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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A63F |
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管理番号 | 1155893 |
審判番号 | 無効2004-80008 |
総通号数 | 90 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-06-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-04-08 |
確定日 | 2007-03-14 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1842033号「パチンコ遊技機用電動役物装置」の特許無効審判事件についてされた平成17年 3月16日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成17年行ケ第10434号平成17年7月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第1842033号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続きの経緯 (1)本件特許第1842033号の請求項1に係る発明についての出願は、昭和62年4月13日に出願され、平成6年5月12日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、平成16年4月8日付で株式会社三共より本件無効審判の請求がなされ、同年6月25日付で被請求人より審判事件答弁書及び訂正請求書が提出され、同年8月9日付で審判請求人より弁駁書が提出され、平成17年3月16日付で本件の請求項1に係る特許を無効とする旨の審決がなされたところ、本件の被請求人はこれを不服として知的財産高等裁判所に当該審決の取消を求める訴(平成17年(行ケ)第10434号)を提起した後、本件特許第1842033号につき訂正審判の請求(訂正2005-39110号)をし、平成17年7月15日付で前記審決を取り消す旨の決定がなされ、同年8月5日付の訂正請求のための期間指定通知に対して、特許法第134条の3第5項の規定により、上記訂正審判の請求書に添付された明細書(以下「援用明細書」という)を援用する、無効審判の「訂正の請求」(以下「本件訂正」という)がなされたものである。 第2.訂正の可否に対する判断 (1)訂正の内容 「本件訂正」の内容は、「本件特許発明」の明細書を、「援用明細書」のとおりに訂正しようとするものである。 即ち、 (訂正事項a.)特許請求の範囲を、 「表面に複数種類の図柄を有するとともに該表面の一個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、上記各回転ドラムのドラム内に配設されるとともに各回転ドラムを回転させる3個の2相励磁のパルスモータと、上記3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラムの表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記フォトセンサの検出信号との論理積に基づいて上記基準点を検知する制御部とを備え、 パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させるようにしたことを特徴とするパチンコ遊技機用電動役物装置。」と訂正する。 (訂正事項b.)公告公報の第3欄第10行から同欄第33行を、 「〔問題点を解決するための手段〕 上記の問題を解消するためになした本発明のパチンコ遊技機用電動役物装置は、表面に複数種類の図柄を有するとともに該表面の一個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、上記各回転ドラムのドラム内に配設されるとともに各回転ドラムを回転させる3個の2相励磁のパルスモータと、上記3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じて検出信号を出力するフォトセンサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラムの表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記フォトセンサの検出信号との論理積に基づいて上記基準点を検知する制御部とを備え、パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させてパルスモータを駆動し、上記停止タイマによる時間になると乱数、テーブル等より各パルスモータの停止位置を決定し、その後に上記各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを前記決定された停止位置で順次停止させるようにしたことを特徴とする。」と訂正する。 (訂正事項c.)公告公報第3頁第5欄第13行の「基準例示パターンによて回動・停止されたとき」を「基準励磁パターンによって回動・停止されたとき」と訂正する。 (訂正事項d.)公告公報第3頁第5欄第44行?第6欄第1行、同頁第6欄第26行?第27行、第4頁第8欄第38行及び同欄第40行の「フローテヤート」を「フローチャート」と訂正する。 (訂正事項e.)公告公報第4頁第7欄第28行の「それぞれの動作が終了始すると」を「それぞれの動作が終了すると」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否 2-1.訂正の目的 訂正事項a.については、 「複数の回転ドラム」を「3個の回転ドラム」 に訂正する、 「複数のパルスモータ」を「3個の2相励磁のパルスモータ」 に訂正する、 「反射型光センサ」を「フォトセンサ」に訂正する、 「各回転ドラムの表面の上記特定の反射特性を有する部分を含む円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力する反射型光センサ」 を 「3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサ」 に訂正する、 「上記パルスモータの駆動パルスの励磁パターンの二周期分に相当する回動角より小さな角度を張る幅で上記基準点を中心にして上記回転ドラム上に設けられた特定の反射特性を有する部分」 を 「上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラム上の表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分」 に訂正する、 「制御手段」を「制御部」 に訂正する、 及び、 「パチンコ遊技機の特定の入賞口に入賞したときに、上記制御手段により、上記回転ドラムを回転させて基準点を検知し、この基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記回転ドラムを所定の位置に停止させるようにした」 を 「パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させるようにした」 に訂正するものであり、 これら訂正は「回転ドラム」、「パルスモータ」、「光センサ」、「特定の反射特性を有する部分」、「ドラムを停止させる」に係る構成を限定するもの及び同一事項の自明な言い換えであるから、全体として訂正事項a.