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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B66B
管理番号 1179493
審判番号 無効2005-80153  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-05-23 
確定日 2008-06-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3508768号発明「エレベーター装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3508768号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯の概要
本件特許第3508768号に係る発明についての出願は、1999年12月6日を国際出願日とする特願2001-543429号の一部を、平成14年11月11日に特願2002-326628号として新たな特許出願としたもので、平成16年1月9日に特許の設定登録がなされたものである。その後、本件特許に対して、訂正審判第2004-39249号、訂正審判第2005-39043号が請求されたが、いずれも請求取下となっている。
これに対し平成17年5月23日付けで請求人より本件無効審判の請求がなされ、平成17年8月10日付けで被請求人より答弁書及び同日付訂正請求書が提出された。その後、請求人から、平成17年9月20日付けで弁駁書が提出され、平成17年11月24日付けで当該弁駁書における請求の理由の補正を許可する旨の補正許否の決定がなされ、被請求人に対し平成17年11月24日付けで特許法第134条第2項の通知と当合議体からの審尋がなされた。その後さらに、被請求人から平成17年12月22日付け答弁書が提出された。

第2.請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において「特許第3508768号発明の明細書の請求項1乃至請求項5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として概ね次の1.のように主張するとともに、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、さらに、平成17年9月20日付け弁駁書において、被請求人の提出した訂正請求書を踏まえて、概ね次の2.のように主張するとともに、証拠方法として、甲第6号証を提出した。

1.本件特許の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載の発明は、いずれも、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証、及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。

2.平成17年8月10日付け訂正請求書において訂正請求された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載の発明は、いずれも、その出願前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証、甲第2号証、及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.証拠方法
甲第1号証 特開平11-130365号公報
甲第2号証 特開平9-165172号公報
甲第3号証 訂正審判第2004-39249号の審判情報
甲第4号証 訂正審判第2004-39249号の審判請求書
甲第5号証 訂正審判第2004一39249号の訂正拒絶理由通知書
甲第6号証 ドイツ国特許出願公開第19752232号明細書

第3.被請求人の主張概要
被請求人は、平成17年8月10日付け答弁書において、平成17年8月10日付け訂正請求書において明細書の訂正を請求した上で、概ね、以下の1.ないし4.のように主張し、訂正された本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載の発明は、甲第1号証、及び甲第2号証の記載内容から特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件特許は無効にされるべきものではないと主張した。その後、平成17年12月22日付け答弁書において、当合議体からの審尋に回答するとともに、概ね、以下の5.ないし7.のように主張し、「請求人の主張は理由がない結果、特許法第29条第2項違反の主張についても理由が無く、本件特許に無効理由が存在しない」と主張し、甲第6号証については何ら意見を述べなかった。さらに、参考資料として、「昇降機技術基準の解説[2002年版]」を提出した。

1.本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、その要旨とするところが訂正後の特許請求の範囲に記載の如くにあり、「シーブ及びモーターを有する巻上機が、シーブの回転軸方向の外形寸法が回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい」点を第1の特徴点とし、「巻上機が、昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置している」点を第2の特徴点とし、「巻上機が、昇降路の平断面において、第3のかご壁と第1の昇降路壁との間であって、第1の昇降路壁の幅方向にカウンターウェイトとは離れて設けられ、シーブが第1の昇降路壁に対向し、モーターが第3のかご壁側に位置している」点を第3の特徴点とし、「シーブからかごに至るロープの一部分が巻き掛けられる第1の返し車は、昇降路の平断面の投影面において巻上機と一部重なるとともにかごとは離れて配置され、回転面が第1のかご壁と対向する昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である」点を第4の特徴点としているものであります。本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、上記しました第1ないし第4の特徴点を有することにより、昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえるという特有の効果を奏するものであります。(4頁16行から5頁7行)
第2の特徴点ないし第4の特徴点は、甲第1号証には全く記載されておらず、それを示唆する記載もありません。(5頁22行から6頁3行)

2.甲第1号証では、図7の実施例について、「乗かごの奥のスペースの奥行きが小さくでき、昇降路全体を小さくすることができる。」と記載されているのに対して、図8の実施例については、「横幅が大きくなるので、昇降路25の横幅が余裕あり奥行きが厳しい用途に適している。」と記載されています。ところが、図7と図8との関係は、図7の左右を反対にして、90度左に回転した関係にあるところ、図8では、シーブが昇降路壁に対向している点で図7と相違しています。すなわち、図8のような構成は、巻上機の回転軸方向に余裕があることを前提とする配置です。
このように、昇降路内機器配置が異なるエレベーター装置は、それぞれが本来的に異なる技術的思想に基づいて設計されているものであり、かごに対するカウンターウェイト及び巻上機の配置が異なるエレベーター装置における巻上機のみを置き換えることは、当業者といえども容易になし得ないものであります。すなわち、図7に示されたエレベーター装置の巻上機の配置構成を他の実施例に示された巻上機の配置構成に置き換えることは、そこに何らかの技術的課題がなければ、例え当業者といえども本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明を見ての後知恵的発想によってはじめて推考できるものに過ぎないと考えます。(6頁9行から24行)

3.第3及び第4の特徴点は、それぞれ独立にのみ存在するものではなく、両方の特徴は関連しており、これらが組み合わされることによって効果を奏するものであります。
すなわち、「巻上機のシーブが第1の昇降路壁に対向し、巻上機のモーターが第3のかご壁側に位置している」ことによって、第1の返し車は昇降路の平断面の投影面において巻上機と一部重なって配置されることが技術的意味を持ち、これによって、本件特許の明細書の「昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。」という効果が実現されます。(7頁7行から15行)

4.特許請求の範囲の請求項1に記載の発明が甲第1号証及び甲第2号証の記載内容から例え当業者といえども容易に推考できない以上、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明を構成要素に含む特許請求の範囲の請求項2ないし請求項4に記載の発明につきましても甲第1号証及び甲第2号証の記載内容から当業者が容易に発明をすることができるものではありません。(8頁27行から9頁3行)

5.反対方向に移動する物同士の間には、移動する物と静止物との間の安全距離に比べて、干渉した場合の影響が大きいため、大きな安全距離が必要となります。特に、ロープは横方向に振れる場合があり当業者であれば、このことも考慮して反対方向に移動するかごとロープとが干渉しないように一定の安全距離を確保するのが通常です。(2頁29行から34行)
「巻上機のシーブが昇降路壁側に位置している」場合には、かごと反対方向に移動する巻上機から返し車5aへのロープが、そもそも巻上機とかごとの間を通らない構成となるため、巻上機から返し車5aへのロープとかごとの間の空間を別途確保する必要がありません。確かに、ロープと昇降路壁との間には移動物であるロープと静止物である昇降路壁との間の安全距離は必要となりますが、反対方向に移動するかごとローブとの間の安全距離に比べれば、この距離は小さくなります。つまり、昇降路壁面には突起物などがなくロープが昇降路壁に接触したとしても大きな損傷にならないのに対し、かごには突起物があるのが通常であるため、この反対方向に移動している突起物にロープが接触すると引っかかり等が起こるため、安全距離を十分に確保する必要が生じるからです。結果として、「巻上機のシーブが第1の昇降路壁に対向し、巻上機のモーターが第3のかご壁側に位置している」構成の場合には、シーブをかご壁側に位置させる場合に比較して、昇降路内の不使用空間の発生をおさえることができることとなります。(3頁12行から26行)
第1の返し車と巻上機とが一部重なっている場合にはその占有する平断面上の面積が事実上小さくなり、他の昇降路機器を配置する際のレイアウトの自由度が高まる結果として、昇降路の平断面を小さくするということに寄与します。(4頁13行から16行)

6.本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、平断面の投影面上において、第1の返し車がかごとは離れて配置されてその回転面が第2の昇降路壁と平行である結果として、かごの昇降に際して第1の返し車がかごと干渉しないため、昇降路の高さ方向においても不使用空間が削減することもできます。かごと返し車とが平断面の投影面上において重なっている場合には、かごと返し車との間に頂部安全距離が必要となります。(4頁17行から25行)

