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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
審判 全部無効 2項進歩性  B23K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B23K
管理番号 1186837
審判番号 無効2006-80224  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-30 
確定日 2007-09-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3152945号発明「無鉛はんだ合金」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願〔特願平11-548053号(国際出願PCT/JP99/01229)、優先権主張の基礎とされた先の出願:特願平10-100141号(平成10年3月26日)、特願平10-324482号(平成10年10月28日)、特願平10-324483号(平成10年10月28日)〕
平成11年 3月15日
設定登録 平成13年 1月26日
異議決定(異議2001-72269号、一部取消)
平成15年 2月18日
出訴(平成15年(行ケ)第112号) 平成15年 3月27日
訂正審判請求(訂正2004-39071号) 平成16年 4月 9日
審決(訂正2004-39071号、訂正認容)
平成16年 6月10日
東京高裁判決(平成15年(行ケ)第112号、特許取消決定取消)
平成16年 7月26日
異議決定(異議2001-72269号、特許維持)
平成16年 9月17日
無効審判請求(無効2004-80275号) 平成16年12月24日
審決(無効2004-80275号、請求不成立)
平成17年11月22日
出訴(平成17年(行ケ)第10860号) 平成17年12月28日
本件無効審判請求 平成18年10月30日
答弁書 平成18年12月20日
知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10860号、請求棄却)
平成19年 1月30日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成19年 3月16日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成19年 3月16日
口頭審理(特許庁第1審判廷) 平成19年 3月16日
上申書(請求人) 平成19年 4月 6日
上申書(被請求人) 平成19年 4月 6日
上申書(2)(請求人) 平成19年 4月20日
上申書(被請求人) 平成19年 4月20日
上申書(3)(請求人) 平成19年 5月 7日
上申書(3)(被請求人) 平成19年 5月 7日
上申書(4)(被請求人) 平成19年 6月25日

なお、平成17年(行ケ)第10860号判決は確定している。

第2 本件発明
本件特許について、平成16年4月9日付けで訂正審判(訂正2004-39071号)が請求され、平成16年6月10日付けで訂正を認容する審決がされ確定したから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、平成16年4月9日付け訂正審判請求書に添付された明細書及び図面(以下、単に「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】Cu0.3?0.7重量%、Ni0.04?0.1重量%、残部Snからなる、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項2】Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項3】Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項4】請求項1に対して、さらにGe0.001?1重量%を加えた無鉛はんだ合金。」

第3 請求の趣旨と、請求人の主張する無効理由
審判請求書によれば、請求人は、本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。
そして、その無効理由は、以下の1、2のとおりのものであって、以下の甲第1?49号証を証拠方法として提出している。また、以下の参考資料6?9も提出している。

1.本件請求項1?4に係る特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成14年法律第24号)改正前の特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当する(以下、「無効理由1」という。)。
具体的には、以下の理由1A?1Cを主張していると認める。
理由1A;本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項について、以下の(1)?(5)の点で明確でないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しているとはいえない。
(1)金属間化合物の発生を何と比較して抑制したのか。
(2)金属間化合物の発生をどの程度抑制したのか。
(3)「流動性」とは、どの状態におけるものなのか。
(4)流動性が何と比較して向上したのか。
(5)流動性がどの程度向上したのか。
理由1B;請求人会社研究室の田中靖久が行った実験(甲第9号証、甲第30号証、甲第48号証)によれば、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金は実現できなかったから、発明の詳細な説明は、当業者が、本件発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしているとはいえない。
理由1C;本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項は、発明の詳細な説明に、発明を実施するための最良の形態として、記載される「サンプル1、2、4、8、9」(本件明細書の第4頁第21行?第8頁第15行及び表1)で裏付けられていないから、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しているとはいえない。

2.優先権主張の基礎とされた先の出願である特願平10-100141号(平成10年3月26日)、特願平10-324482号(平成10年10月28日)、特願平10-324483号(平成10年10月28日)の各々の願書に最初に添付した明細書又は図面には、本件発明1?4におけるNi含有量の下限値である「0.04重量%」及び「流動性が向上した」が記載されておらず、また、本件発明2における「Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した」、本件発明3における「Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した」、本件発明4における「さらにGe0.001?1重量%を加えた」が記載されていないから、本件発明1?4は、優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明とはいえない。
そうすると、本件発明1?4については、特許法第41条第2項の規定は適用されず、同法第29条の規定については、本件特許に係る出願は現実の出願の時(平成11年3月15日)にされたものとして適用される。
そして、本件発明1?4は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国で頒布された刊行物である甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の2、甲第4?8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する(以下、「無効理由2」という。)。