は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項b.については、前記特許請求の範囲の減縮に伴って訂正された特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるために訂正する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項c.d.e.は誤記の訂正を目的とするものである。 2-2.新規事項、拡張及び変更 上記訂正事項a.ないしe.は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)結び 以上のとおりであるから、「本件訂正」は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書きに適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3.本件特許発明 特許第1842033号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、上記「本件訂正」が認められるから、「援用明細書」及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「表面に複数種類の図柄を有するとともに該表面の一個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、上記各回転ドラムのドラム内に配設されるとともに各回転ドラムを回転させる 3個の2相励磁のパルスモータと、上記3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラムの表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記フォトセンサの検出信号との論理積に基づいて上記基準点を検知する制御部とを備え、パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させるようにしたことを特徴とするパチンコ遊技機用電動役物装置。」 第4.請求人の主張 これに対して、請求人は、「本件特許発明」の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、「本件特許発明」は、下記第6.に示す甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである(無効理由1)、と主張し、証拠方法として甲第1乃至10号証を提出している。 請求人はまた、「本件特許発明」の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件をみたしていない出願に対してされたものであるので、無効とすべきものである(無効理由2)と主張している。 第5.被請求人の主張 一方、被請求人は、 「甲第1号証には、パチンコ機の回転ドラムに対して「パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させるように」制御する構成について何も記載されていない」、 「甲第2、4号証は甲第1号証と同様に本件特許発明の構成とは全く相違する」、 「甲第3号証に記載の回転ドラムの駆動制御では、本件特許発明のように「乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて3個の回転ドラムを順次停止させる」ことができない。 従って、甲第3号証の上記構成からは、本件特許発明の作用効果を奏することができず、本件特許発明に想到することは不可能」 「甲第5、8号証は、ステッピングモータの可動部の基準位置を正確に検出するための構成が開示されているに留まり、本件特許発明の構成要件「3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度を指示を行」 う構成については何も記載されていない。従って、甲第5号証に記載の発明は、本件特許発明のように複数の回転ドラムの回転・停止制御を個別に行うことができないので、本件特許発明の上記作用効果を奏することはできない」、 「甲第6号証は甲第5号証と同様に、本件特許発明の構成要件「3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度を指示を行」う構成については何も記載されていない」、 「甲第7号証は技術分野が全く異なるものであり、しかも、甲第5号証、甲第6号証と同様に、本件特許発明の構成要件「3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度を指示を行」 う構成については何も記載されていない」、 「甲第9、10号証は、甲第1号証等と同様に本件特許発明の構成とは全く相違する」、 ので、これらに記載の発明から容易に想到できるものではない、と主張している。 第6.引用文献 甲第1号証:実願昭60-36595号(実開昭61-151783号)のマイクロフィルム 甲第2号証:海老原大樹、岩佐孝夫編著「ステッピングモータ活用技術」株式会社工業調査会 昭和59年9月5日発行 甲第3号証:特開昭59-37966号公報 甲第4号証:実願昭55-63934号(実開昭56-163486号)のマイクロフィルム 甲第5号証:特開昭59-113790号公報 甲第6号証:実公昭50-29681号公報 甲第7号証:実公昭51-48056号公報 甲第8号証:特開昭59-44285号公報 甲第9号証:実願昭56-191405号(実開昭58-95882号)のマイクロフィルム 甲第10号証:実願昭60-63157号(実開昭61-180084号)のマイクロフィルム 甲第10号証には、以下の記載がある。 (記載1.)「本考案はスロットマシンに関し、詳しくは、表示部における各シンボル列ごとのシンボルの配列をずらすようにしたスロットマシンに関するものである。」(第2頁第4-7行) (記載2.)