7.(1)本件特許の明細書には記載されておりませんが、巻上機のモーター部の保守点検という観点からの効果も現実には存在します。この巻上機のモーターの保守点検につきましては、甲第1号証の図7のように、トラクションマシン1のモータ7が昇降路壁側にある場合は、昇降路壁のモータ7に対向する部分に出入口の様なものがない限り、昇降路内で保守点検するための空間が同図右上の位置に必要になると考えられます。一方、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、第3の特徴点があるために、巻上機のモーターを昇降路の内側から保守点検することが可能にしている結果として、側方に特に空間を設ける必要が無く、結果として昇降路内の不使用空間の発生を極力おさえるという効果に寄与します。
(2)甲第1号証には、図1に示される様に制動機構4がトラクションマシン1のディスク2の下方の両脇に設けられていることから、このトラクションマシン1の場合には、特に、側方部分に保守点検するための空間があるものと考えられます。そして、昇降路内で保守点検するための空間が同図右上の位置に必要となるため、甲第1号証の図7では、27Aの返し車は、昇降路の平断面において巻上機とは重ならないものの、その一部がかごと重なっていて、回転面が第1のかご壁と対向する昇降路の第2の昇降路壁に対して斜めに配置される構成となっています。(5頁33行から6頁18行)
この結果、甲第1号証に記載されたトラクションマシン1を前提とする場合には、第1の返し車の配置を、第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直となるように変更する際の阻害要因となるものと考えられます。

第4.訂正の適否
1.訂正の内容
請求人が求めている訂正の内容は、平成17年8月10日付け訂正請求書において「特許第3508768号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求める。」(以下、当該明細書を、「特許明細書」といい、当該訂正明細書を、「訂正明細書」という。)というもので、その訂正の内容は、以下の(1)ないし(4)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、上記昇降路内を昇降するかごと、
上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、
上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、
上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、
上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第1の返し車と、
上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、
を有することを特徴とするエレベーター装置。」を、
「乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有することを特徴とするエレベーター装置。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許明細書の特許請求の範囲の請求項5に記載された
「【請求項5】 上記かごの下に配置されたかご用吊車と、
上記カウンターウェイトに配置されたカウンターウェイト用吊車を有し、
上記ロープは上記かご用吊車と上記カウンターウェイト用吊車に巻き掛けられて、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架することを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。」を、
「【請求項4】 上記かごの下に配置されたかご用吊車と、上記カウンターウェイトに配置されたカウンターウェイト用吊車を有し、上記ロープは上記かご用吊車と上記カウンターウェイト用吊車に巻き掛けられて、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架することを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許明細書(特許第3508768号公報の段落0008)の「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、この発明のエレベーター装置は、乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、上記昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有する。」を、
「【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、この発明のエレベーター装置は、乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有する。」と訂正する。

2.訂正の適否についての判断
上記訂正事項について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否について検討する。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、
(a1)「シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機」を、「シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機」に限定し、
(b1)「上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第1の返し車」を、「上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車」に限定するものであり、また、「上記昇降路内」を「昇降路内」とした点は誤記の訂正であるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、又は誤記の訂正を目的とするものに該当する。

次に、上記(a1)ないし(b1)の訂正事項、「上記昇降路内」を「昇降路内」とした点について、新規事項の有無、拡張・変更の存否について検討する。
(a1)の「上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して」の記載は、特許明細書の段落0023の記載に基づくものであり、
(b1)の「上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車」の記載は、、特許明細書の段落0024の記載、第4図、第5図に基づくものである。そして、上記(a1)ないし(b1)の訂正事項、「上記昇降路内」を「昇降路内」とした点は、何れも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、又は誤記の訂正を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2ないし4、請求項1を引用する請求項2ないし3について
訂正事項2は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を削除するものである。これにともない、訂正事項3は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項5をそのまま請求項4としたものであるが、訂正明細書の請求項4は請求項1を引用することから、訂正事項1にともなう特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。同様に、請求項1を引用する訂正明細書の請求項2ないし3についても、訂正事項1にともない特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、何れも、特許請求の範囲の減縮、又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4は、訂正事項1に伴って発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第5.本件特許発明に対する判断
1.本件特許発明
本件訂正が認められたことにより、本件特許の請求項1ないし4に係わる発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、訂正明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】上記第1の返し車は、上記昇降路の平断面において上記ロープの一部が上記第1のかご壁と該第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁との間を通るよう配置されたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】上記昇降路の平断面において、上記巻上機の一部が上記カウンタウェイト用ガイドレールよりも上記第3のかご壁側に位置していることを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項4】上記かごの下に配置されたかご用吊車と、上記カウンターウェイトに配置されたカウンターウェイト用吊車を有し、上記ロープは上記かご用吊車と上記カウンターウェイト用吊車に巻き掛けられて、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架することを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。」

2.刊行物1記載の発明
(1)請求人が甲第1号証として提出し、本件特許に係わる出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平11-130365号公報(平成11年5月18日公開。以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】昇降路内の定位置に設置されたトラクションマシンと、このトラクションマシンにより駆動されるロープによって昇降路内を昇降するカウンタウェイトと乗かごとを備えたエレベータ装置において、前記トラクションマシンは、ラジアルギャップ方式の永久磁石型同期モータと、この同期モータの回転子に直結されたブレーキ装置のディスクと、このディスクと直結され前記ロープを巻掛けるシーブと、前記ディスクと対向して配置され固定部分に支持されるブレーキ装置の制動機構とを有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】前記トラクションマシンは、前記昇降路の下部に位置し、前記乗かごとカウンタウェイトの垂直方向に投影した断面積の外に配置されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
【請求項3】前記トラクションマシンは、前記昇降路の下部に位置し、前記シーブに巻掛けられたロープが前記乗かごとカウンタウェイトの間を通過するように配置したことを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
・・・
【請求項11】前記トラクションマシンとカウンタウェイトは、前記乗かごのドアが位置する側とは反対側に直列に配置され、前記ロープは、一端が昇降路頂部に固定され他端が前記カウンタウェイト上部のプーリを介して頂部に設けられた第1の頂部プーリを経て前記シーブに巻掛けられ、更に頂部に設けられた第2の頂部プーリを経て前記乗かごの下に設けた第1及び第2の下部プーリを経て前記昇降路の頂部に固定されていることを特徴とする請求項2記載のエレベータ装置。
【請求項12】前記トラクションマシンとカウンタウェイトは、前記乗かごのドアの位置する側とは反対側に奥行き方向に並行に配置され、前記ロープは、一端が昇降路頂部に固定され他端が前記カウンタウェイト上部のプーリを介して頂部に設けられた第1の頂部プーリを経て前記シーブに巻掛けられ、更に頂部に設けられた第2の頂部プーリを経て前記乗かごの下に設けた第1及び第2の下部プーリを経て前記昇降路の頂部に固定されていることを特徴とする請求項2記載のエレベータ装置。
【請求項13】前記トラクションマシンとカウンタウェイトは、前記乗かごのドアの位置する側に直列に配置され、前記ロープは、一端が昇降路頂部に固定され他端が前記カウンタウェイト上部のプーリを介して頂部に設けられた第1の頂部プーリを経て前記シーブに巻掛けられ、更に頂部に設けられた第2の頂部プーリを経て前記乗かごの下に設けた第1及び第2の下部プーリを経て前記昇降路頂部に固定されていることを特徴とする請求項2記載のエレベータ装置。」(特許請求の範囲)

イ.「【0009】【発明の実施の形態】本発明によるエレベータ装置の一実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。
【0010】ブレーキ装置は、ディスクブレーキであり、そのディスク2の外周をフレーム3で覆い、ディスク2の下方の両脇に制動機構4が設けられている。制動機構4は、その最外部がトラクションマシン1のフレーム3の最外幅よりはみ出ないように、支持軸10の中心よりも下方に配置されている。
【0011】シーブ5、ディスク2、同期モータ7の順に軸方向に配置されている。ディスク2は、軸受8を介して回転自在で、軸方向には動かないようにボルト9で支持軸10に支持されている。」(段落0009から0011)

ウ.「【0020】シーブ5の中にモータを組み込まないので、同期モータ7の径を大きくすることができ、モータ軸長を短くても必要なトルクを得られるので、トラクションマシン1全体の軸長を短くでき、昇降路内への配置が容易になる。」(段落0020)