甲第1号証:特開平10-107420号公報
甲第2号証:特開平7-116887号公報
甲第3号証の1:特表2001-504760号公報
甲第3号証の2:国際公開第98/34755号
甲第3号証の3:国際公開第98/34755号の訳文
甲第4号証:「エレクトロニクスのはんだ付け」総合電子出版社(昭和51年1月20日第1版)第50?53頁
甲第5号証:特開平9-70687号公報
甲第6号証:「鉄鋼技術講座 別巻 金属工学辞典」地人書館(昭和37年11月30日初版)第292?293頁
甲第7号証:特開昭62-230493号公報
甲第8号証:特開平8-132278号公報
甲第9号証:田中靖久の2006年9月20日付け「Sn-Cu系およびSn-Cu-Ni系、Sn-Cu-Ni-Ge系はんだ合金の噴流高さ計測実験結果」と題された書面
甲第10号証:(株)日本スペリア社技術部作成の「Sn-CuにおけるNi添加の影響」と題された書面
甲第11号証:無効2004-80275号の株式会社日本スペリア社提出の平成17年4月18日付け答弁書
甲第12号証:特許第3152945号公報(本件特許公報)
甲第13号証-1:特願平10-100141号の願書、それに最初に添付した明細書、要約書及び職権訂正データ
甲第13号証-2:特願平10-324482号の願書、それに最初に添付した明細書、要約書及び職権訂正データ
甲第13号証-3:特願平10-324483号の願書、それに最初に添付した明細書、要約書、職権訂正データ、出願審査請求書、却下理由通知書及び手続却下の処分
甲第14号証:特許・実用新案審査基準第IV部第2章国内優先権の第3頁
甲第15号証:特許・実用新案審査基準第III部第I節新規事項の第3?5頁
甲第16号証:本件明細書
甲第17号証:訂正2004-39071号の平成16年4月9日付け審判請求書
甲第18号証:特許取消決定取消請求事件(平成15年(行ケ)第112号)の被請求人提出の平成15年5月7日付け準備書面(第1回)
甲第19号証:「ソルダリング イン・エレクトロニクス」日刊工業新聞社(昭和61年8月30日初版)第106?107頁
甲第20号証:特許・実用新案審査基準第II部第2章新規性進歩性の第19?20頁
甲第21号証:「はんだ付け技術」総合電子出版社(昭和52年4月25日第4版)第206?207頁
甲第22号証:特開昭62-89567号公報
甲第23号証:特願平11-548053号の平成12年11月14日付け意見書
甲第24号証:異議2001-72269号の平成15年2月18日付け異議の決定
甲第25号証:特開平11-277290号公報
甲第26号証:訂正2004-39071号の平成16年6月10日付け審決
甲第27号証:無効2004-80275号の被請求人の平成17年7月8日付け口頭審理陳述要領書
甲第28号証:無効2004-80275号の被請求人の平成17年7月8日付け口頭審理陳述要領書(2)
甲第29号証:無効2004-80275号の被請求人の平成17年8月16日付け上申書
甲第30号証:田中靖久の2007年1月25日付け「ラゴーン法再現試験」と題された書面
甲第31号証:CDR(ビデオ)
甲第32号証:2007/01/26のホームページ(ラゴーン法-Google検索)
甲第33号証:2007/01/26のホームページ(ラゴーン法-Infoseek検索)
甲第34号証:2007/01/26の被請求人ホームページ
甲第35号証:2007/01/26のホームページ(クィーンズランド大学と鉛フリーはんだの共同研究)
甲第36号証:ホームページ(クィーンズランド大学(野北和宏氏にかかわるもの))
甲第37号証:野北和宏の2006年12月7日付け「鉛フリーはんだSn-0.7wt%Cu-(Ag)-(Ni)合金の流動性に及ぼすAgおよびNiの影響」と題された書面
甲第38号証の1:国際公開第98/32886号
甲第38号証の2:国際公開第98/32886号の第1頁第32?35行の訳文
甲第39号証:「標準マイクロソルダリング技術 第2版」日刊工業新聞社(2002年8月30日第2版)第24頁、第92頁
甲第40号証:「金属用語辞典」株式会社アグネ技術センター(2004年2月20日初版)第138?139頁、第214?215頁、第334?335頁
甲第41号証:特開平10-286689号公報
甲第42号証:「高信頼度マイクロソルダリング技術」株式会社工業調査会(1991年1月21日初版)第114?115頁
甲第43号証:田中靖久の平成19年4月4日付け報告書
甲第44号証:乙第3号証で引用された参考文献[5]のFig.4
甲第45号証:弁護士森隆行の平成19年4月18日付け期日結果報告書
甲第46号証:大橋照男の平成19年4月19日付け意見書
甲第47号証:田中靖久の平成19年4月17日付け意見書
甲第48号証:田中靖久の平成19年4月17日付け「過共晶でのラゴーン法実験」と題された書面
甲第49号証:大橋照男の平成19年5月7日付け意見書
参考資料6:特開平2-34295号公報
参考資料7:特開平10-118783号公報
参考資料8:特開平10-180481号公報
参考資料9:特開平10-225790号公報

第4 答弁の趣旨と、被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
そして、被請求人は、請求人の主張する無効理由に理由はない、と主張し、以下の乙第1?12号証を証拠方法として提出していると認める。

乙第1号証:無効2004-80275号の平成17年11月22日付け審決
乙第2号証:アイヴァー イー アンダーソンの2006年12月11日付け陳述書
乙第3号証:野北和宏の2006年6月6日付け「Sn-0.7wt%Cu合金の流動性に及ぼすNi微量添加の影響」と題された書面
乙第4号証:審決取消請求事件(平成17年(行ケ)第10860号)の判決(平成19年1月30日判決言渡)
乙第5号証:Handbook of Ternary Alloy Phase Diagrams 第2337頁
乙第6号証:野北和宏の「ソルダーコート株式会社、研究室、田中靖久氏による「ラゴーン法再現試験」に関する問題点および疑問点、および野北による報告書「鉛フリーはんだSn-0.7wt%Cu-(Ag)-(Ni)合金の流動性に及ぼすAgおよびNiの影響」への批判および疑問に対する回答」と題された書面
乙第7号証:「高信頼度マイクロソルダリング技術」株式会社工業調査会(1991年1月21日初版)第108?117頁
乙第8号証:「はんだ付け技術」総合電子出版社、工学図書株式会社(昭和51年3月5日第3版)第34?35頁、第206?207頁
乙第9号証:「エレクトロニクスのはんだ付け」総合電子出版社、工学図書株式会社(昭和51年1月20日第1版)第50?55頁
乙第10号証:「ソルダリング イン・エレクトロニクス」日刊工業新聞社(昭和61年8月30日初版)第106?107頁
乙第11号証:野北和宏の2007年4月30日付け意見書
乙第12号証:平成19年(行ヒ)第123号の調書(決定)(決定日:平成19年6月22日)