「本考案を用いたスロットマシンの外観を示す第1図において、スロットマシンの本体1内には、それぞれの外周にシンボルが一定のピッチで配列され、ステッピングモータ10?12(第2図参照)によって駆動されるリール2?4が設けられている。」(第5頁第3-8行) (記載3.)「この基準位置を決めるには、例えばリール枠13の外周に突設された遮光片13aが利用される。この遮光片13aは、後述するように、リール13の回転位置とこれを回転させるためのステッピングモータ14との相関を決めるために使用される。」(第6頁第20行-第7頁第5行) (記載4.)「リール2?4の駆動は、第3図に示した回路によって制御される。」(第8頁第2、3行) (記載5.)「モータ制御回路18は、パルス発生部19から発生されるパルス列を、モータ駆動回路20?22に供給する。この結果ステッピングモータ24?26が駆動されるのでリール2?4が回転する。」(第8頁第7?11行) (記載5.)「リール2?4のそれぞれは、供給されるパルスの個数に応じて一定角度づつ回転されるが、供給されるパルスの個数は、それぞれのカウンタ30?32によって計数される。この計数値は、各リール2?4が停止したときの、入賞ライン10、11上におけるシンボルの種別を自動的に判定するために用いられるが、リール2?4の一回転ごとにこの計数値はリセットされる。前記カウンタ30?32の計数値をリセットするための信号は、リール2?4の外周の一部に一体化された遮光片2a?4aの通過を検出するホトセンサ33?35から得られるようになっている。」(第8頁第12行-第9頁第3行) (記載6.)「例えば、ステッピングモータ24?26として1パルスあたり1.8°回転するものを使用し、リール2?4のそれぞれには20個のシンボルが配列されている場合には、ステッピングモータ24?26に10パルス供給されると、リール2?4が1シンボル分回転され、200パルスでリール2?4が1回転する。そこで、リール2およびリール4を回転させるステッピングモータ24、26については、一回転が検出される基準位置から10パルスごとに停止されるようにするとともに、リール3を回転させるステッピングモータ25については、前記基準位置から5パルス分ずれた位置で停止させるようにすればよい。」(第11ページ第11行-第12ページ第4行) 以上の記載からみて甲第10号証には、次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。 (「引用発明1」) 「外周にシンボルが一定のピッチで配列され、ステッピングモータによって駆動される、リール枠の外周に突設された遮光片を有する3個のリールと、リールを駆動するステッピングモータと、パルス発生部から発生されるパルス列をモータ駆動回路に供給するモータ制御回路と、パルスを計数するための基準位置通過検出によりリセットされるカウンタと、リールの回転位置とこれを回転させるためのステッピングモータとの相関を決めるための基準位置の決定に使用される、遮光片の通過を検出するホトセンサと、を備え、2個のリールは基準位置から10パルスごとに、1個のリールはそれらから5パルス分ずれた位置で停止されるようにしたスロットマシン用リール装置」 また、次の各文献には次の記載がある。 甲第1号証 (記載7.)「パルスモータなどの回転位置制御モータによってリールドラムが駆動されると共に、リールドラムの回転基準位置がリールドラムに付設した位置決め部材の通過を基準位置検出センサで検出することによって検知されるスロットマシンにおけるリール回転位置検出装置において、前記位置決め部材をリールドラムにその円周方向の取付位置を調整できるようにして取付けたことを特徴とするスロットマシンにおけるリール回転位置検出装置。」(第1ページ請求の範囲) (記載8.)「前記位置決め部材26はリールドラム15と一体に回転するが、その先端部29の通過をフォトカプラからなる基準位置検出センサ17によって検出することにより、リールドラム15の回転基準位置を検出することができる。尚、前記基準位置検出センサ17は前記ハウジング11に固定されている。 かくして上記構成によると、パルスモータ16を制御する制御回路に対し、基準位置検出センサ17によって検出される基準位置信号が付与されることによって、リールドラム15の1回転毎の回転位置を正確に制御できることになる。又リールドラム15の停止時における前記ライン7上のシンボル19の判別も即時に行うことができることは良く知られている。」(第7頁第9行-第8頁第3行) 甲第2号証 (記載9.)「励磁シーケンスが一巡するパルス分以下」「2相1.8°のとき・・・・・・7.2°以下」(第228頁、Q5の項、付図17の説明) 甲第3号証 (記載10.)「この発明は回転表示器付遊技機の表示状態検出装置に関し、特に回転体で表示される識別情報を回転体の回転によって変化する回転表示器を設けた遊技機において、回転表示器の表示状態を検出する装置の改良に関する。 一般に、機械的に識別情報を可変表示する表示器としては、スロットマシンや、回転ドラム付弾球遊技機などが知られている。」(第2頁右上欄第5-12行) (記載11.)「セーフ孔2a?2cは、入賞玉があったとき、回転ドラム表示器30を表示駆動または可変表示できるように定められた孔である。」(第3ページ左上欄第18-20行) (記載12.)「この被検出部33rは、回転ドラム31aの1回転するまでの各識別情報の形成位置を検出するための基準となる位置を検出するのに利用される。これらの被検出部330?339、33rは、たとえばこれらを検出する手段が光学的検出手段であり、光を発生する発光部およびその光の反射光を受光する受光部を含むものであれば、光を反射できるようなアルミ箔などの部材を貼着することによって形成される。」(第4頁右上欄第15行-左下欄第4行) (記載12の2.)「停止信号発生回路43は、停止スイッチ7が押圧されたとき停止信号を発生する回路、または開始信号が発生されてから一定時間内に停止スイッチ7が押圧されないときタイムアップ信号を導出するタイマによって構成され、その停止信号を駆動回路42に与える。」(第5頁左下欄第18行-右下欄第4行) (記載13.)「さらに、上述の実施例では、回転表示器付遊技機の一例として、パチンコ機の場合を述べたが、その他の弾球遊技機や、スロットマシンにもこの発明の表示状態検出装置を適用できる。」(第10頁左上欄第16-19行) 甲第4号証 (記載14.)「上記区別手段は、赤外線反射域と赤外線吸収域により構成される一方、上記検知素子は、赤外線を発射する発射部と、発射された赤外線が検知帯の反射域で反射された反射赤外線を受光する受光部とを有することを特徴とする」(第3ページ第2-6行) 甲第5号証 (記載15.)「基準位置に固定されて可動部を検知し、これにより前記可動部の位置が前記基準位置にあることを検出する基準位置検出器を有するステッピングモータにおいて、前記ステッピングモータに供給される駆動パルスのパターンのうち特定の1パターンを検出するパターン検出部と、このパターン検出部の出力信号と前記基準位置検出器の出力信号の論理積をとるアンド回路とを具備することを特徴とするステッピングモータ。」