エ.「【0026】次に、本発明によるトラクションマシン1を用いたエレベータ装置について図4にもとづいて説明する。
【0027】トラクションマシン1を昇降路25のピットに固定し、トラクションマシン1のシーブ5にロープ26を巻掛ける。このロープ26の一端は昇降路頂部に軸支された頂部プーリ27Aに巻掛けられ、そこから乗かご28の下部に軸支された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bを介して昇降路頂部のロープ止め30Aに固定される。また、ロープ26の他端は同様に昇降路頂部に軸支された他の頂部プーリ27Bに巻掛けられ、そこからカウンタウェイト31上に軸支されたプーリ32を介して昇降路頂部のもう一つのロープ止め30Bに固定される。乗かご28は昇降路25内に平行で垂直に固定された一対のかごレール33A、33Bで水平方向にずれないよう上下方向に案内され、カウンタウェイト31は同様に固定されたカウンタウェイトレール34A、34Bで水平方向にずれないように上下方向に案内される。
【0028】トラクションマシン1の同期モータ7、ブレーキ装置は、図示しない制御盤により電源を供給されてその動作を制御される。同期モータ7はシーブ5を回転させ、ロープ26を駆動することにより乗かご28を目的階に昇降させる。ブレーキ装置は、乗かご28の停止時にシーブ5の回転を停止させ、乗かご28を所定階に確実に停止させる。
【0029】上記エレベータ装置によれば、トラクションマシン1は同期モータ7、ブレーキ装置、シーブ5を一体化しても、ブレーキ装置の動作が同期モータ7に影響しないので、不用な振動、騒音を発生することなく、エレベータ利用者やエレベータ装置の設置された建物の居住者に不快感を与えることがないという効果がある。
【0030】図5は、図4に示すエレベータ装置の平面図で、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31を配置し、乗かご28のドア35の隣接する側に面してトラクションマシン1を配置し、乗かご28の下部の左右方向にロープ26が渡るように第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを設ける。更に、カウンタウェイト31とトラクションマシン1との間には頂部プーリ27Bが、トラクションマシン1と第1のかご下プーリ29Aとの間にはもう1つの頂部プーリ27Aが配置される。
【0031】上記構成によれば、乗かご28の下側を通るロープ26は乗かご28の中心を通るように、両かご下プーリ29A、29Bは配置されている。これにより、乗かご28の吊り中心と重心が概略一致するので、吊りにより乗かご28に発生するモーメントは小さく、安定した乗かご昇降が実現できるという効果がある。
【0032】図6は、昇降路内機器配置の別の例を示すもので、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31とトラクションマシン1を夫々平行に配置し、その間に頂部プーリ27Bをほぼ直角に配置する。また、乗かご28の下部のかご下プーリ29A、29Bをかご奥からドア35側へほぼ対角にロープ26が通るように配置し、トラクションマシン1と乗かご奥側のかご下プーリ29Aの間に頂部プーリ27Aを配置する。このように配置することにより、カウンタウェイト31とトラクションマシン1のトータルの奥行き及び幅をコンパクトに配置できるので、昇降路面積を有効に利用できるという効果がある。例えば、この図では、昇降路25のカウンタウェイト31の右側に大きなスペースが生まれるので、そのスペースを利用してガバナ等の昇降路内配置機器を容易に設置できるという効果がある。また、本実施例は、図5に示す配置よりも、昇降路幅が小さくなるので、幅に制約のある昇降路に有効な実施例である。
【0033】図7は、さらに別の昇降路内機器配置を示すもので、トラクションマシン1をカウンタウェイト31の横に配置して、カウンタウェイト31と頂部プーリ27Bとトラクションマシン1のロープ26が同一方向に渡っていくようにしたものである。このようにすることにより、乗かご28の奥のスペースの奥行きが小さくでき、昇降路全体を小さくすることができる。
【0034】図8は、他の昇降路内機器配置を示すもので、乗かご28のドア35に隣接する側にトラクションマシン1とカウンタウェイト31を縦に配置したものである。したがって、昇降路25の奥行きが小さく、横幅が大きくなるので、昇降路25の横幅が余裕あり奥行きが厳しい用途に適している。また、乗かご28の背後に構造物がないので、通り抜け型の2方向で入り口を設ける場合にも適している。
」(段落0026から0034)

オ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すトラクションマシンの正面図。
【図2】図1のA-B線に沿う断面図。
【図3】図1のA-C線に沿う断面図。
【図4】本発明の一実施例の形態によるトラクションマシンを用いたエレベータ装置の概略斜視図。
【図5】図4の拡大平面図。
【図6】本発明による昇降路内機器配置を示す図5相当図。
【図7】本発明による昇降路内機器配置の別の例を示す図5相当図。
【図8】本発明による昇降路内機器配置の他の例を示す図5相当図。
【符号の説明】
1…トラクションマシン、2…ディスク、4…制動機構、5…シーブ、7…同期モータ、28…かご、31…カウンタウェイト。」(図面の簡単な説明、符号の説明)

カ.図8において、25と表示された長方形枠内に、28と表示された長方形枠が表示され、その一辺に35と表示された部材が描かれている。(図8において、「図8」の表示に近い部分を上部とする。この上部をもとに、以下、図8上で、上下、左右という。)25と表示された長方形枠と28と表示された長方形枠のそれぞれの左側の一辺の間に、25と表示された長方形枠の左側の一辺と平行状にかつそれに沿って、1と表示された部材と31と表示された部材が並んで配置されている。1と表示された部材は、全体として25と表示された長方形枠の左側の一辺の方向に横長であり、大小の横長長方形が連結した状態で凸状形の断面として描かれている。これら大小の横長長方形のうち、小の横長長方形は、25と表示された長方形枠の左側の一辺と対面しており、小の横長長方形には、26と表示された黒丸と同じ黒丸が2個表示されていることが看てとれる。また、27Aと表示された一点鎖線の横長長方形は、1と表示された部材と重なっており、27Aと表示された長方形の短辺には26と表示された黒丸と同じ黒丸がそれぞれ表示されており、そのうち29と表示された二点鎖線の長方形側の黒丸の方が、35と表示された部材が描かれている、28と表示された長方形枠の下側の一辺に近づく方向に位置している。25と表示された長方形枠の下側の一辺に対して、27Aと表示された一点鎖線の横長長方形は傾斜している。(図8)

キ.図7において、25と表示された長方形枠内に、28と表示された長方形枠が表示され、その一辺に35と表示された部材が描かれている。(図7において、「図7」の表示に近い部分を上部とする。この上部をもとに、以下、図7上で、上下、左右という。)25と表示された長方形枠と28と表示された長方形枠の、それぞれの上部の一辺の間に、25と表示された長方形枠の上部の一辺と平行状に、1と表示された部材と31と表示された部材が並んで配置されている。1と表示された部材は、全体として25と表示された長方形枠の上部の一辺の方向に横長であり、大小の横長長方形が連結した状態で凸状形の断面として描かれている。これら大小の横長長方形うち、大の横長長方形は、25と表示された長方形枠の上部の一辺と対面しており、小の横長長方形は、28と表示された長方形枠の上部の一辺と対面し、26と表示された黒丸と同じ黒丸が2個表示されていることが看てとれる。また、27Aと表示された一点鎖線の横長長方形は、25と表示された長方形枠の右側の一辺に対して傾斜しており、27Aと表示された長方形の短辺には26と表示された黒丸と同じ黒丸がそれぞれ表示されている。27Bと表示された一点鎖線の横長長方形は、25と表示された長方形枠の上部の一辺と平行状に、1と表示された部材と、31と表示された部材の両方と重なって表示されており、27Bと表示された長方形の短辺には26と表示された黒丸と同じ黒丸がそれぞれ表示されている。(図7)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしキ.、及び図1ないし8から、次のことがわかる。