第5 当審の判断
1.無効理由1について
(1)理由1Aについて
本件明細書には、甲第16号証によれば、以下の事項が記載されていると認める。
「本発明では、上記目的を達成するためのはんだ合金として、Cu0.3?0.7重量%に、Ni0.04?0.1重量%、残部Snの3元はんだを構成した。この成分中、Snは融点が約232℃であり、接合母材に対するヌレを得るために必須の金属である。ところが、Snのみでは鉛含有はんだのように比重の大きい鉛を含まないので、溶融時には軽くふわふわした状態になってしまい、噴流はんだ付けに適した流動性を得ることができない。又、結晶組織が柔らかく機械的強度が十分に得られない。従って、Cuを加えて合金自体を強化する。CuをSnに約0.7%加えると、融点がSn単独よりも約5℃低い約227℃の共晶合金となる。」(明細書第2頁第7?15行)
「本発明において重要な構成は、Snを主としてこれに少量のCuを加えるだけでなく、Niを0.04?0.1重量%添加したことである。NiはSnとCuが反応してできるCu6Sn5あるいはCu3Snのような金属間化合物の発生を抑制する作用を行う。このような金属間化合物は融点が高く、合金溶融時に溶湯の中に存在して流動性を阻害し、はんだとしての性能を低下させる。」(明細書第2頁最下行?第3頁第4行)
「そこで、Cuと全固溶の関係にあるNiを採用し、CuのSnに対する反応を抑制する作用を行わしめるものである。
ただし、Snに融点の高いNiを添加すると液相温度が上昇する。従って、通常のはんだ付けの許容温度を考慮して添加量の上限を0.1重量%に規定した。また、Niの添加量を減らしていった場合、0.04重量%以上であればはんだ流動性の向上が確認でき・・・ることが判明した。」(明細書第3頁第12?19行)
「ところで、上記説明では、Sn-Cu合金に対してNiを添加するという手順を基本として説明したが、逆にSn-Ni合金に対してCuを添加するという手順も成立する。SnにNiを単独で徐々に添加した場合には・・・Sn-Ni化合物の発生によって溶解時に流動性が低下するが、Cuを投入することによって・・・流動性が改善され、さらさらの状態になる。」(明細書第3頁第21?25行)
これらの記載からみて、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」とは、SnにCu又はNiを単独で添加すると、SnとCuとの金属間化合物又はSnとNiとの金属間化合物が発生し、噴流はんだ付けにおける合金溶融時に溶湯中に存在して流動性が低下するところ、互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるCuとNiを所定量添加することにより、SnにCu又はNiを単独で添加する場合と比較して、上記金属間化合物の発生が相対的に抑制され、その結果として、噴流はんだ付けに適したさらさらの状態に流動性が相対的に向上したことを意味するものと認められる。
以上のことから、流動性とは、溶融状態におけるものであること、また、金属間化合物の発生の抑制や流動性の向上は、SnにCu又はNiを単独で添加する場合との比較でのこと、更には、流動性の向上は、金属間化合物の発生が相対的に抑制されたことの結果であることも分かる。
また、金属間化合物が発生するのを抑制する程度や、流動性が向上する程度が明確でないことが、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」の意味が明確でないとの理由にはならない。すなわち、流動性の向上は、上述のとおり、金属間化合物の発生が相対的に抑制されたことの結果であり、そして、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」は、文字どおり、それが向上したと認識できる程度に、流動性が向上したことを意味しているのである。
してみると、本件明細書からは、請求人の主張する明確でないとする(1)?(5)の点を根拠に、特許請求の範囲に記載の、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」の意味が明確でないということはできない。
よって、理由1Aに理由はない。