(第1ページ左下欄特許請求の範囲) (記載16.)「ここで、基準位置検出器7に要求される検出精度を考えてみる。第3図(イ)?(ニ)は各々第1図に示すリニアパルスモータを2相励磁駆動方式により図面左方に駆動した場合の各ステップ動作を示す図である。」(第2頁左上欄第5-9行) (記載17.)「第4図はこの発明の一実施例の構成を示す回路図、第5図(イ)?(リ)は各々同実施例における回路各部の波形図である。なお、この実施例における機械的構成は第1図?第3図に示すものと同様となつている。」(第2頁左下欄第20行-右下欄第4行) (記載18.)「すなわち、基準位置検出器7の精度が±1/2ピッチ以下であれば、スライダ2の基準位置決めを正確に行うことができる。なお、この実施例はリニアパルスモータに本発明を適用した例であるが、本発明は一般のステッピングモータにも適用できることは勿論である。」(第3ページ右上欄第17行-左下欄第3行) 甲第6号証 (記載19.)「この考案は、希望位置に正確にパルスモータまたはステッピングモータを停止させるようにした停止装置に関するものである」(第1ページ第1欄第31-33行) (記載20.)「複数個の電気パルス信号で駆動するパルスモータまたはステッピングモータの回転によつて得られる停止位置検出信号で前記電気パルス信号を遮断させ前記モータを停止させるシステムにおいて前記停止位置検出信号の他に、前記複数個の電気パルス信号又は前記モータの駆動コイルに生ずるパルス信号の組合わせを検出する手段と、これら2つの信号の論理積出力によつて前記モータを停止させる手段とを備えたことを特徴とするパルスモータ又はステッピングモータの停止装置。」(第3ページ第6欄実用新案登録請求の範囲) 甲第7号証 (記載21.)「回転位置検出器10は例えば送りねじ1回転に1個の検出信号を発生する。 本考案においては、制御対象の原点停止は上記リミツトスイツチによる検出信号及び1回転検出信号に加えパルスモータの特定励磁相を検出した特定励磁相検出信号とによつて行なうことを特徴としている。」(第1ページ第2欄第19-26行) (記載22.)「制御対象が原点位置近傍に到来したことを減速用リミツトスイツチ8により検出しパルスモータを減速せしめ、減速後リミツトスイツチ9を踏んだらパルスモータの回転方向を反転し、その後1回転信号とパルスモータの特定励磁相検出信号との論理積がとれた時、パルスモータを停止して原点設定を終了する。」(第1ページ第2欄第30-36行) (記載23.)「パルスモータを用いて制御対象の移動を制御する数値制御工作機械において、減速用リミツトスイツチと、パルスモータの1回転を検出し1回転信号を発生する回転検出手段と、パルスモータの特定励磁相を検出し特定励磁相検出信号を発生する手段と、前記1回転信号と特定励磁相検出信号とを入力される論理積回路とを含み、前記リミツトスイツチが動作した時、パルスモータの回転を減速し、減速後、特定励磁相検出信号と1回転信号との論理積がとれたことにより制御対象の原点設定を行なうことを特徴とする数値制御工作機械の原点設定装置。」(第3ページ第6欄実用新案登録請求の範囲) 甲第8号証 (記載24.)「セーフ孔2a?2cは、入賞玉があったとき、回転ドラム表示器30表示駆動または可変表示できるように定められた孔である」(第3頁右上欄第18行-左下欄第1行) (記載24の2.)「前述のごとく形成された回転ドラム31a?31cは、ドラム軸34を軸孔311へ挿入することによって、ドラム軸34で遊嵌されて、その摩擦力で個別的に回転自在に支持される。ドラム軸34の両端は、ボックス35の側面で軸支される。」(第4頁右下欄第11-15行) (記載24の3.)「各回転ドラム31a?31cの第1の磁性体の形成位置に対応するボックス35の上部壁面には、センサ461a?461cが設けられる。また各回転ドラム31a?31cの第2の磁性体の形成位置に対応するボックス35の上部壁面には、リセット位置検出用センサ462a?462cが装着される。このセンサ461a?461cおよび462a?462cは、第1の磁性体330?339、33rが鉄片であれば近接センサまたは磁気抵抗素子が用いられ、永久磁石であれば感磁性素子または磁電変換素子が用いられる。」(第5頁右上欄第1-12行) (記載25.)「ところで、上述の実施例では、回転ドラム表示器付遊技機の一例として、パチンコ機の場合を述べたが、その他の弾球遊技機や、スロットマシンにもこの発明の表示状態検出装置を適用できる。」(第9頁右下欄第18行-第10頁左上欄第1行) 甲第9号証 (記載26.)「スタートスイッチ22がONすると、ゲームプログラムが実行され、モータ制御回路26?28にパルスを供給する。・・・ ・・・このパルスの積算値によって、リールの回転位置を検出するものであるから、リールの1回転毎にリセツト(クリヤ)する必要がある。そのために、各リール3?5の一部に遮光片3a、4a、5aがそれぞれ設けられており、この遮光片3a?5aがホトインタラプタ32?33で検知され、この検知信号がマイクロコンピュータ25に送られた際にパルスの積算値が零にクリヤされる。」(第7頁第8行-第8頁第3行) 第7.対比 「本件特許発明」と「引用発明1」とを比較すると、後者の「シンボル」は前者の「図柄」に、「3個のリール」は「3個の回転ドラム」に、「外周」は「表面」に、「ステッピングモータ」は「パルスモータ」に、「基準位置」は「基準点」に、「遮光片の通過を検知するホトセンサ」は「照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサ」に、「パルス列をモータ駆動回路に供給する」は「パルスモータに駆動パルスを出力する」に、「パルスを計数」は「駆動ステップ数を計数」に、 また、後者の「基準位置から10パルスごとに停止させる」及び「それらから5パルス分ずれた位置で停止される」は、前者の「基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて回転ドラムを停止させる」に、それぞれ相当し、パチンコ遊技機の図柄回転役物の回転ドラムとスロットマシンのリールとは、共に表面に複数種類の図柄を有するものであるから、 両者は、 「表面に複数種類の図柄を有するとともに1個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、3個の回転ドラムを回転させる複数のパルスモータと、基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて回転ドラムを所定の位置に停止させるようにした、遊技機用電動装置」 である点において一致し、 (相違点1) 「本件特許発明」においては、 「パチンコ遊技機用電動役物装置」であり「ドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させる」のに対し、 