ア.上記記載事項(1)イ.、エ.より、次のことがわかる。本発明によるトラクションマシン1を用いたエレベータ装置の一実施の形態について図4にもとづいて説明する。トラクションマシン1を昇降路25のピットに固定し、トラクションマシン1のシーブ5にロープ26を巻掛ける。このロープ26の一端は昇降路頂部に軸支された頂部プーリ27Aに巻掛けられ、そこから乗かご28の下部に軸支された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bを介して昇降路頂部のロープ止め30Aに固定される。また、ロープ26の他端は同様に昇降路頂部に軸支された他の頂部プーリ27Bに巻掛けられ、そこからカウンタウェイト31上に軸支されたプーリ32を介して昇降路頂部のもう一つのロープ止め30Bに固定される。乗かご28は昇降路25内に平行で垂直に固定された一対のかごレール33A、33Bで水平方向にずれないよう上下方向に案内され、カウンタウェイト31は同様に固定されたカウンタウェイトレール34A、34Bで水平方向にずれないように上下方向に案内される。トラクションマシン1の同期モータ7、ブレーキ装置は、図示しない制御盤により電源を供給されてその動作を制御される。同期モータ7はシーブ5を回転させ、ロープ26を駆動することにより乗かご28を目的階に昇降させる。
図5は、図4に示すエレベータ装置の平面図で、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31を配置し、乗かご28のドア35の隣接する側に面してトラクションマシン1を配置し、乗かご28の下部の左右方向にロープ26が渡るように第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを設ける。更に、カウンタウェイト31とトラクションマシン1との間には頂部プーリ27Bが、トラクションマシン1と第1のかご下プーリ29Aとの間にはもう1つの頂部プーリ27Aが配置される。図7は、さらに別の昇降路内機器配置を示すもので、トラクションマシン1をカウンタウェイト31の横に配置して、カウンタウェイト31と頂部プーリ27Bとトラクションマシン1のロープ26が同一方向に渡っていくようにしたものである。図8は、他の昇降路内機器配置を示すもので、乗かご28のドア35に隣接する側にトラクションマシン1とカウンタウェイト31を縦に配置したものである。
上記記載事項(1)キ.、図7からも、トラクションマシン1とカウンタウェイト31は昇降路壁に沿って横に並んでおり、上部昇降路壁の幅方向に横に並んでいるといえる。
また、上記記載事項(1)ア.より、トラクションマシン1は、昇降路25の下部に位置し、乗かご28とカウンタウェイト31の垂直方向に投影した断面積の外に配置されたことがわかる。上記記載事項(1)オ.より、図4は本発明の一実施例の形態によるトラクションマシンを用いたエレベータ装置の概略斜視図であり、図5は図4の拡大平面図であり、図7は本発明による昇降路内機器配置の別の例を示す図5相当図であるから、図7の別の昇降路内機器配置のもの、および図8の他の昇降路内機器配置のものも、図4のものと配置以外は同じ構成となっている。
上記記載事項(1)キ.、図7より、乗かご28は、ドア35、ドア35の両側方にそれぞれ位置する2面の乗かご壁(以下、乗かご28の外部からドア35に面して左右の乗かご壁を、「左側及び右側の乗かご壁」という。)並びにドア35と対向し、左側及び右側の乗かご壁と連結した乗かご壁(以下、これを「後部の乗かご壁」という。)を有していることがわかる。
カウンタウェイト31は、当然乗かご28と反対方向に昇降路25内を昇降する。

したがって、これらの記載と上記記載事項(1)キ.から、次のことがわかる。
ドア35、ドア35の両側方にそれぞれ位置する左側及び右側の乗かご壁並びにドア35と対向し、上記左側及び右側の乗かご壁と連結した後部の乗かご壁を有し、昇降路25内を昇降する乗かご28と、乗かご28の水平方向の移動を規制するかごレール33A、33Bと、昇降路25の平断面において、後部の乗かご壁と、この後部の乗かご壁に対向する昇降路25の昇降路壁(以下、これを「後部の昇降路壁」という。)との間に位置し、乗かご28と反対方向に昇降するカウンターウェイト31と、カウンターウェイト31の水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレール34A、34Bと、シーブ5及びシーブ5を駆動する同期モータ7を有し、昇降路25の下部に位置して、昇降路25の平断面において、後部の乗かご壁と後部の昇降路壁との間であって、後部の昇降路壁の幅方向にカウンターウェイト31とは離れて設けられ、シーブ5が後部の乗かご壁側に位置し、同期モータ7が後部の昇降路壁側に位置するトラクションマシン1と、シーブ5に巻き掛けられるとともに、乗かご28及びカウンターウェイト31を懸架するロープ26と、シーブ5から乗かご28に至るロープ26の一部分が巻き掛けられ、回転面が、右側の乗かご壁と対向する昇降路25の昇降路壁(以下、これを「右側の昇降路壁」という。また、左側の乗かご壁と対向する昇降路25の昇降路壁を、以下、「左側の昇降路壁」という。)に対して傾斜した頂部プーリ27Aと、シーブ5からカウンターウェイト31に至るロープ26の一部分が巻き掛けられた頂部プーリ27Bと、を有する。

また、頂部プーリ27Aは、昇降路25の平断面においてロープ26の一部が右側の乗かご壁と右側の昇降路壁との間を通るように配置されている。
さらに、トラクションマシン1のシーブ5にロープ26が巻掛けられ、ロープ26の一端は昇降路頂部に軸支された頂部プーリ27Aに巻掛けられ、そこから乗かご28の下部に軸支された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bを介して昇降路頂部のロープ止め30Aに固定され、ロープ26の他端は同様に昇降路頂部に軸支された他の頂部プーリ27Bに巻掛けられ、そこからカウンタウェイト31上に軸支されたプーリ32を介して昇降路頂部のもう一つのロープ止め30Bに固定される。このことから、乗かご28の下に配置された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bと、カウンタウェイト31に配置されたプーリ32を有し、ロープ26は第1及び第2の下部プーリ29A、29Bとプーリ32に巻き掛けられて、乗かご28及びカウンタウェイト31を懸架することがわかる。

イ.上記記載事項(1)ウ.には「トラクションマシン1全体の軸長を短く」と記載され、上記記載事項(1)カ.、キ.、図1ないし図8より、トラクションマシン1は、シーブ5の回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さいことがわかる。

(3)刊行物1記載の発明
上記記載事項(2)より、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「ドア35、ドア35の両側方にそれぞれ位置する左側及び右側の乗かご壁並びにドア35と対向し、上記左側及び右側の乗かご壁と連結した後部の乗かご壁を有し、昇降路25内を昇降する乗かご28と、乗かご28の水平方向の移動を規制するかごレール33A、33Bと、昇降路25の平断面において、後部の乗かご壁と、この後部の乗かご壁に対向する昇降路25の後部の昇降路壁との間に位置し、乗かご28と反対方向に昇降するカウンターウェイト31と、カウンターウェイト31の水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレール34A、34Bと、シーブ5及びシーブ5を駆動する同期モータ7を有し、昇降路25の下部に位置して、昇降路25の平断面において、後部の乗かご壁と後部の昇降路壁との間であって、後部の昇降路壁の幅方向にカウンターウェイト31とは離れて設けられ、シーブ5が後部の乗かご壁側に位置し、同期モータ7が後部の昇降路壁側に位置し、トラクションマシン1全体の軸長を短くしたトラクションマシン1と、シーブ5に巻き掛けられるとともに、乗かご28及びカウンターウェイト31を懸架するロープ26と、シーブ5から乗かご28に至るロープ26の一部分が巻き掛けられ、回転面が右側の乗かご壁と対向する昇降路25の右側の昇降路壁に対して傾斜した頂部プーリ27Aと、シーブ5からカウンターウェイト31に至るロープ26の一部分が巻き掛けられた頂部プーリ27Bと、を有するエレベーター装置。」(以下、「刊行物1記載の発明1」という。)

同様に、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「刊行物1記載の発明1において、頂部プーリ27Aは、昇降路25の平断面においてロープ26の一部が右側の乗かご壁と右側の昇降路壁との間を通るように配置したエレベーター装置」(以下、「刊行物1記載の発明2」という。)

同様に、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「刊行物1記載の発明1において、乗かご28の下に配置された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bと、カウンタウェイト31に配置されたプーリ32を有し、ロープ26は第1及び第2の下部プーリ29A、29Bとプーリ32に巻き掛けられて、乗かご28及びカウンタウェイト31を懸架するエレベーター装置」(以下、「刊行物1記載の発明3」という。)