(2)理由1Bについて
ア 本件明細書に記載されているとおり、CuとNiは互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるため、NiにはCuのSnに対する反応を抑制する作用があるものと考えられる。
また、乙第3号証によると、Sn-0.7wt%Cuに対してNiを0?0.1重量%まで11段階に調整した試料について、溶融させた状態の試料にガラス管の端部を漬け、所定の真空引きで溶融試料をガラス管内に引きこみ、試料の流れが止まった位置までの長さを測定したところ、その値はNi添加量300ppmまでにおいて著しい変化はなく、400ppmで緩やかな増加に転じ、500ppmの試料で最大値を示し、それ以上のNi添加量では800ppmまで緩やかに減少し、800?1000ppmの間で更に減少するが、300ppmの場合よりは大きいことが認められる。この実験は、Niを400?1000ppm、すなわち、0.04?0.1wt%添加した場合には、溶融させた状態のSn-0.7wt%Cu合金は、Niを添加しない場合などよりも、長い距離まで流れることを示したものであるところ、乙第3号証によると、この実験結果からCu6Sn5中にNiが選択的に取り込まれて、Cu6Sn5の形成が抑制されたために、固体になるまでに長い時間を要したものと推認することができることが認められる。
以上のことからすると、Niを400?1000ppm(0.04?0.1重量%)添加した場合には、Cu6Sn5の形成が抑制されることが認められるから、はんだ付け作業中にCu濃度が上昇した場合に、SnとCuの不溶解性の金属間化合物が形成され、はんだ浴中に析出したり、ざらざらした泥状となってはんだ浴底に溜まったりして、はんだの流動性を阻害することが、Niの添加によって抑制されることが認められる。
この認定は、本件特許に関する、別件無効審判の審決取消請求事件(平成17年(行ケ)10860号)の判決の内容、すなわち、確定判決の内容である
「ア 上記(1)アの本件特許の訂正明細書(甲9の「明細書」)に記載されているとおり,CuとNiは互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるため,NiにはCuのSnに対する反応を抑制する作用があるものと考えられる。
イ 野北研究員が作成した「Sn-0.7wt%Cu合金の流動性に及ぼすNi微量添加の影響」と題する実験報告書(乙4)によると,Sn-0.7wt%Cuに対してNiを0?0.1重量%まで11段階に調整した試料について,溶融させた状態の試料にガラス管の端部を漬け,所定の真空引きで溶融試料をガラス管内に引きこみ,試料の流れが止まった位置までの長さを測定したところ,その値はNi添加量300ppmまでにおいて著しい変化はなく,400ppmで緩やかな増加に転じ,500ppmの試料で最大値を示し,それ以上のNi添加量では800ppmまで緩やかに減少し,800?1000ppmの間で更に減少するが,300ppmの場合よりは大きいことが認められる。この実験は,Niを400?1000ppm添加した場合には,溶融させた状態のSn-0.7wt%Cu合金は,Niを添加しない場合などよりも,長い距離まで流れることを示したものであるところ,乙4によると,この実験結果からCu6Sn5中にNiが選択的に取り込まれて,Cu6Sn5の形成が抑制されたために,固体になるまでに長い時間を要したものと推認することができることが認められる。
ウ 上記ア及びイからすると,Niを400?1000ppm(0.04?0.1重量%)添加した場合には,Cu6Sn5の形成が抑制されることが認められるから,前記(1)で認定した本件発明1の解決課題,すなわち,「はんだ付け作業中にCu濃度が上昇した場合に,SnとCuの不溶解性の金属間化合物が形成され,はんだ浴中に析出したり,ざらざらした泥状となってはんだ浴底に溜まったりして,はんだの流動性を阻害すること」が,Niの添加によって抑制されることが認められる。」(乙第4号証第38頁第15行?第39頁第13行)(審決注;ここにおける乙4とは、本件審判請求事件における乙第3号証である。)と符合するものである。
そして、乙第3号証の実験は、上記認定したように、Niを0.04?0.1wt%添加した場合には、溶融させた状態のSn-0.7wt%Cu合金は、Niを添加しない場合などよりも、長い距離まで流れることを示すもので、長い距離まで流れる方が流動性が優れていることは明らかであるから、Sn-0.7wt%Cuに対してNiを0.04?0.1%添加した場合には、Niを添加しない場合と比較して、流動性が向上したということができる。
してみると、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金は実現できるということができる。
イ これについて、請求人は、請求人会社研究室の田中靖久が行った実験(甲第9号証、甲第30号証、甲第48号証)によれば、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金は実現できなかったと主張している。
そこで、検討すると、甲第9号証によれば、Sn-0.71wt%Cu-0.058wt%Ni合金、及びSn-0.73wt%Cu-0.054wt%Ni-0.007wt%Ge合金は、Sn-0.65wt%Cu合金と比較して、流動性が向上しなかったとの結果が得られたとされ、また、甲第30号証によれば、Sn-0.7wt%Cu-0.05wt%Ni合金は、Sn-0.7wt%Cu合金と比較して、流動性が向上しなかったとの結果が得られたとされ、更に、甲第48号証によれば、Sn-1.2wt%Cu-0.05wt%Ni合金は、Sn-1.2wt%Cu合金と比較して、流動性が向上しなかったとの結果が得られたとされている。
しかしながら、甲第9号証の実験は、溶融はんだ合金の噴流高さを測定するものであるのに対して、乙第3号証の実験は、溶融はんだ合金を所定の真空引きでガラス管内に引きこみ、試料の流れが止まった位置までの長さを測定するものである。
また、甲第30号証の実験では、はんだ合金の量が500gであり、溶解炉に蓋がなく、ガラス管が空気中に曝されており、はんだ合金の溶融温度が240℃、250℃、260℃、270℃であり、溶融温度での保持時間が5分であるのに対して、乙第3号証の実験では、はんだ合金の量が1500gであり、溶解炉に蓋をしており、ガラス管が炉の蓋の中に入っており、はんだ合金の溶融温度が300.5℃(±0.4℃)であり、溶融温度での保持時間が約45分である。
また、甲第48号証の実験では、はんだ合金の量が500g(±2g)であり、はんだ合金の溶融温度が250℃であり、はんだ合金のCu含有量は、1.250wt%、1.240wt%であるのに対して、乙第3号証の実験では、はんだ合金の量が1500gであり、はんだ合金の溶融温度が300.5℃(±0.4℃)であり、はんだ合金のCu含有量は0.67wt%、0.68wt%である。
すなわち、甲第9号証、甲第30号証及び甲第48号証の各実験は、乙第3号証の実験とは異なる実験方法又は実験条件で行われたものであり、それにより異なる結果が得られたにすぎないのであって、上記アで述べたとおり、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金は実現できるといえる以上、請求人の主張に理由はない。
ウ 更に、請求人は、要するに、以下のa?cの点を根拠に、乙第3号証は、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金が実現できることを裏付けるものではないと主張する。
a 乙第3号証の実験は、ガラス管温度が測定されておらず、その温度が一定であったかどうか不明であり、また、ガラス管高さ及び溶融温度での保持時間が不明である点。
b 甲第37号証の第6頁の図2(左図)によれば、ラゴーン法(乙第3号証の実験方法)による流動性は、冷却時に固液共存状態を発現しないSn-Pb共晶組成において最も良好になるはずであるところ、乙第3号証の図5によれば、Ni含有量が多くなるにつれ、Sn-0.7Cu共晶組成から遠くなるにもかかわらず、ラゴーン法による流動性が向上しているという齟齬がある点。
c 本件明細書の記載によれば、純金属であるSnは流動性が低いものであるが、甲第37号証の第6頁の図2(左図)によれば、純金属であるSnは、合金と比較して、ラゴーン法による流動性はむしろ高くなるはずであるから、本件発明1?4における流動性は、乙第3号証の実験方法であるラゴーン法における流動性とは相違するといえる点。
しかしながら、上記アで述べたように、乙第3号証等から「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金が実現できるといえ、そして、このことは、同じく上記アで述べたように、判決の内容と符合するもので、請求人の主張に理由がないことは明らかである。以下に、上記a?cの各点について、簡単に触れておく。
a 乙第3号証の実験は、ガラス管温度が測定されておらず、その温度が一定であったかどうか不明であり、また、ガラス管高さ及び溶融温度での保持時間が不明である点。
乙第6号証の「3.1野北の実験での実験条件」の記載によれば、乙第3号証の実験では、溶解炉に蓋をしており、また、ガラス管の位置や溶融はんだに浸かっている部分の長さなどの実験条件を一定に保っているから、ガラス管の温度が測定されていないとしても、その温度はほぼ一定であると認められる。
また、乙第6号証の「3.1野北の実験での実験条件」の記載によれば、ガラス管高さは125mmであり、また、「3.2「野北の実験ではバラツキ要因について一切述べられていない。」に対する回答」の「はんだ溶融状態の保持時間の影響」の記載によれば、溶融温度での保持時間は約45分であり、その条件が明らかにされていると認められる。
b 甲第37号証の第6頁の図2(左図)によれば、ラゴーン法(乙第3号証の実験方法)による流動性は、冷却時に固液共存状態を発現しないSn-Pb共晶組成において最も良好になるはずであるところ、乙第3号証の図5によれば、Ni含有量が多くなるにつれ、Sn-0.7Cu共晶組成から遠くなるにもかかわらず、ラゴーン法による流動性が向上しているという齟齬がある点。
乙第11号証において引用される参考文献7の図6に示されるSn-Cu-Niの相図によれば、Sn-0.7Cuは、厳密には僅かに亜共晶であり、Niを微量添加することにより三元系の共晶点により近くなると認められるから、上記のような齟齬があるとはいえない。
c 本件明細書の記載によれば、純金属であるSnは流動性が低いものであるが、甲第37号証の第6頁の図2(左図)によれば、純金属であるSnは、合金と比較して、ラゴーン法による流動性はむしろ高くなるはずであるから、本件発明1?4における流動性は、乙第3号証の実験方法であるラゴーン法における流動性とは相違するといえる点。
甲第37号証の第6頁の図2(左図)によれば、純金属であるSnは、共晶組成の合金と比較して、ラゴーン法による流動性は低くなっていると認められ、純金属であるSnは、合金と比較して、ラゴーン法による流動性が高くなるとは必ずしもいえないから、そのことにより、本件発明1?4における流動性は、ラゴーン法における流動性と相違するとはいえない。
以上のとおりであるから、理由1Bに理由はない。