「引用発明1」においては、 「スロットマシン用リール装置」であり「2個のリールは基準位置から10パルスごとに、1個のリールはそれらから5パルス分ずれた位置で停止されるようにした」としている以外ドラムの回転開始、停止については格別限定していない点、 (相違点2) パルスモータが、 「本件特許発明」においては、 ドラム内に配設されたものであり、「2相励磁の」の駆動方式を採用した ものであるのに対し、 「引用発明1」においては、格別の特定がない点、 (相違点3) 「本件特許発明」においては、 「3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサ」 なる構成を有しているのに対し 「引用発明1」においては、 「3個の回転リール」が間隙を介して取付けられるケースを有するかどうか、またケースの背面に固定された背板にフォトセンサが取付けられているかどうか不明である点、 (相違点4) 基準点の検知を、 「本件特許発明」においては、 「各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力する反射型光センサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記反射型光センサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラム上の表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記反射型光センサの検出信号との論理積に基づいて前記基準点を検知する」 ことにより行うのに対し、 「引用発明1」においては、 遮光片の通過を検知するホトセンサにより基準位置を決定してリール回転位置とこれを回転させるためのステッピングモータの相関を決める、としており、ホトセンサが検知する遮光片に寸法について格別限定を記載しておらず、また、基準位置決定のためのホトセンサ信号の具体的処理については記載がない点、 において相違する。 第8.当審の判断 (相違点1) パチンコ遊技機においても、スロットマシンにおいても、回転ドラムを用いて複数の図柄の組み合わせに応じた当たり動作をおこなうことは周知であって、回転開始及び停止の契機となる信号の発生態様を別にすれば、共に、所定の位置で停止するように制御するものである点に変わりはなく、回転ドラム装置がどちらの遊技機にも使用できることは、例えば上記甲第3号証記載10及び上記甲第8号証記載25にも見られるように、当業者には自明である。 そして、回転開始に関して、「本件特許発明」の「ドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させる」点も、例えば甲第8号証記載24に見られるように、周知慣用の構成であって当業者が適宜採用出来る構成にすぎず、停止の契機としてタイマを用いてドラム回転開始から一定時間とすることも、甲第3号証記載12の2.に見られるように当業者の適宜なし得る程度のことである。 さらに、「回転速度の指示を行い」としている点は、訂正の根拠である公告公報第3ページ第6欄第30-35行の記載の他は格別の記載がなく、同記載は「制御部は・・・各パルスモータに始動指示と回転スピードの指示を行って・・・」としているに過ぎないから、パルスモータによる回転駆動における通常の速度制御であると解され、「引用発明1」においてもパルスモータによる回転駆動をおこなっており、パルスモータ駆動においては駆動パルスにより定まるスピードて回転するものであるから、「本件特許発明」と同様に通常のスピード指示がなされていると解されるから、この点に格別の想到困難性は認められない。 よって、相違点1は格別のものではない。 (相違点2) 位置制御用のパルスモータの駆動方式として、「2相励磁」は代表的な方式にすぎず(必要ならば坪島重彦、中村修照著、昭和48年2月25日第1版第1刷発行「モータ活用マニュアル」第287頁等参照)、甲第5号証(記載16)にも示される従来から周知の方式であって、「引用発明1」の駆動方式として採用することに格別の困難はない。 また、モータがドラム内に配設される点も、ドラム内にモータを配置する程度の空間があることは例えば甲第1号証第4図、また周知例として例えば特開昭62-233183号公報第3図等に見られるように周知であり、3個のドラムをそれぞれ回転させるモータを配設する場所をドラム内とすることに困難は無い。 よって、相違点2は格別のものではない。 (相違点3) 3個の回転ドラムが間隙を介してケースに取付けられることは、例えば甲第8号証記載24の2、及び周知例として例えば特開昭59-141973号公報等にも見られ、また、一般的に部品をユニット化して取り付けることは技術常識であるから、回転ドラムを取り付けるケースが設けられるという程度の事項は格別想到するに困難なものではない。 更に、フォトセンサをケース背面に固定された背板に取付けた点も、甲第8号証記載24の3の他周知例として例えば特開昭59-141973号公報等にも見られるように、ドラムを取付けたボックスに位置検出用センサを取付けることが周知であり、センサをケース背面に固定された背板に取り付けた点も、上記の如くユニット化した取り付けを行っているに過ぎず技術常識の単なる適用であって、格別の想到困難性はない。 また、センサ取付け位置が「ケース背面」である点も、センサ取付け位置を選ぶ際に当業者が困難なく選定できる位置であり、特に「背面」としたことによる作用効果も、当業者の予想を超える格別のものではない。 よって相違点3も格別のものではない。 (相違点4) 一般に、特定の反射特性を有する部分と反射光を検出するフォトセンサとの組み合わせも、遮光片とホトセンサの組み合わせも、例えば甲第3号証記載12、甲第4号証記載14、甲第1号証記載8、甲第9号証記載26及び甲第10号証記載5に見られるように共に周知の位置検出手段であって、両者は必要に応じて適宜選択的に採用できる程度の位置検出手段である。よって、ドラムが基準位置にあることを表す信号である回転角度位置を検出する検出手段として、遮光片とホトセンサの組み合わせに換えて、反射部とフォトセンサとする点は格別のものではない。 基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて回転ドラムを所定の位置に停止させる、という「引用発明1」においても行われている制御をする場合に、基準点の検知信号を発生させるための光を遮るまたは反射する部材として、遮光片にしても反射部分にしても、寸法は無限小ではないから、遮光片を用いる場合も反射部分を用いる場合も、センサ出力が生じるのはその寸法に応じたドラム回転角度における或る幅の間であり、このセンサ出力を、何らかの信号処理によって、基準位置検出出力として利用できる信号とすることにより、位置検出を行う必要があることは、「引用発明1」において、「遮光片13aは、後述するように、リール13の回転位置とこれを回転させるためのステッピングモータ14との相関を決めるために使用される」(記載3)、「この計数値は、各リール2?4が停止したときの、入賞ライン10、11上におけるシンボルの種別を自動的に判定するために用いられるが、リール2?4の一回転ごとにこの計数値はリセットされる。