正発明1の「山部」及び「谷部」に相当するので、引用発明の液透過性表面層も本願補正発明1でいうひだ状に形成されているということができ、引用発明の「液透過性表面層」を構成する熱可塑性合成繊維として摘示記載(ハ)において例示された、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル及びナイロンのようなポリアミド等は、摘示記載(ヘ)で、親水性とするためには親水化処理が必要であるとされているように、通常は、「疎水性」の材料である。
また、上記摘示記載(ロ)に示されるように、吸収性コアの周囲から全方向に延出する引用発明の「液透過性表面層」は、吸水性コアと同寸法の「液濾過層」とともに本願補正発明1でいう「表面被覆シート」を形成するものということができ、本願補正発明1の親水性の「液濾過層」は、本願補正発明1の「親水性層」に相当する。
してみれば、引用発明は、本願補正発明1でいう「吸収体製品に、着用者の皮膚に接触した状態で使用される表面シートであって、多数の山部と、隣接する山部間に形成された谷部とを有するようにひだ状に成形され、開口を設けた孔あきの疎水性表面シートと、この表面シートの前記谷部のみに接触するように、前記表面シートの下面に接合された親水性層とを備えていることを特徴とする吸収体製品の表面被覆シート」を具備することになり、この点で両者は一致しており、本願補正発明1の、表面シートは、山部および谷部に開口が設けられているのに対し、引用発明の液透過性表面層は、溝部に開口を設けており、畝部には開口が設けられていない点でのみ相違する。

(4)判断
そこで、上記の相違点について検討する。
吸収性物品の表面シートとして、開口不織布や開口フィルムのようにシート全面に開口を設けた孔あきシートを使用することは本願出願前周知慣用の技術的事項でありところ、そのような孔あきシートを、着用者の肌に対する当接部と非当接部とを有するように、複数条の畝を形成された、すなわち山部と谷部を形成された表面シートに用いることも、例えば、特開平11-89879号公報に示されるように本願出願前周知の事項であり、その場合、シート全面に設けられた開口が、山部にも谷部にも配されることは、上記周知文献の図面にも示されるように自明の事項である。
してみれば、上記本願出願前周知の全面に開口を有する孔あきシートを引用発明の液透過性表面層のような下面に親水性層を接合した表面シートに採用し、開口が溝部(谷部)のみならず畝部(山部)にも配されるようにすることは当業者が容易になし得る程度の事項であり、これを阻害する格別の事情もなく、また、そのことによって、生じる作用・効果も引用文献に記載された事項及び技術常識から当業者が容易に予測しうる程度のものであり、格別のものではない。
したがって、本願補正発明1は、本願出願前周知の技術的事項を勘案すれば、上記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至11に係る発明は、補正前の(平成14年8月5日付けで補正された)明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、前記2.に記載した通りである。(以下、これにより特定される発明を「本願発明1」という。)。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(以下、「引用文献」という。)及びその記載事項は、前記「2.(2)引用文献」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明1は、前記2.で検討した本件補正発明1から、「疎水性表面シート」の限定事項である、「前記山部および前記谷部に開口を設けた」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した物に相当する本願補正発明1が、前記「2.(4)判断」に記載したとおり、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-02 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-22 
出願番号 特願2000-47837(P2000-47837)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志水野 治彦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 種子 浩明
溝渕 良一
発明の名称 吸収体製品の表面被覆シート  
代理人 西村 教光  

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