(3)理由1Cについて
上記(1)で述べたことから明らかなように、発明の詳細な説明には、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項についての記載があり、しかも、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」とは、SnにCu又はNiを単独で添加すると、SnとCuとの金属間化合物又はSnとNiとの金属間化合物が発生し、噴流はんだ付けにおける合金溶融時に溶湯中に存在して流動性が低下するところ、互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるCuとNiを所定量添加することにより、SnにCu又はNiを単独で添加する場合と比較して、上記金属間化合物の発生が相対的に抑制され、その結果として、噴流はんだ付けに適したさらさらの状態に流動性が相対的に向上したことを意味するものであって、その内容も明らかにされている。
更に、上記(2)で述べたように、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金が実現できるといえ、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項は、実質的に裏付けられている。
以上のことから、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。
これについて、請求人は、発明の詳細な説明に、発明を実施するための最良の形態として記載されている「サンプル1、2、4、8、9」で、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項は、裏付けられていないから、本件発明1?4は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないと主張する。
しかしながら、Cu0.3?0.7重量%、Ni0.04?0.1重量%、残部Snからなる無鉛はんだ合金が、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項を有しているものであることは、上述のとおりであるところ、上記「サンプル1、2、4、8、9」が、発明を実施するための最良の形態として記載されていることは明らかであり、いずれのサンプルも、その合金組成が上記数値範囲内のものであるから、これらサンプルは、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項を有していると解するのが自然であり、仮に有していないとしても、上述のとおり、本件発明1?4における「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」なる事項は、発明の詳細な説明に記載されていることに変わりはないのである。
よって、請求人の主張に理由はない。
以上のとおりであるから、理由1Cに理由はない。

(4)無効理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1に理由はない。

2.無効理由2について
(1)優先権の主張について
ア 本件特許に係る出願は、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う出願であり、その優先権主張の基礎とされた先の出願は、特願平10-100141号(平成10年3月26日出願)、特願平10-324482号(平成10年10月28日出願)、特願平10-324483号(平成10年10月28日出願)(以下、それぞれ「基礎出願1」、「基礎出願2」、「基礎出願3」という。)である。
また、甲第1号証が頒布されたのは平成10年4月24日であり、甲第3号証の2が頒布されたのは1998年(平成10年)8月13日と認められるから、甲第1号証及び甲第3号証の2が頒布されたのは、基礎出願1の出願後かつ基礎出願2、3の出願前であると認められる。
ここで、本件発明1?4が、基礎出願1の願書に最初に添付した明細書又は図面(甲第13号証-1)に記載されたものであれば、特許法第42条第2項の規定により、本件発明1?4についての同法第29条の規定の適用については、本件特許に係る出願は、基礎出願1の出願の時にされたものとみなされる。
イ そこで、本件発明1?4が、基礎出願1の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されたものであるか否かについて、以下に検討する。
本件発明1?4は、上記第2で認定したとおりのものである。
一方、基礎出願1の願書に最初に添付した明細書又は図面には、本件発明1?4におけるCu含有量の下限値である「0.3重量%」及びNi含有量の下限値である「0.04重量%」が記載されておらず、また、本件発明1?4における「流動性が向上した」については何ら記載がない。
よって、本件発明1?4は、基礎出願1の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明とはいえない。
ウ そうすると、本件発明1?4が、基礎出願2、3の願書に最初に添付した明細書又は図面(甲第13号証-2、甲第13号証-3)に記載されたものであるか否か、すなわち、基礎出願2、3に基づく優先権主張が認められるか否かにかかわらず、甲第1号証及び甲第3号証の2は、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であるといえる。
また、甲第2号証、甲第4?8号証が頒布されたのは、基礎出願1の出願前であると認められるから、甲第2号証、甲第4?8号証も、本件特許に係る出願前に頒布された刊行物であるといえる。

(2)甲各号証の主な記載事項
甲第1号証:特開平10-107420号公報
(甲1a)「【請求項1】基板が銅ベースの複数の端子を有し、一方電子部品は錫と銅の合金からなる表面を有する複数の導電性のリード端子を有し、それらリード端子が基板の端子に錫と銅の半田合金によって半田付けされてなることを特徴とする基板と電子部品との組立体。
【請求項2】前記半田合金は、半田の全重量の99.3重量%もしくはおよそ99.3重量%の錫と、半田の全重量の0.7重量%もしくはおよそ0.7重量%の銅でできていることを特徴とする請求項1に記載の基板と電子部品との組立体。」(特許請求の範囲)
(甲1b)「本発明は、上述した鉛を含まない半田に起因する問題を最小限に抑えるかまたは克服する基板と電子部品との組立体を提供することを目的とする。」(【0005】)
(甲1c)「超音波半田付け、リフロー半田付けまたはワイヤボンディング半田付け技術による半田付け工程中に、半田合金はおよそ220℃または227℃と240℃の間の所定温度で迅速にペースト状になり、そして熱が除去されると即座に固体状態に戻る。」(【0016】)

甲第2号証:特開平7-116887号公報
(甲2a)「Pb10?95重量%、Ni0.002?0.02重量%、残部Snからなることを特徴とする耐疲労性を有するはんだ合金。」(特許請求の範囲の請求項1)
(甲2b)「しかしながら、金属間化合物が析出するような合金組成のはんだは、融点の上昇や流動性の阻害を起こすことがあった。特にディップ法に用いられた場合、溶融はんだ中に浮遊する金属間化合物は異物であり、作業性を悪化させる恐れが多分にある。たとえ液状状態において均一に溶け合っていたとしても、プリント基板が溶融はんだに接する際のはんだの一時的な温度降下により、その流動性の低下が懸念されるところである。」(【0008】)
(甲2c)「前述したように、はんだの疲労破壊は接合部における熱応力がはんだに集中することによるものであるが、言い換えれば、はんだが接合部における熱応力を吸収し、被接合部材に負荷される応力を緩和しているのである。そのため応力緩和に伴い、はんだは変形し、やがては破壊に至る。金属間化合物が析出するようなはんだは、熱応力によりはんだに作用する歪量が比較的小さい場合、金属間化合物のピンニング効果にてはんだの強度、耐クリープ性向上の効果を有する可能性があるが、はんだに作用する歪量が大きい場合には、さらに接合部の応力を緩和する能力が求められる。発熱量の大きい部品や接合部が微小な場合等はなおさらのことである。接合部の応力緩和がはんだの役割である以上、はんだが疲労破壊に至ることはやむお得ないことである。従って、展延性に優れたはんだを用いて破壊に至る時期を遅らせることが耐疲労性の向上につながるのである。はんだ組織中に硬くて脆い性質を有する金属間化合物が存在した場合には、これがはんだの展延性を阻害し、接合部の応力緩和を低下させる要因となる。」(【0011】)
(甲2d)「本発明のはんだ合金は、金属間化合物が析出するような合金の欠点に鑑みなされたもので、液状状態でも固体状態でも金属間化合物の生成がなく、ディップ法、リフロー法の双方のはんだ付け方法に対応可能な耐疲労性に優れたはんだ合金を提供することにある。」(【0012】)
(甲2e)「また、はんだ付けがディップ法の場合、主にSn-Pb共晶はんだが用いられるが、はんだ付け作業によりプリント基板のパッドであるCuがはんだ中へ溶解するため、通常Cuが0.2?0.3重量%程度含有した状態で使用される。Sn-Pb系合金にCuが0.2?0.3重量%含まれると、Cuを含有していない初期のはんだに比較し、耐疲労性が低下する。これは、はんだ中の過剰なCuがSnと金属間化合物を生成するためである。しかるに、Niを添加した合金では、Cuが0.2?0.3重量%程度含有しても、その耐疲労性は低下することなくNiの効果を保持している。これは、Cu-Ni二元系状態図から分かるように、Cu-Ni系は全固溶型であるため液体状態でも固体状態でも溶け合い、金属間化合物を生成しない。このため、はんだ中の過剰なCuはNiと相溶し、はんだ中に分散するものと推察される。」(【0020】)