前記カウンタ30?32の計数値をリセットするための信号は、リール2?4の外周の一部に一体化された遮光片2a?4aの通過を検出するホトセンサ33?35から得られる」(記載5)と記載されていることからも明らかである。 しかしながら、甲第10号証には具体的記述がない。 そこで従来のパルスモータによる駆動制御における検知信号処理について検討する。 「本件特許発明」における、「駆動パルスの基準励磁パターンと上記反射型光センサの検出信号との論理積」をとる、という点は、上記甲第5号証(記載15)、甲第6号証(記載20)、甲第7号証(記載21-23)に見られるように、パルスモータによる移動制御における基準位置検知のための信号処理として周知の、基準位置信号と駆動パルスの基準励磁パターンとの論理積をとる、という事項に相当するものであり、この「論理積をとる」という信号処理をドラムのパルスモータによる位置制御の基準位置検知に採用することに格別困難はない。 次に、論理積をとる一方の信号である、基準位置信号を発生させるための、反射特性を有する部分の寸法に関する限定については、「本件特許発明」においては、「パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当する」と限定しているので、この点について検討する。 パルスモータによる位置制御技術において、基準位置検知のための基準位置信号発生手段の信号発生範囲を規定する寸法に関し、2相励磁駆動において4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンを用いるものでは、基準位置を検出する検出器精度が±1/2ピッチ以下であればパルスカウントによる位置決めに際して一意的に基準位置を決定できる、という点が、甲第5号証(記載18)に記載されている。 「本件特許発明」においては、「基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように」との反射部の寸法限定をしている。 この「前後2ステップの検出角度」という限定は、上記甲第5号証における「±1/2ピッチ以下」という角度の限定と比較して、 「前後2ステップの検出角度」は即ち「±1/2ピッチ」に相当するから、 甲第5号証においては「以下」という範囲で限定しているのに対し「本件特許発明」においては上限値のみに限定しているという相違がある。 この相違に関しては、特に上限値のみとしたことによる格別の意義は認められないから、単に上限値のみを採用したに過ぎないものといわざるをえない。 よって、2相励磁の4つのステップ周期で繰り返される励磁パターンを用いるパルスモータによるドラム駆動制御に際して、基準位置検知信号が発生する角度幅を、1ピッチ分すなわち4ステップ分の幅とすることは、「引用発明1」に甲第5号証記載の基準位置検出を適用することによって、当業者が容易になし得る程度の事項である。 したがって、相違点4も当業者が容易になしえる程度のものである。 また、上記各相違点による効果も、格別のものではなく、当業者にとって予想を超えるものではない。 第9.むすび 以上のとおりであるから、「本件特許発明」は、甲第10号証に記載された発明、甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。 よって、その余の無効理由については検討するまでもなく、「本件特許発明」の特許は無効とされるべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論の通り審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 パチンコ遊技機用電動役物装置 (57)【特許請求の範囲】 表面に複数種類の図柄を有するとともに該表面の一個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、上記各回転ドラムのドラム内に配設されるとともに各回転ドラムを回転させる3個の2相励磁のパルスモータと、上記3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じた検出信号を出力するフォトセンサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラムの表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記フォトセンサの検出信号との論理積に基づいて上記基準点を検知する制御部とを備え、 パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させ、乱数、テーブルより各パルスモータの停止位置を決定し、上記停止位置に基づき各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを順次停止させるようにしたことを特徴とするパチンコ遊技機用電動役物装置。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はパチンコ遊技機に係わり、特に回転ドラムを用いて複数の図柄の組合せ表示を行うとともに組合せに応じた当り動作を行うようなパチンコ遊技機用電動役物装置に関する。 〔従来の技術及び発明が解決しようとする問題点〕 従来、上記のようなパチンコ遊技機として特公昭57-12631に開示されたものがあり、この遊技機は、入賞によって回転ドラムなどを回転させ、遊技客が停止スイッチを操作すると順次回転ドラムを停止させ、回転ドラム上の図柄が特定の組合せに一致したとき当り動作を行うようにしたものである。 そして、図柄が上記特定の組合せになったときに各回転ドラムを貫通し得るような透孔を各回転ドラムに設け、回転ドラムの両側に配設された光電センサなどによって検出光を上記透孔に貫通させて、図柄の一致を検出している。 しかしながら、上記のような方法によると、例えば3つの回転ドラムの内2つの図柄が一致した場合も当りとしたり、あるいは、複数の図柄の列を表示するなどのように当りを示す組合せに幅をもたせるためには、各回転ドラムに多数の透孔を形成する必要がある。 また、上記のような従来の方法によれば、特定の組合せになったときの回転ドラムの位置を知ることはできるが、例えば、入賞時に一定の確率に基づいて予め当りを設定し、その後、その当りに相当する図柄の組合せ表示を行って当り動作を行うようにする場合などのように、各回転ドラムについて予め決定された所定の位置にそれぞれの回転ドラムを停止させるときには従来の方法を用いることができないという問題があった。 