同様に、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「ドア35、ドア35の両側方にそれぞれ位置する左側及び右側の乗かご壁並びにドア35と対向し、上記左側及び右側の乗かご壁と連結した後部の乗かご壁を有し、昇降路25内を昇降する乗かご28と、乗かご28の水平方向の移動を規制するかごレール33A、33Bと、昇降路25の平断面において、左側の乗かご壁と、この左側の乗かご壁に対向する昇降路25の左側の昇降路壁との間に位置し、乗かご28と反対方向に昇降するカウンターウェイト31と、カウンターウェイト31の水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレール34A、34Bと、シーブ5及びシーブ5を駆動する同期モータ7を有し、昇降路25の下部に位置して、昇降路25の平断面において、左側の乗かご壁と左側の昇降路壁との間であって、左側の昇降路壁の幅方向にカウンターウェイト31とは離れて設けられ、同期モータ7が左側の乗かご壁側に位置し、シーブ5が左側の昇降路壁側に位置し、トラクションマシン1全体の軸長を短くしたトラクションマシン1と、シーブ5に巻き掛けられるとともに、乗かご28及びカウンターウェイト31を懸架するロープ26と、シーブ5から乗かご28に至るロープ26の一部分が巻き掛けられ、回転面が左側の昇降路壁に対して傾斜した頂部プーリ27Aと、シーブ5からカウンターウェイト31に至るロープ26の一部分が巻き掛けられた頂部プーリ27Bと、を有するエレベーター装置において、頂部プーリ27Aは、昇降路25の平断面において、トラクションマシン1の少なくとも一部と重なるよう配置され、頂部プーリ27Aの回転面は、昇降路25の平断面においてロープ26が乗かご28の第1及び第2の下部プーリ29A、29Bへ至る側がトラクションマシン1のシーブ5から巻き掛けられる側よりドア35に近づく方向に位置して左側の昇降路壁に対して傾斜しているエレベーター装置。」(以下、「刊行物1記載の発明4」という。)

3.刊行物2記載の発明
(1)請求人が甲第6号証として提出し、本件特許に係わる出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であるドイツ国特許出願公開第19752232号明細書(1999年5月27日公開。以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「エレベータケージ(1)、カウンタウエイト(6)と、駆動装置(11)とを備えるロープ式エレベータにおいて、駆動装置はエレベータ昇降路(3)内に当該階層フロア(10)と同じ高さで一体に突き出したコンクリート支持台(9)上に配置されている。駆動装置(11)を載設するためのコンクリート支持台(9)はエレベータ昇降路幅の一部を占めるにすぎないために、カウンタウエイト(6)がコンクリート支持台(9)の横を通過し得る自由空間(8)がコンクリート支持台(9)の脇に形成されている。こうした配置により、駆動装置(11)を建物の任意の階層に設置することができる。」(1頁丸囲み57の翻訳文)

イ.「欧州特許出願公開第680920号明細書はたとえば、別個の機械室を必要とせずに、エレベータ昇降路の壁面に設けた窪みに駆動装置を配置するロープ式エレベータを開示している。これは薄形に形成された駆動電動機を使用する場合にしか実現されない。ただし、本発明が出発点とするこの実施形態のロープ式エレベータには一定の短所が存在する。第一に牽引ロープの点検が困難である。第二に非常時にエレベータを手動で最寄りの停止ステーションにまで運動させることができず、しかも第三にブレーキを手動で解除することもできない。したがってバッテリを介した非常時電力供給が必要であり、これが故障している場合にはもはや動かすことは不可能である。
同様なロープ式エレベータは欧州特許出願公開第749930号明細書および欧州特許出願公開第749931号明細書にも記載されている。
本願明細書が基礎とする主特許によれば、ロープ式エレベータの駆動装置は容易に接近し得るようにしてエレベータ昇降路内に配置され、その結果、牽引ロープの点検および非常時における手動によるエレベータの運動は問題なく行なうことができる。この駆動装置は、冒頭で触れたように、確かに階層フロアと同じ高さで一体に形成されたコンクリート支持台上に載設されているが、その位置はエレベータの最上停止箇所にあり、しかもエレベータが相対的に重量タイプの場合にはコンクリート支持台下方の安全間隔を保った箇所を最上ポジションとするカウンタウエイトの運動路上方に配置されている。この場合、カウンタウエイトの牽引ロープはコンクリート支持台に設けられた穴を通って延びている。
本発明の目的は、先の主特許記載のロープ式エレベータを改良し、駆動装置をそのコンクリート支持台と共に建物の任意の階層に配置し得るようにすると共にカウンタウエイトの牽引ロープをコンクリート支持台に設けられた穴に通す必要がないようにすることである。」(2頁1欄32から66行の翻訳文。欧州特許出願公開第680920号明細書、欧州特許出願公開第749930号明細書、欧州特許出願公開第749931号明細書のパテントファミリーは、それぞれ、特開平8-40675号公報、特開平9-165172号公報、特開平9-165163号公報である。)

ウ.「本発明の1実施例を概略的な平面図によって説明する。同図では主特許と同一の部品にはできるだけ同一の符号を使用してある。
概略的に図示したロープ式エレベータはエレベータ昇降路3内をガイドレール2に沿って上下に運動可能なエレベータケージ1を有している。エレベータケージ1は平行に延びる一連の牽引ロープ4によって通例の方法で懸吊されており、この牽引ロープは図中において簡略化のために一点鎖線で表され、案内車5ないし5aを経て延びている。
案内車5aは“下側滑車”として、図示したように、牽引ロープ4がエレベータケージ1の重心を垂直に投影した箇所を通ってエレベータケージ1の壁面に対して斜めに走るようにしてエレベータケージ1の下方に配置されている。牽引ロープ4の延びをこのように配置する場合にはエレベータケージ1に傾倒モーメントが及ぼされることはほとんどなく、これによってガイドレールとの摩擦は最小限に低減される。このロープ式エレベータにおいて案内車5も、5aもまたエレベータケージ1の上方に取り付けられていてもよい。
カウンタウエイト6は同じく牽引ロープ4に懸吊され、エレベータ昇降路3内しかもコンクリート支持台9の脇の自由空間8内をガイドレール7によって案内される。このコンクリート支持台はエレベータ昇降路3内に突き出した階層フロア10と同じ高さのフロア延長部であり、ただしエレベータ昇降路の幅全体を占めていないために自由空間8が形成される。
駆動装置11(これは歯車なし巻上機であってよい)は牽引ロープ4の原動車13と共に、図示した平面図から看取されるように、エレベータ昇降路3内のコンクリート支持台9上にエレベータ昇降路3の境界壁14に対して非直角をなして配置されている。」(2頁2欄36から65行の翻訳文)

エ.「以上の説明から、“機械室”をエレベータ昇降路3内に組込んだことにより、公知の、冒頭に述べた類のエレベータに比較して、保守、点検ならびに非常時の操作も大幅に簡易化されることが判明する。カウンタウェイト6用の自由空間8を設けたことにより、カウンタウエイト6はコンクリート支持台9の脇を通過することができ、これによって、駆動装置11を必要に応じて任意の階層に設置することが可能になる。」(3頁3欄19?28行の翻訳文)

(2)刊行物2記載の発明
上記記載事項(1)より、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。

「エレベータケージ1、カウンタウエイト6と、駆動装置11とを備え、案内車5aは、牽引ロープ4がエレベータケージ1の重心を垂直に投影した箇所を通ってエレベータケージ1の壁面に対して斜めに走るようにしてエレベータケージ1の下方に配置され、駆動装置11はエレベータ昇降路3内に階層フロア10と同じ高さで一体に突き出したコンクリート支持台9上に配置されたロープ式エレベータにおいて、駆動装置11を建物の任意の階層に設置することができるようにしたロープ式エレベータ」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

4.刊行物3記載の技術事項
請求人が甲第2号証として提出し、本件特許に係わる出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開平9-165172号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】 トラクションシーブ付きの駆動機械装置がエレベータシャフト内に配設され、巻上ロープが該トラクションシーブから上方へ進むトラクションシーブエレベータにおいて、該エレベータは、前記エレベータシャフトの断面において、前記エレベータカー、カウンタウエートおよび前記駆動機械装置のトラクションシーブの各垂直投影が互いに離れていることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。
【請求項2】 請求項1に記載のトラクションシーブエレベータにおいて、該エレベータは、前記エレベータシャフトの断面における前記エレベータカー、カウンタウエート、および前記駆動機械装置の各垂直投影が互いに離れていることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。
【請求項3】 請求項1または2に記載のトラクションシーブエレベータにおいて、前記トラクションシーブ付きの駆動機械装置は該トラクションシーブの回転軸の方向において平坦な構造であり、該トラクションシーブは前記駆動機械装置の構成部分であることを特徴とするトラクションシーブエレベータ。」(特許請求の範囲)