甲第3号証の3:国際公開第98/34755号(甲第3号証の2)の訳文
(甲3a)「Sn-37%Pbが広く使用される主な理由の1つは、Cu、鋼、黄銅、及びステンレススチールのような広く使用されている金属にはんだ継手を形成する時に、優れた濡れ性及び溶融体の流動性、即ち“はんだ付け性”を示すことが特徴である。」(第4頁第14?16行)
(甲3b)「Pbを含まない三元共晶はんだ合金、即ちSn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)は、1996年6月18日に発行された米国特許第5,527,628号に記載され、このはんだ合金は、217℃の融点及び極めて優れたはんだ付け性を発現する。」(第4頁第40行?第5頁第1行)
(甲3c)「Sn-Ag-Cu共晶はんだの唯一の重大な欠陥は、はんだ/Cu母材界面で、特に高温のエージングで金属間層成長をしやすい傾向があることが判っており、この特徴は、実質的に全ての高含量Snの、Pbを含まないはんだに共通している。」(第5頁第6行?第5頁第8行)
(甲3d)「本発明は、はんだ付け性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高めるために、前述のSn-Ag-Cuの三元共晶の、Pbを含まないはんだ合金の改良、及び1種以上の低含量で低コストの合金添加物を含む前記合金の変形体に関する。」(第5頁第10行?第5頁第12行)
(甲3e)「特に、1種以上の添加元素を加えると、形態構造を旨く改良して、高温エージング条件のもとで金属間界面層の成長速度を抑え、はんだ付け性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高める。」(第5頁第16?19行)
(甲3f)「この添加元素は、はんだ付け性を低下することなく、ミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を改良する方法で形態構造を有利に改良するおよび/または特に高温エージングからの金属間界面の成長を抑えることが出来る、Ni、Fe及び同様な作用をする元素から成る群から選ばれる。」(第6頁第19?22行)
(甲3g)「また、1種以上の添加元素を加えることによって、母材又は部材から、はんだ本体へのCuの拡散的移動が抑制されることは、はんだミクロ組織の中の界面に近い金属間相、特にCu6Sn5の形成や過剰の成長を抑える役目をする。」(第6頁第38?40行)

(3)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「半田合金は、半田の全重量の99.3重量%・・・の錫と、半田の全重量の0.7重量%・・・の銅でできている」(甲1a)と記載されている。
ここで、甲第1号証の「本発明は、上述した鉛を含まない半田に起因する問題を最小限に抑えるかまたは克服する基板と電子部品との組立体を提供することを目的とする。」(甲1b)との記載によれば、上記半田合金は、鉛を含まないものといえる。
以上の記載及び認定事項を整理すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「99.3重量%の錫と、0.7重量%の銅でできている鉛を含まない半田合金。」(以下、「甲1発明」という。)

(4)本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者はいずれも「Snを基とする」はんだ合金である点で共通し、また、甲1発明の「鉛を含まない」は、本件発明1の「無鉛」に相当するから、両者は、
「Cu0.7重量%を含む、Snを基とする無鉛はんだ合金。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。
相違点
本件発明1は、さらに「Ni0.04?0.1重量%」を含み、「残部がSn」であり、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」ものであるのに対して、甲1発明は、Niを含まず、残部がSnであり、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」ものであるか否か不明である点。

(5)相違点についての判断
ア 甲第2?8号証によっては、甲1発明において、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を規定することが、当業者が容易に想到することであるとする理由は見あたらない。
これについて、請求人は、要するに、甲第2号証、甲第3号証の2には、「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されており、甲1発明において、甲第2号証、甲第3号証の2に記載される上記技術的事項を適用することは、当業者にとって容易である、と主張する。
しかしながら、以下に示すとおり、甲1発明において、上記技術的事項を適用することが当業者にとって容易であるとはいえず、また、そもそも、甲第2号証、甲第3号証の2に上記技術的事項が記載されているとはいえないから、上記請求人の主張には理由がない。
以下に詳述する。