さらに、従来は回転ドラムの停止機構にソレノイドによるプランジャー等を使用していたため、使用環境によってソレノイドの摺勤部などに劣化が生じ、トラブルが発生しやすいなどの問題があった。 〔問題点を解決するための手段〕 上記の問題を解決するためになした本発明のパチンコ遊技機用電動役物装置は、表面に複数種類の図柄を有するとともに該表面の一個所に基準点が設定された3個の回転ドラムと、上記各回転ドラムのドラム内に配設されるとともに各回転ドラムを回転させる3個の2相励磁のパルスモータと、上記3個の回転ドラムが間隙を介して取付けられるケースと、上記ケースの背面に固定された背板に取付けられ上記各回転ドラムの表面の円周上に光を照射して該照射光の反射光に応じて検出信号を出力するフォトセンサと、上記パルスモータの4つのステップ周期で繰り返される4つの励磁パターンのうち、1つのパターンを基準励磁パターンとし、上記回転ドラムがこの励磁パターンによって回転・停止されたときに上記フォトセンサに対向するドラムの位置を基準点とし、その基準点に対し前後2ステップの検出角度に相当するように回転ドラムの表面の円周上に設けられた特定の反射特性を有する部分と、前記パルスモータに駆動パルスを出力するとともに該駆動パルスの基準励磁パターンと上記フォトセンサの検出信号との論理積に基づいて上記基準点を検知する制御部とを備え、パチンコ機のドラム始動口に入賞すると上記3個のパルスモータを始動させるとともに回転速度の指示を行い、かつ、各パルスモータの停止を行わせる停止タイマを起動させてパルスモータを駆動し、上記停止タイマによる時間になると乱数、テーブル等より各パルスモータの停止位置を決定し、その後に上記各回転ドラムの基準点の検知時からパルスモータの駆動ステップ数を計数し、その計数結果に基づいて上記3個の回転ドラムを前記決定された停止位置で順次停止させるようにしたことを特徴とする。 〔作 用〕 パルスモータは印加される駆動パルスごとに一定角度のステップ動作で回転駆動され、その回転角度は印加される駆動パルスの数に比例するので、駆動パルスを計数することによって回転角度を検知することができる。 したがって、このパルスモータによって回転・停止される回転ドラムの停止位置は、予め設けられた回転ドラム上の基準点の検出以後の駆動ステップの計数値に基づいて検出することができる。 〔実施例〕 第1図は本発明を適用したパチンコ遊技機の一実施例を示す図である。図に示したように、このパチンコ遊技機10の遊技盤2上には、図柄表示部1、ドラム始動口3a,3b、拡大入賞口4、チューリップ役物5a,5b、センター役物6および入賞口7a,7bがそれぞれ配設されており、図柄始動口3aあるいは3bに入賞するとドラム表示部1の回転ドラムが回転され、この回転ドラムの停止によって、ドラム上の図柄が特定の組合せで表示されると拡大入賞口4が一定時間開放される等の当り動作が行われる。 また、遊技機の下方には操作スイッチ8が設けられており、上記ドラム始動口3aあるいは3bに入賞したときにこの操作スイッチ8を押圧すると図柄表示部1の回転ドラムの停止が早められるようになっている。 第2図は上記図柄表示部1の内部を一部分解して示す図である。図において、11a,11b,11cはそれぞれ回転ドラムであり、これらの回転ドラム11のドラム面には多種類の図柄を印刷したシール等が貼付され、さらにドラム面の緑の一個所には、基準点として反射テープ12a,12b,12cがそれぞれ貼付されている。 13a,13b,13cはそれぞれパルスモータであり、このパルスモータ13a,13b,13cは各回転ドラム11a,11b,11cのドラム内に配設されるとともにそれぞれの回転軸に各回転ドラム1a,1b,1cが取付けられており、各回転ドラムの間隙を介して図示しない固定部材によってケース15にそれぞれ固定されている。 このように回転ドラム内にパルスモータを配設するようにするとドラム表示部をコンパクトにすることができる。 14a,14b,14cは上記反射テープが貼付された回転ドラム11a,11b,11cの各緑の部分にそれぞれ対向するように配設された反射型のフォトセンサであり、背板16によって、ケース15の背面に固定され、このケース15の背面に開けられた孔を介して照射した光が反射テープ12で反射され、この反射光を検知して各反射テープ12a,12b,12cが各フォトセンサ14a,14b,14cの位置を通過したときにそれぞれ出力信号を出力する。 上記パルスモータ13は、第3図に回路を示したように2相ユニポーラ駆動型のパルスモータであり、第4図に示したようにステップ送りタイミングを取る駆動パルスごとに位相のずれを有するパルス信号φ1,φ2,φ3,φ4が印加されて1ステップずつ駆動される。 第5図は回転ドラム11の緑に反射テープ12を貼付した基準点を説明する図であり、第4図に示したように4ステップ周期で繰り返される2つのパルス信号の組による4つの励磁パターンのうち、一つのパターン(図示の例ではφ1とφ4の組)を基準励磁バターンとし、回転ドラム11がこの基準励磁パターンによって回動・停止されたときにフォトセンサ14と対向するドラム上の位置(位置A、B、C・・のいずれか)を基準点とし、その基準点を中心にして、4ステップの回転角に相当するドラム面に反射テープ12が貼付されている。 上記のように反射テープ12を4ステップの幅にすると、第4図に示したように、回転振動によってフォトセンサ14の出力信号の立上りおよび立下り部にノイズが生じても、前記基準励磁パターンの出力と上記出力信号との論理積を取ることにより誤検出を防ぎ、基準点の検出を正確に行うことができる。 第6図は上記パルスモータの駆動制御する部分のブロック図である。 遊技機の制御を行う制御部20から回転ドラム始動指示がコントローラ30に出力されると、コントローラ30は回転ドラムの駆動制御を開始し、モータドライブ部40に駆動パルスを出力する。 モータドライブ部40は上記コントローラ30から出力される駆動パルスにしたがって前記パルス信号φ1,φ2,φ3,φ4を出力し、各パルスモータ13a,13b,13cが駆動される。 そして、各回転ドラムが一回転する間にコントローラ30はフォトセンサ14a,14b,14cの出力信号に基づいて前記のように各基準点を検出し、後述するように制御部20から設定される所定の位置に回転ドラム11a,11b,11cを停止させ、回転ドラムの停止を制御部20に通知する。 第7図は上記パルスモータの駆動制御を示すフローチャートであり、前記ドラム始動口に入賞して、制御部20からコントローラ30に始動指示が行われるとコントローラ30はパルスモータ13を1ステップ回転させ、駆動パルスの周波数を規定するスピードコントロールタイマによって次の駆動パルスを出力するタイミングを取り、前記基準点が検出される基準位置になっていなければ基準点が検出されるまで駆動パルスを出力してパルスモータ13を回転させる。 