イ.「【0002】
【従来の技術】エレベータの開発における目的の1つは建物の空間の効率的かつ経済的利用にあった。従来のトラクションシーブエレベータにおいては、エレベータの駆動機械装置を収容するために設計される機械室もしくは他の空間は、建物のエレベータに要する空間のかなりの部分をとっている。」(段落0002)

ウ.「トラクションシーブ7および巻上機械装置6自体は、エレベータカー1およびカウンタウエート2の両方の経路から少し離れて配置して、これらがエレベータシャフト内で方向転換プーリ4、5より低いほとんどどのような高さにも容易に配設できるようにしている。」(3頁3列46から50行)

5.本件特許発明1に対する判断
(1)対比
そこで、本件特許発明1と刊行物1記載の発明1を対比するに、刊行物1記載の発明1における「ドア35」、「右側の乗かご壁」、「左側の乗かご壁」、「後部の乗かご壁」、「乗かご28」、「かごレール33A、33B」、「後部の昇降路壁」、「カウンターウェイト用ガイドレール34A、34B」、「シーブ5」、「同期モータ7」、「トラクションマシン1」、「右側の昇降路壁」、「頂部プーリ27A」、「頂部プーリ27B」は、本件特許発明1における「乗降口」、「第1のかご壁」、「第2のかご壁」、「第3のかご壁」、「かご」、「かご用ガイドレール」、「第1の昇降路壁」、「カウンターウェイト用ガイドレール」、「シーブ」、「モーター」、「巻上機」、「第2の昇降路壁」、「第1の返し車」、「第2の返し車」にそれぞれ相当する。

したがって、本件特許発明1と、刊行物1記載の発明1は、
「乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられた巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有することを特徴とするエレベーター装置。」である点で一致し、次の相違点で相違している。

ア.相違点1
本件特許発明1においては「上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機」であるのに対し、刊行物1記載の発明1では、「トラクションマシン1全体の軸長を短くしたトラクションマシン1」である点。
イ.相違点2
本件特許発明1においては、巻上機は、「上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して」いるのに対し、刊行物1記載の発明1では、トラクションマシン1は、「昇降路25の下部に位置して」いる点。
ウ.相違点3
本件特許発明1においては、巻上機は、「上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し」ているのに対し、刊行物1記載の発明1では、トラクションマシン1は、「シーブ5が後部の乗かご壁側に位置し、同期モータ7が後部の昇降路壁側に位置し」ている点。
エ.相違点4
本件特許発明1では、「上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車」であるのに対して、刊行物1記載の発明1では、「回転面が右側の乗かご壁と対向する昇降路25の右側の昇降路壁に対して傾斜した頂部プーリ27A」である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点1
刊行物1記載の発明1のトラクションマシン1も、上記第5.2.(2)イ.から、シーブ5の回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機といえるから、相違点とは認められない。
また、仮にそうでないとしても、シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機は、刊行物3の上記第5.4.ア.の請求項3に記載されており、この刊行物3記載の技術事項から、上記相違点1に係る本件特許発明1のように構成することは、当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。

イ.相違点2
刊行物2記載の発明における「エレベータケージ1」、「駆動装置11」、「牽引ロープ4」は、本件特許発明1の「かご」、「巻上機」、「ロープ」に相当する。(なお、刊行物2記載の発明における「案内車5a」、は、本件特許発明4の「かご用吊車」に相当する。)刊行物2には、エレベータ装置において巻上機を建物の任意の階層の階層フロアと同じ高さで設置するという技術思想(以下、「技術思想1」という。)が示されている。
また、エレベータ装置において、巻上機を昇降路の最下階から最上階のいずれか、又は任意の高さに設けた点は周知技術にすぎない。(特開平11-310372号公報の第4の実施の形態、段落0076等。特開平7-117957号公報の段落0041等。刊行物3の上記第5.4.ウ.)
よって、刊行物1記載の発明1において、技術思想1、又は上記周知技術から、巻上機を昇降路の下部に位置する代わりに、保守点検作業の容易な位置を考慮して、上記相違点2に係る本件特許発明1のように構成することは、当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。

ウ.相違点3
トラクションマシン1及びカウンターウェイト31の乗かご28に対する配置構成が、刊行物1記載の発明1は乗かご28の後部であり、刊行物1記載の発明4は乗かご28の左側であり、この配置構成の相違と、シーブが昇降路壁に対向しモーターがかご壁側に位置するかその逆かについてとの間に、本来的な技術的関連は認められず、しかも配置構成に関し横幅か奥行きのどちらに重点を置くかは当業者が適宜採用すべき事項であり、格別異なる技術思想といえるものではない。
よって、刊行物1記載の発明1に、刊行物1記載の発明4に示されたような、シーブが第1の昇降路壁に対向し、モーターが第3のかご壁側に位置した技術事項を適用して、上記相違点3に係る本件特許発明1のように構成することは、当業者が容易に想到しうる程度のものとも認められる。

また、上記第3.5.の安全距離の確保上の効果、上記第3.7.(1)に主張する巻上機のモーター部の保守点検上の効果は、シーブが昇降路壁に対向しモーターがかご壁側に位置した技術事項に基づく固有の効果にすぎない。

エ.相違点4
返し車を平断面の投影面上においてかごとは離れて配置することは、周知技術である。(実願平4-60147号(実開平6-20372号)のCD-ROMの吊り車4等、特開平8-40675号公報の転換プーリ12等)
そして、昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえるというのは、刊行物3の上記第5.4.イ.の技術事項をみるまでもなくエレベータ装置において技術常識であり、第1の返し車の回転面を第2の昇降路壁に対してどのような角度に位置させるかは、昇降路やかごの形状、昇降路の平断面におけるレイアウト、返し車等の機器の寸法、かごの重心位置、昇降路内の不使用空間の発生等を考慮して、当業者が適宜決定すべき事項にすぎない。
また、昇降路の平断面の投影面において第1の返し車が巻上機と一部重なるようにした点に関しては、刊行物1記載の発明4においてもみられるように、シーブが第1の昇降路壁に対向し、モーターが第3のかご壁側に位置すれば、必然的に、昇降路の平断面において返し車が巻上機と一部重なることとなり、平断面上の面積が小さくなるという不使用空間の縮減効果が生じる。この点は、シーブが昇降路壁に対向しモーターがかご壁側に位置した技術事項に基づく固有の効果にすぎない。さらに、第1の返し車が、「上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに」、「回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である」とした場合の幾何学的配置にのみに基づく平断面上の面積が小さくなるという不使用空間の縮減効果は微差にすぎない。

よって、刊行物1記載の発明1に、刊行物1記載の発明4に示されたような、シーブが第1の昇降路壁に対向し、モーターが第3のかご壁側に位置した技術事項を適用すれば、必然的に返し車が平断面の投影面上において巻上機と重なることとなり、その際、上記周知技術により、返し車を平断面の投影面上においてかごとは離れて配置し、第1の返し車を昇降路の平断面の投影面において回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直とし、刊行物1記載の発明1において、上記相違点4に係る本件特許発明1のように構成することは、当業者が容易に想到しうる程度のものと認められる。

そして、「上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車」とした点により、上記第3.7.(2)に主張の巻上機側方に保守点検するための空間を縮減できるとの主張は、巻上機の制動機構の構成が特許請求の範囲において特定されて初めて主張すべき作用効果であって、巻上機の制動機構の構成は訂正明細書の特許請求の範囲にはなんら特定されておらず、同特許請求の範囲に記載された事項に基づき常に生じる本件特許発明1固有の作用効果とはいえない。
さらに、訂正明細書には巻上機の制動機構の構成については何ら記載されておらず(特許明細書、出願当初明細書も同様。)、上記第3.7.(2)に主張の作用効果は、訂正明細書に記載されておらず、また自明とも認められない。このような開示されておらず、自明でもない作用効果を進歩性の根拠とすることはできない。本件特許発明1の作用効果として認められない点に基づき阻害要因を論ずることはできない。
よって、上記第3.7.(2)の主張は採用できない。