イ 甲1発明において、甲第2号証、甲第3号証の2に記載される上記技術的事項を適用することが、当業者にとって容易であるとはいえない点について
a 甲1発明は、上記(3)に示すとおり、Snに0.7wt%のCuを含む無鉛はんだ合金であるといえるが、甲第2号証は、「Pb10?95重量%、Ni0.002?0.02重量%、残部Snからなる」(甲2a)鉛含有はんだ合金を前提としたものであり、また、請求人が、甲第2号証に「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されていることの根拠として指摘する甲第2号証の【0020】の記載(甲2e)は、0.2?0.3重量%程度のCuが溶解したSn-Pb共晶はんだ、すなわち、約37wt%のPbを含むはんだ合金を前提としたものであり、両者は合金の成分組成が大きく異なるものである。合金は、成分組成が異なれば、その特性が大きく異なることが通常のことであり、0.2?0.3重量%程度のCuが溶解したSn-Pb共晶はんだにおけるNiの作用効果が、Snに0.7wt%のCuを含む無鉛はんだ合金においても同様に奏されるか否かは、当業者といえども予測できるとはいえないから、このように合金の成分組成が大きく異なるものどうしを組み合わせることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
b これに対して、請求人は、鉛含有はんだ合金から無鉛はんだ合金への開発経緯を考えれば、従来から鉛含有はんだに用いられていた添加金属を、まず無鉛はんだ合金に試してみるのは当業者にとって当然のアプローチであるから、甲第2号証に記載される技術がSn-Pb共存下のみで成立する技術であるとしても、甲第2号証は、本件発明1が当業者が容易に発明をすることができたものであることの証拠となり得ると主張する。
しかしながら、上記のとおり、合金は、成分組成が異なれば、その特性が大きく異なることが通常のことであり、所定の作用効果を奏するものとして従来から鉛含有はんだに用いられていた添加金属が、無鉛はんだ合金においても同様の作用効果を奏するとはいえないことは明らかであるから、単に従来から鉛含有はんだに用いられていた添加金属であるという理由だけで、合金の成分組成が大きく異なるものどうしを組み合わせることが当業者にとって容易であるということはできない。
c また、請求人が、甲第3号証の2に「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されていることの根拠として指摘する甲第3号証の3の第5頁第16?19行の記載(甲3e)は、「Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)」(甲3b)を前提としたものであり、やはり、甲1発明とは合金の成分組成が大きく異なるものであって、Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)におけるNiの作用効果が、Snに0.7wt%のCuを含む無鉛はんだ合金においても同様に奏されるか否かは、当業者といえども予測できるとはいえないから、このように合金の成分組成が大きく異なるものどうしを組み合わせることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
d また、甲1発明に係るはんだ合金においては、以下に示すとおり、そもそも、フローはんだ付け等で必要とされるような溶融状態での流動性が必要とされないと認められる。
甲1発明に係るはんだ合金を用いたはんだ付けについて、甲第1号証には、「超音波半田付け、リフロー半田付けまたはワイヤボンディング半田付け技術による半田付け工程中に、半田合金はおよそ220℃または227℃と240℃の間の所定温度で迅速にペースト状になり、そして熱が除去されると即座に固体状態に戻る。」(甲1c)と記載されている。
この記載によれば、甲1発明に係るはんだ合金を用いたはんだ付けは、はんだ付け中にはんだ合金が所定温度で迅速にペースト状になることからみて、フローはんだ付け等で必要とされるような溶融状態での流動性が必要とされない、超音波半田付け、リフロー半田付けまたはワイヤボンディング半田付けにより行われるものと認められる。
そうすると、甲1発明に係るはんだ合金においては、フローはんだ付け等で必要とされるような溶融状態での流動性が必要とされないから、仮に、甲第2号証、甲第3号証の2に「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されているとしても、甲1発明において、甲第2号証、甲第3号証の2に記載される上記技術的事項を適用する動機付けがないといえる。
e これに対して、請求人は、甲第38号証の1及び甲第39号証によれば、甲1発明に係るはんだ合金がフローはんだ付けに用いられることは、本件特許に係る出願時の技術常識であり、また、甲第2、4号証によれば、フローはんだ付けに用いられるSn、Cuを含有するはんだ合金において、Sn-Cu金属間化合物の発生により流動性が低下することは、本件特許に係る出願前周知の課題であって、甲1発明においても、この課題は存在すると主張する。
しかしながら、甲第38号証の1及び甲第39号証によれば、「99.3wt%のSnと、0.7wt%のCuからなるはんだ合金」というもの自体が、従来からフローはんだ付けに用いられるものであったと認められるものの、甲1発明に係るはんだ合金は、上記のとおり、フローはんだ付けに用いられるものとはいえないことに変わりはない。そうであれば、上記の請求人のいう「周知の課題」が、甲1発明においても存在するとはいえない。また、いかなる成分組成のはんだ合金であっても、あらゆるはんだ付け方法に適用できるということが技術常識であるともいえないから、甲1発明に係るはんだ合金が、当然にフローはんだ付けに用いることができるということもできない。
f 以上のとおりであるから、甲1発明において、甲第2号証、甲第3号証の2に記載される上記技術的事項を適用することが、当業者にとって容易であるとはいえない。

ウ 甲第2号証には、「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されているとはいえない点について
a 甲2eによれば、甲第2号証には、Sn-Pb共晶はんだを用いるディップ法によるはんだ付けにおいては、プリント基板のパッドであるCuがはんだ中へ溶解して、通常Cuが0.2?0.3重量%程度含有した状態で使用されるところ、はんだ中の過剰なCuがSnと金属間化合物を生成するため、Cuを含有していない初期のはんだに比較し、耐疲労性が低下するが、Niを添加した合金では、Cu-Ni系は全固溶型であるため液体状態でも固体状態でも溶け合い、金属間化合物を生成しないため、はんだ中の過剰なCuはNiと相溶し、はんだ中に分散するため、耐疲労性は低下することがないことが記載されていると認められる。ここで、耐疲労性とは、甲2cによれば、はんだ接合部における疲労破壊の起こりにくさのことであり、はんだ接合部のはんだ組織中に金属間化合物が存在すると耐疲労性が低下すると認められる。
上記のとおり、Niを添加したSn-Pb共晶はんだは、Cuがはんだ中へ溶解しても耐疲労性が低下しないものであるが、耐疲労性の低下は、上記のとおり、はんだ接合部のはんだ組織中にCuとSnとの金属間化合物が生成されるために生じるのであるから、Niを添加したSn-Pb共晶はんだでは、はんだ接合部のはんだ組織中にCuとSnとの金属間化合物が生成されていないか、少なくともその生成が抑制されていると解される。
以上によれば、甲第2号証には、Cuが溶解したSn-Pb共晶はんだを用いるディップ法によるはんだ付けにおいて、Sn-Pb共晶はんだにNiを添加することにより、はんだ接合部のはんだ組織中においてSn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、耐疲労性が低下しないことが記載されていると認められるものの、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することについては記載されているということはできない。
b これに対して、請求人は、甲第2号証の「本発明のはんだ合金は、・・・液状状態でも固体状態でも金属間化合物の生成がなく」(甲2d)との記載によれば、上記記載事項の認定における、Ni添加によるSn-Cu金属間化合物の発生の抑制は、液相においてもなされるものであり、また、甲2bによれば、溶融はんだ中に金属間化合物が存在すると流動性が低下するから、結局、甲第2号証には、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することが記載されていると主張する。
しかしながら、上記の甲2dにおける「本発明のはんだ合金」とは、甲第2号証の記載全体からみて、特許請求の範囲に記載される「Pb10?95重量%、Ni0.002?0.02重量%、残部Snからなることを特徴とする耐疲労性を有するはんだ合金」(甲2a)のことであると認められる。上記甲2dの記載は、上記「Pb10?95重量%、Ni0.002?0.02重量%、残部Snからなることを特徴とする耐疲労性を有するはんだ合金」が、液相で金属間化合物の生成がないことをいうものにすぎず、上記記載事項の認定における、Ni添加によるSn-Cu金属間化合物の発生の抑制が、液相においてもなされることまでを示すものとはいえない。
c 以上のとおりであるから、甲第2号証には、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することが記載されているとはいえない。