回転ドラムが基準位置になると、コントローラ30は内蔵された位置カウンタをリセットし、上記同様にパルスモータをステップ駆動するとともに位置カウンタの計数値を1増加させる。そして、この位置カウンタの計数値が、回転ドラムが一回転するときの駆動パルスの総パルス数になるとリセットし、同様に回転ドラムの回転とカウンタ値の更新が行われる。 その間に制御部20から停止指示と停止位置が出力されると、コントローラ30は上記のように回転ドラムの回転とカウンタ値の更新を行うとともにカウンタ値が停止位置に対応する値になったかどうかを判定し、カウンタ値が停止位置の値になると駆動パルスの出力を停止し、制御部20にモータの停止を通知する。 第8図は実施例のパチンコ遊技機において、ドラム始動口3に入賞したときの動作を示すフローチャートであり、制御部20の記憶領域に記憶される始動口入賞数と分岐制御用のステップ値は電源投入時にリセットされている。 制御部20はドラム始動口3に入賞したことを検知して、始動口入賞数が5以下のときは始動口入賞数を1増加させ、ステップ値が0であるので、“STEP0”の制御に分岐し、始動口入賞数が0でなければ、入賞サウンドを開始するとともに、各パルスモータに始動指示と回転スピードの指示とを行って回転ドラムを停止させるタイミングを取るための停止タイマを起動する。そして、ステップ値を1にして、ドラム始動口に次の入賞があるかを調べ、その入賞の有無に応じて上記のように始動口入賞数を更新する。 次に、“STEP1”の制御に分岐すると、停止タイマが計時終了していなければ遊技機の下部に配設された操作スイッチ8が押されているかを調べ、押されていれば停止タイマの計時時間を短縮し、押されていなければそのままドラム始動口3の入賞玉を調べて前記同様に始動口入賞数を更新する。 この“STEP1”の制御で上記停止タイマが計時終了していると、乱数、テーブル等によって各パルスモータの停止位置(回転ドラム上の基準点からのステップ数)を決定し、第1のパルスモータの停止指示をコントローラ30に通知して、ステップ数を2に更新する。なお、上記乱数、テーブル等によって各パルスモータの停止位置が決定されると、この停止位置に回転ドラムが停止したときに表示される図柄の組合せが当りに相当する組合せかの判定が行われる。 上記のように停止タイマの計時終了によって各回転ドラムの停止位置が決定されると、コントローラ30で前記のようにして第1のパルスモータが停止位置に停止され、第1のパルスモータの停止が制御部20に通知される。 これと平行して、制御部20は“STEP2”の動作で始動口入賞数の更新と第1のパルスモータの停止を監視しており、第1のパルスモータの停止を検知すると第2のパルスモータの停止指示を行うとともにステップ数を3に更新する。 上記同様に“STEP3”の動作により第3のパルスモータの停止指示を行い、“STEP4”の動作で第3のパルスモータの停止が検知されると予め判定されている当りあるいは外れに応じた動作が行われ、それぞれの動作が終了すると始動口入賞数を1減少させて上記同様の動作が行われる。 このようにパルスモータを使用して各回転ドラムの始動時に基準位置を検出し、回転ドラムの回転角に相当する駆動パルス数を指定することにより回転ドラムをそれぞれ所定の位置に停止させることができ、また、パルスモータの停止位置を任意に設定することができるので、回転ドラムの図柄の組合せを自由に設定でき、当り表示などに幅をもたせることができる。 なお、以上の実施例では回転ドラムの基準点として反射テープを貼付した場合について説明したが、例えば、回転ドラム面の緑の一部を欠切して無反射部を形成し、前記フォトセンサが反射光を検出しないときに基準位置とするようにして同様の処理を行うようにすることができる。 〔発明の効果〕 以上説明したように、本発明によれば、パチンコ遊技機において複数の回転ドラムのそれぞれにパルスモータを設け、特定の入賞口に入賞したときに回転ドラムを回転させて基準点を検出し、この基準点の検出後にパルスモータの駆動ステップ数を計数してその計数結果に基づいて上記回転ドラムを所定の位置に停止させるようにしたので、複数の回転ドラムの回転・停止制御を個別に行うとともに、当りを示す組合せに幅をもたせることが容易に行え、また、各回転ドラムを各回転ドラムについて予め決定された所定の位置にそれぞれ停止させることができる。 また、回転ドラムは特定の入賞口に入賞したときの当り表示のために回転されるため、外部より手動等によって回転ドラムを回転させて所定の停止位置に停止させても当りと判定することがなく、不正を防止することができる。 また、パルスモータを回転ドラムのドラム内に配設するようにしたので、表示装置の占めるスペースを小さくすることができるばかりか、反射型光センサを用いるため、発光部と受光部を一体にすることが可能となり表示装置を小型化することができる。 さらに、回転ドラムの機械的な停止機構等を必要とせず構造が簡単になるため、トラブルの発生を軽減するとともに製造コストを低減することができる。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明を適用したパチンコ遊技機の一実施例を示す図、第2図は実施例のドラム表示部を示す図、第3図は実施例のパルスモータの回路を示す図、第4図は実施例のパルスモータに印加されるパルス信号と位置検出信号を説明する図、第5図は実施例の基準点を説明する図、第6図は実施例におけるパルスモータを制御する部分のブロック説明図、第7図は実施例のパルスモータの駆動制御を示すフローチャート、第8図は実施例においてドラム始動口に入賞したときの動作を示すフローチャートである。 1・・・図柄表示部、10・・・パチンコ遊技機、11・・・回転ドラム、12・・・反射テープ、13・・・パルスモータ、14・・・フォトセンサ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2005-03-01 |
結審通知日 | 2005-09-27 |
審決日 | 2005-03-16 |
出願番号 | 特願昭62-88762 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(A63F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 斎藤 利久 |
特許庁審判長 |
二宮 千久 |
特許庁審判官 |
南澤 弘明 塩崎 進 |
登録日 | 1994-05-12 |
登録番号 | 特許第1842033号(P1842033) |
発明の名称 | パチンコ遊技機用電動役物装置 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 加藤 恭介 |
代理人 | 福田 武通 |
代理人 | 今崎 一司 |
代理人 | 福田 賢三 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 加藤 恭介 |
代理人 | 福田 伸一 |