以上のように、本件特許発明1は、刊行物1記載の発明1、刊行物1記載の発明4の技術事項、技術思想1、刊行物3記載の技術事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、しかも、上記第3.3.の主張は採用できず、本件特許発明1は、全体としてみても、刊行物1記載の発明1、刊行物1記載の発明4の技術事項、技術思想1、刊行物3記載の技術事項、及び上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

6.本件特許発明2ないし4に対する判断
(1)本件特許発明2、4に対する判断
本件特許発明2については、刊行物1記載の発明2と対比し、本件特許発明4については、刊行物1記載の発明3と対比すると、刊行物1記載の発明3における「下部プーリ29A、29B」、「プーリ32」は、本件特許発明4における「かご用吊車」、「カウンターウェイト用吊車」に相当するから、何れも、上記第5.5.(1)の上記相違点1ないし4で相違し、その他の点でそれぞれ一致する。そして、本件特許発明2、4は、上記第5.5.(2)と同様の理由で、刊行物1記載の発明2ないし3、刊行物1記載の発明4の技術事項、技術思想1、刊行物3記載の技術事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(2)本件特許発明3に対する判断
本件特許発明3については、刊行物1記載の発明1と対比すると、上記第5.5.(1)の一致点で一致し、上記第5.5.(1)の上記相違点1ないし4に加えて、さらに次の相違点5で相違する。