エ 甲第3号証の2には、「Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上すること」が記載されているとはいえない点について
a 甲第3号証の2の訳文である甲第3号証の3には、「Pbを含まない三元共晶はんだ合金、即ちSn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)」(甲3b)に関し記載されているところ、「Sn-Ag-Cu共晶はんだの唯一の重大な欠陥は、はんだ/Cu母材界面で、特に高温のエージングで金属間層成長をしやすい傾向がある」(甲3c)ことであり、「本発明は、はんだ付け性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高める」(甲3d)ことを目的として、「特に、1種以上の添加元素を加えると、形態構造を旨く改良して、高温エージング条件のもとで金属間界面層の成長速度を抑え、はんだ付け性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高める。」(甲3e)ことが記載されていると認められる。
ここで、「また、1種以上の添加元素を加えることによって、母材又は部材から、はんだ本体へのCuの拡散的移動が抑制されることは、はんだミクロ組織の中の界面に近い金属間相、特にCu6Sn5の形成や過剰の成長を抑える役目をする。」(甲3g)との記載によれば、上記「金属間界面層」とは、Cu6Sn5を含むものと認められる。
また、「この添加元素は、はんだ付け性を低下することなく、ミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を改良する方法で形態構造を有利に改良するおよび/または特に高温エージングからの金属間界面の成長を抑えることが出来る、Ni、Fe及び同様な作用をする元素から成る群から選ばれる。」(甲3f)との記載によれば、上記「1種以上の添加元素」とは、Niを含むものと認められる。
以上によれば、甲第3号証の3には、Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)に、Niを添加することにより、高温エージング条件のもとで、はんだ/Cu母材界面でのCu6Sn5を含む金属間界面層の成長速度を抑え、はんだ付け性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高めることが記載されていると認められるものの、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することについては記載されているということはできない。
b これに対して、請求人は、「優れた濡れ性及び溶融体の流動性、即ち“はんだ付け性”を示すことが特徴である。」(甲3a)との記載によれば、「はんだ付け性」とは、溶融体の流動性を意味するものであるから、甲第3号証の3には、Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)に、Niを添加することにより、高温エージング条件のもとで、はんだ/Cu母材界面でのCu6Sn5を含む金属間界面層の成長速度を抑え、溶融体の流動性を低下することなくミクロ組織の高温安定性及び熱的-機械的疲労強度を高めることが記載されており、結局、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することが記載されていると主張する。
しかしながら、上記甲3aの「はんだ付け性」に関する記載は、正確には、「Sn-37%Pbが広く使用される主な理由の1つは、Cu、鋼、黄銅、及びステンレススチールのような広く使用されている金属にはんだ継手を形成する時に、優れた濡れ性及び溶融体の流動性、即ち“はんだ付け性”を示すことが特徴である。」(甲3a)であり、この記載は、上記のとおり、Sn-37%Pbに関するものであるから、このような記載が存在するとしても、直ちに、Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)に関する記載における「はんだ付け性」も同じ意味であるとはいえない。
また、仮に、請求人が主張するように、「はんだ付け性」が「溶融体の流動性」を意味するものであるとしても、上記請求人の主張でいう「・・・溶融体の流動性を低下することなく・・・」の意味は、文字どおり、Niを添加しても、Niを添加しない場合と比較して、流動性が低下しないということにすぎず、流動性が向上したことを意味するものではない。
また、請求人は、固相と液相とではCu、Niの拡散速度が異なるだけであり、甲第3号証の3の「Sn-4.7%Ag-1.7%Cu(重量%)に、Niを添加することにより、高温エージング条件のもとで、はんだ/Cu母材界面でのCu6Sn5を含む金属間界面層の成長速度を抑える」との記載から、Ni添加によりSn-Cu金属間化合物の発生が抑制できるという知見を、当業者であれば容易に得ることができると主張する。
しかしながら、固相と液相とでは、合金の挙動は大きく異なるといえるから、甲第3号証の3に上記事項が記載されているとしても、そのことから、直ちに、液相においても、Cu6Sn5を含む金属間化合物の発生が抑制されることを当業者が認識できるとはいえない。
c 以上のとおりであるから、甲第3号証の2に、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することが記載されているとはいえない。

オ 以上によれば、甲第2号証、甲第3号証の2には、Niを添加することにより、Sn-Cu金属間化合物の発生が抑制され、流動性が向上することが記載されており、甲1発明において、甲第2号証、甲第3号証の2に記載される上記技術的事項を適用することは、当業者にとって容易である、との請求人の主張には理由がない。

(6)本件発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、さらに、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の2に加えて、甲第4?8号証を検討しても、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)本件発明2?4について
本件発明2?4は、上記第2で認定したとおり、本件発明1と同じ発明特定事項を有し、さらに、本件発明2では、「Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した」なる事項を限定し、本件発明3では、「Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した」なる事項を限定し、本件発明4では、「さらにGe0.001?1重量%を加えた」なる事項を限定するものである。
本件発明1については、上記のとおり、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の2、甲第4?8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1と同じ発明特定事項を有し、さらに、上記各事項を限定するものである本件発明2?4についても、同様の理由により、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の2、甲第4?8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)無効理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2に理由はない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提示した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担するものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-17 
結審通知日 2007-07-20 
審決日 2007-07-31 
出願番号 特願平11-548053
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B23K)
P 1 113・ 536- Y (B23K)
P 1 113・ 537- Y (B23K)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 平塚 義三
井上 猛
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3152945号(P3152945)
発明の名称 無鉛はんだ合金  
代理人 森 隆行  
代理人 櫻林 正己  
代理人 東口 倫昭  
代理人 進藤 素子  
代理人 濱田 俊明  

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