相違点5
本件特許発明3においては「上記昇降路の平断面において、上記巻上機の一部が上記カウンタウェイト用ガイドレールよりも上記第3のかご壁側に位置している」であるのに対し、刊行物1記載の発明1では、そのような構成がない点。
上記相違点5については、昇降路の平断面において、巻上機の一部がカウンタウェイト用ガイドレールよりも第3のかご壁側に位置することは、当業者が容易になしえた設計的事項にすぎないから、上記第5.5.(2)の相違点1ないし4の判断とあわせれば、本件特許発明3は、刊行物1記載の発明1、刊行物1記載の発明4の技術事項、技術思想1、刊行物3記載の技術事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は、刊行物1記載の発明1ないし3、刊行物1記載の発明4の技術事項、技術思想1、刊行物3記載の技術事項、及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エレベーター装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有することを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】上記第1の返し車は、上記昇降路の平断面において上記ロープの一部が上記第1のかご壁と該第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁との間を通るよう配置されたことを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項3】上記昇降路の平断面において、上記巻上機の一部が上記カウンタウェイト用ガイドレールよりも上記第3のかご壁側に位置していることを特徴とする請求項1記載のエレベーター装置。
【請求項4】上記かごの下に配置されたかご用吊車と、上記カウンターウェイトに配置されたカウンターウェイト用吊車を有し、上記ロープは上記かご用吊車と上記カウンターウェイト用吊車に巻き掛けられて、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架することを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、昇降路内に、かごとカウンターウェイトと、両者を懸架するロープと、該ロープを駆動する巻上機と、該ロープの懸架方向を転換する返し車とを有するエレベーター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】第12図および第13図は例えば特開平9-165172号公報の図2および図1に示された従来のエレベーター装置を示す平面図および側面図である。
【0003】図において、1は人または荷物が載るかご、2はかご1の重量を補償するカウンターウェイト、3はかご1とカウンターウェイト2とを懸架するロープ、4はロープ3を介してかご1とカウンターウェイト2とを駆動し昇降させる薄形の巻上機、4aは巻上機のシーブ、5a、5bはロープ3の懸架方向を転換する返し車、6はかご用ガイドレール、7はカウンターウェイト用ガイドレール、8は昇降路、11はかご1の吊り車、12はカウンターウェイト2の吊り車、13はかご側の綱止め、14はカウンターウェイト側の綱止めである。
【0004】次に、第12図?第13図を用いて、従来のエレベーター装置について説明する。巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3を介して、エレベーターのかご1およびカウンターウェイト2が昇降する。この際、かご用ガイドレール6がかご1の水平方向の移動を規制し、カウンターウェイト用ガイドレール7がカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制して、昇降路内の他の機器や昇降路壁とかご1およびカウンターウェイト2との接触・干渉を防止している。ここで、かご1、カウンターウェイト2および巻上機4の垂直投影は互いに離れており、巻上機4は隣接する一つの壁面に平行に置かれている。
【0005】近年のエレベーター装置においては、エレベーター占有空間の最小化を狙いとして、機械室を設けず巻上機を昇降路に内臓する各種の方式が提案されている。具体的には、(1)薄形の巻上機をカウンターウェイトの昇降上限より上方に配置する方式、(2)巻上機を昇降路内の頂部即ちかご最上階停止時のかごの天井より上方に配置する方式、(3)巻上機を昇降路内のピット部即ちかご最下階停止時のかご床面より下方に配置する方式である。
【0006】このうち、(1)(2)はエレベーターの昇降に必要最小限の高さよりも多くの昇降路高さを要するうえ、昇降路頂部付近においてかご上に乗って巻上機の保守点検をする作業者が予期せぬかごの上昇により昇降路の天井に頭をぶつけないための防護策を講じる必要があるという欠点がある。(2)の場合は、巻上機が発する熱が昇降路の頂部即ち巻上機自信の付近に滞留するので温度上昇により巻上機が故障し易くなる。(3)は最も冠水し易いピット部に巻上機を配置するためにその防護手段が必要という欠点がある。前記の特開平9-165172号のエレベーター装置は、(1)の欠点を解消するものであるが、巻上機の垂直投影面の上方および下方の昇降路全高にわたって不使用空間を生ぜしめるという新たな欠点をもたらしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来のエレベーター装置では、巻上機の垂直投影面の上方および下方の昇降路全高にわたって不使用空間を生ぜしめるという問題点があった。本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、この発明のエレベーター装置は、乗降口、該乗降口の両側方にそれぞれ位置する第1及び第2のかご壁並びに上記乗降口と対向し、上記第1及び第2のかご壁と連結した第3のかご壁を有し、昇降路内を昇降するかごと、上記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と、この第3のかご壁に対向する上記昇降路の第1の昇降路壁との間に位置し、上記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、上記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、シーブ及び該シーブを駆動するモーターを有し、上記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置して、上記昇降路の平断面において、上記第3のかご壁と上記第1の昇降路壁との間であって、上記第1の昇降路壁の幅方向に上記カウンターウェイトとは離れて設けられ、上記シーブが上記第1の昇降路壁に対向し、上記モーターが上記第3のかご壁側に位置し、上記シーブの回転軸方向の外形寸法が上記回転軸方向に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さい巻上機と、上記シーブに巻き掛けられるとともに、上記かご及び上記カウンターウェイトを懸架するロープと、上記シーブから上記かごに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられ、上記昇降路の平断面の投影面において上記巻上機と一部重なるとともに上記かごとは離れて配置され、回転面が上記第1のかご壁と対向する上記昇降路の第2の昇降路壁と平行で、かつ、上記シーブの回転面と垂直である第1の返し車と、上記シーブから上記カウンターウェイトに至る上記ロープの一部分が巻き掛けられた第2の返し車と、を有する。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明について、以下の通り、実施例を説明する。
実施例1.
第1図?第3図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の実施例1を説明する。
【0010】第1図は、この発明のエレベーター装置の実施例1の俯瞰面、第2図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をかごの側方に配置した例である。
【0011】図において、1は人または荷物が載るかご、2はかご1の重量を補償するカウンターウェイト、3はかご1とカウンターウェイト2とを懸架するロープ、4はロープ3を介してかご1とカウンターウェイト2とを駆動し昇降させる薄形の巻上機、4aは巻上機4のシーブ、4bは巻上機4のモーター、5a、5bはロープ3の懸架方向を転換する返し車、6はかご用ガイドレール、7はカウンターウェイト用ガイドレール、8は昇降路、8aは昇降路8の頂部、8bは昇降路8のピット部、9は巻上機4を支持するビーム、10は返し車5を支持するビーム、11はかご1の吊り車、12はカウンターウェイト2の吊り車、13はかご側の綱止め、14はカウンターウェイト側の綱止め、15は制御盤である。
なお、第1図中の一点鎖線Aは、かご最上階停止時のかご天井の高さを示す。即ち、この線より上方が頂部である。また、第1図中の一点鎖線Bは、かご最下階停止時のかご床面の高さを示す。即ち、この線より下方がピット部である。
【0012】図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。
【0013】さらに、返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されており、返し車5bは壁面に対して傾斜して配置されている。さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9の下側に固定している。そして、巻上機4のシーブ4aは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置している。ここでガイドレールの背面とは第3図Cの部分を云う。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0014】また、返し車5a、5bをかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。本例では、返し車5a、5bをビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0015】さらに、制御盤15は、下端をかご最下階停止時のかごの床面よりも上方にして、巻上機4とほぼ同じ高さに配置されている。
制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5a、5bにより方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
【0016】返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されかつ、巻上機4のシーブ4aは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置しているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機のシーブ4aに巻き掛けられているロープの巻付け角は180°より大きくできるので、トラクション能力を大きくすることができる。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無く、防護手段を要しない。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、温度上昇により巻上機が故障することもない。また、返し車5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
【0017】また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
【0018】さらに、巻上機4の下端および制御盤15の下端は、かご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあるので、ピットが冠水しても損傷を受けることは無い。
【0019】この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1.5m程度であり、この位置に巻上機および制御盤が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範囲(かご最下階停止時のかご床面?ピット床から1.7m高さ)にあることになり、点検作業が容易である。なお、巻上機4の下端および制御盤15の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。
【0020】また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし制御盤15をほほ同じ高さに配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。
【0021】巻上機4の下端を最上階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5a、5bとの高さが接近しているので、両者を点検するのに便利である。また、両者を支持するビームを一体にして、材料の節減と空間の縮減を図ることも可能になる。
【0022】実施例2.
第4図?第5図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の実施例2を説明する。第4図はこの発明のエレベーター装置の実施例2の俯瞰図、第5図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をカウンターウェイトの昇降空間の側方に配置した例である。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
【0023】図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。
【0024】さらに、返し車5a、5bは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されている。また、返し車5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
【0025】さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9に下側から固定している。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0026】また、返し車5をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。本例では、返し車5をビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0027】さらに、制御盤15は、昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置されている。制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5により方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
【0028】返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置され、制御盤15は昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置されているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無く、防護手段を要しない。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、熱により巻上機が故障することもない。
【0029】また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
【0030】さらに、巻上機4の下端はかご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあり、制御盤15は昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上にあるので、ピットが冠水しても巻上機4および制御盤15は損傷を受けることは無い。
【0031】この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1.5m程度であり、この位置に巻上機が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範囲(かご最下階停止時のかご床面?ピット床から1.7m高さ)にあることになり、点検作業が容易である。
【0032】なお、巻上機4の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし、制御盤15を昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上に配置した場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし、制御盤15を昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。
【0033】巻上機4の下端を最上階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5との高さが接近しているので、両者を点検するのに便利である。また、両者を支持するビームを一体にして、材料の節減と空間の縮減を図ることも可能になる。
【0034】実施例3.
第6図?第7図および第3図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の実施例3を説明する。第6図は、この発明のエレベーター装置の実施例3の俯瞰図、第7図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの側方にあり、巻上機をカウンターウェイトと同じ側のかごの側方でカウンターウェイトとは昇降路の平断面上で投影面が重ならないように配置した例である。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
【0035】図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。さらに、返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されている。また、返し車5a、5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
【0036】さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9に下側から固定している。そして、巻上機4のモーター4bは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置している。ここでガイドレールの背面とは図3のCの部分を云う。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0037】また、返し車5をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。
本例では、返し車5をビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
【0038】制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5により方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
【0039】返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されかつ、巻上機4のモーター4bは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置しているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無い。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、熱により巻上機が故障することもない。
【0040】また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
【0041】さらに、巻上機4の下端および制御盤15の下端はかご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあるので、ピットが冠水しても巻上機4および制御盤15は損傷を受けることは無い。
【0042】この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1‥5m程度であり、この位置に巻上機および制御盤が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範囲(かご最下階停止時のかご床面?ピット床から1.7m高さ)にあることになり、点検作業が容易である。なお、巻上機4の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にし、制御盤15をほぼ同じ高さに配置した場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。
【0043】また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にし制御盤15をほぼ同じ高さに配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。巻上機4の下端を最も上階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5とが接近しているので、両者の位置調整が容易であり、点検にも便利である。
【0044】実施例4.
第8図?第10図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の実施例4を説明する。第8図は、この発明のエレベーター装置の実施例4の俯瞰図、第2図は平面図を示し、第9図および第10図は要部を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をかごの側方でかつ最上階停止時のかご天井高さのすぐ下方で返し車を支持するビームに対して下側に配置した例である。前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
【0045】図において、16はビーム10の振動を吸収する弾性体である。ここで、返し車5の昇降路壁に対する傾斜角は可変であり、二つの返し車5相互の間隔も可変の構造としている。この可変構造は、例えばビーム10と返し車5の枠とをボルト締結とし、かつその締結穴を長穴にすれば実現できる。但し、可変構造はこれに限るものではない。また、この可変構造は実施例1から実施例3においても適用可能である。
【0046】返し車5を支持するビーム10の下方に、巻上機4を取り付けているので、ロープ3の張力により、巻上機4のシーブ4aに上方向に作用する力と、返し車5に下方向に作用する力とにより、ビーム10に作用する力が内力として相殺されるため、ガイドレールに作用する力が軽減される。また、巻上機4と返し車5とが同一のビーム10に取り付けられているので相互の位置調整が容易である。
【0047】また、巻上機4と返し車5とが同一のビーム10に取り付けられており、ビーム10は弾性体16を介してかごのガイドレール6およびカウンターウェイトのガイドレール7とに取り付けられているので、効果的に巻上機4と返し車5の振動を絶縁できる。さらに、返し車5の昇降路壁との傾斜角が可変であり、二つの返し車5の相互の間隔も可変であるので、異なるサイズのかご1で、かごの吊り車12、カウンターウェイトの吊り車13との昇降路平面内での位置関係が変わっても、同一設計で対応できる。
【0048】実施例5.第11図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の一実施例を説明する。第11図は、この発明のエレベーター装置の実施例5を示す。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。図において17は二つあった返し車5のうち一方を置き換えた駆動装置である。なお、この置き換えは実施例1から実施例4において適用可能である。
【0049】二つの返し車5a、5bの一方を駆動装置17に置き換え、巻上機4と同期駆動することにより駆動能力を向上させることができ、大容量のエレベーター装置に対しても対応できる。
【0050】以上のように、本発明にかかるエレベーター装置は、昇降路内を昇降するかごと、前記かごと対向方向に移動するカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、前記昇降路内にあって前記ロープが巻き掛けられ当該ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機とを有するエレベーターにおいて用いられるのに適している。
【0051】
【発明の効果】本発明にかかるエレベーター装置は、昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、本発明の実施例1のエレベーター装置の俯瞰図である。
【図2】第2図は、本発明の実施例1および実施例4のエレベーター装置の平面図である。
【図3】第3図は、本発明の実施例1?実施例5で用いるガイドレールの「背面」の説明図である。
【図4】第4図は、本発明の実施例2のエレベーター装置の俯瞰図である。
【図5】第5図は、本発明の実施例2のエレベーター装置の平面図である。
【図6】第6図は、本発明の実施例3のエレベーター装置の俯瞰図である。
【図7】第7図は、本発明の実施例3のエレベーター装置の平面図である。
【図8】第8図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の俯瞰図である。
【図9】第9図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の要部の図である。
【図10】第10図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の要部の図である。
【図11】第11図は、本発明の実施例5のエレベーター装置の俯瞰図である。
【図12】第12図は、特開平9-165172号公報に示された従来のエレベーター装置の平面図である。
【図13】第13図は、特開平9-165172号公報に示された従来のエレベーター装置の側面図である。
【符号の説明】
1 かご、2 カウンターウェイト、3 ロープ、4 巻上機、4a シーブ、4b モーター、5a 返し車、5b 返し車、6 かご用ガイドレール、7 カウンターウェイト用ガイドレール、8 昇降路。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-16 
結審通知日 2006-02-22 
審決日 2006-03-08 
出願番号 特願2002-326628(P2002-326628)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B66B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 清田 栄章
関 義彦
登録日 2004-01-09 
登録番号 特許第3508768号(P3508768)
発明の名称 エレベーター装置  
代理人 丸山 隆  
代理人 高橋 省吾  
代理人 伊達 研郎  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 高橋 省吾  
代理人 伊達 研郎  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 内田 敏彦  
代理人 丸山 隆  
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